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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157633
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】角膜内皮撮像装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/13 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A61B3/13 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072087
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】亀井 芽衣
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 拓
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA04
4C316AB19
4C316FA06
4C316FA08
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】角膜からの反射光の検出結果が複雑な形状であっても、内皮からの反射光を特定できる可能性を高める技術の提供。
【解決手段】被検眼を通る所定の軸に対して傾斜した方向からスリット光を前記被検眼に対して照射し、前記角膜の画像である角膜画像を撮像する角膜撮像光学系と、前記所定の軸に対して傾斜した方向から軸方向位置検出用の検出光を前記被検眼に対して照射し、前記被検眼からの反射光を受光するラインセンサを含む軸方向位置調整光学系と、前記ラインセンサにおける合焦位置と、前記角膜の内皮からの反射光が前記ラインセンサにおいて受光される位置と、を一致させる制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記ラインセンサが受光した前記角膜からの反射光の中で、前記被検眼の前房に最も近いピークを前記内皮からの反射光とみなす、角膜内皮撮像装置を構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の角膜を通る所定の軸に対して傾斜した方向からスリット光を前記角膜に対して照射する角膜照明光学系と、前記スリット光による前記角膜からの反射光を受光して前記角膜の画像である角膜画像を撮像する角膜検出光学系と、を含む角膜撮像光学系と、
前記所定の軸に対して傾斜した方向から軸方向位置検出用の検出光を前記角膜に対して照射する軸方向照明光学系と、前記軸方向位置検出用の検出光による前記角膜からの反射光を受光するラインセンサを備える軸方向位置検出光学系と、を含む軸方向位置調整光学系と、
前記角膜撮像光学系において合焦した物体からの反射光が前記ラインセンサにおいて受光される位置である合焦位置と、前記角膜の内皮からの反射光が前記ラインセンサにおいて受光される位置と、を一致させるように前記角膜撮像光学系および前記軸方向位置調整光学系を前記所定の軸に沿った方向に移動させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ラインセンサが受光した前記角膜からの反射光の中で、前記被検眼の前房に最も近いピークを前記内皮からの反射光とみなす、
角膜内皮撮像装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記ラインセンサにおいて前記内皮からの反射光を検出できない場合に、
前記所定の軸に沿った方向において、前記角膜の上皮よりも前房側であり、かつ、前記角膜を含む所定範囲内に存在する所定の位置が前記角膜撮像光学系において合焦するように前記角膜撮像光学系および前記軸方向位置調整光学系を移動させ、
移動後に前記ラインセンサが受光した反射光に基づいて前記内皮からの反射光の検出を試行し、検出できない場合に、前記所定範囲内で前記所定の位置を変更し、再度試行を行う、
請求項1に記載の角膜内皮撮像装置。
【請求項3】
前記所定の位置は、前記所定範囲内において予め決められた距離毎に存在する位置である、
請求項2に記載の角膜内皮撮像装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記角膜撮像光学系および前記軸方向位置調整光学系の移動後に前記ラインセンサが受光した前記上皮からの反射光の位置に基づいて、前記所定の位置が前記角膜撮像光学系において合焦する状態であるか否か判定し、合焦する状態でない場合には、前記所定の位置が前記角膜撮像光学系において合焦するように前記角膜撮像光学系および前記軸方向位置調整光学系を再移動させる、
請求項2または請求項3に記載の角膜内皮撮像装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記所定の軸に沿った方向へのオフセットであるZオフセットを受け付け、
前記合焦位置に前記Zオフセット対応したオフセットを与えた位置と、前記内皮からの反射光が前記ラインセンサにおいて受光される位置と、を一致させるように前記角膜撮像光学系および前記軸方向位置調整光学系を前記所定の軸に沿った方向に移動させる、
請求項1または請求項2に記載の角膜内皮撮像装置。
【請求項6】
前記所定の軸に垂直な方向における垂直位置検出用の検出光を前記所定の軸に沿った方向から前記角膜に対して照射する垂直照明光学系と、前記垂直位置検出用の検出光による前記角膜からの反射光を受光する2次元センサを含む垂直位置検出光学系と、を含む垂直位置調整光学系をさらに備え、
前記制御部は、
前記2次元センサ上の既定の位置と、前記垂直位置検出用の検出光による前記角膜からの反射光が前記2次元センサにおいて受光される位置と、を一致させるように前記角膜撮像光学系および前記垂直位置調整光学系を前記所定の軸に垂直な方向に移動させ、
前記所定の軸に垂直な方向へのオフセットであるXYオフセットを受け付けた場合に、前記制御部は、前記既定の位置に前記XYオフセットに対応したオフセットを与えた位置と、前記垂直位置検出用の検出光による前記角膜からの反射光が前記2次元センサにおいて受光される位置と、を一致させるように前記角膜撮像光学系および前記垂直位置調整光学系を前記所定の軸に垂直な方向に移動させる、
請求項1または請求項2に記載の角膜内皮撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角膜内皮撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼疾患の有無判断や眼の術後経過の診断などに際して、角膜を観察することが行われている。このような角膜の細胞状態を観察するに際して、非接触で被検眼における角膜を撮像する装置が知られている。例えば、特許文献1には、照明用光源からの照明光によって前眼部を斜め前方から照明し、照明されている前眼部における画像を連続観察する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4729200号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に角膜の内皮を観察しようとする場合、角膜撮像光学系を角膜の内皮に合焦させる必要がある。しかしながら、角膜からの反射光は必ずしも特許文献1の図7に示されたような単純な形状にはならない。異常眼や手術後の角膜の場合、角膜の内皮付近からの反射光が複数のピークを形成する場合がある。従来、このような複雑な形状の反射光に基づいて角膜の内皮からの反射光を特定する知見が存在しなかった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、角膜からの反射光の検出結果が複雑な形状であっても、内皮からの反射光を特定できる可能性を高める技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、角膜内皮撮像装置は、被検眼の角膜を通る所定の軸に対して傾斜した方向からスリット光を前記角膜に対して照射する角膜照明光学系と、前記スリット光による前記角膜からの反射光を受光して前記角膜の画像である角膜画像を撮像する角膜検出光学系と、を含む角膜撮像光学系と、前記所定の軸に対して傾斜した方向から軸方向位置検出用の検出光を前記角膜に対して照射する軸方向照明光学系と、前記軸方向位置検出用の検出光による前記角膜からの反射光を受光するラインセンサを備える軸方向位置検出光学系と、を含む軸方向位置調整光学系と、前記角膜撮像光学系において合焦した物体からの反射光が前記ラインセンサにおいて受光される位置である合焦位置と、前記角膜の内皮からの反射光が前記ラインセンサにおいて受光される位置と、を一致させるように前記角膜撮像光学系および前記軸方向位置調整光学系を前記所定の軸に沿った方向に移動させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記ラインセンサが受光した前記角膜からの反射光の中で、前記被検眼の前房に最も近いピークを前記内皮からの反射光とみなす。
【0006】
角膜からの反射光には、内皮、上皮、実質からの反射光が含まれ得るが、多くの場合、上皮からの反射光はラインセンサにおいて極めて明確に検出される。一方、内皮からの反射光を明確に検出することが困難である場合がある。特に異常眼や手術後の角膜が撮像対象である場合やノイズを含む場合、内皮周辺の細胞からの反射光が複雑になり、例えば、複数のピークが観察される場合がある。しかし、出願人の研究によれば、内皮からの反射光はこれらのピークの中で最も被検眼の前房に近いピークとなることが判明した。このため、角膜内皮撮像装置において、ラインセンサが受光した角膜からの反射光の中で、被検眼の前房に最も近いピークを内皮からの反射光とみなす構成とした。この構成によれば、角膜からの反射光の検出結果が複雑な形状であっても、内皮からの反射光を特定できる可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】装置光学系の構成を示す説明図である。
図2】角膜内皮撮像装置の構成を示す説明図である。
図3】装置光学系に接続される制御回路等を説明する説明図である。
図4】撮像処理のフローチャートである。
図5図5A図5Cはラインセンサの検出結果の例を示す説明図である。
図6図6Aは角膜周辺の拡大図、図6Bはラインセンサの検出結果の例を示す説明図である。
図7】撮像処理のフローチャートである。
図8】ユーザインタフェースの例を示す説明図である。
図9】撮像処理のフローチャートである。
図10】XYオフセットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)角膜内皮撮像装置の構成:
(1-1)制御系の構成:
(1-2)撮像処理:
(2)他の実施形態:
【0009】
(1)角膜内皮撮像装置の構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる角膜内皮撮像装置100が備える装置光学系10の構成を示す説明図である。図2および図3は、角膜内皮撮像装置100を説明するための図である。装置光学系10は、前眼部撮像光学系12と、角膜照明光学系14と、軸方向位置検出光学系16と、軸方向照明光学系18と、角膜検出光学系20と、を備える。本実施形態においては、角膜照明光学系14および角膜検出光学系20が角膜撮像光学系を構成し、軸方向位置検出光学系16と、軸方向照明光学系18と、が軸方向位置調整光学系を構成する。
【0010】
装置光学系10において、前眼部撮像光学系12から図面下部の側に角膜照明光学系14および軸方向位置検出光学系16が設けられ、前眼部撮像光学系12から図面上部の側に軸方向照明光学系18および角膜検出光学系20が配置されている。角膜照明光学系14(軸方向位置検出光学系16)の光軸14a(16a)と、軸方向照明光学系18(角膜検出光学系20)の光軸18a(20a)とは、前眼部撮像光学系12の光軸12aと同一平面に配置されている。
【0011】
前眼部撮像光学系12は、光軸12a上において被検眼Eに近い位置から、ハーフミラー22、対物レンズ24、ハーフミラー26、コールドミラー27、CCD28、の順に設けられている。また、被検眼Eに対面する所定の位置には、2つの観察用光源30が配設されている。観察用光源30は、赤外光を発する赤外LEDであり、被検眼Eの前眼部を照明する照明光源である。コールドミラー27は、赤外光を透過させる一方で可視光を反射する。観察用光源30から発せられて被検眼Eの前眼部で反射された反射光は、対物レンズ24およびコールドミラー27を通して、CCD28上で結像される。すなわち、CCD28は、照明光源である観察用光源30による前眼部からの反射光を受光して前眼部の画像である前眼部画像を撮像する前眼部撮像素子である。
【0012】
角膜照明光学系14は、被検眼Eに近い位置から、投影レンズ32、コールドミラー34、スリット36、集光レンズ38、撮像用光源40、の順に設けられている。撮像用光源40は、可視光を発するLEDである。コールドミラー34は、赤外光を透過させる一方で可視光を反射する。撮像用光源40から発せられた光は、集光レンズ38およびスリット36を通すことによってスリット光とされる。このスリット光は、コールドミラー34により反射されるとともに投影レンズ32を通って、角膜Cに対して斜め方向から照射される。すなわち、撮像用光源40は、スリット光を被検眼Eに対して斜めから照明する照明光源である。
【0013】
軸方向位置検出光学系16は、その光軸の一部が角膜照明光学系14の光軸と一致する。軸方向位置検出光学系16は、被検眼Eに近い位置から、投影レンズ32、コールドミラー34、ラインセンサ44、の順に設けられている。後述する調整用光源54から照射されて角膜Cで反射された反射光は、投影レンズ32およびコールドミラー34を通って、ラインセンサ44上に結像する。
【0014】
一方、軸方向照明光学系18は、被検眼Eに近い位置から、対物レンズ46、コールドミラー48、集光レンズ52、軸方向位置検出用の検出光を出力する光源としての調整用光源54、の順に設けられている。調整用光源54は、赤外LEDなどの赤外光源が好ましい。調整用光源54から発せられた検出光は、角膜Cに対して斜めから照射される。調整用光源54は、必ずしも赤外光源とされる必要は無く、ハロゲンランプや可視光LEDなどの可視光源を用いても良い。可視光源を用いる場合には、その照度は撮像用光源40の照度よりも小さくされることが好ましい。可視光源の照度を撮像用光源40の照度よりも小さくすることによって、アライメント等、調整用光源54から光を照射する際の被検者の負担が軽減される。調整用光源54は、ハロゲンランプや可視光LEDなどの可視光源と赤外フィルタを組み合わせることによって構成されても良い。
【0015】
角膜検出光学系20は、その光軸の一部が軸方向照明光学系18の光軸と一致する。角膜検出光学系20は、被検眼Eに近い位置から、対物レンズ46、コールドミラー48、スリット56、変倍レンズ58、合焦レンズ60、コールドミラー27、CCD28の順に設けられている。撮像用光源40から照射されて角膜Cで反射された光は、対物レンズ46を通るとともにコールドミラー48で反射された後に、スリット56によって平行光とされる。この平行光は、変倍レンズ58および合焦レンズ60を通るとともに、コールドミラー27で反射されて、撮像素子であるCCD28上に結像される。すなわち、CCD28は、撮像用光源40から発せられた光であって集光レンズ38およびスリット36を通過した光であるスリット光による被検眼Eの角膜からの反射光を受光して角膜の画像である角膜画像を撮像する角膜撮像素子でもある。
【0016】
本実施形態においては、前眼部撮像光学系12の光軸12aが特定の方向に向くように前眼部撮像光学系12が角膜内皮撮像装置100に取り付けられている。また、被検者が角膜内皮撮像装置100に対面して顔を固定した場合に、測定対象となる被検眼Eを光軸12aが通るように、前眼部撮像光学系12が角膜内皮撮像装置100に取り付けられている。この結果、被検眼Eの正面方向と光軸12aとは、略一致する。
【0017】
角膜照明光学系14(軸方向位置検出光学系16)の光軸14a(16a)と、軸方向照明光学系18(角膜検出光学系20)の光軸18a(20a)とは、前眼部撮像光学系12の光軸12aに対して互いに逆方向に傾斜している。本実施形態において、光軸14a(16a)と光軸18a(20a)とは一点で交わり、当該一点において光軸12aも交わる。光軸14a(16a)、光軸18a(20a)、光軸12aが交わる交点を回転中心とした場合における光軸12aに対する傾斜角αは、光軸14a(16a)、光軸18a(20a)において同一である。すなわち、交点を回転中心とし、光軸12aに対して光軸14a(16a)が傾斜する傾斜角を鋭角側で定義し、交点を回転中心とし、光軸12aに対して光軸18a(20a)が傾斜する傾斜角を鋭角側で定義した場合、両傾斜角はともにαで一致している。以上のような本実施形態において、前眼部撮像光学系12の光軸12aが所定の軸に相当する。
【0018】
本実施形態においては、角膜撮像光学系において合焦状態で撮像可能な物体と、角膜撮像光学系と、の光軸12a方向における距離は一定である。具体的には、本実施形態においては、光軸14a(16a)と光軸20a(18a)とが交差する点に物体が存在する場合に、当該物体に合焦した状態でCCD28による撮像が行われるように、角膜撮像光学系の各光学部品の位置が調整されている。従って、光軸12a方向における角膜撮像光学系と、撮像対象となる角膜の部位と、の距離が特定の距離である場合に、任意の物体が合焦した状態でCCD28による撮像が可能である。なお、撮像対象が角膜の内皮である場合には角膜によって光が屈折するが、角膜の内皮に合焦した状態における、角膜の内皮と、角膜撮像光学系と、の光軸12a方向における距離は、任意の物体における距離と同一であると見なされていてもよい。
【0019】
さらに、前眼部撮像光学系12上に設けられるハーフミラー22は、固視標光学系64、垂直照明光学系66の一部を構成している。固視標光学系64は、被検眼Eに近い位置から、ハーフミラー22、投影レンズ68、ハーフミラー70、固視標光源74、の順に設けられている。固視標光源74は、LEDなどの可視光を発する光源であり、被検眼Eの視線を既定方向に誘導する。固視標光源74は、例えば、複数のLEDをマトリクス状に並べたドットマトリクスLED等によって実現可能である。
【0020】
垂直照明光学系66は、被検眼Eに近い位置から順にハーフミラー22、投影レンズ68、ハーフミラー70、絞り76、ピンホール板78、集光レンズ80、アライメント光源82が設けられて構成されている。アライメント光源82からは垂直位置検出用の検出光である赤外線が出力され、かかる赤外光は集光レンズ80により集光されてピンホール板78を通過し、絞り76に導かれる。そして、絞り76を通過した光はハーフミラー70に反射されて、投影レンズ68によって平行光とされた後に、ハーフミラー22によって反射されて被検眼Eに照射される。本実施形態においては、垂直位置検出用の検出光である赤外線がハーフミラー22によって光軸12aに平行な方向に向けられる。従って、垂直位置検出用の検出光は、光軸12aに沿った方向から被検眼Eに照射する。
【0021】
垂直位置検出光学系84は、被検眼Eに近い位置から、ハーフミラー26、位置検出可能なアライメント検出センサ88、の順に設けられている。アライメント光源82から照射されて角膜Cで反射された光がハーフミラー26で反射され、反射光がアライメント検出センサ88に導かれる。前眼部撮像光学系12上に設けられたハーフミラー26は、垂直位置検出光学系84の一部を構成している。本実施形態においては、以上の垂直照明光学系66および垂直位置検出光学系84が、垂直位置調整光学系を構成する。
【0022】
アライメント検出センサ88は、2次元センサであり、垂直位置検出用の検出光による被検眼Eからの反射光を受光する。当該反射光が2次元センサで受光される位置は、被検眼Eと垂直位置調整光学系との位置関係が、光軸12aに垂直な方向に変動することによって、変動する。従って、反射光が2次元センサで受光される位置に基づいて、垂直位置調整光学系の被検眼Eに対する相対位置関係を、光軸12aに垂直な方向において特定することができる。
【0023】
図2は、角膜内皮撮像装置100の構成を示す説明図である。角膜内皮撮像装置100は、非接触で被検眼における角膜内皮を撮像するための装置である。角膜内皮撮像装置100は、ベース102と、本体部104と、ヘッド106と、操作スティック108と、ディスプレイ110と、を備える。ベース102は、電源装置を内蔵する。本体部104は、ベース102の上に設けられている。本体部104は、後述する各制御回路を収容する。ヘッド106の内側には、図1において説明した装置光学系10が収容されている。
【0024】
本実施形態において、角膜内皮撮像装置100のベース102は、水平面に設置される。角膜内皮撮像装置100は図示しない支持部を備えており、支持部に被検者の顔が支持された状態において、被検者の左右、上下、前後方向となる方向のそれぞれを、本明細書ではX方向、Y方向、Z方向と呼ぶ。図2においては、各方向をX軸、Y軸、Z軸によって示している。また、本明細書では、当該被検者から見た後方をZ方向の正方向、被検者から見た左方をX方向の正方向、上方をY方向の正方向として示している。なお、Z方向は、前眼部撮像光学系12の光軸12aと平行であるため、光軸12aに沿った方向はZ方向である。一方、X方向およびY方向に平行な平面上の任意の方向は、光軸12aに対して垂直な方向である。
【0025】
ヘッド106は、本体部104の上方において、X方向、Y方向、Z方向に沿って正負それぞれの方向に駆動できるように構成されている。ヘッド106には、装置光学系10が収容され、固定されている。従って、角膜照明光学系14と、軸方向位置検出光学系16と、軸方向照明光学系18と、角膜検出光学系20と、垂直照明光学系66と、垂直位置検出光学系84は、ヘッド106の移動に伴って一体として駆動される。
【0026】
操作スティック108は、ベース102に設けられている。操作スティック108は、ヘッド106を駆動可能に構成されている。ディスプレイ110は、ヘッド106に設けられている。ディスプレイ110は、タッチパネルディスプレイである。従って、ディスプレイ110は、任意の画像を表示可能であるとともにタッチパネルによる入力を受け付けることが可能である。表示部および入力部はタッチパネルディスプレイに限定されず、他にも種々の装置であって良い。
【0027】
(1-1)制御系の構成:
図3は、図1にて説明した装置光学系10に接続される制御回路等を説明するための説明図である。角膜内皮撮像装置100には、X方向、Y方向、Z方向のそれぞれにヘッド106を移動させるX軸駆動機構112、Y軸駆動機構114、Z軸駆動機構116が設けられている。これらの駆動機構は、例えば、ラック・ピニオン機構によって構成可能である。
【0028】
さらに、角膜内皮撮像装置100は、制御部117、XYアライメント検出回路118、Zアライメント検出回路120、画像処理回路122、記憶装置124を備える。制御部117は、装置光学系10による角膜像の撮像の作動制御を行う回路である。制御部117は、X軸駆動機構112、Y軸駆動機構114、Z軸駆動機構116に接続されており、これらの駆動機構を駆動させる駆動信号を出力可能である。
【0029】
XYアライメント検出回路118は、アライメント検出センサ88、制御部117に接続されている。また、Zアライメント検出回路120は、ラインセンサ44、制御部117に接続されている。アライメント検出センサ88およびラインセンサ44の検出情報は、XYアライメント検出回路118およびZアライメント検出回路120を介して制御部117に入力される。なお、図示は省略するが、制御部117は、観察用光源30、撮像用光源40、調整用光源54、アライメント光源82にも接続されており、これら照明光源の発光を制御する。また、制御部117は、ディスプレイ110にも接続されており、ディスプレイ110に対して任意の画像を表示させ、また、タッチパネルによるユーザの入力を受け付けることが可能である。
【0030】
画像処理回路122は、CCD28が撮像した画像を取得する回路である。画像処理回路122には記憶装置124が接続されており、記憶装置124は、画像処理回路122から出力された画像の画像データを記憶する。
【0031】
(1-2)撮像処理:
次に、以上のような構成の角膜内皮撮像装置100において、制御部117が実行する撮像処理を説明する。図4は、撮像処理を示すフローチャートである。制御部117は、ユーザがディスプレイ110に対してタッチ操作を行い、撮像処理の開始を指示することにより開始される。
【0032】
撮像処理が開始されると、制御部117は、粗調整を行う(ステップS100)。具体的には、撮像処理が開始されると、制御部117は、観察用光源30を点灯させ、前眼部撮像光学系12による撮像を開始する。この結果、CCD28によって撮像された前眼部の画像が画像処理回路122によって取得され、記憶装置124に記憶される。制御部117は、当該記憶装置124に記憶された画像を示す画像データを取得し、ディスプレイ110を制御して当該画像を表示させる。この結果、ディスプレイ110には前眼部の画像がライブ表示される。
【0033】
ユーザは、このように前眼部の画像がディスプレイ110にライブ表示された状態で操作スティック108を操作して粗調整を行う。すなわち、ユーザが操作スティック108を操作すると、制御部117は操作スティック108の操作方向および操作量に応じてX軸駆動機構112およびY軸駆動機構114を駆動させ、ヘッド106をX方向およびY方向に移動させる。ユーザは、ディスプレイ110の表示を視認しつつ操作スティック108を操作し、被検眼Eの角膜の中心がディスプレイ110の予め決められた位置(例えば、中央)に一致するように粗調整を行う。Z方向の粗調整は、自動で行われても良いし、ユーザによって行われてもよい。自動で行われる構成としては、ヘッド106のZ方向の位置を予め決められた初期位置に設定する構成や、ラインセンサ44の出力に基づいて、例えば、上皮からの反射光が既定の範囲で検出されるようにヘッド106をZ方向に移動させる構成等を採用可能である。
【0034】
次に、制御部117は、垂直位置調整光学系を用いて光軸12aに垂直な方向の位置の調整、すなわち、被検眼Eに対する装置光学系10のXY方向の位置合わせであるXYアライメントを行う(ステップS105)。具体的には、制御部117は、アライメント光源82を点灯させる。この結果、アライメント光源82から垂直位置検出用の検出光が出力され、被検眼Eに向けて照射される。垂直位置検出用の検出光が被検眼Eで反射すると、反射光がアライメント検出センサ88に導かれ、アライメント検出センサ88によって検出される。なお、垂直位置検出用の検出光が被検眼Eで反射した反射光の強度は、角膜頂点で大きい値となるため、反射光が検出される位置は、角膜頂点からの反射光が検出される位置に相当する。ここで、角膜頂点とは、角膜CのうちZ方向において前眼部撮像光学系12に最も近い位置である。
【0035】
以上のように、垂直位置検出用の検出光による被検眼Eからの反射光がアライメント検出センサ88によって検出されている状態において、制御部117は、XYアライメントを行う。具体的には、制御部117は、アライメント検出センサ88の出力結果を参照し、閾値以上の検出値が検出されたアライメント検出センサ88上の位置を特定する。当該位置は、反射光がアライメント検出センサ88において受光された位置と見なされる。閾値は、反射光を検出するための値として予め決められた値である。
【0036】
制御部117は、反射光がアライメント検出センサ88において受光された位置を、アライメント検出センサ88上の既定の位置(本実施形態においてはセンサの中央)に一致させるための制御を行う。すなわち、制御部117は、反射光がアライメント検出センサ88において受光された位置と、アライメント検出センサ88上の既定の位置との差分を特定する。さらに、制御部117は、当該差分を減少させるためのXY平面内でのヘッド106の移動方向を特定する。そして、制御部117は、X軸駆動機構112およびY軸駆動機構114を制御し、当該移動方向にヘッド106を移動させる。
【0037】
制御部117は、反射光がアライメント検出センサ88において受光された位置と、アライメント検出センサ88上の既定の位置との差分が閾値以下になるまで以上の処理を繰り返すことによってXYアライメントを実行する。なお、XYアライメントの際には、ステップS100におけるライブ表示が行われてもよい。XYアライメントが行われると、制御部117は、XY方向のトラッキングを開始する(ステップS110)。すなわち、制御部117は、ステップS105におけるアライメントを継続的に繰り返すことにより、XYアライメントを常時実行する。
【0038】
次に、制御部117は、軸方向位置調整光学系を用いて軸方向位置の調整、すなわち、Zアライメントを行う。このために、まず、制御部117は、上皮の位置+目標距離の位置が合焦した状態になるようにZアライメントを行う(ステップS115)。具体的には、制御部117は、調整用光源54を点灯させる。この結果、調整用光源54から軸方向位置検出用の検出光が出力され、被検眼Eに向けて照射される。軸方向位置検出用の検出光が被検眼Eで反射すると、反射光がラインセンサ44に導かれ、ラインセンサ44によって検出される。なお、本実施形態においては、角膜の内皮が撮像対象である。角膜の内皮に合焦した状態で撮像が行われるためには、角膜照明光学系14の光軸14aと、角膜検出光学系20の光軸20aとが交差する点に角膜の内皮が存在する必要がある。
【0039】
角膜照明光学系14の光軸14aと軸方向位置検出光学系16の光軸16aとは被検眼Eの周辺で一致しており、軸方向照明光学系18の光軸18aと角膜検出光学系20の光軸20aとは被検眼Eの周辺で一致している。このため、角膜照明光学系14の光軸14aと角膜検出光学系20の光軸20aとが交差する点と、軸方向照明光学系18の光軸18aと軸方向位置検出光学系16の光軸16aとが交差する点と、は一致している。従って、角膜の内皮からの反射光がラインセンサ44によって検出された位置を解析すれば、角膜の内皮が、角膜検出光学系において合焦した状態になっているか否かを特定することができる。
【0040】
具体的には、本実施形態においては、角膜撮像光学系において合焦した状態の物体からの反射光がラインセンサ44で検出される位置が予め合焦位置として特定されている。図5A図5Cは、ラインセンサ44によって検出された反射光の強度の例を示している。図5A図5Cにおいて、横軸はラインセンサ44の検出素子の位置、縦軸は各位置で検出された反射光の強度である。これらの図5A図5Cに示す横軸の特定の位置が合焦位置である。
【0041】
被検眼Eに対して斜めの方向から軸方向位置検出用の検出光を照射した場合に、被検眼Eからの反射光は、種々の組織から発生し得る。例えば、角膜の上皮、実質、内皮のそれぞれから反射光が発生し得る。一方、反射光の強度は、組織によって大きく異なる。角膜の上皮からの反射は、涙液からの反射になるため、他の組織と比較して非常に強い反射となる。一方、角膜の内皮からの反射光の強度は、一般的には、上皮からの反射よりも小さい。
【0042】
図5Aに示す例において、ピークP1は内皮からの反射光、ピークP2は上皮からの反射光である。なお、ラインセンサ44によって検出可能な反射光の強度範囲は特定の範囲であり、反射光の強度が特定の範囲の上限値を超える場合、検出値は上限値となる。図5Aに示す例においては、ピークP1,P2ともに上限値を超える強度で検出されているため、ピークの中央は上限値でフラットになっている。図5Aは、正常眼の例であり、内皮からの反射光のピークP1、上皮からの反射光のピークP2ともに正常に検出された例である。
【0043】
図5Aにおいては、角膜の内皮からの反射光のピークP1が合焦位置と一致している。従って、この状態で、角膜撮像光学系による撮像が行われると、CCD28によって合焦した状態で角膜の内皮の画像を撮像することができる。
【0044】
以上のように角膜の内皮が合焦した状態から、ヘッド106がZ方向に移動されると、ラインセンサ44によって検出される反射光のプロファイルが変化する。当該変化を説明するため、ここで、任意の物体を光軸12aに沿って移動させることを想定する。本実施形態においては、光軸14a(16a)の光軸12aに対する傾斜角と、光軸18a(20a)の光軸12aに対する傾斜角とが、ともにαで一致している(図1参照)。従って、任意の物体を光軸12aに沿って移動させた場合の反射光の検出値は、物体が角膜撮像光学系において合焦した状態である場合に最大値となり、合焦した状態から離れるほど反射光の検出値が小さくなる。
【0045】
図5Aは、角膜の内皮が角膜撮像光学系において合焦した状態にある例を示しているため、合焦位置に内皮からの反射光のピークP1が存在するが、ヘッド106がZ方向に少しずれると、ピークP1は急激に減衰し、検出されない状態となり得る。一方、上皮からの反射光の強度は非常に強いため、角膜の上皮が角膜撮像光学系において合焦していなくても、上皮からの反射光のピークP2はラインセンサ44にて検出され得る。図5Aに示す例において、上皮からの反射光のピークP2は合焦位置に存在しないが、反射光の強度が非常に強いため、合焦位置に存在しない上皮からの反射光がラインセンサ44にて検出され、しかも、強度が上限値を超えるピークP2を形成している。
【0046】
図5Bは、角膜の内皮が角膜撮像光学系において合焦した状態にない例を示している。図5Bに示す例においては、角膜の内皮からの反射光は、合焦位置よりも図5Bにおいて左側の位置で検出され得るが、内皮からの反射光の強度が小さく、ピークとして現れていない。図5Bに示す例は、被検眼Eが異常眼である場合の例であるが、内皮からの反射光のピークが合焦位置からのずれによって不明瞭になる状況は、異常眼において顕著に表れやすい。
【0047】
図5Cは、角膜の内皮が角膜撮像光学系において合焦した状態にある例を示している。但し、図5Cに示す例において、被検眼Eは、角膜内皮移植後の目である。図5Cに示す例においては、角膜の内皮からの反射光が合焦位置においてピークP1を形成している。しかし、図5Cに示す例においては、ピークP1とピークP2の間に、移植された組織による影響で発生するピークP3が現れている。図5Cに示す例において、ピークP3の最大値はピークP1の最大値より大きい。従って、単に反射光の強度から内皮からの反射光を検出しようとすると、内皮以外の組織からの反射光を内皮からの反射光として誤検出してしまう可能性がある。
【0048】
以上のように、本実施形態においては、被検眼Eの状態によって、内皮からの反射光を検出できない可能性があり、また、内皮以外の組織からの反射光によって内皮からの反射光を誤検出する可能性がある。そこで、本実施形態においては、被検眼Eの状態によって内皮の検出が不安定にならないように処理が行われる。
【0049】
上述のステップS115は、このための処理の一部である。まず、制御部117は、上皮の位置+目標距離となる位置を特定する。目標距離は、内皮が存在し得る範囲で設定される。具体的には、前眼部撮像光学系12の光軸12aに沿った方向において、角膜の内皮は、角膜の上皮よりも前房側の所定範囲内に存在する。図6Aは、当該所定範囲を説明するための図である。図6Aは、被検眼Eの角膜付近を拡大して示す図であり、光軸12aと内皮Ce1および上皮Ce2との関係が模式的に示されている。
【0050】
図6Aに示す例において、光軸12a上の上皮Ce2の位置は位置Pc2であり、光軸12a上の内皮Ce1の位置は位置Pc1である。ヒトの眼の大きさは個人によって異なり得るが、統計的に、上皮と内皮との距離は所定範囲内にあると考えられる。図6Aにおいては、当該所定範囲を符号Z1として示している。所定範囲Z1は、Z方向において、上皮Ce2の位置Pc2に対して距離Lminを加えた位置(Pc2+Lmin)から、上皮Ce2の位置Pc2に対して距離Lmaxを加えた位置(Pc2+Lmax)までの範囲である。
【0051】
ヒトの角膜の内皮は、この所定範囲Z1に存在すると考えられるため、本実施形態においては、当該所定範囲Z1が予め特定され、当該所定範囲Z1を規定するための値として、上皮Ce2の位置Pc2からの距離の最小値Lminおよび最大値Lmaxが予め特定されている。最小値Lminおよび最大値Lmaxは限定されないが、例えば、最小値Lminを300μm、最大値Lmaxを900μmとすることができる。
【0052】
本実施形態においては、当該所定範囲Z1内の所定の位置が、角膜撮像光学系において合焦するように、ヘッド106の位置を移動させ、移動後にラインセンサ44が受光した結果に基づいて、内皮Ce1からの反射光の検出を試行する。当該試行において内皮Ce1からの反射光が検出されない場合、角膜撮像光学系において合焦する所定の位置を所定範囲Z1内で変更し、再度試行を行う。
【0053】
上述の式(上皮の位置+目標距離)における目標距離は、角膜撮像光学系において合焦する所定の位置を所定範囲Z1内で変化させるための値である。目標距離を変化させるための処理は、種々の処理を採用可能であるが、ここでは、目標距離がLminからLmaxまで予め決められた距離毎に変化し、Lmaxまで達すると、再度目標距離がLmaxからLminまで予め決められた距離毎に変化する例を想定する。
【0054】
このため、撮像処理においてステップS115が初めて実行された場合、制御部117は、目標距離を初期値に設定して上皮の位置+目標距離を設定する。ヘッド106のZ方向への移動に応じて、光軸12a上の物体からの反射光がラインセンサ44上で受光される位置が変化する程度は予め特定されており、光軸12a上での距離とラインセンサ44上での距離は予め対応付けられている。
【0055】
そこで、制御部117は、ラインセンサ44の検出結果に基づいて、上皮ピーク位置を特定する。上皮ピーク位置の特定は、種々の手法によって実現可能である。例えば、制御部117が、ラインセンサ44の検出値を参照し、検出値が閾値を超えている検出素子の位置を特定する。さらに、制御部117は、検出値が閾値を超えている位置が既定の幅以上である場合に、当該ピークを上皮からの反射光のピークとみなす。そして、制御部117は、当該ピークの中央位置を上皮からの反射光のピークP2の位置と見なす。なお、既定の幅は、内皮からの反射光が形成するピークの幅よりも大きく、上皮からの反射光が形成するピークの幅よりも小さい値であり、予め設定される。なお、上皮からの反射光を特定するための手法は、上述の手法に限定されず、例えば、検出値が閾値を超えるピークの中で、最も角膜頂点側にあるピークが上皮からの反射光と見なされる構成等が採用されてもよい。
【0056】
図6Bは、ステップS115においてラインセンサ44で検出される検出値を、合焦位置付近について示す図である。この例において、上皮からの反射光のピークP2の位置は、合焦位置ではない。また、内皮からの反射光が検出される位置は合焦位置ではないため、内皮からの反射光は明示的に現れていない。
【0057】
上述のように、光軸12a上での距離とラインセンサ44上での距離は対応付けられているため、制御部117は、(上皮の位置+目標距離)に存在する物体からの反射光がラインセンサ44において受光される際の位置Piを、上皮からの反射光のピークP2の位置に基づいて特定することができる。すなわち、制御部117は、目標距離に相当するラインセンサ44上の距離を、上皮からの反射光のピークP2の位置に加えた値を位置Piとする。例えば、目標距離が初期値であるとすると、位置Piは、図6Bに示すように、上皮からの反射光のピークP2の位置から、目標距離に相当するラインセンサ44上の距離Lsminだけ左に移動した位置が位置Piである。なお、図6Bに示す例において、Z方向の正方向は左方向である。次に、制御部117は、ラインセンサ44上での位置Piと合焦位置との差分を特定し、当該差分に相当する光軸12a上での距離を特定する。そして、制御部117は、Z軸駆動機構116を制御し、当該距離だけヘッド106を移動させる。この結果、上皮の位置+目標距離が合焦した状態になるようにZアライメントが行われる。
【0058】
次に、制御部117は、ラインセンサ44の出力を前房側から走査する(ステップS120)。具体的には、制御部117は、ラインセンサ44が受光した受光結果を前房側から上皮側に向けて参照していき、ラインセンサ44上の各位置での検出値と予め決められた閾値とを比較する。図5A図5Cには、閾値Thが例示されている。図5A図5Cに示すグラフにおいて、前房側は位置軸の左側である。従って、制御部117は、グラフの左側から右側に向けて順に各位置の検出値を特定し、閾値と比較する。閾値は、内皮からの反射光の強度を検出するために予め決められた反射光の下限値である。
【0059】
閾値より大きい検出値が検出された場合、制御部117は、さらに、各位置の検出値を右側に走査してピークを特定する。ピークは種々の手法で特定されて良く、例えば、検出値の極大値がピークと見なされる構成を採用可能である。ピークが特定されると、制御部117は、ピークの位置を特定する。ピークの位置が特定されると、制御部117は、ラインセンサ44の出力に基づく走査を続ける。目標距離がLmin~Lmaxの範囲であれば、上皮からの反射光のピークは、ラインセンサ44上で検出される。従って、以上の処理によれば、少なくとも上皮ピークは特定される。
【0060】
上皮ピークより前房側において、上皮ピーク以外にピークが特定された場合、制御部117は、最も前房側に存在するピークを内皮ピークとして特定する。例えば、図5A図5Cに示す例であれば、ピークP1が内皮ピークとして特定される。図5Bに示す例であれば、内皮ピークは特定されない。
【0061】
次に、制御部117は、内皮ピークが特定されたか否か判定する(ステップS125)。すなわち、制御部117は、ステップS120の処理により、内皮ピークが特定されなかった場合には、ステップS130を実行し、内皮ピークが特定された場合には、ステップS140を実行する。
【0062】
ステップS125において内皮ピークが特定されなかった場合、制御部117は、ステップS130において、上皮の位置+目標距離の位置が角膜撮像光学系において合焦する状態になっているか否かを確認する。具体的には、制御部117は、目標距離に相当するラインセンサ44上の距離を特定し、ラインセンサ44上の上皮からの反射光のピークP2の位置に当該距離を加えた位置を特定する。そして、制御部117は、特定された位置が、ラインセンサ44上の合焦位置である場合に、上皮の位置+目標距離の位置が角膜撮像光学系において合焦した状態になっているとみなす。
【0063】
例えば、目標距離がLminであり、当該目標距離に相当するラインセンサ44上の距離がLsminである場合、制御部117は、上皮からの反射光のピークP2の位置+Lsminが合焦位置であるか否かを判定する。本実施形態においては、ステップS115において、上皮の位置+目標距離の位置が合焦した状態になるようにZアライメントを行うが、ステップS130においては、当該Zアライメントが適正に完了したか否かを確認していることになる。
【0064】
この処理は、被検眼Eの固視微動等に対する対策のために導入されている。すなわち、被検眼Eにおいて固視微動が発生すると、上皮の位置が変動し得る。従って、固視微動による位置変動の影響を受けた状態でステップS115において上皮からの反射光のピークP2の位置が特定された場合、その後、上皮からの反射光のピークP2の位置は変動し得る。このため、ステップS115においてZアライメントが行われた段階と、その後にラインセンサ44で検出が行われた段階との間で固視微動による変動の影響が生じると、意図通りのZアライメントが行われたか否か不明になる。
【0065】
そこで、本実施形態において制御部117は、ステップS130において、上皮の位置+目標距離の位置が角膜撮像光学系において合焦する状態になっているか否かを確認する。ステップS130において、上皮の位置+目標距離の位置が角膜撮像光学系において合焦した状態になっていると判定されない場合、制御部117は、再度、ステップS115を繰り返す。この処理によれば、固視微動の影響で一時的に内皮のピークが特定できない状態になったとしても、再度の試行により内皮のピークを特定できる可能性を高めることができる。例えば、1回目のステップS120において図5Bに示す例のように内皮のピークが不明確であったとしても、固視微動による影響を受けていたのであれば、再度の試行の際には内皮のピークが特定される可能性がある。
【0066】
一方、ステップS130において、上皮の位置+目標距離の位置が角膜撮像光学系において合焦した状態になっていると判定された場合、制御部117は、目標距離を変更して(ステップS135)、ステップS115以降の処理を繰り返す。なお、本実施形態において、目標距離の変更幅は、上述のように予め決められた距離である。当該距離は限定されないが、例えば、50μm等が挙げられる。Lminが300μm、Lmaxが900μm、目標距離の変更幅が50μmである場合、ステップS135が繰り返し実行されると、目標距離は、300,350,400と変化していき、900に達すると、再度、850,800と変化していく。予め決められた距離毎に位置を変動させる構成によれば、簡易な処理によって走査を行うことができる。
【0067】
ステップS125において内皮ピークが特定された場合、制御部117は、内皮ピークが合焦位置付近に存在するか否かを判定する(ステップS140)。すなわち、制御部117は、ステップS125で特定された内皮ピークの位置と合焦位置との差分を算出し、差分が閾値以下である場合に、内皮ピークが合焦位置付近に存在すると判定する。なお、閾値は、内皮ピークが合焦位置に充分近いか否かを判定するための値として予め決められた値であり、本実施形態においては、ステップS135における目標距離の変更幅と同一である。
【0068】
ステップS140において、内皮ピークが合焦位置付近に存在すると判定されない場合、制御部117は、ステップS130以降の処理を行う。すなわち、固視微動による影響を受けていれば、目標距離を変更することなくステップS115以降の処理を繰り返し、固視微動による影響を受けていなければ、目標距離を変更してステップS115以降の処理を繰り返す。
【0069】
ステップS140において、内皮ピークが合焦位置付近に存在すると判定された場合、制御部117は、内皮ピークが合焦位置になるようにZアライメントを行う(ステップS145)。すなわち、制御部117は、ラインセンサ44上の合焦位置と、角膜の内皮からの反射光がラインセンサ44において受光される位置と、を一致させるようにヘッド106を移動させる。具体的には、制御部117は、ラインセンサ44の検出結果に基づいて内皮ピークの位置を特定し、特定された内皮ピークの位置と、合焦位置との差分を特定し、ラインセンサ上の当該差分に相当する光軸12a上での距離を特定する。そして、制御部117は、Z軸駆動機構116を制御し、当該距離だけヘッド106を移動させる。この結果、角膜の内皮が角膜撮像光学系において合焦した状態になるようにZアライメントが行われる。
【0070】
Zアライメントが行われると、制御部117は、Z方向のトラッキングを開始する(ステップS150)。すなわち、制御部117は、ステップS145におけるアライメントを継続的に繰り返すことにより、Zアライメントを常時実行する。なお、ステップS115~S140の処理によって、合焦位置付近に存在する内皮ピークが見つかった後においては、容易に継続して内皮ピークをトラッキングすることが可能である。以上の処理によれば、角膜撮像光学系が角膜の内皮に合焦した状態が継続して維持された状態になる。制御部117は、この状態で撮像を行う(ステップS155)。すなわち、制御部117は、画像処理回路122から出力され、記憶装置124に記憶されている画像データを取得し、撮像データを示すファイルとして記憶装置124に保存する。
【0071】
以上の構成においては、ラインセンサが受光した角膜からの反射光の中で、被検眼の前房に最も近いピークを内皮からの反射光とみなしている。従って、例えば、図5Cに示すように角膜からの反射光の検出結果が複雑な形状であっても、内皮からの反射光を特定できる可能性を高めることができる。
【0072】
また、ラインセンサ44において内皮からの反射光を検出できない場合には、内皮からの反射光を検出できるまで、所定範囲内でヘッド106を移動させて内皮からの反射光の検出を試行する。このため、内皮からの反射光が検出しづらい被検眼Eであっても、当該反射光を見つけられる可能性が高くなり、内皮を撮像できる可能性が高くなる。
【0073】
(2)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、上述した実施形態では、装置光学系10を構成する各々の光学系(装置光学系10、前眼部撮像光学系12、角膜照明光学系14、軸方向位置検出光学系16、軸方向照明光学系18、角膜検出光学系20)は一体として移動させられることから、角膜撮像光学系(角膜照明光学系14および角膜検出光学系20)と、前眼部撮像光学系12との相対位置関係は常に一定であったが、本発明の実施形態はこれに限られない。例えば、角膜撮像光学系と前眼部撮像光学系とは別個に移動が可能であってもよく、このような形態においては、相対位置関係は常に一定でない。
【0074】
さらに、Z方向のトラッキングやXY方向のトラッキングにおいて追従する対象は、上述の実施形態と異なっていてもよい。例えば、内皮ピーク位置として検出された位置に対してオフセットが与えられた位置に対して追従するような構成が採用されてもよい。オフセットは、種々の手法で特定されて良く、例えば、ユーザがオフセットを入力可能であっても良い。
【0075】
オフセットは、Z方向、XY方向のいずれに対して与えられても良い。図7は、ユーザによってZ方向のオフセットを入力可能な構成における撮像処理のフローチャートである。当該構成は、上述の実施形態において、図4に示す撮像処理を図7に示す撮像処理に変更することによって実現可能である。
【0076】
図7において、図4に示す撮像処理と同様の処理は、共通の符号で示している。図7における撮像処理は、ステップS150,S155の間にステップS200~S220が実行される点で、図4に示す撮像処理と異なっている。図7に示す実施例において、Z方向のオフセットであるZオフセットは、内皮のライブ表示中に入力可能である。このため、制御部117は、ステップS150においてZ方向のトラッキングを開始した後、内皮のライブ表示を行う(ステップS200)。すなわち、制御部117は、XY方向およびZ方向のトラッキングが行われている状態において、画像処理回路122から出力され、記憶装置124に記憶されている画像データを取得し、ディスプレイ110に表示させる。
【0077】
また、この際、制御部117は、ユーザにZオフセットを入力させるための画面をディスプレイ110に表示させる。図8は、ディスプレイ110に表示される画面の例を示す図である。図8に示す例においては、角膜の内皮の画像Icが画面の左側にライブ表示されている。また、画面の右側には、ユーザによる入力を受け付けるユーザインタフェースが表示されている。
【0078】
Zオフセットを入力するためのユーザインタフェースは、画面の右上に表示されており、Z方向の正方向におけるオフセット量を入力するためのボタンBfと、Z方向の負方向におけるオフセット量を入力するためのボタンBbと、が含まれている。また、ユーザインタフェースには、Zオフセットの量を正負の値によってμmの単位で表示する表示ボックスBvが含まれている。さらに、画面の下部には、撮像指示を行うための撮像指示ボタンBiが含まれている。
【0079】
制御部117は、当該インタフェースを介してZオフセットの指定を受け付ける(ステップS205)。すなわち、ユーザがボタンBfまたはボタンBbにタッチすると、制御部117は、タッチされた時間長に応じてZ方向にオフセットさせる距離の値を増減させる。制御部117は、オフセットされる距離の値を、正の値または負の値として受け付け、表示ボックスBvに表示させる。
【0080】
次に、制御部117は、オフセットを与えた位置にZアライメントさせる(ステップS210)。具体的には、制御部117は、ステップS205で受け付けたZオフセットの距離に相当するラインセンサ44上の距離をセンサ上のオフセット距離として特定する。なお、オフセット距離は正または負の値である。また、制御部117は、ラインセンサ44の検出結果に基づいて内皮ピークの位置を特定する。さらに、制御部117は、特定された内皮ピークの位置に対してセンサ上のオフセット距離を加えた位置と、合焦位置との差分を特定し、ラインセンサ上の当該差分に相当する光軸12a上での距離を特定する。そして、制御部117は、Z軸駆動機構116を制御し、当該距離だけヘッド106を移動させる。
【0081】
この結果、ラインセンサ44上の合焦位置に、Zオフセット対応したオフセットを与えた位置と、内皮ピーク位置と、が一致するようにヘッド106がZ方向に移動され、ユーザが入力したZオフセットに相当する距離だけZ方向にオフセットされた位置が角膜撮像光学系において合焦した状態になるようにZアライメントが行われる。
【0082】
Zアライメントが行われると、制御部117は、Z方向のトラッキングを開始する(ステップS215)。すなわち、制御部117は、ステップS210におけるアライメントを継続的に繰り返すことにより、Zアライメントを常時実行する。以上の処理によれば、角膜の内皮にZオフセットが与えられた位置に、角膜撮像光学系が合焦した状態が継続して維持される。
【0083】
次に、制御部117は、ユーザが撮像指示を行ったか否か判定する(ステップS220)。すなわち、制御部117は、ユーザが撮像指示ボタンBiに対してタッチした場合に、撮像指示を行ったと判定する。ステップS220において、ユーザが撮像指示を行ったと判定されない場合、制御部117は、ステップS200以降の処理を繰り返す。なお、ステップS200以降の処理が繰り返されている状態において、Zオフセットが新たに指定されなければ、直前に指定されたZオフセットに基づいて、Z方向のトラッキングおよび内皮のライブ表示が継続して実行される。
【0084】
一方、ステップS220において、ユーザが撮像指示を行ったと判定された場合、制御部117は、撮像を行う(ステップS155)。すなわち、制御部117は、ユーザによる撮像指示後に画像処理回路122から出力され、記憶装置124に記憶された画像データを取得し、撮像データを示すファイルとして記憶装置124に保存する。以上の構成によれば、例えば、内皮のピークが誤検出されており、内皮に合焦していない状態が維持されるようにステップS145におけるZアライメントが行われていたとしても、ユーザは、Zオフセットを指定することにより、内皮に合焦した状態となるように修正することができる。
【0085】
図9は、ユーザによってXY方向のオフセットを入力可能な構成における撮像処理のフローチャートである。当該構成は、上述の実施形態において、図4に示す撮像処理を図9に示す撮像処理に変更することによって実現可能である。
【0086】
図9において、図4に示す撮像処理と同様の処理は、共通の符号で示している。図9における撮像処理は、ステップS150,S155の間にステップS300~S320が実行される点で、図4に示す撮像処理と異なっている。図9に示す実施例において、XY方向のオフセットであるXYオフセットは、内皮のライブ表示中に入力可能である。このため、制御部117は、ステップS150においてZ方向のトラッキングを開始した後、内皮のライブ表示を行う(ステップS300)。すなわち、制御部117は、XY方向およびZ方向のトラッキングが行われている状態において、画像処理回路122から出力され、記憶装置124に記憶されている画像データを取得し、ディスプレイ110に表示させる。
【0087】
また、この際、制御部117は、ユーザにXYオフセットを入力させるためのユーザインタフェースをディスプレイ110に表示させる。図8には、XYオフセットを入力するためのユーザインタフェースも含まれている。XYオフセットを入力するためのユーザインタフェースは、画面の右下に表示されている。すなわち、ユーザインタフェースには、ライブ表示されている角膜の内皮の画像Icを基準として、撮像位置をX方向の左側、右側へオフセットさせる量を入力するためのボタンBl、Brと、角膜の内皮の画像Icを基準として、撮像位置をY方向の上側、下側へオフセットさせる量を入力するためのボタンBu、Bd、が含まれている。
【0088】
制御部117は、当該インタフェースを介してXYオフセットの指定を受け付ける(ステップS305)。すなわち、ユーザがボタンBl,Br,Bu,Bdにタッチすると、制御部117は、タッチされた時間長に応じて各方向にオフセットさせる距離の値を増減させる。制御部117は、オフセットされる距離の値を、各方向に対応した値として受け付ける。
【0089】
次に、制御部117は、オフセットを与えた位置にXYアライメントさせる(ステップS310)。図10は、XYアライメントの前後左右が図面上の上下左右に該当するような状態でアライメント検出センサ88の撮像素子側の面を見た状態を模式的に示した図である。
【0090】
ステップS105においては、被検眼Eの角膜頂点からの反射光が、既定の位置P0において受光されるようにXYアライメントが行われている。一方、ステップS310において、制御部117は、ユーザが指定した距離だけオフセットを与えた位置にXYアライメントする。本実施形態においては、ヘッド106の移動距離と、アライメント検出センサ88上における角膜頂点からの反射光の移動距離と、は予め対応付けられている。
【0091】
そこで、制御部117は、ステップS305で受け付けたXYオフセットの方向および距離に相当するアライメント検出センサ88上の距離をセンサ上の方向および距離として特定する。図10においては、ユーザによって指定されたX方向右側へのオフセットに対応するアライメント検出センサ88上の距離が距離Lr、Y方向下側へのオフセットに対応するアライメント検出センサ88上の距離が距離Ldである例が想定されている。この場合、制御部117は、アライメント検出センサ88上で、既定の位置P0に対してX方向右側に距離Lr、Y方向下側に距離Ldのオフセットを与えた位置と、角膜頂点からの反射光が受光される位置と、の差分を特定し、アライメント検出センサ88の当該差分に相当するヘッド106の移動距離および移動方向を特定する。そして、制御部117は、X軸駆動機構112、Y軸駆動機構114の少なくとも一方を制御し、当該移動方向に、当該移動距離だけヘッド106を移動させる。
【0092】
この結果、既定の位置P0にXYオフセットに相当するオフセットを与えた位置と、角膜頂点からの反射光の位置と、が一致するようにヘッド106がXY方向に移動され、ユーザが入力したXYオフセットに相当する距離だけXY方向にオフセットされた位置がライブ表示された状態になるようにXYアライメントが行われる。
【0093】
XYアライメントが行われると、制御部117は、XY方向のトラッキングを開始する(ステップS315)。すなわち、制御部117は、ステップS310におけるアライメントを継続的に繰り返すことにより、XYアライメントを常時実行する。以上の処理によれば、XYオフセットが与えられた位置がライブ表示された状態が継続して維持される。
【0094】
次に、制御部117は、ユーザが撮像指示を行ったか否か判定する(ステップS320)。すなわち、制御部117は、ユーザが撮像指示ボタンBiに対してタッチした場合に、撮像指示を行ったと判定する。ステップS320において、ユーザが撮像指示を行ったと判定されない場合、制御部117は、ステップS300以降の処理を繰り返す。なお、ステップS300以降の処理が繰り返されている状態において、XYオフセットが新たに指定されなければ、直前に指定されたXYオフセットに基づいて、XY方向のトラッキングおよび内皮のライブ表示が継続して実行される。
【0095】
一方、ステップS320において、ユーザが撮像指示を行ったと判定された場合、制御部117は、撮像を行う(ステップS155)。すなわち、制御部117は、ユーザによる撮像指示後に画像処理回路122から出力され、記憶装置124に記憶された画像データを取得し、撮像データを示すファイルとして記憶装置124に保存する。以上の構成によれば、例えば、診断等において着目したい部位が角膜中心からずれた位置に存在するとしても、ユーザは、XYオフセットを指定することにより、所望の位置を撮像できるように撮像対象を修正することができる。ここでは、ZオフセットとXYオフセットのそれぞれを指定可能な実施形態を説明したが、むろん、Zオフセット、XYオフセットの双方が実行可能であっても良い。
【0096】
角膜撮像光学系は、被検眼をスリット光によって照明して角膜を撮像する光学系であればよい。すなわち、角膜撮像光学系は、スリット光の光源と、角膜で反射された反射光を画像化する角膜撮像素子と、を含む。むろん、角膜撮像光学系には、種々の光学部品が含まれていても良い。角膜撮像光学系は、上述の実施形態以外にも種々の構成が採用されてよい。例えば、スリットの構成は上述の実施形態に限定されず、光源からの光が円形の部材に形成された矩形のスリットを通ることでスリット光が生成されても良い。むろん、角膜撮像光学系は、各種の測定を行うための光学系と部品が共有されていても良いし、共有されていなくても良い。
【0097】
スリット光は、ある幅を有し、幅方向に垂直な方向に幅方向よりも長い矩形状の光であればよい。スリット光の長手方向は、上下方向に限定されず、種々の向きのスリット光が用いられて良い。スリット光は、被検眼を通る所定の軸に対して傾斜した方向から被検眼に対して照射されれば良い。ここで、所定の軸は、被検眼を通る軸であれば良いが、例えば、被検眼の視線方向と一致する眼軸の方向として角膜内皮撮像装置において予め設定された軸が所定の軸となり得る。また、角膜内皮撮像装置が被検眼の前眼部を被検者の正面側から撮像する撮像光学系を有する場合には当該撮像光学系の光軸が所定の軸となり得る。所定の軸に対して傾斜した方向は、例えば、所定の軸に対して非平行な方向であればよく、上述の実施形態のような角度に限定されない。
【0098】
軸方向位置調整光学系は、被検眼を検出光によって照明し、被検眼の角膜からの反射光をラインセンサで受光する光学系であればよい。すなわち、軸方向位置調整光学系は、検出光を出力する軸方向位置検出光源と、角膜で反射された反射光を受光するラインセンサと、を含む。むろん、軸方向位置調整光学系には、種々の光学部品が含まれていても良い。軸方向位置調整光学系は、上述の実施形態以外にも種々の構成が採用されてよい。例えば、軸方向位置調整光学系は、各種の測定を行うための光学系と部品が共有されていても良いし、共有されていなくても良い。従って、軸方向位置調整光学系と角膜撮像光学系とは、少なくとも一部が共有されていても良いし、共有されていなくても良い。
【0099】
検出光は、被検眼、特に内皮を含む角膜からの反射光がラインセンサで検出され、ラインセンサ上の検出位置に基づいて、角膜内皮撮像装置と被検眼との軸方向における位置関係を特定できるような光であればよい。従って、検出光は、スリット光に限定されず、他の形状の光、例えば、楕円形、円形等の形状の検出光であっても良い。検出光は、被検眼を通る所定の軸に対して傾斜した方向から被検眼に対して照射されれば良い。所定の軸に対して傾斜した方向は、例えば、所定の軸に対して非平行な方向であり、上述の実施形態のような角度に限定されない。また、検出光とスリット光は、非平行な方向であっても良い。
【0100】
ラインセンサは、受光素子が所定の方向に並べられたセンサであり、角膜内皮撮像装置と被検眼との軸方向における位置関係が変化することにより、被検眼からの反射光が受光されるラインセンサ上の位置が変化するように構成されていれば良い。このため、ラインセンサは、所定の軸に対して傾斜した方向から照射される検出光の反射光を直接または間接的に撮像可能な光学系に配置されていれば良い。
【0101】
制御部は、角膜撮像光学系および軸方向位置調整光学系を所定の軸に沿った方向に移動させることができればよい。この構成は、例えば、角膜内皮撮像装置が、角膜撮像光学系および軸方向位置調整光学系を一体として所定の軸に沿った方向に移動させることが可能な機構を有することで実現される。この構成において制御部は、当該機構を制御し、角膜撮像光学系および軸方向位置調整光学系を一体として所定の軸に沿った方向に移動させる。
【0102】
角膜撮像光学系および軸方向位置調整光学系の位置が所定の軸に沿った方向に変化すると、検出光の反射光がラインセンサにおいて受光される位置が変化する。角膜撮像光学系において物体に合焦する場合における当該物体と角膜撮像光学系との位置関係は、角膜内皮撮像装置に対して角膜撮像光学系を組み付けることで確定する。このため、角膜撮像光学系において合焦した物体からの反射光がラインセンサにおいて受光される位置は、予め確定する。合焦位置は当該位置であれば良い。ラインセンサにおける検出結果から、角膜の内皮からの反射光の検出位置を特定すれば、反射光が受光された位置と合焦位置とが一致しているか否か判定可能である。このため、制御部は、角膜撮像光学系および軸方向位置調整光学系を所定の軸に沿って移動させることにより、両者を一致させるように制御することができる。
【0103】
また、制御部は、ラインセンサが受光した角膜からの反射光の中で、被検眼の前房に最も近いピークを内皮からの反射光とみなすことができればよい。制御部が、被検眼の前房に最も近いピークを探す際の処理は、上述の処理に限定されない。例えば、上皮側からピークを探していき、上皮から前房までの間で検出されたピークの中で、最も前房側に存在するピークを内皮からの反射光と見なす構成等であっても良い。
【0104】
垂直位置調整光学系は、被検眼を検出光によって照明し、被検眼の角膜からの反射光を2次元センサで受光する光学系であれば良い。すなわち、垂直位置調整光学系は、検出光を出力する垂直位置検出光源と、角膜で反射された反射光を受光する2次元センサと、を含む。むろん、垂直位置調整光学系には、種々の光学部品が含まれていても良い。垂直位置調整光学系は、上述の実施形態以外にも種々の構成が採用されてよい。例えば、垂直位置調整光学系は、各種の測定を行うための光学系と部品が共有されていても良いし、共有されていなくても良い。
【0105】
検出光は、角膜(角膜頂点)からの反射光が2次元センサで検出され、アライメント検出センサ上の検出位置に基づいて、角膜内皮撮像装置と被検眼との軸方向に垂直な方向における位置関係を特定できるような光であればよい。従って、検出光は、点状のスポット光に限定されず、他の形状の光、例えば、楕円形、円形、スリット状等の形状の検出光であっても良い。検出光は、被検眼を通る所定の軸に沿った方向から被検眼に対して照射されれば良い。
【0106】
2次元センサは、受光素子が2次元的に並べられたエリアセンサであり、角膜内皮撮像装置と被検眼との軸方向に垂直な方向における位置関係が変化することにより、被検眼からの反射光が受光される2次元センサ上の位置が変化するように構成されていれば良い。このため、2次元センサは、所定の軸に沿った方向から照射される検出光の反射光を直接または間接的に撮像可能な光学系に配置されていれば良い。
【0107】
制御部は、垂直位置調整光学系を所定の軸に垂直な方向に移動させることができればよい。この構成は、例えば、角膜内皮撮像装置が、角膜撮像光学系および垂直位置調整光学系を一体として所定の軸に沿った方向に移動させることが可能な機構を有することで実現される。この構成において制御部は、当該機構を制御し、角膜撮像光学系および垂直位置調整光学系を一体として所定の軸に沿った方向に移動させる。
【0108】
角膜撮像光学系および垂直位置調整光学系の位置が所定の軸に垂直な方向に変化すると、検出光の反射光が2次元センサにおいて受光される位置が変化する。このため、制御部は、角膜撮像光学系および垂直位置調整光学系を所定の軸に沿って移動させることにより、検出光の反射光が2次元センサにおいて受光される位置を既定の位置に一致させるように制御することができる。また、制御部は、検出光の反射光が2次元センサにおいて受光される位置が既定の位置に対して任意のオフセットを有するように制御することができる。
【0109】
所定の位置を変更させる際のピッチに相当する予め決められた距離は、一定距離に限定されず、変動しても良い。例えば、所定範囲の中央に近いほど小さい距離となるように目標距離の変更幅を予め決定し、当該距離毎にヘッド106を移動させても良い。また、ラインセンサ44の検出結果に基づいて内皮が存在する可能性があると推定される領域においては目標距離の変更幅を細かくし、内皮が存在する可能性が小さい領域については目標距離の変更幅を粗くしても良い。
【0110】
さらに、被検眼の前房に最も近いピークを内皮からの反射光とみなす手法等は、方法の発明としても適用可能である。また、以上のような角膜内皮撮像装置、方法は、単独の装置として実現される場合や、複数の機能を有する装置の一部として実現される場合が想定可能であり、各種の態様を含むものである。
【符号の説明】
【0111】
10…装置光学系、12…前眼部撮像光学系、12a…光軸、14…角膜照明光学系、14a…光軸、16…軸方向位置検出光学系、16a…光軸、18…軸方向照明光学系、18a…光軸、20…角膜検出光学系、20a…光軸、22…ハーフミラー、24…対物レンズ、26…ハーフミラー、27…コールドミラー、28…CCD、30…観察用光源、32…投影レンズ、34…コールドミラー、36…スリット、38…集光レンズ、40…撮像用光源、44…ラインセンサ、46…対物レンズ、48…コールドミラー、52…集光レンズ、54…調整用光源、56…スリット、58…変倍レンズ、60…合焦レンズ、64…固視標光学系、66…垂直照明光学系、68…投影レンズ、70…ハーフミラー、74…固視標光源、76…絞り、78…ピンホール板、80…集光レンズ、82…アライメント光源、84…垂直位置検出光学系、88…アライメント検出センサ、100…角膜内皮撮像装置、102…ベース、104…本体部、106…ヘッド、108…操作スティック、110…ディスプレイ、112…X軸駆動機構、114…Y軸駆動機構、116…Z軸駆動機構、117…制御部、118…XYアライメント検出回路、120…Zアライメント検出回路、122…画像処理回路、124…記憶装置、Bb…ボタン、Bd…ボタン、Bf…ボタン、Bi…撮像指示ボタン、Bl…ボタン、Br…ボタン、Bu…ボタン、Bv…表示ボックス、C…角膜、Ce1…内皮、Ce2…上皮、E…被検眼、Ic…画像
図1
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