(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157637
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】プロテクタ
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20241031BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20241031BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H02G3/04 087
H02G3/04 081
H02G3/04 062
F16L57/00 A
B60R16/02 623U
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072095
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】木村 光利
【テーマコード(参考)】
3H024
5G357
【Fターム(参考)】
3H024AA04
3H024AB02
3H024AC03
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DD05
5G357DD06
5G357DE03
5G357DE08
5G357DG04
(57)【要約】
【課題】車両組付時に立体形状となる場合にワイヤーハーネスの配索作業性を向上させるプロテクタを提供する。
【解決手段】プロテクタ1は、第1本体部20と、第1取付方向AD1で第1本体部20に取り付けられる第1カバー21とを有する第1筒体部10と、第2本体部30と、第2取付方向AD2で第2本体部30に取り付けられる第2カバー31とを有する第2筒体部11と、を備える。第1筒体部10の一端は、円筒状の内筒部22であり、第2筒体部11の一端は、内筒部22を内側で保持しつつ軸中心に回転させる外筒部32である。内筒部22の回転角度θは、第1取付方向AD1が第2取付方向AD2に沿う第1角度θ1と、第1取付方向AD1が第2取付方向AD2に沿わず、第1筒体部10及び第2筒体部11が各々車両に組み付けられるときの姿勢となる第2角度θ2との間で変化する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスを貫通させた状態で車両に組み付けられるプロテクタであって、
前記ワイヤーハーネスの一部を延伸方向の全体に亘る第1領域に収容する第1本体部と、前記第1領域を覆うように第1取付方向で前記第1本体部に取り付けられる第1カバーとを有する第1筒体部と、
前記ワイヤーハーネスの少なくとも前記第1本体部に収容されていない一部を延伸方向の全体に亘る第2領域に収容する第2本体部と、前記第2領域を覆うように第2取付方向で前記第2本体部に取り付けられる第2カバーとを有する第2筒体部と、を備え、
前記第1筒体部の前記延伸方向の一端は、円筒状の内筒部であり、
前記第2筒体部の前記延伸方向の一端は、前記内筒部を内側で保持しつつ軸中心に回転させる外筒部であり、
前記内筒部の回転角度は、前記第1取付方向が前記第2取付方向に沿う第1角度と、前記第1取付方向が前記第2取付方向に沿わず、前記第1筒体部及び前記第2筒体部が各々前記車両に組み付けられるときの姿勢となる第2角度との間で変化する、プロテクタ。
【請求項2】
前記内筒部の外周部又は前記外筒部の内周部の一方は、周方向に延伸しつつ他方に向かって突出するリブを有し、
前記内筒部の前記外周部又は前記外筒部の前記内周部の他方は、前記内筒部の回転方向に合わせて前記リブと係合する係合溝部を有し、
前記内筒部の前記リブ又は前記係合溝部は、前記内筒部の前記延伸方向での先端部に設けられる、請求項1に記載のプロテクタ。
【請求項3】
前記内筒部の外周部又は前記外筒部の内周部の一方は、他方に向かって突出する突起部を有し、
前記内筒部の前記外周部又は前記外筒部の前記内周部の他方は、前記突起部の一部を収容して前記突起部の移動を周方向の一定の範囲に規制する規制溝部を有し、
前記規制溝部の一方の端部である第1端部は、前記内筒部の前記回転角度が前記第1角度であるときに前記突起部が当接する位置にあり、
前記規制溝部の他方の端部である第2端部は、前記内筒部の前記回転角度が前記第2角度であるときに前記突起部が当接する位置にある、請求項1又は2に記載のプロテクタ。
【請求項4】
前記第2端部は、当接した前記突起部の一部を嵌め込ませる突起受け部を有する、請求項3に記載のプロテクタ。
【請求項5】
前記内筒部は、前記第1本体部の一部である第1半円筒部と、前記第1カバーの一部である第2半円筒部との組み合わせであり、
前記第1半円筒部の第1側端部は、一部が円筒壁の内部に周方向に沿って入り込むように前記内筒部の軸中心に沿って内周側又は外周側に切り欠き部を有し、
前記第2半円筒部の第2側端部は、前記周方向で前記第1側端部と対称な形状を有し、
前記第1側端部における前記切り欠き部に前記第2側端部の一部が係合し、前記第2側端部における切り欠き部に前記第1側端部の一部が係合する、請求項1又は2に記載のプロテクタ。
【請求項6】
前記内筒部の外周部に巻き付けられるバンド部と、当該バンド部の一端を支持し、前記バンド部の他端を挿入させてロックするヘッド部とを有する結束バンドを備え、
前記外筒部の内周部は、前記ヘッド部の一部を収容して前記ヘッド部の移動を周方向の一定の範囲に規制する規制溝部を有し、
前記規制溝部の前記周方向での一方の端部は、前記内筒部の前記回転角度が前記第1角度であるときに前記ヘッド部が当接する位置にあり、
前記規制溝部の前記周方向での他方の端部は、前記内筒部の前記回転角度が前記第2角度であるときに前記ヘッド部が当接する位置にある、請求項5に記載のプロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の内部に配索されるワイヤーハーネスを収容して保護するプロテクタがある。特許文献1は、第1筒体部としての第1プロテクタと、第2筒体部としての第2プロテクタとを備えるプロテクタに関する技術を開示している。第1プロテクタと第2プロテクタとでは、敷設される配索経路の延伸方向が三次元で異なるため、車両組付時の全体形状は、いわゆる立体形状となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているプロテクタでは、第1プロテクタが車室の側面パネルに敷設され、第2プロテクタが、側面パネルに隣接する床面パネルに敷設されるため、車両組付時の立体形状は、簡易的である。しかし、立体形状を有するプロテクタは、このような簡易的なものだけでなく、車両側で要求される形状、金型成立性、金型費用、又は、ワイヤーハーネスの配索作業性などの各種要件に起因して、各々延伸方向が複雑化した複数の筒体部を備える場合もある。この場合、筒体部ごとにカバーの取付方向が大きく異なる。そのため、車両組付前のプロテクタへのワイヤーハーネスの配索では、作業者は、筒体部ごとに、カバーを外し、各々の筒体部への配索に適した個別の治具に受け直しさせた上で寸法出しを行う必要が生じ得る。したがって、ワイヤーハーネスを配索させたプロテクタを最終的な立体形状とするまでの配索作業性には難がある。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、車両組付時に立体形状となる場合にワイヤーハーネスの配索作業性を向上させるプロテクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、ワイヤーハーネスを貫通させた状態で車両に組み付けられるプロテクタであって、ワイヤーハーネスの一部を延伸方向の全体に亘る第1領域に収容する第1本体部と、第1領域を覆うように第1取付方向で第1本体部に取り付けられる第1カバーとを有する第1筒体部と、ワイヤーハーネスの少なくとも第1本体部に収容されていない一部を延伸方向の全体に亘る第2領域に収容する第2本体部と、第2領域を覆うように第2取付方向で第2本体部に取り付けられる第2カバーとを有する第2筒体部と、を備え、第1筒体部の延伸方向の一端は、円筒状の内筒部であり、第2筒体部の延伸方向の一端は、内筒部を内側で保持しつつ軸中心に回転させる外筒部であり、内筒部の回転角度は、第1取付方向が第2取付方向に沿う第1角度と、第1取付方向が第2取付方向に沿わず、第1筒体部及び第2筒体部が各々車両に組み付けられるときの姿勢となる第2角度との間で変化する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両組付時に立体形状となる場合にワイヤーハーネスの配索作業性を向上させるプロテクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】第1実施形態に係るプロテクタの斜視図である。
【
図1B】
図1Aに示すプロテクタの裏面側を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る配索時のプロテクタの斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る車両組付時のプロテクタの斜視図である。
【
図4A】第1実施形態における配索時の筒体結合部の斜視図である。
【
図4B】第1実施形態における車両組付時の筒体結合部の斜視図である。
【
図5A】
図1AのVA-VAに対応した筒体結合部の断面図である。
【
図5B】
図1AのVB-VBに対応した筒体結合部の断面図である。
【
図6】
図5AのVI-VIに対応した筒体結合部の断面図である。
【
図7A】第1実施形態における配索時の第1規制部の斜視図である。
【
図7B】第1実施形態における車両組付時の第1規制部の斜視図である。
【
図8】第1規制部を構成する突起部を含む内筒部の斜視図である。
【
図9】第1規制部を構成する規制溝部を含む外筒部の斜視図である。
【
図10A】
図5AのXA-XAに対応した配索時の第1規制部の断面図である。
【
図11A】第2実施形態における配索時の第2規制部の断面図である。
【
図11B】第2実施形態における車両組付時の第2規制部の断面図である。
【
図12A】第3実施形態における配索時の筒体結合部の断面図である。
【
図13】第4実施形態における結束バンドの斜視図である。
【
図14A】第4実施形態における配索時の第3規制部の断面図である。
【
図14B】第4実施形態における車両組付時の第3規制部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて各実施形態に係るプロテクタについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0010】
(第1実施形態)
図1Aは、第1実施形態に係るプロテクタ1の斜視図である。
図1Bは、
図1Aに示すプロテクタ1の裏面側を示す斜視図である。
【0011】
プロテクタ1は、例えば合成樹脂製であり、ワイヤーハーネス100(
図2及び
図3参照)を貫通させて保護しつつ、自動車等の車両の内部に予め設定された位置に組み付けられる。プロテクタ1は、第1筒体部10と、第2筒体部11とを備える。
【0012】
第1筒体部10は、第1本体部20と、第1カバー21とを有する。
【0013】
第1本体部20は、ワイヤーハーネス100の一部を延伸方向の全体に亘る第1領域R1に収容する。第1本体部20の全体形状は、車両の内部におけるワイヤーハーネス100の配索経路に合わせて長細い。本実施形態では、第1本体部20の延伸方向は、一定の方向ではなく、配索経路上のいくつかの途中地点で緩やかな屈曲を繰り返すような方向である。第1本体部20は、底壁20aと、互いに対向するような位置関係にある2つの側壁20bと、複数の爪部20cと、車両の一部と接続される車両接続部とを有する。
【0014】
2つの側壁20bは、それぞれ、底壁20aに対して垂直となる姿勢で、底壁20aの側端部と連続する。したがって、第1本体部20では、延伸方向と垂直な横断面の形状が略U字形となり、内部には、底壁20aと対向する領域が外部に開放される第1領域R1が形成される。
【0015】
複数の爪部20cは、2つの側壁20bにおける、底壁20aと連続する側とは反対側の各々の端部に、適宜、間隔をおいて設けられる。爪部20cは、第1本体部20に第1カバー21が取り付けられたときに、第1カバー21に設けられている係合穴部21aと係合することで、第1本体部20に対して第1カバー21を保持させる。
【0016】
第1本体部20における車両接続部は、第1接続部23である。第1接続部23は、例えば、1つの側壁20bから突出するように設けられた片部を含む。片部の中央部分には、第1ボルト穴23aが形成されている。作業者がプロテクタ1を車両の所定の位置に組み付ける際には、不図示の取付ボルトを第1ボルト穴23aに貫通させつつ車両側の壁部に締結させる。なお、第1本体部20における車両接続部の具体的な位置又は設置数などは、車両側で要求される形状に基づいて、適宜設定される。
【0017】
なお、第1本体部20は、ワイヤーハーネス100の構成に合わせて、全体形状に係る延伸方向の両端の開口部以外に、ワイヤーハーネス100の枝線を外部に露出させる分岐口部を1つ以上有してもよい。本実施形態では、1つの側壁20bに、第1分岐口部24が設けられている。
【0018】
第1カバー21は、第1領域R1を覆うように第1本体部20に取り付けられる。上記のとおり、第1カバー21は、第1本体部20に設けられている爪部20cを係合させる複数の係合穴部21aを有する。以下、第1カバー21が第1本体部20に取り付けられる方向を第1取付方向AD1と規定する。第1カバー21が第1本体部20に取り付けられることで、第1筒体部10は、第1領域R1をワイヤーハーネス100が配置される内部空間とする筐体となる。
【0019】
第2筒体部11は、第2本体部30と、第2カバー31とを有する。
【0020】
第2本体部30は、ワイヤーハーネス100の少なくとも第1本体部20に収容されていない一部を延伸方向の全体に亘る第2領域R2に収容する。第2本体部30の全体形状は、車両の内部におけるワイヤーハーネス100の配索経路に合わせて長細い。本実施形態では、第2本体部30の延伸方向は、一定の方向ではなく、配索経路上のいくつかの途中地点で大きな屈曲を繰り返し、長手方向全体として半環状に屈曲するような方向である。第2本体部30は、底壁30aと、互いに対向するような位置関係にある2つの側壁30bと、複数の爪部30cと、車両の一部と接続される車両接続部とを有する。
【0021】
2つの側壁30bは、それぞれ、底壁30aに対して垂直となる姿勢で、底壁30aの側端部と連続する。したがって、第2本体部30では、延伸方向と垂直な横断面の形状が略U字形となり、内部には、底壁30aと対向する領域が外部に開放される第2領域R2が形成される。
【0022】
複数の爪部30cは、2つの側壁30bにおける、底壁30aと連続する側とは反対側の各々の端部に、適宜、間隔をおいて設けられる。爪部30cは、第2本体部30に第2カバー31が取り付けられたときに、第2カバー31に設けられている係合穴部31aと係合することで、第2本体部30に対して第2カバー31を保持させる。
【0023】
第2本体部30における車両接続部は、第2接続部33及び第3接続部34である。第2接続部33及び第3接続部34も、第1接続部23と同様に、例えば、1つの側壁30bから突出するように設けられた片部を含む。第2接続部33を構成する片部の中央部分には、第2ボルト穴33aが形成されている。第3接続部34を構成する片部の中央部分には、第3ボルト穴34aが形成されている。作業者がプロテクタ1を車両の所定の位置に組み付ける際には、不図示の取付ボルトを第2ボルト穴33a及び第3ボルト穴34aに貫通させつつ車両側の壁部に締結させる。なお、第2本体部30における車両接続部の具体的な位置又は設置数なども、車両側で要求される形状に基づいて、適宜設定される。
【0024】
なお、第2本体部30も、ワイヤーハーネス100の構成に合わせて、全体形状に係る延伸方向の両端の開口部以外に、ワイヤーハーネス100の枝線を外部に露出させる分岐口部を1つ以上有してもよい。
【0025】
第2カバー31は、第2領域R2を覆うように第2本体部30に取り付けられる。上記のとおり、第2カバー31は、第2本体部30に設けられている爪部30cを係合させる複数の係合穴部31aを有する。以下、第2カバー31が第2本体部30に取り付けられる方向を第2取付方向AD2と規定する。第2カバー31が第2本体部30に取り付けられることで、第2筒体部11は、第2領域R2をワイヤーハーネス100が配置される内部空間とする筐体となる。
【0026】
また、プロテクタ1は、第1筒体部10と第2筒体部11との結合部分が回転することで、配索時と車両組付時とで変形する。
【0027】
図2は、配索時のプロテクタ1の斜視図である。
図3は、車両組付時のプロテクタ1の斜視図である。
図2及び
図3では、ワイヤーハーネス100の一部が概略的に円柱状に示されている。
【0028】
配索時とは、作業者が、車両組付時の前に、プロテクタ1にワイヤーハーネス100を配索させる作業時をいう。配索時には、第1カバー21及び第2カバー31が第1本体部20又は第2本体部30から取り外された状態にある。第1本体部20と第2本体部30とは、後述する筒体結合部12の一部で結合された状態で、平板状の治具200における調整面200a上に載置される。このとき、第1本体部20に関する第1取付方向AD1と、第2本体部30に関する第2取付方向AD2とは、
図2に示すように、互いに沿う。
【0029】
一方、車両組付時とは、作業者が、ワイヤーハーネス100が配索されたプロテクタ1を車両に組み付ける作業時をいう。車両組付時、第1筒体部10は、第2筒体部11に対して回転軸ARを中心軸として回転した状態となる。このとき、第1筒体部10と第2筒体部11とでは、敷設される配索経路の延伸方向が三次元で大きく異なり、プロテクタ1の全体形状は、いわゆる立体形状となる。したがって、第1取付方向AD1と第2取付方向AD2とは、
図3に示すように、互いに沿わない。
【0030】
ここで、以下の説明のために、各方向を次のように規定する。Z方向は、鉛直方向に沿う。X方向及びY方向は、Z方向に対して垂直な水平面上で互いに垂直である。特に、X方向は、回転軸ARと平行である。
【0031】
また、プロテクタ1は、第1筒体部10と第2筒体部11との結合部分としての筒体結合部12を有する。
【0032】
図4Aは、プロテクタ1が配索時の姿勢にあるときの筒体結合部12を示す斜視図である。
図4Bは、プロテクタ1が車両組付時の姿勢にあるときの筒体結合部12を示す斜視図である。
図4A及び
図4Bでは、筒体結合部12の内部を視認するために、第2本体部30から第2カバー31が取り外された状態が示されている。
図5Aは、
図1AのVA-VAに対応し、回転軸ARを通るXY平面で切断された、筒体結合部12の断面図である。
図5Bは、
図1AのVB-VBに対応し、回転軸ARを通るXZ平面で切断された、筒体結合部12の断面図である。
図6は、
図5AのVI-VIに対応し、後述する規制溝部46を含まない位置でのYZ平面で切断された、筒体結合部12の断面図である。
【0033】
筒体結合部12は、第1筒体部10の一部である内筒部22と、第2筒体部11の一部である外筒部32(
図6参照)との組み合わせである。内筒部22は、第1筒体部10の延伸方向の一端に設けられた円筒状の部分である。外筒部32は、第2筒体部11の延伸方向の一端に設けられ、内筒部22を内側で保持しつつ、回転軸ARを中心に回転させる部分である。つまり、筒体結合部12は、第2筒体部11に対して第1筒体部10を回転させる回転機構でもある。
【0034】
内筒部22は、第1本体部20に形成されている第1半円筒部20dと、第1カバー21に形成されている第2半円筒部21bとの組み合わせである。内筒部22は、円筒状であるので、内筒部22の外周部22aの横断面の形状は、真円である。内筒部22の内周部22cで囲まれた領域は、第1領域R1の一部として、ワイヤーハーネス100を貫通させる。
【0035】
外筒部32は、第2本体部30に形成されている第1支持部30dと、第2カバー31に形成されている第2支持部31bとの組み合わせである。外筒部32の内周部32aは、
図6に示すように、第1支持部30dにおいてYZ平面に沿って連続する真円状の内壁部と、第2支持部31bにおいてYZ平面に沿って断続的な先端部とで構成される。第1支持部30dにおける内壁部の内面形状は、内筒部22の外周部22aの外面形状とおおよそ合う。第2支持部31bは、例えば、交線がZ方向に沿ういくつかの補強壁の組み合わせで構成される。この場合、内周部32aを構成する第2支持部31bの先端部は、補強壁の先端でもある。外筒部32は、横断面の形状が真円である内筒部22の外周部22aを内周部32aに接触させることで、内筒部22を回転自在に保持する。
【0036】
ここで、内筒部22の回転角度θは、第1角度θ1と第2角度θ2との間で変化する。第1角度θ1は、第1取付方向AD1が第2取付方向AD2に沿い、プロテクタ1が配索時の姿勢にあるときの角度である。本実施形態では、第1角度θ1は、第1取付方向AD1が第2取付方向AD2に沿うときの角度であるから、内筒部22が回転していないときの角度とみなすことができるので、おおよそ0°である。第2角度θ2は、第1取付方向AD1が第2取付方向AD2に沿わず、プロテクタ1すなわち第1筒体部10及び第2筒体部11が各々車両組付時の姿勢にあるときの角度である。
【0037】
また、筒体結合部12では、内筒部22の外周部22aは、周方向に延伸しつつ外筒部32の内周部32aに向かって突出するリブ40を有する。一方、外筒部32の内周部32aは、内筒部22の回転方向に合わせてリブ40と係合する係合溝部41を有する。
【0038】
リブ40は、第1半円筒部20dに設けられている第1半環部40aと、第2半円筒部21bに設けられている第2半環部40bとの組み合わせであり、全体として、回転軸ARをおおよその中心軸とした環状である。本実施形態では、互いに同一形状で、内筒部22の延伸方向で互いに離間した2つのリブ40が存在する。これらのリブ40は、内筒部22の延伸方向での先端部22bに設けられている。
【0039】
係合溝部41は、本実施形態では、外筒部32の第1支持部30dの全周に亘って形成され、内筒部22が回転軸ARを中心として回転するようにリブ40を案内する。また、2つのリブ40に合わせて、互いに同一形状で、外筒部32の延伸方向で互いに離間した2つの係合溝部41が存在する。
【0040】
更に、筒体結合部12は、内筒部22の回転角度θを第1角度θ1と第2角度θ2との範囲に規制する第1規制部13を有する。
【0041】
図7Aは、配索時の第1規制部13の斜視図である。
図7Bは、車両組付時の第1規制部13の斜視図である。
図8は、突起部45を含む内筒部22の斜視図である。
図9は、規制溝部46を含む外筒部32の斜視図である。
図10Aは、
図5AのXA-XAに対応し、規制溝部46を含む位置でのYZ平面で切断された、配索時の第1規制部13の断面図である。
図10Bは、
図10Aと比較される車両組付時の第1規制部13の断面図である。
【0042】
第1規制部13は、突起部45と、規制溝部46とで構成される。
【0043】
突起部45は、外筒部32の内周部32aに向かって突出するように、内筒部22の外周部22aに設けられる。
【0044】
規制溝部46は、突起部45の一部を収容して、突起部45の移動を周方向の一定の範囲に規制するように、外筒部32の内周部32aを一部に含む底壁30a及び側壁30bに設けられる。本実施形態では、規制溝部46は、第2本体部30の内側と外側とで貫通している。規制溝部46において、突起部45の移動方向に沿った方向での一方の端部である第1端部46aは、
図10Aに示すように、内筒部22の回転角度θが第1角度θ1であるときに突起部45が当接する位置にある。一方、規制溝部46において、突起部45の移動方向に沿った方向での他方の端部である第2端部46bは、
図10Bに示すように、内筒部22の回転角度θが第2角度θ2であるときに、突起部45が当接する位置にある。
【0045】
次に、プロテクタ1を車両に組み付けるまでの流れについて説明する。
【0046】
作業者は、車両にプロテクタ1を組み付ける前に、プロテクタ1にワイヤーハーネス100を配索させる作業を実施する。
図2を参照すると、作業者は、まず、第1取付方向AD1と第2取付方向AD2とが互いに沿うように、すなわち、内筒部22の回転角度θが第1角度θ1となるように、プロテクタ1を治具200の調整面200a上に載置する。本実施形態では、第1取付方向AD1と第2取付方向AD2とは、共にZ方向に沿う。次に、作業者は、第1カバー21及び第2カバー31を第1本体部20又は第2本体部30から取り外す。このとき、プロテクタ1では、第1本体部20の第1領域R1全体が外部に開放される方向と、第2本体部30の第2領域R2全体が外部に開放される方向とが、共にZ方向に沿った方向となる。したがって、第1本体部20及び第2本体部30は、第1領域R1と第2領域R2との各々の開放方向を同方向としつつ、水平面である調整面200a上に安定して保持されることになる。なお、第1本体部20及び第2本体部30がこのように保持されるときのプロテクタ1の全体形状を、立体形状を3D形状と呼称し得るのに対して、平面形状を意味する2D形状と呼称することもできる。
【0047】
そして、作業者は、ワイヤーハーネス100を第1取付方向AD1及び第2取付方向AD2に沿って第1領域R1又は第2領域R2に配置する。その後、作業者は、
図2に示すように、ワイヤーハーネス100のうち第1領域R1に配索すべき第1配線部100aの寸法出しを実施する。引き続き、作業者は、プロテクタ1の姿勢を変更することなく、ワイヤーハーネス100のうち第2領域R2に配索すべき第2配線部100bの寸法出しを実施する。最後に、作業者は、第1本体部20に第1カバー21を取り付けると共に、第2本体部30に第2カバー31を取り付けることで、配索作業を終了する。
【0048】
次に、作業者は、ワイヤーハーネス100を配索させたプロテクタ1を、車両の所定の位置に組み付ける作業を実施する。
図3を参照すると、作業者は、まず、配索時の平面形状にあるプロテクタ1に対して、第2筒体部11の姿勢を維持させながら、回転軸ARを中心として第1筒体部10を回転させて、プロテクタ1を車両組付時の立体形状に変形させる。本実施形態では、筒体結合部12において、第1規制部13により内筒部22の回転角度θが第1角度θ1と第2角度θ2との範囲に規定されている。したがって、作業者は、単に、突起部45が第2端部46bに当接するまで第1筒体部10を回転させるだけで、プロテクタ1を所望の立体形状に変形させることができる。
【0049】
そして、作業者は、立体形状となったプロテクタ1を車両の所定の位置に合わせた上で、第1接続部23、第2接続部33及び第3接続部34を各々に対応する車両内の固定部に接続させることで、車両組付作業を終了する。
【0050】
次に、プロテクタ1の効果について説明する。
【0051】
プロテクタ1は、ワイヤーハーネス100を貫通させた状態で車両に組み付けられる。プロテクタ1は、ワイヤーハーネス100の一部を延伸方向の全体に亘る第1領域R1に収容する第1本体部20と、第1領域R1を覆うように第1取付方向AD1で第1本体部20に取り付けられる第1カバー21とを有する第1筒体部10を備える。また、プロテクタ1は、ワイヤーハーネス100の一部を延伸方向の全体に亘る第2領域R2に収容する第2本体部30と、第2領域R2を覆うように第2取付方向AD2で第2本体部30に取り付けられる第2カバー31とを有する第2筒体部11を備える。第2領域R2に収容されるワイヤーハーネス100の一部は、少なくとも第1本体部20に収容されていない一部である。第1筒体部10の延伸方向の一端は、円筒状の内筒部22である。第2筒体部11の延伸方向の一端は、内筒部22を内側で保持しつつ軸中心に回転させる外筒部32である。内筒部22の回転角度θは、第1取付方向AD1が第2取付方向AD2に沿う第1角度θ1と、第1取付方向AD1が第2取付方向AD2に沿わず、第1筒体部10及び第2筒体部11が各々車両に組み付けられるときの姿勢となる第2角度θ2との間で変化する。
【0052】
例えば、プロテクタ1を車両に組み付けるときの全体形状が、上記例示のように、各部の延伸方向が三次元で複雑に異なるような立体形状である場合を想定する。立体形状にあるプロテクタ1では、第1取付方向AD1と第2取付方向AD2とが大きく異なる。
【0053】
この場合、プロテクタ1では、ワイヤーハーネス100を第1領域R1及び第2領域R2に配索させるときには、第1取付方向AD1が第2取付方向AD2に沿う姿勢、すなわち、内筒部22の回転角度θが第1角度θ1となる姿勢に変形される。このとき、プロテクタ1は、このような平面形状にある姿勢で、治具200の調整面200a上に安定して保持される。そのため、作業者は、第1領域R1と第2領域R2との双方に対するワイヤーハーネス100の各部の寸法出しを、プロテクタ1の姿勢を変更することなく、一時に実施することができる。そして、作業者は、プロテクタ1を車両に組み付けるときには、第1筒体部10を回転させて、内筒部22の回転角度θが第2角度θ2となる姿勢に変形させるだけで、プロテクタ1を所望の立体形状とすることができる。
【0054】
ここで、比較例として、本実施形態に係るプロテクタ1の車両組付時の立体形状と同等の立体形状を有するプロテクタが従来存在し、従来の当該プロテクタが、プロテクタ1が有するような回転機構を有さない場合を想定する。この場合、従来のプロテクタの全体形状は、
図3に示すような筒体部ごとにカバーの取付方向が大きく異なる立体形状で一定である。したがって、配索時には、作業者は、まず、第1筒体部10に相当する部分を第1の治具に受けさせることで第1取付方向をZ方向に沿わせて、配索作業の第1の工程を実施する。次に、作業者は、第1筒体部10に連結させた第2筒体部11に相当する部分を第2の治具に受けさせることで第2取付方向をZ方向に沿わせて、配索作業の第2の工程を実施する。つまり、この比較例における配索時には、第2の治具による筒体部の受け直しが発生するため、配索作業が複雑化する。
【0055】
この比較例に対して、本実施形態に係るプロテクタ1によれば、配索時において、第2の治具を用いた受け直しを伴う工程が発生しないので、配索作業が単純化される。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、車両組付時に立体形状となる場合にワイヤーハーネス100の配索作業性を向上させるプロテクタ1を提供することができる。また、上記の比較例では、配索時に筒体部の受け直しがあるために複数の治具を要するのに対して、プロテクタ1によれば、配索時に要する治具の数を減らすことができるので、例えば、製造コストを削減させることもできる。
【0057】
また、プロテクタ1では、内筒部22の外周部22a又は外筒部32の内周部32aの一方は、周方向に延伸しつつ他方に向かって突出するリブを有してもよい。内筒部22の外周部22a又は外筒部32の内周部32aの他方は、内筒部22の回転方向に合わせてリブと係合する係合溝部を有してもよい。内筒部22のリブ又は係合溝部は、内筒部22の延伸方向での先端部22bに設けられてもよい。
【0058】
ここで、上記の各図を用いた例示では、内筒部22の外周部22aがリブ40を有し、外筒部32の内周部32aが係合溝部41を有する。
【0059】
このプロテクタ1によれば、リブ40と係合溝部41とが互いに回転自在に係合していることで、第1筒体部10と第2筒体部11との間でのズレ、傾き又は意図しない変形を抑制しつつ、第1筒体部10を第2筒体部11に対して円滑に回転させることができる。また、プロテクタ1によれば、リブ40が内筒部22の先端部22bに設けられているので、例えば、第1筒体部10と第2筒体部11とを結合させるに際して、係合溝部41にリブ40を位置決めしやすい点で有利である。
【0060】
なお、上記の各図を用いた例示とは異なり、内筒部22の外周部22aが係合溝部を有し、外筒部32の内周部32aがリブを有するものとしても、同様の効果を奏する。この場合、内筒部22の延伸方向での先端部22bには、上記例示のリブ40に代わる係合溝部が設けられることになる。
【0061】
また、プロテクタ1では、内筒部22の外周部22a又は外筒部32の内周部32aの一方は、他方に向かって突出する突起部を有してもよい。内筒部22の外周部22a又は外筒部32の内周部32aの他方は、突起部の一部を収容して突起部の移動を周方向の一定の範囲に規制する規制溝部を有してもよい。規制溝部の一方の端部である第1端部は、内筒部22の回転角度θが第1角度θ1であるときに突起部が当接する位置にあってもよい。規制溝部の他方の端部である第2端部は、内筒部22の回転角度θが第2角度θ2であるときに突起部が当接する位置にあってもよい。
【0062】
ここで、上記の各図を用いた例示では、内筒部22の外周部22aが突起部45を有し、外筒部32の内周部32aが規制溝部46を有する。また、規制溝部46の一方の端部が第1端部46aであり、規制溝部46の他方の端部が第2端部46bである。
【0063】
このプロテクタ1によれば、内筒部22の回転角度θが、第1端部46aに突起部45が当接する第1角度θ1と、第2端部46bに突起部45が当接する第2角度θ2との範囲に規制される。したがって、作業者は、単に、第1端部46a又は第2端部46bのいずれかに突起部45が当接するまで第1筒体部10を回転させるだけで、プロテクタ1の全体形状を配索時の平面形状又は車両組付時の立体形状のいずれかに、容易に変形させることができる。また、内筒部22の回転角度θの範囲が規定されることで、例えば、第2筒体部11に対して第1筒体部10が過剰に回転し、プロテクタ1の内部でワイヤーハーネス100が過剰にねじれてしまうなどの状態を予め回避させることができる。
【0064】
なお、上記の各図を用いた例示とは異なり、内筒部22の外周部22aが規制溝部を有し、外筒部32の内周部32aが突起部を有するものとしても、同様の効果を奏する。
【0065】
(第2実施形態)
第1実施形態では、内筒部22の回転角度θを第1角度θ1と第2角度θ2との範囲に規制する規制部として、突起部45と規制溝部46とで構成される第1規制部13を例示した。これに対して、第2実施形態では、プロテクタ1が、このような第1規制部13に代わる第2規制部51を有する場合を例示する。
【0066】
図11Aは、配索時の第2規制部51の断面図である。
図11Bは、車両組付時の第2規制部51の断面図である。
図11A及び
図11Bは、第1実施形態に関する
図10A及び
図10Bと同様に、
図5AのXA-XAに対応し、後述する規制溝部56を含む位置でのYZ平面で切断された図である。
【0067】
本実施形態に係るプロテクタ1は、第1実施形態における筒体結合部12に代わる筒体結合部50を有する。筒体結合部50は、突起部55と規制溝部56とで構成される第2規制部51を有する。
【0068】
筒体結合部50は、第1実施形態における内筒部22に代わる内筒部53を有する。なお、内筒部53の外周部53aの横断面の形状も真円である。内筒部53では、第1カバー21に形成されている第2半円筒部21bを有する点は内筒部22と同様であるが、第1本体部20に形成されている第1半円筒部52が、第1実施形態における突起部45に代わる突起部55を有する点で内筒部22と異なる。突起部55の先端部は、比較的鋭利に形成されている。
【0069】
また、筒体結合部50は、第1実施形態における第2本体部30に代わる第2本体部54に、外筒部の一部を構成する。この場合、外筒部の一部は、第2本体部54を構成する底壁54a及び2つの側壁54bの一部に設定され、本実施形態では、第1実施形態における規制溝部46に代わる規制溝部56を有する。
【0070】
規制溝部56は、突起部55の一部を収容して、突起部55の移動を周方向の一定の範囲に規制する。本実施形態でも、規制溝部56は、第2本体部54の内側と外側とで貫通している。規制溝部56において、突起部55の移動方向に沿った方向での一方の端部である第1端部56aは、
図11Aに示すように、内筒部53の回転角度θが第1角度θ1であるときに突起部55が当接する位置にある。一方、規制溝部56において、突起部55の移動方向に沿った方向での他方の端部である第2端部56bは、
図11Bに示すように、内筒部53の回転角度θが第2角度θ2であるときに、突起部55が当接する位置にある。
【0071】
ここで、本実施形態では、規制溝部56において、第2端部56bは、突起部55が当接したときに、突起部55の一部を嵌め込ませる突起受け部56cを有する。突起受け部56cは、例えば、突起部55の先端部の形状に合わせて、当該先端部の一部を嵌め込ませる切り欠き部である。突起受け部56cの形状は、少なくとも、突起部55の一部を嵌め込ませた後、突起部55が第1端部56aの側に戻ることを抑止し得る形状である。
【0072】
このように、本実施形態に係るプロテクタ1では、第2端部56bは、当接した突起部55の一部を嵌め込ませる突起受け部56cを有してもよい。
【0073】
本実施形態によれば、突起部55は、突起受け部56cに嵌め込まれることで第2端部56bに当接した状態に維持されるので、第1筒体部10は、小さな外力を受けただけでは回転することができない、いわゆるロック状態となる。したがって、作業者によるプロテクタ1へのワイヤーハーネス100の配索が終了し、第1筒体部10を回転させてプロテクタ1を立体形状に変形させた後、プロテクタ1に当該立体形状を維持させることができる。これにより、例えば、配索作業と車両組付作業とが各々別の場所で実施される場合には、作業者は、配索作業が終了したプロテクタ1を、車両組付作業が実施される場所に立体形状の状態で納入させることができる。このような納入手法によれば、車両組付作業が実施される場所において、プロテクタ1の回転位置合わせ等の作業を行う必要がない。
【0074】
(第3実施形態)
第1実施形態では、内筒部22を構成する第1半円筒部20dと第2半円筒部21bとは、周方向で、側端部同士で接触するが、各々の側端部における接触面が単なる平面状である場合を例示した。これに対して、第3実施形態では、プロテクタ1が、このような内筒部22に代わる内筒部61を有する場合を例示する。
【0075】
図12Aは、第3実施形態における配索時の筒体結合部60の断面図である。
図12Aは、第1実施形態に関する
図6と同様に、
図5AのVI-VIに対応し、規制溝部46を含まない位置でのYZ平面で切断された図である。
図12Bは、
図12AのXIIBに対応した筒体結合部60の一部拡大図である。
【0076】
本実施形態に係るプロテクタ1は、第1実施形態における筒体結合部12に代わる筒体結合部60を有する。筒体結合部60における内筒部61は、第1本体部20の一部である第1半円筒部62aと、第1カバー21の一部である第2半円筒部62bとの組み合わせである。なお、筒体結合部60における内筒部61以外の構成は、筒体結合部12の対応構成と同一である。
【0077】
内筒部61は、第1半円筒部62aの第1側端部63と第2半円筒部62bの第2側端部64とが周方向での2箇所で接触することで、全体として円筒状となる。ここで、第1側端部63は、一部が円筒壁の内部に周方向に沿って入り込むように内筒部61の回転軸ARの方向に沿って内周側又は外周側に切り欠き部63aを有する。同様に、第2側端部64は、一部が円筒壁の内部に周方向に沿って入り込むように内筒部61の回転軸ARの方向に沿って内周側又は外周側に切り欠き部64aを有する。このとき、第1側端部63と、当該第1側端部63と接触する第2側端部64とは、周方向で互いに対称な形状を有する。そして、切り欠き部63aに第2側端部64の一部が係合し、切り欠き部64aに第1側端部63の一部が係合することで、内筒部61が構成される。
【0078】
このように、本実施形態に係るプロテクタ1では、内筒部61は、第1本体部20の一部である第1半円筒部62aと、第1カバー21の一部である第2半円筒部62bとの組み合わせであってもよい。第1半円筒部62aの第1側端部63は、一部が円筒壁の内部に周方向に沿って入り込むように内筒部61の軸方向に沿って内周側又は外周側に切り欠き部63aを有してもよい。第2半円筒部62bの第2側端部64は、周方向で第1側端部63と対称な形状を有してもよい。第1側端部63における切り欠き部63aに第2側端部64の一部が係合し、第2側端部64における切り欠き部64aに第1側端部63の一部が係合してもよい。
【0079】
本実施形態によれば、内筒部61において、第1側端部63と第2側端部64とが、単に平面状の接触面同士で接触するのではなく、互いに係合する形状で接触する。したがって、内筒部61は、第1半円筒部62aと第2半円筒部62bとの間でのズレ、傾き又は意図しない変形を抑制し、内筒部61の外周部61aの真円形状を維持させることができるので、常時、円滑に回転することができる。
【0080】
(第4実施形態)
第1実施形態では、内筒部22の回転角度θを第1角度θ1と第2角度θ2との範囲に規制する規制部として、内筒部22に形成された突起部45を含む第1規制部13を例示した。これに対して、第4実施形態では、プロテクタ1が、このような第1規制部13に代わる第3規制部71を有する場合を例示する。
【0081】
図13は、第4実施形態における結束バンド72の斜視図である。
図14Aは、配索時の第3規制部71の断面図である。
図14Bは、車両組付時の第3規制部71の断面図である。
図14A及び
図14Bは、第1実施形態に関する
図10A及び
図10Bと同様に、
図5AのXA-XAに対応し、規制溝部46を含む位置でのYZ平面で切断された図である。
【0082】
本実施形態に係るプロテクタ1は、第1実施形態における筒体結合部12に代わる筒体結合部70を有する。筒体結合部70は、一例として、第3実施形態で例示した内筒部61を含む。ただし、本実施形態における内筒部61は、第1実施形態で例示した突起部45又は第2実施形態で例示した突起部55のような突起部を予め有さない。なお、筒体結合部70における外筒部32の構成は、筒体結合部12の対応構成と同一である。
【0083】
筒体結合部70では、内筒部61の外周部61aに、周方向に沿って結束バンド72が取り付けられる。結束バンド72は、ヘッド部72aと、バンド部72bとを有する。ヘッド部72aは、内筒部61の外周部61aに巻き付けられたバンド部72bの一端を支持し、バンド部72bの他端を挿入させてロックする。バンド部72bは、ヘッド部72aに設けられている孔部72cに差し込まれると、バンド部72bの裏面に予め形成されているセレーションが孔部72cの不図示の爪に引っ掛かり、緩まることなくヘッド部72aに固定される。そして、結束バンド72は、第1実施形態における突起部45が設けられていた位置にヘッド部72aが配置されるように、外周部61aに取り付けられる。つまり、第3規制部71は、結束バンド72のヘッド部72aと規制溝部46とで構成され、ヘッド部72aが、第1実施形態における突起部45と同様に機能することになる。
【0084】
このように、本実施形態に係るプロテクタ1は、内筒部61の外周部61aに巻き付けられるバンド部72bと、当該バンド部72bの一端を支持し、バンド部72bの他端を挿入させてロックするヘッド部72aとを有する結束バンド72を備えてもよい。外筒部32の内周部32aは、ヘッド部72aの一部を収容してヘッド部72aの移動を周方向の一定の範囲に規制する規制溝部46を有してもよい。規制溝部46の一方の端部である第1端部46aは、内筒部61の回転角度θが第1角度θ1であるときにヘッド部72aが当接する位置にあってもよい。規制溝部46の他方の端部である第2端部46bは、内筒部61の回転角度θが第2角度θ2であるときにヘッド部72aが当接する位置にあってもよい。
【0085】
本実施形態によれば、第1実施形態に係るプロテクタ1と同様の効果を奏する。また、円筒部の構成を第3実施形態における内筒部61と同様としつつ、内筒部61の外周部61a全体に結束バンド72が取り付けられることで、第1半円筒部62aと第2半円筒部62bとの間でのズレ、傾き又は意図しない変形をより抑制することができる。更に、結束バンド72は、内筒部61に対する取り付け及び取り外しが容易である。したがって、配索時又は車両組付時の使用用途に応じて、外周部61a上でのヘッド部72aの位置を適宜変更することで、内筒部61の回転角度θが規制される範囲を調整させることができる。
【0086】
以上、各実施形態を説明したが、各実施形態はこれらに限定されるものではなく、実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 プロテクタ
10 第1筒体部
11 第2筒体部
20 第1本体部
21 第1カバー
22,53,61 内筒部
22a,53a 外周部
22b 先端部
30,54 第2本体部
31 第2カバー
32 外筒部
32a 内周部
40 リブ
41 係合溝部
45,55 突起部
46,56 規制溝部
46a,56a 第1端部
46b,56b 第2端部
56c 突起受け部
61a 外周部
62a 第1半円筒部
62b 第2半円筒部
63 第1側端部
64 第2側端部
63a,64a 切り欠き部
72 結束バンド
72a ヘッド部
72b バンド部
100 ワイヤーハーネス
100a 第1配線部
100b 第2配線部
AD1 第1取付方向
AD2 第2取付方向
AR 回転軸
R1 第1領域
R2 第2領域
θ 回転角度
θ1 第1角度
θ2 第2角度