(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157640
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】軟質部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
B43K 3/00 20060101AFI20241031BHJP
B43K 23/08 20060101ALI20241031BHJP
B43K 8/02 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
B43K3/00 H
B43K23/08 130
B43K8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072099
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 智哉
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350GA04
2C350KF01
2C350KF03
2C350KF05
(57)【要約】
【課題】軟質部材の取付作業が容易となる軟質部材の取付構造を提供する。
【解決手段】筆記具5を構成する筒体1は前後方向に貫通する内孔11を備える。内孔11は段差状の筒体段部14を備える。内孔11は内面に内側嵌合部12を備える。軟質部材ユニット4は軟質部材3と嵌合部材2とからなる。軟質部材ユニット4は段差状のユニット段部41を備える。ユニット段部41の外径は筒体段部14の内径より大きく設定される。嵌合部材2は軟質部材3とは異なる材料から形成される。嵌合部材2は外面に外側嵌合部21を備える。軟質部材3に嵌合部材2が嵌合することにより軟質部材ユニット4が形成される。内孔11の後端から軟質部材3の後端が後方に突出し、筒体段部14とユニット段部41とが当接し、内側嵌合部12と外側嵌合部21とが嵌合することにより、筒体1に軟質部材3が取り付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具の軸筒又はキャップを構成する筒体の後端に軟質部材ユニットを取り付ける軟質部材の取付構造であって、
前記筒体は前後方向に貫通する内孔を備え、
前記内孔は段差状の筒体段部を備え、
前記内孔は内面に内側嵌合部を備え、
前記軟質部材ユニットは軟質部材と嵌合部材とからなり、
前記軟質部材ユニットは段差状のユニット段部を備え、
前記ユニット段部の外径は前記筒体段部の内径より大きく設定され、
前記軟質部材は、弾性材料により形成され、熱変色性の筆跡の表面を擦って該筆跡を熱変色させる摩擦変色部材であり、
前記嵌合部材は前記軟質部材とは異なる材料から形成され、
前記嵌合部材は外面に、前記内側嵌合部と嵌合する外側嵌合部を備え、
前記軟質部材に前記嵌合部材が嵌合することにより前記軟質部材ユニットが形成され、
前記内孔の後端から前記軟質部材の後端が後方に突出し、前記筒体段部と前記ユニット段部とが当接し、前記内孔の前記内側嵌合部と前記嵌合部材の前記外側嵌合部とが嵌合することにより、前記筒体に前記軟質部材が取り付けられることを特徴とする軟質部材の取付構造。
【請求項2】
前記筒体の前記内孔に、径方向内方に突出する内向突起が設けられ、
前記筒体段部が前記内向突起の前方に設けられ、
前記外側嵌合部より後方の前記軟質部材ユニットの外径は前記内側嵌合部の内径より小さく設定され、
前記筒体段部の前端と前記ユニット段部の後端とが当接することを特徴とする請求項1に記載の軟質部材の取付構造。
【請求項3】
前記筒体の前記内孔に、径方向内方に突出する内向突起が設けられ、
前記筒体段部が前記内向突起の後方に設けられ、
前記外側嵌合部より前方の前記軟質部材ユニットの外径は前記内側嵌合部の内径より小さく設定され、
前記筒体段部の後端と前記ユニット段部の前端とが当接することを特徴とする請求項1に記載の軟質部材の取付構造。
【請求項4】
前記軟質部材は取付孔を備え、前記取付孔には径方向内方に突出する係止段部が設けられ、
前記嵌合部材は径方向外方に突出する係止突起を備え、
前記係止段部と前記係止突起とが抜け止め係止されることにより、前記軟質部材ユニットが形成され、
前記軟質部材ユニットにおいて、前記係止突起の径方向外方の前記軟質部材の外径は前記筒体の内径と略同一に設定され、
前記軟質部材ユニットが前記筒体に取り付けられた状態で、前記筒体の径方向内方に前記係止突起が位置することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の軟質部材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質部材の取付構造に関する。詳細には、筆記具の軸筒又はキャップを構成する筒体の上端部に軟質部材を取り付ける軟質部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、筆記具本体を構成する筒体の後端に突出部材が後方より前方に挿入嵌着され、筒体の内面と気密嵌合する栓体が、筒体の内面に前方より後方に挿入嵌着される筆記具が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、キャップ本体の後端にヘッド部材が後方より前方に挿入嵌着され、キャップ本体の内面に、ペン先を密封する内キャップが前方より後方に挿入嵌着される筆記具用キャップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2009-106070号公報
【特許文献2】特願2008-143367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2の筆記具において、突出部材(ヘッド部材)の外向突起が筒体(キャップ本体)の内向突起を前後方向に乗り越えることで突出部材が筒体に取り付けられている。外向突起が内向突起を乗り越えるため、外向突起のサイズには限度があり、軟質部材の嵌合力をさらに高めることは困難となるおそれがあった。
【0006】
また、特許文献1及び特許文献2の筆記具において、突出部材は筒体の後方から装着し、栓体(内キャップ)は筒体の前方から装着する必要があるため、組立工程が増加し、筆記具の組立に時間がかかるおそれがあった。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、取付作業が容易であり、且つ軟質部材が筒体から外れ難い軟質部材の取付構造を提供しようとするものである。本発明において、筒体が筆記具の軸筒である場合は、「前」とはペン先側を指し、「後」とはその反対側を指す。筒体がキャップである場合は、「前」とはキャップの開口側(即ちペン先挿入側)を指し、「後」とはその反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の発明は、筆記具の軸筒又はキャップを構成する筒体の後端に軟質部材ユニットを取り付ける軟質部材の取付構造であって、
前記筒体は前後方向に貫通する内孔を備え、
前記内孔は段差状の筒体段部を備え、
前記内孔は内面に内側嵌合部を備え、
前記軟質部材ユニットは軟質部材と嵌合部材とからなり、
前記軟質部材ユニットは段差状のユニット段部を備え、
前記ユニット段部の外径は前記筒体段部の内径より大きく設定され、
前記軟質部材は、弾性材料により形成され、熱変色性の筆跡の表面を擦って該筆跡を熱変色させる摩擦変色部材であり、
前記嵌合部材は前記軟質部材とは異なる材料から形成され、
前記嵌合部材は外面に、前記内側嵌合部と嵌合する外側嵌合部を備え、
前記軟質部材に前記嵌合部材が嵌合することにより前記軟質部材ユニットが形成され、
前記内孔の後端から前記軟質部材の後端が後方に突出し、前記筒体段部と前記ユニット段部とが当接し、前記内孔の前記内側嵌合部と前記嵌合部材の前記外側嵌合部とが嵌合することにより、前記筒体に前記軟質部材が取り付けられることを特徴とする。
【0009】
前記第1の発明の軟質部材の取付構造は、前記構成により、軟質部材の取付作業において、軟質部材及び嵌合部材を一体の部品として筒体の前方又は後方から挿入することができるため、軟質部材の取付作業が容易となる。さらに、硬質樹脂からなる嵌合部材と筒体とが嵌合するため、軟質部材ユニットが筒体から外れ難く、それにより軟質部材が筒体から外れ難い。
【0010】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の軟質部材の取付構造において、前記筒体の前記内孔に、径方向内方に突出する内向突起が設けられ、
前記筒体段部が前記内向突起の前方に設けられ、
前記外側嵌合部より後方の前記軟質部材ユニットの外径は前記内側嵌合部の内径より小さく設定され、
前記筒体段部の前端と前記ユニット段部の後端とが当接することが好ましい。
【0011】
前記第2の発明の軟質部材の取付構造は、前記構成により、軟質部材ユニットを筒体の前方より挿入する場合において、軟質部材ユニットが内側嵌合部に引っかからず、軟質部材を筒体にスムーズに取り付けることができる。
【0012】
本願の第3の発明は、前記第1の発明の軟質部材の取付構造において、前記筒体の前記内孔に、径方向内方に突出する内向突起が設けられ、
前記筒体段部が前記内向突起の後方に設けられ、
前記外側嵌合部より前方の前記軟質部材ユニットの外径は前記内側嵌合部の内径より小さく設定され、
前記筒体段部の後端と前記ユニット段部の前端とが当接することが好ましい。
【0013】
前記第3の発明の軟質部材の取付構造は、前記構成により、軟質部材ユニットを筒体の後方より挿入する場合において、軟質部材ユニットが内側嵌合部に引っかからず、軟質部材を筒体にスムーズに取り付けることができる。
【0014】
本願の第4の発明は、前記第1乃至第3の何れかの発明の軟質部材の取付構造において、前記軟質部材は取付孔を備え、前記取付孔には径方向内方に突出する係止段部が設けられ、
前記嵌合部材は径方向外方に突出する係止突起を備え、
前記係止段部と前記係止突起とが抜け止め係止されることにより、前記軟質部材ユニットが形成され、
前記軟質部材ユニットにおいて、前記係止突起の径方向外方の前記軟質部材の外径は前記筒体の内径と略同一に設定され、
前記軟質部材ユニットが前記筒体に取り付けられた状態で、前記筒体の径方向内方に前記係止突起が位置することが好ましい。
【0015】
前記第4の発明の軟質部材の取付構造は、前記構成により、軟質部材が径方向外方に広がらないため、軟質部材と嵌合部材との嵌合が外れることを防ぐことができる。軟質部材が嵌合部材から外れ難いため、軟質部材が筒体から抜け落ちることをより確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の軟質部材の取付構造によれば、取付作業が容易であり、且つ軟質部材が筒体から外れ難い軟質部材の取付構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態の軟質部材の取付構造を示す縦断面図である。
【
図2】
図1の軟質部材ユニットの取付途中を示す縦断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の軟質部材ユニットの組立途中を示す縦断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の軟質部材の取付構造を示す縦断面図である。
【
図5】本発明の軟質部材の取付構造を用いた筆記具の軸筒を示す正面図である。
【
図7】本発明の軟質部材の取付構造を用いた筆記具のキャップを示す正面図である。
【
図9】
図7の筆記具からキャップを取り外した状態の縦断面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態の軟質部材の取付構造を示す縦断面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態の軟質部材ユニットの組立途中を示す縦断面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態の軟質部材の取付構造を示す縦断面図である。
【
図13】本発明の第3実施形態の軟質部材の取付構造を示す縦断面図である。
【
図14】
図13の軟質部材ユニットの取付途中を示す縦断面図である。
【
図15】本発明の第4実施形態の軟質部材の取付構造を示す縦断面図である。
【
図16】本発明の第4実施形態の軟質部材の取付構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1乃至
図4に本発明の第1実施形態を示す。本実施の形態の軟質部材の取付構造は、筒体1と、該筒体1の後端に装着される軟質部材ユニット4とからなる。
【0019】
・筒体
筒体1は、合成樹脂の射出成形より得られる円筒体からなる。筒体1は、内孔11が軸方向に貫通される。後述する
図5乃至
図9に示すように、筒体1は筆記具の軸筒1a又はキャップのキャップ筒1bを構成する。
【0020】
図1に示すように、筒体1の内孔11の内面には、内側嵌合部12が形成される。内側嵌合部12は、環状平滑面又は径方向内方に突出する環状突起からなる。本実施形態では内側嵌合部12は環状突起である。内側嵌合部12の内径は内孔11の内径より小さく設定される。また、内側嵌合部12の内径は後述する軟質部材ユニット4のユニット段部41の外径より大きく設定される。
【0021】
内側嵌合部12より後方の内孔11の内面には、径方向内方に突出する内向突起13が一体に形成される。内向突起13は環状突起又は複数個の分散状突起からなる。本実施形態では内向突起13は環状突起である。内向突起13の前端に筒体段部14が設けられる。筒体段部14は内孔11の内面に対して段差状に設けられる。本実施形態では、筒体段部14の前端面は軸方向に垂直な平面からなる。筒体段部14の前端面は前方から後方に向かうに従い徐々に内径が変化するテーパ形状であってもよい。筒体段部14がテーパ形状であれば、軟質部材ユニット4の軸方向の寸法管理が容易となる。
【0022】
・嵌合部材
図3に示すように、嵌合部材2は、前端が開口され且つ後端が閉鎖された有底円筒体である。嵌合部材2は軟質部材3より硬質な合成樹脂の射出成形により得られる
【0023】
嵌合部材2の外面には、環状の外側嵌合部21が一体に形成される。外側嵌合部21は、径方向外方に突出する環状突起又は環状平滑面よりなる。本実施形態では、外側嵌合部21は環状突起からなる。
【0024】
外側嵌合部21より前方の嵌合部材2の外径は内側嵌合部12の内径より僅かに大きく設定される。それにより、嵌合部材2と内側嵌合部12との確実な気密嵌合が得られる。また、外側嵌合部21の外径は嵌合部材2の外径より僅かに大きく、且つ内側嵌合部12の内径より大きく設定される。それにより、外側嵌合部21が内側嵌合部12を乗り越えることで、確実に嵌合部材3を筒体1内に嵌合させることができる。
【0025】
嵌合部材2の後端面22は軸方向に垂直な平面からなる。後端面22には、軸方向後方に突出する突部23が設けられている。突部23は角柱状もしくは円柱状である。突部23には、径方向外方に突出する係止突起24が設けられている。係止突起24は環状突起又は複数個の分散状突起からなる。係止突起24の前端面は軸方向に垂直な平面からなる。
【0026】
・軟質部材
図3に示すように、軟質部材3は後端が閉鎖され、且つ前端が開口された有底状の円筒体である。軟質部材3は、合成ゴムやエラストマー等の弾性材料により形成される。軟質部材3は、熱変色性の筆跡の表面を擦って該筆跡を熱変色させる摩擦変色部材が採用される。
【0027】
軟質部材3は突出部31を備える。突出部31の後面は凸曲面状を有する。突出部31の最大外径は筒体1の内向突起13の内径と同じ、又は僅かに小さく設定される。それにより、軟質部材3の筒体1に対する径方向のがたつきを抑えることができる。
【0028】
軟質部材3の前端面32は軸方向に垂直な平面からなる。前端面32には、取付孔33が設けられている。取付孔33の内面には、径方向内方に突出する係止段部34が設けられている。係止段部34は環状突起又は複数個の分散状突起からなる。
【0029】
・軟質部材ユニット
図1及び
図2に示すように、軟質部材ユニット4は嵌合部材2と軟質部材3とからなる。嵌合部材2と軟質部材3とを嵌合させ、係止突起24と係止段部34とが抜け止め係止されることにより、軟質部材ユニット4が形成される。
【0030】
嵌合部材2と軟質部材3はそれぞれ別体で成形し、後から嵌合させることで軟質部材ユニット4を形成する。例えば
図3に示すように、軟質部材3の係止段部34に嵌合部材2の係止突起24を軸方向に乗り越えて嵌合させることで軟質部材ユニット4を形成する。また、嵌合部材2と軟質部材3とを2色成形で一体に成形してもよい。
【0031】
軟質部材ユニット4には、軸方向後方に面するユニット段部41が設けられている。ユニット段部41は軟質部材ユニット4の外面に対して段差状に設けられる。ユニット段部41の後端面は軸方向に垂直な平面からなる。ユニット段部41の外径は内向突起13の内径より大きく設定される。
図1又は
図4に示すように、ユニット段部41は嵌合部材2側又は軟質部材3側に設けられる。特に、ユニット段部41が軟質部材3側に設けられている場合、ユニット段部41と筒体段部14とが当接して軟質部材3の抜け止めとなるため、軟質部材3が筒体1から抜け落ちることをより確実に防ぐことができる。
【0032】
外側嵌合部21より後方の軟質部材ユニット4の外径は、内側嵌合部12の内径より小さく設定される。本実施形態では、外側嵌合部21とユニット段部41との間の軟質部材ユニット4の外径は、ユニット段部41の外径と同一である。
【0033】
・軟質部材の取り付け
軟質部材3の筒体1への取付手順を説明する。
図2に示すように、予め組み立てた軟質部材ユニット4を筒体1の内孔11の前端から軸方向後方に挿着する。軟質部材ユニット4を定位置まで挿着すると、筒体段部14とユニット段部41とが当接し、突出部31が内孔11の後端より外方に突出する。外側嵌合部21より後方の軟質部材ユニット4の外径が内側嵌合部12の内径より小さいことにより、軟質部材3を筒体1に挿着する際、軟質部材ユニット4が内側嵌合部12に引っかかることを防ぐことができる。ユニット段部41の外径が内向突起13の内径より大きいことにより、軟質部材ユニット4を筒体1に対して確実に抜け止め係止させることができる。
【0034】
ユニット段部41と筒体段部14とが当接すると同時に、嵌合部材3の外側嵌合部21と内側嵌合部12とが嵌合し、筒体1と軟質部材ユニット4とが嵌合する。
図1に示すように、筒体段部14の前端から内側嵌合部12までの距離Aは、ユニット段部41の後端から外側嵌合部21までの距離Bより僅かに大きく設定される。これにより、筒体1と嵌合部材3とが嵌合した際、筒体段部14とユニット段部41とが圧接する。筒体段部14とユニット段部41とが圧接することにより、軟質部材ユニット4が筒体1に対して軸方向にがたつくことを防ぐことができる。
【0035】
嵌合部材2の後端面22及び軟質部材3の前端面32が軸方向に垂直な平面からなることにより、嵌合部材2と軟質部材3とを平面上にて確実に当接させ、嵌合部材2及び軟質部材3が軸心に対して傾くことを防ぐことができる。
【0036】
内側嵌合部12及び外側嵌合部21がどちらも環状突起であることにより、嵌合部材2の外側嵌合部21が筒体1の内側嵌合部12を乗り越えて嵌合するため、軟質部材3の摩擦使用時において軟質部材3が軸方向前方に押圧された場合でも、軟質部材ユニット4の取り付けが外れることを防ぐことができる。尚、軟質部材ユニット4は筒体1内に嵌合できればよく、環状突起同士の嵌合以外にも、環状平滑面と環状突起との嵌合や、環状平滑面同士の嵌合であってもよい。また、筒体1と軟質部材ユニット4とが接着されていてもよい。
【0037】
図4に示すように、内向突起13が係止突起24の径方向外方に位置し、内向突起13が軟質部材3の外周を近接して包囲する構成である場合、軟質部材3が径方向外方に広がらないため、軟質部材3と嵌合部材2との嵌合が外れることを防ぐことができる。軟質部材3が嵌合部材2から外れないため、軟質部材3が筒体1から抜け落ちることをより確実に防ぐことができる。
【0038】
・筆記具
本発明の軟質部材の取付構造を利用した筆記具5を
図5乃至
図9に示す。軟質部材3が筆記具5の軸筒に設けられている実施形態を
図5及び
図6に示す。
図5及び
図6において筒体1は筆記具5を構成する軸筒1aである。軟質部材3が筆記具5のキャップ6に設けられている実施形態を
図7乃至
図9に示す。
図7乃至
図9において筒体1はキャップ6を構成するキャップ筒1bである。筆記具5は軸筒1aの前方に接続されるペン先保持筒7と、ペン先保持筒7の前端に固着されるペン先8と、軸筒1a内部及びペン先保持筒7内部に収容されるインキ吸蔵体9と、を備える。キャップ6は筆記具5のペン先8側に着脱可能である。
【0039】
・ペン先保持筒
ペン先保持筒7は、合成樹脂の射出成形により得られる。ペン先保持筒7は、先細形状の前端部にペン先8が圧入固着され、先細形状の前端部より前方にペン先8の前端が突出される。ペン先保持筒7の内部に、インキ吸蔵体9の前部が収容され、インキ吸蔵体9の前端にペン先8の後端が突き刺し接続される。ペン先保持筒7の後端は、筒体1の内孔11の前端と気密嵌合により接続される。ペン先8外面とペン先保持筒7内面との間には、ペン先保持筒7内部と外気との連通が可能な通気路(図示せず)が形成される。
【0040】
・ペン先
ペン先8は、繊維の樹脂加工体からなる。ペン先8は、これ以外にも、例えば、ボールペンチップ、繊維束の熱融着加工体、フェルト加工体、パイプ状ペン体、先端にスリットを有する万年筆型板状ペン体、毛筆ペン体、合成樹脂の多孔質気泡体、軸方向のインキ誘導路を有する合成樹脂の押出成形体等が挙げられる。
【0041】
・インキ吸蔵体
インキ吸蔵体9は、インキを含浸可能な連続気孔を有する部材(即ち多孔質材料)からなるものであればよく、例えば、繊維束の熱融着加工体、繊維束の樹脂加工体、フェルトの樹脂加工体、フェルトのニードルパンチ加工体、合成樹脂の連続気泡体等が挙げられる。また、インキ吸蔵体9は、その外周面に合成樹脂フィルム等よりなる外皮を備える構成でもよい。インキ吸蔵体9の前面には、ペン先8の後端部が突き刺し接続される。
【0042】
組み立て後の筆記具5において、嵌合部材2が軟質部材3の前端とインキ吸蔵体9の後端とによって挟持されることにより、嵌合部材2の前方及び後方への移動が阻止される。嵌合部材2の軸方向の移動がインキ吸蔵体9によって阻止されるため、軟質部材3の摩擦使用時において軟質部材3が軸方向前方に押圧された場合でも、軟質部材ユニット4の取付が外れることをより確実に防ぐことができる。
【0043】
尚、本実施形態において、軸筒1aは、少なくとも筆記具5の後端部を構成するものであればよく、軸筒1aが筆記具5の略全体を構成するものでもよいし、軸筒1aが筆記具5の後端部のみを構成するものでもよい。また、本発明において、筒体1にペン先8を固定する構成は、例えば、筒体1にペン先8を直接固定する構成、又は筒体1にペン先保持筒7等の他の部材を介してペン先8を固定する構成が挙げられる。
【0044】
・キャップ
キャップ6は合成樹脂の射出成形により得られる円筒体である。キャップ6は筆記具5のペン先8側に着脱自在に装着可能である。
【0045】
図7乃至
図9に示すように、軟質部材3がキャップ6に設けられている場合、筒体1はキャップ6を構成するキャップ筒1bである。嵌合部材2の前端の内面には、環状シール部27が形成される。
図8及び
図9に示すように、環状シール部27はペン先保持筒7の外面と気密嵌合する。環状シール部27は、環状突起又は環状平滑面よりなる。本実施形態では、環状シール部27は環状平滑面からなる。
【0046】
以上の構成により、軟質部材の取付作業において、軟質部材3及び嵌合部材2を一体の部品として筒体1の前方から挿入することができるため、軟質部材の取付作業が容易となる。さらに、硬質樹脂からなる嵌合部材2と筒体1とが嵌合するため、軟質部材ユニット4が筒体から外れ難い。
【0047】
<第2実施形態>
図10乃至
図12に本発明の第2実施形態を示す。第1実施形態とは嵌合部材2及び軟質部材3の形状が異なる。第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0048】
・嵌合部材
図11に示すように、嵌合部材2の後端面22は軸方向に垂直な平面からなる。後端面22には、取付孔25が設けられている。取付孔25の内面には、径方向内方に突出する係止段部26が設けられている。係止段部26の前端面は軸方向に垂直な平面からなる。
【0049】
・軟質部材
図11に示すように、軟質部材3の前端面32は軸方向に垂直な平面からなる。前端面32には、軸方向前方に突出する突部35が設けられている。突部35は角柱状もしくは円柱状である。突部35には、径方向外方に突出する係止突起36が設けられている。係止突起36は環状突起又は複数個の分散状突起からなる。
【0050】
・軟質部材ユニット
嵌合部材2と軟質部材3とを嵌合させ、係止突起36と係止段部26とが抜け止め係止されることにより、軟質部材ユニット4が形成される。
【0051】
嵌合部材2と軟質部材3はそれぞれ別体で成形し、後から嵌合させることで軟質部材ユニット4を形成する。例えば
図11に示すように、軟質部材3の係止突起36に嵌合部材2の係止段部26を軸方向に乗り越えて嵌合させることで軟質部材ユニット4を形成する。また、嵌合部材2と軟質部材3とを2色成形で一体に成形してもよい。
【0052】
軟質部材ユニット4には、軸方向後方に面するユニット段部41が設けられている。ユニット段部41の後端面は軸方向に垂直な平面からなる。ユニット段部41の外径は内向突起13の内径より大きく設定される。
図10又は
図12に示すように、ユニット段部41は嵌合部材2側又は軟質部材3側に設けられる。
【0053】
以上の構成により、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
<第3実施形態>
図13及び
図14に本発明の実施の形態を示す。第1実施形態とは、軟質部材ユニット4の組立挿入方向が異なる。第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0054】
・筒体
内側嵌合部12より前方の内孔11の内面には、径方向内方に突出する内向突起13が一体に形成される。内向突起13は環状突起又は複数個の分散状突起からなる。本実施形態では内向突起13は環状突起である。内向突起13の後端に筒体段部14が設けられる。筒体段部14の後端面は軸方向に垂直な平面からなる。第1実施形態と同様に、筒体段部14の後端面はテーパ形状であってもよい。
【0055】
・嵌合部材
外側嵌合部21より後方の嵌合部材2の外径は内側嵌合部12の内径より僅かに大きく設定される。それにより、嵌合部材2と内側嵌合部12との確実な気密嵌合が得られる。また、外側嵌合部21の外径は嵌合部材2の外径より僅かに大きく、且つ内側嵌合部12の内径より大きく設定される。それにより、外側嵌合部21が内側嵌合部12を乗り越えることで、確実に嵌合部材2を筒体1内に嵌合させることができる。
【0056】
・軟質部材ユニット
第1実施形態又は第2実施形態と同様の方法で嵌合部材2と軟質部材3とを嵌合させ、軟質部材ユニット4を形成する。軟質部材ユニット4には、軸方向前方に面するユニット段部41が設けられている。ユニット段部41の前端面は軸方向に垂直な平面からなる。ユニット段部41の外径は内向突起13の内径より大きく設定される。ユニット段部41は嵌合部材2側又は軟質部材3側に設けられる。
【0057】
外側嵌合部21より前方の軟質部材ユニット4の外径は、内側嵌合部12の内径より小さく設定される。
【0058】
・軟質部材の取り付け
軟質部材3の筒体1への取付手順を説明する。
図14に示すように、予め組み立てた軟質部材ユニット4を筒体1の内孔11の後端から軸方向前方に挿着する。軟質部材ユニット4を定位置まで挿着すると、筒体段部14の後端面とユニット段部41の前端面とが当接する。外側嵌合部21より前方の軟質部材ユニット4の外径が内側嵌合部12の内径より小さいことにより、軟質部材3を筒体1に挿着する際、軟質部材ユニット4が内側嵌合部12に引っかかることを防ぐことができる。
【0059】
ユニット段部41と筒体段部14とが当接すると同時に、嵌合部材3の外側嵌合部21と内側嵌合部12とが嵌合し、筒体1と軟質部材ユニット4とが嵌合する。
図13に示すように、筒体段部14の後端から内側嵌合部12までの距離Aは、ユニット段部41の前端から外側嵌合部21までの距離Bより僅かに大きく設定される。これにより、筒体1と嵌合部材3とが嵌合した際、筒体段部14とユニット段部41とが圧接する。筒体段部14とユニット段部41とが圧接することにより、軟質部材ユニット4が筒体1に対して軸方向にがたつくことを防ぐことができる。
【0060】
係止突起24の径方向外方の軟質部材3の外径が、内孔11の内径と略同一であることにより、軟質部材3が径方向外方に広がらないため、軟質部材3と嵌合部材2との嵌合が外れることを防ぐことができる。軟質部材3が嵌合部材2から外れないため、軟質部材3が筒体1から抜け落ちることをより確実に防ぐことができる。
【0061】
筒体段部14が軟質部材ユニット4より前方に設けられているため、軟質部材3の摩擦使用時において軟質部材3が軸方向前方に押圧された場合でも、軟質部材ユニット4の取り付けが外れることをより一層防ぐことができる。
【0062】
以上の構成により、軟質部材の取付作業において、軟質部材3及び嵌合部材2を一体の部品として筒体1の後方から挿入することができるため、軟質部材の取付作業が容易となる。さらに、硬質樹脂からなる嵌合部材2と筒体1とが嵌合するため、軟質部材ユニット4が筒体から外れ難い。
【0063】
<第4実施形態>
図15及び
図16に本発明の実施の形態を示す。第3実施形態とは内向突起13の代わりに外向突起42が設けられている点が異なる。第3実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0064】
・筒体
筒体1の後端に筒体段部14が設けられる。
【0065】
・軟質部材ユニット
第1実施形態又は第2実施形態と同様の方法で嵌合部材2と軟質部材3とを嵌合させ、軟質部材ユニット4を形成する。外側嵌合部21より後方の軟質部材ユニット4の外面には、径方向外方に突出する外向突起42が一体に形成される。外向突起42は環状突起又は複数個の分散状突起からなる。本実施形態では外向突起42は環状突起である。外向突起42の前端にユニット段部41が設けられる。ユニット段部41の前端面は軸方向に垂直な平面からなる。ユニット段部41の外径は筒体段部14の内径より大きく設定される。
図15又は
図16に示すように、ユニット段部41は嵌合部材2側又は軟質部材3側に設けられる。
【0066】
以上の構成により、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 筒体
1a 軸筒
1b キャップ筒
11 内孔
12 内側嵌合部
13 内向突起
2 嵌合部材
21 外側嵌合部
22 後端面
23 突部
24 係止突起
25 取付孔
26 係止段部
27 環状シール部
3 軟質部材
31 突出部
32 前端面
33 取付孔
34 係止段部
35 突部
36 係止突起
4 軟質部材ユニット
41 ユニット段部
42 外向突起
5 筆記具
6 キャップ
7 ペン先保持筒
8 ペン先
9 インキ吸蔵体