(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157648
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】給電制御装置、非接触給電システム、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/90 20160101AFI20241031BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20241031BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20241031BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/10
H02J50/40
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072116
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 英俊
(72)【発明者】
【氏名】大林 和良
(72)【発明者】
【氏名】柴沼 満
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 将也
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 正樹
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】移動体の状態を考慮して非接触給電の正常性を精度良く特定する。
【解決手段】非接触給電を行う移動体10に搭載される給電制御装置100、100aは、送電コイル21を含む送電装置2の上方を移動体が通過する際の送電装置から移動体が備える受電装置3までの距離を示す高さ情報を取得する高さ情報取得部111と、取得された高さ情報が示す距離と、予め定められた高さ閾値と、の第1比較を実行し、第1比較の結果に基づき非接触給電の正常性を判断する正常性判定部114であって、高さ情報が示す距離が高さ閾値未満である場合に非接触給電は異常であると判断する正常性判定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触給電を行う移動体(10)に搭載される給電制御装置(100、100a)であって、
送電コイル(21)を含む送電装置(2)の上方を前記移動体が通過する際の前記送電装置から前記移動体が備える受電装置(3)までの距離を示す高さ情報を取得する高さ情報取得部(111)と、
取得された前記高さ情報が示す前記距離と、予め定められた高さ閾値と、の第1比較を実行し、前記第1比較の結果に基づき前記非接触給電の正常性を判断する正常性判定部(114)であって、前記高さ情報が示す前記距離が前記高さ閾値未満である場合に前記非接触給電は異常であると判断する正常性判定部と、
を備える、給電制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給電制御装置であって、
前記受電装置は、受電コイル(32)を含む共振回路(31)と、前記共振回路からの出力交流電力を負荷に供給可能な直流電力に変換する変換部(33)と、を有し、
前記給電制御装置は、
前記送電装置の上方を前記移動体が通過する際の前記移動体の走行方向と交差する方向における前記送電装置と前記受電装置との位置ずれである横ずれを特定する横ずれ特定部(112)と、
前記高さ情報が示す前記距離および前記横ずれと、前記負荷の入力電流および前記負荷の入力電圧の想定値と、を予め対応付けた位置ずれ対応マップ(121)と、
前記入力電流および前記入力電圧を測定して実測値を得るセンサ(44、45)から、前記実測値を取得する実測値取得部(113)と、
をさらに備え、
前記正常性判定部は、前記位置ずれ対応マップを参照して、取得された前記高さ情報が示す前記距離および特定された前記横ずれに対応する前記想定値を特定し、特定された前記想定値と取得された前記実測値とを比較する第2比較を実行し、前記入力電流と前記入力電圧とのうちの少なくとも一方において、前記想定値と前記実測値との差分が第1閾値以上である場合に、前記非接触給電は異常であると判断する、給電制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の給電制御装置であって、
さらに、前記受電装置における受電可否の制御を実行する対応制御部(115)を備え、
前記対応制御部は、前記正常性判定部により前記非接触給電が異常であると判断された場合には、前記受電装置における受電を許可しない、給電制御装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の給電制御装置であって、
さらに、異常通知の制御を実行する対応制御部(115)を備え、
前記対応制御部は、前記正常性判定部により前記非接触給電が異常であると判断された場合には、前記異常通知を実行する、給電制御装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の給電制御装置であって、
前記移動体は、前記送電装置に対して予め設定された位置関係となる地上位置に設けられたマーカ(200)を撮像する撮像装置(60)を有し、
前記高さ情報取得部は、前記撮像装置により得られる撮像画像に含まれる前記マーカを利用して、前記高さ情報を取得する、給電制御装置。
【請求項6】
請求項2に記載の給電制御装置であって、
取得された前記実測値を時系列的に、前記移動体に搭載された記憶装置(50)に記憶させる記憶制御部(116)を、さらに備える、給電制御装置。
【請求項7】
請求項2または請求項6に記載の給電制御装置であって、
前記移動体に搭載され、前記移動体の速度を制御する走行制御部(90)に対して、先記速度に関する要求を出力する速度要求部(117)を、さらに備え、
前記速度要求部は、前記正常性判定部が前記非接触給電は正常であると判断した場合に、
前記差分と、前記第1閾値よりも小さい第2閾値と、の第3比較を実行し、
前記第3比較の結果、前記差分が第2閾値よりも大きく、かつ、前記実測値が前記想定値よりも大きい場合に、前記走行制御部に対して前記速度が第1速度閾値以上となる前記要求を出力し、
前記第3比較の結果、前記差分が第2閾値よりも大きく、かつ、前記実測値が前記想定値よりも小さい場合に、前記走行制御部に対して前記速度が前記第1速度閾値よりも小さい第2速度閾値以下となる前記要求を出力する、
給電制御装置。
【請求項8】
請求項3に記載の給電制御装置と、前記送電装置における送電可否の制御を行う送電制御装置(26)と、前記送電制御装置を制御する給電管理システム(900)と、を備える非接触給電システム(1)であって、
前記対応制御部は、さらに、異常通知の制御を実行し、
前記対応制御部は、前記正常性判定部により前記非接触給電が異常であると判断された場合には、少なくとも前記異常通知として前記給電管理システムに対して前記非接触給電が異常であることを通知し、
前記給電管理システムは、前記非接触給電が異常であることを受信した場合に、前記送電制御装置を制御して、前記送電装置における送電を停止させる、非接触給電システム。
【請求項9】
送電コイルを含む送電装置から移動体に搭載された受電装置への非接触給電の正常性を判断するためのコンピュータプログラムであって、
前記送電装置の上方を前記移動体が通過する際の前記送電装置から前記受電装置までの距離を示す高さ情報を取得する機能と、
取得された前記高さ情報が示す前記距離と、予め定められた高さ閾値と、の第1比較を実行し、前記第1比較の結果に基づき前記非接触給電の正常性を判断する機能であって、前記高さ情報が示す前記距離が前記高さ閾値未満である場合に前記非接触給電は異常であると判断する機能と、
をコンピュータに実現させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無人搬送車等の移動体に対して非接触給電を行うシステムが種々提案されている。特許文献1には、搬送車が走行する走行レールに非接触給電の給電線が併設され、高周波電源装置からかかる給電線に給電が行われ、各搬送車が受電コイルで給電線の磁束を補足して受電するシステムが開示されている。特許文献1に記載のシステムでは、送電側の給電状況、具体的には、高周波電源装置や給電線における電流、電圧、および電流と電圧の位相差を測定し、かかる測定値に基づき各搬送車の負荷状態を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように、送電側の給電状況により移動体の負荷状態を特定する構成では、移動体の実際の負荷状態を正確に特定できない。このため、移動体において故障が発生している或いは故障が発生する可能性が高い状態であるにも関わらず非接触給電が実行されてしまい非接触給電が正常に行われないおそれもある。そこで、移動体の状態を考慮して非接触給電の正常性を精度良く特定可能な技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態として、非接触給電を行う移動体(10)に搭載される給電制御装置(100、100a)が提供される。この給電制御装置は、送電コイル(21)を含む送電装置(2)の上方を前記移動体が通過する際の前記送電装置から前記移動体が備える受電装置(3)までの距離を示す高さ情報を取得する高さ情報取得部(111)と、取得された前記高さ情報が示す前記距離と、予め定められた高さ閾値と、の第1比較を実行し、前記第1比較の結果に基づき前記非接触給電の正常性を判断する正常性判定部(114)であって、前記高さ情報が示す前記距離が前記高さ閾値未満である場合に前記非接触給電は異常であると判断する正常性判定部と、を備える。
【0006】
この形態の給電制御装置によれば、正常性判定部は、送電装置の上方を移動体が通過する際の送電装置から移動体が備える受電装置までの距離と、予め定められた高さ閾値と、の第1比較を実行し、高さ情報が示す距離が高さ閾値未満である場合に非接触給電は異常であると判断するので、移動体の状態を考慮して非接触給電の正常性を精度良く特定できる。送電装置から受電装置までの距離が高さ閾値未満である場合、送電装置から受電装置に過剰に給電が行われてしまい、例えば受電装置に含まれる受電回路を構成する素子が故障するおそれや、既に故障しているおそれがあるからである。
【0007】
本開示は、種々の形態で実現することも可能である。例えば、非接触給電の正常性判断方法、給電制御装置や非接触給電の正常性判断方法を実現するためのコンピュータプログラム、かかるコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態としての給電制御装置を適用した車両を含む非接触給電システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態における正常性確認処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態における正常性確認処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態における、想定値、第1閾値、および実測値の関係を示す説明図である。
【
図6】第2実施形態の給電制御装置を適用した車両を含む非接触給電システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図7】第2実施形態における正常性確認処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態における正常性確認処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】第2実施形態における、想定値、第1閾値、第2閾値、および実測値の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A1.装置構成:
図1に示す非接触給電システム1は、道路4に設けられた送電装置2と、車両10に設けられた受電装置3および給電制御装置100と、給電管理システム900とを備える。非接触給電システム1は、車両10の走行中または停車中に送電装置2から車両10にワイヤレスで給電することが可能なシステムである。車両10は、例えば、貨物などを運搬する無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)として構成される。
【0010】
道路4側の送電装置2は、複数の送電コイル21と、複数の送電コイル21のそれぞれに交流電圧を印加して電力を供給する複数の送電回路24と、複数の送電回路24に電力を供給する外部電源25(以下「電源25」と略す。)と、送電制御部26と、を備えている。
【0011】
複数の送電コイル21は、道路4の進行方向に沿って並ぶように設置されている。送電コイル21は、複数のセクタに区分されている。送電回路24は、電源25から供給される直流電圧を高周波の交流電圧に変換して送電コイル21に印加する回路であり、インバータ回路、フィルタ回路、共振回路を含んでいる。本実施形態では、インバータ回路、フィルタ回路、共振回路については、周知のものであるため説明を省略する。
【0012】
電源25は、直流電圧を送電回路24に供給する回路である。例えば、電源25は、系統電源から力率改善回路(PFC)を介して送電回路24へ供給される。なお、電源25で系統電源から受電し、電圧変換した50/60Hzの交流を各送電回路へ配電し、各送電回路でPFC及び交流直流変換する形態でもよい。PFCについては、図示を省略している。電源25が出力する直流電圧は、完全な直流電圧でなくてもよく、ある程度の変動(リップル)を含んでいても良い。送電制御部26は、送電回路24および送電コイル21による送電の実行可否を制御する。具体的には、送電制御部26は、図示しないリレーをオンまたはオフすることにより、電源25から送電回路24への給電の実行を制御し、これにより、送電回路24および送電コイル21における導電の実行可否を制御する。また、送電制御部26は、図示しない通信装置を備え、かかる通信装置を用いて給電管理システム900と通信可能に構成されている。
【0013】
本実施形態では、各送電コイル21に対応して地表面にマーカ200が設置されている。言い換えると、マーカ200は、送電装置(送電コイル21)に対して予め設定された位置関係となる地上位置に設けられている。
図2に示すように、マーカ200は、3つのサブマーカ201、202、203により構成されている。
図2では、隣接する2つの送電コイル21に対応する2つのマーカ200を実線により示すと共に、2つの送電コイル21を模式的に破線の矩形により模式的に示している。また、車両10の進行予定方向DDを破線の矢印を用いて示している。
【0014】
サブマーカ201は、送電コイル21に対して鉛直上方に位置している。サブマーカ202は、サブマーカ201に対して方向D2に所定の距離だけ離れて配置されている。方向D2は、進行予定方向DDと直交する方向であり、車両10の車幅方向に相当する。サブマーカ203は、サブマーカ201に対して方向D1に所定の距離だけ離れて配置されている。方向D1は、進行予定方向DDと同じ方向である。本実施形態では、サブマーカ202およびサブマーカ203は、送電コイル21の鉛直上方から外れた位置に配置されている。なお、2つのサブマーカ202、203をいずれもサブマーカ201と同様に送電コイル21の鉛直上方に配置してもよい。各サブマーカ201~203は、いずれも画像解析によりサブマーカであることが検知容易な模様を有する。具体的には、本実施形態では、サブマーカ201~203は、正方形の平面視形状を有し、2つの対角線が描かれている。また、2つの対角線で区画された三角形の4つの領域のうち、方向D2と平行な方向に互いに対向する2つの領域が黒色で描かれ他の2つの領域が白色で描かれている。各サブマーカ201~203の中心位置は、対角線の交点として特定される。そして、各マーカ200の各サブマーカ201~203の中心位置の座標は、車両10が有する後述の記憶装置50に予め記憶されている。
【0015】
図1に示すように、車両10は、上述の受電装置3および給電制御装置100に加えて、モータ41、インバータ42、バッテリ43、電圧センサ44、電流センサ45、記憶装置50、撮像装置60、通信装置70、走行制御部90を備えている。
【0016】
受電装置3は、送電装置2の送電コイル21において生じた磁束を受けて誘電されることにより電力を受ける。受電装置3は、共振回路31と変換部33とを備えている。共振回路31は、受電コイル32と、図示しないコンデンサとを含む。変換部33は、図示しない整流回路とDC/DCコンバータ回路とを備え、共振回路31から出力される交流電圧を直流電圧に変換し、さらに昇圧して出力する。なお、DC/DCコンバータを、受電装置3とは別の装置として構成してもよい。受電コイル32は、車両ボディ下部であって、車両10の幅方向および長さ方向の中心近傍に設けられている。
【0017】
給電制御装置100は、非接触給電の状況に応じて非接触給電の実行を制御する。本実施形態において、給電制御装置100は、CPU110およびメモリ120を備えるEUC(Electronic Control Unit)により構成されている。メモリ120は、EEPROM等の不揮発性メモリを含み、図示しない制御プログラムと位置ずれ対応マップ121とを予め記憶している。位置ずれ対応マップ121は、通過時高さおよび横ずれと、バッテリ43の入力電流および入力電圧の想定値とを対応付けたマップである。「通過時高さ」とは、送電コイル21の上方を車両10が通過する際の送電装置2(送電コイル21)から受電装置3(受電コイル32)までの距離を意味する。「横ずれ」とは、送電コイル21の上方を車両10が通過する際の送電装置2(送電コイル21)と受電装置3(受電コイル32)とのD2方向と平行な方向の位置ずれを意味する。正常状態においては、送電コイル21の上方を車両10が通過する際に、方向D2方向と平行な方向の位置ずれは生じない。他方、例えば、後述の走行制御部90による位置制御の精度が悪化した異常状態において、所定の閾値以上の横ずれが生じ得る。
【0018】
CPU110は、メモリ120に記憶されている制御プラグラムを実行することにより、高さ情報取得部111、横ずれ特定部112、実測値取得部113、正常性判定部114、
対応制御部115、記憶制御部116として機能する。情報取得部111は、通過時高さを示す情報(以下、「高さ情報」と呼ぶ)を取得する。横ずれ特定部112は、上述の横ずれを特定する。実測値取得部113は、電圧センサ44および電流センサ45から、負荷としてのバッテリ43への入力電圧および入力電流の実測値を取得する。正常性判定部114は、非接触給電の正常性を判定する。対応制御部115は、受電装置3における受電可否の制御と、異常通知および正常通知の制御とを実行する。「異常通知」とは、非接触給電が異常であることを、通信装置70を介して給電管理システム900に通知することを意味する。「正常通知」とは、非接触給電が正常であることを、通信装置70を介して給電管理システム900に通知することを意味する。記憶制御部116は、実測値取得部113により取得された実測値を時系列的に記憶装置50に記憶させる。
【0019】
モータ41は、車両10の車輪11を駆動するトラクションモータとして機能する。モータ41は、受電装置3またはバッテリ43から供給される電力により動作する。インバータ42は、受電装置3から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ41に供給する。バッテリ43は、受電装置3から供給される電力を蓄える。電圧センサ44は、バッテリ43の入力電圧を測定し、実測値を給電制御装置100に通知する。電流センサ45は、バッテリ43の入力電流を測定し、実測値を給電制御装置100に通知する。記憶装置50は、EEPROM等の不揮発性メモリを含む。記憶装置50は、上述したとおり、電圧センサ44および電流センサ45の実測値を時系列的に記憶する。
【0020】
撮像装置60は、車両ボディ下部において地表面を撮像可能に設置されている。撮像装置60は、所定の期間ごとに地表面を撮像する。このとき、撮像装置60は、マーカ200を構成する各サブマーカ201~203が同一撮像画像中に含まれるように撮像を行う。
【0021】
通信装置70は、給電管理システム900と無線通信を行う。例えば、IEEE802.11ac等の無線LAN、Wi-Fi(登録商標)など、任意の無線通信規格に準拠した無線通信であってよい。
【0022】
走行制御部90は、車両10の操舵や加速や制動など、車両10の運転を制御する。例えば、走行制御部90は、インバータ42を制御することにより、モータ41の回転数を制御し、これにより車両10の速度を制御する。
【0023】
給電管理システム900は、送電装置2と受電装置3とによる非接触給電を管理する。給電管理システム900は、通信装置70と無線通信可能に構成されている。また、給電管理システム900は、送電制御部26と通信可能に構成されている。給電管理システム900と送電制御部26との通信は、例えば、有線LANまたは無線LANと、無線通信事業者の通信網とを介した通信であってもよい。
【0024】
A2.正常性確認処理:
車両10において、給電制御装置100は、車両10が起動して給電制御装置100の電源がオンすると、
図3および
図4に示す正常性確認処理を実行する。正常性確認処理とは、送電装置2と受電装置3との間において実行される非接触給電の正常性を確認するための処理である。
【0025】
ステップS105において、情報取得部111は、撮像装置60により得られる撮像画像からマーカ200を読み取る。上述のように、マーカ200を構成する各サブマーカ201~203は、いずれも特徴的な模様を有するため、画像内においてかかる模様を検索することでマーカ200を特定できる。また、情報取得部111は、各サブマーカ201~203の中心位置を特定できる。
【0026】
ステップS110において、情報取得部111は、ステップS105により読み取られたマーカを利用して車両10の位置座標を取得する。「車両10の位置座標」とは、鉛直方向に平面視したときの車両10の中心の位置座標を意味する。なお、車両10の位置を代表する位置の座標であれば、車両10の任意の部分の位置座標であってもよい。ステップS115において、横ずれ特定部112は、ステップS110により取得された車両10の位置座標に基づき横ずれ量を推定する。ステップS120において、情報取得部111は、マーカを利用して高さ情報を取得する。上述のステップS110における車両10の位置座標の取得、およびステップS120における高さ情報の取得は、例えば、以下のようにして実行できる。撮像画像における各サブマーカ201~203の各辺のピクセル数と歪み補正値から、各サブマーカ201~203の中心位置と撮像装置60とを結ぶ仮想線と地表面とが成す角度を算出し、元々設定されている各サブマーカ201~203間の距離と、算出された角度とに基づく三角測量を利用して地表面から撮像装置60までの高さを算出する。また、情報取得部111は、各サブマーカ201~203の中心位置の座標を記憶装置50から読み出し、かかる座標と撮像画像上における各サブマーカ201~203の中心の位置とに基づき車両10の位置座標を特定し、この位置座標から予定されている走行位置との横ずれを算出する。
【0027】
ステップS125において、正常性判定部114は、ステップS120において取得された高さ情報が示す通過時高さは、閾値高さ以下であるか否かを判定する。閾値高さは、車両10に異常が生じていない状態で送電コイル21の上方を車両10が通過する際の送電コイル21から受電コイル32までの距離の最小値よりも小さい値として、予め実験等により特定されて設定されている。例えば、車両10の本体と車輪11との間に設けられたダンパが故障している場合や、いずれかの車輪11がパンクしている場合といった異常状態においては、通過時高さは閾値高さ以下の値となり得る。ステップS125における通過時高さと閾値高さとの比較は、本開示における「第1比較」に相当する。
【0028】
通過時高さは閾値高さ以下であると判定された場合(ステップS125:YES)、正常性判定部114は、非接触給電は異常であると判断する(ステップS130)。対応制御部115は、変換部33による変換をオフし(ステップS135)、給電管理システム900に対して異常通知を行う(ステップS140)。上述のように通過時高さが閾値高さ以下の場合、送電コイル21と受電コイル32とが想定以上に近づくために過給電となり、例えば、共振回路31を構成する素子や、変換部33におけるスイッチング素子などが故障するおそれがある。そこで、本実施形態では、このような状況では非接触給電は異常であると判断するようにし、変換部33をオフすることにより、給電が行われないようにしている。
【0029】
通過時高さは閾値高さ以下でないと判定された場合(ステップS125:NO)、実測値取得部113は、ステップS145において、バッテリ43への入力電圧および入力電流の実測値の最新値を取得する。正常性判定部114は、ステップS115において推定された横ずれ量と、ステップS120において取得された高さ情報が示す通過時高さとに基づき、対応マップ121を参照して、バッテリ43への入力電圧および入力電流の想定値を特定し、かかる想定値とステップS145で取得された実測値との差分が、第1閾値以上であるか否かを判定する(ステップS150)。なお、第1閾値として、入力電圧の閾値と、入力電流の閾値とがそれぞれ設定されており、入力電圧および入力電流がそれぞれの閾値と比較される。ステップS150における入力電流および入力電圧についての想定値と実測値との比較は、本開示における「第2比較」に相当する。
【0030】
図5に示すように、入力電圧および入力電流の想定値、すなわち、非接触給電において異常が発生していない状況において想定される入力電圧および入力電流の実測値を中心として、第1閾値未満だけ上下にずれた範囲Ar1は、正常範囲といえる。これに対して、入力電圧および入力電流の想定値よりも第1閾値以上高い値の範囲Br1、および想定値よりも第1閾値以下低い値の範囲Br2は、異常範囲といえる。例えば、横ずれ量が想定よりも大きい場合には、上述の差分は範囲Br2内の値となり得る。また、例えば、受電装置3内において何等かの故障が発生している場合、上述の差分は範囲Br1内の値となり得る。第1閾値は、例えば、横ずれが許容範囲内の場合や受電装置3の故障が発生していない場合におけるバッテリ43への入力電圧および入力電流を実験やシミュレーションにて特定し、特定された値に基づき設定される。
【0031】
図3に示すように、差分が第1閾値以上でないと判定された場合(ステップS150:NO)、正常性判定部114は、非接触給電は正常であると判断し(ステップS155)、対応制御部115は、給電管理システム900に対して正常通知を行う(ステップS160)。
【0032】
差分が第1閾値以上でないと判定された場合(ステップS150:YES)、
図4に示すように、正常性判定部114は、非接触給電は異常であると判定する(ステップS165)。対応制御部115は、変換部33による変換をオフし(ステップS170)、給電管理システム900に対して異常通知を行う(ステップS175)。上記ステップS165~S175は、上述のステップS130~S140と同じである。ステップS175の完了後、送電側にて車両10に対する送電停止が実行される(ステップS180)。具体的には、異常通知を受信した給電管理システム900は、送電制御部26に対して送電停止を命令する。送電制御部26は、図示しないリレーをオフすることにより、電源25から送電回路24への給電を停止させる。ステップS175の完了後には、ステップS140の完了後とは異なり送電停止を実行するのは、通過時高さが閾値高さよりも高いにも関わらず(ステップS125:NO)、バッテリ43への入力電圧および入力電流の実測値が想定値と第1閾値以上の差分が生じている場合(ステップS150:YES)、送電側と受電側とのいずれにおいて故障等の異常が発生しているかを特定できないため、送電側で異常が発生している場合を想定して送電を停止させるためである。ステップS180の完了後、および上述のステップS140、S160の完了後、処理はステップS105に戻る。
【0033】
以上説明した第1実施形態の給電制御装置100によれば、正常性判定部113は、送電装置2(送電コイル21)の上方を車両10が通過する際の送電装置2(送電コイル21)から受電装置3(受電コイル32)までの距離と、予め定められた高さ閾値と、の第1比較を実行し、高さ情報が示す距離が高さ閾値未満である場合に非接触給電は異常であると判断するので、車両10における正常性を精度良く特定できる。送電装置2から受電装置3までの距離が高さ閾値未満である場合、送電装置2から受電装置3に過剰に給電が行われてしまい、例えば受電装置3に含まれる受電のための回路を構成する素子が故障するおそれや、既に故障しているおそれがあるからである。
【0034】
また、正常性判定部114は、取得された高さ情報が示す距離および特定された横ずれに対応する想定値を特定し、特定された想定値と取得された実測値とを比較する第2比較を実行し、バッテリ43への入力電流と入力電圧とにおいて、想定値と実測値との差分が第1閾値以上である場合に、非接触給電は異常であると判断するので、高さまたは横ずれをもたらす異常が生じている場合に、かかる異常を精度良く特定できる。
【0035】
また、対応制御部115は、非接触給電が異常であると判断された場合には、受電装置3における受電を許可しないことと、異常通知を実行することとを実行するので、異常が発生した状態のまま非接触給電が行われてしまい、給電不足や過給電が生じることを抑制できる。
【0036】
また、高さ情報取得部111は、撮像装置60により得られる撮像画像に含まれるマーカ200を利用して、高さ情報を取得するので、自己位置推定する場合や、周囲の障害物を検出するために撮像装置60を車両10が備える構成においては、かかる撮像装置60を高さ情報取得にも兼用できる。このため、高さ情報を取得するための専用の構成を省略でき、車両10の製造コストを抑えることができる。
【0037】
また、実測値取得部113により取得された電圧センサ44および電流センサ45の実測値を時系列的に、車両10に搭載された記憶装置50に記憶させる記憶制御部116を、さらに備えるので、時系列的に取得された実測値を後において記憶装置50から読み出して利活用できる。
【0038】
また、対応制御部115は、非接触給電が異常であると判断された場合には、少なくとも異常通知として給電管理システム900に対して非接触給電が異常であることを通知し、給電管理システム900は、非接触給電が異常であることを受信した場合に、送電制御装置26を制御して、送電装置2における送電を停止させるので、非接触給電が異常であるにもかかわらず送電を実行しようとすることを抑制でき、無駄な送電を抑制できる、或いは、異常状態をより助長してしまうことを抑制できる。
【0039】
B.第2実施形態:
図6に示す第2実施形態の給電制御装置100aは、CPU110が速度要求部117としても機能する点において、第1実施形態の給電制御装置100と異なる。給電制御装置100aにおけるその他の構成、および車両10の構成は、第1実施形態と同様であるので、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0040】
速度要求部117は、走行制御部90に対して、車両10の速度に関する要求を出力する。具体的には、速度が第1速度閾値以上となる要求と、速度が第2速度閾値以下となる要求とのうちのいずれかを選択的に出力する。ここで、第2速度閾値は、第1速度閾値に比べて小さい。例えば、第1速度閾値は、15km/時であり、第2速度閾値は、5km/時である。なお、第2速度閾値が第1速度閾値よりも小さいことを満たせば、第1速度閾値および第2速度閾値として任意の値に設定してもよい。
【0041】
図7および
図8に示す第2実施形態の正常性確認処理は、ステップS160の完了後の手順において、
図3および
図4に示す第1実施形態の正常性確認処理と異なる。第2実施形態の正常性確認処理におけるその他の手順は、第1実施形態の正常性確認処理の手順と同じであるので、同一の手順には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、
図7におけるステップS140および
図8におけるステップS230の完了後には、
図4に示すように、処理はステップS105に戻る。
【0042】
図7および
図8に示すように、ステップS160が完了した場合、すなわち、通過時高さが閾値高さよりも高く、且つ、入力電流および入力電圧において実測値と想定値との差分が第1閾値よりも小さいと判定され、正常であると判断されて正常通知が実行された場合、正常性判定部114は、バッテリ43の入力電流および入力電圧において、実測値と想定値との差分が第2閾値以上であるか否かを判定する(ステップS205)。
【0043】
図9に示すように、第2閾値は、第1閾値よりも小さい値として予め設定されている。本実施形態では、実測値が、範囲Ar1のうち、想定値から第2閾値だけ大きな値以上の範囲Ar11と、想定値から第2閾値だけ小さな値以下の範囲Ar12と、のいずれかに含まれる場合には、後述するように、車両10の速度を調整するようにしている。なお、実測値と想定値との差分と、第2閾値との比較は、本開示における「第3比較」に相当する。
【0044】
図8に示すように、実測値と想定値との差分が第2閾値以上であると判定された場合(ステップS205:YES)、正常性判定部114は、実測値が推定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS210)。実測値が推定値よりも大きいと判定された場合(ステップS210:YES)、すなわち、実測値が範囲Ar11に含まれると判定された場合、速度要求部117は、車両10の速度が第1速度閾値以上となる要求を走行制御部90に出力する(ステップS215)。実測値が範囲Ar11に含まれる場合、非接触給電は正常であるが、過剰に給電が行われ易い状況といえる。そこで、本実施形態では、車両10の速度を第1速度閾値以上の比較的高速にすることで、送電装置2から受電装置3への給電を抑制し、過給電となることを予防するようにしている。
【0045】
これに対して、実測値が推定値よりも大きくないと判定された場合(ステップS210:NO)、すなわち、実測値が範囲Ar12に含まれると判定された場合、速度要求部117は、車両10の速度が第2閾値速度以下となる要求を走行制御部90に出力する(ステップS220)。実測値が範囲Ar12に含まれる場合、非接触給電は正常であるが、給電不足となり易い状況といえる。そこで、本実施形態では、車両10の速度を第2速度閾値以下の比較的定速にすることで、送電装置2から受電装置3への給電を促進し、給電不足となることを予防するようにしている。
【0046】
対応制御部115は、バッテリ43のSOC(Stage Of Charge)が低い状態(以下、「低SOC状態」と呼ぶ)であることを給電管理システム900に通知する(ステップS225)。給電管理システム900は、車両10が送電コイル21のあるルートを優先的に通過するようにルート設定し、車両10に通知する(ステップS230)。車両10において、走行制御部90は、変更後のルートを受信すると、かかるルートを走行するように車両10の走行を制御する。
【0047】
以上説明した第2実施形態の給電制御装置100aは、第1実施形態の給電制御装置100と同様な効果を奏する。加えて、速度要求部117は、正常性判断部114が非接触給電は正常であると判断した場合に、入力電流および入力電圧について、測定値と想定値との差分と、第1閾値よりも小さい第2閾値との比較(第3比較)を実行し、第3比較の結果、差分が第2閾値よりも大きく、かつ、実測値が想定値よりも大きい場合に、走行制御部90に対して速度が第1速度閾値以上となる要求を出力するので、第1速度閾値未満で走行することにより非接触給電時間が長くなり、差分がより大きくなってしまうことを抑制できる。他方、差分が第2閾値よりも大きく、かつ、実測値が想定値よりも小さい場合に、走行制御部90に対して速度が第1速度閾値よりも小さい第2速度閾値以下となる要求を出力するので、車両10が第2速度閾値以下で走行することにより非接触給電時間を長くでき、差分がより大きくなってしまうことを抑制できる。
【0048】
C.他の実施形態:
(C1)各実施形態において、横ずれに関する構成を省略してもよい。例えば、横ずれの発生が生じ難い状況であれば、横ずれを考慮せずに想定値を特定して対応マップ121を作成しておいてもよい。
【0049】
(C2)各実施形態において、対応制御部115は、受電可否の制御と、異常通知の制御とのうちの一方のみ実行してもよい。
【0050】
(C3)各実施形態において、情報取得部111は、撮像装置60により得られる撮像画像を用いずに高さ情報を取得してもよい。例えば、倉庫内の領域といった車両10の走行が予定されている領域において基準となる位置にプリズムを配置し、また、車両10の天井に光測定装置を配置し、光測定装置から発した光がプリズムにおいて反射し、かかる反射光を光測定装置において受光した場合に、反射光を利用して光測定装置の位置を特定すると共に、光測定装置から所定のオフセット量だけ鉛直下方の位置を、受電コイル32の位置として特定して、高さ情報を取得してもよい。また、特定された光測定装置の位置と車両10の位置との相対的な位置関係は予め特定できるので、光測定装置の位置が特定されると、かかる位置に基づき車両10の現在の位置座標を特定してもよい。
【0051】
(C4)各実施形態における給電制御装置100、100aはあくまでも一例であり、様々に変形可能である。例えば、実測値取得部113により取得された実測値を時系列的に記憶装置50に記憶させることを省略してもよい。また、給電管理システム900を省略して、車両10においてのみ、異常時に給電を防止するようにしてもよい。また、マーカ200(各サブマーカ201~203)の模様は、
図2に示す模様に限らず、撮像画像を利用してサブマーカの位置を特定可能な任意な模様であってもよい。また、ステップS150では、入力電圧と入力電流のうちの少なくとも一方が閾値以上であるか否かを判定するようにしてもよい。各実施形態において、車両10に代えて飛行体やロボットなど、任意の種類の移動体に給電制御装置100、100aを適用してもよい。また、非接触給電システム1が備える車両10の台数は1台に限らず、任意の数であってもよい。
【0052】
(C5)本開示に記載の給電制御装置100、100a及びそれら手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の給電制御装置100、100a及びそれら手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の給電制御装置100、100a及びそれら手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0053】
本開示は、上述の各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
10…車両(移動体)、21…送電コイル、2…送電装置、3…受電装置、100、100a…給電制御装置、111…高さ情報取得部、114…正常性判定部