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特開2024-157654サービスホール構造を有する工業製品
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  • 特開-サービスホール構造を有する工業製品 図1
  • 特開-サービスホール構造を有する工業製品 図2
  • 特開-サービスホール構造を有する工業製品 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157654
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】サービスホール構造を有する工業製品
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
F16J15/10 T
F16J15/10 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072127
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 宏
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA18
3J040BA05
3J040EA01
3J040EA16
3J040EA22
3J040FA05
3J040HA21
3J040HA30
(57)【要約】
【課題】製品ユニットとサービスカバーとの間のシール性が低下することを抑制する。
【解決手段】工業製品は、サービスホールを有する製品ユニットと、サービスホールを塞ぐサービスカバーと、製品ユニットとサービスカバーとの間に配置されるシール部材と、を備えている。製品ユニットは、サービスホールの周囲を一巡するユニット溝部を備えている。サービスカバーは、ユニット溝部に対向しながら一巡するカバー溝部を備えている。シール部材は、ユニット溝部とカバー溝部に跨って配置されているとともに、ユニット溝部とカバー溝部とのそれぞれで、各溝部の幅方向に圧縮変形されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービスホールを有する製品ユニットと、
前記サービスホールを塞ぐサービスカバーと、
前記製品ユニットと前記サービスカバーとの間に配置されるシール部材と、を備えており、
前記製品ユニットは、前記サービスホールの周囲を一巡するユニット溝部を備えており、
前記サービスカバーは、前記ユニット溝部に対向しながら一巡するカバー溝部を備えており、
前記シール部材は、前記ユニット溝部と前記カバー溝部に跨って配置されているとともに、前記ユニット溝部と前記カバー溝部とのそれぞれで、各溝部の幅方向に圧縮変形されている、
サービスホール構造を有する工業製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、サービスホール構造を有する工業製品に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品では、その組み立てや検査を目的として、サービスホール構造が採用されている。サービスホール構造は、主に、製品ユニットに形成されたサービスホールと、サービスホールを塞ぐサービスカバーと、で構成されている。製品ユニットとサービスカバーとの間には、サービスホールを密閉するために、シール部材が配置されている。この種のシール部材については、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-178505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、塩害で発生する塩等の異物が、製品ユニットとサービスカバーとの間に堆積することで、サービスカバーが製品ユニットから離反するように押し上げられることがある。この場合、製品ユニットとサービスカバーとの少なくとも一方が、シール部材から離間することにより、製品ユニットとサービスカバーとの間に隙間が発生して、製品ユニットとサービスカバーとの間のシール性が低下するおそれがある。本明細書は、製品ユニットとサービスカバーとの間のシール性が低下することを抑制することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する技術は、サービスホール構造を有する工業製品に具現化される。この工業製品は、サービスホールを有する製品ユニットと、サービスホールを塞ぐサービスカバーと、製品ユニットとサービスカバーとの間に配置されるシール部材と、を備えている。製品ユニットは、サービスホールの周囲を一巡するユニット溝部を備えている。サービスカバーは、ユニット溝部に対向しながら一巡するカバー溝部を備えている。シール部材は、ユニット溝部とカバー溝部に跨って配置されているとともに、ユニット溝部とカバー溝部とのそれぞれで、各溝部の幅方向に圧縮変形されている。
【0006】
上記の構成においても、例えば、塩害で発生する塩等の異物が、製品ユニットとサービスカバーとの間に堆積していくと、サービスカバーが製品ユニットから離反するように押し上げられる。しかしながら、サービスカバーが製品ユニットから押し上げられても、シール部材を収容するユニット溝部とカバー溝部内とのそれぞれでは、シール部材が幅方向に圧縮された状態が維持される。これにより、製品ユニットとサービスカバーとの間のシール性が維持される。また、製品ユニットとサービスカバーとの間に堆積する異物が、ユニット溝部やカバー溝部まで進出したときには、異物がシール部材を幅方向へさらに圧縮変形させる。シール部材がさらに圧縮変形することにより、シール部材が製品ユニットやサービスカバーに密着する。よって、製品ユニットとサービスカバーとの間のシール性が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例の工業製品の縦断面図である。
図2図1のII-II線での工業製品の水平断面図である。
図3】実施例の工業製品において、シール部材近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して、実施例の工業製品10について説明する。工業製品10は、例えば、電動車のための電力制御ユニットであり、バッテリと走行用モータとの間で電力変換を行うように構成されている。なお、工業製品10は、電気的な製品に限られず、機械的な製品や流体的な製品であってもよい。また、工業製品10は、例えば電動車といった、それらの各種の製品の集合体であってもよい。図1に示すように、工業製品10は、製品ユニット12と、サービスカバー14と、シール部材16と、を備えている。
【0009】
製品ユニット12は、電気部品20と、ケース22と、を備えている。電気部品20は、例えば、パワーコントロールユニット(Power Control Unit)または電力供給ユニット(Electricity Supply Unit)である。ケース22は、電気部品20を収容する。ケース22は、箱形状を有する。ケース22は、例えば、アルミ等の金属材料からなる。ケース22は、底壁24と、底壁24に接続された側壁26と、側壁26に接続された上壁28と、を備えている。電気部品20は、底壁24上に載置されている。側壁26は、電気部品20の周りを囲んでいる。
【0010】
上壁28は、壁部32と、ユニット突出部34と、ユニット溝部36と、を備えている。壁部32は、第1ユニット面32aと、第2ユニット面32bと、を備えている。第1ユニット面32aは、底壁24と対向している。第1ユニット面32aは、側壁26の周縁全体に接続されている。第2ユニット面32bは、第1ユニット面32aの反対側に配置されている。
【0011】
壁部32は、サービスホール38を有する。サービスホール38は、サービスカバー14とシール部材16とともに、サービスホール構造を構成している。サービスホール38は、壁部32を第1ユニット面32aから第2ユニット面32bまで厚み方向に貫通する。サービスホール38は、ケース22の内部と外部を連通する。
【0012】
ユニット突出部34は、第1ユニット面32aから底壁24に向かって突出している。ユニット突出部34は、サービスホール38の周囲を一巡するように延びている。ユニット溝部36は、壁部32とユニット突出部34との接続領域上に配置されている。ユニット溝部36は、第2ユニット面32bから底壁24に向かって凹んでいる。ユニット溝部36の深部は、第1ユニット面32aよりも底壁24側に配置されている。ユニット溝部36の断面は、略矩形形状を有する。図2に示すように、ユニット溝部36は、サービスホール38の周囲を一巡するように延びている。
【0013】
図1に示すように、サービスカバー14は、ボルト40を介してケース22に固定されている。サービスカバー14は、カバー部42と、カバー突出部44と、カバー溝部46と、を備えている。カバー部42は、第1カバー面42aと、第2カバー面42bと、を備えている。第1カバー面42aは、第2ユニット面32bと当接している。第1カバー面42aは、サービスホール38を塞いでいる。第2カバー面42bは、第1カバー面42aと反対側に配置されている。
【0014】
カバー突出部44は、第2カバー面42bから、底壁24から離反する方向に(上壁28から離反する方向に)突出している。カバー溝部46は、カバー部42とカバー突出部44との接続領域上に配置されている。カバー溝部46は、第1カバー面42aから、上壁28から離反する方向に凹んでいる。カバー溝部46の深部は、第2カバー面42bよりも上壁28から離れている。カバー溝部46は、ユニット溝部36と対向している。カバー溝部46の断面は、略U字形状を有する。図2に示すように、カバー溝部46は、サービスホール38の周囲を一巡するように延びている。
【0015】
図1に示すように、シール部材16は、ケース22の上壁28とサービスカバー14との間に配置されている。シール部材16は、ゴム材料等の弾性材料からなる。シール部材16の断面は、ユニット溝部36の深さ方向とカバー溝部46の深さ方向に細長い形状を有する。シール部材16は、ユニット溝部36とカバー溝部46に跨って配置されている。シール部材16は、ユニット溝部36内でユニット溝部36の幅方向に圧縮変形された状態で、上壁28に当接している。ここで、ユニット溝部36の幅方向は、ユニット溝部36内でケース22の側壁26とサービスホール38との間を延びる方向である。また、シール部材16は、カバー溝部46内でカバー溝部46の幅方向に圧縮変形された状態で、サービスカバー14に当接している。カバー溝部46の幅方向は、カバー溝部46内でケース22の側壁26とサービスホール38との間に延びる方向でもある。カバー溝部46の幅方向は、ユニット溝部36の幅方向と同一である。図2に示すように、シール部材16は、リング形状を有する。シール部材16は、サービスホール38の周囲を一巡するように延びている。
【0016】
図3に示すように、工業製品10が長期間使用されると、例えば、塩害で発生する塩等の異物Aが上壁28とサービスカバー14との間に堆積することにより、サービスカバー14が上壁28から離反するように押し上げられることがある。これにより、上壁28の第2ユニット面32bとサービスカバー14の第1カバー面42aとの間に隙間が形成される。このとき、シール部材16は、上壁28にユニット溝部36の幅方向に当接し、かつ、サービスカバー14にカバー溝部46の幅方向に当接した状態のまま、サービスカバー14の押し上げにより、ユニット溝部36内とカバー溝部46内を上壁28から離反する方向に移動する。シール部材16がユニット溝部36とカバー溝部46とに跨って配置された状態が維持されるとともに、シール部材16がユニット溝部36とカバー溝部46内で圧縮変形された状態が維持される。これにより、上壁28とサービスカバー14との間のシール性が維持される。
【0017】
また、異物Aが上壁28とサービスカバー14との間をシール部材16まで進出したとき、異物Aは、シール部材16をユニット溝部36の幅方向に沿って上壁28に押し付けるとともに、カバー溝部46の幅方向に沿ってサービスカバー14に押し付ける。シール部材16がさらに圧縮変形することにより、シール部材16が上壁28とサービスカバー14により密着する。これにより、上壁28とサービスカバー14との間のシール性が維持される。異物Aが、ユニット溝部36内とカバー溝部46内に侵入したとき、異物Aは、シール部材16をユニット溝部36の幅方向に沿って上壁28を押し付け、かつ、カバー溝部46の幅方向に沿ってサービスカバー14に押し付けながら、ユニット溝部36内とカバー溝部46内に堆積される。これにより、異物Aがケース22の内部の空間に到達するのが遅くなる。
【0018】
本実施例では、サービスホール構造を有する工業製品10は、サービスホール38を有する製品ユニット12と、サービスホール38を塞ぐサービスカバー14と、製品ユニット12とサービスカバー14との間に配置されるシール部材16と、を備えている。製品ユニット12は、サービスホール38の周囲を一巡するユニット溝部36を備えている。サービスカバー14は、ユニット溝部36に対向しながら一巡するカバー溝部46を備えている。シール部材16は、ユニット溝部36とカバー溝部46に跨って配置されているとともに、ユニット溝部36とカバー溝部46とのそれぞれで、各溝部36、46の幅方向に圧縮変形されている。
【0019】
上記の構成においても、例えば、塩害で発生する塩等の異物Aが、製品ユニット12とサービスカバー14との間に堆積していくと、サービスカバー14が製品ユニット12から離反するように押し上げられる。しかしながら、サービスカバー14が製品ユニット12から押し上げられても、シール部材16を収容するユニット溝部36とカバー溝部46内とのそれぞれでは、シール部材16が幅方向に圧縮された状態が維持される。これにより、製品ユニット12とサービスカバー14との間のシール性が維持される。また、製品ユニット12とサービスカバー14との間に堆積する異物Aが、ユニット溝部36やカバー溝部46まで進出したときには、異物Aがシール部材16を幅方向へさらに圧縮変形させる。シール部材16がさらに圧縮変形することにより、シール部材16が製品ユニット12やサービスカバー14に密着する。よって、製品ユニット12とサービスカバー14との間のシール性が低下することを抑制することができる。
【0020】
本実施例の変形例では、ケース22の上壁28は、ユニット突出部34を備えていなくてもよい。また、サービスカバー14は、カバー突出部44を備えていなくてもよい。さらに、上壁28は、側壁26と一体的に形成されておらず、側壁26に取り付け可能であってもよい。
【符号の説明】
【0021】
10:工業製品、12:製品ユニット、14:サービスカバー、16:シール部材、22:ケース、36:ユニット溝部、38:サービスホール、46:カバー溝部、A:異物

図1
図2
図3