(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157655
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】切羽評価システム及び切羽評価方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
E21D9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072128
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592161372
【氏名又は名称】NSW株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 富彦
(74)【代理人】
【識別番号】100189500
【弁理士】
【氏名又は名称】鉾田 慶亮
(72)【発明者】
【氏名】前田 智之
(72)【発明者】
【氏名】野村 貴律
(57)【要約】 (修正有)
【課題】切羽性状を適切に精度よく評価できる切羽評価システムを提供する。
【解決手段】削孔データと切羽のRGB画像データと切羽のスペクトル画像データとが入力される入力部と、削孔データを入力変数とし習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成された削孔学習モデルを用いて第1算出値を出力する第1算出部30と、RGB画像データを入力変数とし習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成されたRGB学習モデルを用いて第2算出値を出力する第2算出部40と、スペクトル画像データを入力変数とし習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成されたスペクトル学習モデルを用いて第3算出値を出力する第3算出部50と、第1算出値、第2算出値、及び第3算出値を統合して切羽評価値を算出する切羽評価値算出部60と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔するときに測定装置により測定された削孔データと、RGB画像撮像装置で取得された切羽のRGB画像データと、スペクトル画像撮像装置で取得された切羽のスペクトル画像データとが入力される入力部と、
前記削孔データを入力変数とし、当該削孔データに対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成された削孔学習モデルを用いて前記削孔データを入力データとし、出力変数として第1算出値を出力する第1算出部と、
前記RGB画像データを入力変数とし、当該RGB画像データに対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成されたRGB学習モデルを用いて前記RGB画像データを入力変数とし、出力変数として第2算出値を出力する第2算出部と、
前記スペクトル画像データを入力変数とし、当該スペクトル画像に対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成されたスペクトル学習モデルを用いて前記スペクトル画像データを入力データとし、出力変数として第3算出値を出力する第3算出部と、
前記第1算出値、前記第2算出値、及び前記第3算出値を統合して切羽評価値を算出する切羽評価値算出部と、を備える切羽評価システム。
【請求項2】
前記第1算出部は、前記削孔学習モデルを生成する際に、前記削孔学習モデルの説明変数となる前記削孔データに対して地山の地質に応じた重みづけを行う、請求項1に記載の切羽評価システム。
【請求項3】
前記重みづけがされる前記削孔データは、削孔箇所の位置情報データと、前記位置情報データに対応する削孔箇所での削孔機のフィード圧、回転圧、打撃圧、及び削孔速度のデータと、前記削孔箇所の湧水圧データの少なくとも2以上のデータを含む、請求項2に記載の切羽評価システム。
【請求項4】
前記切羽評価値算出部は、前記第1算出値、前記第2算出値、及び前記第3算出値を統合する際に、各算出値に対して地山の地質に応じた重みづけを行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の切羽評価システム。
【請求項5】
前記切羽評価値算出部は、前記第1算出値、前記第2算出値、及び前記第3算出値を入力変数とし、当該入力変数に対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成された切羽評価学習モデルを用いて、前記第1算出値、前記第2算出値、及び前記第3算出値を入力データとし、出力変数として前記切羽評価値を算出する、請求項4に記載の切羽評価システム。
【請求項6】
削孔するときに測定装置により削孔データを取得することと、
RGB画像撮像装置により切羽のRGB画像データを取得することと、
スペクトル画像撮像装置により切羽のスペクトル画像データを取得することと、
削孔データを入力変数とし、当該削孔データに対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成された削孔学習モデルに入力変数として前記削孔データを入力して第1算出値を算出することと、
RGB画像データを入力変数とし、当該RGB画像データに対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成されたRGB学習モデルに入力変数として前記RGB画像データを入力して第2算出値を算出することと、
スペクトル画像データを入力変数とし、当該スペクトル画像データに対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成されたスペクトル学習モデルに入力変数として前記スペクトル画像データを入力して第3算出値を算出することと、
前記第1算出値、前記第2算出値、及び前記第3算出値を統合して切羽評価値を算出することと、
を含む切羽評価方法。
【請求項7】
前記削孔学習モデルを生成する際に、前記削孔学習モデルの説明変数となる前記削孔データに対して地山の地質に応じて重みづけを行う、請求項6に記載の切羽評価方法。
【請求項8】
前記重みづけがされる前記削孔データは、削孔箇所の位置情報データと、前記位置情報データに対応する削孔箇所での削孔機のフィード圧、回転圧、打撃圧、及び削孔速度のデータと、前記削孔箇所の湧水圧データの少なくとも2以上のデータを含む、請求項7に記載の切羽評価方法。
【請求項9】
前記第1算出値、前記第2算出値、及び前記第3算出値を統合する際に、各算出値に対して地山の地質に応じて重みづけを行う、請求項6~8のいずれか一項に記載の切羽評価方法。
【請求項10】
前記切羽価値の算出に、前記第1算出値、前記第2算出値、及び前記第3算出値を入力変数とし、当該入力変数に対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成された切羽評価学習モデルを用いて、前記第1算出値、前記第2算出値、及び前記第3算出値を入力データとし、出力変数として前記切羽評価値を算出する、請求項9に記載の切羽評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切羽評価システム及び切羽評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの掘削工事では、施工を安全かつ合理的に進めるため、地山の地質を適切に把握することが重要である。施工者は、切羽性状(例えば岩盤の硬軟、亀裂の有無、湧水状況など)を評価することで、地山の地質を把握する。そして、施工者は、その評価の結果に基づいて、適切な安全方策を講じたり、発破工法に際して適切な爆薬の量を決定する。
【0003】
このような切羽性状の評価は、技術者が切羽を目視して行われるが、熟練が必要であり、人間の知識と経験に基づくものであるため、評価の精度にばらつきが生じるおそれがある。そこで、切羽性状の評価を、削孔時に計測したデータから自動判定する方法や、人工知能(Artificial Intelligence、AI)を活用して自動判定する方法が提案されている。例えば、下記特許文献1には、装薬孔の削孔時に計測したデータ(例えば打撃圧や、フィード圧、削孔速度等)を取得してこれに基づき切羽性状を評価する方法が開示されている。また、下記特許文献2には、トンネル施工において撮影入手した複数の学習用切羽画像を機械学習させた切羽判定モデルを用いて画像から切羽を評価する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-37786号公報
【特許文献2】特開2021-92031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、削孔時の計測データを取得して切羽性状を評価する方法では、切羽の地質の硬軟を判定することはできるが、切羽面の風化変質や、割れ目の状態、割れ目の間隔などを用いた評価はできないため、切羽性状を適切に評価できないおそれがある。また、地山の地質は、地山の成り立ちや地域などによって異なるため、上記の切羽判定モデルを用いた切羽性状評価方法では、機械学習に用いられた切羽画像の地山と実際に評価する地山とが異なる場合、切羽性状を適切に評価できないおそれがある。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、切羽を適切に精度よく評価できる切羽評価システム及び切羽評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、削孔するときに測定装置により測定された削孔データと、RGB(赤(R)、緑(G)、青(B))画像撮像装置で取得された切羽のRGB画像データと、スペクトル画像撮像装置で取得された切羽のスペクトル画像データとが入力される入力部と、削孔データを入力変数とし、当該削孔データに対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成された削孔学習モデルを用いて削孔データを入力データとし、出力変数として第1算出値を出力する第1算出部と、RGB画像データを入力変数とし、当該RGB画像データに対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成されたRGB学習モデルを用いてRGB画像データを入力変数とし、出力変数として第2算出値を出力する第2算出部と、スペクトル画像データを入力変数とし、当該スペクトル画像に対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成されたスペクトル学習モデルを用いてスペクトル画像データを入力データとし、出力変数として第3算出値を出力する第3算出部と、第1算出値、第2算出値、及び第3算出値を統合して切羽評価値を算出する切羽評価値算出部と、を備える切羽評価システムを提供する。
【0008】
また、上記した切羽評価システムでは、前記第1算出部は、削孔学習モデルを生成する際に、前記削孔学習モデルの説明変数となる前記削孔データに対して地山の地質に応じた重みづけを行ってもよい。
【0009】
また、重みづけがされる前記削孔データは、削孔箇所の位置情報データと、前記位置情報データに対応する削孔箇所での削孔機のフィード圧、回転圧、打撃圧、及び削孔速度のデータと、前記削孔箇所の湧水圧データの少なくとも2以上のデータを含んでもよい。
【0010】
また、前記切羽評価値算出部は、前記第1算出値、前記第2算出値、及び前記第3算出値を統合する際に、各算出値に対して地山の地質に応じた重みづけをしてもよい。
【0011】
また、前記切羽評価値算出部は、前記第1算出値、前記第2算出値、及び前記第3算出値を入力変数とし、当該入力変数に対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成された切羽評価学習モデルを用いて、前記第1算出値、前記第2算出値、及び前記第3算出値を入力データとし、出力変数として前記切羽評価値を算出してもよい。
【0012】
また、本発明では、削孔するときに測定装置により削孔データを取得することと、RGB画像撮像装置により切羽のRGB画像データを取得することと、スペクトル画像撮像装置により切羽のスペクトル画像データを取得することと、削孔データを入力変数とし、当該削孔データに対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成された削孔学習モデルに入力変数として前記削孔データを入力して第1算出値を算出することと、RGB画像データを入力変数とし、当該RGB画像データに対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成されたRGB学習モデルに入力変数として前記RGB画像データを入力して第2算出値を算出することと、スペクトル画像データを入力変数とし、当該スペクトル画像データに対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成されたスペクトル学習モデルに入力変数として前記スペクトル画像データを入力して第3算出値を算出することと、前記第1算出値、前記第2算出値、及び前記第3算出値を統合して切羽評価値を算出することと、を含む切羽評価方法を提供する。
【0013】
また、上記した切羽評価方法では、削孔学習モデルを生成する際に、前記削孔学習モデルの説明変数となる前記削孔データに対して地山の地質に応じて重みづけを行ってもよい。
【0014】
また、重みづけがされる前記削孔データは、削孔箇所の位置情報データと、位置情報データに対応する削孔箇所での削孔機のフィード圧、回転圧、打撃圧、及び削孔速度のデータと、前記削孔箇所の湧水圧データの少なくとも2以上のデータを含んでもよい。
【0015】
また、前記第1算出値、前記第2算出値、及び前記第3算出値を統合する際に、各算出値に対して地山の地質に応じて重みづけを行ってもよい。
【0016】
また、切羽価値の算出に、前記第1算出値、前記第2算出値、及び前記第3算出値を入力変数とし、当該入力変数に対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データにより機械学習を行い生成された切羽評価学習モデルを用いて、前記第1算出値、前記第2算出値、及び前記第3算出値を入力データとし、出力変数として前記切羽評価値を算出してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、切羽を適切に精度よく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る切羽評価システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る切羽評価システムにおけるデータの流れを示す図である。
【
図3】削孔学習モデルの生成方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】(a)は習熟技術者による切羽評価を説明するための図、(b)は削孔データの位置情報を説明するための図である。
【
図5】(a)は技術者評価データの一例を示す図、(b)は削孔データの一例を示す図である。
【
図7】切羽を評価する際の切羽評価システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、図面においては、実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現することがある。
【0020】
図1は、第1実施形態に係る切羽評価システム100の構成の一例を示すブロック図である。なお、
図1には、切羽評価システム100の他に、測定装置70、RGB画像撮像装置80、及びスペクトル画像撮像装置90も示している。切羽評価システム100は、切羽を評価し、切羽性状を判定するためのシステムである。
【0021】
測定装置70は、削孔データを測定する装置である。削孔データとは、削孔する際の削孔機(例えばドリルジャンボなどの切羽穿孔機)の動作状況又は削孔箇所の湧水状況を示すデータである。削孔機の動作状況を示すデータとは、例えば、削孔機が回転する削孔ビットを押し付けながら削孔するときの削孔ビットの回転圧、打撃圧、及び削孔速度のデータである。湧水状況を示すデータとは、例えば、削孔箇所における湧水の圧力(湧水圧)や湧水の量のデータである。測定装置70は、各種センサを含み構成され、例えば、削孔機に搭載されたセンサである。本実施形態では、測定装置70は、上記の回転圧、打撃圧、削孔速度、及び湧水圧の各データを、切羽の削孔箇所を示す位置情報データと共に取得する。なお、本実施形態において、削孔データは、削孔箇所の位置情報データと、位置情報データに対応する削孔箇所での削孔機のフィード圧、回転圧、打撃圧、及び削孔速度のデータと、削孔箇所の湧水圧データを含むが、これらのうち少なくとも2以上のデータを含んで構成されてもよい。位置情報データは、例えば、平面的又は空間的な座標データである。
【0022】
RGB画像撮像装置80は、切羽を削孔する前(測定装置70が削孔データを取得する前)の切羽のRGB画像データを取得する装置である。このRGB画撮像装置80は、例えば、カラーカメラである。
【0023】
スペクトル画像撮像装置90は、切羽を削孔する前の切羽のスペクトル画像データ(以下、単に「SP画像データ」と称する場合がある。)を取得する装置である。このスペクトル画撮像装置90は、例えば、マルチスペクトルカメラである。スペクトル画像撮像装置90が取得するスペクトル画像データは、例えば、複数の波長帯の電磁波を記録した画像のデータであり、可視光線、紫外線、赤外線、遠赤外線などの波長帯の電磁波が記録される。
【0024】
測定装置70、RGB画像撮像装置80、及びスペクトル画像撮像装置90は、それぞれ切羽評価システム100とデータ通信可能である。
【0025】
図1に示すように、切羽評価システム100は、入力部10、記憶部20、第1算出部30、第2算出部40、第3算出部50、及び切羽評価値算出部60を有している。切羽評価システム100は、コンピュータにより構成される。
【0026】
入力部10は、測定装置70で測定された削孔データと、RGB画像撮像装置80で取得された切羽のRGB画像データと、スペクトル画像撮像装置90で取得された切羽のスペクトル画像データとを入力する処理部である。また、入力部10は、測定装置70から入力された削孔データ、RGB画像撮像装置80から入力されたRGB画像データ、及びスペクトル画像撮像装置90から入力されたスペクトル画像データのそれぞれに、削孔箇所の位置情報(例えば座標データ)を対応付ける。
【0027】
記憶部20は、切羽評価システム100の動作において入力あるいは出力される各種のデータ等を記憶する。例えば、記憶部20には、入力部10から入力された削孔データ、RGB画像データ、スペクトル画像データ、いずれも後述する、削孔学習モデル31の生成に用いられる削孔教師データ、重みづけデータ、技術者評価データなどが記憶される。なお、削孔学習モデル31の生成に用いられる削孔教師データは、所定の評価項目(例えば、岩盤強度、風化変質)について、切羽の削孔箇所の削孔データ(
図5(b)参照)と、当該削孔箇所の習熟技術者による切羽評価点を含むデータ(
図5(a)参照)とが対応付けられたデータである。
【0028】
また、記憶部20には、切羽評価システム100が後述する処理を実現するためのプログラムが記憶されている。切羽評価システム100を構成するコンピュータの演算手段が当該プログラムを実行することにより、第1算出部30、第2算出部40、第3算出部50、切羽評価値算出部60といった各機能が構成される。
【0029】
図2は、第1実施形態に係る切羽評価システム100におけるデータの流れを示す図である。引き続き、切羽評価システム100の構成について
図2を参照しつつ説明する。
【0030】
第1算出部30は、削孔データを入力変数とし、当該削孔データに対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データ(以下、他の教師データと区分するため削孔教師データという。)を用いた機械学習により削孔学習モデル31を生成する処理部である。また、第1算出部30は、入力部10に入力された削孔データ71を入力データとして削孔学習モデル31を用いて切羽評価である第1算出値32を算出する処理部である。
【0031】
第2算出部40は、RGB画像データを入力変数とし、当該RGB画像データに対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データ(以下、他の教師データと区分するためRGB教師データという。)を用いた機械学習により生成されたRGB学習モデル41を用いて、入力部10に入力されたRGB画像データ81を入力データとして切羽評価である第2算出値42を算出する処理部である。
【0032】
第3算出部50は、スペクトル画像データを入力変数とし、当該スペクトル画像に対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とする教師データ(以下、他の教師データと区分するためスペクトル教師データという。)を用いた機械学習により生成されたスペクトル学習モデル51を用いて、入力部10に入力されたスペクトル画像データ91を入力データとして切羽評価である第3算出値52を算出する処理部である。なお、以下では、スペクトル学習モデルを単に「SP学習モデル」と称することがある。
【0033】
切羽評価値算出部60は、第1算出部30、第2算出部40、及び第3算出部50により算出された各切羽評価第1算出値32、第2算出値42、及び第3算出値52を統合して総合的に算出された切羽評価である切羽評価値62を算出する処理部である。切羽評価値算出部60は、教師データを用いた機械学習により生成された切羽評価学習モデル61を用いて切羽評価値62を算出する。
【0034】
ここで、削孔学習モデル31の生成方法について説明する。削孔学習モデル31は、削孔教師データを用いた機械学習により生成される。具体的な生成方法は、例えば次のとおりである。
図3は、削孔学習モデル31の生成方法の一例を示すフローチャートである。
図4(a)は、習熟技術者による切羽評価について説明するための図である。
図5(a)は、技術者評価データの一例を示す図である。
【0035】
図3に示す処理において、第1算出部30は、習熟技術者による切羽評価点データ(技術者評価データ)を取得する(ステップS01)。ステップS01で取得される技術者評価データは例えば次のように作成される。まず、切羽Cの画像データIMにおいて切羽Cの画像を複数の区分に分割する。例えば
図4(a)に示すように、切羽Cの画像を任意のサイズのメッシュで区分する。分割された画像D,D・・・のファイルデータにはそれぞれファイル番号(例えば「101」、「102」、「103」)が対応付けられる。そして、分割された画像Dごとに、切羽の所定の評価項目(例えば岩盤強度、割れ目)について、習熟技術者が切羽を実際に目視するなどして評価し評価点を決定することで、技術者評価データが作成される。
図5(a)に示す例では、切羽Cにおいてファイル番号「101」に対応する領域の岩盤強度の評価点は「10」、割れ目の評価点は「20」、ファイル番号「102」に対応する領域の岩盤強度の評価点は「15」などとなっている。技術者評価データは、上述した削孔教師データを構成する出力変数データである。
【0036】
また、第1算出部30は、削孔データを取得する(ステップS02)。
図4(b)は、削孔データの位置情報について説明するための図である。ステップS02では、切羽Cの複数の削孔H1,H2,H3等のそれぞれについて、削孔番号(例えば「1」,「2」等)が対応付けられ、それぞれの位置情報及び削孔データを取得する。取得された位置情報と削孔データとは削孔Hごとにそれぞれ対応付けられる。削孔Hの位置情報としては、例えば、
図4(b)に示すように、切羽面における水平方向の位置をX、垂直方向の位置をYに設定したときのローカル座標(X,Y)のデータが用いられる。例えば、削孔H1の位置情報は「(X1,Y1)」、削孔H2の位置情報は「(X2,Y2)」となる。
図5(b)は、削孔データの一例を示す図である。
図5(b)に示す例では、削孔番号「1」の削孔(例えば削孔H1)に係る座標(例えば(X1,Y1))は(1,1)、フィード圧は「40MPa」、削孔番号「2」の削孔Hに係る座標は「(2,2)」などとなっている。なお、ステップS02において取得される削孔データは、技術者評価データと共に削孔教師データを構成するデータである。削孔教師データは、削孔学習モデル31を機械学習するときに用いられる教師データであり、削孔データを入力変数とし当該削孔データに対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とするデータである。削孔教師データは、評価項目ごとに習熟技術者による評価点と削孔データとを対応させたデータであるので、容易に取得(採取)が可能である。
【0037】
ステップS02に引き続き、削孔データに重みづけを行う(ステップS03)。ステップS03では、削孔学習モデル31を機械学習するときに削孔学習モデル31に入力される削孔データに対して重みづけを行う。地山はその成り立ちや地域などによって地質が異なるため、削孔した切羽の地山の地質に応じて削孔データに重みづけをする。ステップS03では、まず、記憶部20のデータから重みづけに係る数値を読み取る。具体的には、いずれも予め記憶部20に記憶されたデータである、地山ごとの地質レベルを示す地質レベルデータ(不図示)と、地質のレベルに応じて設定された重みづけに係る数値を含む重みづけデータとの両データから重みづけに係る数値を読み取る。
図6は、この重みづけデータの一例を示す図である。
図6に示す例では、地山の地質を「1」、「2」、「3」などのレベルに分けてレベルごとに重みづけに係る数値が設定されている。即ち、地山の地質に応じて重みづけに係る数値が設定されている。例えば、削孔された地山の地質レベルが「1」の場合に「フィード圧」の数値に対する重み係数は「2.1」、地質レベルが「2」の場合に「座標(X,Y)」に対する重み係数は「1.0」などとなっている。ステップS03では、地質レベルデータから削孔した地山の地質レベル(例えば「1」、「2」、「3」・・・)を読み取り、読み取った地質レベルの重みづけに係る数値を重みづけデータから読み取る。そして、重みづけデータから読み取った数値を重み係数として削孔データを重みづけする。このように、削孔学習モデル31を機械学習させる際に、削孔学習モデル31への入力変数に対して地山の地質に応じた重みづけを行う。
【0038】
前述したステップS03では、削孔データを構成する全てのデータに対してそれぞれ重みづけをする。即ち、削孔箇所の位置情報データ、位置情報データに対応する削孔箇所での削孔機のフィード圧、回転圧、打撃圧、及び削孔速度のデータ、削孔箇所の湧水圧データ、を含むデータに対してそれぞれ重みづけする。なお、ステップS03では、このように削孔データを構成する全てのデータを重みづけするのではなく、削孔データを構成するデータの一部についてだけ重みづけをしてもよい。例えば、ステップS03では、上記位置情報データ、上記フィード圧、回転圧、打撃圧、及び削孔速度のデータ、並びに上記湧水圧データのうち少なくとも2以上のデータについて重みづけをしてもよい。
【0039】
続いて、機械学習を行う(ステップS04)。ステップS04では、削孔教師データを用いて行われ、重みづけされた削孔データの数値を入力したときに、これに対応する切羽評価点を出力するように機械学習する。このとき、出力する切羽評価点は、入力される削孔データの位置情報(つまり削孔Hの位置)に基づいて決定され、切羽面のうち当該位置情報の示す位置を含む領域の評価値が用いられる。例えば、位置(X1,Y1)の削孔H1の削孔データを入力したとき、この削孔H1の位置(X1,Y1)を含む画像D1(領域R)(
図4(b)参照)の切羽評価点を出力するように機械学習する。このような機械学習により削孔学習モデル31が生成される。削孔学習モデル31は、削孔データを説明変数とし第1算出値32を目的変数とする学習モデルであり、削孔データの各数値が入力されると第1算出値32を出力する。
【0040】
RGB学習モデル41は、RGB画像データが入力されると第2算出値42を出力する。スペクトル学習モデル51は、スペクトル画像データが入力されると第3算出値52を出力する。RGB学習モデル41及びスペクトル学習モデル51は、重みづけの設定(ステップS03)を要しない点を除き、上述した削孔学習モデル31の生成方法と同様に、各教師データを用いて機械学習することにより生成される。RGB学習モデル41を生成するときに用いられるRGB教師データは、切羽の所定領域における習熟技術者の評価点と当該領域のRGB画像とが対応付けられたデータを含み、RGB画像データを入力変数とし当該RGB画像データに対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とするデータである。スペクトル学習モデル51を生成するときに用いられるスペクトル教師データは、切羽の所定領域における習熟技術者の評価点と当該領域のスペクトル画像とが対応付けられたデータとを含み、スペクトル画像データを入力変数とし当該スペクトル画像に対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とするデータである。切羽評価学習モデル61の生成方法については後述する。
【0041】
切羽評価システム100は、例えばトンネル工事現場などにおいて、上記した学習モデルを用いて切羽を評価する。
【0042】
続いて、切羽評価システム100の動作について説明する。
図7は、切羽を評価する際の、切羽評価システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
図7において、ステップS11~ステップS13については第1算出部30が実行し、ステップS21~ステップS24については第2算出部40が実行し、ステップS31~ステップS34については第3算出部50が実行する。また、ステップS14、ステップS25、ステップS35、ステップS41、及びステップS42は切羽評価値算出部60が実行する。以下、
図7のフローチャートに沿って説明する。
【0043】
図7に示すように、まず、切羽の削孔データを取得する(ステップS11)。ここで取得される削孔データは、評価及び判定の対象となる切羽の削孔データである。ところでトンネル工事などにおいては、切羽の一部を削孔機で削孔してさぐり孔や発破孔などを設ける。ステップS11では、このような削孔の際に測定装置70で測定された削孔データを入力部10を介して取得する。ここで入力される削孔データには、削孔箇所の位置情報データ(例えば、上記の座標(X,Y)データ)が含まれる。
【0044】
また、切羽のRGB画像データを取得する(ステップS21)。ステップS21では、削孔前にRGB画像撮像装置80が撮像し取得した、切羽のRGB画像データを入力部10を介して取得する。そして、取得されたRGB画像を削孔位置に応じて切り出す(ステップS22)。ステップS22では、入力されたRGB画像データについて、ステップS11で入力された位置情報データに基づき、削孔位置のそれぞれに対応する画像を切り出す。例えば、削孔箇所ごとに削孔位置を中心とする1m
2の正方形状のRGB画像を切り出す(
図9(b)参照)。このようにして削孔箇所ごとにRGB画像が生成される。
【0045】
また、切羽のSP画像データを取得する(ステップS31)。ステップS31では、削孔前にスペクトル画像撮像装置90が撮像し取得した、切羽のSP画像データを入力部10を介して取得する。そして、取得されたスペクトル画像を削孔位置に応じて切り出す(ステップS32)。ステップS32では、入力されたSP画像データについて、ステップS11で取得された位置情報データに基づき、削孔位置のそれぞれに対応する画像を切り出す。例えば、削孔箇所ごとに削孔位置を中心とする1m2の正方形状のスペクトル画像を切り出す。このようにして削孔箇所ごとにRGB画像が生成される。
【0046】
ステップS22及びステップS32において削孔位置ごとに生成されたRGB画像データ及びSP画像データは、それぞれ対応する削孔位置の削孔データと紐付けられる。したがって、削孔の位置情報データ(例えば座標データ)、削孔データ、RGB画像データ、及びSP画像データの各データを紐づけしたデータが、切羽Cの削孔Hごとに生成される。
【0047】
ステップS11に引き続き、削孔学習モデル31に削孔データを入力し(ステップS12)、第1算出値32を算出する(ステップS13)。また、ステップS22に引き続き、RGB学習モデル41にRGB画像データを入力し(ステップS23)、第2算出値42を出力(算出)する(ステップS24)。第2算出値42は、RGB画像データに基づいて切羽性状を数値化したデータである。また、ステップS32に引き続き、SP学習モデル51にSP画像データを入力し(ステップS33)、第3算出値52を出力(算出)する(ステップS34)。第3算出値52は、SP画像データに基づいて切羽性状を数値化したデータである。出力(算出)された第1~第3算出値32,42,52は、切羽評価値62を求める説明変数である。
【0048】
続いて、ステップS13で算出された第1算出値32に対して重みづけを行う(ステップS14)。また、ステップS24で算出された第2算出値42に対して重みづけを行う(ステップS25)。また、ステップS34で算出された第3算出値52に対して重みづけを行う(ステップS35)。即ち、切羽評価値62を求める説明変数の数値に対して重みづけを行う。
【0049】
ステップS14、ステップS25、及びステップS35では、予め記憶部20に記憶された、地山ごとの地質レベルを示す地質レベルデータと、地質のレベルに応じて決定された重みづけの数値を含む重みづけデータと、を共に読み取ることで重み係数が決定される。このとき、評価対象の地山の地質レベル(例えば「1」、「2」、「3」・・・)を地質レベルデータから読み取り、読み取った地質レベルに係る重みづけに係る数値を重みづけデータから読み取る。
図8は、重みづけデータの一例を示す図である。
図8に示す例では、削孔された地山の地質レベルが「1」の場合に第1算出値32に対して設定される重みづけに係る数値は「1.1」、地質レベルが「2」の場合に第1算出値32に対して設定される重みづけに係る数値は「1.0」などとなっており、地山の地質レベルに応じて各算出値に対する重み係数の数値が設定されている。
【0050】
ステップS14、ステップS25、及びステップS35に引き続き、それぞれ重みづけを行った後の第1算出値32、第2算出値42、及び第3算出値52を切羽評価学習モデル61に入力する(ステップS41)。これにより、重みづけされた第1~3算出値32等が統合され、切羽評価学習モデル61により算出された切羽評価値62が出力される。このようにして、選択された評価項目に係る切羽評価値62が算出される。そして、算出された切羽評価値62に基づいて切羽性状を判定する。
【0051】
ステップS41で用いられる切羽評価学習モデル61は、教師データを用いた機械学習により生成される。ここで用いられる教師データは、習熟技術者による総合的な切羽の評価と、第1算出値32、第2算出値42、及び第3算出値52と、が対応付けられたデータを含む。第1算出値32、第2算出値42、及び第3算出値52の数値を入力したときに、これに対応する切羽の技術者評価データを出力するように機械学習することで生成される。
【0052】
以上説明した切羽評価システム100及び切羽評価方法によれば、次のような効果を発揮できる。即ち、上記のシステム及び方法では、切羽の判定に影響する性質の異なる複数のデータ(削孔データ、RGB画像データ、及びSP画像データ)を取得すると共に、取得したデータを複数の算出手段(第1~第3算出部30,40,50及び切羽評価値算出部60)を用いて切羽評価値62を算出し、算出した第1算出値32、第2算出値42、及び第3算出値52を統合することにより切羽評価値62を算出するので、切羽評価値62を精度よく算出できる。したがって、このように精度よく算出された切羽評価値62に基づいて切羽性状を適切に判定することができる。
【0053】
また、削孔学習モデル31に削孔教師データを入力する際、並びに、第1~第3算出値32,42,52を統合する際に、入力変数及び各算出値32,42,52に対して、それぞれ地山の地質に応じた重みづけを行うので、地山の地質に応じた適切な切羽評価値62を得ることができる。
【0054】
また、削孔データは、削孔箇所の位置情報データと、位置情報データに対応する削孔箇所での削孔機のフィード圧、回転圧、打撃圧、及び削孔速度のデータと、削孔箇所の湧水圧データとを含むので、このように種々の測定データを用いることで、切羽評価の誤差やばらつきを減少させ、より一層精度の高い切羽評価値を得ることができる。
【0055】
また、切羽評価値算出部60は、第1算出値32、第2算出値42、及び第3算出値52を説明変数とする切羽評価学習モデル61を用いて切羽評価値62を算出するので、より適切な切羽評価値62を得ることができる。
【0056】
続いて、第2実施形態に係る切羽評価システムについて説明する。
図9は、第2実施形態を説明するための図である。なお、本実施形態の説明では、上記した第1実施形態と同一又は同等の内容の説明を省略する。
【0057】
上記した第1実施形態では、切羽評価学習モデル61の切羽評価値62を求める説明変数は、第1算出値32、第2算出値42、及び第3算出値52であったが、第2実施形態では、これらに加えて、
図9(a)に示すように、距離、角度(方向)、最大値、最小値、平均値、及び分散値(以下、これらを「距離等」という。)が、切羽評価値62を求める説明変数に加わる。即ち、第2実施形態では、これらの距離や最大値といった数値も切羽評価学習モデル61に入力することで切羽評価値62を算出する。なお、この場合に用いられる切羽評価学習モデル61は教師データを用いた機械学習により生成されるが、ここで用いられる教師データは、習熟技術者による切羽の評価点と、第1算出値32、第2算出値42、第3算出値52、及び距離等とが対応付けられたデータを含み、第1算出値32、第2算出値42、第3算出値52、及び距離等を入力変数とし、第1算出値32、第2算出値42、第3算出値52、及び距離等に対応する習熟技術者による切羽評価を出力変数とするデータである。
【0058】
切羽評価学習モデル61の切羽評価値62を求める説明変数において距離とは、削孔H間の距離をいい、例えば、
図9(b)(c)に示すように、切羽面上において隣接する削孔Hどうしのユークリッド距離をいう。また、角度(方向)とは、例えば、切羽面における削孔Hどうしを結ぶ線分と水平線とのなす角度(水平角)をいう。なお、
図9(c)では、削孔H4と削孔H6とのユークリッド距離及び角度を例示している。また、上記した説明変数の最大値、最小値、平均値、及び分散値とは、切羽Cの削孔Hを含む領域の切羽評価値62について当該削孔Hを含む複数の削孔Hに係るデータを用いて算出する場合に、これら複数の削孔Hに係るデータの最大値、最小値、平均値、及び分散値をいい、例えば、所定の削孔Hとこれを囲む複数の削孔Hとのそれぞれのユークリッド距離の最大値、最小値、平均値、及び分散値、並びに、上記複数の削孔Hにおける第1算出値32、第2算出値42、及び第3算出値52の最大値、最小値、平均値、及び分散値である。
【0059】
上述したように、第1算出値32、第2算出値42、及び第3算出値52を算出する過程で、切羽Cの削孔Hごとに、その位置情報データ(例えばローカル座標データ)、削孔データ、RGB画像データ、及びSP画像データの各データを互いに紐づけしたデータが生成される。削孔H1に着目した場合、上述した第1実施形態では、この削孔H1の位置情報データ、削孔H1の削孔データ、削孔H1のRGB画像データ、及び削孔H1のSP画像データを用いて切羽評価値62を算出する。これに対して、第2実施形態では、さらに、この削孔H1に隣接する削孔H2~H7に係る各種データ等を用いて切羽評価値62を算出する。
【0060】
図9(b)に示すように、切羽Cにおいて、削孔H4に隣接し削孔H4を囲む6つの削孔H5~H10があるときに、削孔H4に着目した場合、削孔H4を含む領域の切羽評価値62は、例えば次のように算出される。
【0061】
まず、H4~H10の削孔データ、H4~H10のRGB画像データ(画像A,a~f)、削孔H4~H10のSP画像データを用いて、削孔H4~H10のそれぞれに対応する第1算出値32、第2算出値42、及び第3算出値52を算出する。第1算出値32、第2算出値42、及び第3算出値52のそれぞれは、評価項目(例えば岩盤強度、割れ目など)ごとに分けて算出された複数のデータを含んでいる。また、算出した第1算出値32、第2算出値42、及び第3算出値52についてそれぞれの平均値及び分散値を算出する。また、削孔H4と、これを囲む削孔H5~H10のそれぞれとのユークリッド距離を算出し、これらのユークリッド距離の平均値及び分散値をさらに算出する。また、削孔H4と削孔H5~H10との位置により定まる上記角度(方向)をそれぞれ算出する。
【0062】
そして、算出された上記データ、即ち、削孔H4~H10のそれぞれに対応する第1算出値32並びにその最大値及び最小値、削孔H4~H10のそれぞれの位置に対応する第2算出値42並びにその最大値及び最小値、削孔H4~H10のそれぞれの位置に対応する第3算出値52並びにその最大値及び最小値、削孔H4~H10に係る第1算出値32、第2算出値42、及び第3算出値52の平均値及び分散値、算出した上記ユークリッド距離並びにその最大値、最小値、平均値、及び分散値、上記角度(方向)を切羽評価学習モデル61に入力することにより、切羽評価値62が算出される。このように、第2実施形態では、第1算出値32、第2算出値42、及び第3算出値52を統合し、さらに距離等のデータを用いて、切羽評価値62を算出する。このような第2実施形態によれば、切羽評価値62をより一層精度よく算出することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記の実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能である。また、切羽価値62を求めるため切羽評価値学習モデルへの入力変数として第1算出値、第2算出値、第3算出値を用いるとしたが、第1算出値と第2算出値、若しくは第1算出値と第3算出値だけを入力変数として用いるようにしてもよく、上記の実施形態で説明した要件の一つ以上は、省略されることがある。そのような変更または改良、省略した形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
10 入力部
30 第1算出部
31 削孔学習モデル
32 第1算出値
40 第2算出部
42 第2算出値
50 第3算出部
52 第3算出値
60 切羽評価値算出部
70 測定装置
80 RGB画像撮像装置
90 スペクトル画像撮像装置
100 切羽評価システム