(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157656
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241031BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20241031BHJP
H01M 10/667 20140101ALI20241031BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241031BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H02M3/155 W
H01M10/615
H01M10/667
H05K7/20 M
H02M3/155 H
H02J7/00 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072129
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 泰輝
【テーマコード(参考)】
5E322
5G503
5H031
5H730
【Fターム(参考)】
5E322AA07
5E322AA10
5E322DA04
5E322DB06
5E322EA10
5E322FA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CB11
5G503DA02
5G503GB06
5H031AA09
5H031CC09
5H031HH06
5H730AS04
5H730AS13
5H730BB14
5H730BB82
5H730BB88
5H730DD03
5H730FD61
5H730FG12
5H730ZZ07
(57)【要約】
【課題】バッテリの温度を上昇させるための新規な技術を提供すること。
【解決手段】電源システムは、バッテリと、バッテリに対して互いに並列に接続された複数のコンバータを含む電力制御ユニットと、バッテリ及び複数のコンバータを冷却する冷却システムと、複数のコンバータの動作を制御する制御装置と、を備えてもよい。制御装置は、バッテリの温度又はそれに関連する指標に応じて、創熱制御を実行するように構成されており、創熱制御では、複数のコンバータ間で循環電流が流れるように、複数のコンバータの動作が制御されてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源システムであって、
バッテリと、
前記バッテリに対して互いに並列に接続された複数のコンバータを含む電力制御ユニットと、
前記バッテリ及び前記複数のコンバータを冷却する冷却システムと、
前記複数のコンバータの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記バッテリの温度又はそれに関連する指標に応じて、創熱制御を実行するように構成されており、
前記創熱制御では、前記複数のコンバータ間で循環電流が流れるように、前記複数のコンバータの動作が制御される、
電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、バッテリを有する電源システムに関し、特に、バッテリの温度を上昇させる技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
バッテリの温度が比較的低いと、充放電可能な電力が小さくなる。例えば、特許文献1には、バッテリの温度を上昇させる技術が開示されている。この技術では、低いスイッチング周波数で昇圧回路を制御してリプル電流を大きくする。リプル電流が大きいと、バッテリの内部抵抗の発熱(即ちバッテリ自体の発熱)が増加し、バッテリの温度が上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、バッテリの温度を上昇させるための新規な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、電源システムを開示する。電源システムは、バッテリと、前記バッテリに対して互いに並列に接続された複数のコンバータを含む電力制御ユニットと、前記バッテリ及び前記複数のコンバータを冷却する冷却システムと、前記複数のコンバータの動作を制御する制御装置と、を備えてもよい。前記制御装置は、前記バッテリの温度又はそれに関連する指標に応じて、創熱制御を実行するように構成されており、前記創熱制御では、前記複数のコンバータ間で循環電流が流れるように、前記複数のコンバータの動作が制御されてもよい。
【0006】
上記の構成によると、制御装置は、バッテリの温度又はそれに関連する指標に応じて、創熱制御を実行する。創熱制御では、複数のコンバータ間で循環電流が流れるように、複数のコンバータの動作が制御される。循環電流が複数のコンバータを流れると、複数のコンバータは発熱する。複数のコンバータが発熱すると、冷却システムを流れる冷媒の温度が上昇する。温度が上昇した冷媒がバッテリを通過すると、バッテリの温度が上昇する。このようにして、バッテリの温度を上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1(A)は、電源システムの概略図を示し、
図1(B)は、電源システムの回路図を示す。
【
図2】創熱制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3(A)は、第1スイッチング素子及び第3スイッチング素子を流れる循環電流を示し、
図3(B)は、第2スイッチング素子及び第4スイッチング素子を流れる循環電流を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照して、実施例の電源システム100を説明する。実施例の電源システム100は、モータで走行する電動車両に搭載される。
図1(A)に示されるように、電源システム100は、バッテリ2と、モータ8と、電力制御ユニット10と、制御装置20と、冷却システム200と、を備える。バッテリ2は、例えば二次電池である。モータ8は、例えば三相交流モータである、電力制御ユニット10は、バッテリ2の直流電力を、モータ8に供給する三相交流電力に変換する。制御装置20は、電力制御ユニット10の動作を制御する。冷却システム200は、バッテリ2、モータ8、及び電力制御ユニット10を冷却する。
【0009】
冷却システム200は、冷媒が流れる冷媒流路202と、オイルクーラ204と、オイルが流れるオイル流路206と、を備える。冷媒流路202は、バッテリ2と電力制御ユニット10とオイルクーラ204とを通過している。冷媒は、例えば水又はLLC(Long Life Coolant)である。オイル流路206は、オイルクーラ204とモータ8とを通過している。冷媒流路202を流れる冷媒は、オイルクーラ204を通過する際に、オイル流路206を流れるオイルを冷却する。冷却されたオイルがモータ8を通過することで、モータ8は冷却される。
【0010】
図1(B)に示されるように、電力制御ユニット10は、インバータ6と、2個のコンバータ12,14と、を備える。また、バッテリ2と2個のコンバータ12,14との間には、平滑コンデンサ4が配置されている。第1コンバータ12及び第2コンバータ14は、バッテリ2とインバータ6との間に接続されている。第1コンバータ12及び第2コンバータ14は、バッテリ2に対して互いに並列に接続されている。第1コンバータ12及び第2コンバータ14は、例えばDC-DCコンバータであり、バッテリ2の直流電力を昇圧して、インバータ6へ昇圧された直流電力を供給する。インバータ6は、モータ8に接続されている。インバータ6は、例えば三相交流インバータであり、第1コンバータ12及び第2コンバータ14からの直流電力を三相交流電力に変換して、モータ8に供給する。制御装置20は、特に、第1コンバータ12及び第2コンバータ14のそれぞれの動作を制御する。
【0011】
第1コンバータ12は、第1スイッチング素子12aと、第2スイッチング素子12bと、第1コイル12cと、を有する。第1スイッチング素子12aの一端は、コイル12cを介してバッテリ2の正極に接続されている。第1スイッチング素子12aの他端は、インバータ6の正極側に接続されている。第2スイッチング素子12bの一端は、バッテリ2の負極及びインバータ6の負極側の間の接続点に接続されている。第2スイッチング素子12bの他端は、第1コイル12cを介してバッテリ2の正極に接続されていると共に、第1スイッチング素子12aの一端に接続されている
【0012】
第2コンバータ14は、第3スイッチング素子14aと、第4スイッチング素子14bと、第2コイル14cと、を有する。第3スイッチング素子14aの一端は、コイル14cを介してバッテリ2の正極に接続されている。第3スイッチング素子14aの他端は、インバータ6の正極側に接続されている。第4スイッチング素子14bの一端は、バッテリ2の負極及びインバータ6の負極側の間の接続点に接続されている。第4スイッチング素子14bの他端は、第2コイル14cを介してバッテリ2の正極に接続されていると共に、第3スイッチング素子14aの一端に接続されている。
【0013】
一般的に、バッテリ2の温度が比較的低いと、バッテリ2の充放電可能な電力が小さくなる。そこで、制御装置20は、バッテリ2の温度が比較的低い状況において、
図2の処理によってバッテリ2の温度を上昇させる。
図2の処理は、例えば、電動車両の充電時に実行される。即ち、
図2の処理は、例えば、電動車両の停車時に実行される。
【0014】
制御装置20は、S12において、バッテリ2の温度が所定の閾値(例えば0℃)以下であるのか否かを判断する。具体的には、電源システム100は、図示省略の温度センサを備える。温度センサはバッテリ2の温度を測定するように構成されている。また、温度センサは、制御装置20と通信可能に構成されている。制御装置20は、温度センサからバッテリ2の温度を取得する。そして、制御装置20は、温度センサから取得したバッテリ2の温度が閾値以下である場合(S12でYES)、即ちバッテリ2の温度が比較的低い場合に、創熱制御を開始して(S14)、循環電流モードに制御する(S16)。
【0015】
本明細書において、「創熱制御」とは、冷却システム200を利用して(即ち冷媒流路202を流れる冷媒を利用して)、バッテリ2の温度を上昇させる制御のことを意味する。特に、本実施例の制御装置20は、コンバータ12,14を循環電流モードに制御することによって、創熱制御を実行する。具体的には、制御装置20は、第1コンバータ12及び第2コンバータ14の間で循環する循環電流が流れるように、各スイッチング素子12a,12b,14a,14bを制御する。循環電流モードでは、例えば
図3(A)、(B)において矢印で示すように、第1コンバータ12及び第2コンバータ14の両方に亘って循環電流が流れ続ける。各コンバータ12,14に電流が流れると、各コンバータ12,14は発熱する。冷媒流路202を流れる冷媒が発熱した各コンバータ12,14を通過すると、各コンバータ12,14は冷却されると共に、冷媒の温度は上昇する。温度が上昇した冷媒がバッテリ2を通過すると、比較的低い温度のバッテリ2が暖められる。このようにして、創熱制御によって、バッテリ2の温度を上昇させることができる。制御装置20は、バッテリ2の温度が上記の閾値よりも高い温度になると、創熱制御を終了する(S12でNO)。
【0016】
また、循環電流モードに制御することなく、創熱制御を実行することも考えられる。具体的には、創熱制御として、電動車両を駆動させることなく、電力制御ユニット10(即ちインバータ6及びコンバータ12,14)、及びモータ8に電流を流す制御が考えられる。この創熱制御でも、電力制御ユニット10及びモータ8が発熱するので、これらを冷却する際に温度が上昇する冷媒によって、バッテリ2の温度を上昇させることができる。しかしながら、このような創熱制御では、電動車両が駆動することなくモータ8に電流が流れるので、三相交流モータであるモータ8の特定の相に電流が流れ、他の相には電流が流れない。このため、モータ8の当該特定の相に負荷が集中してしまう。これに対して、上記の実施例では、コンバータ12,14の間に循環電流を流すことで、上記のモータ8の特定の相に負荷が集中してしまうという事象を抑制することができる。
【0017】
また、バッテリ2の温度を上昇させる手法として、従来技術のようにリプル電流を利用することが考えられる。しかしながら、バッテリ2にリプル電流が流れることでバッテリ2の温度を上昇させると、バッテリ2の負荷が高い。これに対して、上記の実施例では、バッテリ2自身を発熱させないので、バッテリ2の負荷を低減することができる。
【0018】
なお、上記の実施例では、制御装置20は、バッテリ2の温度が閾値以下であるのか否かを判断する(
図2のS12)。これに代えて、変形例では、制御装置20は、S12において、冷媒流路202を流れる冷媒の温度が閾値以下であるのか否かを判断してもよい。そして、制御装置20は、冷媒の温度が閾値以下であると判断する場合に、バッテリ2の温度が比較的低いと判断して、S14及びS16の処理を実行して、バッテリ2の温度を上昇させてもよい。本変形例において、冷媒の温度が、本技術の「バッテリの温度に関連する指標」の一例である。
【符号の説明】
【0019】
2:バッテリ、4:平滑コンデンサ、6:インバータ、8:モータ、10:電力制御ユニット、12:第1コンバータ、14:第2コンバータ、12a,12b,14a,14b:スイッチング素子、12c,14c:コイル、20:制御装置、100:電源システム、200:冷却システム、202:冷媒流路、204:オイルクーラ、206:オイル流路