IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

特開2024-157662タービンシャフトの製造装置およびタービンシャフトの製造方法
<>
  • 特開-タービンシャフトの製造装置およびタービンシャフトの製造方法 図1
  • 特開-タービンシャフトの製造装置およびタービンシャフトの製造方法 図2
  • 特開-タービンシャフトの製造装置およびタービンシャフトの製造方法 図3
  • 特開-タービンシャフトの製造装置およびタービンシャフトの製造方法 図4
  • 特開-タービンシャフトの製造装置およびタービンシャフトの製造方法 図5
  • 特開-タービンシャフトの製造装置およびタービンシャフトの製造方法 図6
  • 特開-タービンシャフトの製造装置およびタービンシャフトの製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157662
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】タービンシャフトの製造装置およびタービンシャフトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20241031BHJP
   C21D 9/28 20060101ALI20241031BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20241031BHJP
   B23K 31/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F02B39/00 T
C21D9/28 B
F02B39/00 R
B23K1/00 330P
B23K31/02 310J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072139
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 達也
(72)【発明者】
【氏名】青野 将大
(72)【発明者】
【氏名】松本 博行
(72)【発明者】
【氏名】水野 敬太
【テーマコード(参考)】
3G005
4K042
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005GB75
3G005GB79
3G005KA08
4K042AA14
4K042BA13
4K042BA14
4K042DA06
4K042DB01
4K042DB07
4K042DB08
4K042DC02
4K042DD01
4K042DD02
4K042DD05
4K042DE03
4K042DE04
4K042DE06
4K042EA01
(57)【要約】
【課題】タービンホイールを加熱部により加熱する場合に、ロータシャフトが加熱されるのを抑制することが可能なタービンシャフトの製造装置を提供する。
【解決手段】製造装置200は、タービンホイール10と、タービンホイール10を回転させるロータシャフト20とがろう材30(接合材)により接合されたタービンシャフト100の製造装置である。製造装置200は、タービンホイール10に熱を与えることによってタービンホイール10とろう材30とを加熱する加熱部110と、ロータシャフト20を冷却する冷却部120と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンホイールと、前記タービンホイールを回転させるロータシャフトとが接合材により接合されたタービンシャフトの製造装置であって、
前記タービンホイールに熱を与えることによって前記タービンホイールと前記接合材とを加熱する加熱部と、
前記ロータシャフトを冷却する冷却部と、を備える、タービンシャフトの製造装置。
【請求項2】
前記加熱部は、少なくとも一部が前記タービンホイールの外周側に配置され、
前記冷却部は、前記ロータシャフトの軸方向において、少なくとも一部が前記加熱部よりも前記ロータシャフト側に配置されている、請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記タービンシャフトと共に前記冷却部を収容した状態で不活性ガスが封入される封入管と、
前記封入管の外部に配置される送風部と、をさらに備え、
前記加熱部は、前記冷却部とともに前記封入管に収容された前記タービンシャフトの前記タービンホイールを加熱し、
前記送風部は、前記冷却部と共に前記封入管から出された前記タービンシャフトの前記接合材に向けて送風する、請求項1または2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記冷却部は、前記ロータシャフトの周囲を通るように設けられ、冷却水が流通する冷却水管を含む、請求項1または2に記載の製造装置。
【請求項5】
前記冷却水管は、前記ロータシャフトの軸線を中心に巻回されるように設けられる巻回部を含む、請求項4に記載の製造装置。
【請求項6】
タービンホイールと、前記タービンホイールを回転させるロータシャフトとが接合材により接合されたタービンシャフトの製造方法であって、
前記タービンホイールに熱を与えることによって前記タービンホイールと前記接合材とを加熱する加熱工程と、
前記ロータシャフトを冷却部により冷却する冷却工程と、を含む、タービンシャフトの製造方法。
【請求項7】
前記冷却工程は、前記加熱工程における加熱を行いながら、前記ロータシャフトを冷却する第1工程を含む、請求項6に記載のタービンシャフトの製造方法。
【請求項8】
前記冷却工程は、第2工程をさらに含み、
前記第2工程は、前記加熱工程の後に前記ロータシャフトを冷却する工程である、請求項7に記載のタービンシャフトの製造方法。
【請求項9】
前記第2工程は、
不活性ガスが封入された封入管に前記冷却部と共に収容された前記タービンシャフトの前記ロータシャフトを冷却する工程と、
前記冷却部と共に前記封入管から前記タービンシャフトが出された後に、前記ロータシャフトを冷却しながら前記接合材に向けて送風する工程と、を含む、請求項8に記載のタービンシャフトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービンシャフトの製造装置およびタービンシャフトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許第4304190号公報(特許文献1)には、タービンホイールとロータシャフトとの間に配置されたろう材を加熱して溶融することにより、タービンホイールとロータシャフトとを接合する方法が開示されている。上記特許文献1では、赤外線ランプから放射された赤外線光をタービンホイールに集光させることにより、タービンホイールが加熱されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4304190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、加熱されたタービンホイールからロータシャフトに熱が伝わるため、ロータシャフトの温度が上昇する。このため、ロータシャフトの機械的強度が低下する。低下したロータシャフトの機械的強度を回復させるために、後工程においてロータシャフトを加熱する熱処理を行う場合がある。しかしながら、上記熱処理が行われることにより、処理工程が増加する不都合がある。したがって、ロータシャフトの機械的強度が低下することを抑制するために、ロータシャフトが加熱されるのを抑制することが望まれている。
【0005】
本技術の目的は、タービンホイールを加熱部により加熱する場合に、ロータシャフトが加熱されるのを抑制することが可能なタービンシャフトの製造装置およびタービンシャフトの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の局面に係るタービンシャフトの製造装置は、タービンホイールと、タービンホイールを回転させるロータシャフトとが接合材により接合されたタービンシャフトの製造装置であって、タービンホイールに熱を与えることによってタービンホイールと接合材とを加熱する加熱部と、ロータシャフトを冷却する冷却部と、を備える。
【0007】
本開示の第1の局面に係るタービンシャフトの製造装置では、上記のように、タービンホイールと接合材とを加熱する加熱部、および、ロータシャフトを冷却する冷却部が備えられる。これにより、冷却部によりロータシャフトが冷却されるので、加熱部により加熱されたタービンホイールからの熱によりロータシャフトが昇温されるのを抑制することができる。
【0008】
上記第1の局面に係るタービンシャフトの製造装置において、好ましくは、加熱部は、少なくとも一部がタービンホイールの外周側に配置される。冷却部は、ロータシャフトの軸方向において、少なくとも一部が加熱部よりもロータシャフト側に配置されている。このように構成すれば、ロータシャフトの軸方向において、上記軸方向において加熱部よりもロータシャフト側に配置されている部分が冷却部に全くない場合に比べて、ロータシャフトを冷却部により効率的に冷却することができる。
【0009】
上記第1の局面に係るタービンシャフトの製造装置は、好ましくは、タービンシャフトと共に冷却部を収容した状態で不活性ガスが封入される封入管と、封入管の外部に配置される送風部と、をさらに備える。加熱部は、冷却部と共に封入管に収容されたタービンシャフトのタービンホイールを加熱する。送風部は、冷却部と共に封入管から出されたタービンシャフトの接合材に向けて送風する。このように構成すれば、封入管内において加熱された後のタービンシャフトの接合材の温度を、送風部による送風によって調整することができる。
【0010】
上記第1の局面に係るタービンシャフトの製造装置において、好ましくは、冷却部は、ロータシャフトの周囲を通るように設けられ、冷却水が流通する冷却水管を含む。このように構成すれば、冷却水管を通る冷却水によって、ロータシャフトを容易に冷却することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、冷却水管は、ロータシャフトの軸線を中心に巻回されるように設けられる巻回部を含む。このように構成すれば、巻回部によってロータシャフトを多重に取り囲むことができる。その結果、巻回部を流通する冷却水によって、ロータシャフトを効率的に冷却することができる。
【0012】
本開示の第2の局面に係るタービンシャフトの製造方法は、タービンホイールと、タービンホイールを回転させるロータシャフトとが接合材により接合されたタービンシャフトの製造方法であって、タービンホイールに熱を与えることによってタービンホイールと接合材とを加熱する加熱工程と、ロータシャフトを冷却部により冷却する冷却工程と、を含む。
【0013】
本開示の第2の局面に係るタービンシャフトの製造方法では、上記のように、タービンホイールと接合材とを加熱する加熱工程、および、ロータシャフトを冷却部により冷却する冷却工程とが備えられる。これにより、加熱部により加熱されたタービンホイールからの熱によりロータシャフトが昇温されるのを抑制することが可能なタービンシャフトの製造方法を提供することができる。
【0014】
上記第2の局面に係るタービンシャフトの製造方法において、好ましくは、冷却工程は、加熱工程における加熱を行いながら、ロータシャフトを冷却する第1工程を含む。このように構成すれば、加熱工程が行われている間に、タービンホイールからの熱によりロータシャフトが昇温されるのを抑制することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、冷却工程は、第2工程をさらに含む。第2工程は、加熱工程の後にロータシャフトを冷却する工程である。このように構成すれば、加熱工程後においてもロータシャフトの冷却を継続することができる。
【0016】
上記冷却工程が第2工程をさらに含むタービンシャフトの製造方法において、第2工程は、不活性ガスが封入された封入管に冷却部と共に収容されたタービンシャフトのロータシャフトを冷却する工程と、冷却部と共に封入管からタービンシャフトが出された後に、ロータシャフトを冷却しながら接合材に向けて送風する工程と、を含む。このように構成すれば、封入管内においてロータシャフトを冷却した後に、送風部によって接合材の温度を調整しながらロータシャフトを冷却部により冷却することができる。その結果、送風によって接合材の冷却時間を調整することができるので、送風と共に行われるロータシャフトの冷却時間を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0017】
本技術によれば、タービンホイールを加熱部により加熱する場合に、ロータシャフトが加熱されるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態によるタービンシャフトの製造装置の全体構成を示す断面図である。
図2図1のろう材の周辺の部分拡大図である。
図3】一実施形態による製造装置の送風部および移動機構を示す図である。
図4】一実施形態によるタービンシャフトの製造方法を示すフロー図である。
図5】一実施形態によるタービンホイールとロータシャフトとの接合中におけるろう材の温度変化を示す図である。
図6】一実施形態によるタービンホイールとロータシャフトとの接合中におけるロータシャフトの温度変化、および、比較例を示す図である。
図7】製造完了後のタービンシャフトのろう材の形状を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
図1は、本実施形態に係るタービンシャフト100の製造装置200の構成を示す概略図である。図2は、図1に示すろう材30(後述)の周辺の部分拡大図である。図1および図2を参照して、タービンシャフト100は、タービンホイール10と、ロータシャフト20とを含む。タービンホイール10は、車両におけるターボチャージャー(過給機)のパーツの1つである羽根車であって、排気ガスの力を利用して回転する。ロータシャフト20は、タービンホイール10を回転させるための軸材である。図1では、タービンホイール10とロータシャフト20とがZ方向に並ぶように配置されている。なお、ロータシャフト20は、タービンホイール10のZ2側に配置されている。また、Z2側は、本開示の「軸方向におけるロータシャフト側」の一例である。
【0021】
タービンホイール10は、渦巻き状の羽根(図示せず)が周方向に間隔を開けて配置された構成を有する。タービンホイール10は、たとえばTiAl系合金により形成されている。また、タービンホイール10は、Z2側に突出して設けられる接合軸11(図2参照)を含む。接合軸11は、タービンホイール10のZ2側の端面12(図2参照)からZ2側に突出している。
【0022】
ロータシャフト20は、丸棒形状を有している。ロータシャフト20は、たとえば鉄により形成されている。ロータシャフト20は、タービンホイール10の接合軸11が挿入される接合孔21a(図2参照)を含む。接合孔21aは、ロータシャフト20のZ1側の端部21に設けられている。
【0023】
タービンホイール10は、ロータシャフト20の軸方向(図1のZ方向)における一方側(Z1側)の端部21と接合されている。タービンホイール10とロータシャフト20とは、ろう材30により接合されている。ろう材30は、タービンホイール10の端面12(図2参照)とロータシャフト20の端部21とを接合している。なお、ろう材30は、本開示の「接合材」の一例である。
【0024】
ろう材30は、たとえば、JISに規定されたBNiシリーズの各種ニッケルろう材により形成されている。ろう材30は、高い高温強度を有している。ろう材30の液相線温度は、約1000℃または1000℃以上である。
【0025】
<製造装置の構成>
製造装置200は、加熱部110と、冷却部120と、石英管130と、送風部140(図3参照)と、押圧部150と、を備える。
【0026】
加熱部110は、タービンホイール10に熱を与えることによってタービンホイール10とろう材30とを加熱する。加熱部110は、タービンホイール10側(Z1側)からタービンシャフト100に対して熱を与える。
【0027】
加熱部110は、赤外線ヒータ111を含む。赤外線ヒータ111は、ゴールドイメージ炉112に設けられている。赤外線ヒータ111は、少なくとも一部がタービンホイール10の外周側に配置されている。
【0028】
ゴールドイメージ炉112は、赤外線に対して高い反射率を有する金(ゴールド)をコーティングした反射面112aを有する。赤外線ヒータ111から照射された赤外線は、反射面112aにより反射され、タービンホイール10に集光される。これにより、タービンホイール10が加熱される。
【0029】
なお、タービンシャフト100は、赤外線ヒータ111によりタービンホイール10が加熱されている間、冷却部120とともに透明な石英管130に収容されている。この際、石英管130は、Ar等の不活性ガスにより置換されている。これにより、タービンホイール10等が酸化するのが抑制される。
【0030】
また、この際,赤外線ヒータ111は、石英管130の外部からタービンホイール10に対して赤外線を照射する。赤外線は石英を透過するので、石英管130によりタービンホイール10の加熱が妨げられることはない。
【0031】
ここで、従来の製造装置では、加熱されたタービンホイールからロータシャフトに熱が伝わるため、ロータシャフトの温度が上昇する。このため、ロータシャフトの機械的強度が低下する。このため、低下したロータシャフトの機械的強度を回復させるために、後工程においてロータシャフトを加熱する熱処理を行う場合がある。しかしながら、上記熱処理が行われることにより、処理工程が増加する不都合がある。したがって、ロータシャフトの機械的強度が低下することを抑制するために、ロータシャフトが加熱されるのを抑制することが望まれている。
【0032】
そこで、本実施形態では、製造装置200には、ロータシャフト20を冷却する冷却部120が備えられている。これにより、加熱部110により加熱されたタービンホイール10からロータシャフト20への入熱を抑制することができるとともに、ロータシャフト20が加熱されるのを抑制することができる。
【0033】
冷却部120(後述の冷却水管122)は、タービンシャフト100と共に石英管130に収容可能に構成されている。これにより、石英管130内において、タービンホイール10が加熱されている間に冷却部120によりロータシャフト20を冷却することが可能である。
【0034】
冷却部120は、チラー121と、冷却水管122とを含む。冷却水管122は、ロータシャフト20の周囲を通るように設けられている。具体的には、冷却水管122は、ロータシャフト20が挿入されている円筒部160に沿うように設けられている。なお、チラー121は、石英管130の外部に配置される。
【0035】
チラー121は、冷却水管122を流通する水(冷却水)を冷却する。冷却水管122は、巻回部122aと、接続部122bとを有する。巻回部122aは、ロータシャフト20の軸線αを中心に巻回されるように設けられている。具体的には、巻回部122aは、円筒部160に巻回されている。巻回部122aは、円筒部160のうち、少なくともロータシャフト20が挿入されている部分を巻回するように設けられている。
【0036】
接続部122bは、巻回部122aとチラー121とを接続するように設けられている。これにより、冷却水は、接続部122bを通じて巻回部122aとチラー121との間を流通する。接続部122bは、石英管130の外部のチラー121と、石英管130の内部の巻回部122aとを接続する。
【0037】
本実施形態では、冷却部120は、Z方向において、少なくとも一部が加熱部110よりもロータシャフト20側(Z2方向)に配置されている。具体的には、巻回部122aは、少なくとも一部がゴールドイメージ炉112よりもZ2側に配置されている。詳細には、巻回部122aのZ2側の一部が、ゴールドイメージ炉112のZ2側の端部112bよりもZ2側に配置されている。言い換えると、巻回部122aのZ1側の一部のみが、ゴールドイメージ炉112に対応するZ方向の範囲内に配置されている。
【0038】
また、図1に示す例では、冷却部120の全体は、赤外線ヒータ111のZ2側の端部111aよりもZ2側に配置されている。すなわち、赤外線ヒータ111が設けられるZ方向の範囲と、冷却部120が設けられるZ方向の範囲とは、重複せずにずらされている。なお、赤外線ヒータ111が設けられるZ方向の範囲と、冷却部120が設けられるZ方向の範囲とが、部分的に重なっていてもよい。
【0039】
円筒部160におけるZ1側の開口161(図2参照)は、蓋部170により蓋されている。図2に示すように、蓋部170には、ロータシャフト20が貫通される貫通孔171が設けられている。円筒部160を蓋している蓋部170の貫通孔171をロータシャフト20が貫通している状態で、加熱部110による加熱および冷却部120による冷却が行われる。なお、円筒部160と蓋部170とは、互いに別個に設けられている。蓋部170は、円筒部160に対して着脱可能である。
【0040】
蓋部170は、蓋部170のZ1側の端部に設けられる頭部172を含む。また、蓋部170は、頭部172に接続されている挿入部173を含む。挿入部173は、頭部172からZ2側に延びるように設けられている。挿入部173は、円筒部160に挿入されている。頭部172は、円筒部160に挿入されず、円筒部160の開口161を蓋するように設けられている。なお、貫通孔171は、頭部172と挿入部173とを貫通するように形成されている。
【0041】
頭部172は、ロータシャフト20の端部21を、Z2側から支持している。これにより、タービンシャフト100を安定的に固定(支持)することが可能である。具体的には、頭部172は、ロータシャフト20の端部21に形成されている係合部21bと係合することにより、端部21をZ2側から支持している。
【0042】
頭部172は、Z方向において厚みT1を有する。また、円筒部160は、ロータシャフト20の径方向において厚みT2を有する。厚みT1は、厚みT2よりも大きい。これにより、加熱されたタービンホイール10からロータシャフト20への輻射熱を、頭部172により遮蔽することが可能である。
【0043】
押圧部150は、Z1側からタービンホイール10を所定の加重(たとえば数MPa)で押圧している。これにより、タービンホイール10およびロータシャフト20の各々と、ろう材30との密着性を向上させることが可能である。
【0044】
図3に示すように、送風部140は、石英管130の外部に配置されている。送風部140は、冷却部120と共に石英管130から出されたタービンシャフト100のろう材30に向けて送風する。
【0045】
また、製造装置200は、移動機構180を備える。移動機構180は、冷却部120(冷却水管122)と共にタービンシャフト100を送風部140に対応する位置まで移動させるように構成されている。これにより、送風部140からの送風をろう材30に効率的に当てることが可能である。なお、移動機構180によりタービンシャフト100が移動される前に、タービンシャフト100は、石英管130およびゴールドイメージ炉112から退避されている。また、チラー121は、移動機構180により移動されずに、所定の位置に固定されている。
【0046】
<タービンシャフトの製造方法>
次に、図4等を参照して、製造装置200を用いたタービンシャフト100の製造方法について説明する。
【0047】
ステップS1において、製造装置200にタービンシャフト100がセットされる。具体的には、図1に示すように、ロータシャフト20は、蓋部170を貫通するとともに、冷却水管122が巻回されている円筒部160に挿入される。
【0048】
また、タービンシャフト100と共に冷却部120(冷却水管122)が、石英管130に収容される。なお、石英管130は、タービンシャフト100および冷却部120が収容された後に不活性ガスにより置換される。
【0049】
また、タービンシャフト100および冷却部120が収容された石英管130のZ1側の一部を、ゴールドイメージ炉112に配置する。これにより、タービンホイール10がゴールドイメージ炉112に配置される。
【0050】
ステップS2において、加熱部110によるタービンホイール10の加熱、および、冷却部120によるロータシャフト20の冷却を行う。具体的には、赤外線ヒータ111によるタービンホイール10への赤外線照射が開始される。また、冷却水管122における冷却水の流通(循環)が開始される。これにより、タービンホイール10の加熱を行いながら、ロータシャフト20の冷却が行われる。なお、上記加熱と上記冷却とは、略同じタイミングにおいて開始される。なお、ステップS2は、本開示の「第1工程」の一例である。
【0051】
ステップS3において、加熱部110による加熱が停止される。具体的には、赤外線ヒータ111がオフされる。これにより、冷却部120によるロータシャフト20の冷却のみが実行(継続)される(炉内徐冷)。なお、タービンホイール10がゴールドイメージ炉112の外部に配置されるように、石英管130とゴールドイメージ炉112との相対的な位置関係が調整されてもよい。たとえば、ゴールドイメージ炉112が石英管130から退避されてもよい。
【0052】
なお、ステップS2およびS3の各々では、押圧部150によりタービンホイール10がZ2側に押圧されている。
【0053】
ステップS4において、タービンシャフト100および冷却部120(冷却水管122)を、移動機構180により送風部140(図3参照)に対応する位置まで移動させる。なお、移動機構180による移動の前に、タービンシャフト100および冷却部120(冷却水管122)は、石英管130から取り出される。
【0054】
ステップS5では、冷却部120によるロータシャフト20の冷却が継続されながら、送風部140からろう材30に向けて送風される(炉外エアブロー)。送風部140からの風量および風速を制御することにより、ろう材30の冷却速度を調整することが可能である。その結果、ロータシャフト20が冷却部120により冷却される時間も調整される。なお、ステップS3~S5の工程は、本開示の「第2工程」の一例である。
【0055】
ステップS6において、冷却部120および送風部140の各々が停止される。ステップS7において、製造装置200からタービンシャフト100が取り外される。
【0056】
ステップS8では、タービンホイール10とロータシャフト20との接合が完了された状態で、タービンホイール10の仕上げ加工が行われる。具体的には、タービンホイール10に設けられた翼部(図示せず)が研削されるとともに、タービンホイール10のバランスが修正される。
【0057】
<ろう材の温度変化>
図5は、タービンホイール10とロータシャフト20との接合が行われている間のろう材30の温度変化を示す。図4に示すステップS2(加熱+冷却)において、ろう材30の温度は、平温(約20℃)から1000℃以上まで上昇する。これにより、ろう材30の温度が液相線温度を超えるので、ろう材30が溶融する。
【0058】
次に、図4に示すステップS3(炉内徐冷)において、ろう材30の温度は約800℃まで徐々に低下する。そして、図4に示すステップS5(炉外エアブロー)において、送風部140からの送風によって、ろう材30が冷却される速度が上昇する。これにより、送風部140が設けられていない場合に比べて、より速やかにろう材30の温度を所定温度まで低下させることが可能である。
【0059】
<ロータシャフトの温度変化>
図6は、タービンホイール10とロータシャフト20との接合が行われている間のロータシャフト20の温度変化(実線参照)を示す。なお、図6には、比較例(破線参照)として、冷却部120による冷却および送風部140による送風が行われない場合のロータシャフト20の温度変化も図示されている。比較例では、タービンホイール10の加熱後に、自然冷却によりロータシャフト20の冷却が行われる。なお、ロータシャフト10の温度とは、ロータシャフト10の軸方向における各点の平均温度を意味する。
【0060】
図4に示すステップS2に対応する工程において、比較例ではロータシャフト20の温度がタービンホイール10からの入熱により大きく上昇する。これに対し、本実施形態の構成では、タービンホイール10からの入熱が冷却部120による冷却により抑制されるので、ロータシャフト20の温度上昇は比較例に比べて小さくなる。
【0061】
図4に示すステップS3およびS5に対応する工程において、比較例ではロータシャフト20の温度が自然冷却により低下される。これに対し、本実施形態では、ロータシャフト20は、冷却部120によって冷却されるので、比較例に比べてより効率的に温度が低下される。
【0062】
<製造完了後のタービンシャフト>
図7は、図4に示す製造方法による製造完了後のタービンシャフト100の状態の一例を示す図である。図7に示す例では、ろう材30の縁部31がロータシャフト20からはみ出している状態が図示されている。縁部31は、ロータシャフト20への入熱が冷却部120により抑制されることによって、ロータシャフト20の歪みを取り除くための仕上げ加工が省略されたことに起因して残存している部分である。
【0063】
以上のように、本実施形態では、製造装置200は、タービンホイール10に熱を与えることによってタービンホイール10とろう材30とを加熱する加熱部110と、ロータシャフト20を冷却する冷却部120とを備える。これにより、加熱部110により加熱されたタービンホイール10(ろう材30)からロータシャフト20に伝播する熱を、冷却部120により打ち消すことができる。その結果、ロータシャフト20が加熱されるのを抑制することができる。
【0064】
また、ロータシャフト20の加熱が抑制されるので、熱によってロータシャフト20に歪みが生じるのを抑制することができる。その結果、上記歪みを除去するためにロータシャフト20に対して通常行われる仕上げ加工や熱処理等を省略することができる。これにより、完成形の状態(加工等が必要ない状態)のロータシャフト20を用いて、タービンホイール10との接合処理を行うことができる。その結果、ロータシャフト20に対して加工が施されることにより必要となるタービンホイール10のセンタ穴加工(ロータシャフト20の軸線と上記センタ穴との位置調整のための加工)を省略することができる。その結果、タービンシャフト100の製造に要する工程数を削減することができる。
【0065】
上記実施形態では、冷却部120(巻回部122a)の少なくとも一部が、Z方向において、加熱部110よりもZ2側(ロータシャフト20側)に配置されている例を示したが、本開示はこれに限られない。冷却部120(巻回部122a)の全体が、Z方向において、加熱部110が設けられる範囲内に配置されていてもよい。
【0066】
上記実施形態では、送風部140によるろう材30への送風が行われる例を示したが、本開示はこれに限られない。送風部140によるろう材30への送風は行われなくてもよい。
【0067】
上記実施形態では、冷却水管122を流通する冷却水によりロータシャフト20が冷却される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、ロータシャフト20に冷却風を当てることによりロータシャフト20を冷却してもよい。
【0068】
上記実施形態では、冷却水管122がロータシャフト20の軸線αを巻回するように設けられる巻回部122aを含む例を示したが、本開示はこれに限られない。冷却水管122がロータシャフト20の周囲を通るように設けられていれば、冷却水管122に巻回部122aが設けられていなくてもよい。たとえば、巻回部122aの代わりに、円筒部160の外表面に沿ってZ方向に延びる部分が設けられていてもよい。
【0069】
上記実施形態では、加熱部110によりタービンホイール10の加熱を行いながら、冷却部120によりロータシャフト20の冷却が行われる例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、加熱部110による加熱が完了した後に、冷却部120による冷却が行われてもよい。また、加熱部110による加熱の途中で、冷却部120による冷却を開始してもよい。
【0070】
上記実施形態では、冷却部120による冷却のみを行った後に、冷却部120による冷却と送風部140による送風とを行う例を示したが、本開示はこれに限られない。加熱工程直後から、冷却部120による冷却と送風部140による送風とを行ってもよい。
【0071】
上記実施形態では、ろう材30によりタービンホイール10とロータシャフト20とを接合する例を示したが、本開示はこれに限られない。ろう材30以外の接合材(たとえば、半田等)を用いてもよい。
【0072】
上記実施形態では、石英管130に不活性ガスが封入される例を示したが、本開示はこれに限られない。赤外線を透過する管であれば石英管以外が用いられてもよい。
【0073】
上記実施形態では、加熱部110に赤外線ヒータ111が用いられる例を示したが、本開示はこれに限られない。赤外線ヒータ111以外の熱源(たとえば誘導加熱コイル等)が用いられてもよい。
【0074】
なお、上記実施形態に記載されている構成、および、上記の各種変形例は、任意に組み合わされて実施されてもよい。
【0075】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
10 タービンホイール,20 ロータシャフト,30 ろう材(接合材),100 製造装置,110 加熱部,120 冷却部,122 冷却水管,122a 巻回部,130 石英管(封入管),140 送風部,Z 方向(軸方向),α 軸線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7