(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157663
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H05K3/34 512B
H05K3/34 505B
H05K3/34 507C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072141
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 耕平
(72)【発明者】
【氏名】朝山 真次
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319BB05
5E319CC33
5E319CD53
5E319GG15
(57)【要約】
【課題】基板の表面の電極と電子部品の底面の端子との間のはんだ接合部を検査することが可能な検査装置を提供する。
【解決手段】検査装置10は、プリント配線板11の表面のパッド11bに電子部品13の底面の端子13aをリフローはんだ付けする製造ラインにおいて、パッド11bに印刷されたクリームはんだ12の体積Vとパッド11bの面積Sとに基づいて、はんだ接合部12Bの理論上の厚さPを求める。検査装置10は、さらに、部品実装高さHと電子部品13の厚さhとに基づいて、はんだ接合部12Bの実際の厚さQを求める。そして、検査装置10は、求められた厚さP,Qに基づいて、はんだ接合部12Bが正常か否かを判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面の電極にクリームはんだを印刷し、電子部品の底面の端子を前記電極に位置合わせして前記電子部品を前記基板の表面に搭載し、前記クリームはんだを溶融させて前記電極および前記端子間をはんだ付けする製造ラインにおいて、前記電極および前記端子間のはんだ接合部を検査する検査装置であって、
前記電極の表面に印刷された前記クリームはんだの体積を検出する第1の検出部と、
前記第1の検出部によって検出された前記クリームはんだの体積に基づいて、前記はんだ接合部の理論上の第1のサイズを求める第1の演算部と、
前記電極および前記端子間のはんだ付けの終了後に、前記基板の表面を基準とした前記電子部品の天面の高さを検出する第2の検出部と、
前記第2の検出部によって検出された前記電子部品の天面の高さと前記電子部品の厚さとに基づいて、前記はんだ接合部の実際の第2のサイズを求める第2の演算部と、
前記第1および第2の演算部によって求められた前記第1および第2のサイズに基づいて、前記はんだ接合部が正常か否かを判定する判定部とを備える、検査装置。
【請求項2】
前記第1および第2のサイズは、それぞれ第1および第2の厚さであり、
前記第1の演算部は、前記クリームはんだの体積を前記電極の面積で除算して前記クリームはんだの厚さを求め、その厚さに1よりも小さな定数を乗算して前記第1の厚さを求め、
前記第2の演算部は、前記電子部品の天面の高さから前記電子部品の厚さを減算して前記第2の厚さを求める、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記第1および第2のサイズは、それぞれ第1および第2の体積であり、
前記第1の演算部は、前記クリームはんだの体積に1よりも小さな定数を乗算して前記第1の体積を求め、
前記第2の演算部は、前記電子部品の天面の高さから前記電子部品の厚さを減算した値に前記電極の面積を乗算して前記第2の体積を求める、請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記第2の検出部は、
前記電子部品の天面を複数の区域に分割し、前記基板の表面を基準とした前記複数の区域の各々の高さを検出する高さ検出器と、
前記高さ検出器によって検出された前記複数の区域の高さを平均して前記天面の高さを求める第3の演算部とを含む、請求項1または請求項2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記第2の検出部は、
前記電子部品の天面と前記基板の表面との間の体積を検出する体積検出器と、
前記体積検出器によって検出された体積を前記電子部品の天面の面積で除算して前記天面の高さを求める第3の演算部とを含む、請求項1または請求項2に記載の検査装置。
【請求項6】
前記判定部は、
前記第1および第2のサイズに基づいて前記はんだ接合部のボイド率を求め、
前記ボイド率が上限値よりも小さい場合は、前記はんだ接合部が正常であると判定し、
前記ボイド率が前記上限値以上である場合は、前記はんだ接合部が正常でないと判定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記判定部の判定結果を報知する報知部をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項8】
基板の表面の電極にクリームはんだを印刷し、電子部品の底面の端子を前記電極に位置合わせして前記電子部品を前記基板の表面に搭載し、前記クリームはんだを溶融させて前記電極および前記端子間をはんだ付けする製造ラインにおいて、前記電極および前記端子間のはんだ接合部を検査する検査方法であって、
前記電極の表面に印刷された前記クリームはんだの体積を検出するステップと、
前記体積を検出するステップによって検出された前記クリームはんだの体積に基づいて、前記はんだ接合部の理論上の第1のサイズを求めるステップと、
前記電極および前記端子間のはんだ付けの終了後に、前記基板の表面を基準とした前記電子部品の天面の高さを検出するステップと、
前記高さを検出するステップによって検出された前記電子部品の天面の高さと前記電子部品の厚さとに基づいて、前記はんだ接合部の実際の第2のサイズを求めるステップと、
前記第1および第2のサイズに基づいて、前記はんだ接合部が正常か否かを判定するステップとを含む、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-57568号公報(特許文献1)には、基板の表面の電極にクリームはんだを印刷し、電子部品の側面の端子を電極に位置合わせして電子部品を基板の表面に搭載し、クリームはんだを溶融させて電極および端子間をはんだ付けする製造ラインにおいて、電極および端子間のはんだ接合部を検査する検査装置が開示されている。この検査装置は、電極に印刷されたクリームはんだの外観からクリームはんだの体積を検出し、はんだ接合部の外観からはんだ接合部の体積を検出し、クリームはんだの体積とはんだ接合部の体積とに基づいて、はんだ接合部が正常か否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の検査装置では、はんだ接合部の外観から体積を検出するので、はんだ接合部が電子部品の外部に露出している必要がある。したがって、基板の表面の電極に電子部品の底面の端子がはんだ付けされる場合には、はんだ接合部が電子部品の下に隠れてしまうため、はんだ接合部の体積を検出することができず、はんだ接合部を検査することができないという問題がある。
【0005】
それゆえに、本開示の主たる目的は、基板の表面の電極と電子部品の底面の端子との間のはんだ接合部を検査することが可能な検査装置と、検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の検査装置は、基板の表面の電極にクリームはんだを印刷し、電子部品の底面の端子を電極に位置合わせして電子部品を基板の表面に搭載し、クリームはんだを溶融させて電極および端子間をはんだ付けする製造ラインにおいて、電極および端子間のはんだ接合部を検査するものである。この検査装置は、第1の検出部、第1の演算部、第2の検出部、第2の演算部、および判定部を備える。第1の検出部は、電極の表面に印刷されたクリームはんだの体積を検出する。第1の演算部は、第1の検出部によって検出されたクリームはんだの体積に基づいて、はんだ接合部の理論上の第1のサイズを求める。第2の検出部は、電極および端子間のはんだ付けの終了後に、基板の表面を基準とした電子部品の天面の高さを検出する。第2の演算部は、第2の検出部によって検出された電子部品の天面の高さと電子部品の厚さとに基づいて、はんだ接合部の実際の第2のサイズを求める。判定部は、第1および第2の演算部によって求められた第1および第2のサイズに基づいて、はんだ接合部が正常か否かを判定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の検査装置では、電極に印刷されたクリームはんだの体積と電極の面積とに基づいて、はんだ接合部の理論上の第1のサイズが求められるとともに、実装された電子部品の天面の高さと電子部品の厚さとに基づいて、はんだ接合部の実際の第2のサイズが求められ、第1および第2のサイズに基づいて、はんだ接合部が正常か否かが判定される。したがって、この検査装置によれば、基板の表面の電極に電子部品の底面の端子をはんだ付けするために、はんだ接合部が電子部品の下に隠れてしまう場合でも、はんだ接合部を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に従う検査装置が適用される製造ラインの構成を示すブロック図である。
【
図3】部品搭載機の動作を模式的に示す断面図である。
【
図4】リフロー炉の動作を模式的に示す断面図である。
【
図5】外観検査機の動作を模式的に示す断面図である。
【
図6】演算処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】
図6に示す判定部の動作を模式的に示す断面図である。
【
図8】はんだ接合部のボイド率を求める方法を説明するための断面図である。
【
図9】はんだ接合部のボイド率を求める方法を説明するための他の断面図である。
【
図10】はんだ接合部の実際の厚さとボイド率との関係を例示する図である。
【
図11】製造ラインの動作を示すフローチャートである。
【
図12】検査装置の動作を示すフローチャートである。
【
図13】実施の形態1の変更例1における演算処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図14】実施の形態1の変更例2における演算処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図15】実施の形態2における演算処理装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、複数の実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜組合わせることは出願当初から予定されている。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に従う検査装置が適用される製造ラインの構成を示すブロック図である。
図1において、この製造ラインは、印刷機1、印刷検査機2、部品搭載機3、部品搭載検査機4、リフロー炉5、外観検査機6、演算処理装置7、および画像表示装置8を備える。印刷検査機2、外観検査機6、演算処理装置7、および画像表示装置8は、検査装置10を構成する。
【0011】
図2は、印刷機1の動作を模式的に示す断面図である。印刷前のプリント配線板11(基板)は、
図2(A)に示すように、絶縁板11aと、その表面に形成されたパッド11b(電極)とを含む。
【0012】
実際には、プリント配線板11の表面には複数のパッド11b、複数の配線などが形成されているが、図面および説明の簡単化のため、
図2では1個のパッド11bのみが示されている。印刷機1は、プリント配線板11の表面にクリームはんだパターンを印刷することにより、
図2(B)に示すように、パッド11bの表面にクリームはんだ部12を形成する。
【0013】
再び
図1を参照して、印刷検査機2(第1の検出部)は、パッド11bの表面に形成されたクリームはんだ部12に対して、光学的な3次元外観検査を実施し、クリームはんだ部12が正常に形成されたか否かを判定する。
【0014】
また印刷検査機2は、クリームはんだ部12の体積Vを検出し、検出した体積Vを示す信号を演算処理装置7に与える。印刷検査機2は、たとえば、位相シフト法や光切断法によりクリームはんだ部12の外形を検出し、検出した外形に基づいてクリームはんだ部12の体積Vを求める。
【0015】
なお、クリームはんだは、はんだ粉末とフラックス液を混合したものであり、はんだペーストとも呼ばれる。また、印刷検査機2は、はんだペースト検査装置(SPI:Solder Paste Inspection)とも呼ばれる。印刷検査機2によってクリームはんだ部12が正常に形成されたと判定された場合には、プリント配線板11は部品搭載機3に送られる。
【0016】
図3は、部品搭載機3の動作を模式的に示す断面図である。部品搭載機3は、
図3(A)に示すように、クリームはんだ部12が形成されたパッド11bの上方に電子部品13の底面の端子13aを位置合わせする。
【0017】
実際には、電子部品13の底面には複数の端子13aが設けられているが、図面および説明の簡単化のため、
図3では1個の端子13aのみが示されている。電子部品13は、たとえば、QFN(Quad Flat Non-lead package)、あるいはSON(Small Outline Non-lead package)などである。
【0018】
次に、部品搭載機3は、
図3(B)に示すように、電子部品13を下降させてプリント配線板11の表面に搭載する。これにより、パッド11bと端子13aの間にクリームはんだ部12が挟まれ、平板状のクリームはんだ層12Aが形成される。
【0019】
再び
図1を参照して、部品搭載検査機4は、部品搭載機3によってプリント配線板11に搭載された電子部品13に対して、光学的な3次元外観検査を実施し、電子部品13が正常に搭載されたか否かを判定する。
【0020】
3次元外観検査では、電子部品13の位置ずれ、種類の間違い、方向(極性)の間違い、欠品、余剰部品の有無などが検査される。電子部品13が正常に搭載されたと判定された場合には、電子部品13が搭載されたプリント配線板11はリフロー炉5に送られる。
【0021】
図4は、リフロー炉5の動作を模式的に示す断面図である。
図4(A)において、リフロー炉5は、電子部品13が搭載されたプリント配線板11を所定の温度プロファイルで加熱した後に冷却する。クリームはんだ層12Aは溶融した後に凝固し、
図4(B)に示すように、はんだ接合部12Bとなる。
【0022】
電子部品13の底面の端子13aとプリント配線板11の表面のパッド11bとは、はんだ接合部12Bによって電気的に接続されるとともに機械的に固定される。電子部品13が実装されたプリント配線板11は、外観検査機6に送られる。
【0023】
図5は、外観検査機6の動作を模式的に示す断面図である。
図5において、外観検査機6(第2の検出部)は、電子部品13が実装されたプリント配線板11に対して、光学的な3次元外観検査を実施し、電子部品13が正常に実装されたか否かを判定する。また、外観検査機6は、プリント配線板11の表面を基準とした電子部品13の天面の高さHを検出し、検出した高さHを示す信号を演算処理装置7に与える。
【0024】
外観検査機6が測長機能を備えている場合には、その測長機能によって高さHが検出される。測長機能としては、光やレーザを用いた照度差ステレオ方式、光切断方式、位相シフト法などがある。また、外観検査機6が測長機能を備えていない場合には、たとえば、レーザ変位計または接触式の変位センサを用いて高さHを測定してもよい。
【0025】
再び
図1を参照して、演算処理装置7は、印刷検査機2によって検出されたクリームはんだ12Aの体積Vと、外観検査機6によって検出された電子部品13の天面の高さHとに基づいて、はんだ接合部12Bが合格か否か(すなわち正常か否か)を判定する。画像表示装置8は、演算処理装置7の判定結果を表示する。
【0026】
図6は、演算処理装置7の構成を示すブロック図である。
図6において、演算処理装置7は、記憶部20,24、演算部21,22、判定部23、および出力部25を含む。記憶部20は、プリント配線板11の表面のパッド11b(
図2)の面積Sと、電子部品13の厚さh(
図5)とを記憶している。
【0027】
パッド11bの面積Sは、プリント配線板11の設計情報から既知であり、パッド11bの面積Sを予め記憶部20に記憶させておく。あるいは、クリームはんだ12が印刷される前のプリント配線板11のパッド11b(
図2)の面積Sを印刷検査機2または外観検査機6によって検出し、検出した面積Sを予め記憶部20に記憶させても構わない。
【0028】
電子部品13の厚さhは、部品カタログから既知であり、電子部品13の厚さhを予め記憶部20に記憶させておく。電子部品13の厚さhの実測値を記憶部20に記憶させても構わない。また、部品搭載機3が電子部品13の厚さhを検出する機能を有する場合には、部品搭載機3によって検出された電子部品13の厚さhを記憶部20に記憶させてもよい。
【0029】
演算部21(第1の演算部)は、印刷検査機2(
図1)によって検出されたクリームはんだ部12(
図3)の体積Vを、記憶部20に記憶されたパッド11bの面積Sで除算してクリームはんだ層12A(
図3)の厚さDを求める。演算部21は、さらに、クリームはんだ層12Aの厚さDに定数Kを乗算して、はんだ接合部12B(
図4)の理論上の厚さP=K×Dを求める。ここで、Kは、1よりも小さな正の実数である。
【0030】
一般に、クリームはんだを溶融および凝集させると、体積は1/2に減少する。クリームはんだ層12Aが溶融・凝集してもパッド11bの面積Sは変化しないので、クリームはんだ層12Aの体積Vが1/2になれば、厚さは1/2になる。
【0031】
ただし、クリームはんだの溶融・凝集の前後の体積変化の比率について経験値や実績値があれば、それら使用してもよく、また、必要に応じて補正しても構わない。本実施の形態1では、体積変化の比率を1/2とし、K=1/2とする。したがって、はんだ接合部12Bの理論上の厚さP(第1のサイズ)は、P=D/2となる。
【0032】
演算部22は、外観検査機6(
図1)によって検出された高さH(
図5)から、記憶部20に記憶された電子部品13の厚さhを減算して、はんだ接合部12Bの実際の厚さQ=H-hを求める。
【0033】
図7は、
図6に示した判定部23の動作を模式的に示す断面図である。
図7(A)に示すように、はんだ接合部12Bの内部にボイド30が無い場合には、はんだ接合部12Bの理論上の厚さPと実際の厚さQ(第2のサイズ)とは同じである(P=Q)。
【0034】
これに対して、
図7(B)に示すように、はんだ接合部12Bの内部にボイド30がある場合には、はんだ接合部12Bの理論上の厚さPよりも実際の厚さQの方が大きくなる(P<Q)。
【0035】
したがって、演算部22によって求められた実際の厚さQが、演算部21によって求められた理論上の厚さPよりも大きい場合には、はんだ接合部12Bの内部にボイド30があると判断することができる。また、ボイド30が大きいほど実際の厚さQが大きくなるので、実際の厚さQと理論上の厚さPとを比較することにより、はんだ接合部12Bにおけるボイド30の比率を求めることができる。
【0036】
図8は、はんだ接合部12Bにおけるボイド率を求める方法を説明するための断面図である。
図8において、(A)は(B)のVIIIA-VIIIA線断面図であり、(C)は(D)のVIIIC-VIIIC線断面図である。
【0037】
ボイド30は、
図8(A)(B)に示すように、球、あるいは球を押しつぶしたような形状になると考えられる。しかし、本実施の形態1では、説明の簡単化のため、
図8(C)(D)に示すように、ボイド30は円柱状であるものとし、ボイド30の直径をdとする。
【0038】
図9は、はんだ接合部12Bにおけるボイド率を求める方法を説明するための他の断面図である。
図9において、(A)はボイド30が無い場合を示し、(B)はボイド30がある場合を示している。
【0039】
図9(A)(B)から分かるように、ボイド30が無い場合におけるはんだ接合部12Bの体積V1=S×Pと、ボイド30の体積V2=(d/2)
2×π×Qとの和は、ボイド30がある場合におけるはんだ接合部12Bの体積V3=S×Qと等しい(V1+V2=V3)。したがって、次式(1)が成立する。
【0040】
【0041】
上式(1)を変形すると、ボイド30の直径dは、次式(2)で表される。
【0042】
【0043】
ボイド率Rvは、ボイド30の面積とパッド11bの面積Sとの比で表され、次式(3)が成立する。
【0044】
【0045】
式(3)に式(2)を代入すると、次式(4)が得られる。
【0046】
【0047】
このように、ボイド率Rvは、はんだ接合部12Bの理論上の厚さPと実際の厚さQとの関数となる(Rv=1-P/Q)。Q=Pである場合は、Rv=0である。Pが一定値である場合には、Qが増大するに従ってボイド率Rvも増大する。
【0048】
図10は、はんだ接合部12Bの実際の厚さQ(mm)とボイド率Rvとの関係を例示する図である。
図10では、クリームはんだ層12A(
図4)の厚さDが0.15mmである場合が示されている。この場合、はんだ接合部12B(
図4)の理論上の厚さPは、P=0.15/2=0.075mmとなる。
【0049】
ボイド30が無い場合には(Rv=0)、実際の厚さQと理論上の厚さPとは等しい(P=Q)。
図10では、Q=0.075(mm)である場合に、Rv=0となっている。たとえば、Q=0.11(mm)である場合、Rvは約0.3となり、Q=0.125(mm)である場合、Rvは0.4となる。
【0050】
ボイド率Rvが上限値RH未満のはんだ接合部12Bは合格とされ、ボイド率Rvが上限値RH以上のはんだ接合部12Bは不合格とされる。以下の説明においては、上限値RHをたとえば0.4に設定して説明する。
【0051】
なお、
図10では、理論上の厚さPは一定であるとされているので、実際の厚さQが上限値QH未満のはんだ接合部12Bを合格とし、実際の厚さQが上限値QH以上のはんだ接合部12Bを不合格としても構わない。以下の説明においては、上限値QHをたとえば0.125(mm)に設定して説明する。
【0052】
再び
図6を参照して、判定部23は、演算部21によって求められたはんだ接合部12Bの理論上の厚さPと、演算部22によって求められたはんだ接合部12Bの実際の厚さQとに基づいて、ボイド率Rv=1-P/Qを求める。
【0053】
そして、判定部23は、求めたボイド率Rvと上限値RHとの大小を比較し、比較結果を示す信号φ23を生成する。上限値RHは、たとえば0.4に設定される。Rv≧RHである場合には、信号φ23は「H」レベルにされる。Rv<RHである場合には、信号φ23は「L」レベルにされる。
【0054】
信号φ23が「H」レベルである場合には、ボイド率Rvが上限値RH以上であるので、「H」レベルの信号φ23は、検査対象のはんだ接合部12Bが不合格である旨を示している。他方、信号φ23が「L」レベルである場合には、ボイド率Rvが上限値RHよりも小さいので、「L」レベルの信号φ23は、検査対象のはんだ接合部12Bが合格である旨を示している。
【0055】
判定部23は、検査対象のはんだ接合部12Bのボイド率Rvと、合否を示す信号φ23と、はんだ接合部12Bの位置情報(すなわちパッド11bの位置情報)とを記憶部24の所定のアドレスに書き込む。なお、パッド11bの位置情報は、たとえば、印刷検査機2(
図1)によって生成され、クリームはんだ部12の体積Vに添付される。出力部25は、記憶部24の記憶内容を読み出して画像表示装置8に与える。
【0056】
画像表示装置8(報知部)は、出力部25から与えられた情報、すなわち検査対象のはんだ接合部12Bのボイド率Rvと、合格または不合格と、はんだ接合部12Bの位置情報(パッド11bの位置情報)とを表示する。
【0057】
製造ライン(
図1)の使用者は、検査した複数のはんだ接合部12Bの全てが合格であると画像表示装置8に表示された場合には、プリント配線板11に対する電子部品13の実装は成功したと判断する。
【0058】
他方、製造ラインの使用者は、検査した複数のはんだ接合部12Bのうちの1つでも不合格であることが画像表示装置8に表示された場合には、プリント配線板11に対する電子部品13の実装は失敗したと判断する。
【0059】
なお、演算処理装置7は、専用処理回路のような専用のハードウェア、あるいはプロセッサおよび記憶装置で構成される。専用のハードウェアを利用する場合、専用処理回路は、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものを含む。
【0060】
プロセッサおよび記憶装置を利用する場合、上記の各機能は、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組合せにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアは、プログラムとして記述され、記憶装置に記憶される。プロセッサは、記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して実行する。これらのプログラムは、上記の各機能を実現する手順および方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。
【0061】
記憶装置は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、またはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)(登録商標)といった半導体メモリで構成される。半導体メモリは、不揮発性メモリでもよいし揮発性メモリでもよい。また、記憶装置は、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスクまたはDVD(Digital Versatile Disc)で構成されていても構わない。
【0062】
演算処理装置7および画像表示装置8をパーソナルコンピュータによって実現してもよい。また、記憶部20,24を他のサーバやクラウドによって実現しても構わない。
【0063】
図11は、製造ラインの動作を示すフローチャートである。ステップS1において印刷機1によって、プリント配線板11(
図2)の表面のパッド11bにクリームはんだ12が印刷される。ステップS2において印刷検査機2によって、パッド11bの表面に印刷されたクリームはんだ12の外観が検査されるとともに、クリームはんだ12の体積Vが検出される。
【0064】
ステップS3において部品搭載機3によって、プリント配線板11のパッド11bの上方に電子部品13(
図3)の底面の端子13aが位置合わせされた後、電子部品13が下降されてプリント配線板11の表面に搭載される。ステップS4において部品搭載検査機4によって、プリント配線板11の表面に電子部品13が正常に搭載されたか否かが検査される。
【0065】
ステップS5においてリフロー炉5によって、電子部品13が搭載されたプリント配線板11が所定の温度プロファイルで加熱される。これにより、クリームはんだ層12A(
図4)が溶融および凝固してはんだ接合部12Bとなる。
【0066】
ステップS6において外観検査機6によって、電子部品13が正常に実装されたか否かが検査されるとともに、プリント配線板11の表面を基準とした電子部品13の天面の高さH(
図5)が検出される。
【0067】
ステップS7において演算処理装置7によって、クリームはんだ12の体積Vと部品実装高さHとに基づいて、はんだ接合部12Bのボイド率Rvが求められるとともに、はんだ接合部12Bの合否が判定される。ステップS8において画像表示装置8によって、ボイド率Rvと合否の判定結果が表示される。
【0068】
図12は、検査装置10の動作を示すフローチャートである。ステップS11において印刷検査機2によって、プリント配線板11のパッド11bに印刷されたクリームはんだ12(
図2)の体積Vが検出される。
【0069】
ステップS12において演算部21(
図6)によって、クリームはんだ12の体積Vがパッド11bの面積Sで除算されてクリームはんだ層12A(
図3)の厚さD=V/Sが求められる。ステップS13において演算部21によって、クリームはんだ層12Aの厚さDに定数Kが乗算されてはんだ接合部12B(
図4)の理論上の厚さP=K×Dが求められる。
【0070】
ステップS14において外観検査機6によって、プリント配線板11の表面を基準とした電子部品13の天面の高さH(
図5)が検出される。ステップS15において演算部22(
図6)によって、部品実装高さHから電子部品13の厚さhが減算されて、はんだ接合部12Bの実際の厚さQ=H-hが求められる。
【0071】
ステップS16において判定部23(
図6)によって、はんだ接合部12Bの理論上の厚さPと実際の厚さQとに基づいて、はんだ接合部12Bにおけるボイド率Rv=1-P/Qが求められる。
【0072】
ステップS17において判定部23によって、ボイド率Rvと上限値RHの大小が比較され、比較結果に基づいてはんだ接合部12Bの合否が判定され、判定結果を示す信号φ23が生成される。ステップS18において画像表示装置8(
図6)によって、ボイド率Rvと合否の判定結果が表示される。
【0073】
以上のように、本実施の形態1では、パッド11bに印刷されたクリームはんだ12の体積Vとパッド11bの面積Sとに基づいて、はんだ接合部12Bの理論上の厚さPを求めるとともに、部品実装高さHと電子部品13の厚さhとに基づいて、はんだ接合部12Bの実際の厚さQを求め、厚さP,Qに基づいてはんだ接合部12Bが正常か否かを判定する。したがって、プリント配線板11の表面のパッド11bに電子部品13の底面の端子13aをはんだ付けするために、はんだ接合部12Bが電子部品13の下に隠れてしまう場合でも、はんだ接合部12Bを検査することができる。
【0074】
図13は、本実施の形態1の変更例1における演算処理装置の構成を示すブロック図であって、
図6と対比される図である。
図13を参照して、この変更例1が実施の形態1と異なる点は、演算処理装置7が演算処理装置7Aで置換されている点である。演算処理装置7Aは、演算処理装置7に演算部31を追加したものである。
【0075】
この変更例1では、外観検査機6(
図1)は、実装された電子部品13(
図5)の天面を格子状に分割して第1~第nの区域を生成し、プリント配線板11の表面を基準とした第1~第nの区域の高さH1~Hnの各々を検出する。nは、2以上の整数である。演算部31(第3の演算部)は、外観検査機6(高さ検出器)によって検出された高さH1~Hnの平均値を求め、求めた平均値を部品実装高さHとして演算部22に与える。他の構成および動作は実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0076】
この変更例1では、電子部品13の天面を第1~第nの区域に分割し、第1~第nの区域の高さH1~Hnの平均値を部品実装高さHとするので、ボイド30の影響によって電子部品13が傾いて実装されている場合や、電子部品13の天面に傷や欠けが生じている場合でも、部品実装高さHを精度良く検出することができる。このため、はんだ接合部12Bの実際の厚さQ、ボイド率Rvを精度良く求めることができる。
【0077】
図14は、本実施の形態1の変更例2における演算処理装置の構成を示すブロック図であって、
図6と対比される図である。
図14を参照して、この変更例2が実施の形態1と異なる点は、演算処理装置7が演算処理装置7Bで置換されている点である。演算処理装置7Bは、演算処理装置7に演算部32を追加したものである。
【0078】
この変更例2では、外観検査機6(
図1)は、実装された電子部品13(
図5)の天面とプリント配線板11の表面との間の部分の体積V1と、その電子部品13の天面の面積S1とを検出する。演算部32(第3の演算部)は、外観検査機6(体積検出器)によって検出された体積V1を天面の面積S1で除算して部品実装高さH=V1/S1を求め、求めた部品実装高さHを演算部22に与える。他の構成および動作は実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。この変更例2でも変更例1と同じ効果が得られる。
【0079】
なお、電子部品13の天面の面積S1は部品カタログから既知であるので、その面積S1を予め記憶部20に記憶させておき、外観検査機6によって検出された体積V1を記憶部20に記憶された面積S1で除算して部品実装高さH=V1/S1を求めても構わない。
【0080】
実施の形態2.
図15は、実施の形態2における演算処理装置の構成を示すブロック図であって、
図6と対比される図である。
図15を参照して、この実施の形態2が実施の形態1と異なる点は、演算処理装置7が演算処理装置7Cで置換されている点である。演算処理装置7Cは、演算処理装置7の演算部21,22および判定部23をそれぞれ演算部41,42および判定部43で置換したものである。
【0081】
演算部41(第1の演算部)は、印刷検査機2(
図1)によって検出されたクリームはんだ部12(
図3)の体積Vに定数Kを乗算して、はんだ接合部12B(
図4)の理論上の体積Pv=K×Vを求める。ここで、Kは、1よりも小さな正の実数である。
【0082】
一般に、クリームはんだを溶融および凝集させると、体積は1/2に減少する。ただし、クリームはんだの溶融・凝集の前後の体積変化の比率について経験値や実績値があれば、それら使用してもよく、また、必要に応じて補正しても構わない。本実施の形態2では、体積変化の比率を1/2とし、K=1/2とする。したがって、はんだ接合部12Bの理論上の体積Pv(第1のサイズ)は、Pv=V/2となる。
【0083】
演算部42は、外観検査機6(
図1)によって検出された高さH(
図5)から、記憶部20に記憶された電子部品13の厚さhを減算した値に、記憶部20に記憶されたパッド11bの面積Sを乗算して、はんだ接合部12Bの実際の体積Qv=(H-h)×Sを求める。
【0084】
判定部43は、演算部41によって求められたはんだ接合部12Bの理論上の体積Pvと、演算部42によって求められたはんだ接合部12Bの実際の体積Qv(第2のサイズ)とに基づいて、ボイド率Rv=1-Pv/Qvを求める。なお、Pv=P×S、Qv=Q×Sであるので、Pv/Qv=P/Qである。
【0085】
そして、判定部43は、求めたボイド率Rvと上限値RHとを比較し、比較結果を示す信号φ23を生成する。判定部43は、検査対象のはんだ接合部12Bのボイド率Rvと、合否を示す信号φ23と、はんだ接合部12Bの位置情報(パッド11bの位置情報)とを記憶部24の所定のアドレスに書き込む。他の構成および動作は実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0086】
以上のように、本実施の形態2では、パッド11bに印刷されたクリームはんだ12の体積Vに基づいて、はんだ接合部12Bの理論上の体積Pvを求めるとともに、部品実装高さHと電子部品13の厚さhとパッド11bの面積Sとに基づいて、はんだ接合部12Bの実際の体積Qvを求め、体積Pv,Qvに基づいてはんだ接合部12Bが正常か否かを判定する。したがって、プリント配線板11の表面のパッド11bに電子部品13の底面の端子13aをはんだ付けするために、はんだ接合部12Bが電子部品13の下に隠れてしまう場合でも、はんだ接合部12Bを検査することができる。
【0087】
今回開示された各実施の形態は、技術的に矛盾しない範囲で適宜組合わせて実施することも予定されている。そして、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0088】
1 印刷機、2 印刷検査機、3 部品搭載機、4 部品搭載検査機、5 リフロー炉、6 外観検査機、7,7A,7B,7C 演算処理装置、8 画像表示装置、10 検査装置、11 プリント配線板、11a 絶縁板、11b パッド、12 クリームはんだ部、12A クリームはんだ層、12B はんだ接合部、13 電子部品、13a 端子、20,24 記憶部、21,22,31,32,41,42 演算部、23,43 判定部、25 出力部、30 ボイド。