IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニプロ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-医療用チューブ固定具 図1
  • 特開-医療用チューブ固定具 図2
  • 特開-医療用チューブ固定具 図3
  • 特開-医療用チューブ固定具 図4
  • 特開-医療用チューブ固定具 図5
  • 特開-医療用チューブ固定具 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157664
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】医療用チューブ固定具
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/02 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A61M25/02 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072142
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 健太
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267AA33
4C267BB03
4C267BB07
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB19
4C267BB20
4C267BB24
4C267CC01
4C267GG02
4C267GG05
4C267GG06
4C267HH08
4C267HH30
(57)【要約】
【課題】医療用チューブを確実に保持できると共に、医療用チューブへの装着が容易な固定具を提供する。
【解決手段】実施形態の一例である医療用チューブ固定具1は、カテーテル50を患者の体等の目的とする場所に固定するための可撓性を有する樹脂製の固定具である。医療用チューブ固定具1は、カテーテル50が保持される保持部10と、保持部10にカテーテル50を導入するためのスリット11,12とを備える。スリット11,12は、固定具の左右両側からそれぞれ保持部10にわたって、左右方向に対向しないように形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用チューブを目的とする場所に固定するための医療用チューブ固定具であって、
前記医療用チューブが保持される保持部と、
前記保持部に前記医療用チューブを導入するためのスリットと、
を備え、
前記スリットは、前記医療用チューブ固定具の側面から前記保持部にわたって形成されている、医療用チューブ固定具。
【請求項2】
前記スリットは、前記医療用チューブ固定具の第1の側面に形成された第1のスリットと、前記第1の側面と対向する第2の側面に形成された第2のスリットとを含み、
前記第1および前記第2のスリットは、前記保持部を介して互いに対向しないように形成されている、請求項1に記載の医療用チューブ固定具。
【請求項3】
前記医療用チューブ固定具は、可撓性を有する樹脂製の部材であり、
前記保持部は、前記医療用チューブを通す孔であって、当該孔の内周面が前記医療用チューブに当接するように形成されている、請求項2に記載の医療用チューブ固定具。
【請求項4】
前記医療用チューブ固定具は、前記保持部が開くように折り曲げ可能に構成されている、請求項3に記載の医療用チューブ固定具。
【請求項5】
前記医療用チューブ固定具は、テープが貼着される天面を有し、
前記天面は、前記スリットが延びる方向の外側に向かって次第に高さが低くなるように傾斜している、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用チューブ固定具。
【請求項6】
医療用チューブを目的とする場所に固定するための医療用チューブ固定具であって、
内部にチューブ挿通孔が形成され、外面に皮膚に載置するための載置面を備え、
チューブ軸方向において先端側の第1部分と基端側の第2部分を有し、
前記第1部分と前記第2部分は、前記医療用チューブを囲み保持する閉鎖位置から前記チューブを前記チューブ挿通孔へ導入可能な開口部が形成される開口位置へと移行可能であり、
前記閉鎖位置から前記開口位置への移行は、前記第1部分と前記第2部分を前記医療用チューブの軸周り方向に互いに逆方向に回転させることによって生じる、医療用チューブ固定具。
【請求項7】
前記第1部分と前記第2部分は、互いに逆方向に向かって延在する、請求項6に記載の医療用チューブ固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用チューブを患者の体等の目的とする場所に固定するための医療用チューブ固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カテーテルや、点滴用のチューブ、透析回路用のチューブなど、種々の医療用チューブが使用されている。このようなチューブが誤って抜去されることを防止するため、チューブを患者の体等の目的とする場所に固定する必要がある。カテーテル等の医療用チューブを患者に固定するための手段として、チューブに装着されテープ等を用いて皮膚に固定される医療用チューブ固定具が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1,2には、一対の翼片およびカテーテルの保持溝を有する板状の固定具本体と、固定具本体に対して嵌合可能な固定部材とを備えたカテーテル固定具が開示されている。特許文献1の固定部材は、固定具本体の平面方向に沿ってスライド移動可能であり、スライドさせることで固定具本体に嵌合する。また、特許文献2の固定部材は、固定具本体に対して回転可能であり、固定具本体の主面に垂直な仮想線を中心軸として主面方向に平行に回転させることで固定具本体に嵌合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-70885公報
【特許文献2】特開2013-70886公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2の固定具によれば、固定具からカテーテルが外れにくく、意図しないカテーテルの抜去を防止できる。一方、当該固定具は、カテーテルへの装着に手間がかかるという問題があり、改善の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、カテーテル等の医療用チューブを確実に保持できると共に、医療用チューブへの装着が容易な固定具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る医療用チューブ固定具は、医療用チューブを目的とする場所に固定するための医療用チューブ固定具であって、前記医療用チューブが保持される保持部と、前記保持部に前記医療用チューブを導入するためのスリットとを備え、前記スリットは、前記医療用チューブ固定具の側面から前記保持部にわたって形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、固定具の側面から形成されたスリットの機能によって医療用チューブを保持部に導入できる。この場合、保持部からチューブが外れにくくチューブを強く保持でき、誤ってチューブが抜去されることを防止できる。加えて、チューブに対して固定具を容易に装着でき、医療従事者の手間を軽減できる。
【0009】
本発明に係る医療用チューブ固定具において、前記スリットは、前記医療用チューブ固定具の第1の側面に形成された第1のスリットと、前記第1の側面と対向する第2の側面に形成された第2のスリットとを含み、前記第1および前記第2のスリットは、前記保持部を介して互いに対向しないように形成されていることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、2つのスリットが保持部を介して互いに対向しないように形成されるため、保持部を介して各スリットと対向する位置には医療用チューブを押える壁が形成される。この場合、チューブに対する良好な装着性を維持しつつ、保持部に導入されたチューブはスリットが延びる固定具の側方からも外れにくくなり、誤ってチューブが抜去されることをより確実に防止できる。
【0011】
本発明に係る医療用チューブ固定具は、可撓性を有する樹脂製の部材であり、前記保持部は、前記医療用チューブを通す孔であって、当該孔の内周面が前記医療用チューブに当接するように形成されていることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、保持部に導入された医療用チューブが部材の復元力により強く保持されると共に、保持部の内周面とチューブの外周面との間に大きな摩擦力が作用する。その結果、チューブは長さ方向にも強く拘束され、誤ってチューブが抜去されることをより確実に防止できる。
【0013】
本発明に係る医療用チューブ固定具は、前記保持部が開くように折り曲げ可能に構成されていることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、チューブの高い保持力を維持しつつ、チューブへの固定具の装着がさらに容易になる。
【0015】
本発明に係る医療用チューブ固定具は、テープが貼着される天面を有し、前記天面は、前記スリットが延びる方向の外側に向かって次第に高さが低くなるように傾斜していることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、天面に沿ってテープを貼着することができるので、テープを用いて固定具を患者の体にしっかり固定できる。
【0017】
本発明の他の一態様である医療用チューブ固定具は、医療用チューブを目的とする場所に固定するための医療用チューブ固定具であって、内部にチューブ挿通孔が形成され、外面に皮膚に載置するための載置面を備え、チューブ軸方向において先端側の第1部分と基端側の第2部分を有し、前記第1部分と前記第2部分は、前記医療用チューブを囲み保持する閉鎖位置から前記チューブを前記チューブ挿通孔へ導入可能な開口部が形成される開口位置へと移行可能であり、前記閉鎖位置から前記開口位置への移行は、前記第1部分と前記第2部分を前記医療用チューブの軸周り方向に互いに逆方向に回転させることによって生じることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、第1部分と第2部分が、チューブを囲み保持する閉鎖位置からチューブをチューブ挿通孔へ導入可能な開口部が形成される開口位置へと移行可能であるため、チューブを挿通孔に容易に導入できる。チューブに対して固定具を容易に装着できると共に、挿通孔に導入されたチューブは挿通孔から外れにくく、誤ってチューブが抜去されることを防止できる。
【0019】
本発明の他の一態様である医療用チューブ固定具において、前記第1部分と前記第2部分は、互いに逆方向に向かって延在することが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、チューブに対する良好な装着性を維持しつつ、挿通孔に導入されたチューブが挿通孔からより外れにくくなり、誤ってチューブが抜去されることをより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る医療用チューブ固定具は、チューブを確実に保持でき、且つチューブへの装着が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態の一例である医療用チューブ固定具を用いてカテーテルを腕に固定した状態を示す。
図2】実施形態の一例である医療用チューブ固定具を上から見た斜視図である。
図3】実施形態の一例である医療用チューブ固定具を上から見た斜視図である。
図4】実施形態の一例である医療用チューブ固定具を下から見た斜視図である。
図5】医療用チューブ固定具をカテーテルに装着する様子を示す図である。
図6】医療用チューブ固定具をカテーテルに装着した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態の各構成要素を選択的に組み合わせることは当初から想定されている。
【0024】
図1は、実施形態の一例である医療用チューブ固定具1(以下、単に「固定具1」とする)を用いてカテーテル50を患者の腕60に固定した状態を示す。
【0025】
図1に示すように、固定具1は、カテーテル50に装着され、テープ51を用いて腕60に固定されている。固定具1は、通常、患者の体に固定されるが、点滴架台等の医療器具などに固定することも可能であり、テープ51等を用いて目的とする場所に固定される。また、固定具1を患者の体等に固定するための手段としては、テープ51が好適であるあるが、これに限定されない。他の固定手段の一例としては、バンド、包帯、ネットなどが挙げられる。
【0026】
本実施形態では、固定具1を用いて患者の体等に固定される医療用チューブとして、カテーテル50を例示する。カテーテル50は、可撓性を有するチューブであって、患部への薬液の投与や、患部から体液を採取するために、患者の血管、体腔部などに挿入される。このため、誤ってカテーテル50が抜去されないようにカテーテル50を患者の体に固定しておく必要がある。詳しくは後述するが、固定具1は、カテーテル50を確実に保持でき、且つカテーテル50への装着が容易である。
【0027】
図1に示す例では、カテーテル50に装着された固定具1の全体を覆うように、固定具1の天面2にテープ51が貼着され、テープ51の長さ方向両端部が患者の腕60に貼着されている。なお、固定具1の固定箇所は腕60に限定されず、肩、脚、腹等であってもよい。テープ51には、一般的な医療用の粘着テープが使用される。テープ51は、例えば、一定の幅を有する帯状のテープであって、固定具1が装着されたカテーテル50が延びる方向に対して直交するように貼着される。
【0028】
固定具1は、高さが低い小さなブロック状の部材である。このため、腕60から大きく突出せず腕60に固定されていても邪魔にならない。固定具1の天面2は、テープ51が密着しやすいように、凹凸のない平面を含む。詳しくは後述するが、カテーテル50が延びる方向に直交する方向の天面2の両端には、外側に向かって次第に高さが低くなるように傾斜した斜面3,4がそれぞれ形成されている。この場合、固定具1の端において天面2と腕60の表面との高さの差が小さくなり、テープ51の浮き上がりが抑制される。固定具1は、テープ51を用いて腕60にしっかり固定できる。
【0029】
以下、図2図4を参照しながら、固定具1の構造について詳説する。図2および図3は固定具1を天面2側から見た斜視図、図4は固定具1を底面5側から見た斜視図である。
【0030】
図2図4に示すように、固定具1は、カテーテル50が保持される保持部10と、保持部10にカテーテル50を導入するためのスリットとを備える。保持部10は、カテーテル50を通す孔であって、スリットが延びる方向および固定具1の高さ方向に直交する方向に延びる。スリットは、固定具1の側面から保持部10にわたって形成される。本実施形態では、スリットとして、第1の側面である左側面8に形成された第1のスリット11と、左側面8と対向する第2の側面である右側面9に形成された第2のスリット12とを含む。
【0031】
以下では、説明の便宜上、前後、左右、上下の方向を示す用語を使用する。図2に、固定具1の前後方向α、左右方向β、上下方向(高さ方向)γを示す。前後方向αは、保持部10が延びる方向を意味し、固定具1がカテーテル50に装着されたときにカテーテル50に沿う方向である。図2において、前後方向αに向いた側面のうち、紙面手前側の面を前面6とし、前面6と対向する面を後面7とする。また、前後方向αおよび上下方向γに対して直交する方向が左右方向βであって、前方に向かって左手の側面を左側面8とし、右手の側面を右側面9とする。
【0032】
固定具1は、弾性変形しない硬質の材料で構成することも可能であるが、好ましくは可撓性を有する樹脂製の部材である。固定具1が弾性変形可能な可撓性のある材料で構成される場合、カテーテル50への装着性が向上し、また部材の復元力によりカテーテル50をしっかり保持できる。固定具1は、ゴム弾性を有するエラストマーで構成されることが好ましい。なお、エラストマーにはゴムが含まれる。エラストマーの組成は特に限定されないが、一例としては、シリコーン、ポリウレタン、ポリオレフィン、スチレンとオレフィンの共重合体などが挙げられる。
【0033】
固定具1は、保持部10が開くように折り曲げ可能に構成されている。後述の図6に示すように、固定具1を折り曲げてカテーテル50に嵌めることができるので、固定具1はカテーテル50に簡単且つ迅速に装着できる。なお、固定具1が可撓性を有するエラストマーで構成されると共に、保持部10につながるスリットの機能によって、このような折り曲げが可能となる。また、保持部10の内周面はカテーテル50の外周面に密着し、両者の間には大きな摩擦力が作用する。このため、カテーテル50は長さ方向にも強く拘束される。
【0034】
固定具1は、高さが低くて平たい板状ないしブロック状を呈し、1つの部品で構成されている。固定具1の形状は特に限定されないが、本実施形態では平面視四角形状を有し、前後方向よりも左右方向にやや長くなっている。固定具1は、上記のように、テープ51が貼着される天面2を有し、天面2の左右方向両側には、外側に向かって次第に高さが低くなるように傾斜した斜面3,4が形成されている。また、斜面3,4は前後方向の全長にわたって形成され、上下方向にはスリット11,12を超える長さで形成されている。斜面3,4の傾斜角度と長さは互いに異なっていてもよいが、本実施形態では実質的に同じである。斜面3,4を形成することにより、固定具1を小型化でき、またテープ51の貼着が容易になる。斜面3,4は、例えば、凹凸のない平面であるが、曲面であってもよく、傾斜角度が徐々に変化した複数の斜面で構成されていてもよい。固定具1の角が面取りされていればよく、斜面3,4の形状は特に限定されない。
【0035】
固定具1は、天面2と、スリット13が形成され、患者の皮膚に当接する平坦な底面5と、保持部10が開口した前面6および後面7と、スリット11が形成された左側面8と、スリット12が形成された右側面9とを有する。天面2の斜面3,4に挟まれた領域は、左右方向に沿った平面であって、患者の皮膚に当接する底面5と平行に形成されている。なお、斜面3,4はそれぞれ左右方向を向いているので、斜面3が左側面8、斜面4が右側面9ともいえるが、本発明の構成上、天面2と左右側面との境界位置が明確である必要はない。テープ51が貼着される上方に向いた面の左右両端部が外側に向かって次第に高さが低くなるように傾斜しているのが好ましい。
【0036】
保持部10は、カテーテル50を通す孔であって、前面6から後面7にわたって前後方向に真っ直ぐ延びることが好ましい。保持部10の長さ方向両端の開口は、例えば、前面6および後面7の左右方向中央部に形成される。保持部10の開口は略真円形状を有し、保持部10の孔径(直径)は前後方向の全長にわたって一定であることが好ましい。また、保持部10は、孔の内周面がカテーテル50の外周面に当接するように形成されることが好ましい。この場合、カテーテル50を強く保持できる。保持部10の直径は、カテーテル50の外径と同じか、やや小さくてもよく、一例としては、カテーテル50の外径の85%以上100%以下である。
【0037】
即ち、固定具1の内部にカテーテル挿通孔である保持部10が形成され、外側を向いた外面に皮膚に載置するための載置面である底面5が形成されている。本実施形態の底面5は平面であるが、緩やかに湾曲した曲面であってもよい。
【0038】
固定具1は、上記のように、左側面8に形成された第1のスリット11と、右側面9に形成された第2のスリット12とを備える。詳しくは後述するが、スリット11,12は、保持部10を介して互いに対向しないように形成される。即ち、スリット11,12は前後方向にずれて形成され、左右方向に対向配置されない。スリット11は左側面8から左右方向に沿って保持部10まで延び、スリット12は右側面9から左右方法に沿って保持部10まで延びる。スリット11,12は、例えば、平坦な底面5から同じ高さの位置に形成され、保持部10の上下方向中央部に連通する。
【0039】
本実施形態では、固定具1がゴム弾性を有するエラストマーで構成されるため、スリット11,12の幅がカテーテル50の外径より小さくても、固定具1を変形させてカテーテル50をスリット11,12に通すことが可能である。スリット11,12の幅(上下方向長さ)は、カテーテル50の外径の10%以上40%以下が好ましい。この場合、固定具1の良好な装着性を維持しつつ、保持部10に導入されたカテーテル50がスリット11,12から外れにくくなる。
【0040】
固定具1は、さらに、固定具1の下部を二分するように底面5から保持部10にわたって形成された第3のスリット13を備える。また、スリット13はスリット11,12に連通している。言い換えると、スリット11,12の前後方向長さは、スリット13につながる長さに設定される。固定具1の底面5を二分してスリット11,12につながるスリット13を形成することにより、保持部10が開くように固定具1を折り曲げることが可能になる。
【0041】
スリット13は、固定具1の前後方向中央において、左側面8から右側面9にわたって左右方向および上下方向に真っ直ぐに延び、底面5を二等分することが好ましい。この場合、スリット11,12の前後方向長さは実質的に同じとなる。また、スリット13は、底面5から保持部10およびスリット11,12に到達する深さで形成される。スリット13の深さは、例えば、固定具1の高さの40%以上60%以下であり、本実施形態では固定具1の高さの1/2である。スリット13の幅は特に限定されず、スリット11,12の幅と実質的に同じであってもよい。
【0042】
スリット11,12は、上記のように、保持部10を挟んで左右方向に対向しない位置に形成される。即ち、スリット11,12は、左右方向に並ばないように、前後方向にずれて形成される。スリット11は前面6から前後方向中央のスリット13にわたって形成され、スリット12はスリット13から後面7にわたって形成されている。これにより、保持部10を挟んでスリット11と対向する位置には、保持部10の連続した内周面を形成する壁が配置される。同様に、保持部10を挟んでスリット12と対向する位置には、保持部10の連続した内周面を形成する壁が配置される。
【0043】
固定具1は、上記のように、エラストマーで構成され、保持部10が開くように折り曲げ可能であるが、当該折り曲げ構造はエラストマーのゴム弾性とスリット11,12,13によって実現される。本実施形態では、天面2が左右方向中央部で、天面2同士が接触可能な程度まで大きく折れ曲がって保持部10が形成された固定具1の内部が露出し、保持部10にカテーテル50を導入することが可能になる。なお、固定具1を折り曲げる力を解除することで、エラストマーのゴム弾性によって固定具1は元の形状に戻る。
【0044】
固定具1は、カテーテル50を上から覆う基部20と、スリット11,13により一部を残して基部20から分離された第1部分21と、スリット12、13により一部を残して基部20から分離された第2部分22とに区画されている。第1部分21は固定具1の左右方向中央部から左側に、第2部分22は固定具1の左右方向中央部から右側にそれぞれ延びて、第1部分21および第2部分22は、基部20を支える脚のように形成されている。
【0045】
第1部分21は固定具1の前方に、第2部分22は固定具1の後方に配置されている。言い換えると、固定具1は、カテーテル50の軸方向(長さ方向)において先端側の第1部分21と基端側の第2部分22を有する。第1部分21と第2部分22は、スリット11,12の向きに起因して、互いに逆方向に向かって延在している。
【0046】
固定具1の基部20は、第1部分21と左右方向に対向する位置まで下方に延びて、第1部分21と共に底面5を形成する第1領域23を含む。第1部分21は保持部10の下方で第1領域23とつながっている。また、基部20は、第2部分22と左右方向に対向する位置まで下方に延びて、第2部分22と共に底面5を形成する第2領域24を含む。第2部分22は保持部10の下方で第2領域24とつながっている。基部20の第1領域23は固定具1の前方右側に、第2領域24は固定具1の後方左側に配置される。
【0047】
図5は、固定具1を折り曲げてカテーテル50に装着する様子を示す図である。図6は、固定具1をカテーテル50に装着した状態を示す図である。
【0048】
図5に示すように、固定具1は、天面2(基部20)が左右方向中央部で折れ曲がることにより、保持部10が形成された固定具1の内部を大きく開くことができる。固定具1の基部20はヒンジのように折れ曲がり、第1部分21と第2部分22の先端が同じ方向を向いた状態となる。固定具1をこのように開くことで、カテーテル50に対して固定具1を容易に装着できる。図5に示す例では、天面2の左右方向中央の両側に位置する部分同士が近接する、或いは接触する程度まで基部20が折れ曲がり、第1部分21の底面5と第2部分22の底面5とが互いに反対側を向いた状態となっている。
【0049】
固定具1は、前方右側部分である基部20の第1領域23と、後方左側部分である基部20の第2領域24とを指で摘まんで、第1領域23と第2領域24を近づけるように力を加えることにより、図5に例示する状態となる。例えば、第1領域23と第2領域24を親指と人差し指で摘まんだ場合、親指と人差し指を閉じるように力を加えることで、基部20が折れ曲がって固定具1が大きく開く。
【0050】
固定具1を開いた状態において、例えば、第1部分21と第1領域23の境界位置に形成された保持部10の下半分にカテーテル50を配置し、親指と人差し指を閉じる力を解除する。即ち、親指と人差し指を開く。これにより、固定具1が閉じて天面2が平坦な元の形状を復元し、保持部10にカテーテル50が収容された図6に例示する状態となる。固定具1は、このように片手で簡単に開閉操作できる。
【0051】
即ち、固定具1は、第1部分21と第2部分22は、カテーテル50を囲み保持する閉鎖位置からカテーテル50をカテーテル挿通孔である保持部10へ導入可能な開口部が形成される開口位置へと移行可能である。本実施形態では、当該閉鎖位置から開口位置への移行は、第1部分21と第2部分22をカテーテル50の軸周り方向に互いに逆方向に回転させることによって生じる。
【0052】
図6に示すように、固定具1は、カテーテル50を保持部10に収容している。固定具1が閉じた状態では、前後方向に延びる略真円形状の孔である保持部10が形成され、保持部10の内周面がカテーテル50の外周面に密着する。これにより、カテーテル50が長さ方向にも動かないようにしっかり保持される。また、固定具1が閉じた状態では、スリット11,12の幅がカテーテル50の外径より狭くなっているため、保持部10によってカテーテル50が安定に保持される。そして、固定具1の全体を覆うように天面2にテープ51を貼着し、患者の腕等の目的とする場所に固定具1を貼着する。
【0053】
以上のように、上記構成を備えた固定具1によれば、保持部10からカテーテル50が外れにくくカテーテル50を強く保持でき、誤ってカテーテル50が抜去されることを防止できる。加えて、スリットの機能より固定具1の左右両端部を摘まんで折り曲げることで保持部10を大きく開放することができるので、カテーテル50に対して固定具1を簡単且つ迅速に装着でき、医療従事者の作業負担を軽減できる。同様に、固定具1の取り外しも容易である。また、固定具1は1つの部品で構成されるため、製造コストも削減も可能である。
【0054】
固定具1によれば、カテーテル50に対する装着が簡単であるにも関わらず、スリット11,12が前後方向にずれて形成されているため、保持部10の左右両側にはカテーテル50を押える壁が形成される。このため、保持部10に導入されたカテーテル50はスリットが延びる固定具1の側方からも外れにくくなり、誤ってカテーテル50が抜去されることをより確実に防止できる。
【0055】
なお、上記実施形態は本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、上記実施形態では、スリット11,12,13を有する構造を例示したが、1本のスリットを有する固定具であってもよい。具体例としては、スリット13が形成された固定具1の前後方向中央部で固定具1を左右方向および上下方向に切断したような構造、即ち保持部10とスリット11だけが形成された構造が挙げられる。
【0056】
また、上記実施形態では、天面2の左右方向両端部に斜面3,4が形成された形態を例示したが、天面の左右方向両端部、或いは天面の全体が、上方に向かって凸となるように緩やかに湾曲し、左右方向の外側に向かって次第に高さが低くなるように傾斜していてもよい。
【0057】
また、固定具を開く際に指で摘ままれる部分(上記実施形態では、基部20の第1領域23と第2領域24)に、外側に向かって突出する突起を設けてもよい。この場合、固定具を開く操作がよりスムーズになる。
【符号の説明】
【0058】
1 医療用チューブ固定具、2 天面、3,4 斜面、5 底面、6 前面、7 後面、8 左側面、9 右側面、10 保持部、11 第1のスリット、12 第2のスリット、13 第3のスリット、20 基部、21 第1部分、22 第2部分、23 第1領域、24 第2領域、50 カテーテル、51 テープ、60 腕
図1
図2
図3
図4
図5
図6