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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157665
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/71 20110101AFI20241031BHJP
【FI】
H01R12/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072143
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 毅晟
(72)【発明者】
【氏名】原 照雄
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB21
5E223AB76
5E223AC21
5E223AC25
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB01
5E223CB22
5E223CD01
5E223DB11
5E223EA03
5E223EA16
(57)【要約】
【課題】リフロー工程において、ハウジングに対する端子金具の傾きを抑制可能なコネクタを提供する。
【解決手段】本開示のコネクタ10は、圧入孔21が貫通する保持壁部19を有するハウジング20を備えている。端子金具5は、回路基板50に表面実装される基板接続部8を有し、圧入孔21に対して保持壁部19の後方から圧入されている。圧入孔21は、圧入孔21の前端側領域を構成する基準幅部27と、基準幅Dよりも幅方向の寸法が大きく、圧入孔21の後端部を構成する拡幅部31とによって構成されている。端子金具5は、基準幅部27に収容される幅狭部3と、拡幅部31に収容される幅広部7とを有している。基準幅部27の内面と拡幅部31の内面には、端子金具5の外面に対して当接することで、保持壁部19に対する端子金具の傾きを抑制する傾き抑制部29が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通形態の圧入孔が形成された保持壁部を有する合成樹脂製のハウジングと、
回路基板に表面実装される基板接続部を有し、前記圧入孔に対して前記保持壁部の後方から圧入された端子金具と、を備え、
前記圧入孔は、前記圧入孔の前端側領域を構成する基準幅部と、前記基準幅部よりも幅方向の寸法が大きく、前記圧入孔の後端部を構成する拡幅部とによって構成され、
前記端子金具は、前記基準幅部に収容される幅狭部と、前記拡幅部に収容される幅広部と、を有し、
前記基準幅部の内面と前記拡幅部の内面には、前記端子金具の外面に対して、前記幅方向と交差する方向に当接することで、前記保持壁部に対する前記端子金具の傾きを抑制する傾き抑制部が形成されているコネクタ。
【請求項2】
前記傾き抑制部の後端部には、テーパ状の誘導面が形成されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記傾き抑制部は、前記内面のうち前記幅方向における両端部のみに形成され、
前記内面の前記幅方向における中央部には、前記端子金具に非接触である凹部が形成されている請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記凹部は、前記圧入孔の圧入方向における全長に亘って連続して形成されている請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記凹部の前記幅方向の寸法は、前記圧入孔の圧入方向における全長に亘って一定である請求項4に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のコネクタは、ハウジングの背面壁(以下、保持壁部ともいう。)に、端子金具を後方から圧入するための端子挿入孔(以下、圧入孔ともいう。)を有している。圧入孔の後端部には、ラッパ状に開口した、誘い込み縁が形成されている。端子金具は、誘い込み縁に摺接することによって、位置ずれを矯正され、端子挿入部に圧入される。端子金具は、ハウジングの外側に突出し、回路基板の表面に形成された基板に接続される接続部(以下、基板接続部ともいう。)を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-122923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなコネクタは、端子金具の後端部である基板接続部が、リフロー工程を経て回路基板に半田付けして接続される。ここで、保持壁部が端子金具を密着状態で保持しているのは、端子金具のうち誘い込みよりも前方の領域のみである。そのため、リフロー工程においてハウジングが熱膨張して、変形したときに、端子金具が奥壁に対して傾く虞がある。端子金具の姿勢が傾くと、基板接続部が回路基板から浮き上がり、接続不良を誘発する懸念がある。
【0005】
本開示の解決課題は、リフロー工程において、ハウジングに対する端子金具の傾きを抑制可能なコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
貫通形態の圧入孔が形成された保持壁部を有する合成樹脂製のハウジングと、
回路基板に表面実装される基板接続部を有し、前記圧入孔に対して前記保持壁部の後方から圧入された端子金具と、を備え、
前記圧入孔は、前記圧入孔の前端側領域を構成する基準幅部と、前記基準幅部よりも幅方向の寸法が大きく、前記圧入孔の後端部を構成する拡幅部とによって構成され、
前記端子金具は、前記基準幅部に収容される幅狭部と、前記拡幅部に収容される幅広部とを有し、
前記基準幅部の内面と前記拡幅部の内面には、前記端子金具の外面に対して、前記幅方向と交差する方向に当接することで、前記保持壁部に対する前記端子金具の傾きを抑制する傾き抑制部が形成されているコネクタ。
【発明の効果】
【0007】
本開示のコネクタは、リフロー工程において、端子金具がハウジングに対して傾くことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態のコネクタの斜視図である。
図2図2は、実施形態のコネクタの側断面図である。
図3図3は、実施形態のコネクタの平断面図である。
図4図4は、実施形態のコネクタの圧入孔の後端部を表す背面拡大図である。
図5図5は、実施形態の端子金具を収容していないコネクタの背面図である。
図6図6は、実施形態の端子金具を収容していないコネクタの正面図である。
図7図7は、実施形態の端子金具を収容していないコネクタの圧入孔の後端部を表す背面拡大図である。
図8図8は、実施形態の端子金具を収容していないコネクタの圧入孔の前端部を表す正面拡大図である。
図9図9は、実施形態の端子金具を収容していないコネクタの圧入孔の後端部を表す背面拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
【0010】
本開示のコネクタは、
(1)貫通形態の圧入孔が形成された保持壁部を有する合成樹脂製のハウジングを有している。端子金具は、回路基板に表面実装される基板接続部を有し、前記圧入孔に対して前記保持壁部の後方から圧入されている。前記圧入孔は、前記圧入孔の前端側領域を構成する基準幅部と、前記基準幅部よりも幅方向の寸法が大きく、前記圧入孔の後端部を構成する拡幅部とによって構成されている。前記端子金具は、前記基準幅部に収容される幅狭部と、前記拡幅部に収容される幅広部とを有している。前記基準幅部の内面と前記拡幅部の内面には、前記端子金具の外面に対して、前記幅方向と交差する方向に当接することで、前記保持壁部に対する前記端子金具の傾きを抑制する傾き抑制部が形成されている。
本開示のコネクタの傾き抑制部は、圧入孔の前端側領域だけでなく、圧入孔の後端部に位置する拡幅部にも形成されているので、傾き抑制部が圧入孔の前端側領域のみに形成されているものに比べると、前後方向における端子金具への接触長さが長く確保されている。これにより、リフロー工程においてハウジングが熱膨張したときに、端子金具が保護壁部に対して傾くことを効果的に抑制することができる。
【0011】
(2)(1)に記載のコネクタにおいて、前記傾き抑制部の後端部には、テーパ状の誘導面が形成されている。この構成によれば、圧入孔に対して位置ずれした端子金具を、テーパ状の誘導面によって圧入孔に誘い込むことができる。
【0012】
(3)(1)又は(2)のいずれかに記載のコネクタにおいて、前記傾き抑制部は、前記内面のうち前記幅方向における両端部のみに形成されている。前記内面の前記幅方向における中央部には、前記端子金具に非接触である凹部が形成されている。この構成によれば、端子金具を圧入孔に圧入する際に、内面のうち幅方向における中央部が、端子金具に対して非接触となる。よって、内面の全幅に亘って傾き抑制部が端子金具に接触する形態に比べると、端子金具に付着する樹脂量が抑えられ、端子金具の樹脂付着による相手側端子との接続不良を防止できる。
【0013】
(4)(1)から(3)のいずれかに記載のコネクタは、前記凹部は、前記圧入孔の圧入方向における全長に亘って連続して形成されている。この構成によれば、圧入孔の圧入方向において、配置される傾き抑制部の全長に亘って、端子金具と凹部とが非接触となる為、端子金具に付着する樹脂量を、より抑えられる。
【0014】
(5)(1)から(4)のいずれかに記載のコネクタにおいて、前記凹部の幅方向の寸法は、前記圧入孔の圧入方向における全長に亘って一定である。この構成によれば、圧入孔の形成にあたり、複雑な金型を要しない。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0016】
[実施形態1]
本開示の実施形態1のコネクタ10は、複数の端子金具5と、各端子金具5を装着するハウジング20とを備えている。コネクタ10は、回路基板50に実装される基板用コネクタである。ハウジング20は、相手側ハウジング60に嵌合可能とされている。なお、以下の説明において、前後方向については、図1,2,3,9において、「前側」を「F」で表している。を上下方向については、図1,2,4-9において、「上側」を「U」で表している。左右方向については、図1,3,4-9において、「右側」を「R」で表している。
【0017】
[ハウジング20]
ハウジング20は、合成樹脂製であって、幅方向に細長い扁平な四角筒状なフード部11を有している。図2に示すように、フード部11には、相手側ハウジング60が嵌合可能である。
【0018】
図2図3で示すように、フード部11は、上下で対をなして配置される上壁13及び下壁15と、左右で対をなして配置される側壁17と、を有している。フード部11の後端部には、上壁13、下壁15、及び一対の側壁17の後端に連なる保持壁部19が形成されている。保持壁部19は、壁厚方向を前後方向に向けた部位であり、複数の端子金具5を保持する。保持壁部19は、保持壁部19を壁厚方向(前後方向)に貫通する複数の圧入孔21を有している。端子金具5は、ハウジング20の後方から圧入孔21に圧入されている。
【0019】
図3に示すように、保持壁部19のうちフード部11内に臨む前面19aは、前面19aを浅く凹ませた形状であって、ハウジング20を前方から見た正面視の形状が方形をなす収容部23を有している。図6に示すように、収容部23内には、複数の圧入孔21の全てが位置している。
【0020】
図4、8で示すように、圧入孔21は、4面の内壁25によって形成されている。内壁25は、互いに平行をなす上下一対の第1内壁25aと、互いに平行をなす左右一対の第2内壁25bとによって構成されている。内壁25の正面視形状は、方形である。圧入孔21は、圧入孔21の前端側領域を構成する基準幅部27と、基準幅よりも幅方向の寸法が大きく、圧入孔21の後端部を構成する拡幅部31とによって構成されている。拡幅部31の左右両端部は、基準幅部27よりも左右方向外方に位置している。基準幅部27の内面と前記拡幅部31の内面は、一対の第1内壁25aと一対の第2内壁25bとによって構成されている。基準幅部27における一対の第2内壁25b同士の対向間隔を、基準幅Dと定義する。基準幅Dは、後述する端子金具5の幅狭部3の左右幅と略同一である。基準幅部27は、前後方向に延びる略角柱形状をなしている。
【0021】
拡幅部31は、ハウジング20上から視た平面視において、前後方向の寸法よりも幅方向の寸法が大きい長方形をなす。拡幅部31は、偏平な直方形をなしている。
【0022】
図7図9で示すように、圧入孔21を構成する上下一対の第1内壁25aは、基準幅部27、及び拡幅部31において同一面状に繋がっている。基準幅部27を構成する左右一対の第2内壁25b同士の対向間隔は、拡幅部31を構成する左右一対の第2内壁25b同士の対向間隔よりも狭い。基準幅部27を構成する第2内壁25bと、拡幅部31を構成する第2内壁25bは、互いに平行をなして前後方向に延びている。
【0023】
図7図9に示すように、基準幅部27を構成する内壁25の正面視における4隅には、傾き抑制部29が形成されている。拡幅部31を構成する内壁25の正面視における4隅には、基準幅部27の傾き抑制部29に連なる傾き抑制部29が形成されている。これらの傾き抑制部29は、上下一対の第1内壁25aの左右両端部に配置され、正面視において段状に形成されている。段状に形成された傾き抑制部29の角部29Rは、基準幅部27の前端部から拡幅部31の後端部に亘り、連続して真っすぐに延びている。これらの4条の角部29Rは、、圧入孔21の前端から後端に亘り、互いに平行に延びている。
【0024】
上下一対の第1内壁25aの幅方向における中央部には、凹部33が形成されている。凹部33は、幅方向に間隔を空けて配置された一対の傾き抑制部29の間に形成された空間である。凹部33は、傾き抑制部29の前後方向における全長に亘って連続して形成されている。凹部33の幅寸法は、圧入孔21(凹部33)の前後方向における全長に亘って、一定の寸法である。端子金具5を圧入孔21に圧入する過程では、凹部33の内面は端子金具5に接触しない。傾き抑制部29の後端部には、テーパ状の誘導面35が形成されている。誘導面35は、端子金具5を圧入孔21に圧入する際に、圧入孔21に対して上下方向に位置ずれした端子金具5を、圧入孔21内に誘導するための部位である。
【0025】
基準幅部27を構成する一対の第2内壁25bの後端部に、第2内壁25b同士の間隔が後方に向かって広くなるように傾斜した第1傾斜面37が形成されている。拡幅部31を構成する一対の第2内壁25bの後端部には、第2内壁同士の間隔が後方に向かって広くなるように傾斜した第2傾斜面38が形成されている。第1傾斜面37と第2傾斜面38は、端子金具5を圧入孔21に圧入する際に、圧入孔21に対して左右方向に位置ずれした端子金具5を、圧入孔21内に誘導するための部位である。
【0026】
図2に示すように、ハウジング20のロック部22と相手側ハウジング60の相手側ロック部61とが互いに係止されることにより、ハウジング20と相手側ハウジング60とが嵌合状態に保持され、各端子接続部6が相手側ハウジング60に装着された相手側端子63と接続される。相手側端子63は、筒状の箱部65を有する雌型端子金具であって、端子接続部6と接触する。各端子金具5の基板接続部8の後端は、回路基板50の実装面50Aに対して半田付けによって接続される。基板接続部8は、下端部に第2屈曲部12を介して後方に延び、回路基板50に半田付けして接続される部分を有している。
【0027】
[端子金具5]
端子金具5は、導電性を有する金属からなり、横断面が略矩形をした細長い板材を2箇所で略直角にそれぞれ折り曲げ加工して形成される。図1、2に示すように、端子金具5は、前後方向に直線状に延びる端子接続部6と、端子接続部6に連なる基板接続部8とを有している。基板接続部8は、第1屈曲部9を介して端子接続部6の後端に連なり、第1屈曲部9から下方へ延出している。基板接続部8は、端子金具5を側方から見た側面視においてL字形に屈曲した形状をなしており、回路基板50に接続されている。端子金具5の表面には、相手側端子63との電気的接続を良好にするため、金メッキ(図示省略)が施されている。
【0028】
図3に示すように、端子接続部6は、端子接続部6の前端部を構成する幅狭部3と、端子接続部6の後端部を構成する幅広部7とを有している。幅狭部3は、前後方向に長い板形状をなしている。幅狭部3の幅寸法は基準幅Dと略同一である。幅狭部3の後端部は、圧入方向と交差する幅方向へ張り出す圧入突起4を有している。圧入突起4の幅寸法は基準幅Dよりも若干大きい。端子金具5を圧入孔21に圧入した状態において、幅狭部3のうち圧入突起4が形成されている後端部は、基準幅部27内に位置される。幅広部7は、幅狭部3の後端に連なるように配置されている。幅広部7の平面視形状は、幅寸法が基準幅Dよりも大きい略正方形である。幅広部7は、幅寸法が基準幅Dよりも大きい略直方体形状をなしている。端子金具5を圧入孔21に圧入した状態において、幅広部7は、拡幅部31内に収容される。
【0029】
図4に示すように、背面視において、拡幅部31の傾き抑制部29は、幅広部7の上面7Uにおける左右両端部及び、幅広部7の下面下端面7Dにおける左右両端部と接触している。幅広部7と拡幅部31の傾き抑制部29との接触領域は、拡幅部31の前端から後端に亘っている。基準幅部27の傾き抑制部29は、幅狭部3の上面3Uにおける左右両端部及び、幅狭部3の下面3Dにおける左右両端部と接触している。幅狭部3と基準幅部27の傾き抑制部29との接触領域は、基準幅部27の前端から後端に亘っている。
【0030】
[コネクタ10の作用効果]
本開示のコネクタ10は、ハウジング20に端子金具5を取りつけた状態で回路基板50に実装される。ハウジング20に端子金具5を取り付ける際には、端子金具5の前端側領域である幅狭部3を、保持壁部19に形成される圧入孔21に対して、図5に示すように、ハウジング20の後方から圧入する。圧入は、端子金具5の幅広部7の後端面7Bを押圧することによって行われる。圧入の過程では、幅狭部3の前端部が、拡幅部31内に進入する。幅狭部3の上面3Uの左右両端部、及び下面3Dの左右両端部は、拡幅部31内において傾き抑制部29と接触する。このとき、端子金具5が圧入孔21に対して上方又は下方へ位置ずれしている場合に、幅狭部3の左右両端部がテーパ状の誘導面に摺接することによって、端子金具5の位置ずれが矯正される。
【0031】
幅狭部3が拡幅部31に進入した状態から、さらに、圧入を進めると、幅狭部3は、傾き抑制部29によって上下面を挟持されながら、基準幅部27に進入する。このとき、端子金具5が基準幅部27に対して左右方向に位置ずれしていても、基準幅部27に形成される第1傾斜面37により、幅狭部3の前端はスムーズに基準幅部27に誘導される。
【0032】
さらに圧入を進めると、基準幅部27において、合成樹脂からなる傾き抑制部29の表面が、金属製の幅狭部3の上下両面の左右両端部との摩擦によって削られ、幅狭部3の表面に樹脂が付着する。しかし、傾き抑制部29が形成されているのは、圧入孔21の幅方向における両端部だけである。よって、幅狭部3の幅方向における中央部は、凹部33に対向した状態を保つので、傾き抑制部29(第1内壁25a)とは非接触の状態を保つ。これにより、幅狭部3の幅方向中央部には、樹脂の付着がない。すなわち、本実施形態1のコネクタ10は、凹部33を設けたことによって圧入過程における端子金具5の表面への樹脂の付着量を低減した。これにより、端子金具5と相手側端子63との接続信頼性を担保することができる。また、凹部33を設けたことにより、幅狭部3における第1内壁25aとの摺接面積が小さくなったため、端子金具5の圧入過程に生じる摩擦抵抗が低減されている。
【0033】
圧入過程の終期に、幅広部7が、拡幅部31に進入する。幅広部7の上面7U、及び幅広部の下面Dは、拡幅部31の傾き抑制部29と接触する。このとき、端子金具5は、姿勢が上下方向に僅かに傾いていたとしても、幅広部7の左右両端部の前端縁をテーパ状の誘導面35に摺接することによって、拡幅部31内に誘導される。
【0034】
上記の状態から圧入が更に進むと、幅狭部3の前端は、圧入孔21を貫通し、ハウジング20のフード部11内に突出する。さらに前方に圧入すると、図3に示すように、幅広部7の前端面7Sが、拡幅部31の前端面31Sに突き当たることによって、端子金具5は、圧入動作(前方への移動)を規制される。以上により、圧入孔21に対する端子金具5の圧入工程が完了する。端子金具5の圧入工程において、幅広部7の上下両面における幅方向中央部は、一対の傾き抑制部29の間に形成した凹部33によって、拡幅部31内の第1内壁25aと非接触となる。したがって、幅広部7に対する樹脂の付着が抑制されるとともに、圧入時の摩擦抵抗が低減される。
【0035】
コネクタ10は、回路基板50に対してリフローにより実装される。具体的には、各端子金具5の基板接続部8を、回路基板50の表面に塗布したペースト状の半田クリームに載せ、その状態でコネクタ10と回路基板50を図示しないリフロー炉の中で加熱する。加熱より半田が溶融して基板接続部8と一体化される。その後、冷却して半田を固化することにより、基板接続部8が回路基板50の回路に対して導通可能に固着される。
【0036】
ハウジング20は、リフロー炉の中で加熱されると、例えばハウジング20の左右中央部が上方に湾曲するような変形を生じ、ハウジング20の変形に伴って端子金具5が保持壁部19に対して上下方向へ姿勢を傾けるおそれがある。端子金具5がハウジング20に対して傾いた場合、端子金具5の基板接続部8が回路基板50から離れ、基板接続部8と回路基板50と間で接続不良を招くことが懸念される。しかし、本実施形態1の場合、傾き抑制部29が、圧入孔21の前端から後端に亘り、上下方向から端子金具5を挟持しているため、リフロー工程において端子金具5がハウジング20に対して上下方向に傾くことを抑制できる。これにより、基板接続部8が回路基板50から離れて接続不良を招く可能性を低減される。以上により、コネクタの組み付けが完了する。
【0037】
実施形態1のコネクタ10は、合成樹脂製のハウジング20と、金属製の端子金具5を備えている。ハウジング20は、貫通形態の圧入孔21が形成された保持壁部19を有する。端子金具5は、回路基板50に表面実装される基板接続部8を有し、圧入孔21に対して保持壁部19の後方から圧入されている。圧入孔21は、圧入孔21の前端側領域を構成する基準幅部27と、基準幅部27よりも幅方向の寸法が大きく、圧入孔21の後端部を構成する拡幅部31とによって構成されている。端子金具5は、基準幅部27に収容される幅狭部3と、拡幅部31に収容される幅広部7とを有している。基準幅部27と拡幅部31の第1内壁25aには、端子金具5の外面に対して当接することで、保持壁部19に対する端子金具5の傾きを抑制する傾き抑制部29が形成されている。これにより、傾き抑制部29と、端子金具5とが接触することにより、リフロー時におけるハウジングの熱膨張に伴い発生する端子金具5の厚さ方向の傾きを抑制できる。これにより、リフロー工程において、端子金具5の基板接続部8が回路基板50から浮き上がって、接続不良となることを防止できる。
【0038】
実施形態1のコネクタ10において、傾き抑制部29の後端部には、テーパ形状をなし、端子金具5を誘導する誘導面35が形成されている。この構成によれば、テーパ状の誘導面35が端子金具5を圧入孔21内へスムーズに誘い込み、圧入孔21に対する端子金具5の位置ずれを矯正できる。コネクタ10は、端子金具5が圧入孔21に対して適正な位置に圧入された状態で、リフロー工程を経るため、リフロー工程において、回路基板50に対する端子金具5の位置ずれを効果的に抑制できる。
【0039】
実施形態1のコネクタ10において、傾き抑制部29は、圧入孔21の幅方向における両端部のみに形成されている。圧入孔21を構成する第1内壁25aの幅方向における中央部には、端子金具5に非接触である凹部33が形成されている。この構成によれば、端子金具5を圧入孔21に圧入する際に、内面のうち幅方向における中央部が、端子金具に対して非接触となる。よって、第1内壁25aの全幅に亘って傾き抑制部29が端子金具5に接触する形態に比べると、端子金具5に付着する樹脂量が抑えられ、端子金具5の樹脂付着による相手側端子63との接続不良を抑止できる。
【0040】
実施形態1のコネクタ10において、凹部33は、圧入孔21(傾き抑制部29)の圧入方向における全長に亘って連続して形成される。この構成によれば、圧入孔21の圧入方向において、配置される傾き抑制部29の全長に亘って、端子金具5と凹部33とが非接触となる為、端子金具5に付着する樹脂量を、より抑えられる。
【0041】
実施形態1のコネクタ10において、凹部33の幅方向の寸法は、圧入孔21(傾き抑制部29)の圧入方向における全長に亘って一定である。この構成によれば、圧入孔21の形成にあたり、複雑な金型を要しない。
【0042】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態1はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
(1)実施形態1において、第1内壁25aの左右両端部に形成される一対の傾き抑制部29の角部29Rは、基準幅部27の形成される空間、及び拡幅部31の形成される空間の前後端に亘って、互いに平行に延びている。一対の傾き抑制部の角部は、基準幅部の形成される空間の一部に形成されてもよいし、拡幅部の形成される空間の一部に形成されてもよい。
(2)実施形態1において、第1内壁25aの左右両端部に形成される傾き抑制部29の角部29Rは、一対の第1内壁25aにおいて、前後方向に上下対象となるように延びている。上側の第1内壁の左右両端部に形成される一対の傾き抑制部の角部が、基準幅部、及び拡幅部の前後端に亘って、互いに平行となるよう延び、下側の第1内壁の左右両端部に形成される一対の傾き抑制部の角部が、拡幅部の前後端のみに亘って延びていてもよい。
(3)第1内壁25aの左右両端部に形成される一対の傾き抑制部29の角部29Rは、基準幅部27の形成される空間、及び拡幅部31の形成される空間の前後端に亘り、互いに平行に、真っすぐに延びている。第1内壁の左右両端部に形成される一対の傾き抑制部の角部は、基準幅部の形成される空間において、基準幅Dにて互いに平行に真っすぐに延び、拡幅部の形成される空間においては、基準幅Dよりも広い左右幅にて、互いに平行に真っすぐに延びるよう形成してもよい。
(4)実施形態1において、傾き抑制部29は、上下一対の第1内壁25aの左右両端部のみに形成されている。傾き抑制部は、一対の第1内壁の左右両端部、及び中央部に形成され、左右両端部に形成された傾き抑制部と、中央部に形成された傾き抑制部との間に凹部が形成されても良い。また、傾き抑制部29は、上側の第1内壁の左右両端部に形成され、下側の第1内壁の中央部のみに形成されてもよい。
(5)実施形態1において、傾き抑制部29は、端子金具5の外面を、幅方向に対して、略垂直上方向及び略垂直下方向から挟持するように当接している。傾き抑制部は、端子金具5の外面を、幅方向に対して、上方向、又は下方向のいずれか一方向から当接してもよい。
【符号の説明】
【0043】
3…幅狭部
3D… 幅狭部の下端面
3U… 幅狭部の上端面
4… 圧入突起
5… 端子金具
6… 端子接続部
7… 幅広部
7B… 幅広部の後端面
7D… 幅広部の下端面
7S… 幅広部の前端面
7U… 幅広部の上端面
8… 基板接続部
9… 第1屈曲部
10… コネクタ
11… フード部
12… 第2屈曲部
13… 上壁
15… 下壁
17… 側壁
19… 保持壁部
19a… 保持壁部の前端面
20… ハウジング
21… 圧入孔
22… ロック部
23… 削り収容部
25… 内壁
25a… 第1内壁(内面)
25b… 第2内壁
27… 基準幅部
D…基準幅
29… 傾き抑制部
29R… 角部
31… 拡幅部
31S… 拡幅部の前端面
33… 凹部
35… 誘導面
37… 第1傾斜面
38… 第2傾斜面
50… 回路基板
50A… 実装面
60… 相手側ハウジング
61… 相手側ロック部
63… 相手側端子
65… 箱部
図1
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図9