IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157668
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】クロスフローファンおよび冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F04D 17/04 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
F04D17/04 A
F04D17/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072148
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 健太郎
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB12
3H130AB26
3H130AB54
3H130AC27
3H130BA66A
3H130BA66C
3H130CA02
3H130CA09
3H130CB02
3H130DD01Z
3H130EA08A
3H130EA08C
3H130EB01A
3H130EB05A
3H130EB05C
(57)【要約】      (修正有)
【課題】クロスフローファンにおける軸動力が大きくなることを抑制し、且つ、PQ特性を良好とすることができる技術を提供する。
【解決手段】クロスフローファンは、軸線を中心とする周方向に配列される複数の羽根11を有するインペラを有する。前記羽根11は、前記軸線に直交する断面視において円弧状である。前記羽根11の外周角度θ1は、前記断面視において、前記羽根11の幅方向の中心を通る円弧線113と、前記羽根11の径方向外端の回転軌跡である外径円111との交点114を通る、前記円弧線113の接線115と前記外径円111の接線116とがなす角である。前記羽根11の外周角度θ1は、27.5°以上、32.5°以下である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心とする周方向に配列される複数の羽根を有するインペラを有し、
前記羽根は、前記軸線に直交する断面視において円弧状であり、
前記羽根の外周角度は、前記断面視において、前記羽根の幅方向の中心を通る円弧線と、前記羽根の径方向外端の回転軌跡である外径円との交点を通る、前記円弧線の接線と前記外径円の接線とがなす角であり、
前記羽根の外周角度は、27.5°以上、32.5°以下である、クロスフローファン。
【請求項2】
前記インペラが内部に配置され、吸気口および排気口を有する筐体を有し、
前記吸気口は、前記筐体の前記軸線と直交する第1方向の一方側に向けて開口し、
前記排気口は、前記筐体の、前記軸線および前記第1方向と直交する第2方向の一方側に向けて開口する、請求項1に記載のクロスフローファン。
【請求項3】
前記筐体は、前記インペラを互いの間に配置する舌部およびスクロール部を有し、
前記断面視において、前記舌部の前記吸気口を構成する側の端部の周方向角度が0°であるとした場合に、前記スクロール部の前記吸気口を構成する側の端部の周方向角度は135°である、請求項2に記載のクロスフローファン。
【請求項4】
前記スクロール部は、
前記スクロール部の前記吸気口を構成する側の端部を含む湾曲面部と、
前記湾曲面部と繋がる平面部と、
を有し、
前記断面視において、
前記湾曲面部と前記平面部との境界の周方向角度は270°であり、
前記舌部の前記排気口を構成する側の端部の周方向角度は335°である、請求項3に記載のクロスフローファン。
【請求項5】
前記羽根の内周角度は、前記断面視において、前記円弧線と、前記羽根の径方向内端の回転軌跡である内径円との交点を通る、前記円弧線の接線と前記内径円の接線とがなす角であり、
前記羽根の内周角度は、90°である、請求項1に記載のクロスフローファン。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のクロスフローファンと、
前記クロスフローファンによって送風される冷気を生成する冷却器と、
を有する、冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クロスフローファンおよび冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クロスフローファンにおける外周の羽根角度を、流体が羽根に流入する平均角度と一致させることによって、クロスフローファンの効率を最大化できることが知られる。従来においては、羽根の外周角度を50°~70°とすることが多い。なお、クロスフローファンにおいては、軸動力を小さく抑えることができると、効率を高めることができる。
【0003】
また、従来、自動車用及び家庭用室内機に使用されるクロスフローファンの性能を向上させたケーシングと羽根車の組合わせ構造が知られる(例えば特許文献1参照)。当該組合わせ構造は、スクロール部の巻き角を140°~185°に大きくしてなる高圧型のクロスフローファンの構造を開示する。クロスフローファンのケーシングは、拡がり率を9°~10.5°に設定すると共にケーシングの吹出口角度を0°~10°に設定し、一方、羽根車の羽根外周角度を21°~22°に設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-20892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クロスフローファンの開発の中で、羽根の外周角度が45°以上になった場合に、流体の流入角度と合わず、クロスフローファンの効率が低下することがあった。また、この際、吸気口において逆流が生じ、PQ(風量-静圧)特性にも低下がみられた。
【0006】
本開示は、クロスフローファンにおける軸動力が大きくなることを抑制し、且つ、PQ特性を良好とすることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の例示的なクロスフローファンは、軸線を中心とする周方向に配列される複数の羽根を有するインペラを有する。前記羽根は、前記軸線に直交する断面視において円弧状である。前記羽根の外周角度は、前記断面視において、前記羽根の幅方向の中心を通る円弧線と、前記羽根の径方向外端の回転軌跡である外径円との交点を通る、前記円弧線の接線と前記外径円の接線とがなす角である。前記羽根の外周角度は、27.5°以上、32.5°以下である。
【0008】
本開示の例示的な冷蔵庫は、上記構成のクロスフローファンと、前記クロスフローファンによって送風される冷気を生成する冷却器と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、クロスフローファンにおける軸動力が大きくなることを抑制し、且つ、PQ特性を良好とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施形態に係る冷蔵庫の概略の構成を示す図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係るクロスフローファンの概略の構成を示す斜視図である。
図3図3は、図2のIII-III位置における断面を示す概略断面図である。
図4図4は、図3に示す羽根の断面を拡大して示した図である。
図5図5は、筐体に設定される周方向角度について説明するための図である。
図6図6は、シミュレーション時のクロスフローファンの配置を示す模式図である。
図7図7は、羽根11の外周角度が30°、風量が動作点の風量である場合の風の流れのシミュレーション結果を示す図である。
図8図8は、シミュレーションにより得られた羽根の外周角度と軸動力との関係を示す棒グラフである。
図9図9は、シミュレーションにより得られた羽根の外周角度と、圧力および効率との関係を示す折れ線グラフである。
図10A図10Aは、羽根の外周角度が25°、風量が動作点風量である場合の流速ベクトルの分布を示す図である。
図10B図10Bは、羽根の外周角度が30°、風量が動作点風量である場合の流速ベクトルの分布を示す図である。
図10C図10Cは、羽根の外周角度が35°、風量が動作点風量である場合の流速ベクトルの分布を示す図である。
図10D図10Dは、羽根の外周角度が40°、風量が動作点風量である場合の流速ベクトルの分布を示す図である。
図11A図11Aは、筐体の上方から見た流速のY方向成分の分布を示す図で、羽根の外周角度が25°、風量が動作点風量である場合のシミュレーション結果である。
図11B図11Bは、筐体の上方から見た流速のY方向成分の分布を示す図で、羽根の外周角度が30°、風量が動作点風量である場合のシミュレーション結果である。
図11C図11Cは、筐体の上方から見た流速のY方向成分の分布を示す図で、羽根の外周角度が35°、風量が動作点風量である場合のシミュレーション結果である。
図11D図11Dは、筐体の上方から見た流速のY方向成分の分布を示す図で、羽根の外周角度が40°、風量が動作点風量である場合のシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
本明細書では、本開示の実施形態に係るクロスフローファン100を有する冷蔵庫200の説明に際し、図1に示す方向の定義に準じて説明する。図1に示す符号Uは上側、符号Dは下側、符号Fは正面側、符号Rは背面側である。
【0013】
また、本明細書では、クロスフローファン100の説明に際し、図2に示す軸線Axの延びる方向を単に「軸方向」と呼び、軸線Axを中心とする径方向および周方向を単に「径方向」および「周方向」と呼ぶことにする。また、図2に示す互いに直交するXYZ方向のうち、Z方向は、軸方向に平行な方向で、当該方向を左右方向と定義する。径方向に平行な第1方向であるX方向を前後方向と定義し、径方向に平行な第2方向であるY方向を上下方向と定義する。+Z側を左、-Z側を右とする。+X側を前、-X側を後とする。+Y側を上、-Y側を下とする。
【0014】
なお、本明細書で定義される方向は、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係や方向を限定しない。また、本明細書では、冷蔵庫200における方向の定義と、クロスフローファン100における方向の定義とは別々に定義されている。
【0015】
<1.冷蔵庫>
図1は、本開示の実施形態に係る冷蔵庫200の概略の構成を示す図である。なお、図1は、冷蔵庫200を側面から見た図である。また、図1においては、冷蔵庫200の下部側のみを示している。図1に示すように、冷蔵庫200は、断熱箱体201と、収納室202と、冷却室203とを有する。
【0016】
断熱箱体201は、収納室202を周囲と断熱する。断熱箱体201は、詳細には、外箱と、内箱と、外箱と内箱との間の空間に充填発泡される発泡断熱材とを有する。
【0017】
断熱箱体201内に配置される収納室202は、1つ又は複数である。収納室202の数が複数である場合、複数の収納室202は、例えば上下方向に並ぶ。収納室202は、例えば、冷蔵室、冷凍室、又は、野菜室等である。収納室202は、冷蔵庫200の正面側に配置される扉204により開閉することができる。扉204の開閉により、収納室202内に配置される収納容器(不図示)が引き出される構成であってよい。
【0018】
冷却室203は、断熱箱体201内の下部に配置される。冷却室203は、収納室202の下方に配置される。冷却室203内には、冷凍サイクルを構成する冷却器205が配置される。なお、冷蔵庫200は、冷凍サイクルを構成する不図示のコンプレッサーも有する。冷却室203内には、冷却器205により生成された冷気を収納室202に送風するクロスフローファン100が配置される。断熱箱体201内であって収納室202の背面側には、クロスフローファン100により送風される冷気の搬送路を構成するダクト206が配置される。
【0019】
つまり、冷蔵庫200は、クロスフローファン100と、クロスフローファン100によって送風される冷気を生成する冷却器205と、を有する。冷気の送風にクロスフローファン100を用いることによって、冷却器205により生成された冷気を均一に送風することができる。また、冷気の送風を行うクロスフローファン100が冷蔵庫200の背面側でなく下側に配置されるために、収納室202の容積を大きくすることができる。また、後述のように本実施形態のクロスフローファン100はエネルギー効率が良く構成されるので、冷蔵庫200の冷却効率を良くして省電力化を図ることができる。
【0020】
なお、本実施形態では、本開示のクロスフローファンが冷蔵庫に適用される構成としたが、これは例示にすぎない。本開示のクロスフローファンは、冷蔵庫に限らず、空気調和機等の他の機器に適用されてもよい。
【0021】
<2.クロスフローファン>
[2-1.構成概要]
図2は、本開示の実施形態に係るクロスフローファン100の概略の構成を示す斜視図である。図2において、軸線Axは左右方向に延びる。図2に示すように、クロスフローファン100は、インペラ1を有する。また、クロスフローファン100は、筐体2を有する。
【0022】
インペラ1は、軸線Axを中心とする周方向に配列される複数の羽根11を有する。周方向に隣り合う羽根同士は、一定の間隔をあけて配置される。本実施形態では、周方向に配列される羽根11の数は23枚である。ただし、羽根11の枚数は、本実施形態の数と異なる数とされてよい。
【0023】
詳細には、インペラ1は、複数のインペラブロック10を左右方向に直列に接合した構造を有し、当該構造の両端にエンドプレート12を有する。インペラブロック10ごとに、周方向に配列される複数の羽根11を有する。左右方向に隣り合うインペラブロック10の間には、羽根11を支持するリング状の支持プレート13が配置される。
【0024】
本実施形態では、インペラブロック10の数は2つである。各インペラブロック10の複数の羽根11の左右方向の両端部は、その一方がエンドプレート12に支持され、他方が支持プレート13に支持される。なお、インペラブロック10の数は、1つまたは3つ以上であってもよい。インペラブロック10の数が1つである場合には、支持プレート13は不要である。インペラブロック10が3つ以上の場合には、複数の羽根11の左右方向の両端部が、いずれも支持プレート13に支持されるインペラブロック10が存在する構成となる。
【0025】
インペラ1は、軸線Axに沿って延びる柱状の回転軸(不図示)を有する。当該回転軸の一端部(右端部)は、エンドプレート12に固定された状態でエンドプレート12から突き出ており、筐体2の左右方向の一端部に回転可能に支持される。当該回転軸の他端部(左端部)は、筐体2の左右方向の他端部側に配置されるモータ3の出力軸に連結される。モータ3の駆動によって回転軸が回転され、インペラ1が軸線Axを中心として回転する。
【0026】
筐体2は、インペラ1が内部に配置される。筐体2は、インペラ1を互いの間に配置する舌部21およびスクロール部22を有する。より詳細には、インペラ1は、舌部21およびスクロール部22の前後方向間に配置される。筐体2は、当該筐体の左端部に配置される平板状の第1側壁部23と、当該筐体の右端部に配置される平板状の第2側壁部24とをさらに有する。第1側壁部23は、モータ3を支持する。第2側壁部24は、インペラ1の不図示の回転軸の右端部を回転可能に支持する。
【0027】
舌部21は、インペラ1の後方に配置される。舌部21は、後方からの平面視において、左右方向に延びる矩形状である。舌部21の左端部は、第1側壁部23の後端部の上下方向中間部に接続される。舌部21の右端部は、第2側壁部24の後端部の上下方向中間部に接続される。
【0028】
スクロール部22は、平面部221と湾曲面部222とを有する。平面部221は、インペラ1と対向する内面が平面に構成される。本実施形態では、平面部221は、インペラ1の下方に配置され、その上面が平面である。詳細には、平面部221は、上下方向と直交する方向に広がる平面を有する矩形平板状である。平面部221の左端部は、第1側壁部23の下端部に接続される。平面部221の右端部は、第2側壁部24の下端部に接続される。
【0029】
湾曲面部222は、インペラ1と対向する内面がインペラ1の外周に沿う湾曲面状に構成される。本実施形態では、湾曲面部222は、インペラ1の下方からインペラ1の外周に沿うように上方に延びる形状である。湾曲面部222は、下方側の端部が平面部221の前端部と接続される。換言すると、平面部221は、湾曲面部222と繋がる。湾曲面部222の左端部は、第1側壁部23の前端部に接続される。湾曲面部222の右端部は、第2側壁部24の前端部に接続される。
【0030】
筐体2は、吸気口25および排気口26を有する。吸気口25は、上方からの平面視において、舌部21とスクロール部22との前後方向間に配置される。詳細には、吸気口25は、上方からの平面視において、舌部21と湾曲面部222との間に配置される。排気口26は、後方からの平面視において、舌部21とスクロール部22との上下方向間に配置される。詳細には、排気口26は、後方からの平面視において、舌部21と平面部221との間に配置される。
【0031】
つまり、吸気口25は、筐体2の軸線Axと直交する第1方向の一方側に向けて開口する。排気口26は、筐体2の、軸線Axおよび第1方向と直交する第2方向の一方側に向けて開口する。なお、本実施形態では、第1方向の一方側は上側であり、第2方向の一方側は後側である。本実施形態の構成によれば、吸気口25から筐体2の内部に入った流体を、吸気口25が有る面と直交する面から排出することができる。
【0032】
[2-2.羽根の詳細]
次に、クロスフローファン100が有する羽根11について詳細に説明する。
【0033】
図3は、図2のIII-III位置における断面を示す概略断面図である。図3は、軸線Axに直交する面で切った断面を示す図である。図3において、インペラ1の回転方向RDは時計回り方向である。図3に示すように、羽根11は、インペラ1の径方向外側に配置される。複数の羽根11の形状は、いずれも同じである。本実施形態では、羽根11は、軸線Axに直交する断面視において円弧状である。円弧状の複数の羽根11が、周方向に等間隔に配置される。
【0034】
図4は、図3に示す羽根11の断面を拡大して示した図である。図4において、一点鎖線で示す外径円111は、羽根11の径方向外端の回転軌跡である。一点鎖線で示す内径円112は、羽根11の径方向内端の回転軌跡である。破線で示す円弧線113は、羽根11の幅方向の中心を通る線である。なお、羽根11の幅方向は、円弧線113を構成する円の中心を基準とした径方向と一致する。
【0035】
特に限定する趣旨ではないが、内径円112の半径を外径円111の半径で除して得られる羽根11の内外径比は、0.7以上、0.75以下であることが好ましく、本実施形態では、0.72である。また、特に限定する趣旨ではないが、羽根11の幅は1.2cmである。また、特に限定する趣旨ではないが、円弧状の羽根11は、円弧を構成する円の中心を基準とした周方向の両端の形状が円弧状である。
【0036】
羽根11の外周角度は、断面視において、円弧線113と外径円111との交点114を通る、円弧線113の接線115と外径円111の接線116がなす角θ1である。羽根11の外周角度θ1は、27.5°以上、32.5°以下であることが好ましい。このように羽根11の外周角度θ1を構成すると、クロスフローファン100の軸動力が大きくなることを抑制し、且つ、PQ特性を良好とすることができる。これについての詳細は後述する。
【0037】
また、羽根11の内周角度は、断面視において、円弧線113と内径円112との交点117を通る、円弧線113の接線118と内径円112の接線119とがなす角θ2である。羽根の内周角度θ2は、90°であることが好ましい。このように構成することで、羽根11の径方向内側において衝突損失を小さく抑えて、流体を効率良く流すことができる。
【0038】
[2-2.筐体の詳細]
次に、クロスフローファン100が有する筐体2について、主に図3および図5を参照して詳細に説明する。図5は、筐体2に設定される周方向角度について説明するための図である。
【0039】
図3に示すように、クロスフローファン100は、筐体2の上部に吸気口25を有する。また、クロスフローファン100は、筐体2の後部に排気口26を有する。クロスフローファン100の吸気範囲と排気範囲とは、インペラ1と、舌部21およびスクロール部22との位置関係に基づき、次のように表現することができる。
【0040】
図5に示すように、断面視において、舌部21の吸気口25を構成する側の端部の周方向角度が0°であるとする。本実施形態において、舌部21の吸気口25を構成する側の端部は、断面視において上下方向に延びる舌部21の、インペラ1と対向する内面211の上端部211aである。軸線Axから周方向角度0°の方向に延びる直線L1は、舌部21の内面21aの上端部211aを通る。当該上端部211aは、詳細には、断面視において、舌部21の内面211の上部の後方に向けて湾曲する曲線と、舌部21の上面212を構成する直線との接続点である。なお、上述した、舌部21の内面211の上端部の決め方は、例示であり、他の手法によって決められてもよい。例えば、舌部21の内面211が上下に延びる平面である場合、断面視において、舌部21の内面211と上面212とが交わる頂点が、舌部21の上端部であってよい。
【0041】
図5において、直線L1と直線L2とがなす角度は、周方向角度α1と同じであり、クロスフローファン100の吸気範囲に該当する。断面視において、直線L2は、軸線Axから周方向角度α1の方向に延びる直線であり、スクロール部22の吸気口25を構成する側の端部を通る。本実施形態において、湾曲面部222が、スクロール部22の吸気口25を構成する側の端部を含む。スクロール部22の吸気口25を構成する側の端部は、湾曲面部222のインペラ1と対向する内面2221の上端部2221aである。当該上端部2221aは、詳細には、断面視において、湾曲面部222の内面2221の上部の前方に向けて湾曲する曲線と、湾曲面部222の上面2222を構成する直線との接続点である。なお、上述した、湾曲面部222の内面2221の上端部の決め方は、例示であり、舌部21の内面211の上端部の場合と同様に、他の手法で決められてもよい。
【0042】
吸気範囲を決める周方向角度α1は、クロスフローファン100の効率およびPQ特性を良好とすることができる範囲で、適宜設定されてよい。本実施形態において、吸気角度範囲は、周方向角度α1と同じであり、当該角度は鈍角である。周方向角度α1は、例えば135°±5°であってよい。本実施形態では、好ましい形態として、周方向角度α1は135°である。すなわち、スクロール部22の吸気口25を構成する側の端部の周方向角度は135°である。このように構成すると、周方向角度0°~135°の範囲を吸気範囲とすることができる。このように構成すると、羽根11の外周角度θ1を27.5°以上、32.5°以下とした場合に、クロスフローファン100における軸動力が大きくなることを抑制し、且つ、PQ特性を良好とすることができる。これについての詳細は後述する。
【0043】
図5において、直線L3は、軸線Axから周方向角度α2の方向に延びる直線であり、平面部221と湾曲面部222との境界を通る。本実施形態では、好ましい形態として、周方向角度α2は270°である。すなわち、断面視において、湾曲面部222と平面部221との境界の周方向角度は270°である。ただし、周方向角度α2は、クロスフローファン100の効率およびPQ特性を良好とすることができる範囲で、270°からずれた角度であってもよい。
【0044】
図5において、直線L4は、軸線Axから周方向角度α3の方向に延びる直線であり、舌部21の排気口26を構成する側の端部を通る。本実施形態において、舌部21の排気口26を構成する側の端部は、舌部21の、インペラ1と対向する内面211の下端部211bである。当該下端部211bは、詳細には、断面視において、舌部21の内面211の下部の後方に向けて湾曲する曲線と、舌部21の下面213を構成する直線との接続点である。なお、上述した、舌部21の内面211の下端部の決め方は、例示であり、舌部21の内面211の上端部の場合と同様に他の手法で決められてもよい。
【0045】
周方向角度α2から周方向角度α3までの角度範囲が、クロスフローファン100の排気範囲に該当する。排気範囲を決める周方向角度α3は、クロスフローファン100の効率およびPQ特性を良好とすることができる範囲で、適宜設定されてよい。周方向角度α3は、例えば335°±5°であってよい。本実施形態では、好ましい形態として、周方向角度α3は335°である。すなわち、舌部21の排気口26を構成する側の端部の周方向角度は335°である。このように構成すると、周方向角度270°~335°の範囲を排気範囲とすることができる。このように構成すると、羽根11の外周角度θ1を27.5°以上、32.5°以下とした場合に、クロスフローファン100における軸動力が大きくなることを抑制し、且つ、PQ特性を良好とすることができる。これについての詳細は後述する。
【0046】
[2-3.シミュレーション]
次に、羽根11の外周角度θ1を変化させた場合のシミュレーション結果について説明する。シミュレーションは、MSCソフトウェア株式会社の解析ソフトである製品名「scFLOW V2020 SP1」を用いて行った。
【0047】
図6は、シミュレーション時のクロスフローファン100の配置を示す模式図である。図6に示すように、シミュレーションは、クロスフローファン100の後端面が、ダクト300の、上下方向および左右方向と平行な方向に広がる取付面301に取り付けられた状態を想定して行われた。また、クロスフローファン100の排気口26から排出された空気は、取付面301に設けられた開口301aからダクト300内に入ることを想定してシミュレーションが行われた。また、シミュレーション時のクロスフローファン100のインペラ1の回転方向は、図6において、時計回り方向に回転することとした。
【0048】
なお、シミュレーションに際して、吸気範囲は、上述の周方向角度0°から135°の範囲に設けられることとした。また、排気範囲は、上述の周方向角度270°から335°の範囲に設けられることとした。また、羽根11の内外径比は0.72とした。また、羽根11の内周角度θ2は90°とした。羽根11の外周角度θ1は、15°~50°の範囲で変化させた。詳細には、羽根11の外周角度θ1は、15°~40°の範囲では2.5°刻みで変化させた。羽根11の外周角度θ1は、40°~50°の範囲では、5°刻みに変化させた。
【0049】
図7は、羽根11の外周角度θ1が30°、風量が動作点の風量(以下、動作点風量という)である場合の風の流れのシミュレーション結果を示す図である。図7は、筐体2内における流速ベクトルの分布を示す図である。本例では、動作点風量は1.2m3/minである。図7に示すように、インペラ1の回転により、舌部21の近傍に渦400が発生する。渦400の作用によって、図6に白抜きの矢印で示すのと同様に、筐体2の上部に配置される吸気口25から空気が吸い込まれ、筐体2の後部に配置される排気口26から空気が排出される。
【0050】
図8は、シミュレーションにより得られた羽根11の外周角度θ1と軸動力との関係を示す棒グラフである。図8は、風量が動作点風量である場合の結果である。図8において、横軸は羽根11の外周角度θ1であり、縦軸は軸動力である。なお、軸動力は、モータ3が回転するエネルギーであり、以下の式(1)で与えられる。また、各外周角度θ1における軸動力は、外周角度θ1が30°である場合の値を「1」として正規化された値である。なお、羽根11の外周角度θ1が30°である場合に得られる軸動力の値は、目標を達成する値であった。
AP = N/60×2×π×T (1)
AP:軸動力(W)
N :インペラ1の回転数(rpm)
T :インペラ1を回転させるトルク(N・m)
【0051】
図8に示すように、羽根11の外周角度θ1が27.5°以上40°以下の場合に、動作点風量における正規化した軸動力の値が1.05より小さくなった。特に、羽根11の外周角度θ1が32.5°の場合に、動作点風量における軸動力が最も低い値となった。羽根11の外周角度θ1が27.5°以上40°以下の場合に、動作点風量における軸動力が良好となった。
【0052】
図9は、シミュレーションにより得られた羽根11の外周角度θ1と、圧力(静圧)および効率との関係を示す折れ線グラフである。図9は、風量が動作点風量である場合の結果である。図9において、横軸は羽根11の外周角度θ1である。図9において、左の縦軸は圧力であり、右の縦軸は効率である。また、図9において、塗りつぶした丸は圧力値を示し、白抜きの丸は効率値を示す。
【0053】
なお、効率は、クロスフローファン100において入力した電気エネルギーがどれだけ力学的エネルギーに変換されたかを表し、以下の式(2)で与えられる。また、各外周角度における圧力および効率は、羽根11の外周角度θ1が30°である場合の値を「1」として正規化された値である。なお、羽根11の外周角度θ1が30°である場合に得られる圧力および効率の値は、目標を達成する値であった。
η = P×Q/(60×AP)×100 (2)
η :効率(%)
P :圧力(Pa)
Q :風量(m3/min)
AP:軸動力(W)
【0054】
図9に示すように、羽根11の外周角度θ1が15°以上32.5°以下の場合に、動作点風量における正規化した圧力の値が0.95より大きくなった。特に、羽根11の外周角度θ1が20°、27.5°、および、32.5°の場合に、動作点風量における正規化した圧力の値が1を超える値となった。動作点風量における圧力は、羽根11の外周角度θ1が32.5°よりも大きくなると低下する傾向が見られた。
【0055】
また、図9に示すように、羽根11の外周角度θ1が20°、22、5°、および、27.5°以上35°以下の場合に、動作点風量における正規化した効率の値が0.95より大きくなった。特に、羽根11の外周角度θ1が32.5°の場合に、動作点風量における正規化した効率の値が1を超える値となった。動作点風量における効率は、羽根11の外周角度θ1が32.5°である場合がピークであり、32.5°より小さくなった場合と大きくなった場合とのいずれの場合においても低下する傾向が見られた。
【0056】
図10Aは、羽根11の外周角度θ1が25°、風量が動作点風量である場合の流速ベクトルの分布を示す図である。図10Bは、羽根11の外周角度θ1が30°、風量が動作点風量である場合の流速ベクトルの分布を示す図である。図10Cは、羽根11の外周角度θ1が35°、風量が動作点風量である場合の流速ベクトルの分布を示す図である。図10Dは、羽根11の外周角度θ1が40°、風量が動作点風量である場合の流速ベクトルの分布を示す図である。なお、図10A図10Dは、いずれもシミュレーション結果である。
【0057】
従来の知見では、インペラ1の風の吹き出し部分に風量が急激に増大する部分が生じると、クロスフローファンの特性が低下すると言われている。羽根11の外周角度θ1が25°である場合(図10A参照)に、破線枠501で示すように、上述の吹き出し部分における風量の急激な増大が認められた。図示は省略するが、同様の傾向が羽根11の外周角度θ1が25°よりも小さい場合にも認められた。また、羽根11の外周角度θ1が40°である場合(図10D参照)に、インペラ1の上部前方に破線枠502で示す渦が認められた。当該渦は、逆流を生じさせていると考えられる。これに関連した結果として図11Aから図11Dを示す。
【0058】
図11Aは、筐体2の上方から見た流速のY方向成分の分布を示す図で、羽根11の外周角度θ1が25°、風量が動作点風量である場合のシミュレーション結果である。図11Bは、筐体2の上方から見た流速のY方向成分の分布を示す図で、羽根11の外周角度θ1が30°、風量が動作点風量である場合のシミュレーション結果である。図11Cは、筐体2の上方から見た流速のY方向成分の分布を示す図で、羽根11の外周角度θ1が35°、風量が動作点風量である場合のシミュレーション結果である。図11Dは、筐体2の上方から見た流速のY方向成分の分布を示す図で、羽根11の外周角度θ1が40°、風量が動作点風量である場合のシミュレーション結果である。なお、図11A図11DにおけるXYZの方向は、図2に示すXYZの方向と同義である。
【0059】
羽根11の外周角度θ1が35°である場合(図11C参照)に、破線枠503で示すように、筐体2の前側、且つ、左右方向の中央部に下方から上方に向かう逆流が認められた。また、羽根11の外周角度θ1が40°である場合(図11D参照)に、破線枠504で示すように、筐体2の前側、且つ、左右方向の中央部に下方から上方に向かう強い逆流が認められた。図示は省略するが、同様の傾向が羽根11の外周角度θ1が40°よりも大きい場合にも認められた。これらの逆流は、クロスフローファン100のPQ特性を低下させていると考えられた。
【0060】
以上のシミュレーション結果から、クロスフローファン100の軸動力を大きくなることを抑制し、且つ、PQ特性を良好とするためには、羽根11の外周角度θ1は、27.5°以上、32.5°以下であることが好ましいことがわかった。
【0061】
<3.その他>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0062】
本開示は、以下の(I)~(VI)の構成をとることが可能である。
【0063】
(I)
軸線を中心とする周方向に配列される複数の羽根を有するインペラを有し、
前記羽根は、前記軸線に直交する断面視において円弧状であり、
前記羽根の外周角度は、前記断面視において、前記羽根の幅方向の中心を通る円弧線と、前記羽根の径方向外端の回転軌跡である外径円との交点を通る、前記円弧線の接線と前記外径円の接線とがなす角であり、
前記羽根の外周角度は、27.5°以上、32.5°以下である、クロスフローファン。
【0064】
(II)
前記インペラが内部に配置され、吸気口および排気口を有する筐体を有し、
前記吸気口は、前記筐体の前記軸線と直交する第1方向の一方側に向けて開口し、
前記排気口は、前記筐体の、前記軸線および前記第1方向と直交する第2方向の一方側に向けて開口する、(I)に記載のクロスフローファン。
【0065】
(III)
前記筐体は、前記インペラを互いの間に配置する舌部およびスクロール部を有し、
前記断面視において、前記舌部の前記吸気口を構成する側の端部の周方向角度が0°であるとした場合に、前記スクロール部の前記吸気口を構成する側の端部の周方向角度は135°である、(II)に記載のクロスフローファン。
【0066】
(IV)
前記スクロール部は、
前記スクロール部の前記吸気口を構成する側の端部を含む湾曲面部と、
前記湾曲面部と繋がる平面部と、
を有し、
前記断面視において、
前記湾曲面部と前記平面部との境界の周方向角度は270°であり、
前記舌部の前記排気口を構成する側の端部の周方向角度は335°である、(III)に記載のクロスフローファン。
【0067】
(V)
前記羽根の内周角度は、前記断面視において、前記円弧線と、前記羽根の径方向内端の回転軌跡である内径円との交点を通る、前記円弧線の接線と前記内径円の接線とがなす角であり、
前記羽根の内周角度は、90°である、(I)から(IV)のいずれかに記載のクロスフローファン。
【0068】
(VI)
(I)から(V)のいずれかに記載のクロスフローファンと、
前記クロスフローファンによって送風される冷気を生成する冷却器と、
を有する、冷蔵庫。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示の技術は、冷蔵庫等の各種の機器に搭載されるクロスフローファンに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1・・・インペラ
2・・・筐体
11・・・羽根
21・・・舌部
22・・・スクロール部
25・・・吸気口
26・・・排気口
100・・・クロスフローファン
111・・・外径円
112・・・内径円
113・・・円弧線
114、117・・・交点
115、116、118、119・・・接線
200・・・冷蔵庫
205・・・冷却器
221・・・平面部
222・・・湾曲面部
Ax・・・軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D