IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

特開2024-157671バッテリ充電システム、バッテリ充電制御方法およびバッテリ充電制御装置
<>
  • 特開-バッテリ充電システム、バッテリ充電制御方法およびバッテリ充電制御装置 図1
  • 特開-バッテリ充電システム、バッテリ充電制御方法およびバッテリ充電制御装置 図2
  • 特開-バッテリ充電システム、バッテリ充電制御方法およびバッテリ充電制御装置 図3
  • 特開-バッテリ充電システム、バッテリ充電制御方法およびバッテリ充電制御装置 図4
  • 特開-バッテリ充電システム、バッテリ充電制御方法およびバッテリ充電制御装置 図5
  • 特開-バッテリ充電システム、バッテリ充電制御方法およびバッテリ充電制御装置 図6
  • 特開-バッテリ充電システム、バッテリ充電制御方法およびバッテリ充電制御装置 図7
  • 特開-バッテリ充電システム、バッテリ充電制御方法およびバッテリ充電制御装置 図8
  • 特開-バッテリ充電システム、バッテリ充電制御方法およびバッテリ充電制御装置 図9
  • 特開-バッテリ充電システム、バッテリ充電制御方法およびバッテリ充電制御装置 図10
  • 特開-バッテリ充電システム、バッテリ充電制御方法およびバッテリ充電制御装置 図11
  • 特開-バッテリ充電システム、バッテリ充電制御方法およびバッテリ充電制御装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157671
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】バッテリ充電システム、バッテリ充電制御方法およびバッテリ充電制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H02J7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072152
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
(72)【発明者】
【氏名】熊野 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】島田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】南波 昇吾
(72)【発明者】
【氏名】高橋 暁史
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA10
5G503CA11
5G503CC08
5G503DA04
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】複数の発電モジュールから出力される電力を適切に管理できるようにする。
【解決手段】バッテリ充電システム100において、所定のバッテリ電圧指令値Vb*からバッテリ52の電圧であるバッテリ電圧Vbを減算した結果が大きくなるほどメジャーモジュール30Mにおけるコンバータ3の出力電力を大きくするメジャー制御部21と、セカンダリモジュール30Sが各々出力する電力を、各々に対応するセカンダリ電力指令値Pk*に近づけるセカンダリ制御部22-kと、をバッテリ充電制御装置6,7に設けた。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンによって駆動される発電機と、前記発電機から出力された電圧を充電用電圧に変換し充電対象であるバッテリに供給するコンバータと、を各々が備える複数の発電モジュールと、
前記発電モジュールを制御するバッテリ充電制御装置と、を備え、
前記バッテリ充電制御装置は、
前記バッテリに供給すると予測される電力である予測充電電力に応じて、一の前記発電モジュールをメジャーモジュールとして選択し、前記バッテリへの充電に供される前記メジャーモジュール以外の一または複数の前記発電モジュールをセカンダリモジュールとして選択する機能割当部と、
各々の前記セカンダリモジュールが発生する電力の指令値であるセカンダリ電力指令値を出力する電力指令部と、
前記メジャーモジュールに対して、所定のバッテリ電圧指令値から前記バッテリの電圧であるバッテリ電圧を減算した結果が大きくなるほど前記メジャーモジュールにおける前記コンバータの出力電力を大きくするメジャー制御部と、
前記セカンダリモジュールが各々出力する電力を、各々に対応する前記セカンダリ電力指令値に近づけるセカンダリ制御部と、を備える
ことを特徴とするバッテリ充電システム。
【請求項2】
前記電力指令部は、各々の前記セカンダリモジュールの前記発電機の燃費特性に基づき、所定の閾値以下の燃費が得られる前記セカンダリモジュールの前記セカンダリ電力指令値を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ充電システム。
【請求項3】
前記電力指令部は、
前記メジャーモジュールの前記発電機の燃費特性に基づき、所定の閾値以下の燃費が得られる、前記メジャーモジュールの出力電力の予測値である予測メジャー電力を算出する機能と、
前記予測充電電力から前記予測メジャー電力を減算することにより、前記セカンダリ電力指令値の総和である合計セカンダリ電力指令値を算出する機能と、
前記合計セカンダリ電力指令値と、各々の前記セカンダリモジュールの前記発電機の燃費特性と、に基づき、所定の閾値以下の燃費が得られる前記セカンダリモジュールの前記セカンダリ電力指令値を決定する機能と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ充電システム。
【請求項4】
前記機能割当部は、前記メジャーモジュールが停止すると、前記セカンダリモジュールのうち何れかを新たな前記メジャーモジュールに設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ充電システム。
【請求項5】
何れかの前記発電モジュールの出力が低下すると、他の前記発電モジュールの出力を増加させ、または、未出力状態である何れかの前記発電モジュールを新たな前記セカンダリモジュールに指定することにより、前記バッテリに供給される充電電力の変化を抑制する出力変化抑制部をさらに備える
ことを特徴とする請求項4に記載のバッテリ充電システム。
【請求項6】
前記機能割当部は、前記バッテリの容量に応じて前記セカンダリモジュールの数を決定し、その後に前記バッテリに流れる充電電流の減少に応じて、前記セカンダリモジュールの数を減少させる
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ充電システム。
【請求項7】
前記メジャー制御部は、
前記バッテリ電圧指令値から前記バッテリ電圧を減算した結果が大きくなるほど大きくなるメジャー電流要求値を出力するメジャー電圧制御部と、
前記セカンダリ電力指令値の総和である合計セカンダリ電力指令値と、前記バッテリ電圧と、に基づいて、前記セカンダリモジュールが出力する電流の総和に対応する電流加算指令値を出力する加算電流演算部と、
前記メジャー電流要求値が所定の制限電流値を超える場合に該制限電流値になり、それ以外の場合は前記メジャー電流要求値になるメジャー電流目標値を出力するメジャー電流制限部と、
前記バッテリに流れる充電電流が、前記メジャー電流目標値と前記電流加算指令値との和である充電電流指令値に近づくように前記メジャーモジュールにおける前記コンバータの出力電流を制御するメジャー電流制御部と、を備える
ことを特徴とする請求項5に記載のバッテリ充電システム。
【請求項8】
前記セカンダリ制御部は、
各々の前記セカンダリモジュールに対する前記セカンダリ電力指令値と、前記バッテリ電圧と、に基づいて、各々の前記セカンダリモジュールにおけるセカンダリ電流要求値を算出するセカンダリ電流演算部と、
各々の前記セカンダリ電流要求値が前記制限電流値を超える場合に該制限電流値になり、それ以外の場合は対応する前記セカンダリ電流要求値になるセカンダリ電流目標値を出力するセカンダリ電流制限部と、
各々の前記セカンダリ電流目標値に近づくように、各々の前記セカンダリモジュールにおける前記コンバータの出力電流であるセカンダリ出力電流を制御するセカンダリ電流制御部と、を備える
ことを特徴とする請求項7に記載のバッテリ充電システム。
【請求項9】
エンジンと、前記エンジンによって駆動される発電機と、前記発電機から出力された電圧を充電用電圧に変換し充電対象であるバッテリに供給するコンバータと、を各々が備える複数の発電モジュールと、前記発電モジュールを制御するバッテリ充電制御装置と、を備えるバッテリ充電システムに適用されるバッテリ充電制御方法であって、
前記バッテリに供給すると予測される電力である予測充電電力に応じて、一の前記発電モジュールをメジャーモジュールとして選択し、前記バッテリへの充電に供される前記メジャーモジュール以外の一または複数の前記発電モジュールをセカンダリモジュールとして選択する機能割当過程と、
各々の前記セカンダリモジュールが発生する電力の指令値であるセカンダリ電力指令値を出力する電力指令過程と、
前記メジャーモジュールに対して、所定のバッテリ電圧指令値から前記バッテリの電圧であるバッテリ電圧を減算した結果が大きくなるほど前記メジャーモジュールにおける前記コンバータの出力電力を大きくするメジャー制御過程と、
前記セカンダリモジュールが各々出力する電力を、各々に対応する前記セカンダリ電力指令値に近づけるセカンダリ制御過程と、を備える
ことを特徴とするバッテリ充電制御方法。
【請求項10】
エンジンと、前記エンジンによって駆動される発電機と、前記発電機から出力された電圧を充電用電圧に変換し充電対象であるバッテリに供給するコンバータと、を各々が備える複数の発電モジュールを制御するために、前記バッテリに供給すると予測される電力である予測充電電力に応じて、一の前記発電モジュールをメジャーモジュールとして選択し、前記バッテリへの充電に供される前記メジャーモジュール以外の一または複数の前記発電モジュールをセカンダリモジュールとして選択する機能割当部と、
各々の前記セカンダリモジュールが発生する電力の指令値であるセカンダリ電力指令値を出力する電力指令部と、
前記メジャーモジュールに対して、所定のバッテリ電圧指令値から前記バッテリの電圧であるバッテリ電圧を減算した結果が大きくなるほど前記メジャーモジュールにおける前記コンバータの出力電力を大きくするメジャー制御部と、
前記セカンダリモジュールが各々出力する電力を、各々に対応する前記セカンダリ電力指令値に近づけるセカンダリ制御部と、を備える
ことを特徴とするバッテリ充電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ充電システム、バッテリ充電制御方法およびバッテリ充電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、下記特許文献1、2には、複数の電源装置から出力される電力を管理する技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-298330号公報
【特許文献2】特開2013-055839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した技術において、複数の電源装置(発電モジュール)から出力される電力を一層適切に管理したいという要望がある。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、複数の発電モジュールから出力される電力を適切に管理できるバッテリ充電システム、バッテリ充電制御方法およびバッテリ充電制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明のバッテリ充電システムは、エンジンと、前記エンジンによって駆動される発電機と、前記発電機から出力された電圧を充電用電圧に変換し充電対象であるバッテリに供給するコンバータと、を各々が備える複数の発電モジュールと、前記発電モジュールを制御するバッテリ充電制御装置と、を備え、前記バッテリ充電制御装置は、前記バッテリに供給すると予測される電力である予測充電電力に応じて、一の前記発電モジュールをメジャーモジュールとして選択し、前記バッテリへの充電に供される前記メジャーモジュール以外の一または複数の前記発電モジュールをセカンダリモジュールとして選択する機能割当部と、各々の前記セカンダリモジュールが発生する電力の指令値であるセカンダリ電力指令値を出力する電力指令部と、前記メジャーモジュールに対して、所定のバッテリ電圧指令値から前記バッテリの電圧であるバッテリ電圧を減算した結果が大きくなるほど前記メジャーモジュールにおける前記コンバータの出力電力を大きくするメジャー制御部と、前記セカンダリモジュールが各々出力する電力を、各々に対応する前記セカンダリ電力指令値に近づけるセカンダリ制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複数の発電モジュールから出力される電力を適切に管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態による分散型バッテリ充電システムの構成を示すブロック図である。
図2】バッテリ電圧および充電電流の一例を示す図である。
図3】コンピュータのブロック図である。
図4】エンジンの燃費マップの一例を示す図である。
図5】比較例におけるサブコントローラの制御系統のブロック図である。
図6】第1実施形態における制御系統のブロック図である。
図7】メジャー制御部のブロック図である。
図8】セカンダリ制御部のブロック図である。
図9】メイン制御処理のフローチャートである。
図10】サブ制御処理のフローチャートである。
図11】第1実施形態における充電電力および燃料効率の例を示す図である。
図12】第2実施形態における制御系統のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の概要]
エネルギーの脱炭素化に向けて、再生可能エネルギーの拡大が進むに伴い、その電力変動に対応するために水素などの再生可能エネルギー由来燃料(以下、RE燃料という)を用いた調整用発電システムの重要性が増している。大規模ガス火力発電は調整電力として活用可能である一方で、その出力調整幅が定格運転の30%から100%の範囲に限られる場合が多く、十分な調整力にはならない。また、大規模火力発電設備は設置場所が固定されるため、電力線増強が必要となり、設備コストが大きくなる。更に、大規模火力発電設備は利用する燃料の調達範囲が限定されるので、地域に遍在するRE燃料を有効活用することが難しい。
【0009】
RE燃料に対応したエンジン発電機を活用した分散発電システムは、地域に遍在するRE燃料を活用しながら再生可能エネルギーの変動に対応可能なシステムとして有望である。特に既存の自動車用エンジンや産業用エンジンなど量産エンジンを活用し、それらを複数組み合わせて定置式発電システムとして用いることにより、初期の設備コストを最小化することが可能である。さらに、前述のエンジン発電システムに対する負荷の一つとして、今後、電気自動車(EV:Electric Vehicle)が増えてくると考えられる。電気自動車に搭載されるバッテリは、ほぼリチウム電池(高エネルギー密度の蓄電池)と考えてよく、このような新電池では充電初期の大出力域から充電後期での小出力域にわたるように出力の変化範囲が広く、かつ高精度に電圧を制御する必要がある。
【0010】
そこで、前述のエンジンを駆動源とした発電システムにおいては、まず大出力域から小出力域にわたって、エンジンの燃費の良い発電を実行することが好ましい。上述した特許文献1の技術を応用すると、できるだけ効率の良い動作点を適用しつつシステムを稼働させることが可能であると考えられる。すなわち、車両用の電源系において、回生電力のような低コストの供給電力が利用可能な場合に、その利用度を増大することにより平均的な電力コストを低減できると考えられる。この技術により、バッテリの頻繁な充放電を抑止しつつ、回生発電などで生じた安価な発電電力の有効利用が可能になると考えられる。
【0011】
さらに、上述した特許文献2の技術を応用すると、複数台の電源装置と、夫々の電源装置を発電要求総電力に対応して統合制御し得る統合制御部とを備えた電源システムを構築できると考えられる。すなわち、複数の電源装置のうち少なくとも1台の電源装置を選択し、選択した電源装置を発電機回転速度における発電要求総電力以下の最大発電電力で発電するように、前記選択された電源装置における電圧制御部を制御できると考えられる。この技術により、発電機を用いた複数の電源装置を、より少ない消費エネルギーによって運転し、発電要求総電力に対応する電力を複数の電源装置により発電できると考えられる。
【0012】
上記技術のうち、特許文献1を応用した技術は、電源システムにおいて電費の良い動作状態、すなわち、回生状態において、負荷の電力を増加させてエネルギー消費量を低減させようというものである。そのため、エンジン発電機における発電時のエンジン効率(燃費)を向上させようとする場合には、その目的を達成することは困難である。また、特許文献2を応用した技術は、複数の電源装置に各々接続された蓄電装置をそれぞれ電圧制御するものである。従って、複数の発電モジュールで特定のバッテリを制御するような発電システムにおいて、各々の発電モジュールを高効率で運転しつつバッテリを高精度に充電するといった目的を達成することは困難である。そこで、後述する実施形態は、複数のエンジン発電モジュールからなる分散充電システムにおいて、高い発電効率、および接続されたバッテリの高精度充電を実現する制御装置を提供するものである。
【0013】
[第1実施形態]
〈第1実施形態のハードウエア構成〉
図1は、第1実施形態による分散型バッテリ充電システム100の構成を示すブロック図である。
図1において、分散型バッテリ充電システム100は、切替接続部4と、メインコントローラ7(充電制御装置)と、複数(n台)の発電モジュール30-1~30-nと、を備えている。なお、以下の説明において、同一または類似の機能、意義を有する複数の構成要素や情報等を、例えば「発電モジュール30-1,30-2」のように、同一の符号に「-」と英数字を付して、表記する場合がある。但し、これら複数の構成要素等を区別する必要がない場合には、例えば「発電モジュール30」のように、「-」と英数字を省略して表記する場合がある。
【0014】
分散型バッテリ充電システム100は、バッテリ52およびバッテリ・コントローラ54に接続される。バッテリ52は、電力設備用のバッテリでもよく、電気自動車等、移動体用のバッテリでもよい。バッテリ52の電圧をバッテリ電圧Vbと呼び、分散型バッテリ充電システム100からバッテリ52に供給される電流を充電電流Ibと呼び、両者の積を充電電力Pbと呼ぶ。バッテリ・コントローラ54は、バッテリ電圧Vb、充電電流Ib、その他のバッテリ52の各種状態を計測し、その結果をメインコントローラ7に供給する。
【0015】
発電モジュール30-1~30-nは、それぞれ、エンジン1-1~1-nと、発電機2-1~2-nと、AC/DCコンバータであるコンバータ3-1~3-nと、サブコントローラ6-1~6-n(充電制御装置)と、を備えている。切替接続部4は、一または複数の発電モジュール30を選択し、選択した発電モジュール30から出力された電力をバッテリ52に供給する。バッテリ・コントローラ54は、バッテリ52に対して各種制御を行う。
【0016】
各々のサブコントローラ6は、その上位系に位置するメインコントローラ7との間で、各種指令信号や状態信号を送受信する。また、メインコントローラ7は、切替接続部4と通信することにより、発電モジュール30の切替・接続状態を制御し、監視する。また、メインコントローラ7は、バッテリ・コントローラ54との間で通信を確立する。これにより、メインコントローラ7は、バッテリ52の仕様や充電状態等のデータをバッテリ・コントローラ54から随時収集し、バッテリ52の充電状態に応じた制御を実行する。なお、バッテリ52は、例えば、リチウムイオン電池である。
【0017】
図2は、バッテリ電圧Vbおよび充電電流Ibの一例を示す図である。
リチウムイオン電池であるバッテリ52(図1参照)を充電する場合に、サブコントローラ6およびメインコントローラ7は、最初のCC(Constant Current;定電流)充電期間においてCC充電モードによってバッテリ52を充電させる。図2の例において、時刻t0~t1の期間がCC充電期間であり、当該期間において充電電流Ibは所定の制限電流値Im(例えば定格電流)に一致し、充電電力は比較的大きくなる。そして、バッテリ電圧Vbは、所定のバッテリ電圧指令値Vb*、すなわち充電完了電圧に徐々に近づいている。
【0018】
次に、バッテリ電圧Vbがバッテリ電圧指令値Vb*に達すると、サブコントローラ6およびメインコントローラ7は、CV(Constant Voltage;定電圧)充電期間においてCV充電モードによってバッテリ52を充電させる。図2の例において、時刻t1以降の期間がCV充電期間である。この期間において、サブコントローラ6およびメインコントローラ7は、バッテリ電圧Vbをバッテリ電圧指令値Vb*に維持するように充電電流Ibを制御する。従って、CV充電期間においては、充電電力は比較的小さく、充電電流Ibは時間の経過とともに減少してゆく。
【0019】
図3は、コンピュータ980のブロック図である。図1に示したサブコントローラ6、メインコントローラ7およびバッテリ・コントローラ54は、何れも図3に示すコンピュータ980を、1台または複数台備えている。
図3において、コンピュータ980は、CPU981と、記憶部982と、通信I/F(インタフェース)983と、入出力I/F984と、メディアI/F985と、を備える。ここで、記憶部982は、RAM982aと、ROM982bと、HDD982cと、を備える。通信I/F983は、通信回路986に接続される。入出力I/F984は、入出力装置987に接続される。メディアI/F985は、記録媒体988からデータを読み書きする。
【0020】
ROM982bには、CPUによって実行されるIPL(Initial Program Loader)等が格納されている。HDD982cには、制御プログラムや各種データ等が記憶されている。CPU981は、HDD982cからRAM982aに読み込んだ制御プログラム等を実行することにより、各種機能を実現する。サブコントローラ6、メインコントローラ7等の後述する内部構成(図6図7図8参照)は、制御プログラム等によって実現される機能をブロックとして示したものである。
【0021】
図4は、エンジン1の燃費マップの一例を示す図である。
例えば、産業分野や運輸分野で使用されるディーゼルエンジン等は、図4に示す燃費マップのような特性を有している。そして、本実施形態におけるエンジン1(図1参照)も、同様の特性を有している。
【0022】
図4において横軸はエンジンの回転速度であり、縦軸はトルクである。図4においては、等高線H1~H7は、燃料消費量(燃費)が同一である動作点を結んだものであり、これら等高線に係る燃費は、H1<H2<H3<H4<H5<H6<H7の関係を有する。図示のように、出力の大きい動作点では燃費が低くなる傾向が強く、出力の小さい動作点では燃費が高くなる傾向が強い。
【0023】
詳細は後述するが、本実施形態においては、各発電モジュール30のエンジン1を、それぞれ最良付近の燃費となる動作点で発電することで、システム全体の効率を最高値に近づけようとするものである。ここで、図2に示したように、CV充電期間において充電電流Ibは徐々に低下してゆく。仮に、1台の発電モジュール30を用いて充電のための所要電力を発電したとすると、充電後期では燃費が高くなり、余分な燃料を消費してしまうことになる。これに対して本実施形態の分散型バッテリ充電システム100は、必要な充電電流Ibに対して最適な組み合わせの発電モジュール30を適用することができる。これにより、充電期間の全てにおいて、分散型バッテリ充電システム100は、常に最良に近い燃費で発電することが可能となる。
【0024】
〈比較例〉
ここで、第1実施形態の動作を説明する前に、比較例について説明する。
比較例のハードウエア構成は、第1実施形態のもの(図1参照)と同様である。但し、本比較例において、メインコントローラ7および切替接続部4は、何れか一系統の発電モジュール30のみを選択してバッテリ52に接続する点が異なる。
図5は、比較例におけるサブコントローラ6の制御系統のブロック図である。
比較例のサブコントローラ6は、電圧制御部10と、電流制限部11と、電流制御部12と、を備えている。
【0025】
電圧制御部10は、バッテリ52の充電完了時のバッテリ電圧Vbであるバッテリ電圧指令値Vb*からバッテリ電圧Vbを減算し、減算結果が大きくなるほど大きくなる電流要求値Irを出力する。電流制限部11は、電流要求値Irが所定の制限電流値Imを超える場合に該制限電流値Imになり、それ以外の場合は電流要求値Irになる電流目標値Itを出力する。ここで、制限電流値Imは、図2に示したように、例えば充電電流Ibの定格電流値である。
【0026】
電流制御部12は、充電電流Ibが電流目標値Itに近づける電流指令値Ic*をコンバータ3(図1参照)に出力する。コンバータ3は、電流指令値Ic*に応じた電流をバッテリ52に出力する。バッテリ電圧Vbが比較的低い場合、すなわちSOC(State of Charge:充電率)が低い場合には、電流要求値Ir(図5参照)は大きくなるが、電流制限部11によって電流目標値Itが制限されるため、電流目標値Itは制限電流値Imに等しくなる。これにより、サブコントローラ6(図5参照)は、CC充電モードの制御を実行する。
【0027】
すなわち、電流制限部11が出力する電流目標値It=制限電流値Imを実現するように、電流制御部12はコンバータ3に対する電流指令値Ic*を出力する。その後、充電が進み、バッテリ電圧Vbが上昇しSOCが高くなると、やがてバッテリ電圧Vbがバッテリ電圧指令値Vb*(図2参照)に達する。これにより、電流要求値Irが下がると、電流目標値Itと電流要求値Irとが一致するようになり、サブコントローラ6の制御はCV充電モードに移行する。
【0028】
上述したように、本比較例においては、何れか一系統のみの発電モジュール30が切替接続部4を介してバッテリ52に接続される。その理由は、切替接続部4を介して複数の発電モジュール30をバッテリ52に接続すると、それぞれの発電モジュール30における制御系統(図5参照)が干渉し、充電電力に脈動を生じさせる可能性が生じるためである。
【0029】
〈第1実施形態の制御系統〉
図6は、第1実施形態における制御系統のブロック図である。
メインコントローラ7は、情報取得部71と、機能割当部72と、電力指令部74と、出力変化抑制部76と、を備えている。
情報取得部71は、発電モジュール30-1~30-nおよびバッテリ・コントローラ54から各種情報を取得する。
【0030】
また、機能割当部72は、全ての発電モジュール30のうち、バッテリ52の充電に供する少なくとも二台の発電モジュール30を選択する。なお、図6の例では、全ての発電モジュール30-1~30-nが、充電に供する発電モジュール30として選択されたこととする。さらに、機能割当部72は、充電に供する発電モジュール30のうち一台をメジャーモジュール30Mとして選択し、他の発電モジュール30をセカンダリモジュール30Sとして選択する。図示の例では、発電モジュール30-1がメジャーモジュール30Mとして選択され、他の発電モジュール30-k(但し、2≦k≦n)がセカンダリモジュール30Sとして選択されたこととしている。
【0031】
ここで、バッテリ52に対する充電が進行すると、バッテリ52に供給可能な充電電流Ibが減少してゆく。そこで、機能割当部72は、充電電流Ibの減少に応じて、セカンダリモジュール30Sの数を減少させる。また、機能割当部72は、何らかの理由により、メジャーモジュール30Mが停止すると、何れかのセカンダリモジュール30Sを新たなメジャーモジュール30Mに設定する機能も有する。
【0032】
電力指令部74は、バッテリ52の容量や、現在のバッテリ電圧Vb、充電電流Ib、充電率等に基づいて、充電電力Pbの予測値である予測充電電力Pbest(図示せず)を算出する。また、電力指令部74は、メジャーモジュール30Mのエンジン燃費特性データDEに基づいて、良好な(所定の閾値以下である)燃費が得られる出力電力の予測値である予測メジャー電力Pmest(図示せず)を算出する。
【0033】
また、電力指令部74は、予測充電電力Pbestから予測メジャー電力Pmestを減算した結果を、全てのセカンダリモジュール30Sが発生すべき電力の総和である合計セカンダリ電力指令値Psa*として決定する。さらに、電力指令部74は、各々のセカンダリモジュール30S、すなわち図6の例では発電モジュール30-k(但し、2≦k≦n)に合計セカンダリ電力指令値Psa*を割り振り、個々の発電モジュール30-kが出力する電力の指令値であるセカンダリ電力指令値Pk*を決定する。
【0034】
換言すれば、合計セカンダリ電力指令値Psa*は、セカンダリ電力指令値Pk*の総和になる。電力指令部74は、各セカンダリモジュール30Sに対するセカンダリ電力指令値Pk*を決定する場合には、エンジン燃費特性データDEに基づいて、良好な(所定の閾値以下である)燃費が実現できるようにセカンダリ電力指令値Pk*を決定する。
【0035】
出力変化抑制部76は、何れかの発電モジュール30の出力が何らかの理由により低下すると、他の発電モジュール30の出力を増加させ、または、未出力状態である何れかの発電モジュール30を、新たなセカンダリモジュール30Sとして指定する。これにより、出力変化抑制部76は、バッテリ52に供給される充電電力の変化を抑制する。
【0036】
メジャーモジュール30Mにおけるサブコントローラ6、すなわち図示の例ではサブコントローラ6-1をメジャーコントローラ6Mと呼び、セカンダリモジュール30Sにおけるサブコントローラ6、すなわち図示の例ではサブコントローラ6-k(但し、2≦k≦n)をセカンダリコントローラ6Sと呼ぶ。
【0037】
サブコントローラ6-1~6-nは、各々が制御するエンジン1-1~1-nに関するエンジン燃費特性データDE-1~DE-nを記憶している。エンジン燃費特性データDEは、エンジン1の燃費マップ(図4参照)をテーブル形式等で表現したものである。各サブコントローラ6は、自機におけるエンジン燃費特性データDEを、メインコントローラ7に供給する。
【0038】
また、メジャーコントローラ6Mは、メジャー設定部18と、メジャー制御部21と、を備えている。換言すれば、発電モジュール30-1がメジャーモジュール30Mに指定された際に、メジャーコントローラ6Mになったサブコントローラ6-1は、メジャー設定部18およびメジャー制御部21の機能を有効化する。
【0039】
また、セカンダリコントローラ6S、すなわちサブコントローラ6-k(但し、2≦k≦n)は、それぞれ、それぞれ、セカンダリ設定部19-kと、セカンダリ制御部22-kと、を備えている。すなわち、発電モジュール30-kがセカンダリモジュール30Sに指定された際に、セカンダリコントローラ6Sになったサブコントローラ6-kは、セカンダリ設定部19-kおよびセカンダリ制御部22-kの機能を有効化する。
【0040】
図7は、メジャー制御部21のブロック図である。
図7において、メジャー制御部21は、電圧制御部212(メジャー電圧制御部)と、電流制限部214(メジャー電流制限部)と、電流演算部215(加算電流演算部)と、加算器216と、電流制御部218(メジャー電流制御部)と、を備えている。電圧制御部212は、バッテリ電圧指令値Vb*からバッテリ電圧Vbを減算し、減算結果が大きくなるほど大きくなるメジャー電流要求値Irmを出力する。
【0041】
また、電流制限部214は、メジャー電流要求値Irmが制限電流値Im(図2参照)を超える場合に該制限電流値Imになり、それ以外の場合はメジャー電流要求値Irmになるメジャー電流目標値Itmを出力する。電流演算部215は、上述した合計セカンダリ電力指令値Psa*とバッテリ電圧Vbとに基づいて、各セカンダリモジュール30Sの出力電流の総和の推定値である電流加算指令値Iadを出力する。
【0042】
加算器216は、メジャー電流目標値Itmと、電流加算指令値Iadと、を加算し、加算結果を充電電流指令値Ib*として出力する。電流制御部218は、充電電流Ibを充電電流指令値Ib*に近づけるように、メジャー電流指令値Icm*をコンバータ3-1に対して出力する。
【0043】
これにより、コンバータ3-1は、メジャー電流指令値Icm*に応じた電流を出力する。換言すれば、メジャー制御部21は、バッテリ電圧指令値Vb*からバッテリ電圧Vbを減算した結果が大きくなるほど、メジャーモジュール30Mの出力電力を大きくする機能を備える。そして、メジャーモジュール30Mが出力する電力は、電力指令部74が算出した予測メジャー電力Pmestに近い値になるため、メジャーモジュール30Mにおけるエンジン1において良好な燃費が得られる。
【0044】
図8は、セカンダリ制御部22-kのブロック図である。
図8において、セカンダリ制御部22-kは、電流演算部222-k(セカンダリ電流演算部)と、電流制限部224-k(セカンダリ電流制限部)と、電流制御部228-k(セカンダリ電流制御部)と、を備えている。電流演算部222-kは、セカンダリ電力指令値Pk*と、バッテリ電圧Vbと、に基づいて、セカンダリ電力指令値Pk*を実現する電流値であるセカンダリ電流要求値Irskを出力する。
【0045】
電流制限部224-kは、セカンダリ電流要求値Irskが制限電流値Imを超える場合に制限電流値Imになり、それ以外の場合はセカンダリ電流要求値Irskになるセカンダリ電流目標値Itskを出力する。電流制御部228-kは、コンバータ3-kの出力電流Ibskと、セカンダリ電流目標値Itskと、に基づいて、出力電流Ibskをセカンダリ電流目標値Itskに近づけるようにセカンダリ電流指令値Icsk*をコンバータ3-kに対して出力する。
【0046】
コンバータ3-kは、バッテリ52に対して、セカンダリ電流指令値Icsk*に応じた電流を出力する。このように、セカンダリ制御部22-kは、セカンダリモジュール30Sが各々出力する電力を、各々に対応するセカンダリ電力指令値Pk*に近づける機能を有する。
【0047】
図9は、メイン制御処理のフローチャートである。
本実施形態の分散型バッテリ充電システム100に対してバッテリ52およびバッテリ・コントローラ54が接続されると、メインコントローラ7は本ルーチンの処理を開始する。
図9において処理がステップS12に進むと、メインコントローラ7の情報取得部71(図6参照)は、バッテリ・コントローラ54およびサブコントローラ6から各種情報を取得する。
【0048】
すなわち、情報取得部71は、サブコントローラ6から、バッテリ52の充電完了電圧と、制限電流値Im(図2参照)を取得する。そして、情報取得部71は、取得した充電完了電圧を、バッテリ電圧指令値Vb*に設定する。また、情報取得部71は、各発電モジュール30から、対応するエンジン1に対するエンジン燃費特性データDEを取得する。
【0049】
次に、処理がステップS14に進むと、電力指令部74は、現在のバッテリ52の状態に基づいて、充電電力Pbの予測値である予測充電電力Pbestを算出する。次に、処理がステップS16(機能割当過程)に進むと、機能割当部72は、予測充電電力Pbestに基づいて、発電モジュール30に対する機能割当を行う。すなわち、機能割当部72は、全ての発電モジュール30の中から充電に供するものを選択し、充電に供する発電モジュール30から1台のメジャーモジュール30Mとして選択し、残りをセカンダリモジュール30Sとして選択する。
【0050】
次に、処理がステップS18(電力指令過程)に進むと、電力指令部74は、各発電モジュール30に対して各種のデータ設定を行う。すなわち、電力指令部74は、予測メジャー電力Pmestを算出し、予測充電電力Pbestから予測メジャー電力Pmestを減算した結果を、合計セカンダリ電力指令値Psa*として決定する。次に、電力指令部74は、各セカンダリモジュール30Sに対して、良好な(所定の閾値以下である)燃費が実現できるように、合計セカンダリ電力指令値Psa*を割り振ることにより、セカンダリ電力指令値Pk*を決定する。
【0051】
次に、電力指令部74は、メジャーコントローラ6Mに対して、合計セカンダリ電力指令値Psa*と、バッテリ電圧指令値Vb*と、制限電流値Imと、充電電流Ibと、を供給する。また、電力指令部74は、各セカンダリコントローラ6Sに対して、セカンダリ電力指令値Pk*と、制限電流値Imと、を供給する。
【0052】
その後、処理はステップS14に戻り、ステップS14~S18の処理が繰り返される。その過程で充電電流Ibが徐々に減少してゆくと、機能割当部72は、ステップS16において、セカンダリモジュール30Sの数を減少させてゆく。
【0053】
なお、図示は省略するが、メインコントローラ7は、充電電流Ibが所定値未満になったか否かに基づいてバッテリ52に対する充電が完了したか否かを逐次判定している。そして、充電電流Ibが該所定値未満になると、メインコントローラ7は、各サブコントローラ6を介して各発電モジュール30を停止させる。
【0054】
図10は、サブ制御処理のフローチャートである。
本実施形態の分散型バッテリ充電システム100に対してバッテリ52およびバッテリ・コントローラ54が接続されると、サブコントローラ6は、本ルーチンの処理を開始する。
図10において処理がステップS32に進むと、サブコントローラ6は、メインコントローラ7から各種情報を取得する。次に、処理がステップS34に進むと、サブコントローラ6は、自機がメジャーコントローラ6Mに指定されているか否かを判定する。
【0055】
ステップS34において「Yes」と判定されると、処理はステップS36(メジャー制御過程)に進む。先にステップS18(図9参照)の処理について説明したように、メインコントローラ7は、メジャーコントローラ6Mに対して、合計セカンダリ電力指令値Psa*と、バッテリ電圧指令値Vb*と、制限電流値Imと、充電電流Ibと、を供給する。そこで、ステップS36において、メジャー設定部18は、メジャー制御部21に対して、これらのパラメータを設定する。
【0056】
一方、ステップS34において「No」と判定されると、処理はステップS38(セカンダリ制御過程)に進む。先にステップS18(図9参照)の処理について説明したように、メインコントローラ7は、セカンダリコントローラ6Sに対して、セカンダリ電力指令値Pk*と、制限電流値Imと、を供給する。そこで、ステップS38において、セカンダリ設定部19-kは、セカンダリ制御部22-kに対して、これらのパラメータを設定する。
【0057】
次に、処理がステップS40(セカンダリ制御過程、メジャー制御過程)に進むと、サブコントローラ6は、バッテリ52に対する充電制御を行う。すなわち、メジャーコントローラ6Mにおいては、メジャー制御部21(図7参照)のアルゴリズムによってコンバータ3-1を制御する。また、セカンダリコントローラ6Sにおいては、セカンダリ制御部22-k(図8参照)のアルゴリズムによってコンバータ3-kを制御する。
【0058】
その後、処理はステップS32に戻り、ステップS32~S40の処理が繰り返される。特に、本実施形態においては、ステップS34の判定処理が繰り返し実行されるため、メインコントローラ7は、サブコントローラ6の機能を、メジャーコントローラ6Mまたはセカンダリコントローラ6Sに、適宜切り替えることが可能である。
【0059】
図11は、第1実施形態における充電電力Pbおよび燃料効率Fの例を示す図である。
図11においては、比較例における燃料効率FCも破線で併記している。「燃料効率」とは、ある一定の燃料によって得られる電気エネルギーを指し、上述した「燃費」の逆数であると考えてよい。
上述したように、充電電力Pbは、時刻tの経過とともに減少する。そして、何れか1台の発電モジュール30を固定的に適用する比較例においては、時間の経過とともに、燃料効率FCが大きく低下する。一方、第1実施形態によれば、機能割当部72が時間の経過とともに発電モジュール30の数を減少させるため、燃料効率Fを比較的高いレベルで維持できる。さらに、第1実施形態によれば、バッテリ電圧Vbに応じて充電電力Pbを変化させる制御は、主としてメジャーモジュール30Mのみが行う。これにより、充電電力Pbの脈動を抑制した高精度な充電制御を実現することができる。
【0060】
[第2実施形態]
図12は、第2実施形態における制御系統のブロック図である。なお、以下の説明において、上述した第1実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
第2実施形態においては、メインコントローラ7に接続された発電モジュール状態検知部25が設けられている。それ以外の構成は、第1実施形態のもの(図1図6参照)と同様である。
【0061】
発電モジュール状態検知部25は、各発電モジュール30の状態を検知し、各発電モジュール30に障害が生じたか否かを判断し、その結果をメインコントローラ7に供給する。これにより、メインコントローラ7は、稼働する発電モジュール30、および、これらのうちメジャーモジュール30Mとする発電モジュール30を適切に選択することができる。
【0062】
[実施形態の効果]
以上のように上述の実施形態によれば、バッテリ充電システム(100)は、エンジン1と、エンジン1によって駆動される発電機2と、発電機2から出力された電圧を充電用電圧に変換し充電対象であるバッテリ52に供給するコンバータ3と、を各々が備える複数の発電モジュール30と、発電モジュール30を制御するバッテリ充電制御装置(6,7)と、を備え、バッテリ充電制御装置(6,7)は、バッテリ52に供給すると予測される電力である予測充電電力Pbestに応じて、一の発電モジュール30をメジャーモジュール30Mとして選択し、バッテリ52への充電に供されるメジャーモジュール30M以外の一または複数の発電モジュール30をセカンダリモジュール30Sとして選択する機能割当部72と、各々のセカンダリモジュール(30-k)が発生する電力の指令値であるセカンダリ電力指令値Pk*を出力する電力指令部74と、メジャーモジュール30Mに対して、所定のバッテリ電圧指令値(Vb*)からバッテリ52の電圧であるバッテリ電圧Vbを減算した結果が大きくなるほどメジャーモジュール30Mにおけるコンバータ3の出力電力を大きくするメジャー制御部21と、セカンダリモジュール30Sが各々出力する電力を、各々に対応するセカンダリ電力指令値Pk*に近づけるセカンダリ制御部22-kと、を備える。これにより、複数の発電モジュールから出力される電力を適切に管理できる。すなわち、複数の発電モジュールを用いて、高い発電効率を実現することができ、接続されたバッテリ52に対して高精度な充電を実現することができる。
【0063】
また、電力指令部74は、各々のセカンダリモジュール30Sの発電機2の燃費特性(DE)に基づき、所定の閾値以下の燃費が得られるセカンダリモジュール30Sのセカンダリ電力指令値Pk*を決定すると一層好ましい。これにより、燃費特性(DE)に基づいた、適切なセカンダリ電力指令値Pk*を決定できる。
【0064】
また、電力指令部74は、メジャーモジュール30Mの発電機2の燃費特性(DE)に基づき、所定の閾値以下の燃費が得られる、メジャーモジュール30Mの出力電力の予測値である予測メジャー電力Pmestを算出する機能と、予測充電電力Pbestから予測メジャー電力Pmestを減算することにより、セカンダリ電力指令値Pk*の総和である合計セカンダリ電力指令値Psa*を算出する機能と、合計セカンダリ電力指令値Psa*と、各々のセカンダリモジュール30Sの発電機2の燃費特性(DE)と、に基づき、所定の閾値以下の燃費が得られるセカンダリモジュール30Sのセカンダリ電力指令値Pk*を決定する機能と、を備えると一層好ましい。これにより、燃費特性(DE)と、予測メジャー電力Pmestと、予測充電電力Pbestと、に基づいた、一層適切なセカンダリ電力指令値Pk*を決定できる。
【0065】
また、機能割当部72は、メジャーモジュール30Mが停止すると、セカンダリモジュール30Sのうち何れかを新たなメジャーモジュール30Mに設定すると一層好ましい。これにより、なんらかの事情によりメジャーモジュール30Mが停止したとしても、分散型バッテリ充電システム100は運転を続行することができる。
【0066】
また、バッテリ充電制御装置(6,7)は、何れかの発電モジュール30の出力が低下すると、他の発電モジュール30の出力を増加させ、または、未出力状態である何れかの発電モジュール30を新たなセカンダリモジュール(30-k)に指定することにより、バッテリ52に供給される充電電力の変化を抑制する出力変化抑制部76をさらに備えると一層好ましい。これにより、何れかの発電モジュール30の出力が低下したとしても、バッテリ52に供給される充電電力の変化を抑制することができる。
【0067】
また、機能割当部72は、バッテリ52の容量に応じてセカンダリモジュール30Sの数を決定し、その後にバッテリ52に流れる充電電流Ibの減少に応じて、セカンダリモジュール30Sの数を減少させるこれにより、充電電流Ibの減少に応じて、適切な数のセカンダリモジュール30Sを動作させることができる。
【0068】
また、メジャー制御部21は、バッテリ電圧指令値(Vb*)からバッテリ電圧Vbを減算した結果が大きくなるほど大きくなるメジャー電流要求値Irmを出力するメジャー電圧制御部(212)と、セカンダリ電力指令値Pk*の総和である合計セカンダリ電力指令値Psa*と、バッテリ電圧Vbと、に基づいて、セカンダリモジュール30Sが出力する電流の総和に対応する電流加算指令値Iadを出力する加算電流演算部(215)と、メジャー電流要求値Irmが所定の制限電流値Imを超える場合に該制限電流値Imになり、それ以外の場合はメジャー電流要求値Irmになるメジャー電流目標値Itmを出力するメジャー電流制限部(214)と、バッテリ52に流れる充電電流Ibが、メジャー電流目標値Itmと電流加算指令値Iadとの和である充電電流指令値(Ib*)に近づくようにメジャーモジュール30Mにおけるコンバータ(3-1)の出力電流を制御するメジャー電流制御部(218)と、を備えると一層好ましい。これにより、メジャー制御部21は、メジャーモジュール30Mにおけるコンバータ3の出力電力を一層適切に制御できる。
【0069】
また、セカンダリ制御部22-kは、各々のセカンダリモジュール30Sに対するセカンダリ電力指令値Pk*と、バッテリ電圧Vbと、に基づいて、各々のセカンダリモジュール30Sにおけるセカンダリ電流要求値Irskを算出するセカンダリ電流演算部(222-k)と、各々のセカンダリ電流要求値Irskが制限電流値Imを超える場合に該制限電流値Imになり、それ以外の場合は対応するセカンダリ電流要求値Irskになるセカンダリ電流目標値Itskを出力するセカンダリ電流制限部(224-k)と、各々のセカンダリ電流目標値Itskに近づくように、各々のセカンダリモジュール30Sにおけるコンバータ(3-k)の出力電流であるセカンダリ出力電流(Ibsk)を制御するセカンダリ電流制御部(228-k)と、を備えると一層好ましい。これにより、セカンダリ制御部22-kは、セカンダリモジュール30Sが各々出力する電力を、一層適切に制御することができる。
【0070】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0071】
(1)上記実施形態におけるサブコントローラ6およびメインコントローラ7のハードウエアは一般的なコンピュータによって実現できるため、図9図10に示したフローチャート、その他上述した各種処理を実行するプログラム等を記憶媒体(プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納し、または伝送路を介して頒布してもよい。
【0072】
(2)図9図10に示した処理、その他上述した各処理は、上記実施形態ではプログラムを用いたソフトウエア的な処理として説明したが、その一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向けIC)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いたハードウエア的な処理に置き換えてもよい。
【0073】
(3)上記各実施形態において、電力指令部74は、エンジン燃費特性データDEに基づいて、良好な(所定の閾値以下である)燃費が実現できるように予測メジャー電力Pmest(図示せず)およびセカンダリ電力指令値Pk*を決定した。しかし、エンジン燃費特性データDEを用いることに代えて、各発電モジュール30について、良好な(所定の閾値以下である)燃費が実現できる出力電力範囲を予め計算しておき、その出力電力範囲内に含まれるように予測メジャー電力Pmest(図示せず)およびセカンダリ電力指令値Pk*を決定してもよい。
【0074】
(4)上記実施形態において、メジャー制御部21における制限電流値Im(図7参照)と、各セカンダリ制御部22-kにおける制限電流値Im(図8参照)とは同一の値であった。しかし、これら制限電流値Imは異なる値であってもよい。例えば、各発電モジュール30における定格出力電流を制限電流値Imにしてもよい。
【0075】
(5)上記実施形態において実行される各種処理は、図示せぬネットワーク経由でサーバコンピュータが実行してもよく、上記実施形態において記憶される各種データも該サーバコンピュータに記憶させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 エンジン
2 発電機
3 コンバータ
6 サブコントローラ(バッテリ充電制御装置)
7 メインコントローラ(バッテリ充電制御装置)
21 メジャー制御部
22-k セカンダリ制御部
30 発電モジュール
30M メジャーモジュール
30S セカンダリモジュール
52 バッテリ
72 機能割当部
74 電力指令部
76 出力変化抑制部
100 分散型バッテリ充電システム(バッテリ充電システム)
212 電圧制御部(メジャー電圧制御部)
214 電流制限部(メジャー電流制限部)
215 電流演算部(加算電流演算部)
218 電流制御部(メジャー電流制御部)
222-k 電流演算部(セカンダリ電流演算部)
224-k 電流制限部(セカンダリ電流制限部)
228-k 電流制御部(セカンダリ電流制御部)
DE エンジン燃費特性データ(燃費特性)
Ib 充電電流
Im 制限電流値
Vb バッテリ電圧
Pk* セカンダリ電力指令値
Iad 電流加算指令値
Irm メジャー電流要求値
Itm メジャー電流目標値
S16 ステップ(機能割当過程)
S18 ステップ(電力指令過程)
S36 ステップ(メジャー制御過程)
S38 ステップ(セカンダリ制御過程)
S40 ステップ(セカンダリ制御過程、メジャー制御過程)
Psa* 合計セカンダリ電力指令値
Ibsk 出力電流(セカンダリ出力電流)
Irsk セカンダリ電流要求値
Itsk セカンダリ電流目標値
Pbest 予測充電電力
Pmest 予測メジャー電力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12