IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ発動機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-船外機および船舶 図1
  • 特開-船外機および船舶 図2
  • 特開-船外機および船舶 図3
  • 特開-船外機および船舶 図4
  • 特開-船外機および船舶 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157676
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】船外機および船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/38 20060101AFI20241031BHJP
   B63H 20/00 20060101ALI20241031BHJP
   B63H 20/14 20060101ALI20241031BHJP
   B63H 23/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B63H21/38
B63H20/00 610
B63H20/14 100
B63H23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072163
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江渕 潤
(57)【要約】
【課題】船外機に備えられた制御基板の全体を効果的に冷却する。
【解決手段】船外機は、電動モータと、一端が他端よりも高い位置になるように配置され、電動モータを制御するモータ制御基板と、電動モータとモータ制御基板との間に位置し、内部に冷却室が形成されたケースと、ケースの冷却室に連通し、冷媒を冷却室に供給する供給流路と、ケースの冷却室に連通し、冷却室から冷媒を排出する排出流路と、を備える。冷却室における排出流路の排出口は、モータ制御基板の一端側に位置し、冷却室における供給流路の供給口は、モータ制御基板の他端側に位置し、排出口の下端は、供給口の下端よりも高い位置に位置し、かつ、冷却室におけるモータ制御基板側の第1の壁面は、モータ制御基板に沿って延びている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機であって、
電動モータと、
一端が他端よりも高い位置になるように配置され、前記電動モータを制御するモータ制御基板と、
前記電動モータと前記モータ制御基板との間に位置し、内部に冷却室が形成されたケースと、
前記ケースの前記冷却室に連通し、冷媒を前記冷却室に供給する供給流路と、
前記ケースの前記冷却室に連通し、前記冷却室から前記冷媒を排出する排出流路と、を備え、
前記冷却室における前記排出流路の排出口は、前記モータ制御基板の前記一端側に位置し、前記冷却室における前記供給流路の供給口は、前記モータ制御基板の前記他端側に位置し、前記排出口の下端は、前記供給口の下端よりも高い位置に位置し、かつ、前記冷却室における前記モータ制御基板側の第1の壁面は、前記モータ制御基板に沿って延びている、船外機。
【請求項2】
請求項1に記載の船外機であって、
前記モータ制御基板と、前記冷却室における前記第1の壁面とは、水平方向に対して傾斜している、船外機。
【請求項3】
請求項2に記載の船外機であって、
前記冷却室における前記モータ制御基板とは反対側の第2の壁面は、水平方向に対して、前記冷却室における前記第1の壁面と同方向に傾斜している、船外機。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の船外機であって、
前記モータ制御基板と、前記冷却室における前記第1の壁面とは、上下方向に沿っている、船外機。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の船外機であって、
前記供給流路から前記冷却室への前記冷媒の供給方向と、前記冷却室から前記排出流路への前記冷媒の排出方向とは、互いに逆方向である、船外機。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の船外機であって、
前記供給口は、前記供給流路における最上位置に位置している、船外機。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の船外機であって、
前記排出口は、前記排出流路における最下位置に位置している、船外機。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の船外機であって、
さらに、前記排出口よりも高い位置に配置されているエア抜きを備え、
前記排出流路は前記エア抜きに連通している、船外機。
【請求項9】
船体と、
前記船体の後部に取り付けられた請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の船外機と、
を備える、船舶。
【請求項10】
船外機であって、
一端が他端よりも低い位置になるように配置される制御基板と、
前記制御基板に沿うように配置され、内部に冷却室が形成されたケースと、
前記ケースの前記冷却室に連通し、冷媒を前記冷却室に供給する供給流路と、
前記ケースの前記冷却室に連通し、前記冷却室から前記冷媒を排出する排出流路と、を備え、
前記冷却室における前記排出流路の排出口は、前記冷却室における前記供給流路の供給口よりも高い位置に位置し、かつ、前記冷却室における前記制御基板側の壁面は、前記排出口から前記供給口に向かって延びている、船外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、船外機および船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は、船体と、船体の後部に取り付けられた船外機とを備える。船外機は、船舶を推進させる推力を生み出す装置である。船外機は、駆動源と、プロペラと、プロペラ軸を有し、駆動源の駆動力をプロペラに伝達する伝動機構とを備える。
【0003】
従来、駆動源としての電動モータと、電動モータを制御するモータ制御基板とを備える船外機が開示されている。また、この船外機は、電動モータを冷却するための冷却水を通すウォータジャケットを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-37256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
制御基板(モータ制御基板等)を備える船外機では、制御基板は、例えば防水カバー等に覆われており、駆動源(電動モータ等)の発熱によって高温になり易い。そのため、駆動源だけでなく、制御基板も冷却する必要がある。しかし、従来、船外機に備えられる制御基板の冷却について、改良の余地があった。
【0006】
なお、このような課題は、電動モータおよびモータ制御基板に限らず、エンジン等の駆動源と、制御基板とを備える船外機に共通する課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される船外機は、電動モータと、一端が他端よりも高い位置になるように配置され、前記電動モータを制御するモータ制御基板と、前記電動モータと前記モータ制御基板との間に位置し、内部に冷却室が形成されたケースと、前記ケースの前記冷却室に連通し、冷媒を前記冷却室に供給する供給流路と、前記ケースの前記冷却室に連通し、前記冷却室から前記冷媒を排出する排出流路と、を備える。前記冷却室における前記排出流路の排出口は、前記モータ制御基板の前記一端側に位置し、前記冷却室における前記供給流路の供給口は、前記モータ制御基板の前記他端側に位置し、前記排出口の下端は、前記供給口の下端よりも高い位置に位置し、かつ、前記冷却室における前記モータ制御基板側の第1の壁面は、前記モータ制御基板に沿って延びている。
【0010】
本船外機では、冷媒が供給される冷却室の排出口の下端が供給口の下端よりも高いため、冷却室の排出口付近の高さまで冷媒を満たすことができる。しかも、本船外機では、冷却室におけるモータ制御基板側の第1の壁面は、モータ制御基板に沿って延びている。このため、例えば冷却室における第1の壁面がモータ制御基板に沿って延びていない構成に比べて、モータ制御基板の全体を効果的(例えば全面的に)に冷却することができる。
【0011】
(2)上記船外機において、前記モータ制御基板と、前記冷却室における前記第1の壁面とは、水平方向に対して傾斜している構成としてもよい。本船外機によれば、モータ制御基板を傾斜配置させつつ、モータ制御基板を効果的に冷却することができる。
【0012】
(3)上記船外機において、前記冷却室における前記モータ制御基板とは反対側の第2の壁面は、水平方向に対して、前記冷却室における前記第1の壁面と同方向に傾斜している構成としてもよい。本船外機によれば、ケースに冷媒を供給して使用した後、冷却室内の冷媒を外部に円滑に抜くことができる。
【0013】
(4)上記船外機において、前記モータ制御基板と、前記冷却室における前記第1の壁面とは、上下方向に沿っている構成としてもよい。本船外機によれば、モータ制御基板を縦置きさせつつ、モータ制御基板を効果的に冷却することができる。
【0014】
(5)上記船外機において、前記供給流路から前記冷却室への前記冷媒の供給方向と、前記冷却室から前記排出流路への前記冷媒の排出方向とは、互いに逆方向である構成としてもよい。本船外機によれば、供給流路から冷却室への冷媒の流れの勢いによる乱流を低減して冷却室から冷媒を排出しつつ、モータ制御基板を効果的に冷却することができる。
【0015】
(6)上記船外機において、前記供給口は、前記供給流路における最上位置に位置している構成としてもよい。本船外機によれば、例えば供給口が供給流路における最上位置に位置していない構成に比べて、冷却室内を冷媒で円滑に満たすことができる。
【0016】
(7)上記船外機において、前記排出口は、前記排出流路における最下位置に位置している構成としてもよい。本船外機によれば、例えば排出口が排出流路における最下位置に位置していない構成に比べて、冷却室内におけるエア抜きを円滑に行うことができる。
【0017】
(8)上記船外機において、さらに、前記排出口よりも高い位置に配置されているエア抜きを備え、前記排出流路は前記エア抜きに連通している構成としてもよい。本船外機によれば、冷媒に混在する空気を、排出流路に連通するエア抜きから外部に抜きつつ、モータ制御基板を効果的に冷却することができる。
【0018】
(9)本明細書に開示される船外機は、一端が他端よりも低い位置になるように配置される制御基板と、前記制御基板に沿うように配置され、内部に冷却室が形成されたケースと、前記ケースの前記冷却室に連通し、冷媒を前記冷却室に供給する供給流路と、前記ケースの前記冷却室に連通し、前記冷却室から前記冷媒を排出する排出流路と、を備える。前記冷却室における前記排出流路の排出口は、前記冷却室における前記供給流路の供給口よりも高い位置に位置し、かつ、前記冷却室における前記制御基板側の壁面は、前記排出口から前記供給口に向かって延びている。本船外機によれば、制御基板の全体を効果的に冷却することができる。
【0019】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、船外機、船外機と船体とを備える船舶等の形態で実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本明細書に開示される船外機によれば、船外機に備えられた制御基板の全体を効果的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態の船舶10の構成を概略的に示す斜視図
図2】第1実施形態における船外機100の構成を概略的に示す側面図
図3】船外機本体110の内部構成の一部を概略的に示す側面図
図4】MCU510の周辺構成を示す断面図
図5】制御ケース502における冷却室Rの構成を示す上面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.第1実施形態:
A-1.船舶10の構成:
図1は、本第1実施形態の船舶10の構成を概略的に示す斜視図である。図1および後述する他の図面には、船舶10の位置を基準とした各方向を表す矢印を示している。各図には、前方(FRONT)、後方(REAR)、左方(LEFT)、右方(RIGHT)、上方(UPPER)および下方(LOWER)のそれぞれを表す矢印を示している。前後方向、左右方向、上下方向(鉛直方向)は、それぞれ互いに直交する方向である。
【0023】
船舶10は、船体200と、船外機100とを備える。本実施形態では、船舶10は、1つの船外機100を有するが、船舶10が複数の船外機100を有していてもよい。
【0024】
(船体200の構成)
船体200は、船舶10において乗員が搭乗する部分である。船体200は、居住空間204を有する船体本体部202と、居住空間204に設置された操縦席240と、操縦席240付近に設置された操縦装置250とを有する。操縦装置250は、操船のための装置であり、例えば、ステアリングホイール252と、シフト・スロットルレバー254と、ジョイスティック255と、モニタ256と、入力装置258とを有する。また、船体200は、居住空間204の後端を区画する仕切壁220と、船体200の後端に位置するトランサム210とを有する。前後方向において、トランサム210と仕切壁220との間には空間206が存在している。
【0025】
(船外機100の構成)
図2は、本実施形態における船外機100の構成を概略的に示す側面図である。以下では、特に断りがない限り、基準姿勢の船外機100について説明する。基準姿勢は、後述する電動モータ122の出力軸123の回転軸Acが上下方向に延伸し、かつ、後述するプロペラ軸137の回転軸線Apが前後方向に延伸する姿勢である。前後方向、左右方向および上下方向のそれぞれは、基準姿勢の船外機100に基づいて定められる。
【0026】
船外機100は、船舶10を推進させる推力を発生する装置である。船外機100は、船体200の後部のトランサム210に取り付けられている。船外機100は、船外機本体110と、懸架装置150とを有する。
【0027】
(船外機本体110の構成)
船外機本体110は、モータアセンブリ120と、伝達機構130と、プロペラ112と、カウル114と、ケーシング116と、ウォーターポンプ140と、ポンプシャフト134とを有する。
【0028】
カウル114は、船外機本体110の上部に配置された収容体である。カウル114は、カウル114の下部を構成する下部カウル114bと、カウル114の上部を構成する上部カウル114aとを有する。上部カウル114aは、下部カウル114bに対して、取り外し可能に取り付けられている。
【0029】
ケーシング116は、カウル114の下方に位置し、船外機本体110の下部に配置された収容体である。ケーシング116は、ロワーケース116bと、アッパーケース116aとを有する。ロワーケース116bは、後述のドライブシャフト133の少なくとも一部およびプロペラ軸137を収容している。ロワーケース116bは、ドライブシャフト133を中心として回動自在となるように、アッパーケース116aと接続されている。アッパーケース116aは、ロワーケース116bの上部に配置され、後述のギヤボックスアセンブリ300を収容している。
【0030】
モータアセンブリ120は、カウル114内に収容されている。モータアセンブリ120は、電動モータ122を有する。電動モータ122は、特許請求の範囲における駆動源の一例である。電動モータ122は、電動モータ122で発生した駆動力を出力する出力軸123を有する。
【0031】
伝達機構130は、電動モータ122の駆動力をプロペラ112に伝達する機構である。伝達機構130の少なくとも一部は、ケーシング116に収容されている。伝達機構130は、ギヤボックスアセンブリ300と、ドライブシャフト133と、プロペラ軸137とを有する。
【0032】
プロペラ軸137は、棒状の部材であり、船外機本体110の比較的下方において、前後方向に延伸する姿勢で配置されている。プロペラ軸137は、プロペラ112とともに回転する。プロペラ軸137の前端部は、ロワーケース116bに収容されており、プロペラ軸137の後端部は、ロワーケース116bから後方に突出している。プロペラ軸137の前端部は、ギヤ138を有している。
【0033】
ギヤボックスアセンブリ300は、電動モータ122の出力軸123とドライブシャフト133とに連結されている。ギヤボックスアセンブリ300は、電動モータ122の駆動力を減速させてプロペラ軸137に伝達する。これにより、電動モータ122を所望のトルクで回転させることができる。
【0034】
プロペラ112は、複数枚の羽根を有する回転体であり、プロペラ軸137の後端部に取り付けられている。プロペラ112は、回転軸線Apまわりのプロペラ軸137の回転に伴って回転する。プロペラ112は、回転することによって推力を発生する。前述のように、ロワーケース116bが回動自在であるため、プロペラ112は、ロワーケース116bの回動に伴って、ドライブシャフト133を中心として回動する。そのため、船舶10は、ロワーケース116bを回動させることによって操船が行われる。
【0035】
ウォーターポンプ140は、例えば電動モータ122を冷却するための水を船外機100の外部から汲み上げる。ポンプシャフト134は、上下方向に延伸している。ポンプシャフト134は、電動モータ122の駆動力によって駆動し、ウォーターポンプ140に動力を伝達する。ウォーターポンプ140は、ポンプシャフト134によって伝達される電動モータ122の駆動力によって駆動する。
【0036】
(懸架装置150の構成)
懸架装置150は、船外機本体110を船体200に懸架する装置である。懸架装置150は、左右一対のクランプブラケット152と、チルト軸160と、スイベルブラケット156とを含む。
【0037】
左右一対のクランプブラケット152は、船体200の後方に、互いに左右方向に離隔した状態で配置されており、例えばボルトによって船体200のトランサム210に固定されている。各クランプブラケット152は、左右方向に延伸する貫通孔が形成された筒状の支持部152aを有する。
【0038】
チルト軸160は、棒状の部材であり、クランプブラケット152の支持部152aの貫通孔内に回転可能に支持されている。チルト軸160の中心線であるチルト軸線Atは、船外機100のチルト動作における水平方向(左右方向)の軸線を構成する。
【0039】
スイベルブラケット156は、一対のクランプブラケット152に挟まれるように配置されており、チルト軸線Atまわりに回転可能に、チルト軸160を介してクランプブラケット152の支持部152aに支持されている。スイベルブラケット156は、例えば油圧シリンダ等のアクチュエータを含むチルト装置(図示せず)により、クランプブラケット152に対してチルト軸線Atまわりに回転駆動される。
【0040】
スイベルブラケット156がクランプブラケット152に対してチルト軸線Atまわりに回転すると、スイベルブラケット156に支持された船外機本体110もチルト軸線Atまわりに回転する。これにより、船体200に対して船外機本体110を上下方向に回転させるチルト動作が実現される。船外機100のチルト動作により、プロペラ112が水中に位置するチルトダウン状態(船外機100が基準姿勢にある状態)からプロペラ112が水面より上側に位置するチルトアップ状態までの範囲で、船外機本体110のチルト軸線Atまわりの角度を変更することができる。なお、船外機本体110のチルト軸線Atまわりの角度を調整して船舶10の走行時の姿勢を調整するトリム動作も実行することができる。
【0041】
A-2.船外機100の内部構成:
図3は、船外機本体110の内部構成の一部を概略的に示す側面図である。図3には、カウル114とアッパーケース116aの上側部分に収容された内部構造が示されている。図3に示すように、ギヤボックスアセンブリ300の上にモータアセンブリ120が配置されており、モータアセンブリ120の上に制御アッセンブリ500が配置されている。
【0042】
モータアセンブリ120は、上述した電動モータ122を有している。電動モータ122は、モータアセンブリ120内において縦置きで配置されている。縦置きとは、電動モータ122の出力軸123が上下方向に延伸する姿勢で配置された状態である。
【0043】
制御アッセンブリ500は、制御ケース502に、MCU(Motor Control Unit)510が収容されている。MCU510は、電動モータ122の回転等を制御する回路基板である。MCU510は、特許請求の範囲におけるモータ制御基板および制御基板の一例である。
【0044】
船外機本体110の内部構成は、さらに、冷却機構400を備えている。冷却機構は、熱交換器(図示しない)と、ポンプ410と、エア抜き420と、第1の冷媒管430と、第2の冷媒管432と、第3の冷媒管434と、第4の冷媒管436と、海水管(図示しない)とを有している。
【0045】
ウォーターポンプ140によって汲み上げられた海水は、海水管を介して熱交換器に送られ、再びに海に排出される。冷却水B(クーラント液)は、熱交換器で海水との熱交換により冷却され、第4の冷媒管436を介してポンプ410に送られる。ポンプ410は、冷却水Bを第1の冷媒管430に送り出す。送り出された冷却水Bは、第1の冷媒管430を介して制御ケース502に形成された冷却室Rに供給される。後述するように、冷却室Rは、MCU510の直下に配置されており、冷却室Rに供給された冷却水Bにより、MCU510が冷却される。なお、冷却水Bは、特許請求の範囲における冷媒の一例であり、例えば海水などでもよい。
【0046】
冷却室Rに供給された冷却水Bは、第2の冷媒管432に排出される。排出された冷却水Bは、第3の冷媒管434を介して熱交換器に戻る。第3の冷媒管434は、電動モータ122の周囲に配置されている。このため、第3の冷媒管434を通過する冷却水Bにより、電動モータ122が冷却される。また、第2の冷媒管432と第3の冷媒管434との連結部分には、エア抜き420が設けられている。エア抜き420は、第2の冷媒管432、第3の冷媒管434や、それらを通過する冷却水Bに含まれる空気を外部に抜く。
【0047】
A-3.MCU510を冷却するための構成:
図4は、MCU510の周辺構成を示す断面図であり、図5は、制御ケース502における冷却室Rの構成を示す上面図である。図4に示すように、MCU510は、矩形平板状の制御基板であり、制御ケース502内において水平方向に対して角度α(0度<α<90度)だけ傾斜した方向に沿って配置されている。なお、角度αは、例えば3度以上でもよいし、5度以上でもよいし、10度以上でもよいし、15度以上でもよいし、20度以上でもよいし、30度以上でもよい。また、角度αは、5度以下でもよいし、10度以下でもよいし、15度以下でもよいし、20度以下でもよいし、30度以下でもよい。制御ケース502は、特許請求の範囲におけるケースの一例である。
【0048】
制御ケース502のうち、MCU510と電動モータ122との間の部分には、冷却室Rが形成されている。冷却室Rは、略矩形扁平状の空間であり、MCU510側に開口している。冷却室Rは、MCU510と平行になるように傾斜している。MCU510の下には、ヒートシンク板530が配置されている。ヒートシンク板530は、矩形板状のベース532と、ベース532の下面533から突出する複数の突起534とを有している。ヒートシンク板530は、冷却室Rの上側開口を塞ぐように配置されている。すなわち、ベース532の下面533は、冷却室Rの天井面を構成している。ベース532の上面は、MCU510の下面の全体にわたって接触している。ヒートシンク板530も、MCU510と平行になるように傾斜している。
【0049】
冷却室Rには、供給口512と排出口514とが形成されている。排出口514の下端は、供給口512の下端よりも高い位置に位置している。すなわち、供給口512は、冷却室Rの最下端(図4等における冷却室Rの右端)に位置し、上記第1の冷媒管430内の流路に連通している。排出口514は、冷却室Rの最上端(図4等における冷却室Rの左端)に位置し、上記第2の冷媒管432内の流路に連通している。なお、第1の冷媒管430内の流路は、特許請求の範囲における供給流路の一例であり、第2の冷媒管432内の流路は、特許請求の範囲における排出流路の一例である。
【0050】
冷却室Rの天井面を構成するヒートシンク板530のベース532の下面533(突起534が形成されていない面)は、MCU510に沿うように水平方向に対して角度αだけ傾斜した方向に延びている。本実施形態では、冷却室Rの床面516も、MCU510に沿うように水平方向に対して角度αだけ傾斜した方向に延びている。すなわち、本実施形態では、ベース532の下面533と床面516とは、平行である。ベース532の下面533は、特許請求の範囲における第1の壁面の一例であり、床面516は、特許請求の範囲における第2の壁面の一例である。
【0051】
図5に示すように、第1の冷媒管430から冷却室Rへの冷却水Bの供給方向(右方向)と、冷却室Rから第2の冷媒管432への冷却水Bの排出方向(左方向)とは、互いに逆方向である。具体的には、供給口512と排出口514とは、いずれも、冷却室Rから動方向(左方向)に向かって開口している。そのため、第1の冷媒管430から供給される冷却水Bは、冷却室Rの右側壁に向かって流れ込む。一方、冷却室Rに供給された冷却水Bは、冷却室Rの左側壁に形成された排出口514に向かって流れ出る。これにより、第1の冷媒管430から冷却室Rへの冷却水Bの流れの勢いによる乱流を低減して冷却室Rから冷却水Bを排出しつつ、MCU510を効果的に冷却することができる。
【0052】
なお、冷却室Rには、第1の区画壁518と、第2の区画壁520とが形成されている。第1の区画壁518は、供給口512寄りの位置に配置され、供給口512が形成された内壁面(左側壁面)から第1の冷媒管430の供給方向に沿って冷却室Rの途中まで連続的に延びている。第1の冷媒管430から供給される冷却水Bは、第1の区画壁518によって冷却室Rの奥側(右側)まで案内される。冷却水Bが冷却室Rの奥側まで供給されるため、MCU510の全面を効果的に冷却することができる。
【0053】
第2の区画壁520は、排出口514寄りの位置に配置され、排出口514が形成された内壁面(左側壁面)から上記の供給方向に沿って冷却室Rの途中まで連続的に延びている。第2の区画壁520により、冷却室Rの奥側に行かずに排出される冷却水Bの量を低減することができる。第2の区画壁520の延伸長さは、第1の区画壁518の延伸長さよりも短い。このため、第2の区画壁520の存在に起因して冷却水Bが冷却室Rから排出され難くなることを抑制することができる。
【0054】
供給口512は、第1の冷媒管430における最上位置に位置している(図3および図4参照)。このため、第1の冷媒管430から冷却室Rに向かって順番に冷却水Bが満たされる。従って、例えば供給口512が第1の冷媒管430における最上位置に位置していない構成に比べて、冷却室R内を冷却水Bで円滑に満たすことができる。
【0055】
排出口514は、第2の冷媒管432における最下位置に位置している。このため、冷却室Rに冷却水Bが十分に満たされないまま冷却水Bが第2の冷媒管432に排出されることが抑制される。従って、例えば排出口が排出流路における最下位置に位置していない構成に比べて、冷却室内におけるエア抜きを円滑に行うことができる。
【0056】
なお、本明細書において、前後方向に延びる軸線や部材等は、必ずしも前後方向と平行である必要はない。前後方向に延びる軸線や部材とは、前後方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸線や部材を含む。同様に、上下方向に延びる軸線や部材とは、上下方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸線や部材を含み、左右方向に延びる軸線や部材とは、左右方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸線や部材を含む。
【0057】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0058】
上記実施形態の船舶10や船外機100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、ドライブシャフト133が出力軸123よりも前方に配置されているが、ドライブシャフト133が出力軸123よりも後前方に配置されていてもよい。また、上記実施形態では、駆動源として、出力軸123が上下方向に沿って配置された電動モータ122を例示したが、出力軸123が上下方向以外の方向(例えば水平方向)に沿って配置された電動モータでもよいし、エンジン等の内燃機関でもよい。
【0059】
上記実施形態では、制御基板として、MCU510を例示したが、電動モータ122以外の構成品を制御する基板でもよい。また、制御基板は、電動モータ122の近傍に配置されていなくてもよい。上記実施形態では、ヒートシンク板530の下面533は、MCU510の下面に平行であったが、非平行でもよい。また、上記実施形態では、ベース532の下面533と床面516とは平行であったが、非平行でもよい。制御基板(モータ制御基板)の第1の壁面(ヒートシンク板530の下面533)は、平坦面でもよいし、凹凸や曲面を有しても良い。要するに、第1の壁面は、全体として、制御基板に沿って延びていればよい。
【0060】
上記実施形態において、供給流路(第1の冷媒管430)から冷却室Rへの冷媒Bの供給方向と、冷却室Rから排出流路(第2の冷媒管432)への冷媒Bの排出方向とが、互いに同じ向でもよいし、交差する方向でもよい。また、上記実施形態において、供給口512が供給流路における最上位置に位置していない構成や、排出口514が排出流路における最下位置に位置していない構成でもよい。上記実施形態において、冷却室Rに第1の区画壁518と第2の区画壁520との少なくとも一方が形成されていない構成でもよい。
【0061】
上記実施形態では、MCU510は、水平方向に対して角度α(0度<α<90度)だけ傾斜した方向に沿って配置されていたが、これに限らず、例えばMCU510は、上下方向に沿って配置された構成でもよい。この場合、ヒートシンク板530のうち、冷却室R側の面も、MCU510に平行であることが好ましい。
【0062】
上記実施形態では、ケーシング116において、ロワーケース116bが回動自在となるようにアッパーケース116aに接続されているが、必ずしもロワーケース116bが回動自在である必要はない。また、ケーシング116は、アッパーケース116aとロワーケース116bとを有する必要はなく、1つの部材によって構成されていてもよい。
【0063】
上記実施形態では、船外機100は、被駆動機としてウォーターポンプ140を備えているが、ウォーターポンプ140を備えていなくてもよいし、ウォーターポンプ140の替わりに別の被駆動機を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10:船舶 100:船外機 110:船外機本体 112:プロペラ 114:カウル 114a:上部カウル 114b:下部カウル 116:ケーシング 116a:アッパーケース 116b:ロワーケース 120:モータアセンブリ 122:電動モータ 123:出力軸 130:伝達機構 133:ドライブシャフト 134:ポンプシャフト 137:プロペラ軸 138:ギヤ 140:ウォーターポンプ 150:懸架装置 152:クランプブラケット 152a:支持部 156:スイベルブラケット 160:チルト軸 200:船体 202:船体本体部 204:居住空間 206:空間 210:トランサム 220:仕切壁 240:操縦席 250:操縦装置 252:ステアリングホイール 254:シフト・スロットルレバー 255:ジョイスティック 256:モニタ 258:入力装置 300:ギヤボックスアセンブリ 400:冷却機構 410:ポンプ 420:エア抜き 430:第1の冷媒管 432:第2の冷媒管 434:第3の冷媒管 436:第4の冷媒管 500:制御アッセンブリ 502:制御ケース 510:MCU 512:供給口 514:排出口 516:床面 518:第1の区画壁 520:第2の区画壁 530:ヒートシンク板 532:ベース 533:下面 534:突起 B:冷却水 R:冷却室
図1
図2
図3
図4
図5