(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157678
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電磁石装置
(51)【国際特許分類】
H01F 7/18 20060101AFI20241031BHJP
H01F 7/123 20060101ALI20241031BHJP
H01H 47/22 20060101ALI20241031BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01F7/18 E
H01F7/123
H01H47/22 C
H01H9/54 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072173
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】松田 和久
【テーマコード(参考)】
5E048
5G034
5G057
【Fターム(参考)】
5E048AB04
5E048AC04
5E048AD07
5E048CB07
5G034AD07
5G057AA14
(57)【要約】
【課題】投入コイルのみに電流を流した際、保持コイルに生じた逆電流により保持コイルの両端電圧が高電圧となるのを抑制する電磁石装置を得る。
【解決手段】固定鉄芯に巻回され、通電による励磁により磁束を生成し電磁吸着力を発生させる投入コイルと、固定鉄芯に巻回され、通電による励磁により投入コイルと同一方向に磁束を生成し電磁吸着力を発生させる、投入コイルと直列接続された抵抗値が投入コイルよりも大きい保持コイルと、一端が投入コイルの巻き終わりと接続され、他端が保持コイルの巻き終わりと電源の負側との間に接続された第一スイッチと、保持コイルの巻き終わりと電源の負側との間に設けられた第二スイッチと、電圧閾値が予め設定され、電源が出力する電源電圧が電圧閾値を満たす場合に第二スイッチをオンにし、第二スイッチをオンにしたタイミングと同時またはそれ以降に第一スイッチをオンにする制御回路と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定鉄芯に巻回され、通電による励磁により磁束を生成し電磁吸着力を発生させる投入コイルと、
前記固定鉄芯に巻回され、通電による励磁により前記投入コイルと同一方向に磁束を生成し前記電磁吸着力を発生させる、前記投入コイルと直列接続された抵抗値が前記投入コイルよりも大きい保持コイルと、
一端が前記投入コイルの巻き終わりと接続され、他端が前記保持コイルの巻き終わりと電源の負側との間に接続された第一スイッチと、
前記保持コイルの巻き終わりと前記電源の負側との間に設けられた第二スイッチと、
電圧閾値が予め設定され、前記電源が出力する電源電圧が前記電圧閾値を満たす場合に前記第二スイッチをオンにし、前記第二スイッチをオンにしたタイミングと同時またはそれ以降に前記第一スイッチをオンにする制御回路と、
を備える電磁石装置。
【請求項2】
前記投入コイルの巻き終わりと前記保持コイルの巻き始まりとの間に直列接続して設けられた第一のダイオードと、
前記保持コイルの巻き始まりと前記投入コイルの巻き始まりとの間に直列接続して設けられた第二のダイオードと、
をさらに備える請求項1に記載の電磁石装置。
【請求項3】
前記第一のダイオードは、アノードが前記投入コイルの巻き終わり、カソードが前記保持コイルの巻き始まりと接続され、前記第二のダイオードは、アノードが前記保持コイルの巻き始まり、カソードが前記投入コイルの巻き始まりと接続されている請求項2に記載の電磁石装置。
【請求項4】
前記投入コイルおよび前記保持コイルの各々と並列接続されたフライホイールダイオードを備える請求項1に記載の電磁石装置。
【請求項5】
前記保持コイルと並列接続されたフライホイールダイオードを備える請求項2または3に記載の電磁石装置。
【請求項6】
前記保持コイルの巻き終わりと前記投入コイルの巻き始まりとの間に並列接続して設けられた第三のダイオードをさらに備える請求項2または3に記載の電磁石装置。
【請求項7】
前記第三のダイオードは、アノードが前記保持コイルの巻き終わりと接続され、カソードが前記投入コイルの巻き始まりと接続されている請求項6に記載の電磁石装置。
【請求項8】
前記投入コイルと並列接続して設けられたフライホイールダイオードと、
前記保持コイルの巻き終わりと前記投入コイルの巻き始まりとの間に並列接続して設けられた第三のダイオードと、
をさらに備える請求項1に記載の電磁石装置。
【請求項9】
前記保持コイルは、前記投入コイルよりもターン数が多い請求項1に記載の電磁石装置。
【請求項10】
前記保持コイルは、巻回方向が前記投入コイルの巻回方向と同じである請求項1に記載の電磁石装置。
【請求項11】
前記制御回路は、可動鉄心を前記固定鉄芯に吸着させるのに必要な時間である時間閾値が予め設定され、前記第一スイッチをオンにしてから前記時間閾値を超過した場合に前記第一スイッチをオフにし、前記第一スイッチをオフにしたタイミングと同時またはそれ以降に前記第二スイッチをオフにする請求項1に記載の電磁石装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁石装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁接触器などの可動鉄芯および固定鉄芯を有する機器では、磁性材料に銅線を巻いたコイルに電流を流すことにより生成される電磁吸着力を利用して可動鉄芯を固定鉄芯に吸着させる技術が用いられている。
【0003】
また近年では、電磁接触器の可動鉄芯を固定鉄芯に吸着させる電磁吸着力を生成する投入コイルと、可動鉄芯を固定鉄芯に吸着させた状態を保持する電磁吸着力を生成する吸着保持用の保持コイルとの2種類のコイルを用いることで、より安定して可動鉄芯を固定鉄芯に吸着させることを可能とする技術の開発が進んでいる。
【0004】
例えば特許文献1では、投入コイルおよび保持コイルの2種類のコイルを備え、吸着動作時は投入コイルのみに励磁電流を流し、吸着保持時は投入コイルおよび保持コイルに励磁電流を流す開閉装置の電磁操作装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記開閉装置の電磁操作装置は、吸着保持時において直列に接続された投入コイルおよび保持コイルに励磁電流を流すことで、開閉器の投入後における吸引状態を確実に保持することができる。一方で、吸着動作時はリミットスイッチを保持コイルと切り離し、投入コイルのみに電流を供給する。その際、保持コイルには投入コイルで生成した磁束を打ち消す方向に起電力が発生し、保持コイルの銅線の巻回方向とは逆向きの電流(以下、「逆電流」と称する)が流れるが、保持コイルとリミットスイッチとは切り離されているため、逆電流を逃がす先がなく保持コイルの両端電圧が高電圧となる。
【0007】
本開示は上述のような課題を解決するためになされたものであり、投入コイルのみに電流を流した際、保持コイルに生じた逆電流により保持コイルの両端電圧が高電圧となるのを抑制する電磁石装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示にかかる電磁石装置は、固定鉄芯に巻回され、通電による励磁により磁束を生成し電磁吸着力を発生させる投入コイルと、固定鉄芯に巻回され、通電による励磁により投入コイルと同一方向に磁束を生成し電磁吸着力を発生させる、投入コイルと直列接続された抵抗値が投入コイルよりも大きい保持コイルと、一端が投入コイルの巻き終わりと接続され、他端が保持コイルの巻き終わりと電源の負側との間に接続された第一スイッチと、保持コイルの巻き終わりと電源の負側との間に設けられた第二スイッチと、電圧閾値が予め設定され、電源が出力する電源電圧が電圧閾値を満たす場合に第二スイッチをオンにし、第二スイッチをオンにしたタイミングと同時またはそれ以降に第一スイッチをオンにする制御回路と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示の電磁石装置によれば、第一スイッチおよび第二スイッチが設けられ、制御回路が第一スイッチおよび第二スイッチのオンオフ制御を行うことにより、投入コイルのみに電流を流した際、保持コイルに生じた逆電流により保持コイルの両端電圧が高電圧となるのを抑制する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかる電磁石装置の構成図である。
【
図2】実施の形態1にかかる電磁石装置の時系列変化を示すタイミングチャートである。
【
図3】実施の形態1にかかる電磁石装置に含まれる電源の電源電圧の時系列変化を示す図である。
【
図4】実施の形態1にかかる電磁石装置に含まれる投入コイルの励磁電流の時系列変化を示す図である。
【
図5】実施の形態1にかかる電磁石装置に含まれる保持コイルの両端電圧の時系列変化を示す図である。
【
図6】実施の形態1にかかる電磁石装置に含まれる保持コイルの励磁電流の時系列変化を示す図である。
【
図7】実施の形態1にかかる電磁石装置に含まれる投入コイルおよび保持コイルにおけるアンペアターンの合算値の時系列変化を示す図である。
【
図8】実施の形態1にかかる電磁石装置の時刻t2における電流の流れを示す図である。
【
図9】実施の形態1にかかる電磁石装置の時刻t3における逆電流の流れを示す図である。
【
図10】実施の形態1にかかる電磁石装置の変形例を示す図である。
【
図11】実施の形態2にかかる電磁石装置の構成図である。
【
図12】実施の形態2にかかる電磁石装置の時系列変化を示すタイミングチャートである。
【
図13】実施の形態2にかかる電磁石装置に含まれる電源の電源電圧の時系列変化を示す図である。
【
図14】実施の形態2にかかる電磁石装置の投入コイルの励磁電流の時系列変化を示す図である。
【
図15】実施の形態2にかかる電磁石装置の保持コイルの両端電圧の時系列変化を示す図である。
【
図16】実施の形態2にかかる電磁石装置の保持コイルの励磁電流の時系列変化を示す図である。
【
図17】実施の形態2にかかる電磁石装置の投入コイルおよび保持コイルにおけるアンペアターンの合算値の時系列変化を示す図である。
【
図18】実施の形態2にかかる電磁石装置の時刻t2における電流の流れを示す図である。
【
図19】実施の形態2にかかる電磁石装置の時刻t3における逆電流の流れを示す図である。
【
図20】実施の形態3にかかる電磁石装置の概略図である。
【
図21】実施の形態3にかかる電磁石装置に含まれる第二スイッチをオフにした際、投入コイルに生じる励磁エネルギーに伴い流れる電流の流れる経路を説明する図である。
【
図22】実施の形態4にかかる電磁石装置の概略図である。
【
図23】実施の形態4にかかる電磁石装置に含まれる第二スイッチをオフにした際、投入コイルに生じる励磁エネルギーに伴い流れる電流の流れる経路を説明する図である。
【
図24】実施の形態4にかかる電磁石装置に含まれる第二スイッチをオフにした際、保持コイルに生じる励磁エネルギーに伴い流れる電流の流れる経路を説明する図である。
【
図25】実施の形態4にかかる電磁石装置の時刻t4以降の時系列変化を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は例示である。また、各実施の形態は、適宜組み合わせて実行することができる。また、以下の説明では区別する必要のある場合を除いて、電気的な接続と物理的な接続とを区別せずに「接続」と称して説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は本実施の形態にかかる電磁石装置の概略図である。
図2は本実施の形態にかかる電磁石装置のタイミングチャートである。
図3は本実施の形態にかかる電磁石装置に含まれる電源の電源電圧の時系列変化を示す図である。
図4は本実施の形態にかかる電磁石装置に含まれる投入コイルの励磁電流の時系列変化を示す図である。
図5は本実施の形態にかかる電磁石装置に含まれる保持コイルの両端電圧の時系列変化を示す図である。
図6は本実施の形態にかかる電磁石装置に含まれる保持コイルの励磁電流の時系列変化を示す図である。
図7は本実施の形態にかかる電磁石装置に含まれる投入コイルおよび保持コイルにおけるアンペアターンの合算値の時系列変化を示す図である。
図8は本実施の形態にかかる電磁石装置の時刻t2における電流の流れを示す図である。
図9は本実施の形態にかかる電磁石装置の時刻t3における逆電流の流れを示す図である。
図10は本実施の形態にかかる電磁石装置の変形例を示す図である。
【0013】
まず、
図1を用いて本実施の形態にかかる電磁石装置100の構成を説明する。なお、
図1に示す制御回路5と第一スイッチ6および第二スイッチ7各々とをつなぐ点線は、制御回路5が第一スイッチ6および第二スイッチ7を動作させる際に送る信号の経路である。また、投入コイル1および保持コイル2の矢印は、コイルの巻回方向を示している。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態にかかる電磁石装置100は、投入コイル1、保持コイル2、制御回路5、第一スイッチ6、第二スイッチ7、フライホイールダイオード8、9、ダイオード10および電源11を備えている。ここで、フライホイールダイオード8、9のように、投入コイル1および保持コイル2の各々と並列に接続され、電源11オフ後に励磁エネルギーに伴い流れる電流を循環させるために設けられたダイオードを一般的にフライホイールダイオードと呼ぶ。そのため、以下説明においてもフライホイールダイオード8、9と称して説明を行う。ただし、フライホイールダイオード8、9は、例えばダイオード10などと同じスイッチングダイオードであり、名称を変えて説明を行うに過ぎず物自体に相違ない。
【0015】
投入コイル1および保持コイル2は、固定鉄芯12に各々巻回され直列接続されている。
図1に示すように、投入コイル1および保持コイル2は巻回方向が同じであり、投入コイル1の巻き始まりは電源11の正極側と接続され、保持コイル2の巻き終わりは電源11の負極側と接続されている。
【0016】
したがって、直列接続された投入コイル1および保持コイル2に電流を流した場合、各々の固定鉄芯12には通電による励磁により同一方向の磁束が発生する。固定鉄芯12は、この発生した磁束による電磁吸着力により、図示を省略する可動鉄芯を吸着する。なお、投入コイル1、保持コイル2、固定鉄芯12および可動鉄芯は、図示を省略する電磁コイル内に配置されている。
【0017】
また、投入コイル1は、保持コイル2に比べてターン数が少ない。すなわち、投入コイル1は保持コイル2に比べて抵抗値が小さい。そのため、投入コイル1のみに電圧を印加した場合と、直列接続された投入コイル1および保持コイル2に電圧を印加した場合を比較すると、投入コイル1のみに電圧を印加した場合のほうが大きな電流が流れ、アンペアターンが大きくなる。したがって、吸着動作時には投入コイル1のみに電圧を印加することで、可動鉄芯の吸着に必要な電磁吸着力を得ることができる。なお、ここでいうアンペアターンとは、電流値およびターン数の積で表される、MKSA単位系における起磁力の単位のことである。
【0018】
図1に示すように、第一スイッチ6は一端が投入コイル1の巻き終わりと接続され、他端が保持コイル2の巻き終わりと電源11の負側との間に接続され設けられている。また、第二スイッチ7は保持コイル2の巻き終わりと電源11の負側との間に設けられている。具体的には、第二スイッチ7の一端は保持コイル2の巻き終わりと接続され、他端は電源11の負側と接続されている。ここで、電源11の負側とは電源11の負極側を指す。
【0019】
制御回路5は、第一スイッチ6および第二スイッチ7の切り替え動作を行う。なお、制御回路5を設ける位置は特に問わないが、例えば、第一スイッチ6および第二スイッチ7をオフにした際に、フライホイールダイオード8、9の逆回復時間内において逆起電力により生じるサージ電圧が印加されない位置に設けるのが望ましい。
【0020】
次に、制御回路5が行うオフからオンへの切り替え動作について説明する。制御回路5は、電磁石装置100が動作可能な電圧範囲であると判断するための電圧閾値が予め設定され、電源11が出力する電源電圧が電圧閾値を満たす場合に第二スイッチ7をオンにする。また、制御回路5は第二スイッチ7がオンになったタイミングと同時またはそれ以降のタイミングで第一スイッチ6をオンにする。すなわち、制御回路5が第一スイッチ6をオンにするタイミングは、第二スイッチ7をオンにするタイミングよりも前でなければよい。
【0021】
次に、制御回路5が行うオンからオフへの切り替え動作について説明する。制御回路5は、第一スイッチ6をオンにした後、可動鉄芯を固定鉄芯12に吸着させるのに必要な時間を超過した際に第一スイッチ6をオフにする。すなわち、制御回路5には可動鉄芯を固定鉄芯12に吸着させるのに必要な時間を時間閾値として予め設定され、制御回路5は時間閾値を超過した際に第一スイッチ6をオフにする。また、この状態から電源11の電圧が吸着保持に必要な電圧よりも低下した時、つまり吸着保持を中止するために電源11を意図的に停電させた場合、または意図せずに電源11の電圧が低下した場合は、制御回路5は第一スイッチ6をオフにするタイミングと同時またはそれ以降のタイミングで第二スイッチ7をオフにする。
【0022】
フライホイールダイオード8、9は、第二スイッチ7をオフにした際、投入コイル1および保持コイル2の各々に生じる励磁エネルギーに伴い流れる電流を循環させるものであり、投入コイル1および保持コイル2の各々と並列に接続されている。
図1に示すようにフライホイールダイオード8は投入コイル1と並列に接続され、フライホイールダイオード8のアノードは投入コイル1の巻き終わりと接続され、フライホイールダイオード8のカソードは投入コイル1の巻き始まりと接続されて設けられている。同様に、フライホイールダイオード9は保持コイル2と並列に接続され、フライホイールダイオード9のアノードは保持コイル2の巻き終わりと接続され、フライホイールダイオード9のカソードは保持コイル2の巻き始まりと接続されて設けられている。
【0023】
ダイオード10は、第一スイッチ6および第二スイッチ7をオフした際に、フライホイールダイオード8、9の逆回復時間内において逆起電力により生じるサージ電圧が電源11の正極側に印加されないように保護する目的で設けられている。すなわち、ダイオード10は
図1に示すように、ダイオード10のアノードは電源11の正極側と接続され、ダイオード10のカソードは投入コイル1の巻き始まりと接続されて設けられている。
【0024】
次に、電磁石装置100の動作について、
図2から
図9を用いて説明をする。なお、
図2にはタイミングチャートを図示し、
図2の(a)から(e)を各々分けて図示したものが
図3から
図7である。
図2から
図7は横軸を時間で表し、破線で示す波形が先行技術文献、実線で示す波形が本実施の形態を表している。ただし、
図3、4などに示すように破線と実線とに波形の差異がない場合には実線のみを図示している。
【0025】
図2に示すように、時刻t1において電源11をオンにし電源電圧が印加される。その後、時刻t2において、制御回路5は電源11により印加された電源電圧と予め設定された電圧閾値とを比較し、印加された電源電圧が電圧閾値を超過したと判断した場合、第二スイッチ7をオンにする。第二スイッチ7をオンにすると、励磁電流は
図8の破線の矢印で示すように、電源11、ダイオード10、投入コイル1、保持コイル2、第二スイッチ7の順に流れる。
【0026】
次に、時刻t3において制御回路5は第一スイッチ6をオンにすると、電源11の電源電圧がダイオード10を介して投入コイル1に印加され、投入コイル1には時刻t3以前に流れていた励磁電流よりも大きな励磁電流が流れる。これにより、可動鉄芯の吸着動作が開始する。
【0027】
可動鉄芯の吸着動作が開始すると、投入コイル1に生じた励磁電流により、保持コイル2には投入コイル1に生じた励磁電流とは逆向きの励磁電流すなわち逆電流が流れる。逆電流は、
図9の破線の矢印で示すように、第一スイッチ6、第二スイッチ7、保持コイル2をループして流れる。
【0028】
図2および
図4に示すように、時刻t3において第一スイッチ6がオンにされると、投入コイル1に流れる励磁電流は大きくなる。この励磁電流により、保持コイル2には投入コイル1で生成した磁束を打ち消す方向に起電力が発生し、逆電流が流れる。前述したように先行技術においては、逆電流を流すルートがなく滞留してしまうため、
図5に示すように保持コイル2の両端電圧が上昇し、高電圧となってしまう。一方で、本実施の形態にかかる電磁石装置100は、逆電流を流すルートが確保されているため、逆電流を滞留することなく流すことができる。それにより、保持コイル2に生じた逆電流により保持コイル2の両端電圧が高電圧となるのを抑制することができる。
【0029】
制御回路5は、可動鉄芯の吸着動作に必要な時間を超過した場合に第一スイッチ6をオフにする。具体的には、制御回路5には可動鉄芯の吸着動作が開始してから完了するまでに必要な時間が予め時間閾値として設定され、制御回路5は時間閾値を超過したと判断した場合に第一スイッチ6をオフにする。また、制御回路5は、第一スイッチ6をオフにしたタイミングと同時またはそれ以降のタイミングにおいて第二スイッチ7をオフにする。なお、第二スイッチ7をオフにするのは制御回路5に限らない。例えば、電源11が停電することにより第二スイッチ7をオフにしてもよい。
【0030】
以上より、本実施の形態にかかる電磁石装置100は、固定鉄芯12に巻回され、通電による励磁により磁束を生成し電磁吸着力を発生させる投入コイル1と、固定鉄芯12に巻回され、通電による励磁により投入コイル1と同一方向に磁束を生成し電磁吸着力を発生させる、投入コイル1と直列接続された抵抗値が投入コイル1よりも大きい保持コイル2と、一端が投入コイル1の巻き終わりと接続され、他端が保持コイル2の巻き終わりと電源11の負側との間に接続された第一スイッチ6と、保持コイル2の巻き終わりと電源11の負側との間に設けられた第二スイッチ7と、電圧閾値が予め設定され、電源11が出力する電源電圧が電圧閾値を満たす場合に第二スイッチ7をオンにし、第二スイッチ7をオンにしたタイミングと同時またはそれ以降に第一スイッチ6をオンにする制御回路5と、を備えている。この構成により、投入コイル1のみに電流を流した際、投入コイル1に流れる励磁電流の上昇に伴い保持コイル2に生じた起電力により、保持コイル2の両端電圧が高電圧となるのを抑制する効果を有する。
【0031】
なお本実施の形態では、例えば制御回路5は時刻t2において第二スイッチ7をオンにした後、時刻t3において第一スイッチ6をオンにするなど時刻t2と時刻t3との間に時間間隔を設けて説明を行ったが、第一スイッチ6および第二スイッチ7をオンにするタイミングは同時でもよい。また、第一スイッチ6および第二スイッチ7をオフにするタイミングも同時でもよい。
【0032】
また、本実施の形態では保持コイル2と並列に接続されたフライホイールダイオード9を示したが、例えば
図10に示すようにフライホイールダイオード9の代わりにダイオード13を設けてもよい。具体的には、ダイオード13はアノードが保持コイル2の巻き終わりと接続され、カソードが投入コイル1の巻き始まりと接続して設けるようにしてもよい。この場合でも、フライホイールダイオード9と同様の役割を担うことができる。
【0033】
実施の形態2.
本実施の形態は
図11から
図19を用いて説明をする。
図11は本実施の形態にかかる電磁石装置の概略図である。
図12は本実施の形態にかかる電磁石装置のタイミングチャートである。
図13は本実施の形態にかかる電磁石装置に含まれる電源の電源電圧の時系列変化を示す図である。
図14は本実施の形態にかかる電磁石装置に含まれる投入コイルの励磁電流の時系列変化を示す図である。
図15は本実施の形態にかかる電磁石装置に含まれる保持コイルの両端電圧の時系列変化を示す図である。
図16は本実施の形態にかかる電磁石装置に含まれる保持コイルの励磁電流の時系列変化を示す図である。
図17は本実施の形態にかかる電磁石装置に含まれる投入コイルおよび保持コイルにおけるアンペアターンの合算値の時系列変化を示す図である。
図18は本実施の形態にかかる電磁石装置の時刻t2における電流の流れを示す図である。
図19は本実施の形態にかかる電磁石装置の時刻t3における逆電流の流れを示す図である。
【0034】
実施の形態1では、直列接続された投入コイル1および保持コイル2、第一スイッチ6、第二スイッチ7および制御回路5を備え、制御回路5が第一スイッチ6および第二スイッチ7の切り替え制御を行うことで、保持コイル2に生じた逆電流が滞留することなく循環し保持コイル2の両端電圧が高電圧となるのを抑制することができる電磁石装置100を示した。実施の形態2では、ダイオード3、4が新たに設けられた電磁石装置101を示す。それ以外の構成は実施の形態1と同様であり、実施の形態1と同じ構成には同じ番号を付し、説明は省略する。
【0035】
本実施の形態にかかる電磁石装置101は、固定鉄芯12に巻回され、通電による励磁により磁束を生成し電磁吸着力を発生させる投入コイル1と、固定鉄芯12に巻回され、通電による励磁により投入コイル1と同一方向に磁束を生成し電磁吸着力を発生させる、投入コイル1と直列接続された抵抗値が投入コイル1よりも大きい保持コイル2と、一端が投入コイル1の巻き終わりと接続され、他端が保持コイル2の巻き終わりと電源11の負側との間に接続された第一スイッチ6と、保持コイル2の巻き終わりと電源11の負側との間に設けられた第二スイッチ7と、電圧閾値が予め設定され、電源11が出力する電源電圧が電圧閾値を満たす場合に第二スイッチ7をオンにし、第二スイッチ7をオンにしたタイミングと同時またはそれ以降に第一スイッチ6をオンにする制御回路5と、を備えている。この構成により、投入コイル1のみに電流を流した際、投入コイル1に流れる励磁電流の上昇に伴い保持コイル2に生じた逆電流により、保持コイル2の両端電圧が高電圧となるのを抑制する効果を有する。
【0036】
また、
図11に示すように電磁石装置101は、ダイオード3、4が設けられている。ダイオード3は、投入コイル1の巻き終わりと保持コイル2の巻き始まりとの間に直列接続して設けられている。具体的には、ダイオード3のアノードは投入コイル1の巻き終わりと接続され、ダイオード3のカソードは保持コイル2の巻き始まりと接続されている。
【0037】
ダイオード4は、保持コイル2の巻き始まりと投入コイル1の巻き始まりとの間に直列接続して設けられている。具体的には、ダイオード4のアノードは保持コイル2の巻き始まりと接続され、ダイオード4のカソードは投入コイル1の巻き始まりと接続されている。
【0038】
次に、電磁石装置101の動作について、
図12から
図19を用いて説明をする。なお、
図12にはタイミングチャートを図示し、
図12の(a)から(e)を各々分けて図示したものが
図13から
図17である。
図12から
図17は横軸を時間で表し、破線で示す波形が実施の形態1に示した電磁石装置100、実線で示す波形が本実施の形態に示す電磁石装置101を表している。ただし、
図13、14などに示すように破線と実線とに波形の差異がない場合には実線のみを図示している。
【0039】
図12に示すように、時刻t1において電源11をオンにし電源電圧が印加される。その後、時刻t2において、制御回路5は電源11により印加された電源電圧と予め設定された電圧閾値とを比較し、印加された電源電圧が電圧閾値を超過したと判断した場合、第二スイッチ7をオンにする。第二スイッチ7をオンにすると、励磁電流は
図18の破線の矢印で示すように、電源11、ダイオード10、投入コイル1、ダイオード3、保持コイル2、第二スイッチ7の順に流れる。
【0040】
次に、時刻t3において制御回路5は第一スイッチ6をオンにすると、電源11の電源電圧がダイオード10を介して投入コイル1に印加され、投入コイル1には時刻t3以前に流れていた励磁電流よりも大きな励磁電流が流れる。これにより、可動鉄芯の吸着動作が開始する。
【0041】
可動鉄芯の吸着動作が開始すると、投入コイル1に生じた励磁電流により、保持コイル2には投入コイル1に生じた励磁電流とは逆向きの励磁電流すなわち逆電流が流れる。逆電流は、
図19の破線の矢印で示すように、ダイオード4、投入コイル1、第一スイッチ6、第二スイッチ7、保持コイル2をループして流れる。なお、ダイオード3が設けられているため、逆電流が第二スイッチ7、保持コイル2、第一スイッチ6をループして流れることはない。
【0042】
図12および
図14に示すように、時刻t3において第一スイッチ6がオンにされると、投入コイル1に流れる励磁電流は大きくなる。この励磁電流により、保持コイル2には投入コイル1で生成した磁束を打ち消す方向に起電力が発生し、逆電流が流れる。本実施の形態にかかる電磁石装置101はダイオード3、4を設けることにより、逆電流を流す経路を確保することができる。それにより、保持コイル2に生じた逆電流により保持コイル2の両端電圧が高電圧となるのを抑制することができる。
【0043】
また、
図12および
図16に示すように、本実施の形態にかかる電磁石装置101は投入コイル1を経由するルートで逆電流が流れるが、逆電流は投入コイル1に励磁電流が流れ、その生成磁束による起電力で上昇する保持コイル2の巻き始まりの電圧が、ダイオード10のカソードの電圧にダイオード4の順方向電圧を足し合わせた電圧となる期間のみ流れる。そのため、実施の形態1にかかる電磁石装置100と比べて逆電流が流れる時間を短縮することができる。また、保持コイル2の両端電圧の上昇も抑えることができる。
【0044】
さらに、逆電流が流れる時間を短縮することにより、
図12および17に示すように、投入コイル1と保持コイル2のアンペアターンの合算値は、本実施の形態にかかる電磁石装置101のほうが実施の形態1にかかる電磁石装置100に比べて立ち上がりを早くすることができるため、可動鉄芯の吸着時間をより短くすることができる。
【0045】
制御回路5は、可動鉄芯の吸着動作に必要な時間を超過した場合に第一スイッチ6をオフにする。具体的には、制御回路5には可動鉄芯の吸着動作が開始してから完了するまでに必要な時間が予め時間閾値として設定され、制御回路5は時間閾値を超過したと判断した場合に第一スイッチ6をオフにする。また、制御回路5は、第一スイッチ6をオフにしたタイミングと同時またはそれ以降のタイミングにおいて第二スイッチ7をオフにする。
【0046】
以上より、本実施の形態にかかる電磁石装置101は、新たにダイオード3、4を備えている。本実施の形態にかかる電磁石装置101は、ダイオード3、4を備えることで、ダイオード4、投入コイル1、第一スイッチ6、第二スイッチ7、保持コイル2をループする経路を形成し、逆電流は滞留することなく流れる。したがって、この構成により、投入コイル1のみに電流を流した際、投入コイル1に流れる励磁電流の上昇に伴い保持コイル2に生じた逆電流起電力により、保持コイル2の両端電圧が高電圧となるのを抑制する効果を有する。
【0047】
また、本実施の形態にかかる電磁石装置101は、ダイオード3、4を備えることにより逆電流が流れる時間を短縮することができるため、保持コイル2の両端電圧の上昇を抑える効果に加えて、投入コイル1と保持コイル2のアンペアターンの合算値の立ち上がりを早くすることができるため、可動鉄芯の吸着時間をより短くすることができる。
【0048】
実施の形態3.
本実施の形態は
図20および
図21を用いて説明をする。
図20は本実施の形態にかかる電磁石装置の概略図である。
図21は本実施の形態にかかる電磁石装置に含まれる第二スイッチをオフにした際、投入コイルに生じる励磁エネルギーに伴い流れる電流の流れる経路を説明する図である。
【0049】
実施の形態2では、第二スイッチ7をオフにした際、投入コイル1および保持コイル2の各々に生じる励磁エネルギーに伴い流れる電流を循環させるためにフライホイールダイオード8、9を備えた電磁石装置101を示した。実施の形態3では、電磁石装置101よりフライホイールダイオード8を削除した電磁石装置102を示す。それ以外の構成は実施の形態2と同様であり、実施の形態2と同じ構成には同じ番号を付し、説明は省略する。
【0050】
本実施の形態にかかる電磁石装置102は、固定鉄芯12に巻回され、通電による励磁により磁束を生成し電磁吸着力を発生させる投入コイル1と、固定鉄芯12に巻回され、通電による励磁により投入コイル1と同一方向に磁束を生成し電磁吸着力を発生させる、投入コイル1と直列接続された抵抗値が投入コイル1よりも大きい保持コイル2と、一端が投入コイル1の巻き終わりと接続され、他端が保持コイル2の巻き終わりと電源11の負側との間に接続された第一スイッチ6と、保持コイル2の巻き終わりと電源11の負側との間に設けられた第二スイッチ7と、電圧閾値が予め設定され、電源11が出力する電源電圧が電圧閾値を満たす場合に第二スイッチ7をオンにし、第二スイッチ7をオンにしたタイミングと同時またはそれ以降に第一スイッチ6をオンにする制御回路5と、を備えている。この構成により、投入コイル1のみに電流を流した際、投入コイル1に流れる励磁電流の上昇に伴い保持コイル2に生じた起電力により、保持コイル2の両端電圧が高電圧となるのを抑制する効果を有する。
【0051】
ダイオード3、4は、可動鉄芯の吸着動作が完了し、制御回路5が第二スイッチ7をオフにした際、投入コイル1および保持コイル2の各々に生じる励磁エネルギーに伴い流れる電流を循環させる役割を担う。つまり、ダイオード3、4は、実施の形態2における電磁石装置101が備えるフライホイールダイオード8の役割を担い動作する。
【0052】
図21に示すように、制御回路5が第二スイッチ7をオフにした際、投入コイル1に生じる励磁エネルギーに伴い流れる電流は、破線の矢印で示すルートを循環して流れる。詳細には、投入コイル1に生じる励磁エネルギーに伴い流れる電流は、投入コイル1、ダイオード3、ダイオード4を循環して流れる。また、図示を省略するが、保持コイル2に生じる励磁エネルギーに伴い流れる電流は、保持コイル2、フライホイールダイオード9を循環して流れる。
【0053】
以上より、本実施の形態にかかる電磁石装置102はダイオード3、4を備えることで、フライホイールダイオード8の役割を代替する。したがって、フライホイールダイオード8を備える必要がなく、部品点数を減らすことができる。
【0054】
実施の形態4.
本実施の形態は
図22から
図25を主に用いて説明し、適宜
図21も用いて説明をする。
図22は本実施の形態にかかる電磁石装置の概略図である。
図23は本実施の形態にかかる電磁石装置に含まれる第二スイッチをオフにした際、投入コイルに生じる励磁エネルギーに伴い流れる電流の流れる経路を説明する図である。
図24は本実施の形態にかかる電磁石装置に含まれる第二スイッチをオフにした際、保持コイルに生じる励磁エネルギーに伴い流れる電流の流れる経路を説明する図である。
図25は本実施の形態にかかる電磁石装置の時刻t4以降の時系列変化を示すタイミングチャートである。
【0055】
実施の形態2では、第二スイッチ7をオフにした際、投入コイル1および保持コイル2の各々に生じる励磁エネルギーに伴い流れる電流を循環させるためにフライホイールダイオード8、9を備えた電磁石装置101を示した。実施の形態4では、フライホイールダイオード8、9を削除し、新たにダイオード13を設けた電磁石装置103を示す。それ以外の構成は実施の形態2と同様であり、実施の形態2と同じ構成には同じ番号を付し、説明は省略する。
【0056】
本実施の形態にかかる電磁石装置103は、固定鉄芯12に巻回され、通電による励磁により磁束を生成し電磁吸着力を発生させる投入コイル1と、固定鉄芯12に巻回され、通電による励磁により投入コイル1と同一方向に磁束を生成し電磁吸着力を発生させる、投入コイル1と直列接続された抵抗値が投入コイル1よりも大きい保持コイル2と、一端が投入コイル1の巻き終わりと接続され、他端が保持コイル2の巻き終わりと電源11の負側との間に接続された第一スイッチ6と、保持コイル2の巻き終わりと電源11の負側との間に設けられた第二スイッチ7と、電圧閾値が予め設定され、電源11が出力する電源電圧が電圧閾値を満たす場合に第二スイッチ7をオンにし、第二スイッチ7をオンにしたタイミングと同時またはそれ以降に第一スイッチ6をオンにする制御回路5と、を備えている。この構成により、投入コイル1のみに電流を流した際、投入コイル1に流れる励磁電流の上昇に伴い保持コイル2に生じた逆電流により、保持コイル2の両端電圧が高電圧となるのを抑制する効果を有する。
【0057】
また、本実施の形態にかかる電磁石装置103は、
図22に示すように実施の形態2にかかる電磁石装置101よりフライホイールダイオード8、9を削除し、新たにダイオード13を備えている。ダイオード13は、投入コイル1の巻き始まりと保持コイル2の巻き終わりとの間に並列接続して設けられている。具体的には、ダイオード13のアノードが保持コイル2の巻き終わりと接続され、ダイオード13のカソードが投入コイル1の巻き始まりと接続され設けられている。
【0058】
可動鉄芯の吸着動作が完了し、制御回路5が第二スイッチ7をオフにした際、投入コイル1および保持コイル2の各々に生じる励磁エネルギーに伴い電流が発生する。その際、投入コイル1に生じる励磁エネルギーに伴い発生した電流は、
図23および
図24において破線の矢印で示す経路を循環して流れる。このように、投入コイル1に生じる励磁エネルギーに伴い発生した電流は、
図23に示す投入コイル1、ダイオード3、ダイオード4を循環する経路と、
図24に示す投入コイル1、ダイオード3、保持コイル2、ダイオード13を循環する経路の2通りの経路で流れる。
【0059】
次に
図25を用いて、実施の形態3にかかる電磁石装置102および本実施の形態にかかる電磁石装置103の時刻t4以降のタイミングチャートを比較する。
図25に示す(f)は電源11の電源電圧、(g)は投入コイル1の励磁電流、(h)は保持コイル2の励磁電流、(i)はアンペアターン合計値であり、横軸は時間である。ここで、時刻t4は第二スイッチ7がオフになった時点を指す。なお、
図25では時刻t4において電源11が停電し第二スイッチ7がオフとなっているが、電源11を停電する前に制御回路5が第二スイッチ7をオフにしてもよい。
【0060】
実施の形態3にかかる電磁石装置102において、投入コイル1に生じる励磁エネルギーに伴い発生した電流が流れる経路は
図21の破線の矢印に示す経路のみである。この場合、
図25の(g)に示すようにダイオード3の順方向電圧およびダイオード4の順方向電圧の合算値より、保持コイル2の励磁エネルギーにより発生する電圧が小さくなると、保持コイル2の電流が急激に流れなくなってしまう。一方で、本実施の形態にかかる電磁石装置103はダイオード13を設けることにより、投入コイル1に生じる励磁エネルギーに伴い発生した電流は、
図21の破線の矢印に示す経路とは別に
図24の破線の矢印に示す経路にも流れる。
【0061】
図24の破線の矢印に示す経路は、投入コイル1よりも抵抗値の大きい保持コイル2を経由するため保持コイル2の起電力などが補助となる。これにより、保持コイル2は経由せず投入コイル1を経由する
図21の破線の矢印に示す経路よりも電流が長時間循環して流れる。したがって、
図25の(g)に示すように本実施の形態にかかる電磁石装置103は、実施の形態3にかかる電磁石装置102に比べて、
図24の破線の矢印に示す経路にも流れるため、時間をかけて電流を流すことができ、通電時間を長く保つことができる。
【0062】
図25の(i)に示すように、投入コイル1および保持コイル2のアンペアターンの合算値は、時刻t4以降において投入コイル1に生じる励磁エネルギーに伴い発生した電流を長時間流すことができるため本実施の形態にかかる電磁石装置103のほうが実施の形態3にかかる電磁石装置102と比べて長時間維持しやすい。これにより、電源11の停電後もなるべく可動鉄芯の吸着保持が必要な装置などへの適用が可能となる。したがって、本実施の形態にかかる電磁石装置103は、例えば回路遮断器に用いられる不足電圧引きはずし装置において、電源電圧喪失後、0.5秒から3秒程度時延して引外しを行う時延動作型の不足電圧引きはずし装置などへの適用が好適である。
【0063】
以上より、本実施の形態の電磁石装置103によれば、保持コイル2の巻き終わりにアノードが接続され、投入コイル1の巻き始まりにカソードが接続されたダイオード13を設けたので、第二スイッチ7のオフ後に可動鉄心の吸着保持に必要なアンペアターンを維持しやすくなり、停電後もなるべく可動鉄芯の吸着保持が必要な装置への適用を行うことができる。
【0064】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0065】
(付記1)
固定鉄芯に巻回され、通電による励磁により磁束を生成し電磁吸着力を発生させる投入コイルと、
固定鉄芯に巻回され、通電による励磁により投入コイルと同一方向に磁束を生成し電磁吸着力を発生させる、投入コイルと直列接続された抵抗値が投入コイルよりも大きい保持コイルと、
一端が投入コイルの巻き終わりと接続され、他端が保持コイルの巻き終わりと電源の負側との間に接続された第一スイッチと、
保持コイルの巻き終わりと電源の負側との間に設けられた第二スイッチと、
電圧閾値が予め設定され、電源が出力する電源電圧が電圧閾値を満たす場合に第二スイッチをオンにし、第二スイッチをオンにしたタイミングと同時またはそれ以降に第一スイッチをオンにする制御回路と、
を備える電磁石装置。
(付記2)
投入コイルの巻き終わりと保持コイルの巻き始まりとの間に直列接続して設けられた第一のダイオードと、
保持コイルの巻き始まりと投入コイルの巻き始まりとの間に直列接続して設けられた第二のダイオードと、
をさらに備える付記1に記載の電磁石装置。
(付記3)
第一のダイオードは、アノードが投入コイルの巻き終わり、カソードが保持コイルの巻き始まりと接続され、第二のダイオードは、アノードが保持コイルの巻き始まり、カソードが投入コイルの巻き始まりと接続されている付記2に記載の電磁石装置。
(付記4)
投入コイルおよび保持コイルの各々と並列接続されたフライホイールダイオードを備える付記1から3のいずれか一項に記載の電磁石装置。
(付記5)
保持コイルと並列接続されたフライホイールダイオードを備える付記2または3に記載の電磁石装置。
(付記6)
保持コイルの巻き終わりと投入コイルの巻き始まりとの間に並列接続して設けられた第三のダイオードをさらに備える付記2または3に記載の電磁石装置。
(付記7)
第三のダイオードは、アノードが保持コイルの巻き終わりと接続され、カソードが投入コイルの巻き始まりと接続されている付記6に記載の電磁石装置。
(付記8)
投入コイルと並列接続して設けられたフライホイールダイオードと、
保持コイルの巻き終わりと投入コイルの巻き始まりとの間に並列接続して設けられた第三のダイオードと、
をさらに備える付記1に記載の電磁石装置。
(付記9)
保持コイルは、投入コイルよりもターン数が多い付記1から8のいずれか一項に記載の電磁石装置。
(付記10)
保持コイルは、巻回方向が前記投入コイルの巻回方向と同じである付記1から9のいずれか一項に記載の電磁石装置。
(付記11)
制御回路は、可動鉄心を固定鉄芯に吸着させるのに必要な時間である時間閾値が予め設定され、第一スイッチをオンにしてから時間閾値を超過した場合に第一スイッチをオフにし、第一スイッチをオフにしたタイミングと同時またはそれ以降に第二スイッチをオフにする付記1から10のいずれか一項に記載の電磁石装置。
【符号の説明】
【0066】
100、101、102、103 電磁石装置、1 投入コイル、2 保持コイル、3、4、10、13 ダイオード、5 制御回路、6 第一スイッチ、7 第二スイッチ、8、9 フライホイールダイオード、11 電源、12 固定鉄芯