(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157683
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】調光装置、及び調光方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20241031BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/133 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072178
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 勇介
【テーマコード(参考)】
2H088
2H193
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA10
2H088HA02
2H088HA06
2H088JA03
2H088MA10
2H088MA20
2H193ZA27
2H193ZB51
2H193ZE38
2H193ZE40
2H193ZP03
2H193ZQ13
2H193ZR18
(57)【要約】
【課題】電力損失を低減することが可能な調光装置を提供する。
【解決手段】調光装置1は、複数の調光部材2の夫々の一方の端子で構成され、互いに接続された共通電極からなる第一端子群6Aに印加される中間電位よりも大きい第1電位の第1電圧と中間電位よりも小さい第2電位の第2電圧とを出力する電源部10と、複数の調光部材2の夫々の他方の端子で構成され、互いに分離された分離電極からなる第二端子群6Bに第1電圧を印加する第1状態、第二端子群6Bに第2電圧を印加する第2状態、及び第二端子群6Bへの第1電圧及び第2電圧の印加を停止する第3状態に切り替え可能な状態切替部30と、第3状態において、第二端子群6Bの電位が中間電位になるまで調光部材2に蓄えられた電荷を放電し、第1状態又は第2状態において、電荷の放電を停止する放電部50と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の調光部材の調光率を制御する調光装置であって、
複数の前記調光部材は、複数の前記調光部材の夫々の一方の端子で構成される第一端子群が互いに接続された共通電極で構成され、複数の前記調光部材の夫々の他方の端子で構成される第二端子群が互いに分離された複数の分離電極で構成されており、
前記第一端子群に印加される中間電位よりも大きい第1電位の第1電圧と前記中間電位よりも小さい第2電位の第2電圧とを出力する電源部と、
前記第二端子群に前記第1電圧を印加する第1状態、前記第二端子群に前記第2電圧を印加する第2状態、及び前記第二端子群への前記第1電圧及び前記第2電圧の印加を停止する第3状態に切り替え可能な状態切替部と、
前記第3状態において、前記第二端子群の電位が前記中間電位になるまで前記調光部材に蓄えられた電荷を放電し、前記第1状態又は前記第2状態において、前記電荷の放電を停止する放電部と、
を備える調光装置。
【請求項2】
前記放電部は、前記第3状態になる直前に前記第二端子群に前記第1電圧が印加されていた場合は前記第2電位に基づいて前記電荷を放電し、前記第3状態になる直前に前記第二端子群に前記第2電圧が印加されていた場合は前記第1電位に基づいて前記電荷を放電する請求項1に記載の調光装置。
【請求項3】
前記状態切替部は、前記第1状態及び前記第2状態の夫々において、前記調光部材の前記調光率に応じて前記第1電圧及び前記第2電圧の夫々を印加する時間を変更する請求項1又は2に記載の調光装置。
【請求項4】
複数の調光部材の調光率の制御をコンピュータが行う調光方法であって、
複数の前記調光部材は、複数の前記調光部材の夫々の一方の端子で構成される第一端子群が互いに接続された共通電極で構成され、複数の前記調光部材の夫々の他方の端子で構成される第二端子群が互いに分離された複数の分離電極で構成されており、
前記第一端子群に印加される中間電位よりも大きい第1電位の第1電圧と前記中間電位よりも小さい第2電位の第2電圧とを切り替えて電源部から出力する出力ステップと、
前記第二端子群に前記第1電圧を印加する第1状態、前記第二端子群に前記第2電圧を印加する第2状態、及び前記第二端子群への前記第1電圧及び前記第2電圧の印加を停止する第3状態のいずれかに切り替える状態切替ステップと、
前記第3状態において、前記第二端子群の電位が前記中間電位になるまで前記調光部材に蓄えられた電荷を放電し、前記第1状態又は前記第2状態において、前記電荷の放電を停止する放電ステップと、
を含む調光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光部材の調光率を制御する調光装置、及びそのような調光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光が入射される部分における光の透過率を制御する技術が利用されてきた。このような技術として、例えば下記に出典を示す特許文献1及び2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、調光部材について記載されている。この調光部材は、第1電極層と第2電極層とを備えており、第1電極層は複数の電極領域に分かれて配置されている。また、第2電極層は分割されずに一つの電極領域として構成されている。
【0004】
また、特許文献2には、交流電圧により駆動される調光装置について記載されている。この調光装置は、調光層と当該調光層を挟む一対の透明電極層とを有する調光部を備えている。この調光部の一対の透明電極層に亘って、抵抗器が設けられている。これにより、調光部への交流電圧の印加が停止された場合に、透明電極層に残存する電荷を放電している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-184044号公報
【特許文献2】特開2020-3604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の調光部材では、第1電極層は複数の電極領域に分割されており、第2電極層は分割されずに共通の電極となっている。しかしながら、この特許文献1は、互いに隣接する電極同士間でのショート発生を抑制することを目的としており、複数に分割された電極領域に対して、調光率を制御することは想定されていない。
【0007】
また、特許文献2に記載の調光装置では、上述したように調光部への交流電圧の印加が停止された場合に、調光層の一対の透明電極層に接続された抵抗器により、調光層に残存する電荷を放電し、調光率制御の応答性を高めている。例えば、電荷をより早く放電するには抵抗器に流れる電流(放電電流)を大きくする必要がある(すなわち、抵抗器の抵抗値を小さくする必要がある)。しかしながら、この調光装置では、調光部への交流電圧の印加時においても抵抗器に電流が流れるので電力損失が増大する(常時、電力損失が生じている)。このため、電力損失を低減する上で、抵抗器の抵抗値を小さくするには限界があり、最適な構成とは言い難い。
【0008】
そこで、調光率制御の応答性を高めつつ、電力損失を低減することが可能な調光装置、及びそのような調光方法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る調光装置の構成は、複数の調光部材の調光率を制御する調光装置であって、複数の前記調光部材は、複数の前記調光部材の夫々の一方の端子で構成される第一端子群が互いに接続された共通電極で構成され、複数の前記調光部材の夫々の他方の端子で構成される第二端子群が互いに分離された複数の分離電極で構成されており、前記第一端子群に印加される中間電位よりも大きい第1電位の第1電圧と前記中間電位よりも小さい第2電位の第2電圧とを出力する電源部と、前記第二端子群に前記第1電圧を印加する第1状態、前記第二端子群に前記第2電圧を印加する第2状態、及び前記第二端子群への前記第1電圧及び前記第2電圧の印加を停止する第3状態に切り替え可能な状態切替部と、前記第3状態において、前記第二端子群の電位が前記中間電位になるまで前記調光部材に蓄えられた電荷を放電し、前記第1状態又は前記第2状態において、前記電荷の放電を停止する放電部と、を備えている点にある。
【0010】
このような構成とすれば、複数の調光部材における第二端子群に第1電圧を印加する第1状態、及び第二端子群に第2電圧を印加する第2状態では、電荷の放電を停止するので、電力損失を低減できる。また、第二端子群への第1電圧や第2電圧の印加を停止する第3状態においてのみ電荷を放電するので、電力損失を低減しつつ、放電を行うことが可能な調光装置を実現できる。更に、第3状態において、第1電位と第2電位との電位差を用いて急速に電荷の放電を行うことができるので、応答性を高め、電力損失の生じる期間を短縮することが可能となる。
【0011】
また、前記放電部は、前記第3状態になる直前に前記第二端子群に前記第1電圧が印加されていた場合は前記第2電位に基づいて前記電荷を放電し、前記第3状態になる直前に前記第二端子群に前記第2電圧が印加されていた場合は前記第1電位に基づいて前記電荷を放電すると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、第1電位と第2電位との電位差に基づいて、電荷を放電することができる。したがって、電荷の放電に要する時間を早めて、調光部材の応答性を向上することが可能となる。
【0013】
また、前記状態切替部は、前記第1状態及び前記第2状態の夫々において、前記調光部材の前記調光率に応じて前記第1電圧及び前記第2電圧の夫々を印加する時間を変更してもよい。
【0014】
このような構成とすれば、一方の端子と他方の端子とに亘って第1電圧及び第2電圧を印加する時間を変更することで、実質的に調光部材に与える電位差を変更することができる。したがって、複数の調光部材の夫々について、第1電圧や第2電圧を印加する時間を変更することで、調光部材毎に、調光率を制御することが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る調光方法の構成は、複数の調光部材の調光率の制御をコンピュータが行う調光方法であって、複数の前記調光部材は、複数の前記調光部材の夫々の一方の端子で構成される第一端子群が互いに接続された共通電極で構成され、複数の前記調光部材の夫々の他方の端子で構成される第二端子群が互いに分離された複数の分離電極で構成されており、前記第一端子群に印加される中間電位よりも大きい第1電位の第1電圧と前記中間電位よりも小さい第2電位の第2電圧とを切り替えて電源部から出力する出力ステップと、前記第二端子群に前記第1電圧を印加する第1状態、前記第二端子群に前記第2電圧を印加する第2状態、及び前記第二端子群への前記第1電圧及び前記第2電圧の印加を停止する第3状態のいずれかに切り替える状態切替ステップと、前記第3状態において、前記第二端子群の電位が前記中間電位になるまで前記調光部材に蓄えられた電荷を放電し、前記第1状態又は前記第2状態において、前記電荷の放電を停止する放電ステップと、を含む点にある。
【0016】
このような構成とすれば、複数の調光部材における第二端子群に第1電圧を印加する第1状態、及び第二端子群に第2電圧を印加する第2状態では、電荷の放電を停止するので、電力損失を低減できる。また、第二端子群への第1電圧や第2電圧の印加を停止する第3状態においてのみ電荷を放電するので、電力損失を低減しつつ、放電を行うことが可能な調光方法を実現できる。更に、第3状態において、第1電位と第2電位との電位差を用いて急速に電荷の放電を行うことができるので、応答性を高め、電力損失の生じる期間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】調光部材の端子間に生じる電圧の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る調光装置は、複数の調光部材の調光率を制御することができるように構成される。以下、本実施形態の調光装置1について説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0019】
図1には、調光装置1により調光率が変更可能である調光部材2を備えた車両3が示される。本実施形態では、車両3の屋根3Aに設けられるサンルーフに調光部材2が備えられている。
図1の例では、複数の調光部材2は、車両3の進行方向前側に設けられた第1調光部材2A、及び車両3の進行方向後側に設けられた第2調光部材2Bから構成される。以下の説明では、複数の調光部材2を、2つの調光部材2とし、また、第1調光部材2A、及び第2調光部材2Bを総称する場合には、調光部材2として説明する。
【0020】
調光部材2は、印加する交流電圧の振幅値に応じて全光線透過率、拡散光線透過率、平行線透過率、これらから算出される曇り率といった光学的特性を制御可能な、例えば高分子分散型液晶(PDLC:polymer dispersed liquid crystal)や高分子ネットワーク型液晶(PDLC:polymer network liquid crystal)を用いることが可能である。調光装置1は、このような調光部材2の調光率を変更して、車内に照射される透過光の拡散量を調整できるように構成される。ここで調光率とは、光の拡散度合いを調節する割合であって、例えば調光率が大きいと調光部材2を直進する平行線透過率が大きくなる為に透明になり、反対に透過率が小さいと調光部材2を直進する平行線透過率が少なくなる為に濁度が上がり不透明になる。したがって、調光率と平行線透過率とは、車両3の車内に照射される透過光の拡散量を調節する観点では、同じことを意味するものとする。
【0021】
図2は、調光装置1の構成を模式的に示した図である。
図2に示されるように、本実施形態の調光装置1は、電源部10と、電源制御部20と、状態切替部30と、状態切替制御部40と、放電部50と、放電制御部60とを備えて構成される。各機能部は、調光部材2の調光率を変更するために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。なお、
図2には、バッテリ5も示される。
【0022】
ここで、第1調光部材2A及び第2調光部材2Bは、夫々、2つの端子を有する。第1調光部材2A及び第2調光部材2Bの夫々の一方の端子で構成される端子群を第一端子群6Aとし、第1調光部材2A及び第2調光部材2Bの夫々の他方の端子で構成される端子群を第二端子群6Bとする。本実施形態では、第一端子群6Aが互いに接続された共通電極となっており、第二端子群6Bが互いに分離された分離電極となっている。したがって、第1調光部材2A及び第2調光部材2Bの夫々の一方の端子の電位は互いに等しくなり(同電位となり)、第1調光部材2A及び第2調光部材2Bの夫々の他方の端子の電位は互いに独立して設定することが可能となる。すなわち、第1調光部材2Aの一方の端子及び他方の端子の電位差と、第2調光部材2Bの一方の端子及び他方の端子の電位差とを、互いに独立して設定することが可能となる。本実施形態では、第一端子群6Aには中間電位が印加される。中間電位とは、後述する第1電位と第2電位との間の電位である。本実施形態では、第1電位は正の電位であり、第2電位は負の電位である。例えば、中間電位は、第1電位と第2電位に対する絶対値が等しくなる電位、すなわち第1電位と第2電位の中点にあたる電位とすることが可能である。以下では、中間電位が第1電位と第2電位の中点となる電位であるとして説明する。
【0023】
電源部10は、2つの調光部材2の夫々に印加する印加電圧を出力する。電源部10は、中間電位よりも大きい第1電位の第1電圧と、中間電位よりも小さい第2電位の第2電圧とを出力する。
【0024】
本実施形態では、このような電源部10として、絶縁型のトランスTを用いたコンバータが利用される。トランスTの一次コイルの一端はバッテリ5に接続され、他端はスイッチング素子10Qを介して接地される。スイッチング素子10Qは、例えばN型MOS-FET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)が用いられ、この場合には、ドレイン端子がトランスTの一次コイルの他端に接続され、ソース端子が接地される。ゲート端子は、電源制御部20に接続される。一次コイルの一端と接地電位との間に、平滑用のコンデンサCが設けられる。トランスTの二次コイルの一方の端子には、アノード端子が接続された第1ダイオードD1と、カソード端子が接続された第2ダイオードD2とが設けられる。トランスTの二次コイルの他方の端子は中間電位に接続される。また、第1ダイオードD1のカソード端子と中間電位との間には平滑用のコンデンサC2が設けられ、第2ダイオードD2のアノード端子と中間電位との間には平滑用のコンデンサC3が設けられる。
【0025】
電源制御部20は、電源部10のスイッチング素子10Qを駆動する。電源制御部20は、スイッチング素子10Qを、所定の周期で閉状態と開状態とに切り替えるように駆動する。これにより、トランスTの巻き数比及びスイッチング素子10Qの通電状態に応じて電源部10から第1電圧と第2電圧とを出力することが可能となる。第1電圧は、第1ダイオードD1のカソード端子から出力され、中間電位から見たカソード端子の電位である第1電位の電圧に相当する。また、第2電圧は、第2ダイオードD2のアノード端子から出力され、中間電位から見たアノード端子の電位である第2電位の電圧に相当する。
【0026】
状態切替部30は、上述した第二端子群6Bに第1電圧を印加する第1状態、第二端子群6Bに第2電圧を印加する第2状態、及び第二端子群6Bへの第1電圧及び第2電圧の印加を停止する第3状態に切り替え可能に構成される。
【0027】
状態切替部30は、調光部材2の数に対応して設けられる。本実施形態では、調光装置1は、2つの調光部材2の調光率を制御する。したがって、2つの状態切替部30が設けられる。2つの状態切替部30の夫々は、同様に構成されているので、ここでは総称して説明する。
【0028】
状態切替部30は、第1ダイオードD1と第2ダイオードD2との間に亘って、直列に接続されたハイサイドのスイッチング素子QHとローサイドのスイッチング素子QLとを有する。本実施形態では、スイッチング素子QH及びスイッチング素子QLは、N型MOS-FETが用いられる。スイッチング素子QHのドレイン端子は第1ダイオードD1のカソード端子に接続され、スイッチング素子QHのソース端子はスイッチング素子QLのドレイン端子に接続される。スイッチング素子QLのソース端子は第2ダイオードD2のアノード端子に接続される。スイッチング素子QH及びスイッチング素子QLの夫々のドレイン端子とソース端子とに亘って、ダイオードQDが設けられる。ダイオードQDは、カソード端子がドレイン端子に接続され、アノード端子がソース端子に接続される。スイッチング素子QH及びスイッチング素子QLのゲート端子は、状態切替制御部40に接続される。
【0029】
状態切替制御部40は、第二端子群6Bに第1電圧を印加する場合には、スイッチング素子QHを閉状態にし、スイッチング素子QLを開状態にする。これにより、電源部10から接地電位よりも大きい第1電位の第1電圧が、スイッチング素子QHを介して第二端子群6Bに印加される。この場合には、第二端子群6Bから接地電位に接続された第一端子群6Aに電流が流れ、調光部材2に電荷が蓄えられる。この状態は、上述した第1状態に相当する。
【0030】
また、状態切替制御部40は、第二端子群6Bに第2電圧を印加する場合には、スイッチング素子QHを開状態にし、スイッチング素子QLを閉状態にする。これにより、電源部10から接地電位よりも小さい第2電位の第2電圧が、スイッチング素子QLを介して第二端子群6Bに印加される。この場合には、接地電位に接続された第一端子群6Aから第二端子群6Bに電流が流れ、調光部材2に電荷が蓄えられる。この状態は、上述した第2状態に相当する。
【0031】
更に、状態切替制御部40は、第二端子群6Bに第1電圧及び第2電圧の印加を停止する場合には、スイッチング素子QHを開状態にし、スイッチング素子QLを開状態にする。この場合には、第一端子群6Aと第二端子群6Bとの間には電流が流れない。この状態は、上述した第3状態に相当する。
【0032】
ここで、上述したように、第1状態及び第2状態では、調光部材2に電荷が蓄えられる。放電部50は、第3状態において、第二端子群6Bの電位が中間電位になるまで調光部材2に蓄えられた電荷を放電するように構成されている。なお、放電部50は、第1状態又は第2状態においては、電荷の放電を停止するように構成される。
【0033】
放電部50も、状態切替部30と同様に、調光部材2の数に対応して設けられる。本実施形態では、調光装置1は、2つの調光部材2の調光率を制御する。したがって、2つの放電部50が設けられる。2つの放電部50の夫々は、同様に構成されているので、ここでは総称して説明する。
【0034】
放電部50は、第二端子群6Bに一端が接続された放電抵抗Rを有する。放電抵抗Rの他端は、第1スイッチング素子Q51、及び第1放電ダイオードD51を介して第2ダイオードD2のアノード端子に接続される。また、放電抵抗Rの他端は、第2スイッチング素子Q52、及び第2放電ダイオードD52を介して第1ダイオードD1のカソード端子にも接続される。
【0035】
第1スイッチング素子Q51は、N型MOS-FETが用いられる。第1スイッチング素子Q51のドレイン端子は、放電抵抗Rの他端に接続され、ソース端子は第1放電ダイオードD51のアノード端子に接続される。第1放電ダイオードD51のカソード端子は第2ダイオードD2のアノード端子に接続される。
【0036】
また、第2スイッチング素子Q52も、N型MOS-FETが用いられる。第2スイッチング素子Q52のソース端子は、放電抵抗Rの他端に接続され、ドレイン端子は第2放電ダイオードD52のカソード端子に接続される。第2放電ダイオードD52のアノード端子は第1ダイオードD1のカソード端子に接続される。
【0037】
第1スイッチング素子Q51及び第2スイッチング素子Q52の夫々のドレイン端子とソース端子とに亘って、ダイオード51Dが設けられる。ダイオード51Dは、カソード端子がドレイン端子に接続され、アノード端子がソース端子に接続される。第1スイッチング素子Q51及び第2スイッチング素子Q52のゲート端子は、放電制御部60に接続される。
【0038】
放電制御部60は、放電部50に対して、第3状態になる直前に第二端子群6Bに第1電圧が印加されていた場合は第2電位に基づいて電荷を放電させる。第3状態になる直前に第二端子群6Bに第1電圧が印加されていた場合とは、第3状態になる直前の状態が第1状態であった場合を意味し、第1状態では、電源部10から接地電位よりも大きい第1電位の第1電圧が、スイッチング素子QHを介して第二端子群6Bに印加されている。この場合には、放電制御部60は、第1スイッチング素子Q51を閉状態にし、第2スイッチング素子Q52を開状態にする。これにより、直前の第1状態において第1電位が印加されていた第二端子群6Bに、放電抵抗R、第1スイッチング素子Q51、第1放電ダイオードD51を介して、第2電位の第2電圧が印加される。このとき、第一端子群6Aは接地電位が印加されている。したがって、このとき、調光部材2の第一端子群6Aと第二端子群6Bとの電位差は第2電位となり、この電位差に基づいて電荷が放電される。このように、放電制御部60が、第1スイッチング素子Q51を閉状態にし、第2スイッチング素子Q52を開状態にすると、第3状態になる直前の第1状態において、調光部材2に蓄えられた電荷が放電される。
【0039】
また、放電制御部60は、放電部50に対して、第3状態になる直前に第二端子群6Bに第2電圧が印加されていた場合は第1電位に基づいて電荷を放電させる。第3状態になる直前に第二端子群6Bに第2電圧が印加されていた場合とは、第3状態になる直前の状態が第2状態であった場合を意味し、第2状態では、電源部10から接地電位よりも小さい第2電位の第2電圧が、スイッチング素子QLを介して第二端子群6Bに印加されている。この場合には、放電制御部60は、第1スイッチング素子Q51を開状態にし、第2スイッチング素子Q52を閉状態にする。これにより、直前の第2状態において第2電位が印加されていた第二端子群6Bに、放電抵抗R、第2スイッチング素子Q52、第2放電ダイオードD52を介して、第1電位の第1電圧が印加される。このとき、第一端子群6Aは接地電位が印加されている。したがって、このとき、調光部材2の第一端子群6Aと第二端子群6Bとの電位差は第1電位となり、この電位差に基づいて電荷が放電される。このように、放電制御部60が、第1スイッチング素子Q51を開状態にし、第2スイッチング素子Q52を閉状態にすると、第3状態になる直前の第2状態において、調光部材2に蓄えられた電荷が放電される。
【0040】
図3は、調光部材2への充電時、及び調光部材2からの放電時における電流の流れを模式的に示した図である。
図3では、理解を容易にするために、
図2で示したダイオードや各種制御部は省略している。
【0041】
まず、調光部材2の調光率が所期の調光率となるように電源部10から第1電位の第1電圧を印加する。この場合には、
図3の(a)に示されるように、状態切替部30のスイッチング素子QHが閉状態にされる。これにより、調光部材2の第一端子群6Aと第二端子群6Bとに亘って、第1電圧が印加される。このとき、状態切替部30のスイッチング素子QL、放電部50の第1スイッチング素子Q51及び第2スイッチング素子Q52は開状態とされる。したがって、調光部材2に対して第1電位の第1電圧を印加している場合には、放電部50を介して電荷が放電されないので、電力損失の増大を抑制できる。
【0042】
次に、調光部材2に蓄えられた電荷を放電する場合には、
図3の(b)に示されるように、放電部50の第1スイッチング素子Q51が閉状態にされる。これにより、調光部材2に蓄えられた電荷が放電部50を介して放電される。このとき、状態切替部30のスイッチング素子QH及びスイッチング素子QL、放電部50の第2スイッチング素子Q52は開状態とされる。
【0043】
放電が完了すると、
図3の(c)に示されるように、状態切替部30のスイッチング素子QH及びスイッチング素子QLと、放電部50の第1スイッチング素子Q51及び第2スイッチング素子Q52とが開状態にされる。このとき、調光部材2の第一端子群6Aと第二端子群6Bとの電位差は零である。
【0044】
次に、調光部材2に電源部10から第2電位の第2電圧を印加する。この場合には、
図3の(d)に示されるように、状態切替部30のスイッチング素子QLが閉状態にされる。これにより、調光部材2の第一端子群6Aと第二端子群6Bとに亘って、第2電圧が印加される。このとき、状態切替部30のスイッチング素子QH、放電部50の第1スイッチング素子Q51及び第2スイッチング素子Q52は開状態とされる。したがって、調光部材2に対して第2電位の第2電圧を印加している場合には、放電部50を介して電荷が放電されないので、電力損失の増大を抑制できる。
【0045】
次に、調光部材2に蓄えられた電荷を放電する場合には、
図3の(e)に示されるように、放電部50の第2スイッチング素子Q52が閉状態にされる。これにより、調光部材2に蓄えられた電荷が放電部50を介して放電される。このとき、状態切替部30のスイッチング素子QH及びスイッチング素子QL、放電部50の第1スイッチング素子Q51は開状態とされる。
【0046】
放電が完了すると、
図3の(f)に示されるように、状態切替部30のスイッチング素子QH及びスイッチング素子QLと、放電部50の第1スイッチング素子Q51及び第2スイッチング素子Q52とが開状態にされる。このとき、調光部材2の第一端子群6Aと第二端子群6Bとの電位差は零である。
【0047】
以上のように、調光装置1は、状態切替部30のスイッチング素子QH及びスイッチング素子QLの開閉状態と、放電部50の第1スイッチング素子Q51及び第2スイッチング素子Q52の開閉状態とを制御する。
【0048】
図4の(a)には、状態切替部30のスイッチング素子QH及びスイッチング素子QLを、100%のオンDUTYで駆動した場合の第二端子群6Bの電圧波形が示される。
図4の(a)の例では、縦軸を第二端子群6Bの電圧とし、横軸を時間としている。t1からt3までが、調光部材2の状態を切り替える切替制御上の1周期にあたる。t1からt2までの間は、
図3の(a)で示される第1状態とされ、t2からt3までの間は、
図3の(d)で示される第2状態とされる。この場合には、
図3の(b)や、
図3の(e)のような放電部50による調光部材2の電荷の放電は行われない。
【0049】
図4の(b)には、状態切替部30のスイッチング素子QH及びスイッチング素子QLを、50%のオンDUTYで駆動した場合の第二端子群6Bの電圧波形が示される。この場合には、t11からt17までが、調光部材2の状態を切り替える切替制御上の1周期にあたる。t11からt12までの間は、
図3の(a)で示される第1状態とされ、t12からt13までの間は、放電部50により調光部材2の電荷が放電される。放電後、t13からt14の間は、
図3の(c)で示されるように、状態切替部30のスイッチング素子QH及びスイッチング素子QLと、放電部50の第1スイッチング素子Q51及び第2スイッチング素子Q52とが開状態にされる。t14からt15までの間は、
図3の(d)で示される第2状態とされ、t15からt16までの間は、放電部50により調光部材2の電荷が放電される。放電後、t16からt17の間は、
図3の(f)で示されるように、状態切替部30のスイッチング素子QH及びスイッチング素子QLと、放電部50の第1スイッチング素子Q51及び第2スイッチング素子Q52とが開状態にされる。
【0050】
説明は省略するが、状態切替部30のスイッチング素子QH及びスイッチング素子QLを、25%のオンDUTYで駆動した場合の電圧波形が、
図4の(c)に示され、状態切替部30のスイッチング素子QH及びスイッチング素子QLを、12.5%のオンDUTYで駆動した場合の電圧波形が、
図4の(d)に示される。
図4の(c)の場合には、t21からt27までが、調光部材2の状態を切り替える切替制御上の1周期にあたり、
図4の(d)の場合には、t31からt37までが、調光部材2の状態を切り替える切替制御上の1周期にあたる。
【0051】
上述したように、本実施形態では第二端子群6Bが共通電極となっている。また、調光装置1には、単一の電源部10が設けられている。このため、第1調光部材2Aと第2調光部材2Bとの夫々の調光率を互いに異ならせたい場合でも、第1調光部材2Aの他方の電極と、第2調光部材2Bの他方の電極とに、夫々互いに異なる電圧値(第1電圧及び第2電圧)を印加することができない。そこで、本実施形態では、状態切替制御部40は、状態切替部30に対して、第1状態及び第2状態の夫々において、調光部材2の調光率に応じて第1電圧及び第2電圧の夫々を印加する時間を変更するとよい。第1電圧及び第2電圧の夫々を印加する時間を変更するとは、上述したように、状態切替部30のスイッチング素子QH及びスイッチング素子QLの夫々に対する、オンDUTYを変更することを意味する。これにより、調光部材2に印加する電圧の電圧値を、実質的に変更することができ、所期の調光率を実現することが可能となる。
【0052】
以上のように、本調光装置1によれば、調光装置1に所定の電圧値の電圧を印加すると共に、当該電圧を印加していない場合において、調光部材2に蓄えられた電荷を放電することが可能となる。上述した調光装置1の制御は、2つの調光部材2の調光率の制御をコンピュータが行う調光方法として規定することも可能である。
【0053】
まず、電源部10から、中間電位よりも大きい第1電位の第1電圧と中間電位よりも小さい第2電位の第2電圧とを切り替えて出力する。このような電源部10から第1電圧と第2電圧とを切り替えて出力する制御は、上述した調光方法における出力ステップに相当する。
【0054】
また、状態切替部30が、第二端子群6Bに第1電圧を印加する第1状態、第二端子群6Bに第2電圧を印加する第2状態、及び第二端子群6Bへの第1電圧及び第2電圧の印加を停止する第3状態のいずれかに切り替える。このような状態切替部30が、第1状態、第2状態、及び第3状態のいずれかに切り替える制御は、上述した調光方法における状態切替ステップに相当する。
【0055】
更に、放電部50が、第3状態において、第二端子群6Bの電位が中間電位になるまで調光部材2に蓄えられた電荷を放電し、第1状態又は第2状態において、電荷の放電を停止する。このような放電部50が、第3状態において電荷を放電し、第1状態及び第2状態において電荷の放電を停止する制御は、上述した調光方法における放電ステップに相当する。
【0056】
調光装置1は、このような調光方法によって、2つの調光部材2の調光率を変更し、また、調光部材2に蓄えられた電荷を放電することが可能となる。
【0057】
上記実施形態では、複数の調光部材2として、2つの調光部材2を例に挙げて説明した。しかしながら、複数の調光部材2は、3つ以上であってもよい。この場合には、状態切替部30及び放電部50も、調光部材2の個数に応じて設けるとよい。
【0058】
上記実施形態では、放電部50は、第3状態になる直前に第二端子群6Bに第1電圧が印加されていた場合は第2電位に基づいて電荷を放電し、第3状態になる直前に第二端子群6Bに第2電圧が印加されていた場合は第1電位に基づいて電荷を放電するとして説明した。しかしながら、放電部50は、第3状態になる直前に第二端子群6Bに第1電圧が印加されていた場合は第1電位に基づいて電荷を放電し、第3状態になる直前に第二端子群6Bに第2電圧が印加されていた場合は第2電位に基づいて電荷を放電するように構成することも可能である。また、放電部50は、第1電位及び第2電位の双方に基づいて電荷を放電するように構成することも可能である。
【0059】
上記実施形態では、第一端子群6Aが分離電極であり、第二端子群6Bが共通電極であるとして説明した。しかしながら、第一端子群6Aを共通電極とし、第二端子群6Bを分離電極として構成することも可能である。
【0060】
また、調光部材2の一方の端子の夫々と他方の端子の夫々とは、互いに分離して構成することも可能である。すなわち、第一端子群6Aを分離電極とし、第二端子群6Bを分離電極として構成することも可能である。この場合には、電源部10から出力される第1電圧及び第2電圧は、調光部材2の調光率に応じて第1電位及び第2電位を設定すると好適である。このような構成であっても、複数の調光部材2の夫々の調光率を制御することが可能である。
【0061】
上記実施形態では、中間電位が第1電位と第2電位の中点となる電位であるとして説明したが、中間電位は、第1電位より小さく、且つ、第2電位よりも大きければ、中点となる電位でなくてもよい。
【0062】
上記実施形態では、電源部10として絶縁型のトランスTを用いたコンバータが利用されるとして説明したが、電源部10は基準電位を有する正負両電位の出力が可能な構成であれば、絶縁型のトランスTを用いたコンバータでなくてもよい。すなわち、電源部10は、非絶縁型のコンバータ(例えば、チョッパ型の電源など)であってもよい。
【0063】
本発明は、調光部材の調光率を制御する調光装置、及びそのような調光方法に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1:調光装置
2:調光部材
6A:第一端子群
6B:第二端子群
10:電源部
30:状態切替部
50:放電部