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特開2024-157703盛土材料の掘削・採取方法、盛土材料の掘削・採取システム、及び、掘削機械
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  • 特開-盛土材料の掘削・採取方法、盛土材料の掘削・採取システム、及び、掘削機械 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157703
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】盛土材料の掘削・採取方法、盛土材料の掘削・採取システム、及び、掘削機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20241031BHJP
   E02D 17/18 20060101ALI20241031BHJP
   E02F 1/00 20060101ALI20241031BHJP
   G01C 15/00 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02D17/18 Z
E02F1/00
G01C15/00 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072218
(22)【出願日】2023-04-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (刊行物1) ▲1▼ 開催日 令和4年10月14日 ▲2▼ 集会名、開催場所 令和4年度 日本応用地質学会 研究発表会 関西大学千里山キャンパス100周年記念会館 ・オンライン開催(大阪府吹田市山手町3丁目3-35) ▲3▼ 公開者 中島 亮、中須賀 大樹、石濱 茂崇、天下井 哲生 ▲4▼ 公開の内容 「フィルダムにおける3次元地質・土質モデルを活用したBIM/CIMの実施」 (刊行物2) ▲1▼ 発行日 令和4年10月8日 ▲2▼ 刊行物 令和4年度 日本応用地質学会 研究発表会講演論文集 第99頁~第100頁 一般社団法人 日本応用地質学会 ▲3▼ 公開者 中島 亮、中須賀 大樹、石濱 茂崇、天下井 哲生 ▲4▼ 公開の内容 「フィルダムにおける3次元地質・土質モデルを活用したBIM/CIMの実施」 (刊行物3) ▲1▼ 開催日 令和4年10月6日 ▲2▼ 集会名、開催場所 2022年度全国土木技術発表会 株式会社熊谷組本社(大会議室) ・オンライン開催(東京都新宿区津久戸町2番1号) ▲3▼ 公開者 中島 亮 ▲4▼ 公開の内容 「フィルダムの施工における地質・土質モデルの活用」 (刊行物4) ▲1▼ 発行日 令和4年9月27日 ▲2▼ 刊行物 2022年度全国土木技術発表会 概要集 第5頁~第8頁 株式会社熊谷組 土木事業本部 ▲3▼公開者 中島 亮 ▲4▼ 公開の内容 「フィルダムの施工における地質・土質モデルの活用」
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】中島 亮
(72)【発明者】
【氏名】中須賀 大樹
(72)【発明者】
【氏名】片山 政弘
(72)【発明者】
【氏名】石濱 茂崇
(72)【発明者】
【氏名】天下井 哲生
【テーマコード(参考)】
2D015
2D044
【Fターム(参考)】
2D015HA03
2D015HB04
2D015HB05
2D044CA00
(57)【要約】
【課題】設計形状の掘削を行いながら、盛土材料を効率的にかつ確実に分別して掘削・採取する。
【解決手段】施工現場の3次元地形データと3次元地質データとから3次元地質モデルを生成するとともに、前記3次元地質モデルと予め設定した材料毎の採取量とから、施工現場の掘削形状の3次元設計形状である設計掘削形状を設定した後、前記3次元地質モデルと前記設計掘削形状とを合成した合成掘削形状を作成し、この合成掘削形状と別途検出した掘削機械の現在位置とから、前記掘削機械の現在位置から測った、現在掘削している地質の層の深さを算出し、前記算出された地層の深さに基づいて、前記地質の層を掘削するようにした。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工現場の3次元地形データと3次元地質データとから3次元地質モデルを生成するステップと、
前記3次元地質モデルと予め設定した材料毎の採取量とから、前記施工現場の掘削形状の3次元設計形状である設計掘削形状を設定するステップと、
前記3次元地質モデルと前記設計掘削形状とを合成した合成掘削形状を作成するステップと、
掘削機械の現在位置を検出するステップと、
前記掘削機械の現在位置と前記合成掘削形状とから、前記掘削機械の現在位置から測った、現在掘削している地質の層の深さを算出するステップと、
前記算出された深さに基づいて、前記地質の層を掘削するステップと、
を備える盛土材料の掘削・採取方法。
【請求項2】
実際の地質境界の位置が前記算出された深さのデータと異なった場合には、実績を計測し、前記3次元地質モデルのデータを更新することを特徴とする請求項1に記載の盛土材料の掘削・採取方法。
【請求項3】
施工現場の土砂を掘削する掘削機械と、
前記掘削機械の現在位置の3次元座標を検出する位置検出手段と、
前記施工現場の3次元地図データと3次元地質データとから3次元地質モデルを生成する3次元地質モデル生成手段と、前記3次元地質モデルと予め設定した材料毎の採取量とから、前記施工現場の掘削形状の3次元設計形状である設計掘削形状を設定する設計掘削形状設定手段と、前記3次元地質モデルと前記設計掘削形状とを合成した合成掘削形状を作成する合成掘削形状作成手段と、前記位置検出手段で検出された前記掘削機械の現在位置と前記合成掘削形状とから、前記掘削機械の現在位置から測った、現在掘削している地質の層の深さを算出する地層深さ算出手段を有する地層深さ算出装置と、を備える盛土材料の掘削・採取システム。
【請求項4】
前記算出された地質の層の深さを表示する表示手段を設けたことを特徴とする請求項3に記載の盛土材料の掘削・採取システム。
【請求項5】
施工現場の土砂を掘削して採取する掘削機械であって、
土砂の掘削・採取手段を備えた掘削機械本体と、
前記掘削機械の現在位置の3次元座標を検出する位置検出手段と、
前記施工現場の3次元地図データと3次元地質データとから3次元地質モデルを生成する3次元地質モデル生成手段と、前記3次元地質モデルと予め設定した材料毎の採取量とから、前記施工現場の掘削形状の3次元設計形状である設計掘削形状を設定する設計掘削形状設定手段と、
前記3次元地質モデルと前記設計掘削形状とを合成した合成掘削形状を作成する合成掘削形状作成手段と、
前記位置検出手段で検出された前記掘削機械の現在位置と前記合成掘削形状とから、前記掘削機械の現在位置から測った、現在掘削している地質の層の深さを算出する地層深さ算出手段と、
前記算出された地質の層の深さを表示する表示手段と、
を備えた掘削機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルダムなどの盛土工事の構築等に用いられる盛土材料を分別して掘削・採取する方法とそのシステム、及び、盛土材料の掘削・採取に用いられる掘削機械に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルダムや盛土工事に用いる盛土材料については、盛土に適した材料を採取するため、地質の種類ごとにそれぞれ適用材料が決められており、掘削時に異なる材料の混入やそれによる材料ロス(捨土の増加)を可能な限り減らす必要がある。
そこで、GNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)などの位置計測装置を用いて建設機械の現在位置を計測するとともに、盛土を掘削・採取するための設計データと現在位置との差分をリアルタイムで提供するマシンガイダンスシステムが用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。
設計データは、施工現場の地図データと地質・材質等のデータを有する地質データとから作成される3次元地質モデルと、掘削形状の設計形状データとを用いて作成される。
マシンガイダンスでは、オペレーターは、操縦席のモニター画面でバケットと設計形状の位置とを確認しながら、盛土材料を掘削・採取する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-81008号公報
【特許文献2】特開2016-212459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常のマシンガイダンスは、あくまで設計データ(仕上がりの形状)を導入して掘削を行っているため、地質毎に材料を掘削・採取する必要がある場合には、設計データ通りに掘削を進めると地質境界線を越えてしまい、採取した材料に異なる地質の材料が混入するおそれがある。
また、それを防ぐには、掘削途中で地質専門技術者が頻繁に現地を確認し判別する必要があるため、多大な労力を要する、といった問題点がある。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、設計形状の掘削を行いながら、盛土材料を効率的にかつ確実に分別して掘削・採取する方法、この方法を実現するためのシステム、及び、盛土材料の掘削・採取に用いられる掘削機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、盛土材料を掘削して採取する方法であって、施工現場の3次元地形データと3次元地質データとから3次元地質モデルを生成するステップと、前記3次元地質モデルと予め設定した材料毎の採取量とから、前記施工現場の掘削形状の3次元設計形状である設計掘削形状を設定するステップと、前記3次元地質モデルと前記設計掘削形状とを合成した合成掘削形状を作成するステップと、掘削機械の現在位置を検出するステップと、前記掘削機械の現在位置と前記合成掘削形状とから、前記掘削機械の現在位置から測った、現在掘削している地質の層の深さを算出するステップと、前記算出された深さに基づいて、前記地質の層を掘削するステップと、を備えることを特徴とする。
これにより、地層毎の掘削を精度よく行うことができるので、盛土材料を効率的に分別しながら採取することができる。
また、合成掘削形状を用いることで、3次元地質モデルと計設計掘削形状との切り替えをせずに地層毎の掘削を行うことができる。
また、実際の地質境界の位置が前記算出された深さのデータと異なった場合には、実績を計測し、前記3次元地質モデルのデータを更新するようにしたので、これをサイクルとして回すことで、データの精度向上を図ることができる。
【0007】
また、本発明は、盛土材料の掘削・採取システムであって、施工現場の土砂を掘削する掘削機械と、前記掘削機械の現在位置の3次元座標を検出する位置検出手段と、前記施工現場の3次元地図データと3次元地質データとから3次元地質モデルを生成する3次元地質モデル生成手段と、前記3次元地質モデルと予め設定した材料毎の採取量とから、前記施工現場の掘削形状の3次元設計形状である設計掘削形状を設定する設計掘削形状設定手段と、前記3次元地質モデルと前記設計掘削形状とを合成した合成掘削形状を作成する合成掘削形状作成手段と、前記位置検出手段で検出された前記掘削機械の現在位置と前記合成掘削形状とから、前記掘削機械の現在位置から測った、現在掘削している地質の層の深さを算出する地層深さ算出手段を有する地層深さ算出装置と、を備えることを特徴とする。
このような構成を採ることにより、設計形状の掘削を行いながら、盛土材料を効率的に分別しながら採取することのできる盛土材料の掘削・採取システムを得ることができる。
また、前記算出された地質の層の深さを表示する表示手段を設けて、オペレーターに現在の掘削状況を視認させることができるので、効率的な材料の採取・分別を行うことができる。
また、本発明は、施工現場の土砂を掘削して採取する掘削機械を、バケットなどの土砂の掘削・採取手段を備えた掘削機械本体と、前記掘削機械の現在位置の3次元座標を検出する位置検出手段と、前記施工現場の3次元地図データと3次元地質データとから3次元地質モデルを生成する3次元地質モデル生成手段と、前記3次元地質モデルと予め設定した材料毎の採取量とから、前記施工現場の掘削形状の3次元設計形状である設計掘削形状を設定する設計掘削形状設定手段と、前記3次元地質モデルと前記設計掘削形状とを合成した合成掘削形状を作成する合成掘削形状作成手段と、前記位置検出手段で検出された前記掘削機械の現在位置と前記合成掘削形状とから、前記掘削機械の現在位置から測った、現在掘削している地質の層の深さを算出する地層深さ算出手段と、前記算出された地質の層の深さを表示する表示手段とから構成したので、盛土材料を効率的に分別しながら採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係る盛土材料の掘削・採取システムを示す図である。
図2】工事着工前の施工現場の地形データと地質・土質モデルを示す図である。
図3】ボクセルモデルと設計掘削形状の一例を示す図である。
図4】地質境界面と設計掘削形状とを合成した合成掘削形状を示す図である。
図5】合成掘削形状の断面形状を示す図である。
図6】携帯端末の表示画面の一例を示す図である。
図7】本発明の盛土材料の掘削・採取方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本実施形態に係る盛土材料の掘削・採取システム(以下、採取システム1という)を示す図で、採取システム1は、施工現場2に配置された掘削機械としてのバックホー10と、運搬車両20と、施工現場2とは別の個所に設けられた管理センター3に設置された地層深さ算出装置30とを備える。
バックホー10は、車体本体11と、掘削手段12と、走行手段13と、位置取得手段14と、送受信機15と、GPSアンテナ16と、送受信アンテナ17とを備える。
掘削手段12は、ブーム12a、アーム12b、及び、バケット12cを備え、車体本体11に搭載されて、施工現場2の盛土材料を掘削・採取する。
走行手段13としては、例えば、無限軌道などの凹凸の多い場所を安定して走行できるタイプのものが好ましい。
位置取得手段14は、GPSアンテナ16で受信した図示しない衛星の電波から、当該バックホー10の車体本体11の絶対座標を取得するとともに、車体本体11に対するバケット12cの相対位置から、バケット12cの位置座標を算出する。なお、バケット12cの位置座標としては、施工現場2、もしくは、施工現場2近傍の所定の地点を原点とする座標系の位置座標とすることが好ましい。
算出されたバケット12cの位置座標は、送受信アンテナ17、地層深さ算出装置30に送られる。なお、送受信アンテナ17は、後述するように、地層深さ算出装置30で算出された地層深さのデータを受信する。
バックホー10の運転席18にはオペレーター40が乗車しており、オペレーター40は、運転席18に設けられた携帯端末19を参照しながら、掘削手段12と走行手段13とを操作して、施工現場2の盛土材料を掘削・採取し、運搬車両20に渡す。
携帯端末19には、バックホー10の現在位置と地層深さの算出値をオペレーター40に視認させるための表示画面19Gが設けられている。
運搬車両20は、走行手段21と荷台22とを備え、バックホー10で採取した土砂を荷台22に積込んで図示しない材料置場まで運搬する。なお、図では、運搬車両20のオペレーターについては省略した。
【0010】
地層深さ算出装置30は、地形・地質データ取得手段31と、地質・土質モデル作成手段32と、設計掘削形状設定手段33、合成掘削形状作成手段34と、掘削位置取得手段35と、地層深さ算出手段36と、送受信機37と、アンテナ38とを備える。地質データ取得手段31~地層深さ算出手段36までの各手段は、コンピューターのソフトウェアとRAM,ROMなどの記憶手段から構成される。
地形・地質データ取得手段31は、まず、図2(a)に示すように、工事着工前の施工現場2の3次元地形データと3次元地質データとを取り込んで、地質断面図を3次元空間上に配置する。
3次元地形データは、例えば、ドローンなどによる写真測量や3Dレーザースキャナーによる測量により得られる。また、3次元地質データは、予め行ったボーリング調査による地盤調査により得られる。
3次元地形データは、通常、図2(a)の左上の図に示すように、平面図で表せるが、平面図の各点はそれぞれ標高の情報を有しているので、3次元地質データと組み合わせることで、施工現場2の任意の方向の地質断面図を得ることができる。
そして、図2(a)の下側の図に示すように、配置された地質・土質の異なる層の境界点を結ぶことで、図2(b)に示すような、3次元地質境界面を作成する。
図2(a),(b)の符号2A,2B,2Cが互いに地質・土質の異なる地層で、2Aは第1層(表面層)、2Bは第2層、2Cは第3層である。また、S12は第1層2Aと第2層2Bとの境界面、S23は第2層2Bと第3層2Cとの境界面である。
地質・土質モデル作成手段32は、上記の地質境界面で囲まれた空間に地質ソリッドモデルを作成する。本例では、ソリッドモデルとして、図3(a)に示すような、ボクセルモデルを用いた。
ボクセルは3Dピクセルで、内部に地質などの情報を持つ立方体kで表せる。このボクセルモデルを用いることで、掘削土量を精度よく算出することができる。
設計掘削形状設定手段33は、地質ソリッドモデルと予め設定しておいた盛土材料の種類や採取量、ダムの貯水容量、ダムの形状、用地などの様々な要素を考慮して、施工現場2の掘削予定形状である設計掘削形状を設定する。
設計掘削形状は、図3(b)に示すように、2次元の掘削平面図で表せるが、平面図の各点には法面勾配、小段の標高などの情報が記載されており、容易に3次元化できる。
【0011】
合成掘削形状作成手段34は、図4(a)に示す地層毎のサーフェイスモデルM(2A),M(2B),M(2C)で表された地質境界面と、図4(b)に示す設計掘削形状とを合成し、図4(c)に示すような、設計掘削形状と地質境界面とが組み合わされた合成掘削形状を作成する。
ここで、サーフェイスモデルM(2A)は掘削現場の地表面、M(2B)は第1層2Aと第2層2Bとの境界面S12、M(2C)は第2層2Bと第3層2Cとの境界面S23である。したがって、これらのサーフェイスモデルM(2A),M(2B),M(2C)を、上からM(2A),M(2B),M(2C)の順に鉛直方向に配置したモデルに、設計掘削形状を重ねることにより、各地層の材料採取ラインである合成掘削形状を得ることができる。
図5は、合成掘削形状の断面形状の一例を示す図で、本例では、地質の層を、第1層2A、第2層2B、第3層2Cの3層とした。また、同図の細い一点鎖線は地質境界線、太い一点鎖線は設計掘削形状、太い実線は合成掘削形状(材料採取ライン)である。
なお、同図では、第1層2Aの設計掘削形状と合成掘削形状とがずれているように表示しているが、第1層2Aの設計掘削形状と合成掘削形状とは同じであることはいうまでもない。
また、同図では、第1層2Aの材料取ラインのみを示したが、第2層2Bの材料採取ラインや第3層2Cの材料採取ラインも同様に引くことができる。
このように、合成掘削形状を用いて盛土材料を掘削・採取することで、盛土材料を、採取材料毎に効率よく掘削・採取することができる。
【0012】
掘削位置取得手段35は、バックホー10の位置取得手段14で算出したバケット12cの位置座標を取得する。具体的には、GPSアンテナ16から送られてきたバケット12cの位置座標のデータが、送受信アンテナ17を介して掘削位置取得手段35に送られる。
地層深さ算出手段36は、バケット12cの位置座標のデータと、合成掘削形状作成手段34で作成した合成掘削形状とから、バケット12cの位置と現在掘削している層とその下部の層との境界面との距離である地層深さDを算出する。
算出された地層深さDは、送受信機37からアンテナ38を介して、バックホー10の車体本体11に搭載された携帯端末19に送られる。
図6(a),(b)は携帯端末19の表示画面19Gの一例を示す図で、(a)図は掘削開始直後の画面、(b)図は第1層2Aの掘削途中の画面で、2Aは現在掘削中の地層(第1層)で、斜線で示すBpは設計掘削形状を示す。
表示画面19Gは、上から見たときのバックホー10の現在位置(x,y)を表示する位置表示部19aと、バックホー10のバケット位置と、第1層2Aと第2層2Bとの地質境界面S12との距離である地層深さD(図1を参照)を表示する深さ表示部19bとを備えている。
オペレーター40は、携帯端末19の表示画面19Gを見ながら盛土材料の掘削・採取を行うことで、盛土材料の採取量(掘削深さ)を適宜調整することができる。
【0013】
次に、本発明による盛土材料の掘削・採取方法について、図7のフローチャートを参照して説明する。
始めに施工現場の3次元地形データと3次元地質データとを取得し(ステップS10)、3次元地質モデルである地質・土質モデルを作成する(ステップS11)。
次に、地質・土質モデルと予め設定した地質・土質毎の採取量から、掘削形状の3次元設計形状である設計掘削形状を設定(ステップS12)した後、地質・土質モデルと設計掘削形状とを合成した合成掘削形状を作成する(ステップS13)。
ステップS14では、GNSSの一つであるGPSを用いて、バックホー10の現在位置を検出する。なお、GLONASSなどのGPS以外のGNSSを用いてもよい。
また、バックホー10の現在位置の検出は、ステップS10~S13の処理と並行して行ってもよい。
次に、バックホー10の現在位置と合成掘削形状とから、バックホー10の現在位置から測った、現在掘削している地質の層の深さDを算出(ステップS15)し、この算出された地層の深さのデータを携帯端末19に送る(ステップS16)。
オペレーター40は、携帯端末19の表画面19Gに表示された地質の層の深さDに基づいて、盛土材料の掘削・採取を行う(ステップS17)。
ステップS14~S17の動作は、現在掘削している地層の掘削・採取が終了するまで継続する(ここでは、現在掘削している地層の掘削・採取が終了した時点をENDとした)。
これにより、地質境界面付近で慎重な掘削を行うことができるので、異なる材料の混入を防ぐことができる。
【0014】
このように、本発明によれば、掘削時に異なる材料の混入やそれによる材料ロス(捨土の量)を最小限に抑えることができるので、設計形状の掘削を行いながら、盛土材料を効率的に採取・分別することができる。
なお、実際の地質境界の位置が算出された深さのデータと異なった場合には、随時実績を計測して地質・土質モデルのデータを修正・更新することが好ましい。これにより、地質境界面を修正できるので、以降の掘削精度を向上させることができる。
【0015】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0016】
例えば、前記実施の形態では、掘削機械としてバックホー10を用いたが、ショベルカーやブルドーザーなどの他の掘削機械を用いてもよい。
また、前記実施の形態では、地層深さ算出装置30を施工現場2とは別の場所に設けられた管理センター3に設けたが、地層深さ算出装置30をバックホー10に搭載してもよい。
【符号の説明】
【0017】
1 盛土材料の掘削・採取システム、2 施工現場、3 管理センター、
10 バックホー、11 車体本体、12 掘削手段、12a ブーム、
12b アーム、12c バケット、13 走行手段、14 位置取得手段、
15 送受信機、16 GPSアンテナ、17 送受信アンテナ、18 運転席、
19 携帯端末、19G 表示画面、
20 運搬車両、21 走行手段、22 荷台、
30 地層深さ算出装置、31 地形・地質データ取得手段、
32 地質・土質モデル作成手段、33 設計掘削形状設定手段、
34 合成掘削形状作成手段、35 掘削位置取得手段、36 地層深さ算出手段、
37 送受信機、38 アンテナ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7