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  • 特開-ファン制御装置 図1
  • 特開-ファン制御装置 図2
  • 特開-ファン制御装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157704
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ファン制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/46 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H02P5/46 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072219
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田渕 経雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田渕 智雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】真田 健司
【テーマコード(参考)】
5H572
【Fターム(参考)】
5H572AA10
5H572BB04
5H572DD05
5H572EE04
5H572GG02
5H572HC04
5H572HC07
5H572LL01
5H572LL50
(57)【要約】
【課題】複数の電動ファンを使用する際におけるビート音の発生を、制御(ソフト)で回避できる、ファン制御装置の提供。
【解決手段】各電動ファン20,30の回転数のモニタ結果から、各電動ファン20,30の駆動音の周波数を算出し、周波数の差が所定周波数差未満となる組合せがある場合、周波数差が所定周波数差以上となるように少なくとも一方の電動ファンの回転数を変更する制御をする。そのため、周波数の差が近い組み合わせがある場合に電動ファンの回転数を変更することで周波数の差を所定周波数差以上にし、ビート音が発生することを回避できる。この構造では、ハードで対応しておらず、ソフト(回転数変更の制御)のみで対応しているため、複数の電動ファン20,30を使用する際におけるビート音の発生をソフトで回避できる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電動ファンの回転数を任意の回転数に制御可能なファン制御装置であって、
各前記電動ファンの回転数のモニタ結果から、各前記電動ファンの駆動音の周波数を算出し、周波数の差が所定周波数差未満となる組合せがある場合、周波数差が前記所定周波数差以上となるように前記電動ファンの回転数を制御する、ファン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電動ファンを制御するファン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、周囲温度が低い等の特殊な環境下において、電動ファンを動作すると異音が発生する可能性がある場合、電動ファンに対し通常の動作電圧V1を印可する前に、異音が生じにくい動作電圧V2(<V1)を印可する技術を開示している。
【0003】
ところで、複数の電動ファンを同時に使用する場合、各電動ファンから周波数、音圧が近い動作音が発生すると、差の周波数で音圧が強弱変化するビート音が発生する可能性がある。しかし、上記の特許文献1は異音の音源として想定しているのは単一の電動ファンであり、複数の電動ファンを同時に使用する場合にのみ生じ得る異音に対しては何ら開示が無い。
【0004】
特許文献2は、2つの電動ファンを使用する際におけるビート音の発生を回避できる技術を開示している。
【0005】
しかし、上記の特許文献2では、2つの電動ファンをファンブレード等ピッチとファンブレード不等ピッチにしなければならず(ハードで対応しており)、制御(ソフト)で解決できず改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-180601号公報
【特許文献2】特開2007-278181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、複数の電動ファンを使用する際におけるビート音の発生を、制御(ソフト)で回避できる、ファン制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 複数の電動ファンの回転数を任意の回転数に制御可能なファン制御装置であって、
各前記電動ファンの回転数のモニタ結果から、各前記電動ファンの駆動音の周波数を算出し、周波数の差が所定周波数差未満となる組合せがある場合、周波数差が前記所定周波数差以上となるように前記電動ファンの回転数を制御する、ファン制御装置。
(2) 前記所定周波数差とは、ビート音発生の懸念がある周波数差である、(1)記載のファン制御装置。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)、(2)のファン制御装置によれば、つぎの効果を得ることができる。
各電動ファンの回転数のモニタ結果から、各電動ファンの駆動音の周波数を算出し、周波数の差が所定周波数差未満となる組合せがある場合、周波数差が所定周波数差以上となるように電動ファンの回転数を制御するため、周波数の差が近い組み合わせがある場合に電動ファンの回転数を変更することで周波数の差を所定周波数差以上にし、ビート音が発生することを回避できる。この構造では、ハード(ファンブレードを等ピッチと不等ピッチにするなど)で対応しておらず、ソフト(回転数変更の制御)のみで対応しているため、複数の電動ファンを使用する際におけるビート音の発生をソフトで回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明実施例のファン制御装置を含む制御システムの構成図である。
図2】2つの電動ファンを同時に使用する場合における、回転数制御によるビート音回避の一例を示す、音圧レベルと周波数の関係を示すグラフである。(a)は、周波数差が所定周波数差未満となる組合せが有る場合を示している。(b)は、電動ファンの回転数を変更させて、周波数差が所定周波数差以上となるようにした場合を示している。
図3】本発明実施例のファン制御装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して、本発明実施例のファン制御装置(以下、制御装置ともいう)10について説明する。
【0012】
制御装置10は、図1に示すように、車両に搭載される図示略の熱交換器を冷却するために設けられる複数の電動ファン、例えば第1、第2のファンからなる2つのファン20,30を同時に駆動制御可能であり、特に2つのファン20,30の回転数をそれぞれ任意の回転数に制御可能である。
【0013】
第1、第2のファン20,30は、ファンシュラウド21,31をそれぞれ有し、さらに、複数枚のファンブレード22,32をそれぞれ有している。ファンシュラウド21,31同士は、一体に形成されていてもよく、互いに別体形成されていてもよい。ファンブレード22,32の枚数は、図1では概略化されていずれも6枚(同じ枚数)で示されているが、6枚以外の同じ枚数であってもよく、異なる枚数であってもよい。ファンブレード22,32は、それぞれ、図示略の駆動モータの駆動力によってファンシュラウド21,31に対して回転可能である。
【0014】
図1は、制御装置10を含む制御システム1の構成図である。図1に示すように、制御システム1は、制御装置10,第1、第2のファン20,30に加えて、さらに第1、第2のファン20,30の回転数をそれぞれ検知する回転数センサ40,50を有する。
【0015】
制御装置10は、ECU(Electronic Control Unit)であり、CPU、ROM,RAMおよび入出力インターフェースを有する電子制御ユニットである。CPUはROMに格納されている各種プログラムを実行する。制御装置10は、1つのECUから構成されていてもよく、複数のECUから構成されていてもよい。
【0016】
制御装置10は、第1、第2のファン20,30の駆動中にあっては、回転数センサ40,50を用いて第1、第2のファン20,30の回転数を常時モニタしており、回転数のモニタ結果から、駆動音の周波数をそれぞれ算出し、周波数が近い組み合わせが有るか、すなわち周波数差が所定の周波数差BeatRef未満か否かを判定できるようになっている。なお、所定の周波数差BeatRefは、ビート音(うなり音)が発生する懸念がある周波数差であり、特に限定されるものではないが、たとえば20Hzである。
【0017】
なお、第1、第2のファン20,30の回転時に発生する駆動音の周波数は、それぞれ、ファンの1次成分(ファンの回転数rpm÷60×ファンブレードの枚数)(単位Hz)に音圧レベルのピークを有し、その倍数にもピークを有している。そして、第1、第2のファン20,30の音圧レベルのピーク同士が近い場合、すなわちピーク同士の周波数差が所定周波数差BeatRef未満の場合、ビート音が発生するおそれがある。
【0018】
たとえば、第1のファン20の第N次成分(Nは整数)が200Hzであり、第2のファン30の第M次成分(Mは整数)が205Hzの場合、周波数差が205-200=5Hzとなり音圧レベルのピーク同士が近く、5Hzのビート音が発生する。
【0019】
制御装置10は、第1、第2のファン20,30の回転数の各モニタ結果から、第1、第2のファン20,30の駆動音の周波数をそれぞれ算出する。そして、図2の(a)、(b)に示すように、周波数の差が所定周波数差BeatRef未満となる組合せが有る場合、周波数差が所定周波数差BeatRef以上となるように、すなわちビート音発生の懸念がある周波数帯Eを避けるように、第1、第2のファン20,30の一方の回転数を変更する制御を行う。なお、図2の(a)では、第1のファン20の回転数が1000rpmで第2のファン30の回転数が1005rpmであり、第1のファン20の第2次成分と第2のファン30の第3次成分が所定周波数差BeatRef未満の周波数差となり周波数帯Eにある場合を示しており、図2の(b)では、周波数差が所定の周波数差BeatRef以上となり周波数帯Eを避けるよう、第2のファン30の回転数を1005rpm→1200rpmに変更する場合を示している。
【0020】
図3は、制御装置10の制御ルーチンを示すフローチャートである。図3に示す制御ルーチンは、制御装置10を含む制御システム1への通電が行われた後、制御システム1への通電が終了されるまで実行される。
【0021】
まず、ステップS1において、第1のファン20と第2のファン30の両方が駆動中か否かを判定する。そして、ステップS1で少なくともいずれか一方が駆動中ではないと判定すると、何もせずにエンドステップに進む。一方、ステップS1で第1、第2のファン20,30の両方が駆動中であると判定した場合には、ステップS2に進む。
【0022】
ステップS2では、第1、第2のファン20、30の回転数のモニタ値を入力する。そしてステップS3に進み第1、第2のファン20,30の回転数のモニタ結果から駆動音の周波数をそれぞれ算出し、ステップS4に進む。
【0023】
ステップS4では、第1のファン20の第1次成分PeakA1と第2のファン30の第1次成分PeakB1との周波数の差が所定周波数差BeatRef(本実施例では20Hz)未満であるか否かを判定する。そして、ステップS4で所定周波数差BeatRef未満ではないと判定すると、ステップS5に進み、第1のファン20の第1次成分PeakA1と第2のファン30の第2次成分PeakB2との周波数の差が所定周波数差BeatRef未満であるか否かを判定する。そして、ステップS5で所定周波数差BeatRef未満ではないと判定すると、図示はしないが、第1のファン20の第1次成分PeakA1と第2のファン30の第3次成分PeakB3との周波数の差が所定周波数差BeatRef未満であるか否かを判定する。これを、ステップS4,S5と同様に、第1のファン20の第1次成分PeakA1と第2のファン30の第n次成分PeakBn(nは3以上の所定の整数)との周波数差を判定するまで行う(ステップS6)。
【0024】
そして、ステップS6で第1のファン20の第1次成分PeakA1と第2のファン30の第n次成分PeakBnとの周波数差が所定周波数差BeatRef未満ではないと判定すると、ステップS7に進み、第1のファン20の第2次成分PeakA2と第2のファン30の第1次成分PeakB1との周波数差が所定周波数差BeatRef未満であるか否かを判定する。そしてステップS7で所定周波数差BeatRef未満ではないと判定すると、第1のファン20の第1次成分PeakA1のときと同様に、第1のファン20の第2次成分PeakA2にあっても第2のファン30の第n次成分PeakBnまで順次判定を行う。そして、順次、第1のファン20の第n次成分PeakAnと第2のファン30の第n次成分PeakBnまで判定し(ステップS8)、ステップS8で周波数差が所定周波数差BeatRef未満ではないと判定した場合、何もせず、ステップS1に戻る。
【0025】
一方、ステップS4からステップS8までのいずれかにおいて、第1のファン20と第2のファン30との周波数差が所定周波数差BeatRef未満であると判定すると、ステップS5からステップS8までにおけるその後のステップには進まず、ステップS9に進み、第1のファン20と第2のファン30の周波数差が所定周波数差BeatRef以上となるまで(周波数帯Eを避けるまで)、第1のファン20と第2のファン30の一方(ステップS9では第2のファン30)の回転数を上昇させる。そしてステップS1に戻る。
【0026】
つぎに、本発明実施例の作用、効果を説明する。
各電動ファン20,30の回転数のモニタ結果から、各電動ファン20,30の駆動音の周波数を算出し、周波数の差が所定周波数差BeatRef未満となる組合せがある場合、周波数差が所定周波数差BeatRef以上となるように少なくとも一方の電動ファンの回転数を変更する制御をするため、周波数の差が近い組み合わせがある場合に電動ファンの回転数を変更することで周波数の差を所定周波数差BeatRef以上にし、ビート音が発生することを回避できる。この構造では、ハード(ファンブレードを等ピッチと不等ピッチにする、図示略の吸音材を設置する、など)で対応しておらず、ソフト(回転数変更の制御)のみで対応しているため、複数の電動ファン20,30を使用する際におけるビート音の発生をソフトで回避できる。
【0027】
ビート音の発生帯域を避けた回転数指示値を予め設定する場合、個体差や劣化、送風経路の圧力損失による回転数ばらつきを考慮する必要があり、制御の自由度が低下するが、本発明では上記考慮が不要なため、制御の自由度が向上する。
【0028】
なお、本発明実施例では、電動ファンが第1のファン20と第2のファン30の2つからなる場合を説明したが、電動ファンは3個以上のファンから構成されていてもよい。その場合、第1のファン20と第2のファン30、第1のファン20と第3のファン、第2のファン30と第3のファン・・・等、ビート音を発生するおそれがあるとして考えられる全組合せについて、本発明実施例を適用することになる。
【符号の説明】
【0029】
1 制御システム
10 制御装置
20 第1のファン
21 ファンシュラウド
22 ファンブレード
30 第2のファン
31 ファンシュラウド
32 ファンブレード
40、50 回転数センサ
BeatRef 所定周波数
図1
図2
図3