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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157712
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A61M25/09 550
A61M25/09 516
A61M25/09 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072232
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】栗田 朋香
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA28
4C267BB06
4C267BB07
4C267BB11
4C267BB13
4C267BB38
4C267BB40
4C267BB52
4C267BB63
4C267CC09
4C267DD01
4C267GG03
4C267GG04
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG09
4C267GG22
4C267GG23
4C267GG34
4C267HH03
4C267HH08
4C267HH14
4C267HH16
(57)【要約】
【課題】狭窄部への高い挿通性を備えつつ、血管穿孔の発生を抑制可能なガイドワイヤを提供すること。
【解決手段】長尺なワイヤ本体110と、ワイヤ本体110の少なくとも一部を覆う潤滑性被覆層120と、を有し、ワイヤ本体110は、ワイヤ本体第1外径一定部111と、ワイヤ本体第1外径一定部111の基端に隣接配置されたワイヤ本体テーパー部112と、を含み、潤滑性被覆層120は、湿潤時に膨潤可能な材料で形成される第1被覆部121を含み、第1被覆部121が膨潤した状態において、ワイヤ本体テーパー部112における第1被覆部121の径方向の厚みd1が、基端から先端に向かって増加する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺なワイヤ本体と、前記ワイヤ本体の少なくとも一部を覆う潤滑性被覆層と、を有するガイドワイヤであって、
前記ワイヤ本体は、ワイヤ本体第1外径一定部と、前記ワイヤ本体第1外径一定部の基端に隣接配置されたワイヤ本体テーパー部と、を含み、
前記潤滑性被覆層は、湿潤時に膨潤可能な材料で形成される第1被覆部を含み、
前記第1被覆部が膨潤した状態において、前記ワイヤ本体テーパー部における前記第1被覆部の径方向の厚みが、基端から先端に向かって増加する、ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記ワイヤ本体は、前記ワイヤ本体テーパー部の基端に隣接配置されたワイヤ本体第2外径一定部を含み、
前記第1被覆部が膨潤した状態において、前記ワイヤ本体第1外径一定部における前記第1被覆部の径方向の厚みの最小値は、前記ワイヤ本体第2外径一定部における前記第1被覆部の径方向の厚みの最小値以上である、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
前記第1被覆部が膨潤した状態において、前記ワイヤ本体テーパー部における前記第1被覆部の外径は、基端から先端に向かって減少する、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記第1被覆部が膨潤した状態において、前記ワイヤ本体第1外径一定部における前記第1被覆部の外径の最大値は、前記ワイヤ本体第2外径一定部における前記第1被覆部の外径の最大値よりも小さい、請求項3に記載のガイドワイヤ。
【請求項5】
前記潤滑性被覆層は、前記ガイドワイヤの先端を形成する第2被覆部を含み、
前記第2被覆部は、前記湿潤時に膨潤可能な材料で形成され、
前記第1被覆部及び前記第2被覆部が膨潤した状態において、前記第2被覆部の長軸方向の厚みは、前記ワイヤ本体第1外径一定部における前記第1被覆部の径方向の厚みより大きい、請求項1~4の何れかに記載のガイドワイヤ。
【請求項6】
前記潤滑性被覆層は、前記ガイドワイヤの先端を形成する第2被覆部を含み、
前記第2被覆部は、疎水性ポリマーで形成されている、請求項1~4の何れかに記載のガイドワイヤ。
【請求項7】
前記ワイヤ本体は、長尺なコア部材と、前記コア部材の先端部の外周を覆うように配置されたコイルと、を含み、
少なくとも前記ワイヤ本体第1外径一定部及び前記ワイヤ本体テーパー部は、コイルによって形成されている、請求項1~4の何れかに記載のガイドワイヤ。
【請求項8】
前記ワイヤ本体は、長尺なコア部材と、前記コア部材の外周を被覆する樹脂層と、を含み、
少なくとも前記ワイヤ本体第1外径一定部の外周及び前記ワイヤ本体テーパー部の外周は、樹脂層によって形成されている、請求項1~4の何れかに記載のガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
血管内に生じた病変の診断や治療では、カテーテルを用いる手技が行われる。術者は、血管内にガイドワイヤを挿入し、ガイドワイヤの先端を病変に到達させた後、ガイドワイヤに沿ってカテーテルを挿入する。
【0003】
ガイドワイヤは、血管の湾曲部や分岐部を進み、狭窄部を通過する必要がある。そのため、ガイドワイヤは、先端部に、柔軟性と狭窄部への挿通性とが要求されている。例えば、特許文献1には、操作性を損なうことなく狭窄部への高い挿通性を得るために、芯線と、芯線先端部に細径等径部とテーパー部とが設けられたコイルを有するガイドワイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-319537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のガイドワイヤは、先端部に細径等径部やテーパー部を設けることでガイドワイヤの先端部を細径化することにより、狭窄部への高い挿通性を実現している。
【0006】
しかしながら、先端部が細径化されたガイドワイヤは、先端から基端に向かって外径が増加するテーパー部で狭窄部の入口に引っ掛かり、ガイドワイヤが破損することがある。
【0007】
更に、術者がガイドワイヤを狭窄部に挿入しようとして、必要以上に強い力で押し込むと、ガイドワイヤの先端部が意図せずに進行してしまい、狭窄部或いは狭窄部より抹消の血管壁を突き破る血管穿孔を生じることがある。
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、具体的には、狭窄部への高い挿通性を備えつつ、血管穿孔の発生を抑制可能なガイドワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記(1)~(8)の何れか1つによって達成される。
【0010】
(1)長尺なワイヤ本体と、前記ワイヤ本体の少なくとも一部を覆う潤滑性被覆層と、を有するガイドワイヤであって、前記ワイヤ本体は、ワイヤ本体第1外径一定部と、前記ワイヤ本体第1外径一定部の基端に隣接配置されたワイヤ本体テーパー部と、を含み、前記潤滑性被覆層は、湿潤時に膨潤可能な材料で形成される第1被覆部を含み、前記第1被覆部が膨潤した状態において、前記ワイヤ本体テーパー部における前記第1被覆部の径方向の厚みが、基端から先端に向かって増加する、ガイドワイヤ。
【0011】
(2)前記ワイヤ本体は、前記ワイヤ本体テーパー部の基端に隣接配置されたワイヤ本体第2外径一定部を含み、前記第1被覆部が膨潤した状態において、前記ワイヤ本体第1外径一定部における前記第1被覆部の径方向の厚みの最小値は、前記ワイヤ本体第2外径一定部における前記第1被覆部の径方向の厚みの最小値以上である、上記(1)のガイドワイヤ。
【0012】
(3)前記第1被覆部が膨潤した状態において、前記ワイヤ本体テーパー部における前記第1被覆部の外径は、基端から先端に向かって減少する、上記(1)のガイドワイヤ。
【0013】
(4)前記第1被覆部が膨潤した状態において、前記ワイヤ本体第1外径一定部における前記第1被覆部の外径の最大値は、前記ワイヤ本体第2外径一定部における前記第1被覆部の外径の最大値よりも小さい、上記(3)のガイドワイヤ。
【0014】
(5)前記潤滑性被覆層は、前記ガイドワイヤの先端を形成する第2被覆部を含み、
前記第2被覆部は、前記湿潤時に膨潤可能な材料で形成され、前記第1被覆部及び前記第2被覆部が膨潤した状態において、前記第2被覆部の長軸方向の厚みは、前記ワイヤ本体第1外径一定部における前記第1被覆部の径方向の厚みより大きい、上記(1)~(4)の何れかのガイドワイヤ。
【0015】
(6)前記潤滑性被覆層は、前記ガイドワイヤの先端を形成する第2被覆部を含み、
前記第2被覆部は、疎水性ポリマーで形成されている、上記(1)~(4)の何れかのガイドワイヤ。
【0016】
(7)前記ワイヤ本体は、長尺なコア部材と、前記コア部材の先端部の外周を覆うように配置されたコイルと、を含み、少なくとも前記ワイヤ本体第1外径一定部及び前記ワイヤ本体テーパー部は、コイルによって形成されている、上記(1)~(6)の何れかのガイドワイヤ。
【0017】
(8)前記ワイヤ本体は、長尺なコア部材と、前記コア部材の外周を被覆する樹脂層と、を含み、少なくとも前記ワイヤ本体第1外径一定部の外周及び前記ワイヤ本体テーパー部の外周は、樹脂層によって形成されている、上記(1)~(6)の何れかのガイドワイヤ。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態によれば、ガイドワイヤは、ワイヤ本体第1外径一定部とワイヤ本体テーパー部により、ワイヤ本体の先端部が細径化されているため、狭窄部への高い挿通性が得られる。また、ワイヤ本体テーパー部における第1被覆部の厚みが、基端から先端に向かって増加することにより、ワイヤ本体テーパー部の潤滑性が基端から先端に向かって高くなる。これにより、ガイドワイヤは、狭窄部への挿入が容易となる。更に、ガイドワイヤは、潤滑性被覆層が湿潤時に膨潤可能な材料で形成されているため、ガイドワイヤが狭窄部に必要以上に強い力で押し込まれた場合であっても、潤滑性被覆層の弾性力により過剰な押し込み力が弱められる。これにより、ガイドワイヤは、先端部が意図せずに進行して血管穿孔を生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る第1実施形態のガイドワイヤの先端部周辺の部分拡大図である。
図2】ガイドワイヤの第1形態の概略断面図である。
図3】ガイドワイヤの第2形態の概略断面図である。
図4】本発明に係る第2実施形態のガイドワイヤの先端部周辺の部分拡大図である。
図5】変形例1のガイドワイヤの先端部周辺の部分拡大図である。
図6】変形例2のガイドワイヤの先端部周辺の部分拡大図である。
図7】変形例3のガイドワイヤの先端部周辺の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0021】
更に、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0022】
本明細書において、説明の便宜上、以下の方向について定義する。図1において、「長軸方向」は、ガイドワイヤ100の中心軸Cに沿う方向とする。「径方向」は、ガイドワイヤ100の中心軸Cを基準軸とした軸直交断面(横断面)において中心軸Cに対して離隔又は接近する方向とする。「周方向」は、ガイドワイヤ100の中心軸Cを基準軸とした回転方向とする。
【0023】
また、ガイドワイヤ100が血管に挿入される側を「先端側」とし、先端側と反対側(術者が把持する側)を「基端側」とする。また、先端(最先端)から長軸方向に沿う一定の範囲を含む部分を「先端部」とし、基端(最基端)から長軸方向における一定の範囲を含む部分を「基端部」とする。
【0024】
なお、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明する場合は、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。
【0025】
本発明に係るガイドワイヤ100は、血管内治療を行うためのカテーテルやステントを病変に導くために、血管内に挿入される医療器具である。なお、ガイドワイヤ100は、治療目的に応じて血管以外の他の生体管腔(脈管、尿管、胆管、卵管、肝管等)に挿入して使用することもできる。
【0026】
[第1実施形態]
第1実施形態に係るガイドワイヤ100について説明する。
【0027】
ガイドワイヤ100は、図1に示すように、長尺なワイヤ本体110と、ワイヤ本体110の少なくとも一部を覆う潤滑性被覆層120と、を有する。
【0028】
<ワイヤ本体>
ワイヤ本体110は、先端から基端に向かって順に、ワイヤ本体第1外径一定部111と、ワイヤ本体第1外径一定部111の基端に隣接配置され外径が基端から先端に向かって減少するワイヤ本体テーパー部112と、ワイヤ本体テーパー部112の基端に隣接配置されたワイヤ本体第2外径一定部113と、を少なくとも含んで構成される。
【0029】
ワイヤ本体テーパー部112の外形は、ワイヤ本体110の外径がワイヤ本体110の長軸方向に沿って線形に変化し、テーパー角(基端から先端への外径の減少率)が一定である線形テーパー形状である。なお、ワイヤ本体テーパー部112の外形は、ワイヤ本体110の外径がワイヤ本体110の長軸方向に沿って指数関数的に変化する指数関数テーパー形状、ワイヤ本体110の外径がワイヤ本体テーパー部112の先端からの距離の平方根に比例し、全体の形状がワイヤ本体テーパー部112の先端を頂点とした放物線となる放物線テーパー形状、ワイヤ本体110の長軸方向に沿うS字型曲線で形成される双曲線正接形状であってもよい。また、ワイヤ本体テーパー部112は、テーパー角やテーパー形状が異なる複数のテーパーを含んでもよい。ワイヤ本体テーパー部112が複数のテーパーで構成される場合、ワイヤ本体テーパー部112は、それぞれのテーパーが連続配置されてもよいし、それぞれのテーパー間に外径が一定の部分が配置されてもよい。
【0030】
ワイヤ本体第1外径一定部111の外径は、ワイヤ本体第2外径一定部113の外径より小さい。そのため、ガイドワイヤ100は、狭窄部への高い挿通性が得られる。ガイドワイヤ100は、狭窄部への挿通性の観点から、ワイヤ本体第1外径一定部111の外径を0.1mm~0.9mmの範囲、ワイヤ本体第2外径一定部113の外径を0.2mm~1.0mmの範囲に設定することができる。
【0031】
ワイヤ本体110は、図2に示すようなコア部材10にコイル(管腔体20A)を設けたコイルタイプの第1形態(ガイドワイヤ100A)の構成、図3に示すようなコア部材10の全体を樹脂層20Bで被覆したジャケットタイプの第2形態(ガイドワイヤ100B)の構成等、公知の形態を採用することができる。以下、本発明のガイドワイヤ100の形態例としてガイドワイヤ100A、100Bの構成を説明する。
【0032】
〈第1形態〉
図2を参照しながら、本発明に係るガイドワイヤ100の第1形態の構成について説明する。
【0033】
ガイドワイヤ100Aは、図2に示すように、ワイヤ本体110Aと、ワイヤ本体110Aの少なくとも一部を覆う被覆層40Aと、を有する。ワイヤ本体110Aは、長尺なコア部材10Aと、コア部材10Aの先端部の周囲を覆う管腔体20Aと、管腔体20Aをコア部材10Aに固定する固定部30Aと、を含む。
【0034】
コア部材10Aは、第1コア部11Aと、第1コア部11Aの基端側に配置され、第1コア部11に接合された第2コア部12Aと、を備えている。第1コア部11Aは、第2コア部12Aの先端からガイドワイヤ100Aの先端側へ長軸方向に沿って延在する長尺な部材である。第2コア部12Aは、第1コア部11Aの基端からガイドワイヤ100Aの基端側へ延在する長尺な部材である。第1コア部11Aと第2コア部12Aとは、溶接、ロウ付け、はんだ付けにより接合できる。第1コア部11Aと第2コア部12Aとは、円筒状の接続部材を用いて接続されてもよい。なお、コア部材10Aは、一本の連続した部材で形成してもよい。
【0035】
コア部材10Aは、ニッケル-チタン系合金などの超弾性合金やステンレス鋼などのガイドワイヤに適用可能な公知の材料で形成できる。第1コア部11Aは、第2コア部12Aの材料よりも剛性の低い材料で形成することが好ましい。なお、第1コア部11A及び第2コア部12Aは、同一の材料で形成してもよい。
【0036】
管腔体20Aは、線材をコア部材10Aに対して螺旋状に巻回してなるコイルである。管腔体20Aは、第1コア部11Aの先端部に配置される第1コイル21Aと、第1コイル21Aの基端側に配置され、第1コア部11Aと同軸的に配置される第2コイル22Aとで形成される。第1コア部11A及び第2コイル22Aは、コア部材10Aの第1コア部11Aを囲み、第1コア部11Aに固定される。第1コイル21Aには、上述のガイドワイヤ100におけるワイヤ本体第1外径一定部111、ワイヤ本体テーパー部112及びワイヤ本体第2外径一定部113が形成される。したがって、第1コイル21Aは、先端の外径が基端の外径よりも小さい。第2コイル22Aの外径は、先端から基端まで一定であることが好ましい。なお、管腔体20Aは、1つのコイルにより形成してもよいし、3つ以上のコイルにより形成してもよい。また、ガイドワイヤ100Aにおけるワイヤ本体第1外径一定部111、ワイヤ本体テーパー部112及びワイヤ本体第2外径一定部113は、管腔体20Aの第1コイル21A以外の箇所に形成されてもよい。
【0037】
第1コイル21Aを形成する線材の外径は、第2コイル22Aを形成する線材の外径よりも大きい。第1コイル21A及び第2コイル22Aを形成する線材の断面形状は、円形であることが好ましいが、楕円形、多角形でもよい。また、第1コイル21A及び第2コイル22Aを形成する線材は、1本の線材だけでなく、2本以上の線材からなる撚り線でもよい。
【0038】
管腔体20Aの第1コイル21A及び第2コイル22Aを形成する線材は、ステンレス鋼、超弾性合金、コバルト系合金、金、白金、タングステン等の金属、又はこれらを含む合金などの材料で形成できる。特に、第1コイル21Aを形成する線材は、放射線不透過性材料で形成されることが好ましい。これにより、ガイドワイヤ100Aは、放射線透視下における視認性が向上する。
【0039】
管腔体20Aの第1コイル21A及び第2コイル22Aを形成する線材の材料、外径、断面形状、第1コイル21A及び第2コイル22Aのピッチ等は、ガイドワイヤ100Aの目的に応じて適宜選択することができる。
【0040】
固定部30Aは、管腔体20Aをコア部材10Aに固定するための部材である。固定部30Aは、管腔体20Aの先端をコア部材10Aに固定する先端固定部31Aと、管腔体20Aの中間部をコア部材10Aに固定する中間固定部32Aと、管腔体20Aの基端をコア部材10Aに固定する基端固定部33Aと、を有する。
【0041】
固定部30Aを形成する材料は、ロウ材やはんだである。ロウ材は、金ロウや銀ロウなどがある。はんだは、スズ-銀合金系はんだ、スズ-鉛合金系はんだなどがある。固定部30Aを形成する材料は、接着剤であってもよい。
【0042】
被覆層40Aは、潤滑性被覆層41Aと、潤滑性被覆層41Aより基端側に形成される基端側被覆層42Aとを含む。被覆層40Aは、ワイヤ本体110Aを覆うように形成され、ガイドワイヤ100Aと血管やカテーテルとの間に生じる摩擦を低減することにより、ガイドワイヤ100Aの操作性や安全性を向上させる。
【0043】
潤滑性被覆層41Aは、第1コア部11Aに設けられた各部(管腔体20A、固定部30A)及び第1コア部11Aの一部を覆っている。基端側被覆層42Aは、コア部材10Aの、管腔体20Aよりも基端側に位置する部分を覆っている。基端側被覆層42Aは、第2コア部12Aを覆ってもよい。
【0044】
潤滑性被覆層41Aは、親水性ポリマーで形成できる。潤滑性被覆層41Aを形成する親水性ポリマーは、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、グリシジルメタクリレート-ジメチルアクリルアミドのブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びそれらの誘導体が挙げられる。特に、潤滑性被覆層41Aは、湿潤時に膨潤してハイドロゲルとなる材料で形成されることが好ましい。ハイドロゲルは、適度な弾力を有するため、ガイドワイヤ100Aと血管壁とが接触した際の衝撃を緩和することができる。
【0045】
基端側被覆層42は、低摩擦材料によって形成できる。低摩擦材料としては、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE等)やシリコーン樹脂等を好適に用いることができる。
【0046】
〈第2形態〉
次に、図3を参照しながら、本発明に係るガイドワイヤ100の第2形態の構成について説明する。
【0047】
図3に示すように、ガイドワイヤ100Bは、ワイヤ本体110Bと、ワイヤ本体110Bの少なくとも一部を覆う潤滑性被覆層30Bと、を有する。ワイヤ本体110Bは、長軸方向に延伸するコア部材10Bと、コア部材10Bを被覆する樹脂層20Bと、を含む。
【0048】
コア部材10Bは、先端から基端に向かって外径が増加するテーパー形状を少なくとも一部に有する第1コア部11Bと、第1コア部11Bの基端に隣接配置され長軸方向に沿って一定の外径を有する第2コア部12Bと、を含む。第1コア部11Bと第2コア部12Bとは、一本の連続した部材で形成されている。なお、コア部材10Bは、第1コア部11Bと第2コア部12Bとを溶接、ロウ付け、はんだ付けにより接合することにより形成してもよい。
【0049】
コア部材10Bは、前述のコア部材10Aに適用可能な材料で形成できる。
【0050】
樹脂層20Bは、コア部材10Bの全体を覆うように形成されている。樹脂層20Bの先端部は、丸みを帯びた形状を有する。
【0051】
樹脂層20Bは、柔軟性の高い材料で形成されることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE、PFA等)、又はこれらの複合材料や、ラテックスゴム、シリコーンゴム等の各種ゴム材料、又はこれらのうちに2以上を組み合わせた複合材料で形成できる。
【0052】
樹脂層20Bの厚みは、特に限定されない。また、樹脂層20Bは、一層構造に限定されず、多層構造としてもよい。
【0053】
潤滑性被覆層30Bは、樹脂層20Bの少なくとも一部を覆うように形成され、ガイドワイヤ100Bと血管やカテーテルとの間に生じる摩擦を低減することにより、ガイドワイヤ100Bの操作性や安全性を向上させる。また、潤滑性被覆層30Bは、樹脂層20B上に被覆されることにより、コア部材10B上に直接被覆された場合と比較して、耐剥離性が向上する。
【0054】
潤滑性被覆層30Bは、前述の潤滑性被覆層41Aに適用可能な材料で形成できる。
【0055】
ガイドワイヤ100Bは、第1コア部11Bの先端部にマーカー部を設けることができる。マーカー部は、放射線不透過性材料で形成されたコイルや筒状体を、接着剤やはんだ等の固定材料を介して第1コア部11Bの先端部付近に固定することによって設けられる。放射線不透過性材料としては、例えば、金、白金、タングステン等の貴金属又はこれらを含む合金(例えば白金-イリジウム合金)等が挙げられる。第1コア部11Bの先端部にマーカー部を設けることにより、ガイドワイヤ100Bは、放射線透視下における視認性が向上する。
【0056】
本発明に係るガイドワイヤ100は、血管穿孔を抑制するため、潤滑性被覆層120の形状に特徴を有する。潤滑性被覆層120は、ガイドワイヤ100Aの潤滑性被覆層41A及びガイドワイヤ100Bの潤滑性被覆層30Bに該当する。以下、本発明に係る潤滑性被覆層120について説明する。
【0057】
<潤滑性被覆層>
潤滑性被覆層120は、第1被覆部121と、第2被覆部122と、を含む。潤滑性被覆層120は、少なくとも一部が湿潤時に膨潤可能な材料で形成される。図1に示す点線は、潤滑性被覆層120の境界位置を示している。
【0058】
〈第1被覆部〉
第1被覆部121は、潤滑性被覆層120のうち、ワイヤ本体110の先端より基端側のワイヤ本体110の先端部の所定の領域を覆う部分である。第1被覆部121は、図1に示すように、被覆第1外径一定部121aと、被覆第1外径一定部121aの基端に隣接配置される被覆テーパー部121bと、被覆テーパー部121bの基端に隣接配置される被覆第2外径一定部121cと、を有する。
【0059】
第1被覆部121は、湿潤時に膨潤可能な材料で形成される。湿潤時に膨潤可能な材料は、前述の第1形態のガイドワイヤ100Aの潤滑性被覆層41Aに適用可能な親水性ポリマーを好適に用いることができる。
【0060】
被覆第1外径一定部121aは、ワイヤ本体第1外径一定部111の先端より基端側からワイヤ本体第1外径一定部111の基端までの領域を覆う部分である。潤滑性被覆層120が膨潤した状態において、被覆第1外径一定部121aの径方向の厚み(ワイヤ本体第1外径一定部111における第1被覆部121の径方向の厚み)d2は、長軸方向に沿って略一定である。なお、本明細書において、潤滑性被覆層120の厚みは、潤滑性被覆層120を形成する材料が湿潤時に膨潤した状態での厚みである。
【0061】
被覆テーパー部121bは、ワイヤ本体テーパー部112の先端から基端までの領域を覆う部分である。被覆テーパー部121bは、被覆第1外径一定部121aと滑らかに接続されている。潤滑性被覆層120が膨潤した状態において、被覆テーパー部121bの厚み(ワイヤ本体テーパー部112における第1被覆部121の径方向の厚み)d1は、基端から先端に向かって増加する。
【0062】
被覆第2外径一定部121cは、ワイヤ本体第2外径一定部113の先端から基端に向かう所定の範囲を覆う部分である。被覆第2外径一定部121cは、被覆テーパー部121bと滑らかに接続されている。潤滑性被覆層120が膨潤した状態において、被覆第2外径一定部121cの径方向の厚み(ワイヤ本体第2外径一定部113における第1被覆部121の径方向の厚み)d4は、長軸方向に沿って略一定である。
【0063】
ガイドワイヤ100は、図1に示すように、ワイヤ本体テーパー部112における第1被覆部121の径方向の厚みが、基端から先端に向かって増加することにより、ワイヤ本体テーパー部112の潤滑性が基端から先端に向かって高くなる。これにより、ガイドワイヤ100は、狭窄部への挿入が容易となる。また、ガイドワイヤ100は、潤滑性被覆層120が湿潤時に膨潤可能な親水性ポリマーで形成されているため、狭窄部に必要以上に強い力で押し込まれた場合であっても、潤滑性被覆層120の弾性力により過剰な押し込み力が弱められる。これにより、ガイドワイヤ100は、先端部が意図せずに進行して血管穿孔を生じることを抑制できる。
【0064】
図1に示すように、潤滑性被覆層120が膨潤した状態において、ワイヤ本体第1外径一定部111における第1被覆部121の径方向の厚みd2の最小値は、ワイヤ本体第2外径一定部113における第1被覆部121の径方向の厚みd4の最小値以上である。換言すると、被覆第1外径一定部121aの径方向の厚みd2の最小値は、被覆第2外径一定部121cの径方向の厚みd4の最小値以上である。好ましくは、被覆第1外径一定部121aの径方向の厚みd2の最小値は、被覆第2外径一定部121cの径方向の厚みd4の最小値より大きい。
【0065】
これにより、ガイドワイヤ100は、先端部において高い潤滑性を有するため、狭窄部への挿通性が向上する。
【0066】
図1に示すように、潤滑性被覆層120が膨潤した状態において、被覆第1外径一定部121aの外径(ワイヤ本体第1外径一定部111における第1被覆部121の外径)r1は、被覆テーパー部121bの外径(ワイヤ本体テーパー部112における第1被覆部121の外径)r2以下であることが好ましい。被覆テーパー部121bの外径r2は、被覆第2外径一定部121cの外径(ワイヤ本体第2外径一定部113における第1被覆部121の外径)r3以下であることが好ましい。本実施形態では、被覆第1外径一定部121aの外径r1、被覆テーパー部121bの外径r2及び被覆第2外径一定部121cの外径r3は、略等しい。
【0067】
ガイドワイヤ100は、被覆第1外径一定部121aと被覆テーパー部121bの外径が略等しく、両者が滑らかに接続されているため、ガイドワイヤ100を狭窄部に押し込んだ際に、ワイヤ本体テーパー部112が狭窄部入口に引っ掛かることが抑制される。特に、ガイドワイヤ100のワイヤ本体110がコイルタイプの構成(ワイヤ本体110A)である場合、第1被覆部121は、ワイヤ本体テーパー部112を形成するコイルが狭窄部入口に引っ掛かって破損することを効果的に抑制できる。
【0068】
〈第2被覆部〉
第2被覆部122は、潤滑性被覆層120のうち、第1被覆部121より先端側の部分である。第2被覆部122は、ワイヤ本体110の先端を覆い、ガイドワイヤ100の先端を形成する。
【0069】
第2被覆部122の基端は、第1被覆部121の先端に滑らかに接続している。第2被覆部122の径方向の厚みは、長軸方向に沿って略一定である。第2被覆部122の径方向の厚みは、第2被覆部122の基端に接続する第1被覆部121の先端における径方向の厚み(被覆第1外径一定部121aの径方向の厚み)d2と略一致する。
【0070】
本実施形態では、第1被覆部121と第2被覆部122とは、同一の材料で一体的に形成されている。したがって、第2被覆部122は、湿潤時に膨潤可能な材料で形成されている。なお、第2被覆部122の基端と第1被覆部121の先端とは、互いに離隔するように形成されてもよい。
【0071】
ガイドワイヤ100は、第2被覆部122により、先端に弾力性と高い潤滑性を有する。そのため、ガイドワイヤ100は、狭窄部に向かって血管内を進行する過程において、血管穿孔を抑制できると共に、血管の湾曲部や分岐部での操作性が向上する。
【0072】
潤滑性被覆層120は、第1被覆部121及び第2被覆部122以外の他の被覆部を有してもよい。また、潤滑性被覆層120の第2被覆部122の径方向の厚みは、長軸方向に沿って変化していてもよい。
【0073】
[第2実施形態]
次に、本発明に係るガイドワイヤの第2実施形態について説明する。なお、以下の説明では、主に前述した形態との相違点について説明し、他の形態と同等の機能を有する構成要件については同一又は関連する符号を付して詳細な説明を省略し、特に言及しない。
【0074】
第2実施形態に係るガイドワイヤ100Cについて図4を参照しながら説明する。第2実施形態のガイドワイヤ100Cは、第1被覆部121Cの形状が第1実施形態と相違する。第2実施形態に係るガイドワイヤ100Cは、図4に示すように、ワイヤ本体110の先端部の形状に沿うように第1被覆部121Cが形成される。
【0075】
なお、ガイドワイヤ100Cのワイヤ本体110は、前述した第1形態で示したコイルタイプのワイヤ本体110A(図2を参照)や、第2形態で示したジャケットタイプのワイヤ本体110B(図3を参照)の何れの構成であってもよい。
【0076】
潤滑性被覆層120Cは、第1被覆部121Cと、第2被覆部122Cと、を含む。
【0077】
第1被覆部121Cは、被覆第1外径一定部121Caと、被覆第1外径一定部121Caの基端に隣接配置される被覆テーパー部121Cbと、被覆テーパー部121Cbの基端に隣接配置される被覆第2外径一定部121Ccと、を有する。
【0078】
被覆第1外径一定部121Caは、ワイヤ本体第1外径一定部111の先端より基端側からワイヤ本体第1外径一定部111の基端までの領域を覆う部分である。潤滑性被覆層120が膨潤した状態において、被覆第1外径一定部121Caの径方向の厚みd2は、長軸方向に沿って略一定である。
【0079】
被覆テーパー部121Cbは、ワイヤ本体テーパー部112の先端から基端までの領域を覆う部分である。潤滑性被覆層120が膨潤した状態において、被覆テーパー部121Cbの厚みd1は基端から先端に向かって増加し、被覆テーパー部121Cbの外径r2は基端から先端に向かって減少する。したがって、被覆テーパー部121Cbのテーパー角は、ワイヤ本体テーパー部112のテーパー角よりも小さい。
【0080】
被覆第2外径一定部121Ccは、ワイヤ本体第2外径一定部113の先端から基端に向かう所定の範囲を覆う部分である。潤滑性被覆層120が膨潤した状態において、被覆第2外径一定部121Ccの径方向の厚みd4は、長軸方向に沿って略一定である。
【0081】
図4に示すように、潤滑性被覆層120Cが膨潤した状態において、被覆第1外径一定部121Caの径方向の厚みd2の最小値は、被覆第2外径一定部121Ccの径方向の厚みd4の最小値以上である。好ましくは、被覆第1外径一定部121Caの径方向の厚みd2の最小値は、被覆第2外径一定部121Ccの径方向の厚みd4の最小値より大きい。
【0082】
図4に示すように、潤滑性被覆層120Cが膨潤した状態において、被覆第1外径一定部121Caの外径r1の最大値は、被覆第2外径一定部121Ccの外径r3の最大値よりも小さい。これにより、ガイドワイヤ100は、先端部の外径を小さくすることができるため、狭窄部への挿通性が更に向上する。
【0083】
第2被覆部122Cは、潤滑性被覆層120のうち、第1被覆部121Cより先端側の部分である。第2被覆部122Cは、ワイヤ本体110の先端を覆い、ガイドワイヤ100Cの先端を形成する。第2被覆部122Cは、径方向の厚みが略一定である。
【0084】
第2実施形態のガイドワイヤ100Cは、被覆テーパー部121Cbのテーパー角がワイヤ本体テーパー部112のテーパー角よりも小さいため、ワイヤ本体テーパー部112が狭窄部入口に引っ掛かることが抑制される。特に、ガイドワイヤ100Cのワイヤ本体110がコイルタイプの構成(ワイヤ本体110A)である場合、第1被覆部121Cは、ワイヤ本体第2外径一定部113を形成するコイルが狭窄部入口に引っ掛かって破損することを効果的に抑制できる。また、被覆テーパー部121Cbは、湿潤時に膨潤可能な親水性ポリマーで形成され、被覆テーパー部121Cbの径方向の厚みd1が基端から先端に向かって増加するため、ワイヤ本体110の外径が変化するワイヤ本体第1外径一定部111とワイヤ本体テーパー部112との境界部周辺において、径方向の厚みが大きくなる。これにより、ガイドワイヤ100Cは、ワイヤ本体第1外径一定部111とワイヤ本体テーパー部112との境界部周辺において、潤滑性が向上すると共に、潤滑性被覆層120Cの弾性力により過剰な押し込み力を効果的に弱めることができる。更に、術者は、潤滑性被覆層120Cの弾性力により、被覆テーパー部121Cbの先端が狭窄部入口に接触したことを感覚的に把握できるため、ガイドワイヤ100Cを狭窄部に慎重に進めることができる。以上により、ガイドワイヤ100Cは、先端部が意図せずに進行して血管穿孔を生じることを抑制しつつ、狭窄部への高い挿通性を有することができる。
【0085】
[改変例]
本発明のガイドワイヤ100、100Cは、以下に示す変形例1~変形例3のように適宜変更して実施することもできる。なお、各変形例で示した図には、第1実施形態のガイドワイヤ100の構成に基づく変形例が示されているが、第2実施形態のガイドワイヤ100Cにも適用可能である。また、以下に示す改変例の各形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲の中で、各変形例で示した構成のうち必要な構成を適宜選択して他の形態と組み合わせて実施することもできる。
【0086】
〈変形例1〉
図5は、変形例1のガイドワイヤ100Dの先端部周辺を拡大した図である。変形例1のガイドワイヤ100Dは、図5に示すように、潤滑性被覆層120Dが第1被覆部121Dのみを有する構成である。
【0087】
第1被覆部121Dは、図5に示すように、被覆第1外径一定部121Daと、被覆第1外径一定部121Daの基端に隣接配置される被覆テーパー部121Dbと、被覆テーパー部121Dbの基端に隣接配置される被覆第2外径一定部121Dcと、を有する。
【0088】
被覆第1外径一定部121Daは、ワイヤ本体第1外径一定部111の先端より基端側からワイヤ本体第1外径一定部111の基端までの範囲を覆う部分である。
【0089】
被覆テーパー部121Dbは、ワイヤ本体テーパー部112の先端から基端までの領域を覆う部分である。被覆テーパー部121Dbの径方向の厚みd1は、基端から先端に向かって増加する。
【0090】
被覆第2外径一定部121Dcは、ワイヤ本体第2外径一定部113の先端から基端に向かう所定の範囲を覆う部分である。
【0091】
図5に示すように、潤滑性被覆層120Dが膨潤した状態において、被覆第1外径一定部121Daの径方向の厚みd2の最小値は、被覆第2外径一定部121Dcの径方向の厚みd4の最小値以上である。好ましくは、被覆第1外径一定部121Daの径方向の厚みd2の最小値は、被覆第2外径一定部121Dcの径方向の厚みd4の最小値より大きい。
【0092】
変形例1のガイドワイヤ100Dは、被覆テーパー部121Dbの径方向の厚みd1が基端から先端に向かって増加する。そのため、ガイドワイヤ100Dは、ワイヤ本体テーパー部112の潤滑性が基端から先端に向かって高くなるため、狭窄部への挿入が容易となる。
【0093】
また、ガイドワイヤ100Dは、第2被覆部122を有さないため、第2被覆部122を有するガイドワイヤ100と比較して、先端の潤滑性が低い。このため、ガイドワイヤ100Dは、狭窄部入口を確実に捉えることができる。
【0094】
〈変形例2〉
図6は、変形例2のガイドワイヤ100Eの先端部周辺を拡大した図である。変形例2のガイドワイヤ100Eは、図6に示すように、潤滑性被覆層120Eとして、第1被覆部121Eと、第2被覆部122Eと、を有する。
【0095】
第1被覆部121Eは、図6に示すように、被覆第1外径一定部121Eaと、被覆第1外径一定部121Eaの基端に隣接配置される被覆テーパー部121Ebと、被覆テーパー部121Ebの基端に隣接配置される被覆第2外径一定部121Ecと、を有する。
【0096】
被覆第1外径一定部121Eaは、ワイヤ本体第1外径一定部111の先端より基端側からワイヤ本体第1外径一定部111の基端までの範囲を覆う部分である。
【0097】
被覆テーパー部121Ebは、ワイヤ本体テーパー部112の先端から基端までの領域を覆う部分である。被覆テーパー部121Ebの径方向の厚みd1は、基端から先端に向かって増加する。
【0098】
被覆第2外径一定部121Ecは、ワイヤ本体第2外径一定部113の先端から基端に向かう所定の範囲を覆う部分である。
【0099】
図6に示すように、潤滑性被覆層120Eが膨潤した状態において、被覆第1外径一定部121Eaの径方向の厚みd2の最小値は、被覆第2外径一定部121Ecの径方向の厚みd4の最小値以上である。好ましくは、被覆第1外径一定部121Eaの径方向の厚みd2の最小値は、被覆第2外径一定部121Ecの径方向の厚みd4の最小値より大きい。
【0100】
第2被覆部122Eは、潤滑性被覆層120Eのうち、第1被覆部121Eより先端側の部分である。第2被覆部122Eは、ワイヤ本体110の先端を覆い、ガイドワイヤ100Eの先端を形成する。第2被覆部122Eの基端は、第1被覆部121Eの先端に滑らかに接続している。第2被覆部122Eの径方向の厚みは、長軸方向に沿って略一定である。第2被覆部122Eの径方向の厚みは、第2被覆部122Eの基端に接続する第1被覆部121Eの被覆第1外径一定部121Eaの径方向の厚みd2と略一致する。
【0101】
ガイドワイヤ100Eの先端における第2被覆部122Eの長軸方向の厚みd3は、被覆第1外径一定部121Eaの径方向の厚みd2より大きい。したがって、第2被覆部122Eは、長軸方向の厚みd3が、径方向の厚みよりも大きい。第2被覆部122Eの長軸方向の厚みd3は、図6に示すように、ワイヤ本体第1外径一定部111の最先端から第2被覆部122Eの最先端までの厚みである。
【0102】
変形例2のガイドワイヤ100Eは、第2被覆部122Eの長軸方向の厚みd3が被覆第1外径一定部121Eaの径方向の厚みd2より大きい。これにより、ガイドワイヤ100Eは、先端に、潤滑性被覆層120Eによる高い弾力性と高い潤滑性とを備えることができる。また、術者は、第2被覆部122Eにより、ガイドワイヤ100Eの先端が血管壁や狭窄部入口に接触したことを感覚的に把握できるため、ガイドワイヤ100を慎重に進めることができる。したがって、ガイドワイヤ100Eは、狭窄部に向かって血管内を進行する過程において、血管穿孔が抑制できると共に、血管の湾曲部や分岐部での操作性が向上する。
【0103】
〈変形例3〉
図7は、変形例3のガイドワイヤ100Fの先端部周辺を拡大した図である。変形例3のガイドワイヤ100Fは、図7に示すように、潤滑性被覆層120Fとして、第1被覆部121Fと、第2被覆部122Fと、を有する。
【0104】
第1被覆部121Fは、図7に示すように、被覆第1外径一定部121Faと、被覆第1外径一定部121Faの基端に隣接配置される被覆テーパー部121Fbと、被覆テーパー部121Fbの基端に隣接配置される被覆第2外径一定部121Fcと、を有する。
【0105】
被覆第1外径一定部121Faは、ワイヤ本体第1外径一定部111の先端より基端側からワイヤ本体第1外径一定部111の基端までの範囲を覆う部分である。
【0106】
被覆テーパー部121Fbは、ワイヤ本体テーパー部112の先端から基端までの領域を覆う部分である。被覆テーパー部121Fbの径方向の厚みd1は、基端から先端に向かって増加する。
【0107】
被覆第2外径一定部121Fcは、ワイヤ本体第2外径一定部113の先端から基端に向かう所定の範囲を覆う部分である。
【0108】
第1被覆部121Fは、図7に示すように、潤滑性被覆層120Fが膨潤した状態において、被覆第1外径一定部121Faの径方向の厚みd2の最小値は、被覆第2外径一定部121Fcの径方向の厚みd4の最小値以上である。好ましくは、被覆第1外径一定部121Faの径方向の厚みd2の最小値は、被覆第2外径一定部121Fcの径方向の厚みd4の最小値より大きい。
【0109】
第1被覆部121Fは、潤滑性を有する親水性ポリマーで形成される。親水性ポリマーは、前述した第1形態のガイドワイヤ100Aの潤滑性被覆層41Aに適用可能な湿潤時に膨潤可能な材料を好適に用いることができる。
【0110】
第2被覆部122Fは、潤滑性を有する疎水性ポリマーで形成される。疎水性ポリマーは、シリコーン樹脂等を好適に用いることができる。
【0111】
変形例3のガイドワイヤ100Fは、第2被覆部122Fが疎水性ポリマーで形成されるため、先端の潤滑性が適度に抑えられ、狭窄部入口を確実に捉えることができる。
【0112】
第1被覆部121Fと第2被覆部122Fの形成順序は、特に制限されず、第1被覆部121Fを形成した後に第2被覆部122Fを形成してもよいし、第2被覆部122Fを形成した後に第1被覆部121Fを形成してもよい。また、第2被覆部122Fは、ワイヤ本体110に、第1被覆部121Fを形成する材料を第2被覆部122Fの形成領域まで被覆した後、第2被覆部122Fの形成領域に存在する第1被覆部121Fを取り除き、第2被覆部122Fを形成する材料を被覆することによって形成することもできる。
【0113】
[作用効果]
以上説明したように、本発明に係るガイドワイヤ100は、長尺なワイヤ本体110と、ワイヤ本体110の少なくとも一部を覆う潤滑性被覆層120と、を有し、ワイヤ本体110は、ワイヤ本体第1外径一定部111と、ワイヤ本体第1外径一定部111の基端に隣接配置されたワイヤ本体テーパー部112と、を含み、潤滑性被覆層120は、湿潤時に膨潤可能な材料で形成される第1被覆部121を含み、第1被覆部121が膨潤した状態において、ワイヤ本体テーパー部112における第1被覆部121の径方向の厚みd1が、基端から先端に向かって増加する。
【0114】
このような構成により、ガイドワイヤ100は、ワイヤ本体第1外径一定部111とワイヤ本体テーパー部112により、ワイヤ本体110の先端部が細径化されているため、狭窄部への高い挿通性が得られる。また、ガイドワイヤ100は、ワイヤ本体テーパー部112における第1被覆部121の径方向の厚みd1が、基端から先端に向かって増加することにより、ワイヤ本体テーパー部112の潤滑性が基端から先端に向かって高くなる。これにより、ガイドワイヤ100は、狭窄部への挿入が容易となる。更に、ガイドワイヤ100は、潤滑性被覆層120が湿潤時に膨潤可能な材料で形成されているため、狭窄部に必要以上に強い力で押し込まれた場合であっても、潤滑性被覆層120の弾性力により過剰な押し込み力が弱められる。これにより、ガイドワイヤ100は、先端部が意図せずに進行して血管穿孔を生じることを抑制できる。
【0115】
また、ガイドワイヤ100のワイヤ本体110は、ワイヤ本体テーパー部112の基端に隣接配置されたワイヤ本体第2外径一定部113を含み、第1被覆部121が膨潤した状態において、ワイヤ本体第1外径一定部111における第1被覆部121の径方向の厚みd2の最小値は、ワイヤ本体第2外径一定部113における第1被覆部121の径方向の厚みd4の最小値以上となるようにしてもよい。
【0116】
このような構成により、ガイドワイヤ100は、先端部において高い潤滑性を有するため、狭窄部への挿通性が向上する。
【0117】
また、第1被覆部121Cが膨潤した状態において、ワイヤ本体テーパー部112における第1被覆部121Cの外径r2は、基端から先端に向かって減少するようにしてもよい。
【0118】
このような構成により、ガイドワイヤ100Cは、被覆テーパー部121Cbのテーパー角がワイヤ本体テーパー部112のテーパー角よりも小さくなるため、ワイヤ本体テーパー部112が狭窄部入口に引っ掛かることが抑制される。特に、ガイドワイヤ100Cのワイヤ本体110がコイルタイプの構成(ワイヤ本体110A)である場合、第1被覆部121Cは、ワイヤ本体第2外径一定部113を形成するコイルが狭窄部入口に引っ掛かって破損することを効果的に抑制できる。また、被覆テーパー部121Cbは、湿潤時に膨潤可能な材料で形成され、被覆テーパー部121Cbの径方向の厚みd1が基端から先端に向かって増加するため、ワイヤ本体110の外径が変化するワイヤ本体第1外径一定部111とワイヤ本体テーパー部112との境界部周辺において、径方向の厚みが大きくなる。これにより、ガイドワイヤ100Cは、ワイヤ本体第1外径一定部111とワイヤ本体テーパー部112との境界部周辺において、潤滑性が向上すると共に、潤滑性被覆層120Cの弾性力により過剰な押し込み力を効果的に弱めることができる。更に、術者は、潤滑性被覆層120Cの弾性力により、被覆テーパー部121Cbの先端が狭窄部入口に接触したことを感覚的に把握できるため、ガイドワイヤ100Cを狭窄部に慎重に進めることができる。以上により、ガイドワイヤ100Cは、先端部が意図せずに進行して血管穿孔を生じることを抑制しつつ、狭窄部への高い挿通性を有することができる。
【0119】
また、第1被覆部121Cが膨潤した状態において、ワイヤ本体第1外径一定部111における第1被覆部121Cの外径r1の最大値は、ワイヤ本体第2外径一定部113における第1被覆部121Cの外径r3の最大値よりも小さくしてもよい。
【0120】
このような構成により、ガイドワイヤ100Cは、先端部の外径を小さくすることができるため、狭窄部への挿通性が更に向上する。
【0121】
また、ガイドワイヤ100Eの潤滑性被覆層120Eは、ガイドワイヤ100Eの先端を形成する第2被覆部122Eを含み、第2被覆部122Eは、湿潤時に膨潤可能な材料で形成され、第1被覆部121E及び第2被覆部122Eが膨潤した状態において、第2被覆部122Cの長軸方向の厚みd3は、ワイヤ本体第1外径一定部111における第1被覆部121Eの径方向の厚みd2より大きくてもよい。
【0122】
このような構成により、ガイドワイヤ100Eは、先端に、潤滑性被覆層120Eによる高い弾力性と高い潤滑性とを備えることができる。また、術者は、第2被覆部122Eにより、ガイドワイヤ100Eの先端が血管壁や狭窄部入口に接触したことを感覚的に把握できるため、ガイドワイヤ100Eを慎重に進めることができる。したがって、ガイドワイヤ100Eは、狭窄部に向かって血管内を進行する過程において、血管穿孔が抑制できると共に、血管の湾曲部や分岐部での操作性が向上する。
【0123】
また、ガイドワイヤ100Fの潤滑性被覆層120Fは、ガイドワイヤ100Fの先端を形成する第2被覆部122Fを含み、第2被覆部122Fは、疎水性ポリマーで形成してもよい。
【0124】
このような構成により、ガイドワイヤ100Fは、先端の潤滑性が適度に抑えられ、狭窄部入口を確実に捉えることができる。
【0125】
また、ガイドワイヤ100のワイヤ本体110は、長尺なコア部材10Aと、コア部材10Aの先端部の外周を覆うように配置されたコイル(管腔体20A)と、を含み、ワイヤ本体第1外径一定部111及びワイヤ本体テーパー部112は、コイルによって形成されてもよい。
【0126】
このような構成により、ガイドワイヤ100は、コイルにより、先端部の柔軟性が向上するため、血管内を進行する際に湾曲部や分岐部での操作性が向上する。
【0127】
また、ガイドワイヤ100のワイヤ本体110は、長尺なコア部材10Bと、コア部材10Bの外周を被覆する樹脂層20Bと、を含み、少なくともワイヤ本体第1外径一定部111の外周及びワイヤ本体テーパー部112の外周は、樹脂層20Bによって形成してもよい。
【0128】
このような構成により、ガイドワイヤ100の潤滑性被覆層120は、樹脂層20B上に被覆されるため、耐剥離性が向上する。
【符号の説明】
【0129】
100、100A、100B、100C、100D、100E、100F ガイドワイヤ、
110、110A、110B ワイヤ本体、
111 ワイヤ本体第1外径一定部、
112 ワイヤ本体テーパー部、
113 ワイヤ本体第2外径一定部、
120 潤滑性被覆層、
121、121C、121D、121E、121F 第1被覆部、
121a、121Ca、121Da、121Ea、121Fa 被覆第1外径一定部、
121b、121Cb、121Db、121Eb、121Fb 被覆テーパー部、
121c、121Cc、121Dc、121Ec、121Fc 被覆第2外径一定部、
122、122C、122E、122F 第2被覆部、
C 中心軸、
d1 ワイヤ本体テーパー部における第1被覆部の径方向の厚み(被覆テーパー部の径方向の厚み)、
d2 ワイヤ本体第1外径一定部における第1被覆部の径方向の厚み(被覆第1外径一定部の径方向の厚み)、
d3 第2被覆部の長軸方向の厚み、
d4 ワイヤ本体第2外径一定部における第1被覆部の径方向の厚み(被覆第2外径一定部の径方向の厚み)、
r1 ワイヤ本体第1外径一定部における第1被覆部の外径(被覆第1外径一定部の外径)、
r2 ワイヤ本体テーパー部における第1被覆部の外径(被覆テーパー部の外径)、
r3 ワイヤ本体第2外径一定部における第1被覆部の外径(被覆第2外径一定部の外径)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7