(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157713
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】搬送装置の調整装置、搬送装置の調整方法、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
B65H 23/192 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B65H23/192
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072233
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】草刈 顕
【テーマコード(参考)】
3F105
【Fターム(参考)】
3F105AA01
3F105AA04
3F105AA08
3F105AA11
3F105AA12
3F105AA16
3F105BA07
3F105CA11
3F105CB01
3F105DA12
3F105DC03
3F105DC11
(57)【要約】
【課題】搬送装置の各部における搬送速度を効率的に把握して、当該搬送装置に関連する動作を調整できる調整装置等を提供する。
【解決手段】複数のモータ11A~11Iによって回転駆動される複数のローラ21A~21E、25F、25G、26H、26Iによって被搬送物3を搬送する搬送装置2の調整装置1は、複数のローラ21A~21E、25F、25G、26H、26Iの回転速度を直接的に測定する複数のローラ測定部4A~4Iと、複数のローラ測定部4A~4Iによって測定された回転速度に基づいて、搬送装置2に関連する動作を調整する動作調整部51と、を備える。動作調整部51は、複数のローラ測定部4A~4Iによって測定された回転速度に基づいて、複数のモータ11A~11Iの回転速度をまとめて調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモータによって回転駆動される複数のローラによって被搬送物を搬送する搬送装置の調整装置であって、
前記複数のローラの回転速度を直接的に測定する複数のローラ測定部と、
前記複数のローラ測定部によって測定された回転速度に基づいて、前記搬送装置に関連する動作を調整する動作調整部と、
を備える調整装置。
【請求項2】
前記動作調整部は、前記複数のローラ測定部によって測定された回転速度に基づいて、前記複数のモータの回転速度をまとめて調整する、請求項1に記載の調整装置。
【請求項3】
前記複数のモータの回転速度を測定する複数のモータ測定部を備え、
前記動作調整部は、前記複数のローラ測定部によって測定された前記複数のローラの回転速度、および、前記複数のモータ測定部によって測定された前記複数のモータの回転速度に基づいて、当該複数のモータの回転速度をまとめて調整する、
請求項2に記載の調整装置。
【請求項4】
前記動作調整部は、前記複数のローラ測定部によって測定された回転速度に基づいて、前記搬送装置によって搬送される前記被搬送物に対する処理タイミングを調整する、請求項1に記載の調整装置。
【請求項5】
前記複数のローラ測定部は、前記被搬送物を搬送していない前記複数のローラに接触して前記回転速度を測定する、請求項1から4のいずれかに記載の調整装置。
【請求項6】
前記複数のローラ測定部は、前記測定後に前記複数のローラから退避される、請求項5に記載の調整装置。
【請求項7】
前記動作調整部は、前記搬送装置外のコントローラに設けられ、
前記複数のローラ測定部によって測定された回転速度は、無線通信によって前記動作調整部に提供される、
請求項1から4のいずれかに記載の調整装置。
【請求項8】
前記複数のローラ測定部は、前記複数のローラの回転速度を同時に測定する、請求項1から4のいずれかに記載の調整装置。
【請求項9】
複数のモータによって回転駆動される複数のローラによって被搬送物を搬送する搬送装置の調整方法であって、
複数のローラ測定部によって、前記複数のローラの回転速度を直接的に測定することと、
動作調整部によって、前記複数のローラ測定部によって測定された回転速度に基づいて、前記搬送装置に関連する動作を調整することと、
を実行する調整方法。
【請求項10】
複数のモータによって回転駆動される複数のローラによって被搬送物を搬送する搬送装置の調整プログラムであって、
複数のローラ測定部によって、前記複数のローラの回転速度を直接的に測定することと、
動作調整部によって、前記複数のローラ測定部によって測定された回転速度に基づいて、前記搬送装置に関連する動作を調整することと、
をコンピュータに実行させる調整プログラムを記憶している記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は搬送装置の調整装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動機によって回転駆動される複数の搬送ロールによってフィルム等を延伸する搬送装置が開示されている。各電動機には、その回転速度を検出する回転速度検出器が設けられている。各回転速度検出器の検出信号は、各電動機の駆動制御または回転制御を行う駆動制御器に入力される。
【0003】
特許文献1のように、モータ(特許文献1における電動機)によって回転駆動される複数のローラ(特許文献1における複数の搬送ロール)によって被搬送物(特許文献1におけるフィルム等)を搬送する搬送装置(特許文献1における搬送装置)では、一般的に、各モータの回転速度を測定するロータリエンコーダ(特許文献1における回転速度検出器)が当該各モータと一体的に設けられる。
【0004】
各ロータリエンコーダによって測定された各モータの回転速度は、被搬送物の対応する各部の搬送速度を表すものとして利用されている。具体的には、各ローラの径や各モータに併設される各減速機の減速比等の機械仕様に基づいて、各ロータリエンコーダによって測定された各モータの回転速度が、被搬送物の対応する各部の搬送速度に換算される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、実際のローラ径や減速比等が機械仕様から乖離している場合もあるため、各ロータリエンコーダによって測定された各モータの回転速度が、被搬送物の対応する各部の搬送速度に正しく換算されるとは限らない。
【0007】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、搬送装置の各部における搬送速度を効率的に把握して、当該搬送装置に関連する動作を調整できる調整装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の調整装置は、複数のモータによって回転駆動される複数のローラによって被搬送物を搬送する搬送装置の調整装置であって、複数のローラの回転速度を直接的に測定する複数のローラ測定部と、複数のローラ測定部によって測定された回転速度に基づいて、搬送装置に関連する動作を調整する動作調整部と、を備える。
【0009】
本態様では、複数のローラ測定部によって、搬送速度と実質的に等しい複数のローラの回転速度を直接的に測定でき(すなわち、従来のロータリエンコーダのように、モータの回転速度から搬送速度を間接的に得るものではない)、動作調整部によって、搬送装置に関連する動作を効率的に調整できる。
【0010】
本開示の別の態様は、調整方法である。この方法は、複数のモータによって回転駆動される複数のローラによって被搬送物を搬送する搬送装置の調整方法であって、複数のローラ測定部によって、複数のローラの回転速度を直接的に測定することと、動作調整部によって、複数のローラ測定部によって測定された回転速度に基づいて、搬送装置に関連する動作を調整することと、を実行する。
【0011】
本開示の更に別の態様は、記憶媒体である。この記憶媒体は、複数のモータによって回転駆動される複数のローラによって被搬送物を搬送する搬送装置の調整プログラムであって、複数のローラ測定部によって、複数のローラの回転速度を直接的に測定することと、動作調整部によって、複数のローラ測定部によって測定された回転速度に基づいて、搬送装置に関連する動作を調整することと、をコンピュータに実行させる調整プログラムを記憶している。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本開示に包含される。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、搬送装置の各部における搬送速度を効率的に把握して、当該搬送装置に関連する動作を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】被搬送物を搬送する搬送装置を模式的に示す。
【
図2】ローラの回転速度を直接的に測定するローラ測定部を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態(以下では実施形態とも表される)について詳細に記述する。記述および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する記述を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、記述の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。実施形態において提示される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。実施形態は、便宜的に、それを実現する機能毎および/または機能群毎の構成要素に分解されて提示される。但し、実施形態における一つの構成要素が、実際には別体としての複数の構成要素の組合せによって実現されてもよいし、実施形態における複数の構成要素が、実際には一体としての一つの構成要素によって実現されてもよい。
【0016】
図1は、被搬送物3を搬送する搬送装置2を模式的に示す。被搬送物3としては、紐やワイヤ等の線状のものや、紙、布、フィルム、箔、ゴム等の面状のものが例示される。本実施形態では、面状の基材を被搬送物3として搬送方向(最上流の巻出ローラ25から最下流の巻取ローラ26に向かう方向)に搬送するロール・ツー・ロール(Roll-to-Roll)方式の搬送装置2について説明する。搬送装置2は、搬送される被搬送物3に対して任意の処理を施す装置、例えば、被搬送物3にコーティングを施すコータまたは塗布装置、被搬送物3に印刷を施す印刷機、被搬送物3に張力を印加して延伸する延伸装置等の一部でもよい。
【0017】
搬送装置2は、多数の搬送ローラ20によって、被搬送物3を搬送方向に搬送する。搬送ローラ20は、主に、モータ11(図示の五つのモータ11A~11E(および後述する四つのモータ11F~11I)の総称)によって回転駆動される駆動ローラ21(図示の五つの駆動ローラ21A~21Eの総称)と、駆動ローラ21との間で被搬送物3を挟み込んで当該駆動ローラ21と連動して回転する従動ローラ22(図示の五つの従動ローラ22A~22Eの総称)と、被搬送物3の搬送経路上に配置されて当該被搬送物3を案内する多数の案内ローラ23(
図1では二つの案内ローラのみに符号が付されている)と、ダンサ24(図示の四つのダンサ24A~24Dの総称)を構成するダンサローラと、モータ11(具体的には、モータ11Fおよび11G)によって回転駆動されて被搬送物3を搬送方向に沿って巻き出す巻出ローラ25(図示の二つの巻出ローラ25Fおよび25Gの総称)と、モータ11(具体的には、モータ11Hおよび11I)によって回転駆動されて被搬送物3を巻き取る巻取ローラ26(図示の二つの巻取ローラ26Hおよび26Iの総称)と、を備える。
図1は搬送ローラ20の簡易的な構成例を示すものであり、実際の搬送装置2では、巻出ローラ25と巻取ローラ26の間の搬送経路上に、任意の数およびタイプのローラが任意の配置で設けられる。
【0018】
各駆動ローラ21A~21Eと各従動ローラ22A~22Eの各ローラ対は、間に被挟み込んだ被搬送物3を搬送方向に搬送する。各駆動ローラ21A~21Eは、対応する各モータ11A~11Eによって回転駆動される。各従動ローラ22A~22Eは、対応する各駆動ローラ21A~21Eと連動して、当該各駆動ローラ21A~21Eと逆方向に実質的に同じ速度で回転する。例えば、駆動ローラ21Aはモータ11Aによって反時計回り方向に回転駆動され、従動ローラ22Aは駆動ローラ21Aと連動して時計回り方向に実質的に同じ速度で回転する。
【0019】
後述するように、本実施形態では、ローラ測定部4(具体的には、ローラ測定部4A~4E)が各駆動ローラ21の回転速度を測定するが、各駆動ローラ21の回転速度と各従動ローラ22の回転速度は実質的に同じなので、ローラ測定部4は各駆動ローラ21の回転速度に代えてまたは加えて各従動ローラ22の回転速度を測定してもよい。ここで、駆動ローラ21および/または従動ローラ22の回転速度は、当該ローラの周上(典型的には円周上)における接線方向の速度である。なお、対となる各駆動ローラ21と各従動ローラ22の径が等しい場合は、回転速度だけでなく単位時間当たりの回転数も両ローラで等しくなる。
【0020】
図示の例における第1駆動ローラ21Aおよび第1従動ローラ22Aの対は、最上流の巻出ローラ25の直後に設けられる搬送ローラ対であり、インフィードローラとも呼ばれる。また、図示の例における第5駆動ローラ21Eおよび第5従動ローラ22Eの対は、最下流の巻取ローラ26の直前に設けられる搬送ローラ対であり、アウトフィードローラとも呼ばれる。
【0021】
図示の例における第2~第4駆動ローラ21B~21Dおよび第2~第4従動ローラ22B~22Dの対は、搬送方向におけるインフィードローラとアウトフィードローラの間に設けられて、搬送方向に移動する被搬送物3に対して任意の処理を施す処理部に併設される搬送ローラ対である。詳細な図示は省略するが、処理部としては、被搬送物3にコーティングを施す塗布処理部、被搬送物3に印刷を施す印刷処理部、被搬送物3に張力を印加して延伸する延伸処理部が例示される。このような各処理部にモータ11(具体的には、モータ11B~11D)によって回転駆動される搬送ローラ対を併設することで、被搬送物3に処理が施される際の搬送速度を高精度に調整できる。
【0022】
多数の案内ローラ23は、被搬送物3の搬送経路上に配置されて当該被搬送物3を案内する。換言すれば、案内ローラ23は、他の搬送ローラ20と共に、被搬送物3の搬送経路を形成する。案内ローラ23は、モータ11等の回転駆動部が併設されないフリーローラである。前述のように、各駆動ローラ21と各従動ローラ22の対(および、後述する巻出ローラ25や巻取ローラ26)によって搬送方向に移動する被搬送物3に接触することで、案内ローラ23は回転する。そして、回転する案内ローラ23によって案内されることで、被搬送物3は搬送方向に滑らかに移動できる。
【0023】
ダンサ24は、被搬送物3の各部に適切な張力を付与するために設けられる。図示の例において、第1ダンサ24Aは巻出ローラ25とインフィードローラの間に設けられ、第2ダンサ24Bはインフィードローラと処理部の間に設けられ、第3ダンサ24Cは処理部とアウトフィードローラの間に設けられ、第4ダンサ24Dはアウトフィードローラと巻取ローラ26の間に設けられる。各ダンサ24は、被搬送物3の搬送経路から逸れた位置に設けられるダンサローラを備える。ダンサローラは、エアシリンダ等の不図示の推力付加部によって、被搬送物3の搬送経路から離れる方向に付勢または加圧されている。推力付加部による推力が略一定である場合、ダンサローラは当該推力に応じた略一定の張力を被搬送物3に付与する。なお、推力付加部による推力は可変でもよく、ダンサローラは当該推力に応じた可変の張力を被搬送物3に付与してもよい。
【0024】
被搬送物3および/または搬送装置2の始点に設けられる巻出ローラ25は、被搬送物3を搬送方向に沿って巻き出す。図示の例では、実際に被搬送物3を巻き出している使用中の巻出ローラ25Fと、実際に被搬送物3を巻き出していない未使用または使用済の巻出ローラ25Gが模式的に示されている。二つの巻出ローラ25Fおよび25Gはターレット等の旋回機構によって互いに連結されており、使用中の巻出ローラ25F(旧軸とも呼ばれる)における被搬送物3の残量が規定量まで減ると、旋回動作によって未使用の巻出ローラ25G(新軸とも呼ばれる)に交換される。巻出ローラ25Fおよび25Gは、それぞれの使用中に、対応するモータ11Fおよび11Gによって回転駆動されて、被搬送物3を搬送方向に沿って巻き出す。
【0025】
被搬送物3および/または搬送装置2の終点に設けられる巻取ローラ26は、被搬送物3を巻き取る。図示の例では、実際に被搬送物3を巻き取っている使用中の巻取ローラ26Hと、実際に被搬送物3を巻き取っていない未使用または使用済の巻取ローラ26Iが模式的に示されている。二つの巻取ローラ26Hおよび26Iはターレット等の旋回機構によって互いに連結されており、使用中の巻取ローラ26H(旧軸とも呼ばれる)における被搬送物3の巻取量が規定量に達すると、旋回動作によって未使用の巻取ローラ26I(新軸とも呼ばれる)に交換される。巻取ローラ26Hおよび26Iは、それぞれの使用中に、対応するモータ11Hおよび11Iによって回転駆動されて、被搬送物3を巻き取る。
【0026】
以上のような搬送装置2において、各駆動ローラ21(21A~21E)、各巻出ローラ25(25Fおよび25G)、各巻取ローラ26(26Hおよび26I)を回転駆動する各モータ11(11A~11I)は、当該各ローラ21、25、26の位置における被搬送物3の搬送速度(すなわち、当該各ローラ21、25、26の回転速度)が所期の値となるように制御される。
【0027】
各モータ11の回転速度と各ローラ21、25、26の回転速度は、当該各ローラ21、25、26の径や当該各モータ11に併設される各減速機の減速比等の機械仕様に基づいて、相互に換算可能である。このため、機械仕様が実際のローラ径や減速比等を正確に表している場合、各モータ11の回転速度から各ローラ21、25、26の回転速度(すなわち、被搬送物3の搬送速度)を正確に算出できる。具体的には、各モータ11(11A~11I)には、その回転速度を測定するロータリエンコーダ等の各モータ測定部12(12A~12I)が一体的に設けられている。そして、予め登録されているローラ径や減速比等の機械仕様に基づいて、各モータ測定部12の測定値(各モータ11の回転速度)が被搬送物3の搬送速度(各ローラ21、25、26の回転速度)に換算される。
【0028】
しかし、実際のローラ径や減速比等が機械仕様から乖離している場合もあるため、各モータ測定部12によって測定された各モータ11の回転速度が、被搬送物3の対応する各部の搬送速度(各ローラ21、25、26の回転速度)に正しく換算されるとは限らない。また、多数のローラやモータに関する正確な機械仕様を記録して最新状態に保持するには、相応の人的または非人的なリソースを割かなければならない。
【0029】
このような課題認識の下、本実施形態では、搬送装置2の調整段階で、複数のモータ11A~11Iの回転速度の調整や、前述の処理部(塗布処理部、印刷処理部、延伸処理部等)による被搬送物3に対する処理タイミングの調整を、調整装置1によって行う。
【0030】
調整装置1は、複数のモータ11(11A~11I)によって回転駆動される複数のローラ21(21A~21E)、25(25F、25G)、26(26H、26I)によって被搬送物3を搬送する搬送装置2を調整する装置である。調整装置1は、複数のローラ測定部4と、コントローラ5を備える。
【0031】
複数のローラ測定部4は、複数のローラ21、25、26の回転速度を直接的に測定する。ローラ測定部4の数は、測定対象であるローラ21、25、26の数と同じであるのが好ましい。
【0032】
図示の例では、ローラ測定部4Aが駆動ローラ21A(従動ローラ22Aでもよい)の回転速度を直接的に測定し、ローラ測定部4Bが駆動ローラ21B(従動ローラ22Bでもよい)の回転速度を直接的に測定し、ローラ測定部4Cが駆動ローラ21C(従動ローラ22Cでもよい)の回転速度を直接的に測定し、ローラ測定部4Dが駆動ローラ21D(従動ローラ22Dでもよい)の回転速度を直接的に測定し、ローラ測定部4Eが駆動ローラ21E(従動ローラ22Eでもよい)の回転速度を直接的に測定し、ローラ測定部4Fが巻出ローラ25Fの回転速度を直接的に測定し、ローラ測定部4Gが巻出ローラ25Gの回転速度を直接的に測定し、ローラ測定部4Hが巻取ローラ26Hの回転速度を直接的に測定し、ローラ測定部4Iが巻取ローラ26Iの回転速度を直接的に測定する。このように、複数のローラ測定部4A~4Iは、複数のローラ21A~21E、25F、25G、26H、26Iの回転速度を、同時または並行的に測定する。
【0033】
各ローラ測定部4は、回転測定部41と、通信部42を備える(ローラ測定部4Aについてのみ図示する)。
図2に模式的に示されるように、一または複数の回転可能な円板状の回転測定部41は、測定対象のローラ21、25、26に直接的に接触して回転速度を測定する。なお、各ローラ測定部4による各ローラ21、25、26の測定は搬送装置2の調整段階で行われるのが好ましく、
図2に示されるように、各ローラ測定部4(回転測定部41)と各ローラ21、25、26の間には被搬送物3が介在しない。すなわち、複数のローラ測定部4は、被搬送物3を搬送していない複数のローラ21、25、26に接触して回転速度を測定する。なお、各ローラ測定部4は、各ローラ21、25、26の回転速度を直接的に測定できる限り非接触式でもよく、例えば光によって各ローラ21、25、26の回転速度を直接的に測定するものでもよい。
【0034】
図1において、コントローラ5は、動作調整部51と、通信部52を備える。動作調整部51は、複数のローラ測定部4によって測定された複数のローラ21、25、26の回転速度に基づいて、搬送装置2に関連する動作を調整する。
【0035】
例えば、動作調整部51は、複数のローラ測定部4によって測定された複数のローラ21、25、26の回転速度に基づいて、複数のモータ11の回転速度をまとめて調整する。あるいは、動作調整部51は、複数のローラ測定部4によって測定された複数のローラ21、25、26の回転速度、および、複数のモータ測定部12によって測定された複数のモータ11の回転速度に基づいて、当該複数のモータ11の回転速度をまとめて調整してもよい。
【0036】
具体的には、全てのローラ21、25、26において等しい回転速度(すなわち、搬送速度)を実現したい場合、各ローラ測定部4の測定値が所期の回転速度に一致するように、動作調整部51が各モータ11の回転速度を調整する。なお、動作調整部51は、このような調整を自律的に行うものでもよいし、搬送装置2の管理者等の人からの入力に基づいて行うものでもよい。後者の場合、動作調整部51は、各ローラ測定部4や各モータ測定部12の測定値を画面表示等によって管理者等の人に対して提示し、それに応じた当該人からの各モータ11の回転速度の調整指令を受け付ける。
【0037】
以上のような動作調整部51による動作調整の結果、各ローラ21、25、26において所期の回転速度(すなわち、搬送速度)を実現するための各モータ11の回転速度がまとめて得られ、搬送装置2にテーブル等の形で保存される。これらのモータ11の回転速度を実際に適用することで、各ローラ21、25、26が所期の回転速度で回転し、被搬送物3が所期の搬送速度で搬送される。なお、搬送装置2において実現したい被搬送物3の搬送速度が複数ある場合(例えば、低速、中速、高速)、各搬送速度を実現する各モータ11の回転速度の組を調整装置1によって特定し、それぞれを個別のテーブル等の形で搬送装置2に保存しておけばよい。
【0038】
このように、本実施形態によれば、複数のローラ測定部4によって、搬送速度と実質的に等しい複数のローラ21、25、26の回転速度を直接的に測定でき(すなわち、ロータリエンコーダ等のモータ測定部12のように、モータ11の回転速度から搬送速度を間接的に得るものではない)、動作調整部51によって、複数のモータ11の回転速度をまとめて効率的に調整できる。また、本実施形態によれば、各モータ11の回転速度と各ローラ21、25、26の回転速度の換算のために、多数のローラやモータに関する正確な機械仕様を記録して最新状態に保持する必要がなくなるため、業務効率を更に高められる。
【0039】
動作調整部51は、複数のローラ測定部4によって測定された複数のローラ21、25、26の回転速度に基づいて、搬送装置2によって搬送される被搬送物3に対する処理タイミングを調整してもよい。各ローラ測定部4によって測定された各ローラ21、25、26の回転速度は被搬送物3の実際の搬送速度と実質的に等しいため、動作調整部51は、これらの回転速度に基づいて、前述の処理部(塗布処理部、印刷処理部、延伸処理部等)による被搬送物3に対する処理タイミングを適切に調整できる。
【0040】
なお、以上の実施形態においては、各ローラ21、25、26に直接的に取り付けられる各ローラ測定部4によって測定された回転速度を、搬送装置2外のコントローラ5に設けられる動作調整部51に伝送する必要がある。このような情報伝送のために、各ローラ測定部4には、コントローラ5における通信部52と通信可能な通信部42が設けられる。各ローラ測定部4における各通信部42とコントローラ5における通信部52は、有線接続によって通信可能に構成されてもよいが、好ましくは無線接続によって通信可能に構成される。この場合、複数のローラ測定部4によって測定された各ローラ21、25、26の回転速度は、無線通信によってコントローラ5における動作調整部51に提供される。
【0041】
以上のような調整装置1による調整後またはローラ測定部4による測定後、複数のローラ測定部4は複数のローラ21、25、26から退避される。具体的には、測定中に各ローラ21、25、26に接触していた各ローラ測定部4における回転測定部41(
図2)が、測定後に当該各ローラ21、25、26と接触しない位置まで退避される。あるいは、各ローラ21、25、26に対して着脱可能に構成される各ローラ測定部4が、測定後に当該各ローラ21、25、26から取り外されてもよい。
【0042】
以上、本開示を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本開示の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0043】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 調整装置、2 搬送装置、3 被搬送物、4 ローラ測定部、5 コントローラ、11 モータ、12 モータ測定部、20 搬送ローラ、21 駆動ローラ、22 従動ローラ、23 案内ローラ、24 ダンサ、25 巻出ローラ、26 巻取ローラ、41 回転測定部、51 動作調整部。