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特開2024-157717グリスシール取外し治具及びグリスシール取外し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157717
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】グリスシール取外し治具及びグリスシール取外し方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/00 20060101AFI20241031BHJP
   F16C 19/36 20060101ALI20241031BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20241031BHJP
   B25B 27/28 20060101ALI20241031BHJP
   F16J 15/12 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F16J15/00 D
F16C19/36
F16C33/78 Z
B25B27/28
F16J15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072242
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】523157634
【氏名又は名称】多摩川エアロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】御供田 浩
(72)【発明者】
【氏名】新名 修次
【テーマコード(参考)】
3C031
3J040
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3C031EE24
3J040BA03
3J040EA15
3J040EA17
3J040EA25
3J040EA43
3J040FA01
3J040FA05
3J040HA03
3J216AA03
3J216AB03
3J216BA23
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA05
3J216CB03
3J216CB13
3J216CB17
3J216CC03
3J216CC24
3J216CC33
3J216DA01
3J216FA09
3J216FA10
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA73
3J701BA77
3J701FA46
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】軸受が分解される際のグリスシールの破損を抑えることができるグリスシール取外し治具を提供する。
【解決手段】グリスシール取外し治具は、貫通穴108にアウターベアリング20側から挿入され、アウターベアリング20のコーン21に当接するベアリング側アタッチメント42と、貫通穴108にグリスシール30側から挿入され、グリスシール30に当接するグリスシール側プレート43と、ベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43との間にアウターベアリング20及びグリスシール30が挟まれた状態でベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43とを互いに固定する雄ねじ部44と、を備え、グリスシール30は、リング部31と、リング部31の外周部を保持する骨格構造体32と、を有しており、グリスシール側プレート43は、リング部31と対向して配置される押さえ面43cを有している。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールに形成された貫通穴の内部に軸受と軸方向に隣接して設けられているグリスシールを前記ホイールから取り外すグリスシール取外し治具であって、
前記貫通穴に前記軸受側から挿入され、前記軸受の内輪に当接する第1治具と、
前記貫通穴に前記グリスシール側から挿入され、前記グリスシールに当接する第2治具と、
前記第1治具と前記第2治具との間に前記軸受及び前記グリスシールが挟まれた状態で前記第1治具と前記第2治具とを互いに固定する固定部材と、
を備え、
前記グリスシールは、リング部と、前記リング部の外周部を保持する骨格構造体と、を有しており、
前記第2治具は、前記リング部と対向して配置される押さえ面を有しているグリスシール取外し治具。
【請求項2】
前記固定部材は、雄ねじ部を有しており、
前記雄ねじ部は、前記第1治具及び前記第2治具の一方と一体に形成され、前記一方の中心軸に沿って延伸しており、
前記第1治具及び前記第2治具の他方には、前記他方の中心軸に沿って延伸し、前記雄ねじ部が嵌め込まれるねじ穴が形成されている請求項1に記載のグリスシール取外し治具。
【請求項3】
前記雄ねじ部には、細目ねじが用いられている請求項2に記載のグリスシール取外し治具。
【請求項4】
前記固定部材は、前記雄ねじ部に取り付けられるナットをさらに有しており、
前記ねじ穴は、前記第1治具及び前記第2治具の前記他方を貫通しており、
前記ナットは、前記ねじ穴を貫通した前記雄ねじ部の先端部側に取り付けられ、前記他方に対して締め付けられる請求項2又は請求項3に記載のグリスシール取外し治具。
【請求項5】
前記押さえ面は、前記グリスシール側に凸となる段差面を有している請求項1又は請求項2に記載のグリスシール取外し治具。
【請求項6】
ホイールに形成された貫通穴の内部に軸受と軸方向に隣接して設けられているグリスシールを前記ホイールから取り外すグリスシール取外し方法であって、
第1治具を前記貫通穴に前記軸受側から挿入して、前記第1治具を前記軸受の内輪に当接させる工程と、
第2治具を前記貫通穴に前記グリスシール側から挿入して、前記第2治具を前記グリスシールに当接させる工程と、
前記内輪及び前記グリスシールが前記第1治具と前記第2治具との間に挟まれた状態で前記第1治具と前記第2治具とを互いに固定する工程と、
前記第1治具の挿入方向の力を前記第1治具に加え、前記内輪と共に前記グリスシールを前記ホイールから取り外す工程と、を有するグリスシール取外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリスシール取外し治具及びグリスシール取外し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車輪軸受シール装置が開示されている。この車輪軸受シール装置は、軸受及びグリスシールを有している。軸受は、外輪、内輪及び円錐ころを有している。軸受には、潤滑剤が充填されている。グリスシールは、潤滑剤が軸受から外部に漏れるのを防ぐため、軸方向において軸受よりも外側に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2022-553514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸受は、メンテナンス等のために定期的に分解される。軸受が分解される際には、内輪及び円錐ころに対し、軸方向において外側に向かう力が加えられる。これにより、内輪及び円錐ころは、グリスシールを押し出しながら、ホイールの外部に押し出される。
【0005】
しかしながら、内輪及び円錐ころが押し出される際、グリスシールには、内輪及び円錐ころによって局所的な荷重が加えられる。このため、グリスシールは、大きく変形しながら外部に押し出される。したがって、軸受が分解される際、グリスシールが破損してしまう場合があるという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、軸受が分解される際のグリスシールの破損を抑えることができるグリスシール取外し治具及びグリスシール取外し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るグリスシール取外し治具は、ホイールに形成された貫通穴の内部に軸受と軸方向に隣接して設けられているグリスシールを前記ホイールから取り外すグリスシール取外し治具であって、前記貫通穴に前記軸受側から挿入され、前記軸受の内輪に当接する第1治具と、前記貫通穴に前記グリスシール側から挿入され、前記グリスシールに当接する第2治具と、前記第1治具と前記第2治具との間に前記軸受及び前記グリスシールが挟まれた状態で前記第1治具と前記第2治具とを互いに固定する固定部材と、を備え、前記グリスシールは、リング部と、前記リング部の外周部を保持する骨格構造体と、を有しており、前記第2治具は、前記リング部と対向して配置される押さえ面を有している。
【0008】
本発明に係るグリスシール取外し方法は、ホイールに形成された貫通穴の内部に軸受と軸方向に隣接して設けられているグリスシールを前記ホイールから取り外すグリスシール取外し方法であって、第1治具を前記貫通穴に前記軸受側から挿入して、前記第1治具を前記軸受の内輪に当接させる工程と、第2治具を前記貫通穴に前記グリスシール側から挿入して、前記第2治具を前記グリスシールに当接させる工程と、前記内輪及び前記グリスシールが前記第1治具と前記第2治具との間に挟まれた状態で前記第1治具と前記第2治具とを互いに固定する工程と、前記第1治具の挿入方向の力を前記第1治具に加え、前記内輪と共に前記グリスシールを前記ホイールから取り外す工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軸受が分解される際のグリスシールの破損を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る車輪の構成を示す分解斜視図である。
図2】実施の形態に係るアウターホイール及び車軸の要部構成を示す断面図である。
図3】実施の形態に係るアウターホイール、インナーベアリング及びアウターベアリング等の構成を示す分解斜視図である。
図4】実施の形態に係るアウターホイール、インナーベアリング及びアウターベアリング等の構成を示す断面図である。
図5】実施の形態に係るアウターベアリング、グリスシール及びグリスリテーナーの構成を示す分解図である。
図6】実施の形態に係るグリスシールの構成を示す断面図である。
図7】実施の形態に係るグリスシール取外し治具の構成を示す分解図である。
図8】実施の形態に係るグリスシール取外し方法を示す断面図である。
図9図8の骨格構造体付近を拡大して示す図である。
図10】実施の形態の変形例1に係るグリスシール取外し治具の構成を示す断面図である。
図11】実施の形態の変形例1に係るグリスシール取外し治具を用いて、コーン、円錐ころ及びグリスシールがアウターホイールから取り外された状態を示す図である。
図12】実施の形態の変形例2に係るグリスシール取外し治具の構成を示す断面図である。
図13】実施の形態の変形例2に係るグリスシール取外し治具のグリスシール側プレートをグリスシールに接触させた状態を示す図である。
図14】実施の形態の変形例3に係るグリスシール取外し治具のグリスシール側プレートの構成を示す断面図である。
図15】実施の形態の変形例3に係るグリスシール取外し治具のグリスシール側プレートをグリスシールに接触させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係るグリスシール取外し治具及びグリスシール取外し方法について説明する。まず、本実施の形態に係る車輪について説明する。図1は、本実施の形態に係る車輪の構成を示す分解斜視図である。図1では、車輪として航空機用の車輪が例示されている。
【0012】
図1に示すように、車輪100は、ホイールユニット101及びタイヤ102を有している。ホイールユニット101は、アクスルユニット104及びハブキャップ105と共に、車軸103に取り付けられている。タイヤ102は、ホイールユニット101の外周側に取り付けられている。ホイールユニット101は、アウターホイール106及びインナーホイール107を有している。アウターホイール106及びインナーホイール107は、車軸103に回転自在に支持されている。以下の説明では、アウターホイール106の回転軸と平行な方向をアウターホイール106の軸方向、又は単に軸方向という場合がある。
【0013】
図2は、本実施の形態に係るアウターホイール及び車軸の要部構成を示す断面図である。図2の左右方向は、アウターホイール106の軸方向を表している。図2の右側は、車軸103の先端側、すなわち、軸方向においてアウターホイール106の外側を表している。図2の左側は、軸方向においてアウターホイール106の内側を表している。図3は、本実施の形態に係るアウターホイール、インナーベアリング及びアウターベアリング等の構成を示す分解斜視図である。図4は、本実施の形態に係るアウターホイール、インナーベアリング及びアウターベアリング等の構成を示す断面図である。図4の上下方向は、軸方向を表している。図4の上側は、軸方向においてアウターホイール106の外側を表している。図4の下側は、軸方向においてアウターホイール106の内側を表している。図5は、本実施の形態に係るアウターベアリング、グリスシール及びグリスリテーナーの構成を示す分解図である。
【0014】
図2図5に示すように、アウターホイール106の中心部には、貫通穴108が形成されている。貫通穴108は、軸方向に延伸している。貫通穴108は、アウターホイール106の内周面106aによって画定されている。
【0015】
貫通穴108には、車軸103が挿入されている。車軸103の外周面103aは、アウターホイール106の内周面106aと対向している。車軸103の外周面103aとアウターホイール106の内周面106aとの間には、インナーベアリング10及びアウターベアリング20が設けられている。アウターベアリング20は、本実施の形態における「軸受」の一例である。アウターホイール106は、インナーベアリング10及びアウターベアリング20を介して、車軸103に支持されている。本実施の形態のインナーベアリング10及びアウターベアリング20は、いずれも円錐ころ軸受である。
【0016】
貫通穴108は、ベアリングホール108a及びベアリングホール108bを有している。ベアリングホール108aは、軸方向において貫通穴108の内側の端部に設けられている。ベアリングホール108aには、インナーベアリング10が収容されている。ベアリングホール108bは、軸方向において貫通穴108の外側の端部に設けられている。ベアリングホール108bには、アウターベアリング20が収容されている。
【0017】
アウターベアリング20は、コーン21、カップ22及び円錐ころ23を有している。コーン21は、アウターベアリング20の内輪である。コーン21は、車軸103の外周面103aに固定されている。カップ22は、アウターベアリング20の外輪である。カップ22は、アウターホイール106の内周面106aのうち、ベアリングホール108bとなっている部分に固定されている。円錐ころ23は、コーン21とカップ22との間に設けられ、コーン21に支持されている。コーン21の軌道面及びカップ22の軌道面は、いずれも軸方向に対して傾斜している。各軌道面の頂点は、軸方向においてアウターベアリング20よりも内側に位置する。すなわち、各軌道面は、軸方向において外側ほど直径が大きくなるような円錐状に形成されている。
【0018】
軸方向においてアウターベアリング20よりも内側には、グリスリテーナー24が設けられている。グリスリテーナー24は、軸方向においてアウターベアリング20と隣接して設けられている。グリスリテーナー24は、アウターベアリング20とは別に設けられた独立した部材である。
【0019】
軸方向においてアウターベアリング20よりも外側には、グリスシール30が設けられている。グリスシール30は、軸方向においてアウターベアリング20と隣接して設けられている。グリスシール30は、アウターベアリング20とは別に設けられた独立した部材である。
【0020】
グリスリテーナー24、グリスシール30、コーン21及びカップ22によって囲まれた空間には、グリスが充填されている。グリスシール30が設けられていることにより、アウターホイール106の外部から上記空間への異物の浸入、及び上記空間からアウターホイール106の外部へのグリスの漏出が抑制されている。
【0021】
グリスリテーナー24、アウターベアリング20及びグリスシール30は、軸方向において外側から、アウターホイール106の内部すなわち貫通穴108の内部に、圧入等により嵌め込まれている。グリスリテーナー24、アウターベアリング20及びグリスシール30のそれぞれの外周端は、アウターホイール106の内周面106aに嵌合等により固定されている。
【0022】
インナーベアリング10は、コーン11、カップ12及び円錐ころ13を有している。カップ12は、アウターホイール106の内周面106aのうち、ベアリングホール108aとなっている部分に固定されている。インナーベアリング10は、各軌道面の傾斜がアウターベアリング20とは逆向きである点を除き、アウターベアリング20と同様の構成を有している。
【0023】
軸方向においてインナーベアリング10よりも外側、すなわちインナーベアリング10よりもアウターベアリング20側には、グリスリテーナー14が設けられている。軸方向においてインナーベアリング10よりも内側には、グリスシール15が設けられている。グリスリテーナー14、グリスシール15、コーン11及びカップ12によって囲まれた空間には、グリスが充填されている。
【0024】
グリスリテーナー14、インナーベアリング10及びグリスシール15は、軸方向において内側から、アウターホイール106の内部すなわち貫通穴108の内部に、圧入等により嵌め込まれている。ただし、グリスシール15の一部は、アウターホイール106の外部にはみ出している。このため、インナーベアリング10側のグリスシール15は、比較的容易に取り外すことができる。これに対し、アウターベアリング20側のグリスシール30は、その全体が貫通穴108の内部に設けられているため、インナーベアリング10側のグリスシール15と比較して取外しが困難である。
【0025】
図6は、本実施の形態に係るグリスシールの構成を示す断面図である。図6に示すグリスシール30は、アウターベアリング20側のグリスシールである。図6の上側は、軸方向において外側を表している。図6の下側は、軸方向において内側、すなわちアウターベアリング20側を表している。図6に示すように、グリスシール30は、全体として円環状の形状を有している。グリスシール30は、リング部31と、リング部31を保持する骨格構造体32と、を有する骨格グリスシールである。
【0026】
リング部31は、中心部が開口された円板状の形状を有している。リング部31は、外周部31a、内周部31b及び段差部31cを有している。リング部31は、金属により一体成形されている。リング部31の内径は、コーン21の内径と同等又はコーン21の内径よりも大きくなっている。
【0027】
外周部31aは、リング部31のうち外周端に位置する部分である。内周部31bは、リング部31のうち、外周部31aよりも内周側に形成された部分である。外周部31a及び内周部31bのそれぞれは、軸方向と概ね垂直に形成されている。内周部31bは、外周部31aに対して、アウターベアリング20側に凸となるように形成されている。内周部31bは、アウターベアリング20のコーン21の軸方向端面21aに常時摺接する(図2参照)。外周部31aと内周部31bとの間は、段差部31cによって接続されている。
【0028】
骨格構造体32は、弾性を有する樹脂などにより形成された構造体本体32aと、金属により形成された金属リング32bと、を有している。骨格構造体32の外周端は、締まり嵌め等により、アウターホイール106の内周面106aのうち、ベアリングホール108bとなっている部分に固定されている。金属リング32bは、構造体本体32aと一体成形されている。構造体本体32aは、リング部31の外周部31aを外周側から保持する保持部32cを有している。
【0029】
保持部32cは、支持面32c1及び保持片32c2を有している。支持面32c1は、外周部31aのうち、軸方向において内側の表面を支持している。保持片32c2は、支持面32c1と対向するように設けられている。保持片32c2は、外周部31aのうち、軸方向において外側の表面に押し付けられている。これにより、リング部31の外周部31aは、保持片32c2と支持面32c1との間に挟まれて保持されている。保持片32c2のうち、軸方向において外側の表面は、グリスシール30の中心軸に近づくほど高さが低くなる逆テーパ状に形成されている。
【0030】
軸方向に見たとき、リング部31は、円錐ころ23及びコーン21と重なっている。リング部31の内周部31bは、軸方向に見たとき、コーン21と重なっている。一方、骨格構造体32は、軸方向に見たとき、円錐ころ23とは重なっているが、コーン21とは重なっていない。
【0031】
次に、アウターベアリング20を分解する手順について説明する。アウターベアリング20は、修理、点検、メンテナンス等の際に分解される。本実施の形態では、後述するグリスシール取外し治具及びグリスシール取外し方法を用いることにより、アウターベアリング20が分解されるのと同時にグリスシール30が取り外される。なお、インナーベアリング10、及びインナーベアリング10側のグリスシール15は、所定の治具を用いて、アウターベアリング20が分解されるよりも先に取り外されているものとする。
【0032】
まず、本実施の形態に係るグリスシール取外し治具の構成について説明する。図7は、本実施の形態に係るグリスシール取外し治具の構成を示す分解図である。図7に示すように、グリスシール取外し治具40は、ベアリング側アタッチメント42と、グリスシール側プレート43と、を有している。ベアリング側アタッチメント42は、プッシュシリンダー41に取り付けられる。プッシュシリンダー41は、ベアリング側アタッチメント42と組み合わせて用いられる補助治具である。プッシュシリンダー41としては、既存の治具を用いることができる。
【0033】
本実施の形態において、ベアリング側アタッチメント42は、「第1治具」の一例である。第1治具は、アウターホイール106の貫通穴108にアウターベアリング20側から挿入され、コーン21に当接するように構成されている。
【0034】
本実施の形態ではプッシュシリンダー41及びベアリング側アタッチメント42が別体であるが、プッシュシリンダー41及びベアリング側アタッチメント42は一体であってもよい。この場合、プッシュシリンダー41及びベアリング側アタッチメント42を第1治具として用いることができる。
【0035】
また、本実施の形態において、グリスシール側プレート43は、「第2治具」の一例である。第2治具は、アウターホイール106の貫通穴108にグリスシール30側から挿入され、グリスシール30に当接するように構成されている。
【0036】
プッシュシリンダー41は、大径部41a及び小径部41bを有している。大径部41aは、円柱状の形状を有している。小径部41bは、大径部41aと同軸でかつ大径部41aよりも直径の小さい円柱状の形状を有している。小径部41bは、貫通穴108に対するプッシュシリンダー41の挿入方向において、大径部41aよりも前方側に設けられている。大径部41aの直径は、コーン21の内径よりも大きくなっている。小径部41bの直径は、コーン21の内径よりも小さくなっている。大径部41aと小径部41bとの間の段差には、肩部41cが形成されている。
【0037】
ベアリング側アタッチメント42は、大径部42a及び小径部42bを有している。大径部42aは、円柱状の形状を有している。小径部42bは、大径部42aと同軸でかつ大径部42aよりも直径の小さい円柱状の形状を有している。小径部42bは、貫通穴108に対するベアリング側アタッチメント42の挿入方向において、大径部42aよりも前方側に設けられている。大径部42aの直径は、コーン21の内径よりも大きくなっている。小径部42bの直径は、コーン21の内径よりも小さくなっている。大径部42aと小径部42bとの間の段差には、肩部42cが形成されている。
【0038】
ベアリング側アタッチメント42の挿入方向において後方側に位置する大径部42aの面には、挿入穴42dが形成されている。挿入穴42dは、大径部42aと同軸に形成されている。挿入穴42dには、プッシュシリンダー41の小径部41bが挿入される。プッシュシリンダー41の小径部41bがベアリング側アタッチメント42の挿入穴42dに挿入されることにより、プッシュシリンダー41及びベアリング側アタッチメント42が一体化する。
【0039】
ベアリング側アタッチメント42の挿入方向において、小径部42bよりも前方側には、ボルト状の雄ねじ部44が設けられている。雄ねじ部44は、小径部42bの中心から突出しており、ベアリング側アタッチメント42の中心軸に沿って延伸している。雄ねじ部44は、ベアリング側アタッチメント42と一体に形成されている。雄ねじ部44の直径は、小径部42bの直径よりも小さくなっている。雄ねじ部44には、細目ねじが用いられている。細目ねじは、並目ねじよりもピッチの小さいねじである。雄ねじ部44は、ベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43とを固定するために用いられる。本実施の形態において、雄ねじ部44は、「固定部材」の一例である。
【0040】
グリスシール側プレート43は、大径部43a及び小径部43bを有している。大径部43aは、概ね円板状の形状を有している。小径部43bは、大径部43aと同軸でかつ大径部43aよりも直径の小さい円柱状の形状を有している。大径部43aの直径は、グリスシール30の内径よりも大きくかつグリスシール30の外径よりも小さくなっている。小径部43bの直径は、コーン21の内径よりも小さくなっている。
【0041】
大径部43aと小径部43bとの間には、押さえ面43cが形成されている。押さえ面43cは、グリスシール側プレート43の中心軸と概ね垂直に形成されている。押さえ面43cには、後述する図9に示すように、1つ又は複数の段差面が形成されていてもよい。各段差面は、グリスシール側プレート43とグリスシール30との間の隙間を減少させるように、グリスシール30の断面形状に応じて、グリスシール30側に凸となるように形成される。各段差面は、グリスシール側プレート43の中心軸と垂直に形成される。各段差面は、グリスシール側プレート43の中心軸を中心とした同心円状に配置される。
【0042】
小径部43bには、ねじ穴43dが形成されている。ねじ穴43dは、グリスシール側プレート43の中心軸に沿って延伸している。ねじ穴43dは、小径部43b及び大径部43aを貫通している。ねじ穴43dには、ベアリング側アタッチメント42の雄ねじ部44が嵌め込まれるようになっている。これにより、ベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43とが固定される。
【0043】
なお、小径部43bには、ねじ穴43dに代えて、雄ねじ部44を貫通させる通し穴が形成されていてもよい。この場合、ベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43とを固定する際には、雄ねじ部44が通し穴に通された後、雄ねじ部44の先端にナットが嵌め込まれ、ナットによってベアリング側アタッチメント42及びグリスシール側プレート43が締め付けられる。
【0044】
図7には明示されていないが、押さえ面43cと小径部43bとの間には、小径部側段差面43eが形成されている。後述する図8に示すように、小径部側段差面43eは、隙間を介してコーン21の軸方向端面と対向するようになっている。
【0045】
次に、本実施の形態に係るグリスシール取外し方法について説明する。図8は、本実施の形態に係るグリスシール取外し方法を示す断面図である。
【0046】
まず、ベアリング側アタッチメント42をアウターホイール106の貫通穴108に挿入する。ベアリング側アタッチメント42は、貫通穴108のアウターベアリング20側すなわち図8の下方側から、雄ねじ部44が先頭になるように挿入される。これにより、図8に示すように、ベアリング側アタッチメント42の肩部42cは、アウターベアリング20のコーン21に当接する。
【0047】
次に、グリスシール側プレート43をアウターホイール106の貫通穴108に挿入する。グリスシール側プレート43は、貫通穴108のグリスシール30側すなわち図8の上方側から、小径部43bが先頭になるように挿入される。グリスシール側プレート43を貫通穴108に挿入するときには、ねじ穴43dに雄ねじ部44を嵌め込み、雄ねじ部44を中心としてグリスシール側プレート43を回転させる。これにより、雄ねじ部44がねじ穴43dにねじ込まれながら、グリスシール側プレート43が徐々に貫通穴108に挿入される。グリスシール側プレート43は、図8に示すように、押さえ面43cがグリスシール30の骨格構造体32に当接するまで貫通穴108に挿入される。
【0048】
押さえ面43cが骨格構造体32に当接したとき、小径部側段差面43eは、隙間を介してコーン21の軸方向端面と対向する。小径部側段差面43eは、コーン21の軸方向端面と接触してもよい。
【0049】
雄ねじ部44がねじ穴43dにねじ込まれることにより、ベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43とは、コーン21及びグリスシール30を挟んだ状態で互いに固定される。この状態では、ベアリング側アタッチメント42の肩部42cはコーン21と密着しており、グリスシール側プレート43の押さえ面43cの一部は骨格構造体32と密着している。雄ねじ部44の先端部は、ねじ穴43dを貫通し、グリスシール側プレート43の外側に突き出る。雄ねじ部44の先端部側には、固定部材の一部であるナット(図示せず)が取り付けられてもよい。ナットをグリスシール側プレート43に対して締め付けることにより、グリスシール側プレート43に対する雄ねじ部44の緩みを防止することができる。雄ねじ部44に細目ねじが用いられている場合、ナットとしては細目ナットが用いられる。また、雄ねじ部44の先端部側に取り付けられるナットは、ダブルナットであってもよい。ダブルナットを用いることにより、グリスシール側プレート43に対する雄ねじ部44の緩みをさらに確実に防止することができる。
【0050】
図9は、図8のグリスシールを拡大して示す図である。図9に示すように、本実施の形態の押さえ面43cは、第1段差面43c1を有している。押さえ面43cにおいて、第1段差面43c1は、グリスシール30側に凸となるように形成されている。第1段差面43c1は、軸方向と垂直に形成されている。第1段差面43c1は、リング部31と対向して配置されている。
【0051】
押さえ面43cは、骨格構造体32に押し付けられている。第1段差面43c1は、骨格構造体32の保持片32c2に押し付けられている。保持片32c2は、第1段差面43c1の押付け力により、リング部31に押し付けられている。これにより、リング部31は、支持面32c1と保持片32c2との間に強固に保持される。
【0052】
次に、プッシュシリンダー41をアウターホイール106の貫通穴108に挿入する。プッシュシリンダー41は、貫通穴108のアウターベアリング20側から、小径部41bが先頭になるように挿入される。このとき、プッシュシリンダー41の小径部41bは、ベアリング側アタッチメント42の挿入穴42dに挿入される。これにより、プッシュシリンダー41及びベアリング側アタッチメント42が一体化される。次に、ベアリング側アタッチメント42の挿入方向、すなわち図8中の上向きの力を、プッシュシリンダー41を介してベアリング側アタッチメント42に加える。例えば、ハンマー等を用いて、プッシュシリンダー41に図8中の上向きの衝撃力が加えられる。これにより、コーン21、円錐ころ23及びグリスシール30は、プッシュシリンダー41、ベアリング側アタッチメント42及びグリスシール側プレート43と一体になって、アウターホイール106から取り外される。以上の手順により、アウターベアリング20が分解されるとともにグリスシール30が取り外される。
【0053】
このとき、グリスシール30には、コーン21によって局所的な荷重が加えられる。このため、グリスシール30は、変形しながら外部に押し出される。グリスシール30の変形が過度に大きくなると、グリスシール30には、骨格構造体32とリング部31との分離などの破損が生じてしまうおそれがある。
【0054】
例えば、プッシュシリンダー41のみを用いてコーン21、円錐ころ23及びグリスシール30をアウターホイール106から押し出す場合、グリスシール30のリング部31は、コーン21によって図8中の上向きに押される。一方、グリスシール30の骨格構造体32は、コーン21によっては押されない。このため、リング部31は、保持片32c2による押付け力に抗して、骨格構造体32に対して相対的に図8中の上方に移動する。これにより、保持片32c2が変形し、リング部31が骨格構造体32による保持から外れてしまうため、骨格構造体32とリング部31とが分離してしまう。特に航空機用の車輪100では、性能保証の観点から、骨格構造体32とリング部31とが一旦分離してしまった場合、グリスシール30を再利用することはできず、新品のグリスシール30への交換が必要になる。
【0055】
これに対し、本実施の形態では、コーン21、円錐ころ23及びグリスシール30は、ベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43とに挟まれて一体化した状態で、アウターホイール106から取り外される。したがって、グリスシール30の過度の変形、及びそれによるグリスシール30の破損を抑えることができる。
【0056】
特に、本実施の形態のグリスシール側プレート43は、リング部31と対向する押さえ面43cを有している。これにより、コーン21によってリング部31が押されたとしても、押さえ面43cによって、骨格構造体32に対するリング部31の相対的な移動が抑制される。したがって、本実施の形態によれば、骨格構造体32とリング部31との分離などのグリスシール30の破損を抑えることができる。よって、再組立の際にグリスシール30の再利用を図ることができ、部品コストの削減を図ることができる。
【0057】
図10は、本実施の形態の変形例1に係るグリスシール取外し治具の構成を示す断面図である。図10では、ベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43とによってコーン21及びグリスシール30が挟まれた状態が示されている。図11は、本変形例に係るグリスシール取外し治具を用いて、コーン、円錐ころ及びグリスシールがアウターホイールから取り外された状態を示す図である。図10及び図11に示すように、本変形例のグリスシール側プレート43の押さえ面43cには、第1段差面43c1に加えて、第2段差面43c2及び第3段差面43c3が形成されている。
【0058】
第2段差面43c2は、第1段差面43c1よりも内周側に形成されている。第2段差面43c2は、第1段差面43c1に対し、グリスシール30側に凸となるように形成されている。ベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43とによってコーン21及びグリスシール30が挟まれた状態では、第2段差面43c2は、リング部31の外周部31aと対向している。この状態において、第2段差面43c2は、隙間を介して外周部31aと対向していてもよいし、外周部31aと接触していてもよい。
【0059】
第3段差面43c3は、第2段差面43c2よりも内周側に形成されている。第3段差面43c3は、第2段差面43c2に対し、グリスシール30側に凸となるように形成されている。ベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43とによってコーン21及びグリスシール30が挟まれた状態では、第3段差面43c3は、リング部31の内周部31bと対向している。この状態において、第3段差面43c3は、隙間を介して内周部31bと対向していてもよいし、内周部31bと接触していてもよい。その他の構成は、図7に示したグリスシール取外し治具40の構成と同様である。
【0060】
本変形例では、コーン21、円錐ころ23及びグリスシール30がアウターホイール106から取り外される際、第2段差面43c2及び第3段差面43c3によって、骨格構造体32に対するリング部31の相対的な移動がより確実に抑えられる。したがって、本変形例によれば、骨格構造体32に対するリング部31の相対的な移動によりリング部31が保持部32cから外れてしまうのをより確実に防ぐことができる。
【0061】
図12は、本実施の形態の変形例2に係るグリスシール取外し治具の構成を示す断面図である。図12に示すように、本変形例のグリスシール側プレート43は、小径部43bを有していない。また、本変形例のグリスシール側プレート43の押さえ面43cは、概ね平坦に形成されている。すなわち、押さえ面43cには、段差面が形成されていない。その他の構成は、図7に示したグリスシール取外し治具40の構成と同様である。
【0062】
図13は、本変形例に係るグリスシール取外し治具のグリスシール側プレートをグリスシールに接触させた状態を示す図である。図13に示すように、本変形例では、押さえ面43cの一部が骨格構造体32に押し付けられている。本変形例では、押さえ面43cとリング部31の外周部31aとの間の隙間、及び、押さえ面43cとリング部31の内周部31bとの間の隙間がやや大きくなるものの、骨格構造体32に対するリング部31の相対的な移動は押さえ面43cによって抑えられる。したがって、本変形例によっても、骨格構造体32に対するリング部31の相対的な移動によりリング部31が保持部32cから外れてしまうのを防ぐことができる。
【0063】
また、本変形例では、グリスシール側プレート43の形状が全体として平板状であるため、グリスシール側プレート43の製造コストを削減することができる。
【0064】
図14は、本実施の形態の変形例3に係るグリスシール取外し治具のグリスシール側プレートの構成を示す断面図である。図14に示すように、本変形例のグリスシール側プレート43の押さえ面43cは、平坦面43c4及びテーパ面43c5を有している。平坦面43c4は、軸方向と垂直に形成されている。テーパ面43c5は、平坦面43c4よりも外周側に設けられている。その他の構成は、図7に示したグリスシール取外し治具40の構成と同様である。
【0065】
既に述べたように、保持片32c2のうち軸方向において外側の表面は、グリスシール30の中心軸に近づくほど高さが低くなる逆テーパ状に形成されている。テーパ面43c5は、保持片32c2の断面形状に対応して、テーパ状に形成されている。すなわち、グリスシール30の中心軸と垂直な平面と、テーパ面43c5とがなす角度θは、テーパ面43c5が保持片32c2の表面に沿うように設定される。
【0066】
図15は、本変形例に係るグリスシール取外し治具のグリスシール側プレートをグリスシールに接触させた状態を示す図である。図15に示すように、テーパ面43c5は、保持片32c2と面接触している。すなわち、テーパ面43c5は、面同士の接触により保持片32c2に押し付けられている。これにより、保持片32c2の変形が抑えられるとともに、保持片32c2がリング部31に押し付けられるため、リング部31は、支持面32c1と保持片32c2との間に強固に保持される。このように、グリスシール側プレート43がテーパ面43c5を有しているため、ベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43とによってグリスシール30を密着して挟み込む密着クランプが可能になる。したがって、リング部31が骨格構造体32の保持から外れてしまうのを防ぐことができる。
【0067】
また、平坦面43c4は、外周部31aと面接触している。すなわち、平坦面43c4は、面同士の接触により外周部31aに押し付けられている。これにより、骨格構造体32に対するリング部31の相対的な移動が抑えられるため、リング部31が保持部32cから外れてしまうのをより確実に防ぐことができる。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態に係るグリスシール取外し治具40は、グリスシール30をアウターホイール106から取り外す治具である。グリスシール30は、アウターホイール106に形成された貫通穴108の内部に、アウターベアリング20と軸方向に隣接して設けられている。ここで、アウターホイール106は、ホイールの一例である。アウターベアリング20は、軸受の一例である。
【0069】
グリスシール取外し治具40は、ベアリング側アタッチメント42と、グリスシール側プレート43と、固定部材と、を備えている。ベアリング側アタッチメント42は、貫通穴108にアウターベアリング20側から挿入され、アウターベアリング20のコーン21に当接するように構成されている。グリスシール側プレート43は、貫通穴108にグリスシール30側から挿入され、グリスシール30に当接するように構成されている。固定部材は、ベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43との間にアウターベアリング20及びグリスシール30が挟まれた状態で、ベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43とを互いに固定するように構成されている。
【0070】
グリスシール30は、リング部31と、リング部31の外周部31aを保持する骨格構造体32と、を有している。グリスシール側プレート43は、リング部31と対向して配置される押さえ面43cを有している。ここで、ベアリング側アタッチメント42は、第1治具の一例である。グリスシール側プレート43は、第2治具の一例である。コーン21は、内輪の一例である。
【0071】
この構成によれば、コーン21及びグリスシール30は、ベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43とに挟まれて一体化した状態で、アウターホイール106から取り外される。したがって、アウターベアリング20が分解される際のグリスシール30の過度の変形、及びそれによるグリスシール30の破損を抑えることができる。
【0072】
また、コーン21によってリング部31が押されたとしても、押さえ面43cによって、骨格構造体32に対するリング部31の相対的な移動が抑制される。このため、リング部31が骨格構造体32による保持から外れてしまうのを防ぐことができる。したがって、上記構成によれば、骨格構造体32とリング部31との分離などのグリスシール30の破損を抑えることができる。よって、再組立の際にグリスシール30の再利用を図ることができ、部品コストの削減を図ることができる。
【0073】
本実施の形態に係るグリスシール取外し治具40において、固定部材は、雄ねじ部44を有している。雄ねじ部44は、ベアリング側アタッチメント42及びグリスシール側プレート43の一方と一体に形成されている。雄ねじ部44は、当該一方の中心軸に沿って延伸している。ベアリング側アタッチメント42及びグリスシール側プレート43の他方には、雄ねじ部44が嵌め込まれるねじ穴43dが形成されている。ねじ穴43dは、当該他方の中心軸に沿って延伸している。
【0074】
この構成によれば、ベアリング側アタッチメント42及びグリスシール側プレート43の一方と雄ねじ部44とが一体に形成されているため、グリスシール取外し治具40の部品点数を削減することができる。また、雄ねじ部44がねじ穴43dに嵌め込まれることによってベアリング側アタッチメント42及びグリスシール側プレート43が互いに位置決めされるため、作業工程を簡略化できる。
【0075】
本実施の形態に係るグリスシール取外し治具40において、雄ねじ部44には、細目ねじが用いられている。この構成によれば、ベアリング側アタッチメント42に衝撃が加えられたとき、ねじの緩みによりベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43との間の間隔が広がってしまうのを防ぐことができる。このため、コーン21及びグリスシール30をアウターホイール106から取り外す際に、コーン21及びグリスシール30がベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43とに挟まれて一体化した状態を維持することができる。
【0076】
本実施の形態に係るグリスシール取外し治具40において、固定部材は、雄ねじ部44に取り付けられるナットをさらに有している。ねじ穴43dは、ベアリング側アタッチメント42及びグリスシール側プレート43の他方を貫通している。ナットは、ねじ穴43dを貫通した雄ねじ部44の先端部側に取り付けられ、ベアリング側アタッチメント42及びグリスシール側プレート43の他方に対して締め付けられる。この構成によれば、雄ねじ部44の緩みをより確実に防ぐことができる。
【0077】
本実施の形態に係るグリスシール取外し治具40において、押さえ面43cは、グリスシール30側に凸となる第1段差面43c1、第2段差面43c2及び第3段差面43c3を有している。この構成によれば、グリスシール側プレート43とグリスシール30との間の隙間を減少させることができるため、骨格構造体32に対するリング部31の相対的な移動を抑制でき、リング部31が骨格構造体32による保持から外れてしまうのをより確実に抑えることができる。
【0078】
本実施の形態に係るグリスシール取外し方法は、グリスシール30をアウターホイール106から取り外す方法である。グリスシール30は、アウターホイール106に形成された貫通穴108の内部に、アウターベアリング20と軸方向に隣接して設けられている。ここで、アウターホイール106は、ホイールの一例である。アウターベアリング20は、軸受の一例である。
【0079】
グリスシール取外し方法は、第1工程~第4工程を有する。第1工程では、ベアリング側アタッチメント42を貫通穴108にアウターベアリング20側から挿入して、ベアリング側アタッチメント42をアウターベアリング20のコーン21に当接させる。ベアリング側アタッチメント42は、第1治具の一例である。コーン21は、内輪の一例である。
【0080】
第2工程では、グリスシール側プレート43を貫通穴108にグリスシール30側から挿入して、グリスシール側プレート43をグリスシール30に当接させる。ここで、グリスシール側プレート43は、第2治具の一例である。
【0081】
第3工程では、コーン21及びグリスシール30がベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43との間に挟まれた状態で、ベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43とを互いに固定する。
【0082】
第4工程では、ベアリング側アタッチメント42の挿入方向の力をベアリング側アタッチメント42に加え、コーン21と共にグリスシール30をアウターホイール106から取り外す。
【0083】
このグリスシール取外し方法によれば、コーン21及びグリスシール30は、ベアリング側アタッチメント42とグリスシール側プレート43とに挟まれて一体化した状態で、アウターホイール106から取り外される。したがって、アウターベアリング20が分解される際のグリスシール30の過度の変形、及びそれによるグリスシール30の破損を抑えることができる。よって、再組立の際にグリスシール30の再利用を図ることができ、部品コストの削減を図ることができる。
【0084】
本実施の形態では、雄ねじ部44がベアリング側アタッチメント42に設けられているが、雄ねじ部はグリスシール側プレート43に設けられていてもよい。この場合、雄ねじ部が嵌め込まれるねじ穴、又は雄ねじ部が通される通し穴は、ベアリング側アタッチメント42に形成される。
【0085】
本実施の形態では、固定部材として、ベアリング側アタッチメント42と一体に形成された雄ねじ部44を例に挙げたが、これには限られない。固定部材としては、ベアリング側アタッチメント42とは別体のねじが用いられてもよいし、ねじ以外の種々の固定部材が用いられてもよい。
【0086】
本実施の形態では、軸受として円錐ころ軸受を例に挙げたが、これには限られない。軸受としては、玉軸受、円筒ころ軸受、ニードル軸受などの種々の転がり軸受を用いることができる。また、軸受としては、転がり軸受以外に、滑り軸受、回転ジャーナルなどの種々の軸受を用いることもできる。
【符号の説明】
【0087】
10 インナーベアリング、11 コーン、12 カップ、13 円錐ころ、14 グリスリテーナー、15 グリスシール、20 アウターベアリング(軸受)、21 コーン(内輪)、21a 軸方向端面、22 カップ、23 円錐ころ、24 グリスリテーナー、30 グリスシール、31 リング部、31a 外周部、31b 内周部、31c 段差部、32 骨格構造体、32a 構造体本体、32b 金属リング、32c 保持部、32c1 支持面、32c2 保持片、40 グリスシール取外し治具、41 プッシュシリンダー、41a 大径部、41b 小径部、41c 肩部、42 ベアリング側アタッチメント(第1治具)、42a 大径部、42b 小径部、42c 肩部、42d 挿入穴、43 グリスシール側プレート(第2治具)、43a 大径部、43b 小径部、43c 押さえ面、43c1 第1段差面、43c2 第2段差面、43c3 第3段差面、43c4 平坦面、43c5 テーパ面、43d ねじ穴、43e 小径部側段差面、44 雄ねじ部(固定部材)、100 車輪、101 ホイールユニット、102 タイヤ、103 車軸、103a 外周面、104 アクスルユニット、105 ハブキャップ、106 アウターホイール(ホイール)、106a 内周面、107 インナーホイール、108 貫通穴、108a、108b ベアリングホール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15