(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157718
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】フレキシブルカップリング
(51)【国際特許分類】
F16D 3/78 20060101AFI20241031BHJP
F16D 3/62 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F16D3/78
F16D3/62 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072244
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】磯村 克明
(57)【要約】
【課題】強度および耐久性を確保しつつ、径方向の小型化を図ることが可能なフレキシブルカップリングを提供する。
【解決手段】コード部材2と、コード部材2が巻き掛けられ、所定の回転部材に接続される複数の接続部材4と、コード部材2および接続部材4を配置させて固定する本体部材3とを備え、回転部材同士をトルク伝達が可能な状態に連結するフレキシブルカップリング1において、接続部材4は、本体部材3における第1ピッチ円PC1上で等間隔に配置されて回転部材に接続するカラー部4aと、第1ピッチ円PC1よりも径が小さい第2ピッチ円PC2上で等間隔に配置される軸部4bと、カラー部4aと軸部4bとを一体に連結する連結部4cとを有し、コード部材2は、接続部材41のカラー部41aと、隣接する他の接続部材42の軸部42bとの間に巻き掛けられ、接続部材41,42の間でトルクを伝達する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状のコード部材と、前記コード部材が巻き掛けられるとともに、所定の回転部材に接続される複数の接続部材と、前記コード部材および前記接続部材を配置させて固定する本体部材と、を備え、異なる二つの前記回転部材同士をトルク伝達が可能な状態に連結するフレキシブルカップリングであって、
前記接続部材は、前記本体部材における前記回転部材と同心の第1ピッチ円上で等間隔に配置されて前記回転部材に接続するカラー部と、前記本体部材における前記回転部材と同心の、前記第1ピッチ円よりも径が小さい第2ピッチ円上で等間隔に配置される軸部と、前記カラー部と前記軸部とを一体に連結する連結部と、を有し、
前記コード部材は、所定の前記接続部材の前記カラー部と、隣接する他の前記接続部材の前記軸部との間に巻き掛けられ、互いに隣接する前記接続部材の間でトルクを伝達する
ことを特徴とするフレキシブルカップリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二つの回転部材の間で、振動や偏心を吸収しつつ、それら二つの回転部材をトルク伝達が可能な状態に連結するフレキシブルカップリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に用いられたフレキシブルカップリングに関する発明が記載されている。この特許文献1に記載されたフレキシブルカップリングは、6個の線材巻部材(接続用カラー)と、トルク伝達線材(コード)と、環状弾性体(本体)とで構成されている。線材巻部材は、回転軸線を中心とした円周(環状弾性体の円周)上に、等間隔で配置されている。トルク伝達線材は、正トルク伝達線材と負トルク伝達線材とを有し、それら正トルク伝達線材および負トルク伝達線材が環状弾性体の周方向に交互に配置され、隣り合う線材巻部材に巻き掛けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載されているフレキシブルカップリングは、
図1の(a)に示すように、隣り合う線材巻部材101,102に、正トルク伝達線材103と負トルク伝達線材104とが交互に巻き掛けられている。そのため、
図1の(b)に示すように、線材巻部材101,102の軸線方向(全長方向/
図1の(b)の左右方向)では、正トルク伝達線材103を巻き掛ける範囲と負トルク伝達線材104を巻き掛ける範囲とが区画される。すなわち、正トルク伝達線材103および負トルク伝達線材104は、それぞれ、線材巻部材101,102の全長で部分的に巻き掛けられる。このような構成のフレキシブルカップリング100では、強度や耐久性の観点からトルク伝達線材103,104の巻き数を確保するためには、線材巻部材101,102の径方向にトルク伝達線材103,104の巻き数をそれぞれ増大しなければならない。その結果、フレキシブルカップリング100の体格も径方向に大型化してしまう。例えば、
図2に示すように、車両のプロペラシャフト200と、トランスミッションの出力軸(図示せず)やデファレンシャルギヤ側の回転部材(図示せず)との連結部分にフレキシブルカップリング100を用いた場合、そのフレキシブルカップリング100の外形が最大外径部となる(通常、フレキシブルカップリング100の外径が、プロペラシャフト200やトランスミッションの出力軸の外径よりも大きい)。したがって、フレキシブルカップリング100の体格が大型化してしまうと、車両への搭載性が低下してしまう。
【0005】
この発明は上記のような技術的課題に着目して考え出されたものであり、強度および耐久性を確保しつつ、径方向の小型化を図ることが可能なフレキシブルカップリングを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、線状のコード部材と、前記コード部材が巻き掛けられるとともに、所定の回転部材に接続される複数の接続部材と、前記コード部材および前記接続部材を配置させて固定する本体部材と、を備え、異なる二つの前記回転部材同士をトルク伝達が可能な状態に連結するフレキシブルカップリングであって、前記接続部材は、前記本体部材における前記回転部材と同心の第1ピッチ円上で等間隔に配置されて前記回転部材に接続するカラー部と、前記本体部材における前記回転部材と同心の、前記第1ピッチ円よりも径が小さい第2ピッチ円上で等間隔に配置される軸部と、前記カラー部と前記軸部とを一体に連結する連結部と、を有し、前記コード部材は、所定の前記接続部材の前記カラー部と、隣接する他の前記接続部材の前記軸部との間に巻き掛けられ、互いに隣接する前記接続部材の間でトルクを伝達することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明のフレキシブルカップリングでは、コード部材を巻き掛ける接続部材が、カラー部、および、軸部から構成される。カラー部および軸部は、連結部によって連結された一体の剛性部材であって、連結部を介して互いに力の伝達が可能な部材となっている。カラー部は、本体部材における第1ピッチ円上に配置されるのに対して、軸部は、第1ピッチ円よりも径が小さい第2ピッチ円上に配置される。そして、接続部材のカラー部と、その接続部材に対して本体部材の円周方向で隣り合う他の接続部材の軸部とにコード部材が巻き掛けられる。第1ピッチ円の径および第2ピッチ円の径は、それぞれ、コード部材を巻き掛ける際に、隣り合うコード部材同士が交差したり干渉したりしないように設定されている。前述の
図1に示したように、従来の構成であれば接続部材(線材巻部材)における全長の一部にしかコード部材を巻き掛けることができない。それに対して、この発明のフレキシブルカップリングでは、接続部材(カラー部および軸部)のほぼ全長にわたってコード部材を巻き掛けることができる。そのため、従来の構成と比較して、径方向の大きさを増大させることなく、コード部材の巻き数を増やして強度を確保することがでできる。したがって、この発明のフレキシブルカップリングによれば、強度および耐久性を確保しつつ、径方向の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、従来技術の課題を説明するための図であって、
図1の(a)は、従来のフレキシブルカップリングの構成を示す正面視の断面図であり、
図1の(b)は、
図1の(a)におけるA-A切断線の断面図およびB-B切断線の断面図である。
【
図2】
図2は、従来技術の課題を説明するための図であって、車両のプロペラシャフトに適用されたフレキシブルカップリングの例を示す図(一部断面図)である。
【
図3】
図3は、この発明のフレキシブルカップリングの構成を説明するための図であって、
図3の(a)は、この発明のフレキシブルカップリングの一例を示す正面視の断面図であり、
図3の(b)は、
図3の(a)におけるC-C切断線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
【0010】
図3に、この発明の実施形態で対象にするフレキシブルカップリングの一例を示してある。
図3に示すフレキシブルカップリング1は、前述の特許文献1に記載された“フレキシブルカップリング”と、基本的な部分では同様に構成されている。すなわち、フレキシブルカップリング1は、特許文献1に記載された“トルク伝達線材”と同様に機能するコード部材2を備えている。また、特許文献1に記載された“環状弾性体”と同様に機能する本体部材3を備えている。そして、特許文献1に記載された“線材巻部材”と同様に機能するとともに、従来の“線材巻部材”にはない新たな機能を付加した接続部材4を備えている。そして、フレキシブルカップリング1は、異なる二つの回転部材(図示せず)同士を振動や偏心を吸収しつつ、トルク伝達が可能な状態に連結する。
【0011】
コード部材2は、線状のトルク伝達部材であり、後述するように、隣り合う接続部材4に巻き掛けられ、それら接続部材4の間でトルクを伝達する。コード部材2は、例えば、ポリエステルやナイロン等の、所要の抗張力および弾性を有する樹脂材料で形成されている。コード部材2は、後述する複数の接続部材4の数に対応して、複数設けられている。
【0012】
本体部材3は、環状の弾性部材であり、上記のコード部材2、および、コード部材2を巻き掛けた接続部材4を固定する。具体的には、本体部材3は、例えば、ゴムやプラスチック等の、所要の強度および弾性を有する樹脂材料で形成されおり、コード部材2および接続部材4を内部に埋め込んだ状態で配置させて固定する。後述するように、本体部材3には、その円周方向に、フレキシブルカップリング1に連結する所定の回転部材と同心の、第1ピッチ円PC1、および、第2ピッチ円PC2が設定されている。それら第1ピッチ円PC1上および第2ピッチ円PC2上に、それぞれ、後述する接続部材4のカラー部4aおよび軸部4bが配置される。第1ピッチ円PC1および第2ピッチ円PC2は、互いに直径が異なっており、第2ピッチ円PC2の直径が第1ピッチ円PC1の直径よりも小さくなっている。
【0013】
接続部材4は、上記のコード部材2が巻き掛けられるとともに、フレキシブルカップリング1で連結する所定の回転部材(図示せず)に接続される。接続部材4は、カラー部4a、軸部4b、および、連結部4cから構成されている。接続部材4は、上記のようにコード部材2を巻き掛けるために、複数設けられている。
図3に示す例では、6個の接続部材4が、本体部材3の円周方向に等間隔で配列されている。
【0014】
接続部材4のカラー部4aは、円筒形状の剛性部材であり、外周面にコード部材2が巻き掛けられる。内周側の中空部分は、フレキシブルカップリング1と所定の回転部材とを接続する締結ボルト(図示せず)用のボルト穴を形成している。そして、接続部材4は、本体部材3における第1ピッチ円PC1上にカラー部4aが位置するように配置される。
【0015】
接続部材4の軸部4bは、円柱形状の剛性部材であり、外周面にコード部材2が巻き掛けられる。また、連結部4cは、カラー部4aと軸部4bとを一体に連結する。したがって、カラー部4aおよび軸部4bは、連結部4cによって連結された一体の剛性部材であって、連結部4cを介して互いに力の伝達が可能な部材となっている。そして、接続部材4は、上記のように、本体部材3における第1ピッチ円PC1上にカラー部4aが位置するとともに、本体部材3における第2ピッチ円PC2上に軸部4bが位置するように配置される。
【0016】
そして、本体部材3の円周方向で隣り合う接続部材4のカラー部4aと軸部4bとにコード部材2が巻き掛けられる。具体的には、
図3に示す例では、例えば、トランスミッションの出力軸(図示せず)に接続する側の接続部材41と、例えば、プロペラシャフト(図示せず)に接続する側の接続部材42とが、本体部材3の円周方向に等間隔で交互に配列されている。そして、互いに隣り合う接続部材41のカラー部41aと、接続部材42の軸部42bとの間、ならびに、接続部材41の軸部41bと、接続部材42のカラー部42aとの間に、それぞれ、コード部材21、および、コード部材22が巻き掛けられている。
【0017】
なお、本体部材3における第1ピッチ円PC1の径、および、第2ピッチ円PC2の径は、それぞれ、コード部材2(21,22)を接続部材4(41,42)のカラー部4a(41a,42a)と軸部4b(41b,42b)に巻き掛ける際に、隣り合うコード部材2(21,22)同士が交差したり干渉したりしないように設定されている。
【0018】
以上のように、この発明の実施形態におけるフレキシブルカップリング1では、コード部材2(21,22)を巻き掛ける接続部材4(41,42)が、カラー部4a(41a,42a)、および、軸部4b(41b,42b)から構成される。カラー部4a(41a,42a)および軸部4b(41b,42b)は、連結部4c(41c,42c)によって連結された一体の構造部材となっている。カラー部4a(41a,42a)は、本体部材3における第1ピッチ円PC1上に配置されるのに対して、軸部4b(41b,42b)は、第1ピッチ円PC1よりも径が小さい第2ピッチ円PC2上に配置される。そして、本体部材3の円周方向で隣り合う接続部材41,42のカラー部41a,42aと軸部42b,42aとにコード部材21,22が巻き掛けられる。
【0019】
前述の
図1に示したように、従来の構成であれば接続部材(線材巻部材)における全長の一部にしかコード部材を巻き掛けることができない。それに対して、この発明の実施形態におけるフレキシブルカップリング1では、カラー部4a(41a,42a)および軸部4b(41b,42b)の軸方向におけるほぼ全長にわたってコード部材21,22を巻き掛けることができる。そのため、従来の構成と比較して、径方向の大きさを増大させることなく、コード部材21,22の巻き数を増やして強度を確保することができる。
【0020】
したがって、この発明の実施形態におけるフレキシブルカップリング1によれば、フレキシブルカップリング1の継手としての強度および耐久性を確保しつつ、径方向の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 フレキシブルカップリング
2,21,22 コード部材
3 本体部材
4,41,42 接続部材
4a,41a,42a (接続部材の)カラー部
4b,41b,42b (接続部材の)軸部
4c,41c,42c (接続部材の)連結部
100 〔従来技術〕フレキシブルカップリング
101,102 〔従来技術〕線材巻部材
103 〔従来技術〕正トルク伝達線材
104 〔従来技術〕負トルク伝達線材
200 〔従来技術〕プロペラシャフト
PC1 第1ピッチ円
PC2 第2ピッチ円