(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157722
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】スマートグラス及び避難支援システム
(51)【国際特許分類】
G01S 1/78 20060101AFI20241031BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20241031BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20241031BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20241031BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20241031BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20241031BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20241031BHJP
G02C 11/00 20060101ALI20241031BHJP
A61F 11/00 20220101ALN20241031BHJP
【FI】
G01S1/78
H04R3/00 320
H04R1/40 320Z
H04R1/00 328Z
H04R1/02 107
G06F3/01 510
G08B17/00 L
G02C11/00
A61F11/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072249
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】坂本 光明
【テーマコード(参考)】
2H006
5D017
5D220
5E555
5G405
5J083
【Fターム(参考)】
2H006CA00
5D017BB16
5D017BC01
5D220BA06
5D220BC05
5E555AA22
5E555AA74
5E555BA02
5E555BA08
5E555BB02
5E555BB08
5E555BC04
5E555BE08
5E555BE17
5E555CA47
5E555CB64
5E555CC05
5E555DA08
5E555DB57
5E555DC31
5E555DC75
5E555DD08
5E555EA23
5E555FA00
5G405AA08
5G405CA21
5G405FA02
5J083AC29
5J083AD18
5J083BE11
5J083CA07
5J083EA26
5J083EB12
(57)【要約】
【課題】携帯性を保持しつつ、周囲に生じている音響事象を、視覚を通じて利用者に知らせることができるスマートグラスを得る。
【解決手段】スマートグラス(1)は、利用者に装着されるメガネ型のフレーム本体(16)と、音響情報を収音する複数の収音部(14)と、レンズ部に位置する表示部(11)と、表示部(11)による表示を制御する制御部(12)と、を備え、制御部(12)は、収音部(14)によって収音された音響情報の中に設定周波数の音が検知された場合、当該設定周波数の音が発せられた方向に対応する表示部(11)の領域に対して映像処理を施すことで、音響情報を視覚化した情報を前記利用者に対して提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者に装着されるメガネ型のフレーム本体と、
音響情報を収音する複数の収音部と、
レンズ部に位置する表示部と、
前記表示部による表示を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記収音部によって収音された前記音響情報の中に設定周波数の音が検知された場合、当該設定周波数の音が発せられた方向に対応する前記表示部の領域に対して映像処理を施すことで、前記音響情報を視覚化した情報を前記利用者に対して提供する、
スマートグラス。
【請求項2】
前記収音部は、前記フレーム本体が前記利用者に装着されている状態で、前記利用者の顔の左右にそれぞれ位置しており、
前記制御部は、左右に位置する各前記収音部から検出されるそれぞれの音響情報の音圧を比較することにより、いずれの方向から前記設定周波数の音が発せられたかを判定する、請求項1に記載のスマートグラス。
【請求項3】
前記制御部は、前記映像処理として、検知された前記設定周波数の音の強弱を色の濃淡で表現する音圧分布映像を、前記表示部の表示面に付す処理を施す、請求項1に記載のスマートグラス。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のスマートグラスと、
建物内の各所に設置されている防災機器から火災発生信号を受信する受信機と、
前記スマートグラス及び前記受信機と通信可能な、前記利用者に携帯されている携帯端末と、
を備え、
前記受信機は、火災発生信号を受信すると、当該火災発生信号を送信した防災機器のアドレスに基づいて、出火場所を特定し、当該出火場所を示す情報である出火場所情報を、前記携帯端末に送信し、
前記携帯端末は、視覚を通じて前記利用者の避難を支援する情報である避難支援情報を、前記出火場所情報に基づいて作成し、当該避難支援情報を前記スマートグラスの前記表示部に表示させる、
避難支援システム。
【請求項5】
建物内の各所に設置されている防災機器から火災発生信号を受信する受信機と、
前記受信機と通信可能な情報端末と、
を備え、
前記受信機は、火災発生信号を受信すると、当該火災発生信号を送信した防災機器のアドレスに基づいて、出火場所を特定し、当該出火場所を示す情報である出火場所情報を、前記情報端末に送信し、
前記情報端末は、視覚を通じて当該情報端末を所持している利用者の避難を支援する情報である避難支援情報を、前記出火場所情報に基づいて作成し、当該避難支援情報を表示する、
避難支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、周囲に生じている音響事象を可視化するスマートグラス及び避難支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両からのクラクション音、火災の発生を知らせるアラート音などの警報音が鳴動しても、耳の不自由な者は、これらの警報音に気付かない可能性がある。このため、各種の警報音を聴覚以外で通知する手段が望まれる。
【0003】
これに対し、計測された音圧を可視化して利用者に提示する装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に係る音源可視化装置は、空間の各箇所における各時点での音圧を取得し、予め決められた周波数について、各箇所における音圧の時間変化をグラフで表示する。また、特許文献1に係る音源可視化装置は、グラフ中の時点と対応づけて、空間における当該時点の音圧マップを表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の音源可視化装置により、音を可視化して利用者に提示することができる。しかしながら、特許文献1に記載の音源可視化装置は、計測された音圧などの情報をよりわかりやすくユーザに提示してデータ分析の手間を軽減させることを目的としているに過ぎず、耳の不自由な者に対して各種の警報音を可視化して通知するものではない。
【0006】
さらに、特許文献1に記載の音源可視化装置は、ディスプレイやキーボードを備えた据え置き型のコンピュータであり、携帯性に課題があり、外出先で日常的に使用できるものではない。従って、特許文献1に記載の音源可視化装置は、音響情報を視覚化して利用者に通知する日常的な用途には適していない。
【0007】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、携帯性を保持しつつ、周囲に生じている音響事象を、視覚を通じて利用者に知らせることができるスマートグラス及び避難支援システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るスマートグラスは、利用者に装着されるメガネ型のフレーム本体と、音響情報を収音する複数の収音部と、レンズ部に位置する表示部と、表示部による表示を制御する制御部と、を備え、制御部は、収音部によって収音された音響情報の中に設定周波数の音が検知された場合、当該設定周波数の音が発せられた方向に対応する表示部の領域に対して映像処理を施すことで、音響情報を視覚化した情報を前記利用者に対して提供する。
【0009】
また、本開示に係る避難支援システムは、建物内の各所に設置されている防災機器から火災発生信号を受信する受信機と、受信機と通信可能な情報端末と、を備え、受信機は、火災発生信号を受信すると、当該火災発生信号を送信した防災機器のアドレスに基づいて、出火場所を特定し、当該出火場所を示す情報である出火場所情報を、情報端末に送信し、情報端末は、視覚を通じて当該情報端末を所持している利用者の避難を支援する情報である避難支援情報を、出火場所情報に基づいて作成し、当該避難支援情報を表示する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、携帯性を保持しつつ、周囲に生じている音響事象を、視覚を通じて利用者に知らせることができるスマートグラス及び避難支援システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態1におけるスマートグラスの構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すスマートグラスの構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示すスマートグラスの表示例を示す図である。
【
図4】
図2に示すスマートグラスの動作例を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の実施の形態2における避難支援システムの構成例を示す図である。
【
図6】
図5に示すスマートグラス及び携帯端末の構成例を示すブロック図である。
【
図7】
図5に示す避難支援システムの動作例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示のスマートグラス及び避難支援システムの好適な態様につき、図面を用いて説明する。
本開示の実施の形態1に係るスマートグラスは、周囲で発生している車両のクラクション音、踏切警報器の音などの警報音を検知すると、レンズ面に特異な映像処理を施すことを技術的特徴としている。これにより、耳の不自由な者に対し、視覚を通じて警報音の鳴動を知らせることができる。
【0013】
また、本開示の実施の形態2に係る避難支援システムは、建物内で火災が発生した場合、受信機から送信される情報に基づいて、利用者が所持している情報端末を介して、視覚を通じて利用者の避難を支援する避難支援情報を提供することを技術的特徴としている。これにより、耳の不自由な者に対し、視覚を通じて火災が発生していることを知らせるとともに、避難の支援を行うことができる。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1におけるスマートグラスの構成例を示す斜視図である。
【0015】
スマートグラス1は、メガネ型のウェアラブルデバイスであり、透過型表示部11、右前方マイク14RF、左前方マイク14LF、右後方マイク14RR、左後方マイク14LR及びフレーム本体16を有する。
【0016】
フレーム本体16は、メガネ型のフレームであり、一対の先セル部16A、ブリッジ部16B、及び一対のつる部16Cにより構成されている。
【0017】
先セル部16Aは、利用者の左右の耳にかかる部位である。ブリッジ部16Bは、左右のレンズを連結して固定する部位である。つる部16Cは、先セル部16Aとブリッジ部16Bとを連結する部位である。
【0018】
透過型表示部11は、周囲の風景を透過した状態で、映像を映し出すことができる表示部である。実施の形態1においては、透過型表示部11は、スマートグラス1におけるレンズ部の全体に相当し、レンズ部の全域に映像を映し出すことができる。
【0019】
なお、透過型表示部11は、レンズ部に位置していればよく、例えばレンズ部の一部分のみに、透過型表示部11が構成されていてもよい。
【0020】
右前方マイク14RF、左前方マイク14LF、右後方マイク14RR、及び左後方マイク14LRは、周囲の音を収音するマイクであり、それぞれ、つる部16Cに設けられている。
【0021】
利用者がスマートグラス1を装着した状態で、右前方マイク14RFは右側前方、左前方マイク14LFは左側前方、右後方マイク14RRは右側後方、左後方マイク14LRは左側後方に、それぞれ位置している。これら各マイクは、設置位置が異なる以外は同じ機能を有している。
【0022】
図2は、
図1に示すスマートグラス1の構成例を示すブロック図である。
【0023】
スマートグラス1は、上記の透過型表示部11、制御部としての演算処理部12、記憶部13、及び複数の収音部14を備える。
【0024】
透過型表示部11は、透明液晶ディスプレイをレンズの形状にしたものである。透過型表示部11は、周囲の風景をレンズ越しに視認できるように透過性を維持しつつ、半透明の映像を映し出す。
【0025】
演算処理部12は、中央演算処理装置、及び主記憶装置を含んでおり、記憶部13に記憶されているソフトウェアを演算実行する。これにより、演算処理部12は、スマートグラス1の内部のハードウェアに対して統括的な制御を行う。
【0026】
記憶部13は、補助記憶装置を含んでおり、演算処理部12によって演算実行されるソフトウェアを記憶する。
【0027】
複数の収音部14は、それぞれ、上記の右前方マイク14RF、左前方マイク14LF、右後方マイク14RR、及び左後方マイク14LRの4つのマイクに相当する。このように、設置位置が異なる4つの収音部14を有し、各マイクによって検出される音の音圧を相互に比較することにより、前後左右のいずれの方向から音が発せられているのかを判定することができる。
【0028】
図3は、
図1に示すスマートグラス1の表示例を示す図である。また、
図3は、スマートグラス1を装着した利用者が、踏切手前の歩道を歩いている状況を模した図である。
【0029】
スマートグラス1は、周囲に発せられる音の中から、設定周波数の音を抽出する。ここで、設定周波数は、車両のクラクション音、自転車のベル音、踏切警報器の音、火災発生時のアラート音などの各音の周波数である。これに加え、車両またはバイクのエンジン音、急ブレーキ音、電車の走行音などの各音の周波数が、設定周波数として設定されていてもよい。以下、これらの音を警報音と称する。
【0030】
スマートグラス1は、警報音が発せられた方向に対応する透過型表示部11の領域に、特異な映像処理を施す。実施の形態1において、スマートグラス1は、特異な映像処理として、音の強弱を色の濃淡で表現する音圧分布映像を、透過型表示部11に付す処理を行う。
【0031】
図3の例では、2つの音圧分布映像50及び51が透過型表示部11に付されている。音圧分布映像50は、例えば、前方の踏切警報器の音に反応して付されたものである。音圧分布映像51は、例えば、右側後方から近づいてくる車両もしくはバイクのエンジン音に反応して付されたものである。
【0032】
スマートグラス1は、音圧分布映像50及び51のような音圧分布映像を映し出すことにより、音が発している方向、及び音の強弱を利用者に示すことができる。
図3の例では、濃い色で表現されている部分は、音の大きい中心部分であり、中心部から離れて音が小さくなるにつれて、薄い色で表現される。
【0033】
このように、スマートグラス1は、周囲で発せられる警報音に反応し、警報音の発せられる方向に対応する領域に、音の強弱をあらわす音圧分布映像を付す。これにより、周囲で発せられる警報音を可視化することができる。従って、耳の不自由な者であっても、周囲で警報音が鳴動しているのを、視覚を通じて知ることができる。
【0034】
図4は、
図2に示すスマートグラス1の演算処理部12の動作例を示すフローチャートである。なお、
図4のフローチャートは、繰り返し実行される。
【0035】
演算処理部12は、ステップS101において、設定周波数の音を検出したか否かを判定する。演算処理部12は、設定周波数の音を検出していない場合、
図4の処理を終了する。
【0036】
演算処理部12は、設定周波数の音を検出した場合、ステップS102において、当該音の発せられる方向を特定する。演算処理部12は、4つのマイクによって検出される音の音圧を相互に比較することにより、前後左右のいずれの方向から音が発せられているのかを判定する。
【0037】
ここで、右前方マイク14RF及び左前方マイク14LFで検出される音よりも、右後方マイク14RR及び左後方マイク14LRで検出される音の方が、音圧が高い場合、演算処理部12は、後方から警報音が発せられていると判定する。
【0038】
逆に、右後方マイク14RR及び左後方マイク14LRで検出される音よりも、右前方マイク14RF及び左前方マイク14LFで検出される音の方が、音圧が高い場合、演算処理部12は、前方から警報音が発せられていると判定する。
【0039】
左右についても同様に、右側、左側での音圧を比較することにより、演算処理部12は、左右のいずれで警報音が発せられているのかを判定することができる。
【0040】
上記に加え、演算処理部12は、右前方マイク14RF、左前方マイク14LF、右後方マイク14RR、及び左後方マイク14LRの音圧を按分することにより、前後左右のみならず、全周囲の中から、警報音の発せられている方向を判定することができる。
【0041】
演算処理部12は、ステップS103において、警報音が発せられた方向に対応する透過型表示部11の領域に、音圧分布映像を付す。これにより、演算処理部12は、
図3に示すような音圧分布映像50、51を透過型表示部11に表示させることができる。
【0042】
ここで、右後方から警報音が発せられた場合、演算処理部12は、
図3に示す音圧分布映像51のように、透過型表示部11の右端部の領域に音圧分布映像を付すものとする。また、左後方から警報音が発せられた場合、演算処理部12は、透過型表示部11の左端部の領域に音圧分布映像を付すものとする。
【0043】
また、真後ろから警報音が発せられた場合、演算処理部12は、透過型表示部11の左右の両端部の領域に、音圧分布映像を付すものとする。
【0044】
また、後方で警報音が発せられた場合、演算処理部12は透過型表示部11に、後方で警報音が発せられたことを示すマークまたは文字列を付してもよい。
【0045】
なお、利用者自身が車両またはバイクを運転している場合、ノイズとなる風切り音をカットし、車両またはバイクのクラクション音、急ブレーキ音、自転車のベル音、踏切警報器の音を収音して、透過型表示部11に可視化してもよい。また、利用者自身が車両またはバイクを運転している場合、運転している車両またはバイクのエンジン音は、ノイズに相当することになる。よって、当該エンジン音もカットの対象としてもよい。
【0046】
また、実施の形態1においては、透過型表示部11の表示面に音圧分布映像を付すことを説明したが、態様はこれに限定されない。透過型表示部11に、音が発せられたことをあらわす特定のマークを付すのみであってもよい。また、収音した音の周波数を解析するなどして、クラクション音、エンジン音などの音の種類が確認できるアイコン、または文字列を透過型表示部11に付してもよい。
【0047】
また、実施の形態1においては、つる部16Cに計4つの収音部14が設けられている態様について説明したが、スマートグラス1の左右に1つずつ設けられていればよい。若しくは、ブリッジ部16Bまたは先セル部16Aに収音部14が設けられている態様でも構わない。なお、設置数が多いほど、音の発している方向を特定する精度が高くなる。
【0048】
このようなスマートグラス1の特徴を整理すると、以下のような構成を有し、効果を実現できることとなる。
【0049】
スマートグラス1は、利用者に装着されるメガネ型のフレーム本体16と、音響情報を収音する複数の収音部14と、レンズ部に位置する透過型表示部11と、透過型表示部11による表示を制御する演算処理部12と、を備える。
【0050】
演算処理部12は、収音部14によって収音された音響情報の中に設定周波数の音が検知された場合、当該設定周波数の音が発せられた方向に対応する透過型表示部11の領域に対して映像処理を施すことで、音響情報を視覚化した情報を利用者に対して提供する。
【0051】
このため、周囲で発している警報音などを視覚化することができ、スマートグラス1を装着している利用者に、視覚を通じて知らせることができる。
【0052】
また、収音部14は、フレーム本体16が利用者に装着されている状態で、利用者の顔の左右にそれぞれ位置している。また、演算処理部12は、左右に位置する各収音部から検出されるそれぞれの音響情報の音圧を比較することにより、いずれの方向から設定周波数の音が発せられたかを判定する。このため、警報音などが発せられている方向を、より正確に特定することができる。
【0053】
また、演算処理部12は、映像処理として、検知された設定周波数の音の強弱を色の濃淡で表現する音圧分布映像を、透過型表示部11の表示面に付す処理を施す。このため、利用者に警報音の音量を知らせるとともに、近くで鳴動しているのか否かの距離感を、知らせることができる。
【0054】
実施の形態2.
建物内で火災警報が発報された場合、特に耳の不自由な者にとっては、これに気付かないことがある。実施の形態2においては、この課題を解決するための態様を説明する。
【0055】
図5は、本開示の実施の形態2における避難支援システムの構成例を示す図である。
【0056】
避難支援システム100は、スマートグラス1A、携帯端末2、及び受信機3を備える。
【0057】
スマートグラス1Aは、実施の形態1において説明したスマートグラス1と同機種であるが、携帯端末2との間で短距離無線通信を行う機能が付加されている。
【0058】
携帯端末2は、スマートフォン、タブレット型コンピュータなどであり、スマートグラス1Aを装着している利用者が携帯している端末である。携帯端末2は、スマートグラス1との間で短距離無線通信を行う。また、携帯端末2は、ネットワーク200を介して、受信機3との間でデータの送受信を行う。
【0059】
受信機3は、防災システムを構成する各機器を統制する管理装置である。受信機3は、施設内の各所に設置されている防災機器としての感知器から、火災発生信号を受信すると、非常放送設備、地区音響装置、消火設備などの防災設備を作動させる。
【0060】
また、受信機3は、火災発生信号を受信すると、当該火災発生信号を送信した感知器の設置地点を特定する。そして、受信機3は、ネットワーク200を介して、特定した設置地点を出火場所として、携帯端末2に出火場所情報を送信する。
【0061】
ネットワーク200は、ここでは、無線通信及び有線通信を行うことができるLAN(Local Area Network)とするが、広域通信網が介在しているネットワークであってもよい。
【0062】
また、避難支援システム100にサーバ300を加え、受信機3と携帯端末2との間の通信を、当該サーバ300が介在する構成としてもよい。この場合、受信機3からの情報は、一旦サーバ300にアップロードされ、サーバ300から携帯端末2に送信される。また、携帯端末2からの情報も同様に、一旦サーバ300にアップロードされ、サーバ300から受信機3に送信する。
【0063】
図6は、
図5に示すスマートグラス1A及び携帯端末2の構成例を示すブロック図である。
【0064】
スマートグラス1Aは、実施の形態1において説明した透過型表示部11、演算処理部12、記憶部13、及び収音部14に加え、近距離無線通信部15を備えている。
【0065】
近距離無線通信部15は、携帯端末2との間で近距離無線通信によるデータの送受信を行う。近距離無線通信部15は、データの送受信を行う前段階として、携帯端末2との間で一意の情報を共有するための手続きを行う。そして、近距離無線通信部15は、相手先である携帯端末2と、当該一意の情報を用いて確認し合いながら近距離無線通信を行う。
【0066】
携帯端末2は、表示操作部21、演算処理部22、記憶部23、近距離無線通信部25、及び無線LAN通信部24を備える。
【0067】
表示操作部21は、タッチパネルディスプレイを含んでおり、文字、記号、図形、静止画像、動画などを表示する。また、表示操作部21は、タッチパネルを介して、利用者からの操作を受け付ける。
【0068】
無線LAN通信部24は、ネットワーク200を介して受信機3との間で通信を行う。無線LAN通信部24は、具体的には、アクセスポイント、ルータ、スイッチングハブ、ゲートウェイなどのネットワーク200を構成する中継装置を介して、受信機3と通信を行う。
【0069】
演算処理部22、記憶部23は、実施の形態1で説明したスマートグラス1に備えられている演算処理部12、記憶部13と同じ機能を備えている。また、近距離無線通信部25は、スマートグラス1Aの近距離無線通信部15と同じ機能を備えている。
【0070】
ここで、記憶部23には、実施の形態2を実現するための図示しない専用のアプリケーション、及び施設内マップ情報231が記憶されている。施設内マップ情報231は、利用者が現在立ち入っている施設の建物内の地図情報である。なお、施設内マップ情報231は、画像データであってもよいし、空間座標値などを保有するベクターデータであってもよい。
【0071】
施設内マップ情報231には、少なくとも避難口の位置を特定することができる情報が含まれているものとする。
【0072】
図7は、
図5に示す避難支援システム100の動作例を示すシーケンス図である。
【0073】
受信機3は、ステップS201において、防災機器としての感知器から、火災発生信号を受信すると、当該火災発生信号を送信した感知器のアドレスに基づいて、出火場所を特定する。受信機3は、施設内の各所に設置されている感知器のアドレスと、各感知器の施設内の設置地点とを対応付けて予め保持している。受信機3は、この対応関係に基づいて、当該火災発生信号を送信した感知器のアドレスから、当該感知器の設置地点を割り出し、この設置地点を出火場所として特定する。
【0074】
受信機3は、ステップS202において、出火場所を示す情報である出火場所情報を、携帯端末2に送信する。出火場所情報は、例えば、火災を検知した感知器の位置を示す座標情報である。
【0075】
携帯端末2は、ステップS203において、受信した出火場所情報、及び施設内マップ情報231に基づいて、避難支援情報を作成する。そして、携帯端末2は、自機の表示操作部21に、火災が発生した旨の表示とともに、作成した避難支援情報を表示する。
【0076】
ここで、避難支援情報は、視覚を通じて利用者の避難を支援する情報である。実施の形態2において、避難支援情報は、施設内マップ情報231に出火場所を示すアイコン及び避難口を示すアイコンを付した地図情報である。この地図情報を、出火場所特定マップと称する。
【0077】
携帯端末2は、ステップS204において、作成した避難支援情報、すなわち出火場所特定マップをスマートグラス1Aに送信する。
【0078】
スマートグラス1Aは、ステップS205において、火災が発生した旨の表示とともに、受信した出火場所特定マップを透過型表示部11に表示する。スマートグラス1Aの利用者は、出火場所特定マップを確認しながら、出火場所を回避しつつ、避難口まで避難する。
【0079】
また、スマートグラス1Aに方位センサが備えられている場合、スマートグラス1Aは、利用者の向いている方向が出火場所特定マップの上方になるように、マップ画像を回転表示させてもよい。
【0080】
スマートグラス1Aに方位センサ及びGPS受信機が備えられている場合、出火場所特定マップに、現在の位置を示すアイコン、及び、現在の位置から出火場所を回避した避難口までの避難ルートを図示してもよい。
【0081】
実施の形態2において説明した避難支援システムは、スマートグラス1A、携帯端末2、及び受信機3によって構成されるものとして説明したが、スマートグラス1Aの無い構成としてもよい。この場合、上記で説明したスマートグラス1Aの機能は、携帯端末2に備えられる。
【0082】
また、スマートグラス1Aが直接受信機3と通信可能である場合、携帯端末2が無い構成であってもよい。この場合、上記で説明した携帯端末2の機能は、スマートグラス1Aに備えられる。
【0083】
携帯端末2、スマートグラス1Aは、ノート型コンピュータの携帯型コンピュータ、腕時計型コンピュータのウェアラブル端末とともに、情報端末と総称される。すなわち、情報端末は、少なくとも、携帯端末2及びスマートグラス1Aを概念上含む。
【0084】
このような避難支援システム100の特徴を整理すると、以下のような構成を有し、効果を実現できることとなる。
【0085】
避難支援システム100は、スマートグラス1Aと、建物内の各所に設置されている防災機器から火災発生信号を受信する受信機3と、スマートグラス1A及び受信機3と通信可能な、利用者に携帯されている携帯端末2と、を備える。
【0086】
受信機3は、火災発生信号を受信すると、当該火災発生信号を送信した防災機器のアドレスに基づいて、出火場所を特定し、当該出火場所を示す情報である出火場所情報を、携帯端末2に送信する。
【0087】
携帯端末2は、視覚を通じて利用者の避難を支援する情報である避難支援情報を、出火場所情報に基づいて作成し、当該避難支援情報をスマートグラス1Aの透過型表示部11に表示させる。
【0088】
このため、火災発生の際に、視覚を通じて利用者の避難を支援することができる。
【0089】
また、避難支援システム100は、建物内の各所に設置されている防災機器から火災発生信号を受信する受信機3と、受信機3と通信可能な情報端末と、を備える。
【0090】
受信機3は、火災発生信号を受信すると、当該火災発生信号を送信した防災機器のアドレスに基づいて、出火場所を特定し、当該出火場所を示す情報である出火場所情報を、情報端末に送信する。
【0091】
情報端末は、視覚を通じて当該情報端末を所持している利用者の避難を支援する情報である避難支援情報を、出火場所情報に基づいて作成し、当該避難支援情報を表示する。
【0092】
このため、火災発生の際に、視覚を通じて利用者の避難を支援することができる。
【0093】
以上、実施の形態1及び2で説明した態様により、携帯性を保持しつつ、周囲に生じている事象を、視覚を通じて利用者に知らせることができる。
【符号の説明】
【0094】
1、1A スマートグラス(情報端末)、2 携帯端末(情報端末)、3 受信機、11 透過型表示部、12 演算処理部(制御部)、14 収音部、16 フレーム本体、50、51 音圧分布映像、100 避難支援システム。