(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157726
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】トーションビーム式サスペンション構造
(51)【国際特許分類】
B60G 9/04 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B60G9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072254
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】植村 将典
(72)【発明者】
【氏名】望月 晋栄
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA69
3D301AA76
3D301CA28
3D301DA93
3D301DB13
(57)【要約】
【課題】重量増加を抑制しつつ、NVHを低減させることが可能なトーションビーム式サスペンション構造を提供する。
【解決手段】車両下部に配置され、車幅方向に延びるトーションビーム10を有する、トーションビーム式サスペンション構造であって、トーションビーム10の車幅方向中間部の太さは、車幅方向外側部の太さよりも太く形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両下部に配置され、車幅方向に延びるトーションビームを有する、トーションビーム式サスペンション構造であって、
前記トーションビームの車幅方向中間部の太さは、車幅方向外側部の太さよりも太く形成されていることを特徴とする、トーションビーム式サスペンション構造。
【請求項2】
前記トーションビームの車幅方向中間部における上端と下端との間の距離は、前記トーションビームの車幅方向外側部における上端と下端との間の距離より、長く設定されており、
上面視で、前記トーションビームの前端と後端との距離は、車幅方向で一定に設定されていることを特徴とする、請求項1に記載のトーションビーム式サスペンション構造。
【請求項3】
車両前後方向視において、前記トーションビームの上端部は、車両上方の膨らむように湾曲し、下端部は、車両下方に膨らむように湾曲しており、
前記上端部における湾曲の変化量は、前記下端部における湾曲の変化量に対して大きいことを特徴とする、請求項2に記載のトーションビーム式サスペンション構造。
【請求項4】
前記トーションビームの車幅方向の中央部は、車両上方に向かうに従い車両後方に傾斜する前側傾斜面と、前記前側傾斜面の車両後方に位置し、車両上方に向かうに従い車両前方に傾斜する後側傾斜面と、前記前側傾斜面及び前記後側傾斜面の下方側に位置し、車幅方向に延びる中間底面と、を有し、
前記トーションビームの車幅方向の両外側部のそれぞれは、車両前方を臨む外前壁面と、前記外前壁面の後方側に間隔を空けて配置される外後壁面と、前記外前壁部及び前記外後壁部の上方側に位置する外側上面と、前記前壁部及び前記後壁部の下方側に位置する外側底面と、を有していることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のトーションビーム式サスペンション構造。
【請求項5】
前記外側底面及び前記中間底面は、車幅方向に連続して延びる1つの底面部を構成し、
前記トーションビームの上端と下端との距離は、前端と後端との距離よりも大きいことを特徴とする、請求項4に記載のトーションビーム式サスペンション構造。
【請求項6】
前記前側傾斜面及び前記後側傾斜面のいずれか一方には、前記トーションビームの車両前後方向の中心に向かって凹む湾曲面部が設けられ、他方には、平面が形成されていることを特徴とする、請求項4に記載のトーションビーム式サスペンション構造。
【請求項7】
前記前側傾斜面の上部は、前記トーションビームの前端と後端との間に位置する車両前後方向の中心点よりも、車両前方側に配置され、
前記前側傾斜面と前記中間底面とにより形成される前側角度は、前記後側傾斜面と前記中間底面とにより形成される後側角度よりも、大きいことを特徴とする、請求項4に記載のトーションビーム式サスペンション構造。
【請求項8】
前記トーションビームの車幅方向の中央部における横断面の図心は、トレーリングアームの高さ方向の中央位置に、車両上下方向で揃うように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のトーションビーム式サスペンション構造。
【請求項9】
前記トーションビームの横断面は、閉断面であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のトーションビーム式サスペンション構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トーションビーム式サスペンション構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、車両の軽量化及び省スペース化等を達成するために、車両幅方向に沿って延びるトーションビームの端部にトレーリングアームが接合されたトーションビーム式サスペンションを採用している車両が知られている。トーションビームは、通常、レイアウト、強度性能、及び、ロール剛性等の要件に基づいて、設計されている。
【0003】
一方で、トーションビームは、例えば後輪と路面との摩擦による振動等によるロードノイズの原因となる場合がある。しかしながら、従来のトーションビームのビーム構造は、NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス:Noise, Vibration, Harshness)の対策が十分でない場合がある。一般に、ロードノイズの対策としては、車体骨格を構成する部材及びパネル等に、制振材等を取り付けて、共振を抑制することで、振動を低減させている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されるトーションビームは、車両前方に開口を有する開断面を有しており、トーションビームの内部には、車幅方向に延びるスタビライザが配置されている。さらに、トーションビームの前部の開口に閉塞体を配置することによって、トーションビームとスタビライザとの間に形成される気柱の音響モードを変更し、それにより、気柱共鳴によるトーションビームへの加振を低減させようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記例のトーションビームの構造では、スタビライザ及び閉塞体をビーム本体に設けることで、振動を低減させている。そのため、ロードノイズを抑制するために、サスペンション構造の重量を増加させている。そのため、重量増加を抑制しつつ、ロードノイズを低減させ、NVH性能を向上させようとする場合には、上記例のような構造には、改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、重量増加を抑制しつつ、NVHを低減させることが可能なトーションビーム式サスペンション構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係るトーションビーム式サスペンション構造は、車両下部に配置され、車幅方向に延びるトーションビームを有しており、前記トーションビームの車幅方向中間部の太さは、車幅方向外側部の太さよりも太く形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るトーションビーム式サスペンション構造によれば、重量増加を抑制しつつ、NVHを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るトーションビーム式サスペンション構造の一実施形態を示す斜視図である。
【
図5】
図2のA-A断面及びB-B断面を重ねて示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るトーションビーム式サスペンション構造の一実施形態について、図面(
図1~
図6)を参照しながら説明する。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。また、矢印R及び矢印Lは、乗員が車両前方を見たときの右側及び左側を示している。矢印Uは、車両上方を示している。
【0012】
本実施形態のトーションビーム式サスペンション構造は、
図1に示すように、トーションビーム10と、トレーリングアーム20と、図示しないスプリングを支持するスプリングシート25と、有している。
【0013】
先ず、トーションビーム10について説明する。トーションビーム10は、略中空構造体で、車幅方向に延びる金属製の部材である。トーションビーム10は、
図2及び
図3に示すように、車幅方向中心に対して、ほぼ左右対称に形成されている。また、トーションビーム10の横断面は、
図4~
図6に示すように、閉断面構造を有している。閉断面構造については、後で説明する。トーションビーム10の後壁面は、車幅方向に延びており、後壁面の車幅方向外側部には、スプリングシート25が接合される接合部が設けられている。
【0014】
トレーリングアーム20の構造について説明する。トレーリングアーム20は、
図1に示すように、トーションビーム10の車幅方向の両側部に一対となるように配置される部材である。各トレーリングアーム20は、車両前後方向に延び、車両前後方向における中間部が、車幅方向内側に湾曲している。本実施形態のトレーリングアーム20の車両前後方向の中間部には、トーションビーム10の車幅方向外側部が接合される接合部21が設けられている。
【0015】
トレーリングアーム20の後部には、後輪が連結されている。また、トレーリングアーム20の前部は、例えば、車体骨格を構成するサイドメンバに連結される連結部を有している。連結部は、トレーリングアーム20を回動可能にサイドメンバに連結しており、連結部を中心にトレーリングアーム20が回動することにより、トレーリングアーム20の後部は、車両上下方向に揺動可能である。
【0016】
次に、スプリングシート25について説明する。スプリングシート25は、
図1に示すように、トーションビーム10の後部及びトレーリングアーム20の内側部のそれぞれに接合される金属製の板状の部材であり、車両上下方向に貫通する貫通穴26を有している。当該貫通穴26の縁部には、車両上下方向に延びるコイルスプリング(図示せず)が配置されている。コイルスプリングは、スプリングシート25によって支持されている。
【0017】
本実施形態では、トーションビーム10の車幅方向中間部の太さは、車幅方向外側部の太さよりも太く形成されている。トーションビーム10の車幅方向中間部、この例では、ほぼ中央部を最も太くなるように形成し、各方向への剛性をコントロールできるようにしている。例えば、
図4に示す空間を含む断面積は、
図6に示す内部空間を含む断面積よりも大きい。
【0018】
例えば、後輪からトレーリングアーム20の後部に伝達された荷重は、トレーリングアーム20の後部から接合部21に伝達される。その後、荷重は、トレーリングアーム20の前部から車体(例えばサイドメンバ等)に伝達され、且つ、接合部21からトーションビーム10の車幅方向の中央に伝達される。このような伝達経路において、上記のトーションビーム10の車幅方向の中間部を外側部に比べて太くすることで、トーションビーム10に作用する荷重に対する剛性を調整可能となる。その結果、接合部21から、各方向(車両前後方向、車幅方向、車両上下方向)伝達される荷重に対して、バランスよく剛性を確保することが可能となる。さらに、上記構成によれば、トーションビーム10の捩じれ剛性を向上させることも可能となる。これにより、車両前後方向の曲げモード固有振動数、上下方向曲げモード固有振動数を調整することが可能となる。
【0019】
さらに、サスペンション構造にスタビライザ等を設けない場合でも、所定の剛性を確保することが可能となる。その結果、サスペンション構造の重量増加を抑制することが可能となり、さらに、所定のNVH性能を確保することが可能となる。
【0020】
また、本実施形態では、上記したように、トーションビーム10の横断面は、閉断面である。このように、閉断面構造を設けることにより、例えば下部が開口する開断面、あるいは、前部が開口する開断面を有するトーションビームに比べて、横断面の断面積を大きくすることが可能となる。その結果、トーションビーム10の曲げモーメント及び捩じりモーメントに対して高い剛性を確保することが可能となり、車両のロール剛性を向上させることが可能となる。これにより、車両がより安定して走行することが可能となる。
【0021】
以下、本実施形態のトーションビーム10の形状の詳細について説明する。中央が外側より太くなるように形成されたトーションビーム10において、本実施形態では、
図3~
図5に示すように、車幅方向中間部における上端と下端との間の距離は、トーションビーム10の車幅方向外側部における上端と下端との間の距離より、長く設定されている、例えば、トーションビーム10の前後幅に対して上下幅は、15%程度長く設定されるとよい。また、上面視では、トーションビーム10の前端と後端との距離は、車幅方向で一定に設定されている。すなわち、この例では、トーションビーム10の上下方向長さが、側部よりも中央が長くなるように設定されており、前後方向長さは、車幅方向においてほぼ一定である。
【0022】
トーションビーム10の外側及び中央の横断面形状について、車両上下方向にのみ変形させることで、車両前後方向のスペースを従来に比べて増加させずに、剛性を確保することができる。フロアパネルの下方側のレイアウトスペースを狭めず、さらに、衝突安全性にも影響を与えずに、トーションビーム10の剛性を確保することができる。また、横断面における車両上下方向長さが中央に向かうに従い大きくなることにより、車両ロール方向でのトーションビーム10の曲げ剛性が向上し、ロール剛性を向上させ、車両の姿勢変化を低減することが可能となる。
【0023】
また、本実施形態では、
図2に示すように、車両前後方向視において、トーションビーム10の上端部は、車両上方の膨らむように湾曲し、下端部は、車両下方に膨らむように湾曲しいる。さらに、上端部における湾曲の変化量は、下端部における湾曲の変化量に対して大きい。
【0024】
本実施形態では、車両前後方向視におけるトーションビーム10の上端の稜線は、車幅方向外側に向かうに従い車両上方に傾斜し、車幅方向の中央部が頂部となるように形成されている。トーションビーム10の上端は、車両上方に凸となり、中央が頂部となる湾曲形状を有している。また、トーションビーム10の下端の稜線は、上端と同様に、車幅方向外側に向かうに従い車両下方に傾斜し、車幅方向の中央部が最低部となるように形成されている。トーションビーム10の下端は、車両下方に凸となり、中央が頂部となる湾曲形状を有している。本実施形態では、湾曲形状の曲率は、上端部が下端部よりも大きく設定されている。
【0025】
トーションビーム10の上側の曲率を大きくすることにより、従来のトーションビーム10を用いた場合に比べて、車両の最低地上高を低くすることなく、トーションビーム10のねじり剛性を確保することが可能となる。また、トーションビーム10の横断面の中心よりも上側に位置する部分の曲率を大きくすることにより、トーションビーム10の両端が上方側に移動するような曲げ変形に対して、剛性を向上させることが可能となる。その結果、車両のロール剛性を向上させることができる。ここで、断面の中心とは、車幅方向中央部の横断面の図心としているが、これに限らない。例えば、車幅方向中央部の横断面の上端と下端との間の中心点としてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、
図1及び
図4に示すように、トーションビーム10の車幅方向の中央部は、車両上方に向かうに従い車両後方に傾斜する前側傾斜面11と、前側傾斜面11の車両後方に位置し、車両上方に向かうに従い車両前方に傾斜する後側傾斜面12と、前側傾斜面11及び後側傾斜面12の下方側に位置し、車幅方向に延びる中間底面13と、を有している。さらに、トーションビーム10の車幅方向の両外側部のそれぞれは、車両前方を臨む外前壁面15と、外前壁面15の後方側に間隔を空けて配置される外後壁面16と、外前壁部及び外後壁部の上方側に位置する外側天面17と、外前壁部及び外後壁部の下方側に位置する外側底面18と、を有している。
【0027】
前側傾斜面11は、上記のように傾斜し、且つ、車幅方向に延びている。この例では、前側傾斜面11は、上面視で、車両後方に凹むように湾曲している。この例では、
図2に示すように、車幅方向中央部が底となるような凹形状となっている。前側傾斜面11の車幅方向両側部は、両側の外前壁面15に滑らかに連続するように接続されている。
【0028】
同様に、後側傾斜面12は、上記のように傾斜し、且つ、車幅方向に延びている。前側傾斜面11と同様に、後側傾斜面12は、上面視で、車両前方に凹むように湾曲し、車幅方向中央部が底となるような凹形状となっている(
図2)。後側傾斜面12の車幅方向両側部は、両側の後壁面に滑らかに連続するように接続されている。本実施形態では、凹形状の曲率は、前側傾斜面11が後側傾斜面12よりも設定されている。
【0029】
本実施形態の前側傾斜面11の上部と後側傾斜面12の上部は、上方に凸の湾曲した中間天面14によって接続されている。これにより、
図4及び
図5に示すように、前側傾斜面11、後側傾斜面12、中間底面13、及び中間天面14によって、略三角形の閉じた横断面を構成している。ここで、三角形の上側の頂点に相当する角は、中間天面14の湾曲形状に対応している。中間天面14は、上記したトーションビーム10の上端部の稜線を含んでいる。
【0030】
トーションビーム10の車幅方向の中央部の横断面を、上方に凸となる略三角形状とすることで、車幅方向外側部の横断面に比べて、強度及び剛性を向上させることが可能となる。さらに、このような断面形状を採用することで、トーションビーム10の設計時において、車両前後方向の曲げモード固有振動数、車両上下方向の曲げモード固有振動数を容易に調整することができる。
【0031】
また、このように構成することで、例えばトーションビーム10の内部に補強部材等の追加部材を設ける必要がなくなり、サスペンション構造の重量増加を抑制することが可能となる。また、略三角形の閉断面構造であるため、トーションビーム10の横断面の面積を小さくしても、一定の剛性を確保することが可能となる。これにより、レイアウトの制約が低い状態で、上記した固有振動数を向上させることが可能となる。さらに、トーションビーム10の板厚を薄くすることも可能となるため、車両の軽量化にも寄与する。
【0032】
また、本実施形態では、
図3に示すように、外側底面18及び中間底面13は、車幅方向に連続して延びる1つの底面部を構成しおり、トーションビーム10の上端と下端との距離は、前端と後端との距離よりも大きい。横断面の下部がほぼ平らで、上部に頂点部が配置される三角形状とすることで、トーションビーム10の上部に水や泥が付着しにくい構造となる。
【0033】
また、本実施形態では、上記したように、前側傾斜面11及び後側傾斜面12のいずれか一方には、トーションビーム10の車両前後方向の中心に向かって凹む湾曲面部が設けられ、他方に平面が形成されている。
【0034】
図4及び
図5に示すように、トーションビーム10の車馬場方向の中間部に位置する前側傾斜面11は、車幅方向視で、車両後方に凹むように湾曲する湾曲面部が設けられている。また、この例では、後側傾斜面12は平面である。本実施形態では、前側傾斜面11に湾曲面部が設けられているがこれに限らない。後側傾斜面12に湾曲面部を設けてもよい。
【0035】
上記のように湾曲面部を設けることにより、前側傾斜面11の面剛性を向上させることができ、略三角形の閉じた横断面の前部と後部の面剛性を、トーションビーム10の設計時に、容易に調整することができる。そのため、トーションビーム10の車両前後方向曲げモード固有振動数を微調整することが可能となる。また、湾曲面部を設けることにより、曲げモーメントに対するトーションビーム10の剛性にも寄与することができ、変形を抑えロール量を抑えることができる。
【0036】
また、本実施形態では、
図4及び
図5に示すように、前側傾斜面11の上部は、トーションビーム10の前端と後端との間に位置する車両前後方向の中心点よりも、車両前方側に配置されいる。また、前側傾斜面11と中間底面13とにより形成される前側角度(
図4における角度C1)は、後側傾斜面12と中間底面13とにより形成される後側角度(角度C2)よりも、大きくなるように形成されている。本実施形態では、前側傾斜面11は水平面に対して垂直に近い。すなわち、前側傾斜面11は、後側傾斜面12によりも起立した状態となる。
【0037】
このように前側傾斜面11を配置することで、せん断方向の強度が向上し、当該強度の向上により、トーションビーム10の前部と後部の面剛性を調整することができ、車両前後方向曲げモード固有振動数を微調整することができる。さらに、上記強度の向上により、曲げモーメントに対するトーションビーム10の剛性にも寄与することができ、変形を抑えロール量を抑えることができる。
【0038】
また、本実施形態では、
図5に示すように、トーションビーム10の車幅方向の中央部における横断面の図心Cは、トレーリングアーム20の高さ方向の中央位置に、車両上下方向で揃うように配置されている。ここでトレーリングアーム20の高さ方向の中央位置は、トレーリングアーム20とトーションビーム10とが連結する位置における高さ方向の中央位置である。
【0039】
例えば、後輪からトレーリングアーム20の後部に伝達される荷重の伝達経路において、上記した接合部21のように、トーションビーム10の部材断面の図心Cとトレーリングアーム20の接合部21における車両上下方向の中心(高さ方向の中央位置)の高さを一致させることにより、各方向(車両前後方向、車幅方向、車両上下方向)に作用する荷重に対して、バランスよく剛性を確保することが可能となる。これにより、接合部21で、トーションビーム10とトレーリングアーム20との接合部21における安定性を向上させ、荷重による応力を接合部21で的確に受けることができる。
【0040】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0041】
本実施形態では、トーションビーム10の底面部が下方に若干突出する湾曲形状を有しているが、これに限らない。例えば底面部を平面としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 トーションビーム
11 前側傾斜面
12 後側傾斜面
13 中間底面
14 天面
15 外前壁面
16 外後壁面
17 外側天面
18 外側底面
20 トレーリングアーム
21 接合部
25 スプリングシート
26 貫通穴