IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-バランスシャフト 図1
  • 特開-バランスシャフト 図2
  • 特開-バランスシャフト 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157729
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】バランスシャフト
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/136 20060101AFI20241031BHJP
   F16F 15/12 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F16F15/136 A
F16F15/12 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072259
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和正
(57)【要約】      (修正有)
【課題】共振時の振動が抑制されたバランスシャフトを提供する。
【解決手段】軸部と軸部に相対回転可能に装着され、エンジンのクランクシャフトに従動するドリブンギヤと軸部に固定され、ドリブンギヤと軸方向に対向したダンパカバーとドリブンギヤとダンパカバーとの間で周方向に並ぶようにダンパカバーに保持された第1及び第2ストッパゴムとを備え、ドリブンギヤは、第1ストッパゴムと第2ストッパゴムとの間に突出した衝突突部を有し、第1ストッパゴムは、ドリブンギヤが加速する際に衝突突部が衝突して弾性圧縮する加速側圧縮部を有し、第2ストッパゴムは、ドリブンギヤが減速する際に衝突突部に衝突して弾性圧縮する減速側圧縮部を有し、加速側圧縮部及び減速側圧縮部の固有振動数が互いに異なる値となるように、加速側圧縮部及び減速側圧縮部の一方に孔部が形成されているバランスシャフト。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と、
前記軸部に相対回転可能に装着され、エンジンのクランクシャフトに従動するドリブンギヤと、
前記軸部に固定され、前記ドリブンギヤと軸方向に対向したダンパカバーと、
前記ドリブンギヤと前記ダンパカバーとの間で周方向に並ぶように前記ダンパカバーに保持された第1及び第2ストッパゴムと、を備え、
前記ドリブンギヤは、前記第1ストッパゴムと前記第2ストッパゴムとの間に突出した衝突突部を有し、
前記第1ストッパゴムは、前記クランクシャフトの回転により前記ドリブンギヤが加速する際に前記衝突突部が衝突して弾性圧縮する加速側圧縮部を有し、
前記第2ストッパゴムは、前記クランクシャフトの回転により前記ドリブンギヤが減速する際に前記衝突突部に衝突して弾性圧縮する減速側圧縮部を有し、
前記加速側圧縮部及び前記減速側圧縮部の固有振動数が互いに異なる値となるように、前記加速側圧縮部及び減速側圧縮部の一方に孔部が形成されている、バランスシャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランスシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのクランクシャフトと同期して回転することにより、エンジンの振動を抑制するバランスシャフトが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-101473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バランスシャフトが共振する場合がある。このような共振時の振動が大きいと、バランスシャフトの耐久性に影響を与えるおそれがある。
【0005】
そこで、共振時の振動が抑制されたバランスシャフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、軸部と、前記軸部に相対回転可能に装着され、エンジンのクランクシャフトに従動するドリブンギヤと、前記軸部に固定され、前記ドリブンギヤと軸方向に対向したダンパカバーと、前記ドリブンギヤと前記ダンパカバーとの間で周方向に並ぶように前記ダンパカバーに保持された第1及び第2ストッパゴムと、を備え、前記ドリブンギヤは、前記第1ストッパゴムと前記第2ストッパゴムとの間に突出した衝突突部を有し、前記第1ストッパゴムは、前記クランクシャフトの回転により前記ドリブンギヤが加速する際に前記衝突突部が衝突して弾性圧縮する加速側圧縮部を有し、前記第2ストッパゴムは、前記クランクシャフトの回転により前記ドリブンギヤが減速する際に前記衝突突部に衝突して弾性圧縮する減速側圧縮部を有し、前記加速側圧縮部及び前記減速側圧縮部の固有振動数が互いに異なる値となるように、前記加速側圧縮部及び減速側圧縮部の一方に孔部が形成されている、バランスシャフトによって達成できる。
【発明の効果】
【0007】
共振時の振動が抑制されたバランスシャフトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、バランサー装置の概略構成図である。
図2図2は、図1のA―A断面図である。
図3図3Aは、バランスシャフトの加速時でのストッパゴムの状態を示した図であり、図3Bは、バランスシャフトの減速時でのストッパゴムの状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[バランサー装置の概略構成]
図1は、バランサー装置1の概略構成図である。図1は、バランサー装置1の断面を示している。バランサー装置1は、ハウジング2、及びバランスシャフト3を含む。ハウジング2は、バランスシャフト3を回転可能に保持している。バランスシャフト3は、エンジンのクランクシャフト100に対して略平行となるようにハウジング2に保持されている。図1ではクランクシャフト100の一部のみを示している。
【0010】
バランスシャフト3は、軸部4、ダンパカバー5、ストッパゴム6、ドリブンギヤ7、ドライブギヤ8、及びバランスウェイト9を含む。ドリブンギヤ7は、軸部4に相対回転可能に設けられている。ダンパカバー5は、軸部4の先端に固定されている。ダンパカバー5とドリブンギヤ7とは対向している。ドリブンギヤ7は、クランクシャフト100に固定されたドライブギヤ101と噛み合い、ドライブギヤ101に従動する。ドリブンギヤ7は樹脂製である。詳しくは後述するが、ストッパゴム6は、ダンパカバー5とドリブンギヤ7との間に配置されている。バランスウェイト9は、軸部4の他端側に設けられている。図1には示していないが、バランサー装置1は、ハウジング2に回転可能に保持されドライブギヤ8に従動するバランスシャフトを備えている。
【0011】
図2は、図1のA-A断面図である。ダンパカバー5は、底部、外周部52、及び複数の支持突部53を含む。底部は、軸部4の先端に挿入されて固定された円板形状の部位である。外周部52は、底部の外周端部から軸方向に延設されたリング状の部位である。支持突部53は、外周部52の内周面521から径方向Rの内側に形成された突状の部位である。複数の支持突部53は、周方向Cに等角度間隔で設けられている。本実施例では、4つの支持突部53が設けられている。
【0012】
ダンパカバー5内には、複数のストッパゴム6が周方向Cに並ぶように配置されている。本実施例では、4つのストッパゴム6が配置されている。ストッパゴム6は、支持突部53のそれぞれを周方向Cから挟む。ストッパゴム6は、加速側圧縮部61a、減速側圧縮部61b、及び連結部62を含む。連結部62は、加速側圧縮部61a及び減速側圧縮部61bよりも径方向Rの厚みが薄く形成されている。図2では半時計方向に、加速側圧縮部61a、連結部62、減速側圧縮部61bが順に位置する。連結部62は、周方向Cに延びて加速側圧縮部61aと減速側圧縮部61bとを連結している。加速側圧縮部61aと減速側圧縮部61bとは、支持突部53を挟んでいる。連結部62は、支持突部53の径方向Rの内側の先端面に接している。加速側圧縮部61aには、軸方向に突出した挿入突部64aが形成されている。この挿入突部64aは、ダンパカバー5の底部に形成された穴に嵌合している。このようにしてストッパゴム6はタンパカバー5に保持されている。
【0013】
減速側圧縮部61bには、軸方向にストッパゴム6を貫通した孔部64bが形成されている。加速側圧縮部61aに挿入突部64aが形成され減速側圧縮部61bに孔部64bが形成されていることを除き、加速側圧縮部61aと減速側圧縮部61bとは、連結部62を介して形状が略対称である。
【0014】
ドリブンギヤ7は、複数の衝突突部71を含む。複数の衝突突部71は、ドリブンギヤ7のダンパカバー5と対向する面からダンパカバー5に向けて突出している。複数の衝突突部71は、周方向Cに隣接するストッパゴム6同士の間に位置する。尚、衝突突部71の周方向Cの幅は、周方向Cに隣接するストッパゴム6同士の隙間よりも狭く形成されている。このため、衝突突部71は、周方向Cに隣接するストッパゴム6の何れからも離間可能である。衝突突部71の周方向Cの一方側に位置するストッパゴム6は第1ストッパゴムの一例であり、他方側に位置するストッパゴム6は第2ストッパゴムの一例である。
【0015】
[バランスシャフトの動作]
次にバランスシャフト3の加速時での動作について説明する。エンジンが加速するときには、クランクシャフト100に設けたドライブギヤ101が加速する。これに伴って、ドリブンギヤ7も加速する。このとき、ドリブンギヤ7の衝突突部71がストッパゴム6の加速側圧縮部61aに衝突するまで、ドリブンギヤ7は空転する。そして、衝突突部71が加速側圧縮部61aに衝突した状態で、ドリブンギヤ7によってバランスシャフト3が加速する。このとき、加速側圧縮部61aは、衝突突部71と支持突部53との間に挟まれて弾性変形する。図3Aは、バランスシャフト3の加速時でのストッパゴム6の状態を示した図である。
【0016】
次にバランスシャフト3の減速時での動作について説明する。エンジンが減速するときには、ドライブギヤ101及びドリブンギヤ7が減速する。しかしながら、軸部4が慣性力により減速前の回転速度で回転し続けようとする。このとき軸部4は、ストッパゴム6の減速側圧縮部61bがドリブンギヤ7の衝突突部71に衝突するまで空転する。そして、減速側圧縮部61bが衝突突部71に衝突した状態で、バランスシャフト3が減速する。その後、ドライブギヤ8及びドリブンギヤ7の回転に応じてバランスシャフト3が減速する。このとき、減速側圧縮部61bは、衝突突部71と支持突部53との間に挟まれて弾性変形する。図3Bは、バランスシャフト3の減速時でのストッパゴム6の状態を示した図である。
【0017】
上述したように、減速側圧縮部61bには軸方向に貫通した孔部64bが形成されている。これに対して、加速側圧縮部61aにはこのような孔部は形成されていない。従って、減速側圧縮部61bは加速側圧縮部61aよりも剛性が低く、弾性変形が容易である。このため減速側圧縮部61bの固有振動数は、加速側圧縮部61aよりも低い値である。即ち、加速側圧縮部61a及び減速側圧縮部61bの固有振動数は、互いに異なる値である。
【0018】
例えば加速側圧縮部61a及び減速側圧縮部61bの双方とも固有振動数が同じ場合であってバランスシャフト3がその固有振動数で回転している場合には、加速側圧縮部61a及び減速側圧縮部61bの双方が共振する。即ち、加速時には加速側圧縮部61aが大きく振動し、減速時には減速側圧縮部61bが大きく振動する。このようにバランスシャフト3の共振時での振動が増大する。これにより、ストッパゴム6の耐久性や樹脂製のドリブンギヤ7の耐久性に影響を及ぼすおそれがある。
【0019】
本実施例のように減速側圧縮部61bに孔部64bが形成されていることにより、加速側圧縮部61a及び減速側圧縮部61bの固有振動数は互いに異なる値となる。これにより例えばバランスシャフト3が加速側圧縮部61aの固有振動数で回転している場合には、減速時での減速側圧縮部61bの振動は抑制される。同様にバランスシャフト3が減速側圧縮部61bの固有振動数で回転している場合には、加速時での加速側圧縮部61aの振動は抑制される。このように、バランスシャフト3の共振時での振動を抑制することができる。これにより共振によるバランスシャフト3の耐久性への影響が抑制される。
【0020】
上記実施例では、減速側圧縮部61bに孔部64bが形成されているが、このような構成に限定されない。減速側圧縮部61bには孔部を設けずに、加速側圧縮部61aに孔部を設けてもよい。また、この孔部は、貫通孔に限定されず、底部を有した孔であってもよい。また、孔部が延びる方向は、必ずしも軸方向に限定されない。加速側圧縮部61a及び減速側圧縮部61bの一方に設けられた孔部により、一方の固有振動数と他方の固有振動数とが異なればよい。
【0021】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0022】
3 バランスシャフト
4 軸部
5 ダンパカバー
6 ストッパゴム
61a 加速側圧縮部
61b 減速側圧縮部
64b 孔部
7 ドリブンギヤ
図1
図2
図3