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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157743
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 11/02 20060101AFI20241031BHJP
   B62J 37/00 20060101ALI20241031BHJP
   B62H 1/02 20060101ALI20241031BHJP
   B62K 11/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B62K11/02
B62J37/00 B
B62H1/02 E
B62K11/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072285
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 正和
【テーマコード(参考)】
3D011
【Fターム(参考)】
3D011AF04
3D011AF07
3D011AG01
3D011AK13
3D011AK14
3D011AK17
3D011AK31
(57)【要約】
【課題】車両部品が車両前後方向に長い部品であっても、車両部品を車幅方向にコンパクトに配置可能にすること。
【解決手段】ロアフレーム(23)と、ロアフレーム(23)から上方に延びる湾曲部(31)と、を備える鞍乗り型車両において、湾曲部(31)に、車幅方向内側に凹む凹部(33L,33R)を有し、凹部(33L,33R)は、湾曲部(31)の後端まで連続して延び、凹部(33L,33R)に、当該車両が有する車両部品(51,61)の少なくとも一部を配置する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアフレーム(23)と、前記ロアフレーム(23)から上方に延びる湾曲部(31)と、を備える鞍乗り型車両において、
前記湾曲部(31)に、車幅方向内側に凹む凹部(33L,33R)を有し、
前記凹部(33L,33R)は、前記湾曲部(31)の後端まで連続して延び、
前記凹部(33L,33R)に、当該車両が有する車両部品(51,61)の少なくとも一部を配置する、
鞍乗り型車両。
【請求項2】
車両後面視で、前記湾曲部(31)は、前記凹部(33L,33R)に対応する領域が、車幅方向内側に切り欠かれると共に車両下方に向けて開放している、
請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記車両部品(51,61)は、起立位置と格納位置とに可動自在なスタンド(51)を含み、
前記凹部(33L)は、前記スタンド(51)の少なくとも一部と車幅方向に重なり、前記スタンド(51)よりも上方に前記凹部(33L)の上端が位置する、
請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記ロアフレーム(23)は左右一対であって、左右一対の湾曲部(31L,31R)のそれぞれに前記凹部(33L,33R)を有し、
一方の凹部(33L)に、スタンド(51)の一部を配置し、
他方の凹部(33R)に、キャニスター(61)の一部を配置する、
請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記凹部(33L)には、前記スタンド(51)を支持するスタンド支持部(52)が配置され、
前記スタンド支持部(52)には、切り欠き部(52k)が設けられる、
請求項3又は4に記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記左右一対のロアフレーム(23)のうち、前記キャニスター(61)側のロアフレーム(23)には、前記キャニスター(61)につながる配管(63)を通すパイプ部材(65)が貫通している、
請求項4に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の鞍乗り型車両には、ヘッドパイプから後下方に延びるダウンフレームと、ダウンフレームの下部から後方に延びる左右一対のロアフレームと、ロアフレームから上方に延びる左右一対のリアフレームとを備えた構成が知られている。この種の鞍乗り型車両には、各フレームを、丸形の鋼管からなるいわゆる丸パイプで構成し、丸パイプからなるロアフレームの車幅方向外側面に、サイドスタンドを支持するブラケットを取り付けた構成が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6723280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成は、サイドスタンドを支持するブラケット、及びサイドスタンド等からなる車両部品が、ロアフレームよりも車幅方向外側に位置するので、車両部品による車幅の増大を抑えることが難しかった。
特に、サイドスタンドのような長さを有する車両部品については、車両部品全体が、ロアフレームよりも車幅方向外側に位置するので、車両部品を小型化しない限り、車幅の増大を抑えることが難しかった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、車両部品が車両前後方向に長い部品であっても、車両部品を車幅方向にコンパクトに配置可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ロアフレームと、前記ロアフレームから上方に延びる湾曲部と、を備える鞍乗り型車両において、前記湾曲部に、車幅方向内側に凹む凹部を有し、前記凹部は、前記湾曲部の後端まで連続して延び、前記凹部に、当該車両が有する車両部品の少なくとも一部を配置する、鞍乗り型車両を提供する。
【発明の効果】
【0006】
車両部品が車両前後方向に長い部品であっても、車両部品を車幅方向にコンパクトに配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】左側の湾曲部をサイドスタンドと共に示す側面図である。
図4】左側の湾曲部をサイドスタンドと共に左下方から示す斜視図である。
図5】被締結部を周辺構成と共に車両背面側から示す図である。
図6】右側の湾曲部をキャニスターと共に示す側面図である。
図7】右側の湾曲部をキャニスターと共に上方から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車両に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車両前方を示し、符号UPは車両上方を示し、符号LHは車両左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。図1では、説明の便宜上、車体カバー100、車両用シート101等を二点鎖線で示している。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11の後部に、後輪13Rを駆動するパワーユニット12が上下に揺動自在に連結されるスクータ型の自動二輪車である。パワーユニット12は、ユニットスイングエンジン等とも称され、本実施形態では、内燃機関を有するパワーユニットであり、つまり、内燃機関によって後輪駆動力を得る構成である。なお、本発明において、パワーユニット12は、内燃機関を有する構成に限定されず、公知のパワーユニットを広く適用でき、例えば、駆動モータを有する構成でもよい。
【0010】
車体フレーム11は、ヘッドパイプ21と、ヘッドパイプ21から後下方に延びるダウンフレーム22と、ダウンフレーム22の下部から後方に延びる左右一対のロアフレーム23と、各ロアフレーム23から上方に延びる左右一対のリアフレーム24とを備える。
ヘッドパイプ21は、前輪13Fを回転自在に支持するフロントフォーク14と、操舵用のハンドル15とを一体に回動自在に支持する。ダウンフレーム22は、ヘッドパイプ21に溶接等によって接合され、ヘッドパイプ21から後下方に延びる。ダウンフレーム22は、ヘッドパイプ21から車幅中央を後下方に延びる単一のフレームでもよいし、ヘッドパイプ21から後下方に延びる左右一対のフレームでもよい。
【0011】
左右一対のロアフレーム23は、ダウンフレーム22に溶接等によって接合され、左右に間隔を空けて後方に水平に延びる。左右一対のロアフレーム23の間には、燃料を貯留する燃料タンク25が設けられる。燃料タンク25は、パワーユニット12のエネルギー源として機能する車両部品である。なお、パワーユニット12が駆動モータを有する構成の場合、燃料タンク25に代えて、例えば、駆動モータのエネルギー源となるバッテリー、又は制御装置等が配置される。なお、ロアフレーム23は、ダウンフレーム22の下部から後方に延びる板状であってもよいし、または、左右のロアフレーム23が幅方向で接続される形状であってもよい。
【0012】
左右一対のロアフレーム23の上方には、車両用シート101に着座する乗員が足を置くステップフロア26が配置される。左右一対のリアフレーム24は、各ロアフレーム23から後上方に向けて湾曲する湾曲部31と、湾曲部31から後上方に延びる上方延出部32とを一体に備える。左右の湾曲部31の間にはクロスメンバ27(図2)が架橋される。
【0013】
ダウンフレーム22、ロアフレーム23、及びリアフレーム24は、プレスフレームで構成される。プレスフレームは、鋼板にプレス加工を施して複数のプレスフレーム部材を製作し、これらプレスフレーム部材を溶接等で接合することによって製作される。車体フレーム11にプレスフレームを採用することによって、丸パイプを使用する場合と比べ、大型の断面積を得やすくなる。また、丸パイプを使用する場合と比べ、形状自由度や加工容易性が向上し、車幅方向内側に凹む後述する凹部33L,33R(図2参照)を設けやすくなる。
【0014】
ロアフレーム23及びリアフレーム24は一体に製作される。つまり、ロアフレーム23、湾曲部31、及び上方延出部32は、複数のプレスフレーム部材を互いに接合することによって一体に製作される。左右の湾曲部31は、ロアフレーム23の後方に連続するので、ロアフレーム23の後端部と言うこともできる。
【0015】
図2は、図1のII-II断面図であり、左右一対の湾曲部31を周辺構成と共に車両前方から見た図に相当している。図2を含む各図、及び以下の説明において、左右一対の湾曲部31のうち、左側の湾曲部31を「湾曲部31L」と表記し、右側の湾曲部31を「湾曲部31R」と表記する。また、左側のロアフレーム23,リアフレーム24及び上方延出部32を、「ロアフレーム23L,リアフレーム24L及び上方延出部32L」とそれぞれ表記し、右側のロアフレーム23,リアフレーム24及び上方延出部32を、「ロアフレーム23R,リアフレーム24R及び上方延出部32R」とそれぞれ表記する。また、図2には車幅中心を車両前後方向に延びる面LC(以下、車幅中心LCと言う)を示している。
図2に示すように、左右一対の湾曲部31L,31Rは、車幅方向内側に凹む凹部33L,33Rと、凹部33L,33Rの上方に隣接し、凹部33L,33Rよりも車幅方向外側に張り出す非凹部34L,34Rと、をそれぞれ有している。非凹部34L,34Rは、湾曲部31L,31Rにおける最も車幅方向外側に位置する側面と言うこともできる。
図2には、左右一対の非凹部34L,34Rにおける車体フレーム11の幅を値W1で示し、左右一対の凹部33L,33Rにおける車体フレーム11の幅を値W2で示している。
【0016】
本構成では、左側の湾曲部31Lの凹部33LのスペースSL(車体フレーム11の幅W1,W2の違いによってできる左側のスペースに相当)を利用して、より具体的には、車幅方向内側に凹む凹部33Lの車幅方向外側にできるスペースSLを利用して、サイドスタンド51が配置される。
また、右側の湾曲部31Rの凹部33RのスペースSR(車体フレーム11の幅W1,W2の違いによってできる右側のスペースに相当)を利用して、つまり、車幅方向内側に凹む凹部33Rの車幅方向外側にできるスペースSRを利用して、キャニスター61が配置される。
【0017】
図1に示すように、サイドスタンド51は、格納位置の場合に車両前後方向に指向する車両部品である。なお、図2には、格納位置のサイドスタンド51の中心軸線を、符号SCを付して示すと共に、サイドスタンド51の回動軸線LTを示している。
サイドスタンド51の中心軸線SCは、凹部33LのスペースSL内に位置しており、凹部33と車幅方向に重なる。そのため、サイドスタンド51の中心軸線SCよりも少なくとも車幅方向内側に位置する半分の領域をスペースSLに収めることができる。これにより、サイドスタンド51を、左側の湾曲部31Lの非凹部34Lよりも車幅方向外側(左側)に配置する場合と比べ、車幅方向内側に寄せてコンパクトに配置できる。
【0018】
図2に示すように、キャニスター61の中心軸線CCは、右側の湾曲部31Rの凹部33RのスペースSR内に位置しており、凹部33Rと車幅方向に重なる。そのため、キャニスター61の少なくとも半分の領域をスペースSR内に収めることができる。これにより、キャニスター61を、右側の湾曲部31Rの非凹部34Rよりも車幅方向外側(右側)に配置する場合と比べ、車幅方向内側に寄せてコンパクトに配置できる。
【0019】
このように、サイドスタンド51及びキャニスター61を左右に振り分けて配置し、かつ、車幅方向内側に寄せてコンパクトに配置できるので、鞍乗り型車両10の左右の重量バランスを揃えやすく、かつ、車幅の増大を抑えることができる。特に、本構成では、サイドスタンド51及びキャニスター61を、車幅中心LCを基準にして左右対称位置に配置しているので、左右の重量バランスをより揃えやすくなる。
【0020】
また、左右一対の湾曲部31L,31Rは、図2に示すように、凹部33L,33R及び非凹部34L,34Rを含めて、車幅中心LCを基準にして左右対称形状に形成されている。そのため、左右一対の湾曲部31L,31Rを含む車体フレーム11の左右の重量バランスを揃えやすく、かつ、左右の剛性バランスも揃えやすくなる。
【0021】
左右の凹部33L,33R、サイドスタンド51及びキャニスター61について更に説明する。図3は、左側の湾曲部31Lをサイドスタンド51と共に示す側面図である。図4は、左側の湾曲部31Lをサイドスタンド51と共に左下方から示す斜視図である。
図3及び図4に示すように、左側の湾曲部31Lにおいて、非凹部34Lは、左側のロアフレーム23L及び上方延出部32Lのそれぞれの車幅方向外側面に連続して湾曲部31Lの最も車幅方向外側の面を構成するだけでなく、湾曲部31のうち、最も車幅方向に幅広の部分を構成する。
【0022】
凹部33Lは、非凹部34Lの下方にて湾曲部31Lの後端まで延出すると共に、湾曲部31Lの下端まで延在する。具体的には、凹部33Lの上端を構成する上縁33uは、ロアフレーム23L側から後方に向けて延出し、湾曲部31の後端まで延びる。また、凹部33の前端を構成する前縁33fは、上縁33uの前端から下方に向けて延出し、湾曲部31の下端まで延びる。これにより、凹部33は、車両後方及び車両下方の両方に開放する凹形状を形成する。
【0023】
左側の凹部33Lには、ブラケット52を介してサイドスタンド51が取り付けられる。ここで、図3及び図4を含む各図では、格納位置のサイドスタンド51を実線で示し、起立位置のサイドスタンド51を二点鎖線で示している。
ブラケット52は、凹部33Lに溶接等で取り付けられ、サイドスタンド51を支持するスタンド支持部として機能する車両部品である。具体的には、ブラケット52は、凹部33Lに溶接等で取り付けられる基部52aと、基部52aの下端から車幅方向内側に向けて屈曲する屈曲部52bとを一体にする板状部材で形成される。ブラケット52の基部52aに、サイドスタンド51を、起立位置と格納位置とに可動自在に支持すると共に、車幅方向で凹部33Lに重なる位置に支持する。
【0024】
サイドスタンド51は、基端部53aが回動自在に支持される棒状のスタンド本体53と、スタンド本体53の先端から車幅方向外側に張り出す接地部54と、スタンド本体53の途中から車幅方向外側に張り出すスタンド操作部55とを備えている。
図2に示すように、スタンド本体53の基端部53aには、車幅方向外側から締結部材56A(例えばボルト)が通される。この締結部材56Aが、基端部53aの車幅方向内側に設けられた被締結部57(例えばナット)に締結されることによって、スタンド本体53が湾曲部31に回動自在に固定される。締結部材56Aには、車幅方向外側から締結部材56が締結され、この締結部材56によって、スタンド本体53の基端部53aの周囲にサイドスタンドスイッチ58が支持される。サイドスタンドスイッチ58は、サイドスタンド51が起立位置及び格納位置のいずれの状態かを検出するためのスイッチである。
図2に示すように、締結部材56,56A及び被締結部57の中心軸線は、サイドスタンド51の回動軸線LTと一致している。
【0025】
接地部54は、起立位置の場合に地面に接地する部分であり、スタンド操作部55は、スタンド本体53を回動させる際にユーザー(例えば、乗員)が足で操作する部分である。
図4に示すように、ブラケット52の基部52aは、スタンド本体53と凹部33Lとの間に延在し、ブラケット52の屈曲部52bは、凹部33Lの下方を通って凹部33Lよりも車幅方向内側に延出する。屈曲部52bは、ブラケット52の下端部を構成しており、この下端部の一部を切り欠くことによって切り欠き部52kが形成されている。切り欠き部52kは、被締結部57の車幅方向内側に対応する位置に設けられている。
【0026】
図5は、車両背面視で、被締結部57を周辺構成と共に示す図である。
切り欠き部52kは、図5に示す所定の工具70の一部を通すことが可能な切り欠き形状に形成される。この工具70を切り欠き部52kに通すことによって、図5に示すように、工具70を、サイドスタンド51の被締結部57にアクセスさせることができる。
具体的には、サイドスタンド51の取付を行うために図3に示す被締結部57を締結する際に、工具70によって被締結部57の回転を規制したり、被締結部57を回転させたりすることが可能になる。これによって、サイドスタンド51の取付作業を容易に行うことが可能になる。
また、サイドスタンド51の取り外しを行うために被締結部57を取り外す際にも、工具70によって被締結部57の回転を規制したり、被締結部57を回転させたりすることができ、取り外し作業を容易に行うことも可能になる。
【0027】
サイドスタンド51の回動軸線LTは、スタンド本体53の回動軸線である。スタンド本体53の回動軸線が、図5に示す車両後面視で、車幅方向内側かつ下方向きとなっているので、サイドスタンド51を図5に示す格納位置から起立位置にした場合に、スタンド本体53の先端部が車幅方向外側に移動し、スタンド本体53の先端部に設けられた接地部54を、車幅方向外側に十分に離れた位置にすることができる。
【0028】
図5中の領域AR1は、スタンド本体53の基端部53aの領域を示している。本構成では、サイドスタンド51を、起立位置から格納位置にした場合に、図5に示す車両背面視で、サイドスタンド51の少なくともスタンド本体53全体が、スタンド本体53の基端部53aの領域AR1と前後方向に重なる。これにより、起立位置ではサイドスタンド51の接地部54を車幅方向外側に十分に離れた位置にしながら、格納位置ではサイドスタンド51を車幅方向にコンパクトに配置可能である。
【0029】
図3に示すように、本構成では、凹部33Lが湾曲部31Lの後端まで連続して延びるので、格納位置のサイドスタンド51が前後に長く延びる場合でも、サイドスタンド51がリアフレーム24Lに接触しない。しかも、凹部33Lが湾曲部31Lの下端まで連続して延びるので、サイドスタンド51を起立位置にしても、サイドスタンド51がロアフレーム23Lに接触しない。したがって、サイドスタンド51が車両前後方向、及び車両上下方向に長い場合でも、サイドスタンド51を車幅方向にコンパクトに配置しながら、サイドスタンド51を車体フレーム11に接触しないように配置できる。
【0030】
図6は、右側の湾曲部31Rをキャニスター61と共に示す側面図である。図7は、右側の湾曲部31Rをキャニスター61と共に上方から示す図である。
キャニスター61は、蒸発燃料排出抑止装置として機能する車両部品であり、両端が閉塞された筒形状に形成される。キャニスター61は、図6及び図7に示すように、環状の支持部材62に支持される。この支持部材62は、ラバー製の防振部材である。車体フレーム11の一部である右側の湾曲部33Rに、鉄製部材であるステー62sが溶接され、このステー62sに支持部材62が挿通されることによって、支持部材62が湾曲部31Rに支持される。これによって、キャニスター61は車体フレーム11にラバーマウントされる。
【0031】
キャニスター61は、キャニスター61の中心軸線CCを車両前後方向に沿わせて配置され、図6に示す車両側面視で、右側の凹部33Rと重なる位置であって、図7に示す車両上面視で、非凹部34と上下方向に重なる位置に配置される。これにより、キャニスター61を凹部33R内のスペースを利用して配置できる。本構成では、キャニスター61の中心軸線CCが、図6に示す車両側面視で、右側の凹部33Rと重なり、かつ、図7に示す平面視で、非凹部34Rと上下方向に重なるので、キャニスター61の半分以上の領域を凹部33Rのスペースに配置できる。これにより、車幅方向にコンパクトにキャニスター61を配置できる。
【0032】
キャニスター61が配置される凹部33Rについても、図6に示すように、湾曲部31Rの後端まで連続して延びるので、キャニスター61が前後に長く延びる場合でも、キャニスター61をリアフレーム24Rに接触しないようにできる。しかも、凹部33Rが湾曲部31Rの下端まで連続して延びるので、キャニスター61が上下方向に大型であっても、キャニスター61をリアフレーム24Rに接触しないように配置できる。これにより、キャニスター61が車両前後方向、及び車両上下方向のいずれかに大型化しても、キャニスター61を車幅方向にコンパクトに配置しながら、キャニスター61を車体フレーム11に接触しないように配置できる。
【0033】
図6及び図7に示すように、キャニスター61の前部には、燃料タンク25につながるチャージ配管63が接続される。このチャージ配管63を介して、燃料タンク25で発生した蒸発燃料がキャニスター61に流入し、キャニスター61内の吸着部材に吸着される。
本構成では、キャニスター61側に相当する右側のロアフレーム23Rに、チャージ配管63を通す金属製のパイプ部材65が設けられる。このパイプ部材65は、ロアフレーム23Rを貫通し、溶接等によってロアフレーム23Rに接合される。このパイプ部材65によって、ロアフレーム23Rのスペースを、チャージ配管63の配策スペースに利用でき、チャージ配管63の配策もしやすくなる。
【0034】
本構成のパイプ部材65は、図6に示す車両側面視で、前上方に向けて斜めに直線状に延び、図7に示す車両上面視で、車両前方かつ車幅方向内側に向けて斜めに直線状に延びる。このようにパイプ部材65を設けることによって、図7に示すように、キャニスター61と、燃料タンク25におけるチャージ配管63の接続箇所(本構成では給油口25a周辺)とを、短い経路(例えば直線に近い経路)でつなぐように、チャージ配管63を配策できる。したがって、チャージ配管63を、ロアフレーム23Rを迂回するように配策する場合と比べ、配管長を短縮化することも可能である。
【0035】
なお、図6及び図7では、キャニスター61につながる複数の配管のうち,チャージ配管63だけを図示しており、チャージ配管63以外の他の配管については適宜に配策すればよい。他の配管は、キャニスター61内の蒸発燃料をパワーユニット12の吸気側(内燃機関の吸気側)に導くパージ配管、キャニスター61内に外部の大気を導入する大気導入管、及び、キャニスター61内の水分等を排出するドレン配管等である。
他の配管については、湾曲部31を含む車体フレーム11を迂回するように車体フレーム11周囲に配策してもよいし、他の配管のいずれかについても、パイプ部材65を通すように配策してもよい。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の鞍乗り型車両10は、左右一対のロアフレーム23L,23Rから上方に延びる左右一対の湾曲部31L,31Rを備え、各湾曲部31L,31Rに、車幅方向内側に凹む凹部33L,33Rを有し、各凹部33L,33Rは各湾曲部31L,31Rの後端まで連続して延び、各凹部33L,33R内に、サイドスタンド51及びキャニスター61からなる車両部品の少なくとも一部を配置している。
各凹部33L,33Rは各湾曲部31L,31Rの後端まで連続して延び、各凹部33L,33R内に、車両部品51,61の少なくとも一部を配置しているので、車両部品51,61が車両前後方向に長い部品であっても、車両部品51,61を凹部33L,33R内のスペースを利用して車幅方向にコンパクトに配置できる。
【0037】
また、図2及び図5等に示したように、各凹部33L,33Rは各湾曲部31L,31Rの後端まで連続して延びると共に、各湾曲部31L,31Rの下端まで連続して延びているので、車両後面視で、各湾曲部31L,31Rは、各凹部33L,33Rに対応する領域が、車幅方向内側に切り欠かれると共に車両下方に向けて開放する。
車両後面視で、各湾曲部31L,31Rは、各凹部33L,33Rに対応する領域が、車幅方向内側に切り欠かれると共に車両下方に向けて開放するので、車両部品51,61が車両前後方向、及び車両上下方向に長い場合でも、車両部品51,61を車幅方向にコンパクトに配置しながら、車体フレーム11に接触しないように配置できる。
【0038】
また、車両部品51,61は、起立位置と格納位置とに可動自在なサイドスタンド51を含み、左側の凹部33Lは、サイドスタンド51の少なくとも一部と車幅方向に重なり、サイドスタンド51よりも上方に上記凹部33Lの上端が位置する。左側の凹部33Lは、サイドスタンド51の少なくとも一部と車幅方向に重なり、サイドスタンド51よりも上方に上記凹部33Lの上端に相当する上縁33uが位置するので、前後方向等に長さを有するサイドスタンド51を、左側の凹部33L内のスペースを利用して車幅方向にコンパクトに配置できる。
【0039】
また、左側の凹部33L内に、サイドスタンド51の少なくとも一部を配置し、右側の凹部33R内に、キャニスター61の少なくとも一部を配置するので、車両前後方向等に長くなりやすいサイドスタンド51とキャニスター61の両方を、左右の凹部33L,33Rを利用して、車幅方向にコンパクトに配置でき、かつ、鞍乗り型車両10の左右の重量バランスを揃えやすくなる。なお、サイドスタンド51は、本発明の「スタンド」に相当する。
【0040】
また、左側の凹部33Lとサイドスタンド51の間には、サイドスタンド51を支持するスタンド支持部として機能するブラケット52が配置され、このブラケット52には、切り欠き部52kが設けられる。この切り欠き部52kに所定の工具70を挿通することによって、サイドスタンド51の所定箇所である被締結部57に工具70をアクセスすることが可能になる。したがって、所定の工具70を所定箇所にアクセスする際にブラケット52が邪魔にならず、工具70を用いた作業を容易に行うことができる。
【0041】
なお、本実施形態の所定箇所、及び工具70は一例に過ぎず、サイドスタンド51の構造等が異なる場合には、所定箇所、及び工具は適宜に変更される。つまり、本発明の「所定箇所」は、鞍乗り型車両10の各種作業を行う箇所であればよく、切り欠き部52kは、その所定箇所に向けて作業に使用する工具を挿通自在にするものであればよい。この切り欠き部52kによって、所定の工具を所定箇所にアクセスする際にスタンド支持部が邪魔にならず、所定の工具を用いた所定の作業を容易に行うことが可能になる。
【0042】
また、左右一対のロアフレーム23L,23Rのうち、キャニスター61側のロアフレーム23Rには、キャニスター61につながるチャージ配管63を通すパイプ部材65が貫通している。この構成によれば、キャニスター61につながるチャージ配管63の配策スペースをロアフレーム23R内に確保できると共に、チャージ配管63の配策がしやすくなる。
なお、本実施形態では、チャージ配管63を通すパイプ部材65がロアフレーム23Rを貫通する場合を例示したが、これに限定されず、チャージ配管以外の他の配管(例えば、パージ配管、大気導入管、ドレン配管)を通すパイプ部材がロアフレーム23Rを貫通するようにしてもよい。
【0043】
なお、上述の実施形態は本発明の一態様を示すものである。本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、細部等の構成は適宜に変更してもよい。
例えば、車体フレーム11の形状、構造及び材料は変更してもよい。具体例を挙げると、ロアフレーム23及び湾曲部31の数は変更してもよく、ロアフレーム23及び湾曲部31が単数でもよい。また、左右の湾曲部31L,31Rの両方に凹部33L,33Rを設ける場合を説明したが、左右一方の湾曲部31だけに凹部33(凹部33L,33Rに限定されない凹部)を設けるようにしてもよいし、凹部33L,33Rのいずれか一方は、湾曲部31の後端まで連続して延びていなくてもよい。
【0044】
また、凹部33内に配置する車両部品は、サイドスタンド51及びキャニスター61に限定しなくてもよい。
つまり、本発明は、任意の数のロアフレーム23と、ロアフレーム23から上方に延びる任意の数の湾曲部31とを備える構成において、いずれかの湾曲部31に、車幅方向内側に凹む凹部33を有し、凹部33は、湾曲部31の後端まで連続して延び、凹部33に、当該車両が有する任意の車両部品の少なくとも一部を配置するようにすればよい。
また、本発明を、図1等に示すスクータ型の自動二輪車に適用する場合を説明したが、スクータ型の自動二輪車に限定されず、任意の鞍乗り型車両に本発明を適用してもよい。なお、鞍乗り型車両は、二輪車両に限定されず、三輪車両、及び四輪車両等でもよい。
【0045】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0046】
(構成1)ロアフレームと、前記ロアフレームから上方に延びる湾曲部と、を備える鞍乗り型車両において、前記湾曲部に、車幅方向内側に凹む凹部を有し、前記凹部は、前記湾曲部の後端まで連続して延び、前記凹部に、当該車両が有する車両部品の少なくとも一部を配置する、鞍乗り型車両。
この構成によれば、車両部品が車両前後方向に長い部品であっても、車両部品を凹部内のスペースを利用して車幅方向にコンパクトに配置できる。
【0047】
(構成2)車両後面視で、前記湾曲部は、前記凹部に対応する領域が、車幅方向内側に切り欠かれると共に車両下方に向けて開放している、構成1に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、車両部品が車両前後方向、及び車両上下方向に長い場合でも、車両部品を車幅方向にコンパクトに配置しながら、車体フレームに接触しないように配置できる。
【0048】
(構成3)前記車両部品は、起立位置と格納位置とに可動自在なスタンドを含み、前記凹部は、前記スタンドの少なくとも一部と車幅方向に重なり、前記スタンドよりも上方に前記凹部の上端が位置する、構成1又は2に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、前後方向に長さを有する車両部品を、凹部内のスペースを利用して車幅方向にコンパクトに配置できる。
【0049】
(構成4)前記ロアフレームは左右一対であって、左右一対の湾曲部のそれぞれに前記凹部を有し、一方の凹部に、スタンドの一部を配置し、他方の凹部に、キャニスターの一部を配置する、構成1乃至3のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、車両前後方向等に長くなりやすいスタンドとキャニスターの両方を、左右の凹部を利用して、車幅方向にコンパクトに配置でき、かつ、鞍乗り型車両の左右の重量バランスを揃えやすくなる。
【0050】
(構成5)前記凹部には、前記スタンドを支持するスタンド支持部が配置され、前記スタンド支持部には、切り欠き部が設けられる、請求項3又は4に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、この切り欠き部に所定の工具を挿通することによって、スタンドの所定箇所に所定の工具をアクセスすることが可能になる。したがって、所定の工具を所定箇所にアクセスする際にスタンド支持部が邪魔にならず、所定の工具を用いた所定の作業を容易に行うことができる。
【0051】
(構成6)前記左右一対のロアフレームのうち、前記キャニスター側のロアフレームには、前記キャニスターにつながる配管を通すパイプ部材が貫通している、請求項4に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、キャニスターにつながる配管の配策スペースをロアフレーム内に確保できると共に、配管の配策がしやすくなる。
【符号の説明】
【0052】
10 鞍乗り型車両
11 車体フレーム
21 ヘッドパイプ
22 ダウンフレーム
23 ロアフレーム
24,24L,24R リアフレーム
25 燃料タンク
31,31L,31R 湾曲部
32,32L,32R 上方延出部
33,33L,33R、 凹部
34L,34R 非凹部
51 サイドスタンド(スタンド、車両部品)
52 ブラケット(スタンド支持部、車両部品)
52k 切り欠き部
61 キャニスター(車両部品)
63 チャージ配管(キャニスターにつながる配管)
65 パイプ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7