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特開2024-157745くし目ごておよびそれを用いた接着剤組成物の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157745
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】くし目ごておよびそれを用いた接着剤組成物の施工方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 17/10 20060101AFI20241031BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20241031BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20241031BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241031BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20241031BHJP
   E04F 21/02 20060101ALN20241031BHJP
   E04F 21/16 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
B05C17/10
C09J175/04
B05D1/28
B05D7/24 301P
B05D3/12 C
E04F21/02 C
E04F21/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072287
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000103541
【氏名又は名称】オート化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】浅井 直樹
【テーマコード(参考)】
4D075
4F042
4J040
【Fターム(参考)】
4D075AC57
4D075AC88
4D075BB05Z
4D075BB60Z
4D075CA13
4D075CA38
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB12
4D075DB31
4D075DC02
4D075EA06
4D075EA35
4D075EB38
4F042AA16
4F042AB00
4F042BA25
4F042DD07
4F042DD11
4F042FA22
4F042FA46
4F042FA52
4J040EF001
4J040EF111
4J040EF121
4J040EF131
4J040EF181
4J040GA07
4J040GA25
4J040GA31
4J040HA126
4J040HA306
4J040JA03
4J040KA25
4J040KA42
4J040MA02
4J040MA04
4J040MA05
4J040MA06
4J040MA10
4J040NA12
(57)【要約】
【課題】夏季(高温高湿度)の環境においても水性接着剤組成物塗布後の可使時間を確保し作業性を向上させること、水性接着剤組成物の接着強度を向上させることを目的とする。
【解決手段】端部に切欠部と閉塞部が交互に設けられたくし目部を有し、前記切欠部の高さが2.5~6.0mm、前記切欠部の幅が1.0~4.0mm、前記切欠部の高さと前記切欠部の幅の比(高さ/幅)が1.3~3.0であり、前記切欠部のピッチが4.0~12.0mmで複数形成された前記くし目部孔を有するくし目ごてを用いて水性接着剤組成物を下地に塗布する工程、前記水性接着剤組成物と床材を張り合わせる工程、任意に、前記床材を圧締する工程、をこの順で行う工程を含む施工方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に切欠部と閉塞部が交互に設けられたくし目部を有する、水性接着剤組成物用のくし目ごてであって、
前記切欠部の高さが2.5~6.0mm、前記切欠部の幅が1.0~4.0mm、前記切欠部の高さと前記切欠部の幅の比(高さ/幅)が1.3~3.0であり、前記切欠部のピッチが4.0~12.0mmで複数形成された前記くし目部を有することを特徴とするくし目ごて。
【請求項2】
端部に切欠部と閉塞部が交互に設けられたくし目部を有する、水性接着剤組成物用のくし目ごてであって、
前記水性接着剤組成物が水性ウレタン接着剤組成物であり、
前記切欠部の高さが2.5~6.0mm、前記切欠部の幅が1.0~4.0mm、前記切欠部の高さと前記切欠部の幅の比(高さ/幅)が1.3~3.0であり、前記切欠部のピッチが4.0~12.0mmで複数形成された前記くし目部を有することを特徴とするくし目ごて。
【請求項3】
端部に切欠部と閉塞部が交互に設けられたくし目部を有する、水性接着剤組成物用のくし目ごてであって、
前記水性接着剤組成物の粘度が15,000~40,000mPa・s(12rpm、25℃、B型粘度計)、TI値(6rpmの粘度/12rpmの粘度、25℃、B型粘度計)が1.3~3.0、不揮発分が20~80質量%であり、
前記切欠部の高さが2.5~6.0mm、前記切欠部の幅が1.0~4.0mm、前記切欠部の高さと前記切欠部の幅の比(高さ/幅)が1.3~3.0であり、前記切欠部のピッチが4.0~12.0mmで複数形成された前記くし目部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のくし目ごて。
【請求項4】
端部に切欠部と閉塞部が交互に設けられたくし目部を有する、水性接着剤組成物用のくし目ごてであって、
前記水性接着剤組成物が床材用途であり、
前記切欠部の高さが2.5~6.0mm、前記切欠部の幅が1.0~4.0mm、前記切欠部の高さと前記切欠部の幅の比(高さ/幅)が1.3~3.0であり、前記切欠部のピッチが4.0~12.0mmで複数形成された前記くし目部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のくし目ごて。
【請求項5】
請求項1または2に記載のくし目ごてを用いて水性接着剤組成物を下地に塗布する工程、
前記水性接着剤組成物と床材を張り合わせる工程、
任意に、前記床材を圧締する工程、
をこの順で行う工程を含む施工方法。
【請求項6】
前記下地の含水量が0~15質量%(高周波容量式水分計)である請求項5に記載の施工方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載のくし目ごてを用いて水性接着剤組成物を下地に塗布する工程、
前記水性接着剤組成物と床材を張り合わせる工程、
任意に、前記床材を圧締する工程、
をこの順で行う工程を含む施工方法により形成された床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に床材用の水性接着剤組成物に用いるくし目ごておよびそれを用いた接着剤組成物の施工方法、ならびにその施工方法によって形成された床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製床材等の床材の現場施工には、有機溶剤系接着剤組成物が広く使用されている。しかし、有機溶剤系接着剤組成物では、有機溶剤による、作業環境、人体に対する安全性および火災等の問題があり、近年、有機溶剤を使用しない無溶剤型の接着剤組成物やエマルジョン型の水性接着剤組成物が使われるようになってきている。
【0003】
しかしながら、一般に、無溶剤型の接着剤組成物は、粘度が高く作業性に劣り、作業性を改善するため低分子の可塑剤を配合する場合もあるが、接着強度の低下やブリード汚染の恐れがある。また、水性接着剤組成物を用いて施工面積の大きい現場の床材を施工する場合には、下地に水性接着剤組成物を塗布してから床材を張付けるまでの時間が長くなり、この間に水性接着剤組成物が乾燥してしまうと床材に張付けできないことや接着力が低下することから、水性接着剤組成物には塗布後に十分な可使時間(オープンタイム)を有する性能が求められている。
【0004】
水性接着剤組成物塗布後に十分な可使時間を確保するため、出願人は水性ポリウレタンエマルジョンに微粉末シリカと増粘剤を配合した水性ポリウレタン系エマルジョン組成物を提案している(特許文献1)。特許文献1の水性ポリウレタン系エマルジョン組成物は、塗布後の指触乾燥時間が従来の水性接着剤組成物より長く、作業性が向上している。他方、夏季(高温高湿度)の作業では水性接着剤組成物の乾燥が速く十分な可使時間を確保するための新たな手法が求められている。また、水性接着剤組成物は有機溶剤系接着剤組成物と比較し耐水接着性が劣る場合もあり、耐水接着性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-152815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、夏季(高温高湿度)の環境においても水性接着剤組成物塗布後に十分な可使時間(オープンタイム)を確保し作業性を向上させること、水性接着剤組成物の接着強度(耐水接着性)を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、以下の特定のくし目部を有する水性接着剤組成物用のくし目ごておよびそれを用いた水性接着剤組成物の施工方法が本願発明の課題を解決する手段として有効であることを見出した。本発明の構成の要旨は以下の通りである。
[1]端部に切欠部と閉塞部が交互に設けられたくし目部を有する、水性接着剤組成物用のくし目ごてであって、
前記切欠部の高さが2.5~6.0mm、前記切欠部の幅が1.0~4.0mm、前記切欠部の高さと前記切欠部の幅の比(高さ/幅)が1.3~3.0であり、前記切欠部のピッチが4.0~12.0mmで複数形成された前記くし目部を有することを特徴とするくし目ごて。
[2]端部に切欠部と閉塞部が交互に設けられたくし目部を有する、水性接着剤組成物用のくし目ごてであって、
前記水性接着剤組成物が水性ウレタン接着剤組成物であり、
前記切欠部の高さが2.5~6.0mm、前記切欠部の幅が1.0~4.0mm、前記切欠部の高さと前記切欠部の幅の比(高さ/幅)が1.3~3.0であり、前記切欠部のピッチが4.0~12.0mmで複数形成された前記くし目部を有することを特徴とするくし目ごて。
[3]端部に切欠部と閉塞部が交互に設けられたくし目部を有する、水性接着剤組成物用のくし目ごてであって、
前記水性接着剤組成物の粘度が15,000~40,000mPa・s(12rpm、25℃、B型粘度計)、TI値(6rpmの粘度/12rpmの粘度、25℃、B型粘度計)が1.3~3.0、不揮発分が20~80質量%であり、
前記切欠部の高さが2.5~6.0mm、前記切欠部の幅が1.0~4.0mm、前記切欠部の高さと前記切欠部の幅の比(高さ/幅)が1.3~3.0であり、前記切欠部のピッチが4.0~12.0mmで複数形成された前記くし目部を有することを特徴とする[1]または[2]に記載のくし目ごて。
[4]端部に切欠部と閉塞部が交互に設けられたくし目部を有する、水性接着剤組成物用のくし目ごてであって、
前記水性接着剤組成物が床材用途であり、
前記切欠部の高さが2.5~6.0mm、前記切欠部の幅が1.0~4.0mm、前記切欠部の高さと前記切欠部の幅の比(高さ/幅)が1.3~3.0であり、前記切欠部のピッチが4.0~12.0mmで複数形成された前記くし目部を有することを特徴とする[1]または[2]に記載のくし目ごて。
[5][1]または[2]に記載のくし目ごてを用いて水性接着剤組成物を下地に塗布する工程、
前記水性接着剤組成物と床材を張り合わせる工程、
任意に、前記床材を圧締する工程、
をこの順で行う工程を含む施工方法。
[6]前記下地の含水量が0~15質量%(高周波容量式水分計)である[5]に記載の施工方法。
[7][1]または[2]に記載のくし目ごてを用いて水性接着剤組成物を下地に塗布する工程、
前記水性接着剤組成物と床材を張り合わせる工程、
任意に、前記床材を圧締する工程、
をこの順で行う工程を含む施工方法により形成された床構造。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水性接着剤組成物用のくし目ごておよびそれを用いた施工方法の態様によれば、水性接着剤組成物を、特に、床材用接着剤組成物として使用した場合に、水性接着剤組成物塗布後に十分な可使時間が確保できるので作業性が向上し、接着強度(耐水接着性)に優れた床構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごての概要を説明する全体図である。
図2】本発明の第1実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごてのくし目部を拡大した正面図である。
図3】本発明の第2実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごての概要を説明する全体図である。
図4】本発明の第2実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごてのくし目部を拡大した正面図である。
図5】本発明の第3実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごての概要を説明する全体図である。
図6】本発明の第3実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごてのくし目部を拡大した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の水性接着剤組成物用のくし目ごておよびそれを用いた施工方法、床構造について、詳細に説明する。
【0011】
まず、本発明の第1実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごてについて説明する。なお、図1は、本発明の第1実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごての概要を説明する全体図である。図2は、本発明の第1実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごてのくし目部を拡大した正面図である。
【0012】
図1に示すように、本発明の第1実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごて1は、長手方向Lと長手方向Lに対して直交方向である幅方向(短手方向)Wを有する板状の本体部3と、本体部3の長手方向Lの端部(長手方向Lの一端部および/若しくは前記一端部に対向した他端部)ならびに/または幅方向Wの端部(幅方向Wの一端部および/若しくは前記一端部に対向した他端部)に設けられた、くし目形状であるくし目部2と、を備えている。図1では、本体部3の長手方向Lの一端部に幅方向Wに沿ってくし目部2が設けられている。水性接着剤組成物を塗布する作業において、作業者がくし目部2に水性接着剤組成物を供給して、本体部3を把持し、下地等の塗布対象物に水性接着剤組成物を塗布する。または、作業者が下地等の塗布対象物に水性接着剤組成物を塗布し、くし目ごて1のくし目部2を用いて水性接着剤組成物を均す。
【0013】
くし目部2の位置は、平板状である本体部3と略同一平面上となっている。また、くし目部2は、本体部3の長手方向Lにおける一端部に幅方向W全体にわたって形成されており、くし目部2の端部である先端部23の位置は、本体部3の幅方向W全体にわたって略同一直線上となっている。
【0014】
図1、2に示すように、くし目部2には、切欠部21と閉塞部22が交互に設けられており、切欠部21は、所定の間隔にて複数形成されている。すなわち、隣接する切欠部21の間には、閉塞部22が設けられている。それぞれの切欠部21が、くし目部2のくし目として機能する。くし目部2に切欠部21と閉塞部22が交互に設けられていることで、本発明の水性接着剤組成物用のくし目ごて1を用いて塗布した水性接着剤組成物に、くし目(山)形状を形成することができる。
【0015】
切欠部21の正面視の形状は、特に限定されず、例えば、正三角形状、二等辺三角形状、縦長長方形状、半楕円形状等が挙げられる。水性接着剤組成物用のくし目ごて1では、正面視二等辺三角形状となっている。また、切欠部21の正面視の形状は、くし目部2の先端部23に向かって切欠部21の幅が次第に広がっていく幅広形状となっている。
【0016】
図2に示すように、切欠部21は、正面視において所定の高さ(全高)aと所定の幅bを有している。また、複数の切欠部21、21、21・・・は、いずれも、正面視において、略同じ高さaと略同じ幅bを有している。なお、本明細書において、切欠部21の幅とは、くし目部2の端部である先端部23における切欠部21の幅を意味する。
【0017】
本発明の水性接着剤組成物用のくし目ごて1では、切欠部21の高さaは、2.5~6.0mmであり、切欠部21の幅bは、1.0~4.0mmである。また、切欠部21は、所定のピッチcにて複数形成されている。切欠部21のピッチcは、接着性が安定することから等間隔に複数形成されていることが好ましい。本発明の水性接着剤組成物用のくし目ごて1では、切欠部21のピッチcは、4.0~12.0mmである。
【0018】
切欠部21の高さaが2.5~6.0mm、切欠部21の幅bが1.0~4.0mm、切欠部21のピッチcが4.0~12.0mmであることにより、夏季(高温高湿度)の環境においても水性接着剤組成物塗布後に十分な可使時間を確保し作業性を向上させることができ、また、水性接着剤組成物の接着強度(耐水接着性)を向上させることができる。
【0019】
切欠部21の高さaは2.5~6.0mmであれば、特に限定されないが、夏季(高温高湿度)の環境において可使時間をさらに長くし、また、接着強度をさらに向上させる点から、3.0~5.5mmが好ましく、3.5~5.0mmが特に好ましい。また、切欠部21の幅bは1.0~4.0mmであれば、特に限定されないが、夏季(高温高湿度)の環境において可使時間をさらに長くし、また、接着強度をさらに向上させる点から、1.5~3.0mmが好ましく、1.5~2.5mmが特に好ましい。また、切欠部21の高さaに対する切欠部21の幅b(高さa/幅b)は1.3~3.0であれば、特に限定されないが、夏季(高温高湿度)の環境において可使時間をさらに長くし、また、接着強度をさらに向上させる点から、1.5~3.0が好ましく、1.5~2.5が特に好ましい。また、切欠部21のピッチcは4.0~12.0mmであれば、特に限定されないが、夏季(高温高湿度)の環境において可使時間をさらに長くし、また、接着強度をさらに向上させる点から、5.0~11.0mmが好ましく、6.0~10.0mmが特に好ましい。
【0020】
次に、本発明の第2実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごてについて説明する。第2実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごては、第1実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごてと主要な構成要素は共通しているので、第1実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごてと同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。なお、図3は、本発明の第2実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごての概要を説明する全体図である。図4は、本発明の第2実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごてのくし目部を拡大した正面図である。
【0021】
第1実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごて1では、切欠部21の正面視の形状は二等辺三角形状となっていたが、これに代えて、図3、4に示すように、第2実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごて12では、半楕円形状となっており、より具体的には、縦長の半楕円形状となっている。
【0022】
図4に示すように、水性接着剤組成物用のくし目ごて12でも、切欠部21は、正面視において所定の高さ(全高)aと所定の幅bを有している。また、複数の切欠部21、21、21・・・は、いずれも、正面視において、略同じ高さaと略同じ幅bを有している。
【0023】
水性接着剤組成物用のくし目ごて12でも、切欠部21の高さaは、2.5~6.0mmであり、切欠部21の幅bは、1.0~4.0mmである。また、切欠部21は、所定のピッチcにて複数形成されている。切欠部21のピッチcは、接着性が安定することから等間隔に複数形成されていることが好ましい。水性接着剤組成物用のくし目ごて12でも、切欠部21のピッチcは、4.0~12.0mmである。
【0024】
水性接着剤組成物用のくし目ごて12でも、切欠部21の高さaが2.5~6.0mm、切欠部21の幅bが1.0~4.0mm、切欠部21のピッチcが4.0~12.0mmであることにより、夏季(高温高湿度)の環境においても水性接着剤組成物塗布後に十分な可使時間を確保し作業性を向上させることができ、また、水性接着剤組成物の接着強度(耐水接着性)を向上させることができる。
【0025】
水性接着剤組成物用のくし目ごて12でも、切欠部21の高さaは2.5~6.0mmであれば、特に限定されないが、夏季(高温高湿度)の環境において可使時間をさらに長くし、また、接着強度をさらに向上させる点から、3.0~5.5mmが好ましく、3.5~5.0mmが特に好ましい。また、切欠部21の幅bは1.0~4.0mmであれば、特に限定されないが、夏季(高温高湿度)の環境において可使時間をさらに長くし、また、接着強度をさらに向上させる点から、1.5~3.0mmが好ましく、1.5~2.5mmが特に好ましい。また、切欠部21の高さaに対する切欠部21の幅b(高さa/幅b)は1.3~3.0であれば、特に限定されないが、夏季(高温高湿度)の環境において可使時間をさらに長くし、また、接着強度をさらに向上させる点から、1.5~3.0が好ましく、1.5~2.5が特に好ましい。また、切欠部21のピッチcは4.0~12.0mmであれば、特に限定されないが、夏季(高温高湿度)の環境において可使時間をさらに長くし、また、接着強度をさらに向上させる点から、5.0~11.0mmが好ましく、6.0~10.0mmが特に好ましい。
【0026】
次に、本発明の第3実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごてについて説明する。第3実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごては、第1、第2実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごてと主要な構成要素は共通しているので、第1、第2実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごてと同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。なお、図5は、本発明の第3実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごての概要を説明する全体図である。図6は、本発明の第3実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごてのくし目部を拡大した正面図である。
【0027】
第1実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごて1では、切欠部21の正面視の形状は二等辺三角形状となっていたが、これに代えて、図5、6に示すように、第3実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごて13では、四角形状となっており、より具体的には、縦長の長方形状となっている。
【0028】
図6に示すように、水性接着剤組成物用のくし目ごて13でも、切欠部21は、正面視において所定の高さ(全高)aと所定の幅bを有している。また、複数の切欠部21、21、21・・・は、いずれも、正面視において、略同じ高さaと略同じ幅bを有している。
【0029】
水性接着剤組成物用のくし目ごて13でも、切欠部21の高さaは、2.5~6.0mmであり、切欠部21の幅bは、1.0~4.0mmである。また、切欠部21は、所定のピッチcにて複数形成されている。切欠部21のピッチcは、接着性が安定することから等間隔に複数形成されていることが好ましい。水性接着剤組成物用のくし目ごて13でも、切欠部21のピッチcは、4.0~12.0mmである。
【0030】
水性接着剤組成物用のくし目ごて13でも、切欠部21の高さaが2.5~6.0mm、切欠部21の幅bが1.0~4.0mm、切欠部21のピッチcが4.0~12.0mmであることにより、夏季(高温高湿度)の環境においても水性接着剤組成物塗布後に十分な可使時間を確保し作業性を向上させることができ、また、水性接着剤組成物の接着強度(耐水接着性)を向上させることができる。
【0031】
水性接着剤組成物用のくし目ごて13でも、切欠部21の高さaは2.5~6.0mmであれば、特に限定されないが、夏季(高温高湿度)の環境において可使時間をさらに長くし、また、接着強度をさらに向上させる点から、3.0~5.5mmが好ましく、3.5~5.0mmが特に好ましい。また、切欠部21の幅bは1.0~4.0mmであれば、特に限定されないが、夏季(高温高湿度)の環境において可使時間をさらに長くし、また、接着強度をさらに向上させる点から、1.5~3.0mmが好ましく、1.5~2.5mmが特に好ましい。また、切欠部21の高さaに対する切欠部21の幅b(高さa/幅b)は1.3~3.0であれば、特に限定されないが、夏季(高温高湿度)の環境において可使時間をさらに長くし、また、接着強度をさらに向上させる点から、1.5~3.0が好ましく、1.5~2.5が特に好ましい。また、切欠部21のピッチcは4.0~12.0mmであれば、特に限定されないが、夏季(高温高湿度)の環境において可使時間をさらに長くし、また、接着強度をさらに向上させる点から、5.0~11.0mmが好ましく、6.0~10.0mmが特に好ましい。
【0032】
次に、本発明のくし目ごて(例えば、本発明の第1実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごて1、本発明の第2実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごて12、本発明の第3実施形態である水性接着剤組成物用のくし目ごて13)を用いる水性接着剤組成物について説明する。以下に説明する水性接着剤組成物は、上記した本発明のくし目ごてを用いて塗布されることに適した水性接着剤組成物であり、従来公知の水性接着剤組成物を選択して用いることができる。本発明のくし目ごてを用いる水性接着剤組成物は、水性接着剤組成物塗布後の可使時間を十分に確保すること、水性接着剤組成物の接着強度(耐水接着性)を向上させる点から、水性ウレタン接着剤組成物が好ましい。
【0033】
水性接着剤組成物の粘度(12rpm)は、15,000~45,000mPa・sが好ましく、さらに18,000~40,000mPa・sが好ましく、特に20,000~35,000mPa・sが好ましい。水性接着剤組成物のTI値(6rpmの粘度/12rpmの粘度)は、1.3~3.0が好ましく、さらに1.3~2.5が好ましく、特に1.4~2.0が好ましい。水性接着剤組成物の不揮発分(固形分)は、20~80質量%が好ましく、さらに30~70質量%が好ましく、特に40~50質量%が好ましい。水性接着剤組成物の粘度(12rpm)、TI値、不揮発分がこの範囲であると、本発明のくし目ごてを用いて下地表面に水性接着剤組成物を塗布した際に塗り広げやすく、適度なくし目(山)形状を保持し、可使時間を長くしても接着力の低下を低減できる。本明細書中、水性接着剤組成物の粘度は、25℃でB型回転粘度計を用いて測定した回転起動1分後の数値である。水性接着剤組成物のTI値(チクソトロピックインデックス)は、6rpmの粘度と12rpmの粘度の比(6rpmの粘度/12rpmの粘度、25℃、B型回転粘度計)である。水性接着剤組成物および後述する水性ポリウレタンエマルジョン組成物の不揮発分(固形分)は、内径60mmのアルミニウム製円筒容器に組成物を2.5g入れ、105℃のオーブン中に3時間入れた後の組成物の質量変化から算出した数値である。
【0034】
水性ウレタン接着剤組成物の構成成分について説明する。水性ウレタン接着剤組成物は、水性ポリウレタン樹脂を水に分散した水性ポリウレタンエマルジョンを含有する組成物(以下、単に「水性ポリウレタンエマルジョン組成物」という場合もある。)である。
【0035】
水性ポリウレタンエマルジョン組成物は、(a)有機ポリイソシアネート、(b)高分子ポリオール、(c)アニオン性基を有する活性水素含有化合物、(d)鎖延長剤、(e)中和剤および任意に(f)接着性付与剤を反応させる途中および/または反応させた後に反応物を水に分散させることで得ることができる。
【0036】
(a)有機ポリイソシアネート
有機ポリイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。有機ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基が芳香族炭化水素に結合している芳香族系ポリイソシアネート、芳香環を有しかつイソシアネート基が脂肪族炭化水素基に結合している芳香脂肪族ポリイソシアネート、鎖状の脂肪族炭化水素からなる脂肪族ポリイソシアネート、環状の脂肪族炭化水素からなる脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
芳香族系ポリイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、これらの混合物のジフェニルメタンジイソシアネート類(MDI類);2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、これらの混合物のトルエンジイソシアネート類(TDI類);フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネートが挙げられる。
【0038】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネートが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネートが挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、シクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。
【0039】
有機ポリイソシアネートとしては、さらに、上記したポリイソシアネートのカルボジイミド変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、イソシアヌレート変性体、ポリイソシアネートのオリゴマー体であるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)が挙げられる。
【0040】
これらの有機ポリイソシアネートのうち、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。
【0041】
(b)高分子ポリオール
高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール、炭化水素系ポリオール、ポリ(メタ)アクリル系ポリオール、動植物系ポリオール、これらのコポリオールが挙げられる。なお、本明細書中、「高分子」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量が1,000以上であることを意味し、「低分子」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量が1,000未満であることを意味する。また、本明細書中、「(メタ)アクリル」とは「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。
【0042】
高分子ポリオールのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量は、1,000~100,000が好ましく、1,000~30,000がより好ましく、1,000~20,000が特に好ましい。高分子ポリオールの数平均分子量が1,000未満のポリオールでは、得られる水性ポリウレタンエマルジョン組成物の硬化後の物性が低下してしまう。一方で、高分子ポリオールの数平均分子量が100,000を超えると、得られる水性ポリウレタンエマルジョン組成物の粘度が高くなる傾向にある。
【0043】
ポリエステルポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、へキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸、上記ポリカルボン酸のエステル、上記ポリカルボン酸無水物の1種以上と、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロへキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子ポリアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類の1種以上との脱水縮合反応で得られる、ポリエステルポリオールまたはポリエステルアミドポリオールが挙げられる。また、低分子ポリオール類、低分子ポリアミン類、低分子アミノアルコール類を開始剤として、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0044】
ポリカーボネートポリオールとしては、前記ポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオール類とホスゲンとの脱塩酸反応、または前記低分子ポリオール類とジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートとのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
【0045】
ポリオキシアルキレン系ポリオールとしては、前記ポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオール類、低分子ポリアミン類、低分子アミノアルコール類、ポリカルボン酸や、ソルビトール、マンニトール、ショ糖(スクロース)、グルコース等の糖類系低分子多価アルコール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF等の低分子多価フェノール類の一種以上を開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物の1種以上を開環付加重合あるいは共重合(以下、「重合あるいは共重合」を共重合ということがある。)させた、ポリオキシエチレン系ポリオール、ポリオキシプロピレン系ポリオール、ポリオキシブチレン系ポリオール、ポリオキシテトラメチレン系ポリオール、ポリ-(オキシエチレン)-(オキシプロピレン)-ランダムまたはブロック共重合系ポリオールが挙げられる。また、ポリオキシアルキレン系ポリオールとして、前記ポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートエーテルポリオールが挙げられる。また、ポリオキシアルキレン系ポリオールとして、これらの各種ポリオールと有機イソシアネートとを、イソシアネート基に対し水酸基過剰で反応させて、分子末端を水酸基としたポリオールが挙げられる。ポリオキシアルキレン系ポリオールのアルコール性水酸基の数は、特に限定されないが、1分子当たり平均2個以上が好ましく、2~4個がより好ましく、2~3個が特に好ましい。
【0046】
また、必要に応じて、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等の低分子モノアルコール類を開始剤として、プロピレンオキシド等の環状エーテル化合物を開環付加重合させたポリオキシプロピレン系モノオール等のポリオキシアルキレン系モノオールを使用することもできる。
【0047】
なお、本明細書中、前記ポリオキシアルキレン系ポリオール、前記ポリオキシアルキレン系モノオールの「系」とは、分子1モル中の水酸基を除いた部分の50質量%以上が、ポリオキシアルキレンで構成されていることを意味する。従って、残りの部分がエステル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン等の他の構造体で変性されていてもよい。ポリオキシアルキレンで構成されている部分は、50質量%以上であれば、特に限定されないが、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
【0048】
炭化水素系ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール;水添ポリブタジエンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール等のポリアルキレンポリオール;塩素化ポリプロピレンポリオール、塩素化ポリエチレンポリオール等のハロゲン化ポリアルキレンポリオールが挙げられる。
【0049】
ポリ(メタ)アクリル系ポリオールとしては、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を少なくとも含有するエチレン性不飽和化合物を重合開始剤の存在下または不存在下において、バッチ式または連続重合等の公知のラジカル重合の方法により、好ましくは150~350℃、さらに好ましくは210~250℃で高温連続重合反応して得られるものが、反応生成物の分子量分布が狭く低粘度になるため好適である。ポリ(メタ)アクリル系ポリオールは、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を1種で重合して得られるものであってもよく、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の2種以上を共重合して得られるものであってもよく、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の1種または2種以上と水酸基含有(メタ)アクリル系単量体以外のエチレン性不飽和化合物(他のエチレン性不飽和化合物)とを共重合して得られるものであってもよい。これらのうち、ポリ(メタ)アクリル系ポリオールの水酸基の含有量を調整することが容易であることから、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の1種または2種以上とこれら以外のエチレン性不飽和化合物の1種または2種以上とを共重合して得られるものが好ましい。前記共重合の際、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を、ポリ(メタ)アクリル系ポリオール1分子当たりの平均水酸基官能数が1.2~4.0個となるように使用するのが特に好ましい。これらのうち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量が1,000~30,000のポリ(メタ)アクリル系ポリオールが好ましく、2,000~15,000のポリ(メタ)アクリル系ポリオールが特に好ましい。また、ポリ(メタ)アクリル系ポリオールのガラス転移温度(Tg)は、0℃以下が好ましく、-70~-20℃がより好ましく、-70~-30℃が特に好ましい。
【0050】
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体としては、有機ポリイソシアネートのイソシアネート基との反応性がよいことから、アルコール性水酸基含有(メタ)アクリル系単量体が好ましい。具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのモノアクリレート類または水酸基残存ポリアクリレート類が挙げられる。
【0051】
他のエチレン性不飽和化合物としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、スチレン、2-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、グリシジル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのうち、エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル系化合物のモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル等の(メタ)アクリル系化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルがさらに好ましい。これらは、いずれも1種または2種以上を混合して使用できる。また、炭素数9以下の(メタ)アクリル系単量体の1種または2種以上と炭素数10以上の(メタ)アクリル系単量体の1種または2種以上とを組み合わせて使用してもよい。
【0052】
動植物系ポリオールとしては、ヒマシ油系ポリオールが挙げられる。
【0053】
上記した各種高分子ポリオールは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの高分子ポリオールのうち、水性ポリウレタンエマルジョン組成物の耐水接着性が良好となる点で、ポリオキシアルキレン系ポリオールが好ましく、ポリオキシテトラメチレン系ポリオールが特に好ましい。
【0054】
(c)アニオン性基を有する活性水素含有化合物
アニオン性基を有する活性水素含有化合物は、その化合物中にアニオン性基および活性水素(基)をそれぞれ1個以上有する化合物である。アニオン性基を有する活性水素含有化合物の活性水素(基)を有機ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応させてウレタンプレポリマー中にアニオン性基を導入することにより、アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、水に乳化、分散し易くなる。アニオン性基を有する活性水素含有化合物としては、カルボキシル基を有する活性水素含有化合物、スルホン基を有する活性水素含有化合物を挙げることができる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
カルボキシル基を有する活性水素含有化合物としては、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2-ジメチロールブタン酸(DMBA)、2,2-ジメチロールペンタン酸、2,2-ジメチロールヘキサン酸、2,2-ジメチロールヘプタン酸、2,2-ジメチロールオクタン酸、2,2-ジメチロールノナン酸、2,2-ジメチロールデカン酸が挙げられる。
【0056】
スルホン基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、ジヒドロキシブタンスルホン酸、ジヒドロキシプロパンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノブタンスルホン酸、1,3-フェニレンジアミン-4,6-ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、ジアミノプロパンスルホン酸、3,6-ジアミノ-2-トルエンスルホン酸、2,4-ジアミノ-5-トルエンスルホン酸、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、2-アミノエタンスルホン酸、N-(2-アミノエチル)-2-アミノブタンスルホン酸が挙げられる。
【0057】
これらのうち、アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーがより水に乳化、分散し易く、水性ポリウレタンエマルジョン組成物が耐水接着性により優れることから、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2-ジメチロールブタン酸(DMBA)が好ましい。
【0058】
(d)鎖延長剤
鎖延長剤は、その化合物中に活性水素(基)を有する化合物であり、アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と反応(鎖延長)して、アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを高分子化させるものである。アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを高分子化させてアニオン性基を有するポリウレタン樹脂とすることで、水性ポリウレタンエマルジョン組成物の硬化物形成性が向上し、水性ポリウレタンエマルジョン組成物の硬化物が耐水接着性に特に優れるものとなる。
【0059】
鎖延長剤としては、例えば、エチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,4-ヘキサメチレンジアミン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、アジポイルヒドラジド、ヒドラジン(水和物を含む)、イソホロンジアミン、2,5-ジメチルピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール化合物、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類、低分子ポリオール、低分子アミノアルコール、水が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、鎖延長剤として水を使用する場合は、分散媒体である水が鎖延長剤を兼ねることになる。これらのうち、水への溶解性やアニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基との反応性に優れることから、一級ジアミンが好ましく、ヒドラジン(水和物を含む)、イソホロンジアミンが特に好ましい。
【0060】
(e)中和剤
アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの水への乳化、分散を向上させるため、中和剤を用いてアニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー中のアニオン性基を中和することが好ましい。アニオン性基を中和剤で中和することでアニオン性基がアニオン性基塩となり水との親和性が向上し、アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが水へ乳化、分散し易くなる。
【0061】
中和剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリプロピルアミン、N-メチルモルホリン、メチルジイソプロピルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、2-アミノ-2-エチル-1-プロパノール等の有機アミン類、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの無機アルカリ類が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、水性ポリウレタンエマルジョン組成物の貯蔵安定性が良好となる点、水性ポリウレタンエマルジョン組成物の乾燥硬化時に揮散させることにより除去し得るので耐水性の低下を防止できる点から、揮発性の第3級アミンが好ましく、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンが特に好ましい。
【0062】
(f)接着性付与剤
接着性付与剤は、アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と反応性を有する活性水素(基)および加水分解性(架橋性)シリル基を有する化合物であり、必要に応じて任意に使用する。イソシアネート基と反応性を有する活性水素(基)および加水分解性シリル基を有する化合物を、アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と反応させて、アニオン性基を有するポリウレタン樹脂中に加水分解性シリル基を導入することで、水性ポリウレタンエマルジョン組成物の硬化物が耐水接着性に特に優れるものとなる。すなわち、アニオン性基を有するポリウレタン樹脂中の加水分解性シリル基が下地材や床材と化学的に作用することで接着性が向上するとともに、加水分解性シリル基が互いに縮合しアニオン性基を有するポリウレタン樹脂が高分子化することで耐水性が向上する。接着性付与剤としては、例えば、アミノシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
アミノシランカップリング剤としては、例えば、アミノメチルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)メチルトリブトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノイソブチルトリメトキシシラン、N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノ-2-メチルプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0064】
メルカプトシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルエチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルエチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0065】
これらのうち、アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基との反応性が高く、水性ポリウレタンエマルジョン組成物の耐水接着性に優れる点から、アミノシランカップリング剤が好ましい。
【0066】
アニオン性基を有するポリウレタン樹脂中の加水分解性シリル基のケイ素原子の含有量は、特に限定はされないが、0.01~3.0質量%が好ましく、0.1~3.0質量%がより好ましく、0.3~2.0質量%が特に好ましい。アニオン性基を有するポリウレタン樹脂中の加水分解性シリル基のケイ素原子の含有量が0.01質量%未満では下地材(特に、無機材料)に対する接着性が低下する場合があり、加水分解性シリル基のケイ素原子の含有量が3.0質量%超では水性ポリウレタンエマルジョン組成物の貯蔵安定性が低下する場合がある。
【0067】
鎖延長剤および接着性付与剤の使用量の合計は、アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基とのモル比(アニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基のモル数/鎖延長剤および接着性付与剤の活性水素(基)の合計モル数)で1.0~1.3/1.0であることが好ましく、1.0~1.2/1.0がより好ましく、1.0~1.1/1.0が特に好ましい。
【0068】
本発明における水性ウレタン接着剤組成物には、上述した水性ポリウレタンエマルジョン組成物に、必要に応じて任意に微粉状シリカ、増粘剤を配合することができる。
【0069】
微粉状シリカは、水性ポリウレタンエマルジョン組成物に配合することにより、本発明のくし目ごてを用いることで、水性ポリウレタンエマルジョン組成物の耐水接着性の向上と十分な可使時間の確保に寄与し、また、含水率の高い下地に水性ポリウレタンエマルジョン組成物が塗布されても優れた接着性を得ることに寄与する。なお、含水率の高い下地とは、含水率8質量%超の下地を意味する。また、水性ポリウレタンエマルジョン組成物に揺変性を付与し、本発明の実施形態のくし目ごてのように、くし目部の切欠部の高さが切欠部の幅より大きく、くし目の山立ちが高くなる形状でも、水性接着剤組成物塗布後のくし目形状を十分に保持することができる。微粉状シリカとしては、例えば、ヒュームドシリカ(親水性シリカ、疎水性シリカ)が挙げられる。これらのうち、水性ポリウレタンエマルジョン組成物への分散性が良好なことから親水性シリカが好ましい。市販されているヒュームドシリカとしては、日本アエロジル株式会社製の「アエロジル 130」、「アエロジル 200」、「アエロジル 300」、「アエロジル R106」、株式会社トクヤマ製の「レオロシールQS-102」、「レオロシールMT-10」、「レオロシールDM-10」、キャボットコーポレーション製の「CAB-O-SIL」、「CAB-O-SPERSE」が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、微粉状シリカの平均一次粒子径は、含水率の高い下地であっても耐水接着性が向上する点から、1~100nmが好ましく、1~50nmが特に好ましく、微粉状シリカのBET比表面積は、10~500m/g、50~500m/gが特に好ましい。微粉末シリカは、後述する増粘剤と同様に水性ポリウレタンエマルジョン組成物に配合すると水性ポリウレタンエマルジョン組成物の粘度を上昇させる効果も付与するが、粘度上昇以外の効果が増粘剤と異なるため、本明細書中では後述する増粘剤には含めないものとする。
【0070】
微粉状シリカの配合量は、水性ポリウレタンエマルジョン組成物100質量部(水性ポリウレタン樹脂の理論固形分)に対して、3.0~10質量部が好ましく、4.5~9.0質量部が特に好ましい。微粉状シリカの配合量は、3.0質量部未満では十分な耐水接着性が得られない傾向にあり、10質量部超では水性ポリウレタンエマルジョン組成物塗布後の指触乾燥時間が短くなって十分な可使時間を確保できずに作業性が低下する傾向にある。
【0071】
増粘剤は、水性ポリウレタンエマルジョン組成物に配合することにより、本発明のくし目ごてを用いることで、水性ポリウレタンエマルジョン組成物の塗布対象が含水率の低い下地であっても水性ポリウレタンエマルジョン組成物が下地に吸水しづらくなり、水性ポリウレタンエマルジョン組成物塗布後の乾燥性を低減して可使時間の長期化に寄与する。なお、含水率の低い下地とは、含水率5質量%以下の下地を意味する。増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、アルカリ膨潤型(メタ)アクリル系エマルジョン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルアルコール、合成スメクタイトが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、水性ポリウレタンエマルジョン組成物塗布後の可使時間をより確実に確保し、また、貯蔵安定性を得る点から、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウムが好ましい。
【0072】
増粘剤の配合量は、水性ポリウレタンエマルジョン組成物100質量部(水性ポリウレタン樹脂の理論固形分)に対して、1.0~3.5質量部が好ましく、1.5~3.0質量部が特に好ましい。増粘剤の配合量は、1.0質量部未満では、含水率の低い下地が塗布対象の場合に水性ポリウレタンエマルジョン組成物塗布後の指触乾燥時間が短くなって十分な可使時間を確保できずに作業性が低下する傾向にあり、また、水性ポリウレタンエマルジョン組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。一方で、3.5質量部超では、水性ポリウレタンエマルジョン組成物が含水率の高い下地に塗布される場合に、十分な耐水接着性が得られない傾向にある。
【0073】
増粘剤に対する微粉状シリカの配合割合(微粉末シリカ/増粘剤)は、水性ポリウレタンエマルジョン組成物の耐水接着性と十分な可使時間の確保をバランスよく向上させる点から、質量比で1.0~6.0/1.0が好ましく、2.0~5.0/1.0が特に好ましい。
【0074】
次に、本発明に用いる水性ポリウレタンエマルジョン組成物の製造方法について説明する。本発明に用いる水性ポリウレタンエマルジョンを含有する組成物は、水性ポリウレタン樹脂を水に分散した組成物であるが、その製造方法としては、従来公知の方法を用いることができ、特に制限はない。具体的には、例えば、特開2020-152815号公報に記載の方法によって製造することができる。
【0075】
水性ポリウレタン樹脂(エマルジョン)の平均粒子径は、10~1,000nmであることが好ましく、20~500nmであることがより好ましく、40~400nmであることが特に好ましい。水性ポリウレタン樹脂(エマルジョン)の平均粒子径が10nm未満では水性ポリウレタンエマルジョン組成物塗布後の耐水接着性が低下する傾向にあり、平均粒子径が1,000nmを超えると水性ポリウレタンエマルジョン組成物の貯蔵安定性が低下する傾向にある。なお、本明細書中、平均粒子径は、レーザー回折散乱法粒度分布測定によって求められる数値である。
【0076】
水性ポリウレタンエマルジョン組成物は、上記成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲で上述した微粉末シリカや増粘剤の他に添加剤を使用することができる。添加剤としては、具体的には、上述した接着性付与剤以外の他の接着性付与剤、消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、フィラー、防腐剤を挙げることができる。これらの添加剤は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
他の接着性付与剤としては、具体的には、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルトリエトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルメチルジメトキシシラン等のエポキシシランカップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプルピルトリメトキシシラン、3-アクリキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニル基や(メタ)アクリロイル基を有する不飽和炭化水素シランカップリング剤、およびメチルシリケート、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン等の炭化水素シランカップリング剤、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドシランカップリング剤が挙げられる。
【0078】
消泡剤としては、具体的には、例えば、鉱物油系ノニオン系界面活性剤、ポリジメチルシロキサンオイル、EOもしくはPO変性のジメチルシリコーンまたはジメチルシリコーンエマルジョン等のシリコーン系消泡剤、鉱物油、アセチレンアルコール等のアルコール系消泡剤が挙げられる。
【0079】
有機溶剤を使用した溶剤系ウレタン接着剤組成物ではなく水性接着剤組成物を本発明のくし目ごてを用いて下地に塗布することで、夏季(高温高湿度)の環境においても、水性接着剤組成物塗布後に十分な可使時間を確保し、また、水性接着剤組成物の接着強度を向上させることができる。特に、溶剤系ウレタン接着剤組成物を含水率の高い下地に塗布すると接着強度が低下する傾向があるが、水性接着剤組成物を本発明のくし目ごてを用いて含水率の高い下地に塗布すると、耐水接着性を向上させることができる。
【0080】
また、本発明のくし目ごては、溶剤系ウレタン接着剤組成物ではなく水性接着剤組成物の塗布に適しており、水性接着剤組成物を使用することで、作業環境に優れ、シックハウス症候群を防止して優れた室内環境を得ることができる。
【0081】
次に、本発明のくし目ごてを用いた施工方法について説明する。施工方法としては、次の(1)~(3)に示す工程を含む施工方法である。
【0082】
(1)本発明のくし目ごてを用いて水性接着剤組成物を下地に塗布する工程
(2)前記水性接着剤組成物と床材を張り合わせる工程
(3)任意に、前記床材を圧締する工程
をこの順で行う工程を含む施工方法。
【0083】
本発明の施工方法についてさらに説明する。まず、本発明のくし目ごてを用いて水性接着剤組成物を下地に塗布する工程について説明すると、水性接着剤組成物の塗布の対象となる下地表面をレベルモルタル等の下地調整材を用いて不陸がないように調整する。この際に、下地表面に埃等の不要物がある場合は予め取り除く。下地表面に不陸がなければ下地調整材を用いなくてもよい。次いで、水性接着剤組成物を下地表面に適量塗布し、本発明のくし目ごてを用いて水性接着剤組成物を下地表面に均一に塗り広げる。次に、前記水性接着剤組成物と床材を張り合わせる工程について説明すると、下地表面に均一に塗り広げた水性接着剤組成物上(被着面)に所定の床材を隙間なく張付ける。水性接着剤組成物塗布後から張付けまでに水(分散媒)の揮散を目的とした可使時間(オープンタイム)を設ける必要はなく、水性接着剤組成物塗布直後に床材を張付けることができる。床材張付け後に、任意に床材表面をローラー等の圧締用具を用いて圧締することもできる。床材表面を圧締することで、水性接着剤組成物が十分に押し潰れ、下地と床材の接着性が向上し、床材表面の不陸を低減することができる。このような工程を含む施工方法により、下地と水性接着剤組成物(接着剤層)と床材がこの順で一体となった床構造が形成される。
【0084】
下地としては、コンクリート、モルタル、石、金属、セラミック、木材、樹脂等の主に建築物で使用される下地材が挙げられる。このうち、コンクリート、モルタル、木材等の含水性のある下地材は、本発明のくし目ごてを用いて、水性ウレタン接着剤組成物(必要に応じて任意に微粉状シリカ、増粘剤を配合した水性ウレタン接着剤組成物)等の水性接着剤組成物を塗布することで、十分な可使時間を確保できる点や優れた耐水接着性を得られる点で好適に使用することができる。下地材の含水量は、0~15質量%、特に0~12質量%であると本発明の上記効果を発現しやすい傾向にある。なお、本明細書中、下地材の含水率は高周波容量式水分計で測定した数値である。
【0085】
床材としては、石タイル、セラミックタイル、金属板、木板、樹脂シート、樹脂タイル等の主に建築物で使用される床材が挙げられる。
【実施例0086】
以下、本発明について、実施例等でさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
<合成例1>
攪拌機、温度計、窒素シール管および加熱・冷却装置付き反応容器に、窒素ガスを流しながら、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土谷化学工業株式会社製、PTG 2000、数平均分子量2,000)344g、イソホロンジイソシアネート(IPDI)126g、ジブチルチンジラウレート(DBTDL)0.03gを仕込み撹拌し、80℃で2時間反応した。次いで、この反応液を50℃まで冷却した後、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)23.5g、トリエチルアミン(TEA)17.7g、アセトン194gを加え撹拌し、3時間反応させた。さらにこの反応液にアセトン216gを加えて30℃まで冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン8.5gを加え攪拌し、ヒドラジン一水和物10g、イソプロピルアルコール(IPA)103g、水778gからなる混合液を加えて高速攪拌し、この液よりアセトンとIPAを留去して、水性ポリウレタンエマルジョン組成物を得た。得られた水性ポリウレタンエマルジョン組成物は、不揮発分が41質量%、25℃の粘度が110mPa・s(B型回転粘度計、60rpm)、平均粒子径が78nmであった。
【0088】
<調製例1>
撹拌機、温度計および窒素シール管付き混合容器に窒素ガスを流し、合成例1の水性ポリウレタンエマルジョン組成物を1,000g仕込み撹拌し、微粉状シリカとしてヒュームドシリカ(レオロシールQS-102、株式会社トクヤマ製)を35.3g、増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウム(アロンA-20L、東亞合成株式会社製)を7.5g、消泡剤としてシリコーン系消泡剤(KS-66、信越化学工業株式会社製)を0.5g仕込み、撹拌して水性接着剤組成物(水性ウレタン接着剤組成物)を調製した。水性ウレタン接着剤組成物は、不揮発分が43質量%、25℃の6rpmの粘度が45,000mPa・s、25℃の12rpmの粘度が27,200mPa・s、チクソトロピックインデックス(TI値:6rpmの粘度/12rpmの粘度、25℃、B型回転粘度計)が1.67であった。
【0089】
<実施例1>
水性接着剤組成物用のくし目ごてとして、第1実施形態の水性接着剤組成物用のくし目ごてを使用した。具体的には、くし目(くし目部の切欠部)の高さ(全高)が4mm、くし目(くし目部の切欠部)の幅が2mm、くし目(くし目部の切欠部)の高さとくし目(くし目部の切欠部)の幅の比(高さ/幅)が2、くし目(くし目部の切欠部)のピッチが8mmでくし目形状が二等辺三角形である本発明の水性接着剤組成物用のくし目ごてを使用し、下記の試験を行った。
【0090】
<比較例1>
上記した本発明の水性接着剤組成物用のくし目ごてに代えて、くし目(くし目部の切欠部)の高さ(全高)が2mm、くし目(くし目部の切欠部)の幅が2mm、くし目(くし目部の切欠部)の高さとくし目(くし目部の切欠部)の幅の比(高さ/幅)が1、くし目(くし目部の切欠部)のピッチが5mmでくし目形状が二等辺三角形であるくし目ごて(JIS A 5536:2015「床仕上げ材用接着剤」6.2b)1))を使用し、下記の試験を行った。
【0091】
[試験方法]
(1)剥離接着強さ
JIS A 5536:2015「床仕上げ材用接着剤」6.3.3剥離接着強さに準じて剥離接着強さを測定した。床材はビュージスタ(田島ルーフィング株式会社製)、接着剤は調製例1の水性ウレタン接着剤組成物、下地材は縦150mm×横70mm×厚さ5mmのフレキシブル板(含水率3.7質量%)を使用した。水性ウレタン接着剤組成物の塗布量は実施例1および比較例1のくし目ごてでそれぞれ約245g/mであった。水性ウレタン接着剤組成物塗布から床材張付けまでの時間(可使時間(オープンタイム))は5分、20分、40分とし、温湿度は23℃50%RH、35℃70%RHとした。フレキシブル板の含水率は、高周波容量式水分計(HI-520、株式会社ケツト科学研究所製)を使用し、対象材料をモルタル、厚さ補正を10mm、温度補正をAUTOとして測定した数値である。
【0092】
(2)剥離接着強さ(湿潤面)
[常態]
JIS A 5536:2015「床仕上げ材用接着剤」6.3.3剥離接着強さに準じて剥離接着強さを測定した。床材はビュージスタ(田島ルーフィング株式会社製)、接着剤は調製例1の水性ウレタン接着剤組成物、下地材は縦150mm×横70mm×厚さ10mmのモルタル板(含水率10.4質量%)を使用した。なお、モルタル板は23℃の水中に24時間浸せきし、取り出した後その表面をウエスで拭き接着面が湿潤状態のものを使用した。水性ウレタン接着剤組成物の塗布量は実施例1および比較例1のくし目ごてでそれぞれ約245g/mであった。水性ウレタン接着剤組成物塗布から床材張付けまでの時間(可使時間(オープンタイム))は2分とし、温湿度は23℃50%RHとした。モルタル板の含水率は、高周波容量式水分計(HI-520、株式会社ケツト科学研究所製)を使用し、対象材料をモルタル、厚さ補正を10mm、温度補正をAUTOとして測定した数値である。
[水中浸せき]
JIS A 5536:2015「床仕上げ材用接着剤」6.3.3剥離接着強さに準じて剥離接着強さを測定した。試験体は剥離接着強さ(湿潤面)常態と同様の試験体を作製した後、試験体を23℃の水中に7日間浸せきし、取り出し後にその表面をウエスで拭いたものを使用した。
【0093】
(3)床仕上げ材の高さ(外観)
縦280mm×横200mm×厚さ5mmのフレキシブル板(含水率4.5質量%)上に実施例1および比較例1のくし目ごてで調製例1の水性ウレタン接着剤組成物を塗布し、可使時間(オープンタイム)5分後に床材として塩ビシート(透明ビニールマット、株式会社ニトリ製)を張付けた。床材張付け後、床材の上から幅60mmのハンドローラーを用いて約50Nの荷重で2回往復して圧締し、23℃50%RHで2日間養生した。養生後のフレキシブル板からの床材の高さ(水性ウレタン接着剤組成物塗布部のフレキシブル板表面と床材表面との間の高さと水性ウレタン接着剤組成物未塗布部のフレキシブル板表面と床材表面との間の高さの差分、すなわち、水性ウレタン接着剤組成物塗布部の接着剤層の高さ)をマイクロスコープで測定した。フレキシブル板の含水率は、高周波容量式水分計(HI-520、株式会社ケツト科学研究所製)を使用し、対象材料をモルタル、厚さ補正を10mm、温度補正をAUTOとして測定した数値である。
【0094】
参考例1、2として、調製例1の水性ウレタン接着剤組成物に代えて、接着剤組成物として溶剤系ウレタン接着剤組成物であるオートンフロアーグリップS(オート化学工業株式会社製)を使用し、可使時間(オープンタイム)20分とした以外は床仕上げ材の高さ(外観)と同様の試験を行い、養生後のフレキシブル板からの床材の高さをマイクロスコープで測定した。なお、参考例1では、実施例1くし目ごてを使用し、参考例2では、比較例1のくし目ごてを使用した。
【0095】
試験結果を表1、表2に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
表1より、実施例1は比較例1よりも剥離接着強さが高く、可使時間を長くすることができるので作業性に優れていた。比較例1は23℃50%RHで可使時間40分後、35℃70%RHで可使時間20分後に床材の張付けが不可となった。従って、比較例1では、特に高温高湿度の夏季では水性ウレタン接着剤組成物を塗布後、短時間で床材を張付けることが必要となり作業性に劣ることが分かった。これは、比較例1のくし目ごてで水性ウレタン接着剤組成物を塗布したことで、水性ウレタン接着剤組成物が床材張付け前に乾燥し、水性ウレタン接着剤組成物表面に硬化膜が発生したので床材を張付けできなかったと推察される。また、実施例1は比較例1よりも剥離接着強さ(湿潤面)において、常態の接着力が高いことから下地が濡れた状態や下地の含水率が高い状態でも良好な接着力を有し、かつ、水中浸せきの接着力が高いことから耐水接着性に優れることが分かった。さらに、実施例1のくし目ごてで水性ウレタン接着剤組成物を塗布すると、床材張付け後の床材の高さがフレキシブル板(下地材)から0.56mmであり、比較例1のくし目ごてよりも低く床材全体が目立ちにくい外観となった。比較例1のくし目ごては実施例1のくし目ごてよりもくし目高さの低い目ごてを使用しているが、比較例1のくし目ごてでは、水性ウレタン接着剤組成物の乾燥が速く、水性ウレタン接着剤組成物表面に硬化膜が発生し圧締しても十分に押し潰れなかったと推察される。
【0099】
表2より、実施例1のくし目ごてを使用して溶剤系ウレタン接着剤組成物を塗布した参考例1は床材張付け後の床材の高さがフレキシブル板(下地材)から1.86mmであり、比較例1のくし目ごてを使用して溶剤系ウレタン接着剤組成物を塗布した参考例2よりも高く床材全体が目立つ外観(塗布箇所がやや高く波状に見え、指触で波状に感じる)となった。上記から、本発明のくし目ごては、溶剤系ウレタン接着剤組成物ではなく水性接着剤組成物の塗布に適したくし目ごてであることが分かる。
【0100】
上述の通り、本発明のくし目ごては、床材用の水性接着剤組成物として使用することができ、特に建築物の床材用の水性接着剤組成物として好適である。また、本発明のくし目ごてを用いた水性接着剤組成物を下地に塗布し床材を張付けすることで耐水接着性に優れた床構造を形成する。
【符号の説明】
【0101】
1、12、13 くし目ごて
2 くし目部
21 切欠部(くし目)
22 閉塞部
図1
図2
図3
図4
図5
図6