(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157746
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】拡張装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241031BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/78 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072288
(22)【出願日】2023-04-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載アドレス https://hugle.co.jp/products/semiconductor-assembling/pro-wafer-en/hs-1840ac.html (掲載日 令和4年9月1日) 株式会社ウノン技研に、ウェハ拡張装置(HS-1840-AC)を納品した。 (納品日 令和5年3月3日)
(71)【出願人】
【識別番号】511254284
【氏名又は名称】ヒューグル開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092598
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】西川 泰久
【テーマコード(参考)】
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
5F063AA01
5F063AA31
5F063AA41
5F063DD69
5F063DD72
5F063DD73
5F063DD75
5F063DD85
5F131AA02
5F131AA04
5F131CA52
5F131EC44
5F131EC62
5F131EC68
(57)【要約】
【課題】 簡単な構成でフィルムを安全にカットする拡張装置を提供する。
【構成】 ダイシングテープを押し上げて拡張する昇降ステージ16は、周壁部41の上方を覆う上板部42を有し、上板部と周壁部の間に所定の隙間45を形成する。内蔵する内歯車部材64の対角にカッター59を備える第1カッターホルダー61と第2カッターホルダー62を取り付け、周壁部の内周面の所定位置に第1カッターホルダーを内方に付勢する第1突起物72と、第2カッターホルダーを内方に付勢する第2突起物74を設ける。各カッターホルダーはコイルスプリング70,73により外に向けて付勢され、対応する突起物が存在ない区間では周壁部の内周面に接触してカッターの刃部60が外部に突出し、円周方向に回転してダイシングテープをカットする。各カッターホルダーが対応する突起物に対向するとカッターは昇降ステージに収納され、その状態で昇降する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシング済みのウェハが貼着されたフィルムを押し上げて拡張し、前記ウェハを複数のチップに分割させる、昇降可能な昇降ステージと、
前記昇降ステージの上端側に着脱可能に装着し得るインナーリングと、
前記昇降ステージの上昇により所定位置に到達した前記インナーリングの外周に、前記フィルムを間にして嵌合するアウターリングを備え、
前記昇降ステージは、上方が開口した円筒状の本体と、その本体の上方に所定距離を離して配置される上板部を備え、
前記本体の上端縁と前記上板部との間に形成される隙間から、カッターの少なくとも刃部を外部に突出した状態で前記カッターを水平面内で前記本体の側面に沿って円周方向に回転移動させるカッター機構を備え、
少なくとも前記フィルムをカットしない区域では前記カッターを前記本体内に収納可能に構成する拡張装置。
【請求項2】
前記カッターは、2個有し、
その2個の前記カッターは、前記回転移動する円の径方向反対側に配置される請求項1に記載の拡張装置。
【請求項3】
前記本体の内周面の径方向反対側に第1突起部と第2突起部を設け、
前記第1突起部と前記第2突起部は高さを異ならせて配置し、
前記第1突起部と前記第2突起部のない区間を移動する際には前記カッターの前記刃部が前記本体の外部に突出し、
一方の前記カッターを備えるカッターユニットは、前記第1突起部には接触して前記カッターが前記本体内に収納され、前記第2突起部には非接触で外部に突出するように構成し、
他方の前記カッターを備えるカッターユニットは、前記第2突起部には接触して前記カッターが前記本体内に収納され、前記第1突起部には非接触で外部に突出するように構成する請求項2に記載の拡張装置。
【請求項4】
前記本体内で自転可能に構成する内歯車部材と、
前記内歯車部材を回転させる駆動機構と、
前記内歯車部材の上面に、径方向に沿って移動可能に取り付けるカッターホルダーと、を備え、
前記内歯車部材の回転に伴い、前記カッターホルダーが回転し、前記カッターが前記回転移動して前記フィルムをカットし得るようにした請求項1に記載の拡張装置。
【請求項5】
前記カッターホルダーは、前記内歯車部材に対し、径方向に沿って前後進移動可能に取り付け、
前記内歯車部材は、前記カッターホルダーを前方に向けて付勢する弾性体を備え、
前記カッターホルダーは、前記本体の内周面に設けた突起部に接触すると前記弾性体を弾性変形させながら後退移動して前記カッターが前記本体内に収納され、前記突起部のない区間を移動する際には前記弾性体の弾性復元力により前方に付勢されて前記カッターの前記刃部が前記本体の外部に突出し得るように構成する請求項4に記載の拡張装置。
【請求項6】
下降位置にある前記昇降ステージの上方所定位置にカッター保護リングを配置し、
前記昇降ステージが上昇して前記フィルムを拡張した位置に到った際に、前記隙間の外側に前記カッター保護リングが位置し、前記カッター保護リングにより前記カッターの前記刃部を隠し得るように構成する請求項1から5のいずれか1項に記載の拡張装置。
【請求項7】
前記カッター保護リングの上側に、前記アウターリングを保持するリングホルダーを配置し、
前記インナーリングを備えた前記昇降ステージが上昇し、前記インナーリングが前記リングホルダーで保持される前記アウターリングに入り込み、前記インナーリングと前記アウターリングとで前記フィルムを挟み込むとともに、前記隙間が前記リングホルダーに対向するように構成する請求項6に記載の拡張装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシング済みのウェハが貼着されたフィルムを拡張することでウェハを複数のチップに分割させる拡張装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成膜工程を経て所定の電気回路が形成された半導体ウェハは、ダイシング工程において個々のチップにカットされた後、チップ間同士の干渉による破損を防止するとともにピックアップを円滑に行うため、ウェハを載置するダイシングテープをX-Y方向(平面方向)に均一に拡張し(エキスパンド)、所定間隔を設けて各チップに分割される。
【0003】
このフィルム拡張は、例えば、環状枠体であるダイシングフレームにより外周部位が固定された粘着性及びエキスパンド性を有するダイシングテープ上にダイシング済みのウェハを貼り付けたものを用意し、そのダイシングフレームを昇降ステージの上に固定するとともに、昇降ステージを上昇させることで行う。ダイシングフレームを所定位置に固定した状態では、ダイシングフレームと昇降ステージの上面の高さ位置はほぼ同じにし、ダイシングテープに貼り付けられたウェハが、昇降ステージの上面に対向するように構成する。これにより、昇降ステージが上昇すると、昇降ステージの上面がダイシングテープの接触部位を持ち上げ、外周部位がダイシングフレームで固定されているダイシングテープは、引き延ばされて拡張され、それに伴い、ダイシングテープに貼り付けられている個々のチップの間隔も拡大する。
【0004】
このフィルム拡張にともない、昇降ステージの上面に非接触のフィルム部位は、その上面の外周囲から下方のダイシングフレームに向けてスカート状に伸び、不要な部分となるため、拡張後の適宜のタイミングでカットする。この不要なダイシングテープをカットするカット機能を備えた拡張装置としは、例えば特許文献1に開示された装置がある。
【0005】
この特許文献1に開示された装置は、昇降ステージの下方に斜め上方外側に向けて延びる1つのアームの先端にカッターを設け、そのアームを回転させることで斜め上方に延びるカッターでダイシングテープの所定位置をカットするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カッターが昇降ステージの外に配置されているため、誤って手指等が触れると怪我をするおそれがある。特に、カッターが回転中に手指を入れると切れることがあるので危険である。また、斜め上に延びる1つのアームを回転させてダイシングテープをカットするため、カット時にダイシングテープに加わる力に偏りがあり、また、一周を綺麗にカットすることができないおそれがある。また、エアーシリンダーの駆動によりカッターの向きを変え待機位置からカット位置に変位させるため、シリンダーの動作不良等でカットできなかったり、不用意にカット位置に変位してしまったりするおそれがある。
【0008】
上述した課題はそれぞれ独立したものとして記載しているものであり、本発明は、必ずしも記載した課題の全てを解決できる必要はなく、少なくとも一つの課題が解決できればよい。またこの課題を解決するための構成についても単独で分割出願・補正等により権利取得する意思を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の拡張装置は、(1)ダイシング済みのウェハが貼着されたフィルムを押し上げて拡張し、前記ウェハを複数のチップに分割させる、昇降可能な昇降ステージと、前記昇降ステージの上端側に着脱可能に装着し得るインナーリングと、前記昇降ステージの上昇により所定位置に到達した前記インナーリングの外周に、前記フィルムを間にして嵌合するアウターリングを備え、前記昇降ステージは、上方が開口した円筒状の本体と、その本体の上方に所定距離を離して配置される上板部を備え、前記本体の上端縁と前記上板部との間に形成される隙間から、カッターの少なくとも刃部を外部に突出した状態で前記カッターを水平面内で前記本体の側面に沿って円周方向に回転移動させるカッター機構を備え、少なくとも前記フィルムをカットしない区域では前記カッターを前記本体内に収納可能に構成する。
【0010】
昇降ステージで拡張されたフィルムは、昇降ステージの上端側でインナーリングとアウターリングで挟み込まれて保持され、その挟み込まれた部分より外側は不要なフィルム部位となり、本体の周面に沿って下方に延びた状態となる。本発明では、上板部と本体の上端円との間に形成される隙間から突出し、水平面内で回転するカッターにより、インナーリングとアウターリングで保持された部位付近をきれいにカットすることができる。上板部の下面とアウターリングの下面の高さ位置を近づけることで不要な部分をより多くカットすることができる。さらに、少なくとも前記フィルムをカットしない区域ではカッターは本体内に収納可能であり、例えば昇降ステージの昇降移動時や、カット処理をしない下降位置では作業員が誤ってカッターに触れることが抑止される。本体は、実施形態では、周壁部41と下板部43の2つの部材で構成したが、1つの部材で構成したり3つ以上を組み合わせて構成したりしてもよい。
【0011】
(2)前記カッターは、2個有し、その2個の前記カッターは、前記回転移動する円の径方向反対側に配置されるとよい。このようにすると、カッターを対角に2枚使うことでフィルムをカットしていく段階で、フィルムへの負担が対角上に掛かるようになり、カット処理が安定し、フィルムが綺麗にカットされる。
【0012】
(3)前記本体の内周面の径方向反対側に第1突起部と第2突起部を設け、前記第1突起部と前記第2突起部は高さを異ならせて配置し、前記第1突起部と前記第2突起部のない区間を移動する際には前記カッターの前記刃部が前記本体の外部に突出し、一方の前記カッターを備えるカッターユニットは、前記第1突起部には接触して前記カッターが前記本体内に収納され、前記第2突起部には非接触で外部に突出するように構成し、他方の前記カッターを備えるカッターユニットは、前記第2突起部には接触して前記カッターが前記本体内に収納され、前記第1突起部には非接触で外部に突出するように構成するとよい。このようにすると、2個のカッターを簡単な構成でそれぞれが円周方向の異なる位置で本体内に収納されるようにでき、2つのカッターで確実にフィルムを円周にカットすることができる。第1突起部と第2突起部は、実施形態では、第1突起物72と第2突起物74にそれぞれ対応するが、実施形態のように本体と別部材で構成した物を取り付けるものに限ることはなく、本体と一体に形成してもよい。
【0013】
(4)前記本体内で自転可能に構成する内歯車部材と、前記内歯車部材を回転させる駆動機構と、前記内歯車部材の上面に、径方向に沿って移動可能に取り付けるカッターホルダーと、を備え、前記内歯車部材の回転に伴い、前記カッターホルダーが回転し、前記カッターが前記回転移動して前記フィルムをカットし得るようにするとよい。このようにすると、簡単な構成で、水平平面内でカッターを回転させることができ、昇降ステージ内にコンパクトに収めることができる。
【0014】
(5)前記カッターホルダーは、前記内歯車部材に対し、径方向に沿って前後進移動可能に取り付け、前記内歯車部材は、前記カッターホルダーを前方に向けて付勢する弾性体を備え、前記カッターホルダーは、前記本体の内周面に設けた突起部に接触すると前記弾性体を弾性変形させながら後退移動して前記カッターが前記本体内に収納され、前記突起部のない区間を移動する際には前記弾性体の弾性復元力により前方に付勢されて前記カッターの前記刃部が前記本体の外部に突出し得るように構成するとよい。このようにすると、簡単な構成で、水平平面内でカッターを回転させ、また、昇降ステージの外部に出し入れすることができ、昇降ステージ内にコンパクトに収めることができる。
【0015】
(6)下降位置にある前記昇降ステージの上方所定位置にカッター保護リングを配置し、前記昇降ステージが上昇して前記フィルムを拡張した位置に到った際に、前記隙間の外側に前記カッター保護リングが位置し、前記カッター保護リングにより前記カッターの前記刃部を隠し得るように構成するとよい。このようにすると、フィルムのカット処理中であってもカッターの刃部がカッター保護リングで隠れるので、誤って手指等がカッターに触れてしまうことを可及的に抑制できる。カッターが収納時も駆動時もむき出しにならずに安全性が向上する。
【0016】
(7)前記カッター保護リングの上側に、前記アウターリングを保持するリングホルダーを配置し、前記インナーリングを備えた前記昇降ステージが上昇し、前記インナーリングが前記リングホルダーで保持される前記アウターリングに入り込み、前記インナーリングと前記アウターリングとで前記フィルムを挟み込むとともに、前記隙間が前記リングホルダーに対向するように構成するとよい。このようにすると、昇降ステージの上昇に伴いアウターリングを自動的に装着することができるとともに、係るアウターリングを装着する機構にカッター保護リングを保持させることで構成が簡略化される。
【0017】
また、上述した(1)から(7)に示す構成は、適宜組み合わせて構成することができ、そのように組み合わせた構成を前提として、実施形態や図面に記載の構成要素を組み合わせるとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、例えばカッターの刃部が手指等に触れることを抑制し、安全性の高い拡張装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る拡張装置の好適な一実施形態を示す図である。
【
図5】操作部を省略しつつ一部断面で示した正面図である。
【
図7】昇降ステージ・昇降機構及びカッター機構を示す図である。
【
図8】(a)は
図7における昇降ステージの上板部を外した状態を示す平面図であり、(b)はそのa-a′断面図に上板部を加えた図である。
【
図9】(a)は
図8(a)に示す状態から反時計回りに270度回転したカッターが待機位置にある状態を示す図で、(b)はそのb-b′断面図に上板部を加えた図である。
【
図10】(a)は
図8(a)に示す状態から反時計回りに90度回転したカッターが動作位置にある状態を示す図で、(b)はそのc-c′断面図に上板部を加えた図である。
【
図11】(a)はリングホルダーとカッター保護リングを示す断面図であり、(b)はクランププレートを開いた状態のアウターリング保持機構を示す正面図であり、(c)はその左側面図ある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について図面に基づき、詳細に説明する。なお、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0021】
図12に模式的に示すように、本実施形態の拡張装置11は、昇降ステージ16の上面外周囲にインナーリング1を装着するとともに、その昇降ステージ16上にダイシングフレーム2に貼り付けられたダイシングテープ3をセットする(
図12(a)参照)。ダイシングフレーム2は、所定の抑え機構により固定されており、昇降ステージ16が上昇すると、昇降ステージ16の上面に接触するダイシングテープ3が上方に付勢されて外周囲に向けて均等に拡張する(
図12(b)参照)。ダイシングテープ3には、ダイシングされたウェハ4が貼り付けられており、ダイシングテープ3が拡張することに伴いダイシングされたウェハ4を均一な間隔で各チップ4aに分割することができる。また、拡張されたダイシングテープ3は、昇降ステージ16の上面及び側面を覆うようになり、そのダイシングテープ3の外側から昇降ステージ16の上面外周にアウターリング5を嵌め込むことで、拡張したダイシングテープ3はインナーリング1とアウターリング5により挟み込まれて固定される。
【0022】
インナーリング1とアウターリング5との嵌合が比較的強固なものとなるように、インナーリング1の外周の直径(外径)とアウターリング5の内周の直径(内径)とが略同一に近いものをもちい、インナーリング1及びアウターリング5は、伸縮性を有する合成樹脂等から形成されている。なお、ダイシングテープ3は、半導体ウェハのダイシング工程時にウェハを保護・固定し、ピックアップ工程まで保持するための拡張性を有するテープである。
【0023】
そして本実施形態の拡張装置11は、後述するようにインナーリング1とアウターリング5で挟み込まれたダイシングテープ3の不要な部分を切断するカッター機構を備える。このカッター機構により、ダイシングテープ3のインナーリング1とアウターリング5で保持された部位の外側の直近をカットすることができ、それにより、
図12(c)に示すように、不要なフィルム部位が切除されたダイシングテープ3の周囲がインナーリング1とアウターリング5で保持された状態となる。このダイシングテープ3は、この保持された状態で昇降ステージ16から取り外し、移動可能となる。
【0024】
図1以降に示すように、本実施形態の拡張装置11は、本体ケース12と、本体ケース12の上面に開閉可能に連結されたダイシングフレーム押さえ部材13と、ダイシングフレーム押さえ部材13に開閉可能に連結されたアウターリング保持機構15と、本体ケース12に収納される昇降ステージ16及びその昇降ステージ16を昇降させる昇降機構14と、装置に対して各種の指令を与えるための操作部17等を有する。
【0025】
本体ケース12は、概略矩形状の箱体からなり、その上面は、前後に2分割され多くの面積を占める水平な天面部12aと、その天面部12aの前端縁から前方に向けて下方に傾斜する傾斜面部12bを有する。傾斜面部12bには、操作部17が配置される。操作部17は、本実施形態では、各種の設定や運転中の各種指示を与えるタッチパネル17a、電源スイッチ17b、一時停止スイッチ17c、非常停止スイッチ17dを備える。
【0026】
天面部12aには円形状の開口部19が形成され、その開口部19に上下開口する円筒状の側壁部21を配置する。側壁部21の外径は開口部19の内径とほぼ等しくし、側壁部21の下端側は開口部19内に挿入され、上方側が本体ケース12の外部に突出するように設置される。これにより、側壁部21は、本体ケース12の天面部12aの開口部19の内周縁に沿って上方に延びるように配置される。
【0027】
この側壁部21の上端に、ダイシングフレーム2の下面を支えるロアクランプ22を配置する。ロアクランプ22は、円盤状からなり、中央部位に上下に貫通する開口部23を備える。ロアクランプ22の外径は、側壁部21の外径に略等しくする。ロアクランプ22の上面22aの内周縁側には、円周方向に延びる無端の凹溝22bが形成され、その凹溝22b内にOリング24が装着される。凹溝22b内にセットされた状態におけるOリング24の上端は、ロアクランプ22の上面22aよりも上方に突出する。また、この凹溝22bひいてはOリング24の設置位置は、ロアクランプ22上にダイシングフレーム2をセットした状態では、そのダイシングフレーム2がOリング24を覆うようにしている。
【0028】
ロアクランプ22の開口部23から昇降ステージ16が露出可能に設置する。昇降機構14により昇降移動する昇降ステージ16の上面16aは、下降位置ではロアクランプ22の上面22aと同一高さにあり、上昇位置では上面22aよりも上方に位置するように構成する。
【0029】
また、天面部12aの後端側の左右の2カ所に、ダイシングフレーム押さえ部材13を回転自在に支持する第1軸受け部26を備え、天面部12aの前端側にダイシングフレーム押さえ部材13の固定する固定部材27を備える。固定部材27は、略円筒形の本体を有し、その本体の天面に左右方向に延びる細長なスリットを設ける。
【0030】
ダイシングフレーム押さえ部材13は、平面略コ字状のフレーム28と、そのフレーム28の内側に取り付けられるアッパークランプ30等を備える。平面略コ字状のフレーム28の両端部位28aは、それぞれ第1軸受け部26に所定角度範囲内で正逆回転可能に軸受け支持され、フレーム28の中間付近、すなわち、第1軸受け部26に連結される両端部位28aと反対側の前側部位28bの外面(前面)には、固定部材27に挿入し、ダイシングフレーム押さえ部材13をロックする係止部材31を備える。係止部材31は、略直方体状のブロック31aと、ブロック31aを上下に貫通して昇降並びに回転可能に取り付けられるロッド31bと、ロッド31bの下端に取り付けられた平板状のストッパー部材31cと、ロッド31bの上端に取り付けられるクランプレバー31d等を備える。クランプレバー31dの操作に応じて、ロッド31bひいてはストッパー部材31cがブロック31aに対して昇降したり、ロッド31bの軸周りにロッド31bひいてはストッパー部材31cが回転したりするように構成する。
【0031】
ストッパー部材31cは、その水平断面形状の長辺の長さが固定部材27の天面に設けたスリットの長辺の長さより短いとともにそのスリットの短辺の長さより長くし、ストッパー部材31cの水平断面形状の短辺の長さが固定部材27の天面に設けたスリットの長辺の長さより短く形成する。
【0032】
上述したように、ダイシングフレーム押さえ部材13は、第1軸受け部26を回転中心として正逆回転し、
図3中、二点鎖線で示す前側部位28bが持ち上がった傾斜状の開いた第1姿勢と、第1姿勢から前側部位28bが下降するように回転させて実線で示す本体ケース12の天面部12aを覆うように閉じた第2姿勢との間を遷移可能に構成する。そして少なくとも第1姿勢から第2姿勢に遷移する際には、ストッパー部材31cの長辺と、固定部材27に設けたスリットの長辺が略平行の状態でストッパー部材31cが下降移動し、第2姿勢になるとストッパー部材31cはスリット内を進入し固定部材27内に至るように構成し、第2姿勢の状態でクランプレバー31dに対する操作によりストッパー部材31cを略90度回転させることでストッパー部材31cとスリットの長辺の方向が直交し、ストッパー部材31cの固定部材27からの離脱が抑止され、ダイシングフレーム押さえ部材13が第2姿勢の状態でロックされるように構成する。
【0033】
アッパークランプ30は、中央に円形状の開口部30aを有し、外形状が略八角形の平板からなり、下面30bの内周縁側には、平板からなるリング状の受け部材32が装着される。この受け部材32は、ロアクランプ22に取り付けたOリング24に対向する位置にあり、ダイシングフレーム押さえ部材13を第2姿勢にした状態では、受け部材32がOリング24に接触して下方に向けて付勢する。これによりOリング24は弾性変形して圧縮される。よって、ロアクランプ22上にダイシングフレーム2をセットした状態でダイシングフレーム押さえ部材13を第2姿勢にすると、ダイシングフレーム2は、その上下から受け部材32とOリング24により所定圧力で挟み込まれ、保持される。
【0034】
アウターリング保持機構15は、アッパークランプ30の上面30cに、高さ調整機構33を介して取り付けられるベースプレート34と、そのベースプレート34の後端側でヒンジプレート35を介して開閉可能に取り付けられるクランププレート36と、そのクランププレート36の下面側に取り付けられるリングホルダー37等を備える。ベースプレート34は、中央に円形の開口部34aを有する板状部材であり、開口部34aの内径は、昇降ステージ16の外径より大きくする。昇降ステージ16が上昇した際には、昇降ステージ16の上方部位はベースプレート34の開口部34a内を通過し、上面16aはベースプレート34より上方に位置する。
【0035】
クランププレート36は、矩形状の平板の前側両端が切除された形状からなり、ヒンジプレート35が連結される後端縁を中心に所定角度範囲内で正逆回転し、前側が起立した傾斜状の第1姿勢と、倒れた水平状の第2姿勢をとる。クランププレート36の中央には円形の開口部36bを有する。
【0036】
リングホルダー37は、中央に開口部37aを有する略円盤状からなり、リングホルダー37の下面37bの開口部37a側の内周縁に沿って延びる凹溝37cを設ける。開口部37aの上面37d側の内径は、アウターリング5の内径とほぼ等しく、凹溝37cにより一段下がった下面37b側の内径は、アウターリング5の外径とほぼ等しくする。そして、凹溝37c内にアウターリング5が着脱可能に装着し得る構成にする。さらにリングホルダー37は、複数の連結棒38を介してクランププレート36の下面36a側に連結されて一体化する。これにより、クランププレート36を開閉すると、リングホルダー37も一体に移動し、クランププレート36が第2姿勢をとるとき、リングホルダー37も水平になり、リングホルダー37の開口部37a内に、上昇位置に到った昇降ステージ16の上端部位が進入するように構成する。より具体的には、昇降ステージ16の上面16aが、リングホルダー37にセットされたアウターリング5の上面とほぼ面一になり、昇降ステージ16の上端部位がアウターリング5内に挿入し、昇降ステージ16の上端部に装着されインナーリング1とアウターリング5が嵌まり合う。
【0037】
さらに本実施形態では、リングホルダー37の下面に、カッター保護リング40が取り付けられる。カッター保護リング40は、カッター機構10のカッターを保護するもので、詳細は後述する。
【0038】
昇降ステージ16は、
図7等に示すように、上下開口する円筒状の周壁部41と、その周壁部41の上方開口部位を覆うように配置される上板部42と、周壁部41の下端に取り付ける下板部43を備える。本実施形態では、これら周壁部41と下板部43で上方が開口した円筒状の本体を構成するが、例えば一部品で構成してもよい。下板部43は、周壁部41の下端面に接触した状態でネジ44を用いて固定される。また、上板部42は、例えば下板部43から起立する支持柱などにより支持され、周壁部41の上端面と上板部42の下面との間に所定の隙間45が形成されるように構成する。上板部42の上面が昇降ステージ16の上面16aを構成する。また上板部42の上面の外周囲はその全周が一段低くなった低段部42aとなり、その低段部42aにインナーリング1を装着可能に構成する。インナーリング1の外径は周壁部41並びに上板部42の下面側の外径と等しく、インナーリング1を低段部42a上に装着した状態では、インナーリング1の外周面は、上板部42並びに周壁部41の外周面と略面一となる。さらに上板部42の下面中央には、リング状のヒーター39と温度センサーを備え、上板部42を設定された温度に加熱する機能を備える。
【0039】
昇降ステージ16を昇降させる昇降機構14は、以下の構成を備える。ベースプレート47の上面の外周側所定位置に複数の支柱48を起立設置し、その支柱48の上方側に支持プレート49を連結する。支持プレート49は、ベースプレート47と平行になるように配置される。そしてベースプレート47は、本体ケース12の内部の底面に固定しており、これにより、本体ケース12の底面が水平の場合、支持プレート49も水平に固定設置される。
【0040】
ベースプレート47の上面中央位置に、ネジ軸50を自転可能に起立配置し、そのネジ軸50の上端部位50aの支持プレート49の上下には、ベアリング51が取付けられ、ネジ軸50がスムーズに回転するように構成する。これにより、ネジ軸50は、その下端側でベースプレート47に回転自在に支持され、ネジ軸50は起立した姿勢のまま軸周りに自転可能に構成される。また、ネジ軸50の上端部位50aの先端は支持プレート49の上方に突出し、その先端にプーリ53が連結される。このプーリ53は、タイミングベルトを介して図示省略の第1駆動モータの回転出力を受けて回転する。
【0041】
また、このネジ軸50のネジ部50bには、ナット55が装着される。このナット55は、移動プレート56に固定して一体化される。移動プレート56は、複数のガイドロッド57の下端が取り付けられ、この複数のガイドロッド57の上端は昇降ステージ16の下板部43に固定される。また、それら複数のガイドロッド57は、それぞれ支持プレート49の所定位置に取り付けた円筒状のブッシュ58に挿入し、ブッシュ58に対して相対的に昇降移動可能に構成する。
【0042】
これにより、第1駆動モータの回転出力を受けてネジ軸50が正逆回転すると、ナット55は複数のガイドロッド57で支持される移動プレート56により回転が抑止されるため、当該正逆回転に追従して昇降移動する。よって、移動プレート56ひいてはガイドロッド57が昇降移動し、それにともない昇降ステージ16が昇降する。
【0043】
ダイシングテープ3の不要な部分を切断するカッター機構10は、昇降ステージ16内に実装される。本実施形態のカッター機構10は、
図7,
図8等に示すように、カッター59の刃部60を、周壁部41の上端面と上板部42の下面との間に形成する隙間45から外部に突出させた状態でそのカッター59を水平平面内で円周方向に一周することで、刃部60に対向するダイシングテープ3をカットするものである。本実施形態では、カッター59を2個用い、円周方向で180度異なる位置、すなわち、径方向両側に配置する。各カッター59は、それぞれ第1カッターホルダー61と第2カッターホルダー62に取り付けられる。これら第1カッターホルダー61と第2カッターホルダー62は、偏平な内歯車部材64の上面の所定位置に取り付けられ、内歯車部材64と一体になって回転する。所定位置は、内歯車部材64の径方向反対側であり、カッター59の刃部60が内歯車部材64の外周縁から外側に突出可能な位置とする。
【0044】
内歯車部材64は、昇降ステージ16の内部で水平を維持した状態で、水平面内で自転するように配置される。内歯車部材64の外径は、昇降ステージ16すなわち周壁部41の内径より一回り短くし、内歯車部材64の中心と周壁部41の中心を上下方向で一致するように装着する。すなわち、内歯車部材64の下面の所定位置に、固定ネジ65を用いて回転自在にVベアリング66を取り付ける。Vベアリング66は、内歯車部材64の中心から同一の半径の円周上に3個或いはそれ以上を設け、各Vベアリング66は、その円周方向で当角度間隔に配置するとよい。例えば3個配置する場合、120度間隔で配置する。一方、周壁部41の内周面には、円周方向に延びる無端状のガイドレール67が一体に形成される。ガイドレール67の縦断面は、例えば2等辺三角形とするとよい。そして、Vベアリング66がガイドレール67に噛み合うように内歯車部材64をセットする。これにより、内歯車部材64が自転する際、Vベアリング66はガイドレール67に案内され周壁部41の円周方向に移動し、内歯車部材64の安定した姿勢での自転が案内される。
【0045】
また、複数の支柱48の1本は、上下開口した円筒状であり、その円筒状の支柱48内に回転軸80を挿入するとともに、その回転軸80の上下端をそれぞれ支柱48の上下から突出するように配置する。そして、回転軸80の上端には内歯車部材64の内周面に形成した歯64aに噛み合う平歯車82を連結する。回転軸80の下端には、ギア機構83の出力端を接続し、そのギア機構83の入力端には第2駆動モータ85を接続する。これにより、第2駆動モータ85が回転すると、回転軸80ひいては平歯車82が回転し、それに伴い内歯車部材64が回転する。
【0046】
第1カッターホルダー61及び第2カッターホルダー62は、内歯車部材64の径方向に前後進移動可能に取り付けられ、前進すなわち外側に向けて移動した動作位置と、後進すなわち内側(中心)に向けて移動した待機位置との間を遷移可能とし、動作位置ではカッター59の刃部60の先端が周壁部41より外側に位置し、待機位置ではカッター59が昇降ステージ16内に収納された状態になる。係る動作を行うための具体的な構成は以下のようにしている。
【0047】
第1カッターホルダー61は、平板状の本体61aを備える。この本体61aの前端縁側は、前方中央に向かって延びる傾斜辺となり、左右方向の中央位置が最も前方に突出するようにし、その本体61aの上面前端中央側に、ネジ68を用いてカッター59を取り付ける。カッター59は、その刃部60が本体61aの前端よりも前方外側に突出するようにする。
【0048】
また、本体61aには、厚さ方向(上下方向)に貫通するガイド孔61bを2本設ける。この2本のガイド孔61bは、互いに平行で前後方向に延びるように形成する。そして、このガイド孔61b内には、内歯車部材64に締結されたガイドピン69が挿入され、このガイドピン69がガイド孔61bに沿って相対移動し得るように構成する。これにより、本体61aは、ガイドピン69により内歯車部材64に対して離脱不能に取付けられるとともに、ガイド孔61bに沿って前後進移動する。
【0049】
本体61aの後面には、左右方向に延びる凹溝61cを設け、凹溝61cの左右両端は本体61aの側面に開口するように構成する。そして、この凹溝61cにはコイルスプリング70を挿入し、そのコイルスプリング70の両端70aを、内歯車部材64に締結した固定ネジ71に固定する。コイルスプリング70は、引っ張った状態でセットし、コイルスプリング70は、弾性復元力により第1カッターホルダー61を前方、すなわち、内歯車部材64の外側に向けて常時付勢するように作用する。
【0050】
さらに、第1カッターホルダー61は、本体61aの前面の上方部位に、前方に向けて突出する第1突出部位61dを有する。一方、周壁部41の内周面には円周方向に延びる凹部41aが設けられる。この凹部41aの底面は、内歯車部材64に取り付けた第1カッターホルダー61の本体61aの下面と同じかそれよりも低い位置になるように構成する。
【0051】
この凹部41aを設けることで、周壁部41の上端縁側は肉薄になり、
図8,
図10等に示すように、第1カッターホルダー61の第1突出部位61dが凹部41aを設けた周壁部41の上端縁側の内周面に接触した状態では、カッター59の刃部60は、昇降ステージ16の外側に突出する。
【0052】
また、凹部41aを設けた周壁部41の上端縁側の内周面の所定位置に、第1突起物72を固定する。この第1突起物72は、凹部41aの上方側であり、第1突出部位61dに対向する位置に設ける。これにより、
図9等に示すように、第1カッターホルダー61が第1突起物72の取り付け位置に至った際には、第1突出部位61dが第1突起物72に接触し、本体61aが後方すなわち内歯車部材64の中心側に向けて付勢され、後退移動して待機位置に至り、カッター59は、昇降ステージ16内に収納される。
【0053】
第1カッターホルダー61と同様に第2カッターホルダー62は、平板状の本体62aを備える。この本体62aの前端縁側は、前方中央に向かって延びる傾斜辺となり、左右方向の中央位置が最も前方に突出するようにし、その本体62aの上面前端中央側に、ネジ68を用いてカッター59を取り付ける。カッター59は、その刃部60が本体62aの前端よりも前方外側に突出するようにする。
【0054】
また、本体62aには、厚さ方向(上下方向)に貫通するガイド孔62bを2本設ける。この2本のガイド孔62bは、互いに平行で前後方向に延びるように形成する。そして、このガイド孔62b内には、内歯車部材64に締結されたガイドピン69が挿入され、このガイドピン69がガイド孔62bに沿って相対移動し得るように構成する。これにより、本体62aは、ガイドピン69により内歯車部材64に対して離脱不能に取り付けられるとともに、ガイド孔62bに沿って前後進移動する。
【0055】
本体62aの後面には、左右方向に延びる凹溝62cを設け、凹溝62cの左右両端は本体62aの側面に開口するように構成する。そして、この凹溝62cにはコイルスプリング73を挿入し、そのコイルスプリング73の両端73aを、内歯車部材64に締結した固定ネジ71に固定する。コイルスプリング73は、引っ張った状態でセットし、コイルスプリング73は弾性復元力により第2カッターホルダー62を前方、すなわち、内歯車部材64の外側に向けて常時付勢するように作用する。これにより、
図8,
図10等に示すように、第2カッターホルダー62の第2突出部位62dが凹部41aを設けた周壁部41の上端縁側の内周面に接触した状態では、カッター59の刃部60は、昇降ステージ16の外側に突出する。
【0056】
さらに、第2カッターホルダー62は、本体62aの前面の下方部位に、前方に向けて突出する第2突出部位62dを有する。また、凹部41aを設けた周壁部41の上端縁側の内周面の所定位置に、第2突起物74を固定する。この第2突起物74は、凹部41aの下方側であり、第2突出部位62dに対向する位置に設ける。これにより、
図9等に示すように、第2カッターホルダー62が第2突起物74の取付位置に至った際には、第2突出部位62dが第2突起物74に接触し、本体62aが後方すなわち内歯車部材64の中心側に向けて付勢され、後退移動して待機位置に至り、カッター59は、昇降ステージ16内に収納される。
【0057】
また、第1突起物72と第2突起物74の取り付け位置は、径方向反対側で上下方向の高さ位置は重ならないようにする。そして、第1突出部位61dは、第1突起物72には接触可能で第2突起物74には接触しない位置に設ける。同様に第2突出部位62dは、第2突起物74には接触可能で第1突起物72には接触しない位置に設ける(
図10等参照)。
【0058】
これにより、例えば内歯車部材64が360度回転すると、第1カッターホルダー61に取り付けられたカッター59は、第1カッターホルダー61が第1突起物72の取り付け位置に至ると、上述したように第1突起物72により第1突出部位61dが付勢されカッター59は昇降ステージ16内に収納され(
図9参照)、第1突起物72が設けられていない区間ではコイルスプリング70の弾性復元力による付勢により第1突出部位61dは周壁部41の内周面に接触しカッター59の刃部60が昇降ステージ16の外側に突出する(
図8参照)。さらに、第1カッターホルダー61が第2突起物74の取り付け位置に至ると、第1突出部位61dは第2突起物74と高さがズレて接触せずに周壁部41の内周面に接触し、カッター59の刃部60が昇降ステージ16の外側に突出した状態となる(
図10参照)。このように第1カッターホルダー61に取り付けられたカッター59の刃部60は、1回転する都度、第1突起物72を設けた位置で昇降ステージ16内に入り込み、その他のほぼ全周の区間で刃部60が外側に突出した状態となる。同様に、第2カッターホルダー62に取り付けられたカッター59は、1回転する都度、第2突起物74を設けた位置で昇降ステージ16内に入り込み、その他のほぼ全周の区間で刃部60が外側に突出した状態となる。
【0059】
また本実施形態では、例えば第1カッターホルダー61に装着したカッター59に着目すると、第1突起物72の位置に到るとカッター59は昇降ステージ16内に収納されダイシングテープ3をカットすることができないが、その第1突起物72の配置領域を第2カッターホルダー62が通過してもカッター59の刃部60は昇降ステージ16の外側に突出した状態が維持され、当該配置領域にあるダイシングテープ3をカットすることができる。同様に、第2突起物74の配置領域では、第1カッターホルダー61のカッター59によりカットすることができる。なお、第1カッターホルダー61に取り付けたカッター59と第2カッターホルダー62に取り付けたカッター59の高さ位置は同じにするとよいが、ずれていてもよい。
【0060】
また、昇降ステージ16の下板部43には、第1突起物72と第2突起物74の間の中間地点、すなわち、周方向で90度回転した位置であって、平歯車82を設けた側にマイクロフォトセンサ76を配置する。一方、内歯車部材64の下面の所定位置には、センサープレート75を取り付ける。この所定位置は、本実施形態では第1カッターホルダー61の直下としている。よって、内歯車部材64が平面視で反時計方向に回転する場合、第1カッターホルダー61が第1突起物72を通過してから90度回転すると、
図7,
図8に示すようにセンサープレート75がマイクロフォトセンサ76に対向し、マイクロフォトセンサ76がセンサープレート75を検知する。
【0061】
本実施形態では、第2駆動モータ85の制御部は、マイクロフォトセンサ76の検知信号を受けてから内歯車部材64が270度回転するタイミングで第2駆動モータ85の出力を停止するように制御する。すると、第1カッターホルダー61は第1突起物72の取り付け位置に至り、第2カッターホルダー62は第2突起物74の取り付け位置に至ったタイミングで回転が停止し、第1カッターホルダー61及び第2カッターホルダー62は待機位置にありカッター59が昇降ステージ16内に収納された状態となる。これにより、停止中のカッター59の刃部60が昇降ステージ16の外に突出した状態で停止することが抑止され、例えば誤って人が刃部60に触れてけがをすることや、カッター59の刃部60が外部に突出した状態で昇降ステージ16が昇降し、カッター59が他の機器・部材に接触してカッター59あるいは当該機器・部材の損傷を招くことを抑止できる。
【0062】
そして、このようにカッター59が昇降ステージ16内に収納された状態で、昇降ステージ16を昇降させるようにするので、その収納された状態で昇降ステージ16が上昇し、ダイシングテープ3を拡張することができる。よって、拡張中のダイシングテープ3にはカッター59の刃部60が非接触となり、ダイシングテープ3が刃部60に接触して避けたりすることがないし、その昇降中に誤って作業者等の手指等にカッター59の刃部60が触れて怪我することもない。
【0063】
一方、カッター59(刃部60)が昇降ステージ16の外に突出してダイシングテープ3をカットする処理は、昇降ステージ16が上昇位置にあり、昇降ステージ16の上端部位がリングホルダー37内に進入し、アウターリング5とインナーリング1でダイシングテープ3を挟み込んだ状態で行われる。このとき、外部に突出したカッター59の刃部60は、リングホルダー37より下方に位置する。本実施形態では、リングホルダー37の下側にカッター保護リング40を設けたため、カット処理中のカッター59に人や物が誤って触れるのが抑止される。
【0064】
すなわち、カッター保護リング40は、
図11に拡大して示すように、その内径はリングホルダー37に形成する凹溝37cの外径とほぼ等しくする。また、カッター保護リング40の内周面40aには、周方向に延びる無端状の凹溝40bを備える。この凹溝40bは、上昇位置にある昇降ステージ16における隙間45に対向する位置に設け、昇降ステージ16の外部に突出するカッター59の刃部60が、凹溝40b内に進入可能に構成する。これにより、カッター59の刃部60が昇降ステージ16の外側に突出してダイシングテープ3をカットしている際に、刃部60はカッター保護リング40で隠れ、仮に作業者等がアッパークランプ30とベースプレート34との間に形成れる空間から誤って手指を挿入するようなことがあっても、当該手指が刃部60に触れることがなく、安全性が確保される。
【0065】
なお、上述したアッパークランプ30とベースプレート34との間に形成れる空間は狭く、作業者等が意図的に手指を挿入すること考えにくいため、カッター保護リング40は必ずしも設ける必要はないが、本実施形態のように設けると安全性が高まるので好ましい。
【0066】
なお、上述した実施形態では、第1突起物72あるいは第2突起物74を設け、第1カッターホルダー61あるいは第2カッターホルダー62が対応する突起物の設置領域で機械的にカッター59が昇降ステージ16の内部に収納され、ダイシングテープ3がカットされない区間が生じるようにしたが、本発明はこれに限ることはなく、昇降ステージ16内に収納されたカッター59が同一位置(本実施形態のように回転することなく)で刃部60が昇降ステージ16の外部に突出するように構成したりし、刃部60が外部に突出した状態で360度の全周でカッター59が移動できるようにするとよい。このようにすると、カッターを1つ配置するだけで、余分なフィルムをカットすることができる。なお、このように1つのカッターで全周をカットすることができる構成においても、2つのカッターを径方向反対側に設ける構成とするとよい。2個のカッターを径方向反対側に配置することで、ダイシングテープ3に対して均等に付勢してカットすることができる。
【0067】
以上、本発明の様々な側面を実施形態を用いて説明してきたが、これらの実施形態や説明は、本発明の範囲を制限する目的でなされたものではなく、本発明の理解に資するために提供されたものであることを付言しておく。本発明の範囲は、明細書に明示的に説明された構成や製法に限定されるものではなく、本明細書に開示される本発明の様々な側面の組み合わせをも、その範囲に含むものである。本発明のうち、特許を受けようとする構成を、添付の特許請求の範囲に特定したが、現在の処は特許請求の範囲に特定されていない構成であっても、本明細書に開示される構成を、将来的に特許請求する可能性があることを、念のために申し述べる。
【符号の説明】
【0068】
1 :インナーリング
2 :ダイシングフレーム
3 :ダイシングテープ
4 :ウェハ
4a :チップ
5 :アウターリング
10 :カッター機構
11 :拡張装置
12 :本体ケース
13 :ダイシングフレーム押さえ部材
14 :昇降機構
15 :アウターリング保持機構
16 :昇降ステージ
17 :操作部
22 :ロアクランプ
30 :アッパークランプ
40 :カッター保護リング
41 :周壁部
42 :上板部
43 :下板部
45 :隙間
59 :カッター
60 :刃部
61 :第1カッターホルダー
62 :第2カッターホルダー
64 :内歯車部材
70 :コイルスプリング
72 :第1突起物
73 :コイルスプリング
74 :第2突起物