(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157748
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】半導体記憶装置および半導体記憶装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10B 43/27 20230101AFI20241031BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241031BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241031BHJP
H01L 27/00 20060101ALI20241031BHJP
H10B 41/27 20230101ALI20241031BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H10B43/27
H01L29/78 371
H01L27/088 E
H01L27/00 301B
H01L27/00 301C
H10B41/27
H01L21/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072292
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 匠
(72)【発明者】
【氏名】石原 典隆
(72)【発明者】
【氏名】上嶋 和也
【テーマコード(参考)】
5F048
5F083
5F101
5F152
【Fターム(参考)】
5F048AA01
5F048AB01
5F048AC01
5F048BA01
5F048BB09
5F048BB11
5F048BD07
5F048BF07
5F048BF15
5F048BF16
5F083EP02
5F083EP18
5F083EP22
5F083EP33
5F083EP34
5F083EP76
5F083ER22
5F083ER23
5F083GA10
5F083GA12
5F083JA04
5F083JA19
5F083JA35
5F083JA36
5F083JA38
5F083JA39
5F083KA01
5F083KA05
5F083KA11
5F083KA18
5F083MA06
5F083MA16
5F083MA19
5F083MA20
5F083PR33
5F083ZA21
5F101BA01
5F101BA45
5F101BB02
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD30
5F101BD34
5F101BF05
5F101BH16
5F152AA06
5F152BB02
5F152CC08
5F152CE05
5F152CE23
5F152CF18
5F152DD07
5F152FF21
5F152FF26
5F152FF29
(57)【要約】
【課題】チャネル層を低抵抗化し、また、チャネル層由来のノイズを低減して、メモリセルの電気特性を向上させること。
【解決手段】実施形態の半導体記憶装置は、複数の導電層と複数の絶縁層とが交互に積層された積層体と、複数の導電層のそれぞれの面と交差する第1の方向に積層体内を延びる芯材、芯材の側面を覆う結晶質の半導体層、及び半導体層の側面に電荷蓄積層を含んで積層された多層絶縁層をそれぞれ含む複数のピラーと、を備え、半導体層のそれぞれは、第1の方向の少なくとも第1の端部側において、第1の方向における1μmあたりの結晶粒界の出現数が2個未満の結晶構造を有し、炭素、窒素、酸素、及びフッ素のうちの1以上である添加物を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電層と複数の絶縁層とが交互に積層された積層体と、
前記複数の導電層のそれぞれの面と交差する第1の方向に前記積層体内を延びる芯材、前記芯材の側面を覆う結晶質の半導体層、及び前記半導体層の側面に電荷蓄積層を含んで積層された多層絶縁層をそれぞれ含む複数のピラーと、を備え、
前記半導体層のそれぞれは、
前記第1の方向の少なくとも第1の端部側において、前記第1の方向における1μmあたりの結晶粒界の出現数が2個未満の結晶構造を有し、
炭素、窒素、酸素、及びフッ素のうちの1以上である添加物を含む、
半導体記憶装置。
【請求項2】
前記複数のピラーは、
前記第1の方向の前記第1の端部から、前記第1の端部の反対側の第2の端部へと向かって平均粒径が小さくなる前記半導体層を有する第1のピラーを含む、
請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第1のピラーが有する前記半導体層は、
前記第2の端部側において、前記第1の方向における1μmあたりの結晶粒界の出現数が10個以上の結晶構造を有する、
請求項2に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記複数のピラーに含まれる前記第1のピラーの比率は4%以下である、
請求項3に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
複数の導電層と複数の絶縁層とが交互に積層された積層体と、
前記複数の導電層のそれぞれの面と交差する第1の方向に前記積層体内を延びる芯材、前記芯材の側面を覆う結晶質の半導体層、及び前記半導体層の側面に電荷蓄積層を含んで積層された多層絶縁層をそれぞれ含む複数のピラーと、を備え、
前記半導体層には、炭素、窒素、酸素、及びフッ素のうちの1以上である添加物が含まれ、
前記第1の方向と交差する方向の断面であって、前記複数のピラーの前記第1の方向中央での前記断面において、前記複数のピラーのうち、前記半導体層に結晶粒界の出現するピラーの比率は2%未満である、
半導体記憶装置。
【請求項6】
複数の第1の絶縁層と複数の第2の絶縁層とが交互に積層された積層体を形成し、
前記複数の第1の絶縁層のそれぞれの面と交差する第1の方向に前記積層体内を延びる複数のホールを形成し、
電荷蓄積層を含んで前記複数のホールの側壁をそれぞれ覆う多層絶縁層を形成し、
前記多層絶縁層を介して前記複数のホールの側壁をそれぞれ覆う非晶質の第1の半導体層を形成し、
メタルアシストを用いたアニール処理により前記第1の半導体層を結晶化して結晶質の第2の半導体層を形成し、
前記第2の半導体層で囲まれた前記複数のホール内に芯材を充填し、
前記第1の半導体層を形成するときは、
層厚方向の前記多層絶縁層寄りに、炭素、窒素、酸素、及びフッ素のうちの1以上である添加物を前記第1の半導体層に添加する、
半導体記憶装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の半導体層を形成するときは、
前記多層絶縁層からの距離が、前記第1の半導体層の層厚に対して50%未満の領域にピーク濃度を有するよう前記添加物を添加する、
請求項6に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1の半導体層を形成するときは、
前記多層絶縁層からの距離が、前記第1の半導体層の層厚に対して5%以上25%未満の領域にピーク濃度を有するよう前記添加物を添加する、
請求項7に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1の半導体層を形成するときは、
ピーク濃度が5×1019以上1×1021atoms/cm3以下となるよう前記添加物を添加する、
請求項7に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項10】
前記複数のホール内に前記芯材を充填する前に、
前記第2の半導体層を層厚方向にエッチングして薄くする、
請求項6に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体記憶装置および半導体記憶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元不揮発性メモリでは、例えば複数の導電層が積層された積層体中にチャネル層となる半導体層と、メモリ層となる多層絶縁層とを有するピラーが貫通される。チャネル層となる半導体層は、ピラーの延伸方向の全体に亘って単結晶となっていることが好ましい。これにより、チャネル層を低抵抗化し、また、チャネル層由来のノイズを低減して、複数の導電層との交差部に形成されるメモリセルの電気特性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-103742号公報
【特許文献2】特開2004-165185号公報
【特許文献3】特開2009-194259号公報
【特許文献4】特開2020-141008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つの実施形態は、チャネル層を低抵抗化し、また、チャネル層由来のノイズを低減して、メモリセルの電気特性を向上させることができる半導体記憶装置および半導体記憶装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体記憶装置は、複数の導電層と複数の絶縁層とが交互に積層された積層体と、前記複数の導電層のそれぞれの面と交差する第1の方向に前記積層体内を延びる芯材、前記芯材の側面を覆う結晶質の半導体層、及び前記半導体層の側面に電荷蓄積層を含んで積層された多層絶縁層をそれぞれ含む複数のピラーと、を備え、前記半導体層のそれぞれは、前記第1の方向の少なくとも第1の端部側において、前記第1の方向における1μmあたりの結晶粒界の出現数が2個未満の結晶構造を有し、炭素、窒素、酸素、及びフッ素のうちの1以上である添加物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態にかかる半導体記憶装置のブロック図。
【
図2】実施形態にかかる半導体記憶装置が備えるメモリセルアレイの構成の一例を示す等価回路図。
【
図3】実施形態にかかる半導体記憶装置の概略の構成例を示す断面図。
【
図4】実施形態にかかる半導体記憶装置の構成の一例を示す図。
【
図5】実施形態にかかる半導体記憶装置の複数のピラーに含まれるチャネル層の結晶構造を示す模式図。
【
図6】実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一部を順に例示する図。
【
図7】実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一部を順に例示する図。
【
図8】実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一部を順に例示する図。
【
図9】実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一部を順に例示する図。
【
図10】実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一部を順に例示する図。
【
図11】実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一部を順に例示する図。
【
図12】実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一部を順に例示する図。
【
図13】実施形態にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一部を順に例示する図。
【
図14】比較例にかかる非晶質のチャネル層を結晶質のチャネル層に転換する様子を示すメモリホールの拡大断面図。
【
図15】実施形態にかかるチャネル層に導入されるドープ層の適正位置を示すグラフ。
【
図16】実施形態の変形例にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一部を順に例示する拡大断面図。
【
図17】実施形態の変形例にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一部を順に例示する拡大断面図。
【
図18】実施形態のその他の変形例にかかる半導体記憶装置の構成の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0008】
(半導体記憶装置の機能構成)
図1は、実施形態にかかる半導体記憶装置1のブロック図である。
図1に示すように、半導体記憶装置1は、入出力回路310、ロジック制御回路320、ステータスレジスタ330、アドレスレジスタ340、コマンドレジスタ350、シーケンサ360、レディ/ビジー回路370、電圧発生回路380、メモリセルアレイ510、ロウデコーダ520、センスアンプモジュール530、データレジスタ540、及びカラムデコーダ550を備える。
【0009】
入出力回路310は、半導体記憶装置1を制御する不図示のメモリコントローラ等の外部装置との信号DQの入出力を制御する。入出力回路310は、図示しない入力回路と出力回路とを備える。
【0010】
入力回路は、外部装置から受信した書き込みデータWD等のデータDATを、データレジスタ540に送信し、アドレスADDをアドレスレジスタ340に送信し、コマンドCMDをコマンドレジスタ350に送信する。
【0011】
出力回路は、ステータスレジスタ330から受信したステータス情報STS、データレジスタ540から受信した読み出しデータRD等のデータDAT、及びアドレスレジスタ340から受信したアドレスADDを外部装置に送信する。
【0012】
ロジック制御回路320は、外部装置から例えばチップイネーブル信号CEn、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号WEn、及びリードイネーブル信号REnを受信する。また、ロジック制御回路320は、受信した信号に応じて、入出力回路310及びシーケンサ360を制御する。
【0013】
ステータスレジスタ330は、例えばデータの書き込み動作、読み出し動作、及び消去動作におけるステータス情報STSを一時的に保持し、外部装置に動作が正常に終了したか否かを通知する。
【0014】
アドレスレジスタ340は、入出力回路310を介して外部装置から受信したアドレスADDを一時的に保持する。また、アドレスレジスタ340は、ロウアドレスRAをロウデコーダ520へ転送し、カラムアドレスCAをカラムデコーダ550に転送する。
【0015】
コマンドレジスタ350は、入出力回路310を介して外部装置から受信したコマンドCMDを一時的に保存し、シーケンサ360に転送する。
【0016】
シーケンサ360は、半導体記憶装置1全体の動作を制御する。より具体的には、シーケンサ360は、コマンドレジスタ350が保持するコマンドCMDに応じて、例えばステータスレジスタ330、レディ/ビジー回路370、電圧発生回路380、ロウデコーダ520、センスアンプモジュール530、データレジスタ540、及びカラムデコーダ550等を制御し、書き込み動作、読み出し動作、及び消去動作等を実行する。
【0017】
レディ/ビジー回路370は、シーケンサ360の動作状況に応じて、レディ/ビジー信号R/Bnを外部装置に送信する。
【0018】
電圧発生回路380は、シーケンサ360の制御に応じて、書き込み動作、読み出し動作、及び消去動作に必要な電圧を発生させ、発生した電圧を例えばメモリセルアレイ510、ロウデコーダ520、及びセンスアンプモジュール530等に供給する。ロウデコーダ520及びセンスアンプモジュール530は、電圧発生回路380から供給された電圧をメモリセルアレイ510内のメモリセルに印加する。
【0019】
メモリセルアレイ510は、複数のブロックBLK(BLK0~BLKn)を含んでいる。nは2以上の整数である。ブロックBLKは、ビット線及びワード線に関連付けられた複数のメモリセルの集合であり、例えばデータの消去単位となる。メモリセルは、例えばトランジスタとして構成され、不揮発性データを保持する。
【0020】
このようなメモリセルを備えることにより、半導体記憶装置1は、例えばNAND型不揮発性メモリとして構成される。
【0021】
ロウデコーダ520は、ロウアドレスRAをデコードする。また、ロウデコーダ520は、デコード結果に基づいて、いずれかのブロックBLKを選択する。また、ロウデコーダ520は、必要な電圧をブロックBLKに印加する。
【0022】
センスアンプモジュール530は、読み出し動作のときには、メモリセルアレイ510から読み出されたデータをセンスする。また、センスアンプモジュール530は、読み出しデータRDをデータレジスタ540に送信する。書き込み動作のときには、センスアンプモジュール530は、書き込みデータWDをメモリセルアレイ510に送信する。
【0023】
データレジスタ540は、複数のラッチ回路を備える。ラッチ回路は、書き込みデータWD及び読み出しデータRRDを保持する。例えば、書き込み動作において、データレジスタ540は、入出力回路310から受信した書き込みデータWDを一時的に保持し、センスアンプモジュール530に送信する。また例えば、読み出し動作において、データレジスタ540は、センスアンプモジュール530から受信した読み出しデータRDを一時的に保持し、入出力回路310に送信する。
【0024】
カラムデコーダ550は、例えば書き込み動作、読み出し動作、及び消去動作の際、カラムアドレスCAをデコードし、デコード結果に応じてデータレジスタ540内のラッチ回路を選択する。
【0025】
なお、メモリセルアレイ510の周辺に配置される回路群を周辺回路とも呼ぶ。周辺回路は、ロウデコーダ520、センスアンプモジュール530、データレジスタ540、及びカラムデコーダ550を少なくとも含む。周辺回路に、ステータスレジスタ330、アドレスレジスタ340、コマンドレジスタ350、及びシーケンサ360を含めてもよく、更に、入出力回路310、ロジック制御回路320、レディ/ビジー回路370、及び電圧発生回路380を含めてもよい。
【0026】
このように、半導体記憶装置1は、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイ510と、複数のメモリセルを動作させる周辺回路とを備える。
【0027】
図2は、実施形態にかかる半導体記憶装置1が備えるメモリセルアレイ510の構成の一例を示す等価回路図である。
【0028】
メモリセルアレイ510は、上述のように複数のブロックBLKを備える。複数のブロックBLKはそれぞれ、複数のストリングユニットSUを備える。複数のストリングユニットSUはそれぞれ、複数のメモリストリングMSを備える。複数のメモリストリングMSの一端はそれぞれ、ビット線BLを介してセンスアンプモジュール530等の周辺回路に接続される。複数のメモリストリングMSの他端は、それぞれ、共通のソース線SLを介して周辺回路に接続される。
【0029】
メモリストリングMSは、ビット線BL及びソース線SLの間に直列に接続されたドレイン選択トランジスタSTDと、複数のメモリセルMCと、ソース選択トランジスタSTSとを備える。以下、ドレイン選択トランジスタSTD、及びソース選択トランジスタSTSを、単に選択トランジスタ(STD、STS)と呼ぶことがある。
【0030】
メモリセルMCは、例えばゲート絶縁層に電荷蓄積層を含む電界効果型トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)である。メモリセルMCの閾値電圧は電荷蓄積層中の電荷量に応じて変化する。閾値電圧を1つ、または複数設けることで、メモリセルMCが1ビット、または複数ビットのデータを記憶可能であってよい。1つのメモリストリングMSに対応する複数のメモリセルMCのゲート電極には、それぞれ、ワード線WLが接続される。これらワード線WLは、それぞれ、1つのブロックBLK中の全てのメモリストリングMSに共通に接続される。
【0031】
選択トランジスタ(STD、STS)は例えば電界効果型トランジスタである。選択トランジスタ(STD、STS)のゲート電極にはそれぞれ、選択ゲート線(SGD、SGS)が接続される。ドレイン選択トランジスタSTDに接続されるドレイン選択線SGDは、ストリングユニットSUに対応して設けられ、1つのストリングユニットSU中の全てのメモリストリングMSに共通に接続される。ソース選択トランジスタSTSに接続されるソース選択線SGSは、1つのブロックBLK中の全てのメモリストリングMSに共通に接続される。
【0032】
ワード線WL及び選択ゲート線(SGD,SGS)の一端はそれぞれ、ロウデコーダ520等の周辺回路に接続される。
【0033】
(半導体記憶装置の物理構成)
図3は、実施形態にかかる半導体記憶装置1の概略の物理構成の一例を示す断面図である。ただし、
図3においては図面の見やすさを考慮してハッチングを省略する。
【0034】
図3に示すように、半導体記憶装置1は、紙面下側から順に、電極層EL、ソース線SL、選択ゲート線SGD、複数のワード線WL、及び選択ゲート線SGSを備える。また、半導体記憶装置1は、選択ゲート線SGDの上方に、半導体基板SBに設けられた周辺回路CBAを備える。
【0035】
電極層EL上には、絶縁層60を介してソース線SLが配置されている。絶縁層60中には複数のプラグPGが配置され、プラグPGを介してソース線SLと電極層ELとが電気的な導通を保っている。これにより、上述の電圧発生回路380(
図1参照)から、電極層EL及びプラグPGを介してソース線SLにソース電位を印加することができる。
【0036】
ソース線SL上には、1つ以上の選択ゲート線SGD、複数のワード線WL、及び1つ以上の選択ゲート線SGSがこの順に積層されている。複数のワード線WL等にはメモリ領域MRが配置され、複数のワード線WLが延びる方向の端部にはコンタクト領域ERが配置されている。
【0037】
メモリ領域MRには、ワード線WL等を積層方向に貫通する複数のピラーPLが配置されている。ピラーPLとワード線WLとの交差部には複数のメモリセルMC(
図2参照)が形成される。これにより、半導体記憶装置1は、例えばメモリ領域MRにメモリセルMCが3次元に配置された3次元不揮発性メモリとして構成される。
【0038】
このように、メモリ領域MRは、上述のメモリセルアレイ510(
図2参照)に相当する物理構成の一例である。また、ピラーPLは、メモリセルMC等が直列に接続された上述のメモリストリングMS(
図2参照)に相当する物理構成の一例である。
【0039】
半導体記憶装置1の物理構成において、ピラーPLは、ピラーPL上方に配置されるビット線BLを介して、周辺回路CBAに電気的に接続されている。
【0040】
コンタクト領域ERには、複数のワード線WL及び選択ゲート線SGD,SGSのそれぞれと接続する複数のコンタクトCCが配置されている。
【0041】
コンタクトCCからは、複数のワード線WLが延びる方向中央部のメモリ領域MRに含まれるメモリセルMCに対し、そのメモリセルMCと同じ高さ位置のワード線WLを介して書き込み電圧および読み出し電圧等が印加される。このように、これらのコンタクトCCにより、多層に積層されるワード線WL及び選択ゲート線SGD,SGSが個々に引き出される。
【0042】
複数のワード線WL及び選択ゲート線SGD,SGS、ピラーPL、並びにコンタクトCCは絶縁層50に覆われている。絶縁層50は、複数のワード線WL等の周囲にも広がっている。
【0043】
絶縁層50上方の半導体基板SBは、例えばシリコン基板等である。半導体基板SBの表面にはトランジスタTR及び配線等を含む上述のロウデコーダ520、センスアンプモジュール530(
図1参照)等の周辺回路CBAが配置されている。コンタクトCCからメモリセルMCに印加される各種電圧は、これらのコンタクトCCと電気的に接続される周辺回路CBAにより制御される。また、ピラーPLの高さ方向に並ぶメモリセルMCから読み出されたデータは、周辺回路CBAのセンスアンプモジュール530に読み出される。このように、周辺回路CBAはメモリセルMCの電気的な動作を制御する。
【0044】
周辺回路CBAは絶縁層40で覆われており、この絶縁層40と、複数のワード線WL等を覆う絶縁層50とが接合されることにより、複数のワード線WL及び選択ゲート線SGD,SGS、ピラーPL、並びにコンタクトCC等の構成と、周辺回路CBAとを備える半導体記憶装置1が構成される。
【0045】
次に、
図4及び
図5を用いて、半導体記憶装置1の詳細の構成例について説明する。
【0046】
図4は、実施形態にかかる半導体記憶装置1の構成の一例を示す図である。
【0047】
より詳細には、
図4(a)は、半導体記憶装置1のメモリ領域MRを含むY方向に沿う断面図である。
図4(a)においては、絶縁層50の一部である絶縁層53より上層、及びソース線SLより下層の構造が省略されている。
【0048】
図4(b)は、任意の選択ゲート線SGDの高さ位置におけるピラーPLのY方向に沿う断面図である。
図4(c)は、任意のワード線WLの高さ位置におけるピラーPLのY方向に沿う断面図である。
図4(d)は、任意の選択ゲート線SGSの高さ位置におけるピラーPLのY方向に沿う断面図である。
【0049】
なお、本明細書において、X方向およびY方向は共に、ワード線WLの面の向きに沿う方向であり、X方向とY方向とは互いに直交する。また、ワード線WLの積層方向を第1の方向と呼ぶことがあり、この第1の方向はX方向およびY方向に交差する方向である。
【0050】
また、本明細書においては、ドレイン側の選択ゲート線SGDが配置される側を半導体記憶装置1の上方側とし、ソース側の選択ゲート線SGSが配置される側を半導体記憶装置1の下方側とする。半導体記憶装置1のこのような上下方向は、後述する半導体記憶装置1の製造方法におけるピラーPLの貫通方向とも一致する。すなわち、ピラーPLの貫通方向における上端部が半導体記憶装置1の上方側であり、ピラーPLの貫通方向における下端部が半導体記憶装置1の下方側であるものとする。
【0051】
図4に示すように、例えば導電性のポリシリコン層等であるソース線SL上には、例えば絶縁層55を介して積層体LMが配置される。積層体LMは、複数のワード線WLと複数の絶縁層OLとが1層ずつ交互に積層された構成を備える。また、最上層のワード線WLの更に上層には、1つ以上の選択ゲート線SGDが絶縁層OLを介して配置されている。また、最下層のワード線WLの更に下層には、1つ以上の選択ゲート線SGSが絶縁層OLを介して配置されている。
【0052】
すなわち、
図4(d)に示す選択ゲート線SGSは、例えば絶縁層55を介してソース線SL上に配置され、
図4(b)に示す選択ゲート線SGDの上方には、積層体LMの上面を覆う絶縁層51,52,53がこの順に配置されている。なお、これらの絶縁層51~53,55は、上述の絶縁層50(
図3参照)の一部を構成する。
【0053】
ここで、積層体LMにおける複数の導電層としてのワード線WL及び選択ゲート線SGD,SGSの積層数は任意である。一例として、積層体LM中におけるワード線WL及び選択ゲート線SGD,SGSの積層数は数十層~数百層でありうる。ワード線WL及び選択ゲート線SGD,SGSは、例えばタングステン層またはモリブデン層等である。絶縁層OL,51~53,55は、例えば酸化シリコン層等である。
【0054】
積層体LMは、複数の板状部PTによってY方向に分割している。
図4(a)には、複数の板状部PTの1つを示す。
【0055】
板状部PTのそれぞれは、互いにY方向に並んで、積層体LMの積層方向およびX方向に沿う方向に延びている。より詳細には、板状部PTは、絶縁層52,51、積層体LM、及び絶縁層55を貫通してソース線SLに到達しているとともに、積層体LMのX方向一端部から他端部に亘って積層体LM内を連続的に延びている。板状部PTのそれぞれは、酸化シリコン層等の絶縁層54の単体として構成されている。
【0056】
また、メモリ領域MRにおいて、Y方向に隣接する板状部PT間には、積層体LMの上層部分を貫通してX方向に沿う方向に延びる複数の分離層SHEが配置されている。これらの分離層SHEは、選択ゲート線SGDを貫通し、直下の絶縁層OLに到達する酸化シリコン層等の絶縁層56である。
【0057】
換言すれば、積層体LMの上層部分を貫通するこれらの分離層SHEが、板状部PT間でメモリ領域MR内をX方向に延びることで、積層体LMの上層部分が上述の選択ゲート線SGDに区画される。
【0058】
なお、Y方向に隣接する板状部PT間の領域は、上述の1つ分のブロックBLK(
図2参照)に相当する物理構成の一例である。また、隣接する板状部PT間で、分離層SHEによって選択ゲート線SGDのパターンに区画される領域は、上述のストリングユニットSU(
図2参照)に相当する物理構成の一例である。
【0059】
積層体LMのメモリ領域MRには、絶縁層51、積層体LM、及び絶縁層55を貫通してソース線SLに到達する複数のピラーPLが分散して配置されている。
【0060】
複数のピラーPLは、積層体LMの積層方向から見て例えば千鳥状の配置を取る。個々のピラーPLは、積層体LMの層方向に沿う方向、つまりXY平面に沿う方向の断面形状として、例えば円形、楕円形、または小判型(オーバル型)等の形状を有する。
【0061】
これらのピラーPLはそれぞれが、例えば上端部から下端部へと向かってXY平面に沿う断面積および径が小さくなるテーパ形状を有する。あるいは、これらのピラーPLのそれぞれは、例えばXY平面に沿う断面積および径が上端部よりも下端部において小さく、かつ、上端部と下端部との間でXY平面に沿う断面積および径が最大となるボーイング形状を有している。ピラーPLのこのような形状は、後述する半導体記憶装置1の製造方法におけるピラーPLの貫通方向に対応して得られる。
【0062】
換言すれば、これらのピラーPLの形状によって、ピラーPLの貫通方向を判別することも可能である。すなわち、XY平面に沿う断面積および径が大きい側がピラーPLの貫通方向における上端部であり、小さい側がピラーPLの貫通方向における下端部であるのが一般的である。
【0063】
複数のピラーPLのそれぞれは、積層体LM内を積層方向に延びてピラーPLの芯材となるコア層CR、コア層CRの側面を覆い、上下方向両端部にそれぞれ上部キャップ層CP及び下部キャップ層EPが配置されたチャネル層CN、並びに上部キャップ層CP、チャネル層CN、及び下部キャップ層EPの側面を覆うメモリ層MEを有する。
【0064】
図4(b)~
図4(d)に示すように、メモリ層MEは、ピラーPLの外周側から、ブロック絶縁層BK、電荷蓄積層CT、及びトンネル絶縁層TNがこの順に積層された多層絶縁層である。チャネル層CNはメモリ層MEの内側で、積層体LM内を積層方向に延びている。チャネル層CNの更に内側にはコア層CRが充填されている。
【0065】
下部キャップ層EPは、チャネル層CNの下端部に配置され、積層体LM下方のソース線SLと接続されている。このように、下部キャップ層EPにより、チャネル層CNとソース線SLとが接続される。
【0066】
上部キャップ層CPは、チャネル層CNの上端部に配置され、絶縁層52,53中に配置されるプラグCHを介して、絶縁層53中に配置されるビット線BLと接続される。このように、上部キャップ層CPにより、チャネル層CNとビット線BLとが接続される。ビット線BLは、ワード線WLの引き出し方向と交差するよう、例えばY方向に沿う方向に積層体LMの上方を延びる。
【0067】
なお、
図4(a)においては、分離層SHEによって分離された区画内において、1つのピラーPLにのみプラグCHが接続されている。それ以外のピラーPLは、
図4(a)に示す断面とは異なる位置で、
図4(a)に示すビット線BLと並行してY方向に沿う方向に延びる他のビット線BLに、
図4(a)には不図示のプラグCHを介して接続される。
【0068】
メモリ層MEのブロック絶縁層BK及びトンネル絶縁層TN、並びにコア層CRは例えば酸化シリコン層等である。メモリ層MEの電荷蓄積層CTは例えば窒化シリコン層等である。チャネル層CN、上部キャップ層CP、及び下部キャップ層EPはシリコン層等の半導体層であり、下部キャップ層EPには更にリン等のN型のドーパント(不純物)が含有されている。
【0069】
より詳細には、チャネル層CNは、略全体が単結晶となった結晶性の半導体層である。チャネル層CNが一部に多結晶を含んでいてもよい。上部キャップ層CP及び下部キャップ層EPは、アモルファスシリコン層またはポリシリコン層等である。あるいは、上部キャップ層CP及び下部キャップ層EP中に、非晶質部分と多結晶部分とが所定の比率で混在していてもよい。上部キャップ層CP及び下部キャップ層EPの一部が単結晶化していてもよい。
【0070】
以上のような構成によって、ピラーPL側面の個々のワード線WLと対向する部分には、それぞれメモリセルMCが形成される。ワード線WLから所定の電圧が印加されることにより、メモリセルMCに対してデータの書き込み及び読み出しが行われる。
【0071】
また、上記のような構成によって、ピラーPLの側面が、ワード線WLの上層に配置される選択ゲート線SGDと対向する部分には、選択ゲートSTDが形成される。また、ピラーPLの側面が、ワード線WLの下層に配置される選択ゲート線SGSと対向する部分には選択ゲートSTSが形成される。
【0072】
選択ゲート線SGD,SGSから所定の電圧がそれぞれ印加されることにより、選択ゲートSTD,STSがオンまたはオフして、その選択ゲートSTD,STSが属するピラーPLのメモリセルMCを選択状態または非選択状態とすることができる。
【0073】
ここで、チャネル層CNには、所定の添加物が含有されている。チャネル層CNに含まれる添加物は、P型またはN型の導電型を半導体層に付与する不純物元素とは異なる電気的に不活性な元素であり、チャネル層CNのような半導体層の結晶化を阻害する性質を有する。一例として、添加物は、炭素、窒素、酸素、及びフッ素の少なくともいずれかであってよい。
【0074】
また、チャネル層CNには、ニッケル、パラジウム、及びアルミニウムのうち少なくとも1つの金属元素が含有されている場合がある。
【0075】
これらの添加物および金属元素は、チャネル層CN中で偏在している場合がある。そのような場合の一例を、
図4(b)~
図4(d)に示す。
【0076】
図4(b)~
図4(d)に示すコア層CR寄りの領域CNbは、上述の添加物がピーク濃度を有する領域である。また、
図4(b)~
図4(d)に示すトンネル層TN寄りの領域CNaは、上述の金属元素が含まれうる領域である。
【0077】
より具体的には、チャネル層CNの層厚方向において、添加物は、トンネル絶縁層TN側からコア層CR側へと向かって濃度が高くなっている。したがって、これらの添加物は、領域CNbだけでなく、チャネル層CN全体に拡散されている場合がある。ただし、チャネル層CN中を拡散しやすい窒素、酸素、及びフッ素等はともかくとして、添加物が炭素である場合等には、少なくとも領域CNb内に添加物がピーク濃度を有しうる。
【0078】
また、領域CNaに含まれうる金属元素もまた、チャネル層CN全体に拡散されている場合がある。ただし、金属元素は、チャネル層CNの層厚方向において、領域CNa内の添加物のピーク濃度位置に接する部分で検出されやすいと考えられる。
【0079】
なお、上述のように、チャネル層CNは略全体が単結晶となっており、領域CNa,CNbを有することは、チャネル層CNが、これらの領域CNa,CNbに分割されていることを意味しない。
【0080】
図5は、実施形態にかかる半導体記憶装置1の複数のピラーPLに含まれるチャネル層CNの結晶構造を示す模式図である。
【0081】
より詳細には、
図5(a)は、複数のピラーPLの下端部側のXY断面図であり、ピラーPLが有するチャネル層CNの結晶解析結果を模式的に示している。このような結晶解析は、例えばBF-STEM(Bright-Field Scanning Transmission Electron Microscope)等を用いて行うことができる。
【0082】
また、
図5(b)は、多結晶を含むチャネル層CNを有するピラーPLの延伸方向に沿う断面図である。また、
図5(c)は、多結晶を含まないチャネル層CNを有するピラーPLの延伸方向に沿う断面図である。
【0083】
図5(a)に示す複数の円環は、それぞれが個々のピラーPLが有するチャネル層CNのXY断面を示している。つまり、ドーナツ状の円環の外縁が、メモリ層MEと接するチャネル層CNの外壁部分であり、ドーナツ状の円環の内縁が、コア層CRと接するチャネル層CNの内壁部分である。
【0084】
図5(a)に示すように、多くのピラーPLのチャネル層CNは、単一の結晶からなる。一方、一部のピラーPLにおいて、チャネル層CNを示す円環は複数に分割されており、これらはそのチャネル層CNが、少なくとも
図5(a)の断面において多結晶化していることを示している。このように、複数のピラーPLのうち所定の比率で、一部が多結晶化したチャネル層CNを有する第1のピラーとしてのピラーPLが存在する。
【0085】
図5(b)に示すように、このようなピラーPLにおいては、第1の端部としての上端部側から第2の端部としての下端部側へ向かうほど、チャネル層CNが多結晶化している可能性が高くなる。
【0086】
つまり、このようなピラーPLにおいては、チャネル層CNに含まれる結晶の平均粒径は、上端部から下端部へと向かって小さくなる。このときのチャネル層CNの結晶の平均粒径は、上端部側において例えば1μm以上である。また、このときのチャネル層CNの結晶の平均粒径は、下端部側において例えば5nm以上100nm以下であり、典型的には例えば20nm以上30nm以下である。
【0087】
したがって、上記のように、チャネル層CNの一部が多結晶化したピラーPLの比率は、ピラーPLの上端部側から下端部側に向かうにつれて増加する傾向にある。
【0088】
このため、
図5(a)に示す複数のピラーPLの下端部側では、一部のピラーPLのチャネル層CNが多結晶化している様子が見て取れる。このように、下端部近傍等の一部においてチャネル層CNが多結晶化するなどして、チャネル層CNに粒界の出現するピラーPLの比率は、複数のピラーPL全体のうち、例えば4%以下である。また、チャネル層CNに粒界の出現するピラーPLの比率の下限値としては、例えば0.1%以上であり、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.01%以上である。
【0089】
一方、複数のピラーPLの上端部側では、複数のピラーPL全体のうち、チャネル層CNに粒界の出現するピラーPLの比率は、例えば1%未満である。また、複数のピラーPLの延伸方向の中央付近では、複数のピラーPL全体のうち、チャネル層CNに粒界の出現するピラーPLの比率は、例えば2%未満である。
【0090】
ここで、複数のピラーPLの延伸距離が例えば数μm以上10μm以下の場合に、これらのピラーPLの上端部側とは、例えばピラーPLの上端部から0.5μm下がった高さ位置である。また、これらのピラーPLの下端部側とは、例えばピラーPLの下端部から0.5μm上った高さ位置である。
【0091】
ただし、後述するように、チャネル層CNの形成後に更にチャネル層CNが受ける処理によって、チャネル層CNが上述のような結晶構造を有することとなるピラーPLの下端部からの距離は異なり得る。
【0092】
また、
図5(b)及び
図5(c)に示すように、ピラーPLが有するチャネル層CNの結晶構造を異なる観点か規定することも可能である。すなわち、複数のピラーPLの延伸方向における所定距離内にチャネル層CNに結晶粒界(
図5(b)のCNg)が出現する個数で、チャネル層CNの結晶構造を規定することもできる。
【0093】
この場合、複数のピラーPLの少なくとも上端部側のチャネル層CNにおいて、ピラーPLの延伸方向における1μmあたりの結晶粒界の出現数は、例えば0.5個未満である。つまり、複数のピラーPLの上端部側において、ピラーPLの延伸方向に沿って1μmの距離、チャネル層CNの結晶構造を観測すると、チャネル層CNに0.5個未満の結晶粒界が認められうる。
【0094】
一方、一部が多結晶化したチャネル層CNを有するピラーPLの場合、ピラーPLの下端部側のチャネル層CNにおいて、ピラーPLの延伸方向における1μmあたりの結晶粒界の出現数は、例えば10個以上となる場合があり、典型的には例えば20個以上30個以下となる。
【0095】
(半導体記憶装置の製造方法)
次に、
図6~
図13を用いて、実施形態の半導体記憶装置1の製造方法について説明する。
図6~
図13は、実施形態にかかる半導体記憶装置1の製造方法の手順の一部を順に例示する図である。
【0096】
まずは、ワード線WL形成前の積層体LMsにメモリホールMHが形成される様子を
図6に示す。
図6は、後にメモリ領域MRとなる領域のY方向に沿う断面図である。
【0097】
図6(a)に示すように、支持基板SS上に、酸化シリコン層等の絶縁層55を形成する。支持基板SSとしては、シリコン基板等の半導体基板、セラミック基板等の絶縁基板、またはアルミナ基板等の導電性基板等を使用することができる。
【0098】
絶縁層55上には、複数の第1の絶縁層としての絶縁層NLと複数の第2の絶縁層としての絶縁層OLとが1層ずつ互に積層された積層体LMsを形成する。絶縁層NLは、例えば窒化シリコン層等であり、後に導電材料に置き換えられてワード線WLまたは選択ゲート線SGD,SGSとなる犠牲層として機能する。
【0099】
また、積層体LMsの上面を覆う酸化シリコン層等の絶縁層51を形成する。
【0100】
図6(b)に示すように、積層体LMsを積層方向に延びる複数のメモリホールMHを形成する。メモリホールMHは、後にメモリ領域MRとなる領域に形成され、絶縁層51、積層体LMs、及び絶縁層55を貫通して支持基板SSに到達している。
【0101】
ここで、メモリホールMHは、通常、積層体LMsにおける貫通方向、つまり、上端部から下端部へと向かって、XY平面に沿う断面積および径が小さくなるテーパ形状、あるいは、上下の端部間でXY平面に沿う断面積および径が最大となるボーイング形状となる。メモリホールMHのこのような形状は、メモリホールMHから形成されるピラーPLにおいても維持される。これにより、最終的に得られる半導体記憶装置1において、ピラーPLの貫通方向を判別可能な場合がある。
【0102】
なお、
図6(b)において、メモリホールMHが形成されない紙面左側の積層体LMs部分は、後に板状部PTが形成される領域である。
【0103】
図6(c)に示すように、複数のメモリホールMH内に、それぞれブロック絶縁層BK、電荷蓄積層CT、及びトンネル絶縁層TN(
図4(b)~(d)参照)をこの順に積層して、複数のメモリホールMHの側壁および底面をそれぞれ覆うメモリ層MEを形成する。メモリ層MEは、絶縁層51の上面にも形成される。
【0104】
次に、後に一部が上述のチャネル層CN(
図4参照)となるチャネル層CNsがメモリホールMH内に形成される様子を
図7に示す。
図7は、メモリ層MEが形成されたメモリホールMHの拡大断面図である。
【0105】
図7(a)~
図7(c)に示すように、シリコン層等の半導体層となる原料ガスを供給して、メモリホールMH内に形成済みのメモリ層MEを覆うチャネル層CNsを形成する。第1の半導体層としてのチャネル層CNsは、アモルファスシリコン層等の非晶質の半導体層であり、上述のチャネル層CNよりも厚膜に形成される。
【0106】
図7(a)に示すように、当初、添加物等を含まない原料ガスを用いることで、ノンドープ層CNsaがメモリ層MEを覆うように形成される。ノンドープ層CNsaは、非晶質のチャネル層CNsが最終的に有することとなる層厚の5%未満、あるいは、多くとも25%未満の厚さを有するよう形成されることが好ましい。
【0107】
なお、メモリ層MEとの界面では、アモルファスシリコン層等であるノンドープ層CNsaの構造に乱れが生じる場合がある。ノンドープ層CNsaのこのような構造の乱れは、例えばシリコン原子の密度が他より高い部分等であり得、後に非晶質のチャネル層CNsを結晶化する際の結晶核CNnとなりうる。
【0108】
図7(b)に示すように、ノンドープ層CNsaの形成後、炭素、窒素、酸素、及びフッ素の少なくともいずれかを添加しつつ原料ガスの供給を継続することで、添加物が添加されたドープ層CNsbがノンドープ層CNsaを覆うように形成される。このとき、添加物のピーク濃度を、例えば5×10
19以上1×10
21atoms/cm
3以下とする。
【0109】
ドープ層CNsbは、ノンドープ層CNsaを含めた層厚が、非晶質のチャネル層CNsが最終的に有することとなる層厚の50%未満、より好ましくは5%以上25%未満となるよう形成される。
【0110】
図7(c)に示すように、添加物の添加を停止した後も、所定期間、原料ガスの供給を形成することで、ノンドープ層CNscがドープ層CNsbを覆うように形成される。上述のチャネル層CNよりも厚膜となったところで、チャネル層CNsの形成が終了する。
【0111】
なお、ノンドープ層CNsa、ドープ層CNsb、及びノンドープ層CNscの各層厚に関する上記数値は、非晶質から結晶質への結晶構造の転換に伴う体積変化を考慮しておらず、あくまでも概算の数値である。また、ドープ層CNsb形成時に添加された添加物は、その後の処理を経て、少なくとも一部がノンドープ層CNsa,CNscに拡散されうる。この場合であっても、添加物がドープ層CNsb中にピーク濃度を有していることが好ましい。
【0112】
以上により、メモリ層MEを介して、メモリホールMHの側壁および底面を覆う非晶質のチャネル層CNsが形成される。チャネル層CNsは、メモリ層MEを介して絶縁層51の上面にも形成される。
【0113】
ただし、上記においては、説明の便宜上、チャネル層CNsが、ノンドープ層CNsa、ドープ層CNsb、及びノンドープ層CNscを有するものとしているが、チャネル層CNsは、原料ガスの供給を継続しつつ、所定タイミングで所定期間、添加物を添加して形成される。したがって、チャネル層CNs中に、ノンドープ層CNsa、ドープ層CNsb、及びノンドープ層CNscがシームレスに形成されていてよい。
【0114】
次に、非晶質のチャネル層CNsを結晶化してチャネル層CNを形成する様子を
図8に示す。
図8は、上述の
図6と同様、後にメモリ領域MRとなる領域のY方向に沿う断面図である。
【0115】
図8(a)に、チャネル層CNsが、メモリホールMHの側壁および底面、並びに絶縁層51の上面に、メモリ層MEを介して形成された様子を示す。
【0116】
図8(b)に示すように、メモリホールMHのチャネル層CNs内側をコア層CRsで充填する。コア層CRsは、例えば酸化シリコン層等であり、後の工程で除去される犠牲層として機能する。コア層CRsは、チャネル層CNs及びメモリ層MEを介して絶縁層51の上面にも形成される。
【0117】
図8(c)に示すように、コア層CRsをエッチバックして、絶縁層51の上面及びメモリホールMHの上端部から除去する。これにより、絶縁層51の上面にチャネル層CNsが露出する。また、コア層CRsの上端部がメモリホールMH内の所定深さに位置することとなり、コア層CRsの上方に凹部RCcが形成される。
【0118】
メモリホールMH内の凹部RCcは、例えば絶縁層51上面のコア層CRsが除去された後も、所定時間、オーバーエッチングを継続することで得られる。
【0119】
図8(d)に示すように、絶縁層51上面のチャネル層CNsを覆うキャップ層CPsを形成する。キャップ層CPsは、例えばアモルファスシリコン層等の犠牲層であり、後の工程で除去される。キャップ層CPsは、メモリホールMH内の凹部RCcにも充填される。
【0120】
図8(e)に示すように、チャネル層CNs上のキャップ層CPsを覆う金属層SRを形成する。金属層SRは、例えばニッケル、パラジウム、及びアルミニウムのうちの1つ以上の金属が、アモルファスシリコン層等であるキャップ層CPsの表層部分によってシリサイド化されたシリサイド層等である。このような金属層SRは、例えば上記のニッケル、パラジウム、及びアルミニウムのうちの1つ以上の金属をスパッタリングすることで形成される。
【0121】
また、メタルアシストを用いたアニール処理等によって、チャネル層CNs及びキャップ層CPsを結晶化して、略単結晶化されたチャネル層CNを形成する。
【0122】
すなわち、キャップ層CPs上に金属層SRが形成された状態で、500℃以上600℃以下の、通常ではアモルファスシリコン層が結晶化しない温度であって、例えば550℃でアニール処理をする。これにより、キャップ層CPs上の金属層SRが触媒となって、キャップ層CPs及びチャネル層CNsの略全体が単結晶化される。このとき、単結晶化の触媒となった一部の金属層SRは、それぞれが細片化された金属フラグメントSRfとなって、チャネル層CNの下端部側に偏析する。
【0123】
図8(f)に示すように、アモルファスシリコン層等のゲッタリング層GTをチャネル層CNの上面に形成し、500℃以上の温度でアニール処理を行う。これにより、チャネル層CN中に偏析していた金属フラグメントSRfが、ゲッタリング層GT中に移動する。よって、チャネル層CN中の金属フラグメントSRfの大半を除去することができる。
【0124】
ここで、非晶質のチャネル層CNsを結晶質のチャネル層CNに転換する上記処理のより詳細の様子を
図9に示す。
図9は、上述の
図7と同様、メモリ層MEが形成されたメモリホールMHの拡大断面図である。
【0125】
図9(a)に示すように、キャップ層CPs上の金属層SRを触媒として、キャップ層CPsの上面側からチャネル層CNsの下端部側へ向かって結晶化が進行していく。このように、キャップ層CPs及びチャネル層CNsが結晶化されて、略単結晶となったチャネル層CNの領域が出現すると、キャップ層CPs上面の少なくとも一部の金属層SRが細片化された金属フラグメントSRfとなって、マイグレーションによってキャップ層CPs及びチャネル層CNs中を下方へと移動していく。
【0126】
一方、メモリ層MEとの界面に生じたノンドープ層CNsa中の結晶核CNnは、メタルアシスト無しにはアモルファスシリコン層が結晶化しない温度でのアニール処理にも拘わらず、微結晶に形成し、メタルアシストによる上記のチャネル層CNsの結晶化を阻害する場合がある。
【0127】
しかし、チャネル層CNsは、ノンドープ層CNsaに接して形成されたドープ層CNsbを含んでいる。このドープ層CNsb中の添加物は、上述のように、チャネル層CNsの結晶化を阻害する性質を有する。このため、ドープ層CNsbが局所的に結晶欠陥を有することとなり、ノンドープ層CNsa中の結晶核CNnがドープ層CNsb中にトラップされやすくなる。これにより、結晶核CNnが微結晶となることなく消失し、チャネル層CNsの結晶化の妨げとなることが抑制される。
【0128】
このように、ドープ層CNsb中の添加物は、ノンドープ層CNsa中の結晶核CNnをゲッタリングする機能を有する。なお、ドープ層CNsb中の添加物は、メタルアシストによるチャネル層CNsの結晶化の速度も低下させる。
【0129】
図9(b)に示すように、金属フラグメントSRfの移動に伴って、結晶化もチャネル層CNsの深さ方向へと進行していく。これにより、キャップ層CPs及びチャネル層CNsの略全体が単結晶化されて、領域CNa,CNb,CNcを含む第2の半導体層としてのチャネル層CNが形成される。その後、上述の
図8(f)の処理により、マイグレーションによってチャネル層CN中に含有されることとなった金属フラグメントSRfが除去される。
【0130】
なお、チャネル層CNの領域CNaはノンドープ層CNsaが結晶化された部分であり、領域CNbはドープ層CNsbが結晶化された部分であり、領域CNcはノンドープ層CNscが結晶化された部分である。
【0131】
ここで、ドープ層CNsb中の添加物は、金属フラグメントSRf中の金属元素をもゲッタリングする機能を持つ。このため、マイグレーションによりチャネル層CNs中に含侵された金属元素が、ドープ層CNsbのノンドープ層CNsaと接する面上を含むノンドープ層CNsa中に偏析しうる。これにより、金属フラグメントSRfが除去された後も、チャネル層CNの領域CNa中に金属元素が残留する場合がある。
【0132】
また、上述のように、ドープ層CNsbはチャネル層CNsの結晶加速度を低下させるため、メタルアシストを用いたアニール処理後にも、チャネル層CNの一部下方側に非晶質のチャネル層CNsが残留する場合がある。そこで、金属フラグメントSRfの除去後、例えば800℃超の温度で更にアニール処理を行う。これにより、残留した非晶質部分が固相成長し、すでに単結晶となっているチャネル層CNの部分に取り込まれる。
【0133】
図9(c)に、更なるアニール処理での固相成長によって、チャネル層CNの略全体が単結晶となる様子を示す。
【0134】
以上のように、結晶化対象のキャップ層CPs及びチャネル層CNsの上端部に触媒となる金属層SRを配置して、メタルアシストによる結晶化を上方から下方へと進行させる処理を、MILC(Metal Induced Lateral Crystallization)アニール処理とも呼ぶ。
【0135】
上記のようなMILCアニール処理により、上述のような結晶構造のチャネル層CNが得られる。すなわち、複数のメモリホールMHのうち、チャネル層CNのXY平面に沿う断面において結晶粒界が出現するメモリホールMHの比率は、メモリホールMHの上端部側、つまり、メモリホールMHの上端部から例えば0.5μm下がった高さ位置では例えば1%未満であり、メモリホールMHの延伸方向中央部では例えば2%未満であり、メモリホールMHの下端部側、つまり、メモリホールMH下端部から例えば0.5μm上った高さ位置では例えば4%以下である。また、メモリホールMHの下端部側での上記比率の下限値は、例えば0.1%以上であり、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.01%以上である。
【0136】
次に、チャネル層CNを更に加工してピラーPLを形成する様子を
図10及び
図11に示す。
図10及び
図11は、上述の
図8等と同様、後にメモリ領域MRとなる領域のY方向に沿う断面図である。
【0137】
図10(a)に、結晶質のチャネル層CNが形成されたピラーPL全体の断面を示す。
【0138】
図10(b)に示すように、チャネル層CN及びメモリ層MEをエッチバックして絶縁層51の上面から除去する。これにより、絶縁層51の上面が露出する。またこのとき、メモリホールMH内においてもチャネル層CN及びコア層CRsがエッチバックされる。これにより、チャネル層CN及びコア層CRsの上端部がメモリホールMH内の所定深さに位置することとなり、チャネル層CN及びコア層CRsの上方に凹部RCmが形成される。
【0139】
メモリホールMH内の凹部RCmは、例えば絶縁層51上面のチャネル層CNが除去された後も、所定時間、オーバーエッチングを継続することで得られる。このとき、オーバーエッチング時間等を制御して、チャネル層CN及びコア層CRsの上端部を、少なくとも積層体LMsの最上層の絶縁層NLよりも上方の高さ位置に維持する。後に選択ゲート線SGDとなる最上層の絶縁層NLの高さ位置にチャネル層CNを残存させておくことで、この部分のピラーPLを選択ゲートSTDとして機能させることができる。
【0140】
図11(a)に示すように、絶縁層51の上面を覆うサイドウォール層SWを形成する。サイドウォール層SWは、メモリホールMHの側壁を覆うように、メモリホールMH上端部の凹部RCm内にも形成され、後述するチャネル層CNのスリミング処理においてメモリ層MEを保護する。サイドウォール層SWは例えばアモルファスシリコン層等である。なお、処理時間等を制御することによって、凹部RCmが完全に塞がらないよう、サイドウォール層SWの層厚を調整する。
【0141】
図11(b)に示すように、ウェットエッチング、あるいは等方的なドライエッチング等によって、メモリホールMH内のコア層CRsを除去するとともに、チャネル層CNを薄層化する。このとき、サイドウォール層SWによってメモリホールMH側壁のメモリ層MEが保護される。
【0142】
チャネル層CNを薄層化する上記スリミング処理によって、チャネル層CNが有する領域CNa,CNb,CNcのうち、領域CNcは略完全に除去される。また、領域CNbの一部も除去されうる。このとき、チャネル層CNの層厚方向において、例えば領域CNb中の添加物がピーク濃度を有する部分が、チャネル層CNの新たな表面として露出するまで領域CNbが除去されてよい。これにより、領域CNa,CNbを有し、領域CNcを有さない上述のチャネル層CNが形成される。
【0143】
このように、当初、厚膜のチャネル層CNsを形成してアニール処理等を行うことで、チャネル層CNsの結晶化が促進されやすくなる。また、結晶化されたチャネル層CNをスリミングすることで、ゲート長に相当するチャネル層CNの積層方向の長さに比して空乏層を薄くすることができ、短チャネル効果を抑制することができる。
【0144】
図11(c)に示すように、コア層CRsが除去され、チャネル層CNがスリミングされて生じたメモリホールMH内の空隙に、酸化シリコン層等を充填してコア層CRを形成する。このとき、チャネル層CN上端部の高さ位置以上となるよう、コア層CR上端部の高さ位置を調整する。後に選択ゲート線SGDとなる最上層の絶縁層NLの高さ位置のチャネル層CNの形状を円環状に維持することで、この部分のピラーPLを選択ゲートSTDとして機能させることができる。
【0145】
図11(d)に示すように、絶縁層51上面のサイドウォール層SWを覆うキャップ層CPaを形成する。キャップ層CPaは、後に結晶化されて上部キャップ層CPとなるアモルファスシリコン層等である。キャップ層CPaは、メモリホールMH上端部の凹部RCm内にも充填される。
【0146】
図11(e)に示すように、キャップ層CPa及びサイドウォール層SWをエッチバックして、絶縁層51の上面から除去する。このとき、オーバーエッチング量を抑制して、メモリホールMH内のキャップ層CPa及びサイドウォール層SWまでもが除去されないように制御する。
【0147】
図11(f)に示すように、残ったキャップ層CPa及びサイドウォール層SWを、例えばアニール処理等によって結晶化して、上部キャップ層CPを形成する。上部キャップ層CPにおける結晶化の度合いは上述のチャネル層CNほど高くなくてよく、上部キャップ層CPは例えばポリシリコン層等であってよい。上部キャップ層CPの一部にアモルファスシリコン層が残っていてもよく、一部が単結晶化していてもよい。
【0148】
以上により、ピラーPLが形成される。ただし、この時点で、ピラーPLのチャネル層CN下端部に下部キャップ層EPは未形成である。
【0149】
次に、複数の絶縁層NLをワード線WL等に置換して積層体LMを形成する様子を
図12に示す。
図12は、上述の
図10及び
図11等と同様、後にメモリ領域MRとなる領域のY方向に沿う断面図である。
【0150】
図12(a)に示すように、絶縁層51上に絶縁層52を形成する。また、絶縁層52,51、積層体LMs、及び絶縁層55を貫通して、支持基板SSに到達するスリットSTを形成する。スリットSTは、積層体LMs内をX方向に沿う方向にも延びている。
【0151】
図12(b)に示すように、スリットSTの上部から熱リン酸等の除去液を注入して、スリットSTの側面に露出する積層体LMs内の絶縁層NLを除去する。これにより、複数の絶縁層OL間に空隙を有する積層体LMgが形成される。
【0152】
図12(c)に示すように、スリットSTの上部から、導電体等の原料となる原料ガスを注入し、空隙内を導電層で充填してワード線WL及び選択ゲート線SGD,SGSを形成する。これにより、複数のワード線WL及び選択ゲート線SGD,SGSが積層された積層体LMが形成される。ただし、この時点で、選択ゲート線SGDは複数の区画に分離された状態とはなっていない。
【0153】
なお、絶縁層NLを除去してワード線WL等を形成する処理をリプレース処理とも呼ぶ。
【0154】
図12(d)に示すように、スリットST内に絶縁層54を充填して板状部PTを形成する。
【0155】
図12(e)に示すように、分離層SHEを形成するため、絶縁層52,51及び選択ゲート線SGDを貫通し、X方向に沿う方向に延びる溝GRを形成する。換言すれば、積層体LM内の導電層のうち、選択ゲート線SGDとして機能させたい導電層に溝GRを貫通させて、複数の選択ゲート線SGDのパターンに分離する。
【0156】
図12(f)に示すように、溝GR内に絶縁層56を充填して分離層SHEを形成する。
【0157】
その後、絶縁層52上に絶縁層53を形成し、絶縁層53,52を貫通してピラーPLの上部キャップ層CPに接続されるプラグCH、及びプラグCHに接続されるビット線BLを形成する。
【0158】
次に、ピラーPLの下端部に下部キャップ層EPを形成する様子を
図13に示す。
図13は、上述の
図12等と同様、後にメモリ領域MRとなる領域のY方向に沿う断面図である。
【0159】
図13(a)(b)に示すように、積層体LMにピラーPLが形成され、積層体LMを覆う絶縁層52,53にプラグCH及びビット線BLが形成済みの支持基板SSの面を、支持基板SSとは別体の半導体基板SBの周辺回路CBAが形成された面と対向させる。なお、周辺回路CBAは絶縁層40で覆われており、絶縁層40中には周辺回路CBAと電気的に接続されるコンタクト、ビア、及び配線等が形成されている。
【0160】
その後、支持基板SS側の絶縁層51~53を含む絶縁層50と、半導体基板SB側の絶縁層40とを接合する。これらの絶縁層50,40は、例えば予めプラズマ処理等により活性化させておくことで接合することができる。また、絶縁層50,40を接合する際には、絶縁層50の表面に形成され、ピラーPL等と電気的に接続された図示しない電極パッドと、絶縁層40の表面に形成され、周辺回路CBAと電気的に接続された電極パッドとが重なるように、支持基板SSと半導体基板SBとの位置合わせをする。
【0161】
絶縁層50,40を接合した後、アニール処理を行って、双方の電極パッドを例えばCu-Cu接合により接合させる。これにより、支持基板SSと半導体基板SBとが貼り合わされる。
【0162】
なお、これ以降、絶縁層50に接合された半導体基板SB側の構成の図示を省略する。
【0163】
図13(c)に示すように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等によって、積層体LMの上方の支持基板SSの全体および絶縁層55の一部を除去する。これにより、絶縁層55の研削された上面に、ピラーPL及び板状部PTの上端部が露出する。また、ピラーPLの上面を覆っていたメモリ層ME全体、及びチャネル層CNの一部上端部が除去されて、ピラーPLの上端部からはチャネル層CNが露出する。
【0164】
図13(d)に示すように、ピラーPL側壁のメモリ層MEとの選択比を取りながら、露出したチャネル層CNに対してリセスエッチングを行い、チャネル層CNの上端部をピラーPLの深さ方向に後退させる。これにより、ピラーPLの上端部に凹部RCeが形成される。
【0165】
なお、リセスエッチング中、メモリ層MEとの選択比を取ることで、メモリ層MEと同種の材料を含む絶縁層55がエッチング削除されてしまうことも抑制される。また、メモリ層MEとの選択比を取ることで、メモリ層MEと同種の材料を含むコア層CRが、凹部RCe内に突出することとなってもよい。
【0166】
図13(e)に示すように、ピラーPL上端部の凹部RCe内にアモルファスシリコン層またはポリシリコン層等のキャップ層EPaを充填する。また、キャップ層EPaにリン等のドーパントをイオン注入等によりドーピングする。
【0167】
図13(f)に示すように、例えばレーザ光を照射して行う活性化アニールによって、キャップ層EPa中のドーパントを活性化する。これにより、キャップ層EPa中のドーパントが活性化された下部キャップ層EPが形成される。
【0168】
以上により、下部キャップ層EPを下端部に有するピラーPLが形成される。
【0169】
なお、ピラーPLの下端部に下部キャップ層EPを形成する上記処理により、ピラーPLのメモリ層ME及びチャネル層CNを含む下端部が一部除去される。このときの除去量の多寡に応じて、チャネル層CNのXY平面に沿う断面において、結晶粒界が出現するピラーPLの比率が例えば4%以下となる部分の、ピラーPLの下端部からの距離は若干変動しうる。つまり、上記の説明では、ピラーPLの下端部側を、ピラーPLの下端部から0.5μm上った位置であるとしたが、この距離はあくまでも一例である。
【0170】
その後、下部キャップ層EPが形成されたピラーPLの下端部、及び板状部PTの下端部が露出した絶縁層55を覆うポリシリコン層等のソース線SLを形成する。また、ソース線SLの上方に、プラグPGが形成された絶縁層60を介して、電極層ELを形成する。
【0171】
以上により、実施形態の半導体記憶装置1が製造される。
【0172】
(概括)
3次元不揮発性メモリ等の半導体記憶装置では、例えばチャネル層とメモリ層とを備えるピラーにメモリセルの機能を持たせている。半導体層等であるチャネル層を単結晶化するなどして、チャネル層の結晶構造を適正に制御することで、チャネル層の電気抵抗を低下させ、また、チャネル層CN由来のノイズを低減して良好な電気特性のメモリセルを得ることができる。
【0173】
ここで、例えば非晶質のチャネル層を形成し、単純なアニール処理等により結晶化した場合、チャネル層は略100%多結晶の結晶構造を取る。この場合、ピラー全体に亘って、チャネル層における結晶粒界の出現数は、ピラーの延伸方向の50nmあたりで例えば1つ以上である。
【0174】
そこで、チャネル層を単結晶化するため、例えばMILCアニール処理等のメタルアシストを用いたアニール処理が用いられる。しかしながら、結晶化前の非晶質のチャネル層中に結晶核が形成されるなどして、メタルアシストによるチャネル層の単結晶化が阻害されてしまう場合がある。その様子を
図14に示す。
【0175】
図14は、比較例にかかる非晶質のチャネル層CNsxを結晶質のチャネル層CNxに転換する様子を示すメモリホールの拡大断面図である。
【0176】
図14(a)に示すように、比較例の半導体記憶装置の製造工程において、アモルファスシリコン層等の非晶質の半導体層であって、全体がノンドープ層となったチャネル層CNsxが形成される。チャネル層CNsxのメモリ層MEとの界面近傍には、チャネル層CNsxの構造の乱れ等による結晶核CNnが形成されている。
【0177】
図14(b)に示すように、チャネル層CNsxの上方側に、ニッケル、パラジウム、またはアルミニウム等のシリサイド層である金属層が形成された状態で、500℃以上600℃以下の温度でアニール処理を行う。これにより、チャネル層CNsxの上端部側から、メタルアシストによる結晶化が開始される。
【0178】
一方で、このとき、チャネル層CNsx中の結晶核CNnが微結晶に成長し、メタルアシストによるチャネル層CNsxの均質的な結晶化を阻害する。
【0179】
図14(c)に示すように、結晶核CNnが成長した微結晶により阻害され、多結晶化したチャネル層CNxが形成される。これにより、チャネル層CNx中には結晶粒界CNgが多数生じている。
【0180】
このように、メタルアシストを用いたアニール処理を用いた場合でも、複数のピラーのうち、チャネル層のXY平面に沿う断面において結晶粒界が出現するピラーは、ピラーの上端部側であっても1%程度生じてしまう。
【0181】
実施形態の半導体記憶装置1の製造方法によれば、層厚方向のメモリ層ME寄りに、炭素、窒素、酸素、及びフッ素のうちの1以上である添加物をチャネル層CNsに添加する。これにより、チャネル層CNsのメモリ層MEとの界面付近に形成される結晶核CNnをトラップして、MILCアニール処理によるチャネル層CNsの単結晶化が阻害されてしまうのを抑制することができる。
【0182】
実施形態の半導体記憶装置1の製造方法によれば、メモリ層MEからの距離が、チャネル層CNsの全体の層厚に対して、50%未満、より好ましくは5%以上25%未満の領域にピーク濃度を有するよう添加物を添加する。これにより、添加物が添加されたドープ層CNsbによる結晶核CNnのトラップ効果を高めることができる。
【0183】
図15は、実施形態にかかるチャネル層CNsに導入されるドープ層CNsbの適正位置を示すグラフである。
【0184】
図15に示すグラフの横軸は、添加物として用いた炭素の濃度であり、グラフの縦軸は、複数のピラーの下端部側のXY断面において、チャネル層が完全に非晶質となっていたピラーの比率である。
【0185】
また、
図15のグラフには、メモリ層からの距離が、スリミング前のチャネル層全体の層厚に対して95%、60%、及び20%の位置に炭素を添加した場合のデータを示す。
【0186】
図15に示す例では、メモリ層からの距離がチャネル層全体の層厚に対して60%の位置に炭素を添加した場合において、チャネル層が非晶質となったピラーの比率が最も高かった。また、メモリ層からの距離がチャネル層全体の層厚に対して20%の位置に炭素を添加した場合、チャネル層が非晶質となったピラーの比率が最も低くなることが判った。
【0187】
このように、炭素を添加する位置がメモリ層の近傍であるほうが、結晶核のトラップ効果が高まることが判る。一方で、例えば炭素の添加領域をメモリ層に接するように形成してしまうと、メモリセルの電気的な動作時にチャネル層を流れる電子が、炭素の添加領域によって散乱したり、捕捉されたりしてしまう恐れがある。これにより、メモリセルの電気特性が低下してしまう可能性がある。
【0188】
実施形態においては、チャネル層CNの領域CNbをメモリ層MEに接触させないので、このような電子の散乱および捕捉を抑制して、メモリセルの電気特性を維持することができる。
【0189】
実施形態の半導体記憶装置1によれば、ピラーPLの少なくとも上端部側において、チャネル層CNは、ピラーPLの延伸方向における1μmあたりの結晶粒界の出現数が、0.5未満の結晶構造を有する。
【0190】
実施形態の半導体記憶装置1によれば、XY平面に沿う断面であって、複数のピラーPLの延伸方向の中央での断面において、複数のピラーPLのうち、チャネル層CNに結晶粒界の出現するピラーPLの比率は2%未満である。
【0191】
また、複数のピラーPLのうち、チャネル層CNに結晶粒界の出現するピラーPLの比率は、ピラーPLの上端部側の断面では1%未満であり、ピラーPLの下端部側の断面では4%以下である。また、ピラーの下端部側における上記比率の下限値は、0.1%以上であり、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.01%以上である。
【0192】
このように、チャネル層CNsの一部に添加物を添加して、メタルアシストによるアニール処理を行った場合、非晶質のチャネル層に添加物を添加することなく上記アニール処理を行った場合よりも、チャネル層CNの単結晶化の度合いを高めることができる。これにより、チャネル層CNを低抵抗化し、また、チャネル層CN由来のノイズを低減してメモリセルMCの電気特性を向上させることができる。
【0193】
(変形例)
次に、
図16及び
図17を用いて、実施形態の変形例の半導体記憶装置の製造方法について説明する。変形例の半導体記憶装置の製造方法においては、メタルアシストを用いたアニール処理の方法が、上述の実施形態とは異なる。
【0194】
なお、以下の図面においては、上述の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0195】
図16及び
図17は、実施形態の変形例にかかる半導体記憶装置の製造方法の手順の一部を順に例示する拡大断面図である。
【0196】
図16(a)(b)に示すように、変形例の半導体記憶装置の製造方法においても、非晶質のチャネル層CNsが、上述の実施形態と同様に形成される。すなわち、チャネル層CNsは、結晶核CNnを含みうるノンドープ層CNsaと、炭素、窒素、酸素、及びフッ素の少なくともいずれかの添加物を含むドープ層CNsbと、ノンドープ層CNscとを、メモリ層ME側からこの順に含んでいる。
【0197】
図16(c)に示すように、チャネル層CNsの内壁面を覆う金属層SRaを形成する。金属層SRaは、例えばニッケル、パラジウム、及びアルミニウムのうちの1つ以上の金属が、アモルファスシリコン層等であるチャネル層CNsの表層部分によってシリサイド化されたシリサイド層等である。
【0198】
その後、メモリホールMH内に残った空隙にコア層CRsを充填する。
【0199】
図17(a)に示すように、500℃以上600℃以下の温度であって、例えば550℃でアニール処理を開始する。これにより、チャネル層CNs内壁面の金属層SRaが細片化された金属フラグメントSRfaとなって、チャネル層CNs中の異なる高さ位置に含侵する。
【0200】
一方、チャネル層CNsのノンドープ層CNsaに含まれていた結晶核CNnが、チャネル層CNsのドープ層CNsbにトラップされて消失する。
【0201】
図17(b)に示すように、アニール処理を継続することで、金属フラグメントSRfaを触媒として、チャネル層CNs中の異なる高さ位置で、チャネル層CNsの結晶化が開始され、各所に結晶質のチャネル層CNpが形成され成長していく。
【0202】
図17(c)に示すように、メタルアシストを用いたアニール処理、及びその後の800℃以上での追加のアニール処理により、略全体が単結晶化されたチャネル層CNpが形成される。チャネル層CNpは、チャネル層CNsのノンドープ層CNsa、ドープ層CNsb、及びノンドープ層CNscがそれぞれ結晶化された領域CNna,CNnb,CNncを含む。上述の実施形態と同様、チャネル層CNpの領域CNnaにはメタルアシストに用いた金属元素が含まれている場合がある。また、添加物のピーク濃度は、例えば領域CNnb中に位置する。
【0203】
このように、チャネル層CNsの側面に触媒となる金属層SRaを設け、チャネル層CNs中の異なる高さ位置で、メタルアシストによる結晶化を進行させる処理を、MIC(Metal Induced Crystallization)アニール処理とも呼ぶ。MICアニール処理においては、チャネル層CNsの各所で結晶化が進行するため、最終的に得られるチャネル層CNpに出現する結晶粒界CNgが、上述のMILCアニール処理による結晶化の場合よりも若干増加する場合がある。
【0204】
この場合であっても、MICアニール処理により形成されたチャネル層CNpと、MILCアニール処理により形成された上述の実施形態のチャネル層CNとの品質の差はごく僅かである。例えばMICアニール処理によるチャネル層CNpの場合、複数のピラーの少なくとも上端部側のチャネル層CNpにおいて、ピラーの延伸方向における1μmあたりの結晶粒界の出現数は、例えば2個未満である。
【0205】
チャネル層CNpの上記以外の結晶構造上の特性は、上述の実施形態のチャネル層CNと略等しい。すなわち、複数のピラーのうち、チャネル層CNpのXY平面に沿う断面において結晶粒界が出現するピラーの比率は、ピラーの上端部側、つまり、ピラーの上端部から例えば0.5μm下がった高さ位置では例えば1%未満であり、ピラーの延伸方向中央部では例えば2%未満であり、ピラーの下端部側、つまり、ピラー下端部から例えば0.5μm上った高さ位置では例えば4%以下である。また、ピラーの下端部側での上記比率の下限値は、例えば0.1%以上であり、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.01%以上である。
【0206】
変形例の半導体記憶装置およびその製造方法によれば、上述の実施形態の半導体記憶装置1及びその製造方法と同様の効果を奏する。
【0207】
(その他の変形例)
上述の実施形態および変形例では、ピラーPL下端部を研削除去して、ソース線SLに接続される下部キャップ層EPを設けることとした。しかし、ピラーとソース線との接続方法はこれに限られない。例えば、ピラーの下端部をソース線中にまで到達させ、ソース線中のピラーの側面からメモリ層を除去し、チャネル層の側面でソース線と接続させてもよい。この場合、ピラー下端部が研削除去されないので、結晶質のチャネル層が形成された後のピラーが略そのまま維持される。
【0208】
また、上述の実施形態および変形例では、半導体記憶装置1は、電荷蓄積層CT等を備えるMONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)型のメモリセルMCを備えることとした。しかし、半導体記憶装置が、フローティングゲート等を備えるFG(Floating Gate)型のメモリセルを備える場合であっても、上述の実施形態および変形例のチャネル層CN,CNpを適用することができる。
【0209】
FG型のメモリセルは、複数の導電層としてのコントロールゲート間に、これらのコントロールゲートから電気的に浮遊した状態のフローティングゲートを有する。フローティングゲートは、チャネル層側に設けられるトンネル絶縁層と、トンネル絶縁層とは反対側に設けられるコントロールゲート間絶縁層とに挟まれており、このフローティングゲートに電荷を蓄積することでデータを保持することが可能となる。このように、FG型のメモリセルもまた、電荷蓄積層としてのフローティングゲートを含むトンネル絶縁層とコントロールゲート間絶縁層との多層絶縁層によって、チャネル層の側壁が覆われた構造を有している。
【0210】
また、上述の実施形態および変形例では、半導体記憶装置1は、1Tierの積層体LMを有することとした。しかし、複数個の積層体LMsを積み重ねることで、半導体記憶装置が、2Tier以上の積層体LMを有することとしてもよい。この場合、メモリホールMH等をTierごとに形成することができるので、積層体LMの最終的な積層数を増加させることができる。以下の
図18に、2Tierの積層体LMa,LMbを有する半導体記憶装置の構成例を示す。
【0211】
図18は、実施形態のその他の変形例にかかる半導体記憶装置の構成の一例を示す断面図である。
【0212】
図18に示すように、その他の変形例の半導体記憶装置は、絶縁層55を介してソース線SL上に配置される積層体LMaと、絶縁層OLjを介して積層体LMa上に配置される積層体LMbとを備える。この場合、上述のドレイン側の選択ゲート線SGDは、上層側の積層体LMbに含まれることとなり、積層体LMbの最上層のワード線WLの更に上層に配置される。また、上述のソース側の選択ゲート線SGSは、下層側の積層体LMaに含まれることとなり、積層体LMaの最下層のワード線WLの更に下層に配置される。
【0213】
積層体LMa,LMbを積層方向に延びるピラーPLは、積層体LMa及び絶縁層55を貫通してソース線SLに到達するピラーPLaと、絶縁層52及び積層体LMbを貫通して絶縁層OLjに到達するピラーPLbとを備える。互いに対応するピラーPLaの上端部とピラーPLbの下端部とは、例えば絶縁層OLj中に配置される接合部PLjを介して接続されている。接合部PLjは、XY平面に沿う断面積および径が、ピラーPLの他の部分の断面積および径よりも大きい。
【0214】
図18に示すその他の変形例の半導体記憶装置は、例えば以下のように製造される。
【0215】
すなわち、リプレースによって積層体LMaとなる積層体を絶縁層55上に形成し、積層体を覆う絶縁層OLjを形成し、絶縁層OLj、積層体、及び絶縁層55を貫通してソース線SLに到達するメモリホールを形成し、絶縁層OLjにおけるメモリホールの径を拡大する。これにより、後にピラーPLa及び接合部PLjとなる部分が形成される。
【0216】
また、リプレースによって積層体LMbとなる積層体を絶縁層OLj上に形成し、積層体を覆う絶縁層52を形成し、絶縁層52及び積層体を貫通して、下層の積層体に形成されたメモリホールの絶縁層OLj中の拡径部分に接続されるメモリホールを形成する。これにより、後にピラーPLbとなる部分が形成される。
【0217】
なお、上記のように、下層側のメモリホールの上端部を拡径しておくことで、上層側のメモリホールが若干位置ずれした状態で形成されても、上下層のメモリホールをより確実に接続することができる。
【0218】
絶縁層OLj中の拡径部分を介して、上下層の積層体全体を貫通するメモリホールに対し、上述の実施形態の
図7~
図11に示した処理を行ってピラーPLを形成する。ただし、非晶質のチャネル層CNsの結晶化は、上述の
図7及び
図9のMILCアニール処理に替えて、上述の変形例の
図16及び
図17のMICアニール処理によって行われてもよい。
【0219】
このように、複数Tierの積層体を備える半導体記憶装置の製造方法においては、メモリホールはTierごとに形成され、メモリホール内へのメモリ層ME、チャネル層CN、及びコア層CR等の形成は、複数Tier全体を貫通するメモリホールの形成後に一括して行われる。
【0220】
その後、上述の実施形態と同様、
図12以降の処理を行うことで、その他の変形例の半導体記憶装置が製造される。
【0221】
なお、上述のように、ピラーPLの接合部PLjは、上下層のメモリホールの位置ずれマージンを確保するため形成される。しかし、上下層のメモリホールの位置合わせ精度が充分に高い場合等には、下層のメモリホール上端部を拡径しなくともよく、その場合、複数Tier構造のピラーPLであっても、接合部PLjを有していなくともよい。
【0222】
その他、上述の実施形態および変形例では、コンタクト領域ERが、積層体LMのX方向の端部に配置されることとした。しかし、積層体LMのX方向中央部にコンタクト領域ERを配置してもよい。この場合、コンタクト領域ERのX方向両側にそれぞれメモリ領域MRを配置することができる。また、複数のワード線WLにそれぞれ接続される複数のコンタクトCCをコンタクト領域ERに纏めて配置するのではなく、メモリ領域MR等に分散させてコンタクトCCを配置することもできる。
【0223】
また、上述の実施形態および変形例では、積層体LMの上方に周辺回路CBAを配置することとした。しかし、周辺回路は、積層体の下方または積層体と同じ階層に配置されてもよい。
【0224】
周辺回路を積層体の下方に配置する場合には、例えば絶縁層で覆われた周辺回路を有する半導体基板の絶縁層上に、ソース線および積層体を形成することができる。周辺回路を積層体と同じ階層に配置する場合には、周辺回路が形成される半導体基板上の周辺回路とは異なる位置に、積層体を形成することができる。
【0225】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0226】
1…半導体記憶装置、CN,CNp,CNs…チャネル層、CNa,CNb,CNc,CNpa,CNpb,CNpc…領域、CP…上部キャップ層、CR…コア層、EP…下部キャップ層、LM,LMg,LMs…積層体、MC…メモリセル、ME…メモリ層、MR…メモリ領域、NL,OL…絶縁層、PL…ピラー、SGD,SGS…選択ゲート線、STD,STS…選択ゲート、WL…ワード線。