(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157750
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】トリムの係止構造
(51)【国際特許分類】
B60N 2/75 20180101AFI20241031BHJP
A47C 7/54 20060101ALI20241031BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20241031BHJP
A47C 31/11 20060101ALI20241031BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B60N2/75
A47C7/54 Z
B60N2/58
A47C31/11 A
B68G7/05 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072294
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】立川 義彦
(72)【発明者】
【氏名】川島 義仁
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DC01
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】高い作業性をもってトリムを固定できるとともに、製造コストの低減を図ることが可能なトリムの係止構造を提供する。
【解決手段】下側トリム130aの上面には、端部130fの近傍にプレート部材131が固定されている。上側トリム130bの下面には、端部130eの近傍にプレート部材132が固定されている。プレート部材131,132は、端部130eと端部130fとの間のトリム下側部130aとトリム上側部130bとの重なり領域内に配されている。下側トリム130aと上側トリム130bとは、プレート部材132の一部がプレート部材131と下側トリム130aの上面との間に挿入され、プレート部材131の一部がプレート部材132と上側トリム130bの下面との間に挿入されることにより、互いに係止されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの構成部材である第1部材と、
前記シートのトリムであって、前記第1部材の表面上の一部領域に重ねられた状態で当該一部領域において前記第1部材に係止される第2部材と、
前記一部領域内に配置されるとともに、前記第1部材に対して前記表面に沿うよう固定された第1プレート部材と、
前記一部領域内に配置されるとともに、前記第2部材における前記第1部材の前記表面に対向する対向面に沿うように固定された第2プレート部材と、
を備え、
前記第1部材と前記第2部材とは、前記第1プレート部材の一部が、前記第2部材の前記対向面と前記第2プレート部材との間に挿入され、且つ、前記第2プレート部材の一部が、前記第1部材の前記表面と前記第1プレート部材との間に挿入される、ことにより互いに係止される、
トリムの固定構造。
【請求項2】
前記第1部材は、前記第2部材とは別の、又は前記第2部材に連続するトリムであって、
前記第1部材を構成するトリムを第1トリム、前記第2部材を構成するトリムを第2トリムとする場合に、
前記第1トリムは、延在端である第1端部を有し、
前記第2トリムは、延在端である第2端部を有し、
前記第1プレート部材は、前記第1トリムの前記表面における前記第1端部の近傍に固定されており、
前記第2プレート部材は、前記第2トリムの前記対向面における前記第2端部の近傍に固定されており、
前記第1トリムの前記第1端部は、前記第2トリムにおける前記第2端部から離れた延在部分の下方に配置され、
前記第2トリムの前記第2端部は、前記第1トリムにおける前記第1端部から離れた延在部分の上方に配置され、
前記一部領域は、前記第1端部と前記第2端部との間に配されている、
請求項1に記載のトリムの係止構造。
【請求項3】
前記第1プレート部材を前記表面に直交する方向から平面視する場合に、当該第1プレート部材は、前記第1端部に沿って延びる長尺状の第1基部と、前記第1基部に一体形成された、前記第1基部の長手方向における中程部分から前記第1端部に向けて突出する第1凸部とを有し、
前記第1プレート部材は、前記第1基部における長手方向の両端部分で前記第1トリムに固定されており、
前記第1プレート部材における前記第1基部の前記両端部分同士の間と、前記第1トリムの前記表面との間には、前記第2プレート部材の一部が挿通されている、
請求項2に記載のトリムの係止構造。
【請求項4】
前記第2プレート部材を前記対向面に直交する方向から平面視する場合に、当該第2プレート部材は、前記第2端部に沿って延びる長尺状の第2基部と、前記第2基部と一体形成された、前記第2基部の長手方向における中程部分から前記第2端部とは反対側に向けて突出する第2凸部とを有する、
請求項3に記載のトリムの係止構造。
【請求項5】
前記第2プレート部材は、前記第2基部における前記第2凸部の突出根元部分において、前記第2凸部の突出方向とは反対向きに凹入するように形成された切欠き部を有し、
前記第1プレート部材における前記第1基部の一部は、前記第2プレート部材における前記切欠き部に差し込まれている、
請求項4に記載のトリムの係止構造。
【請求項6】
前記第1トリムへの前記第1プレート部材の固定、および前記第2トリムへの前記第2プレート部材の固定は、それぞれ縫製によりなされている、
請求項2から請求項5の何れかに記載のトリムの係止構造。
【請求項7】
前記第1プレート部材および前記第2プレート部材は、それぞれ樹脂材料により形成されている、
請求項2から請求項5の何れかに記載のトリムの係止構造。
【請求項8】
前記第1トリムおよび前記第2トリムは、シートにおけるアームレストの外皮の一部を構成する、
請求項2から請求項5の何れかに記載のトリムの係止構造。
【請求項9】
前記アームレストは、前記シートのシートバックに対して回動可能に設けられており、
前記一部領域は、前記アームレストにおける回動軸の周辺に配されている、
請求項8に記載のトリムの係止構造。
【請求項10】
前記第1プレート部材および前記第2プレート部材は、それぞれが均一な板厚で形成されている、
請求項1に記載のトリムの係止構造。
【請求項11】
前記第1プレート部材および前記第2プレート部材のそれぞれを板厚方向から平面視する場合に、前記第1プレート部材と前記第2プレート部材とは同じ形状を有する、
請求項1に記載のトリムの係止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリムの係止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アームレストを備えるシートが開示されている。アームレストは、シートバックの一方の側方に配され、先端部が前方を向く前倒姿勢と、先端部が上方を向く起立姿勢との間で姿勢変化可能である。アームレストは、パイプフレームと、パイプフレームの周囲を覆うカバー部材およびアームレストカバーと、アームレストカバーの周囲を被覆するソフトカバー(トリム)とを備える。
【0003】
特許文献1のアームレストでは、トリムの端部にジップファスナーが設けられており、ジップファスナーを締めることにより、トリムの端部同士を係止できる構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示のアームレストでは、ジップファスナーを用いてトリムの端部同士を係止する構成となっているので、煩雑な作業が必要であるとともに、製造コストの上昇も招いてしまう。具体的に、ジップファスナーを用いてトリムの端部同士を係止する構成では、係止後にジップファスナーが外方から視認できないようにするためにトリム同士の重なり部分の内側にジップファスナーが設けられるようにする必要があり、ジップファスナーを締める際の作業性の低下を招く。
【0006】
また、ジップファスナーを用いてシートトリムの端部同士を係止する構成では、予めシートトリムの端部の全域に亘ってジップファスナーを固定しなければならず、当該固定にも煩雑な作業が必要となる。また、完成後のトリムに皺が残らないようにするためには、寸法の面で余裕のない状態でジップファスナーをトリムの端部に固定しておくことが必要となるため、強い力でジップファスナーを締めることが必要となり、この面でも作業性の低下を招く。なお、ジップファスナーのタブについては、係止後のシートトリムの外側にできるだけ凹凸を生じないようにするためには、サイズの小さなタブとする必要があり、ジップファスナーを締める際に作業者がタブを摘まみ難いという問題も生じる。
【0007】
さらに、ジップファスナーは部品コストが高いため、トリムの製造コストの上昇を招いてしまう。
【0008】
なお、上記では、アームレストの外皮を構成するトリムの係止構造を一例として問題点を提起したが、シートの他の部分におけるトリムの係止構造についても、ジップファスナーを用いる場合には同様の問題を生じる。また、上記のような問題は、トリムの端部同士の係止に限らず、トリムをトリム以外の部材に対して係止する場合にも同様に生じ得る。
【0009】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、高い作業性をもってトリムを係止できるとともに、製造コストの低減を図ることが可能なトリムの係止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るトリムの係止構造は、第1部材と、第2部材と、第1プレート部材と、第2プレート部材と、を備える。前記第1部材は、シートの構成部材である。前記第2部材は、前記シートのトリムであって、前記第1部材の表面上の一部領域に重ねられた状態で当該一部領域において前記第1部材に係止される。前記第1プレート部材は、前記一部領域内に配置されるとともに、前記第1部材に対して前記表面に沿うよう固定されている。前記第2プレート部材は、前記一部領域内に配置されるとともに、前記第2部材における前記第1部材の前記表面に対向する対向面に沿うように固定されている。
【0011】
本態様に係るトリムの係止構造において、前記第1部材と前記第2部材とは、前記第1プレート部材の一部が、前記第2部材の前記対向面と前記第2プレート部材との間に挿入され、且つ、前記第2プレート部材の一部が、前記第1部材の前記表面と前記第1プレート部材との間に挿入される、ことにより互いに係止される。
【0012】
上記態様に係るトリムの係止構造では、第2部材の前記対向面と第2プレート部材との間に第1プレート部材の一部が挿入され、第1部材の表面と第1プレート部材との間に第2プレート部材の一部が挿入されることにより、第1部材と第2部材とが係止されている。よって、上記態様に係るトリムの係止構造では、第1部材に対してトリムである第2部材を係止しようとする際に、第1プレート部材および第2プレート部材の各一部を上記のように挿入するという作業を行うだけでよく、ジップファスナーを用いて互いを係止する場合に比べて煩雑な作業を必要としない。
【0013】
また、第1部材および第2部材のそれぞれに対しては、予め板状の部材である第1プレート部材および第2プレート部材を固定しておくだけであるので、ジップファスナーを取り付ける場合に比べて簡易な作業で取付けが可能である。
【0014】
また、板状の第1プレート部材および第2プレート部材は、ジップファスナーに比べて部品コストの低減が容易であって、全体としての製造コストを低減するのも容易である。
【0015】
上記態様に係るトリムの係止構造において、前記第1部材は、前記第2部材とは別の、又は前記第2部材に連続するトリムであって、前記第1部材を構成するトリムを第1トリム、前記第2部材を構成するトリムを第2トリムとする場合に、前記第1トリムは、延在端である第1端部を有し、前記第2トリムは、延在端である第2端部を有し、前記第1プレート部材は、前記第1トリムの前記表面における前記第1端部の近傍に固定されており、前記第2プレート部材は、前記第2トリムの前記対向面における前記第2端部の近傍に固定されており、前記第1トリムの前記第1端部は、前記第2トリムにおける前記第2端部から離れた延在部分の下方に配置され、前記第2トリムの前記第2端部は、前記第1トリムにおける前記第1端部から離れた延在部分の上方に配置され、前記一部領域は、前記第1端部と前記第2端部との間に配されている、としてもよい。
【0016】
上記態様に係るトリムの係止構造では、第1部材もトリムであって、上記一部領域が第1トリムの第1端部と第2トリムの第2端部との間に配されているので、係止後の製品において、第1プレート部材および第2プレート部材が外観に現れることがない。よって、上記態様に係るトリムの係止構造では、高い品質を実現するのに優位である。
【0017】
上記態様に係るトリムの係止構造において、前記第1プレート部材を前記表面に直交する方向から平面視する場合に、当該第1プレート部材は、前記第1端部に沿って延びる長尺状の第1基部と、前記第1基部に一体形成された、前記第1基部の長手方向における中程部分から前記第1端部に向けて突出する第1凸部とを有し、前記第1プレート部材は、前記第1基部における長手方向の両端部分で前記第1トリムに固定されており、前記第1プレート部材における前記第1基部の前記両端部分同士の間と、前記第1トリムの前記表面との間には、前記第2プレート部材の一部が挿通されている、としてもよい。
【0018】
上記態様に係るトリムの係止構造は、第1基部で第1トリム(第1部材)に対して第1プレート部材が固定され、且つ、第1凸部が第1基部から第1端部の側へと延びるように形成されているので、第1基部の側から挿入された第2プレート部材が第1トリムから離れようとしても、第1プレート部材が第1トリムとの固定箇所を中心に回転するのが抑制される。即ち、第1プレート部材は、上記のような第2プレート部材からの力がかかった場合においても、第1プレート部材が第1トリムとの固定箇所を中心に回転しようとするのに対して、第1凸部が第1トリムにおける第1凸部の真下の部分と当接するため、第1凸部が回転に対するストッパとして機能することになり、回転が抑制される。よって、第2プレート部材が第1プレート部材から抜け難くすることができ、トリム同士の係止状態を確実に維持することができる。
【0019】
上記態様に係るトリムの係止構造において、前記第2プレート部材を前記対向面に直交する方向から平面視する場合に、当該第2プレート部材は、前記第2端部に沿って延びる長尺状の第2基部と、前記第2基部と一体形成された、前記第2基部の長手方向における中程部分から前記第2端部とは反対側に向けて突出する第2凸部とを有する、としてもよい。
【0020】
上記態様に係るトリムの係止構造では、第2プレート部材についても第2基部と第2凸部とを有する構成を採用するので、第1プレート部材と同じ形状であって、プレート作製時の加工性および生産性の観点で優れる。なお、サイズについても第1プレート部材と第2プレート部材とを同一とする場合には、第1プレート部材と第2プレート部材とを共通部材とすることができ、生産性および部材管理の観点でさらに優れる。
【0021】
上記態様に係るトリムの係止構造において、第2プレート部材は、前記第2基部における前記第2凸部の突出根元部分において、前記第2凸部の突出方向とは反対向きに凹入するように形成された切欠き部を有し、前記第1プレート部材における前記第1基部の一部は、前記第2プレート部材における前記切欠き部に差し込まれている、としてもよい。
【0022】
上記態様に係るトリムの係止構造では、第2プレート部材の切欠き部に対して第1プレート部材における第1基部の一部が差し込まれてなる構成を採用するので、トリムの係止時において、第2プレート部材に対して第1プレート部材を所定よりも深く挿入してしまうような事態が生じるのを防ぐことができる。
【0023】
また、第2プレート部材の切欠き部への第1プレート部材における第1基部の一部の差し込みにより、当該部分で第1プレート部材と第2プレート部材とが噛み合う。よって、上記態様に係るトリムの係止構造では、第1部材(第1トリム)と第2部材(第2トリム)とをより強固に係止させることができる。
【0024】
上記態様に係るトリムの係止構造において、前記第1トリムへの前記第1プレート部材の固定、および前記第2トリムへの前記第2プレート部材の固定は、それぞれ縫製によりなされている、としてもよい。
【0025】
上記態様に係るトリムの係止構造では、第1トリムへの第1プレート部材の固定、および第2トリムへの第2プレート部材の固定が縫製によりなされているので、第1トリムの第1端部のステッチ箇所や第2トリムの第2端部のステッチ箇所の縫製と兼ねることができ、作業効率のさらなる向上を図ることができる。
【0026】
上記態様に係るトリムの係止構造において、前記第1プレート部材および前記第2プレート部材は、それぞれ樹脂材料により形成されている、としてもよい。
【0027】
上記態様に係るトリムの係止構造では、樹脂材料により形成された第1プレート部材および第2プレート部材を採用するので、金属などにより形成されたプレート部材を採用する場合に比べて製造コストの低減が容易である。
【0028】
また、樹脂板を打ち抜いたり、カットしたりしてプレート部材を形成する場合には、ジップファスナーを用いる場合に比べて製造コストの大幅な低減が可能である。
【0029】
さらに、薄い樹脂板からなるプレート部材を採用することにより、係止後の製品において外観でのプレート部材の影響を小さく抑えることが可能となる。
【0030】
上記態様に係るトリムの係止構造において、前記第1トリムおよび前記第2トリムは、シートにおけるアームレストの外皮の一部を構成する、としてもよい。
【0031】
上記態様に係るトリムの係止構造では、第1トリムおよび第2トリムがアームレストの外皮の一部を構成するので、シートクッションやシートバックに比べてサイズが小さく、第1トリムと第2トリムとの固定作業も狭い領域で行うことが必要となる場合が生じるが、上記のように高い作業性をもってトリムの係止を行うことができる。
【0032】
上記態様に係るトリムの係止構造において、前記アームレストは、前記シートのシートバックに対して回動可能に設けられており、前記一部領域は、前記アームレストにおける回動軸の周辺に配されている、としてもよい。
【0033】
上記態様に係るトリムの係止構造では、第1トリムと第2トリムとが係止される上記一部領域がアームレストの回動軸の周辺に配置されているが、高い作業性を確保することが可能である。即ち、アームレストの回動軸の周辺は、シートバックとの配置関係で狭い作業スペースしかないが、上記態様に係るトリムの係止構造では、このような場合にあっても高い作業性を確保することができる。
【0034】
上記態様に係るトリムの係止構造において、前記第1プレート部材および前記第2プレート部材は、それぞれが均一な板厚で形成されている、としてもよい。
【0035】
上記態様に係るトリムの係止構造では、第1プレート部材および第2プレート部材のそれぞれが均一な板厚(板材の厚みバラツキは許容)で形成されているので、板材を打ち抜きやカットして安価なプレート部材を調達することが可能である。
【0036】
上記態様に係るトリムの係止構造において、前記第1プレート部材および前記第2プレート部材のそれぞれを板厚方向から平面視する場合に、前記第1プレート部材と前記第2プレート部材とは同じ形状を有する、としてもよい。
【0037】
上記態様に係るトリムの係止構造では、平面視で同一形状の第1プレート部材と第2プレート部材とを採用するので、部品点数の増加を抑制することができ、製造時における部品管理や部品間違いなどを抑制することができる。
【発明の効果】
【0038】
上記の各態様に係るトリムの係止構造では、高い作業性をもってトリムを固定できるとともに、製造コストの低減を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施形態に係るトリムの係止構造が適用されたシートの構成を示す正面図である。
【
図2】シートのアームレストを拡大して示す斜視図である。
【
図3】(a)はアームレストを上方から見た平面図であり、(b)はアームレストを後方から見た背面図である。
【
図4】(a)は下側トリムの端部近傍に固定されたプレート部材を示す平面図であり、(b)は上側トリムの端部近傍に固定されたプレート部材を示す平面図である。
【
図5】(a)はプレート部材同士の係止前の状態を示す平面図であり、(b)はプレート部材同士が係止された状態を示す平面図である。
【
図6】(a)はプレート部材同士の係止前の状態を示す断面図であり、(b)はプレート部材同士が係止された状態を示す断面図である。
【
図7】(a)は変形例1に係るトリムの係止構造に用いられるプレート部材の構成を示す平面図であり、(b)は変形例2に係るトリムの係止構造に用いられるプレート部材の構成を示す平面図であり、(c)は変形例3に係るトリムの係止構造に用いられるプレート部材の構成を示す平面図であり、(d)は変形例4に係るトリムの係止構造に用いられるプレート部材の構成を示す平面図である。
【
図8】(a)は変形例5に係るトリムの係止構造に用いられるプレート部材の構成を示す平面図であり、(b)は変形例6に係るトリムの係止構造に用いられるプレート部材の構成を示す平面図であり、(c)は変形例7に係るトリムの係止構造に用いられるプレート部材の構成を示す平面図である。
【
図9】(a)は変形例8に係るトリムの係止構造に用いられるプレート部材の構成を示す平面図であり、(b)はその断面図である。
【
図10】(a)は変形例9に係るトリムの係止構造に用いられるプレート部材の構成を示す平面図であり、(b)はその断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0041】
1.シート1の全体構成
本実施形態に係るトリムの係止構造が適用されたシート1の全体構成について、
図1を用いて説明する。
【0042】
図1に示すように、シート1は、シートクッション10と、シートバック11と、ヘッドレスト12と、アームレスト13とを備える。シートクッション10は、乗員の臀部を支持する。シートバック11は、乗員の背部を支持する。ヘッドレスト12は、乗員の頭部を支持する。
【0043】
アームレスト13は、シートバック11の側部(本実施形態では、一例として左側側部)に取り付けられており、乗員の操作により回動軸Ax13廻りに回動可能であって、先端部が前方(
図1の紙面に直交する方向の手前側)を向く前倒姿勢と、先端部が上方を向く起立姿勢との間で姿勢変化可能である。アームレスト13は、前倒姿勢で乗員の腕の一部を支持する。
【0044】
なお、アームレスト13については、シートバック11の右側側部に取り付けることも可能である。
【0045】
2.アームレスト13の構成
シート1におけるアームレスト13の構成について、
図2および
図3を用いて説明する。
【0046】
図2に示すように、アームレスト13は、外側表面を覆うように配されたトリム130を有する。トリム130は、複数のトリム部材が縫製されて構成されている。トリム130は、回動軸Ax13の周辺において、下側トリム(第1部材)130aと上側トリム(第2部材)130bとを有する。
【0047】
上側トリム130bは、アームレスト13の後上部13aから後端部13bにかけての部分で、下側トリム130aの一部に対して上側に重なった状態とされている。そして、
図3(a)、(b)に示すように、アームレスト13における縫製部L2よりも後方の部分(後上部13a、後端部13b)には、下側トリム130aと上側トリム130bとを係止する領域として、2箇所の係止領域(一部領域)130c,130dが配されている。係止領域130cは、後上部13aに配され、係止領域130dは、後端部13bに配されている。
【0048】
ここで、係止領域130c,130dは、上側トリム130bの端部130eに沿って形成されたステッチ(縫製部L1)に一部が重複するように配されている。
【0049】
3.係止領域130c,130dにおける構造
係止領域130c,130dにおける構造について、
図4を用いて説明する。なお、
図4(a)では、上側トリム130bを省略しており、
図4(b)では、下側トリム130aを省略するとともに、上側トリム130bを捲った状態で図示している。
【0050】
図4(a)に示すように、下側トリム130aにおける端部(第1端部)130fの近傍部分であって、下側トリム130aが延在する部分(係止領域130c)には、プレート部材(第1プレート部材)131が固定されている。プレート部材131は、縫製により下側トリム130aに固定されている(縫製部L3,L4)。また、プレート部材131は、樹脂材料(一例として、ポリプロピレン)で形成されている。
【0051】
プレート部材131は、下側トリム130aの端部130fよりも内側で当該端部130fに沿って延びる長尺状の基部(第1基部)131aと、基部131aと一体形成された、基部131aの長手方向の中程部分から端部130fに向けて突出する凸部(第1凸部)131bと、を有する。なお、本実施形態では、プレート部材131が端部130fよりも内側(開口部OPとは反対側)に収まるように固定されているが、凸部131bの一部が開口部OPにはみ出すように固定されてもよい。
【0052】
縫製部L3,L4は、基部131aにおける長手方向の両端部分に配されており、基部131aの中程部分は下側トリム130aに固定されていない。
【0053】
図4(b)に示すように、上側トリム130bは、縁辺部130gが下側トリム130aの側(
図4(b)の紙面手前側)に折り返されており、縫製部L1でステッチが形成されている。上側トリム130bの折返しの頂部である端部(第2端部)130eの近傍部分であって、上側トリム130bが延在する部分(係止領域130c)には、プレート部材(第2プレート部材)132が固定されている。プレート部材132は、一部が上側トリム130bの端部130eと縁辺部130gとの間の折り返しにより袋状となった部分に挿入されている。そして、プレート部材132は、上側トリム130bのステッチを構成する縫製部L1により上側トリム130bに固定されている。
【0054】
プレート部材132は、上側トリム130bの端部130eに沿って延びる長尺状の基部(第2基部)132aと、基部132aと一体形成された、基部132aの長手方向の中程部分から端部130eとは反対側に向けて突出する凸部(第2凸部)132bと、を有する。なお、本実施形態では、プレート部材132も樹脂材料(一例として、ポリプロピレン)で形成されている。また、本実施形態では、プレート部材131とプレート部材132とは、ともに平面視でT字形状を有する。
【0055】
ここで、
図4(a)に示すプレート部材131では、基部131aにおける縫製されていない部分(長手方向の中程部分)は、
図4(b)に示すプレート部材132の凸部132bの挿通を許すように形成されている(被挿通部131c)。即ち、基部131aにおける被挿通部131cと、下側トリム130aとの間には、プレート部材132が挿通される。
【0056】
4.プレート部材131,132同士の係止
下側トリム130aに対して上側トリム130bを固定しようとする際には、プレート部材131とプレート部材132とを係止する。この係止方法について、
図5および
図6を用いて説明する。
【0057】
図6(a)に示すように、下側トリム130aについても、縁辺部130hが下側(上側トリム130bが固定される側とは反対側)に折り返され、縫製されている(縫製部L5)。プレート部材131は、下側トリム130aにおける縁辺部130hが折り返されたのとは反対側(上側)に固定されている。
【0058】
上側トリム130bは、
図4(b)で示した端部130eを捲った状態から、縁辺部130gがプレート部材132の下方に位置するように元の状態へと戻される。そして、
図5(a)の矢印Aおよび
図6(a)の矢印Bで示すように、プレート部材132をプレート部材131と下側トリム130aとの間に挿入する。この場合、
図5(a)に示すように、プレート部材132の凸部132bがプレート部材131の被挿通部131cと下側トリム130aとの間を挿通し、
図5(b)および
図6(b)に示すように、プレート部材131の凸部131bと下側トリム130aとの間まで到達するようにする。
【0059】
図5(b)および
図6(b)に示すように、縫製部L1がプレート部材131の基部131aの近傍に位置するまでプレート部材132を挿入することで、下側トリム130aへの上側トリム130bの係止が完了する。
【0060】
なお、
図5(b)および
図6(b)に示すように、下側トリム130aへの上側トリム130bの係止が完了した状態では、プレート部材131の凸部131bは、その一部がプレート部材132と上側トリム130bとの間に挿入された状態となっている。
【0061】
ここで、本実施形態では、下側トリム130aと上側トリム130bとは、互いに係止しようとする端部130e,130fとは別の部分で予め連続するように縫製されている。
【0062】
5.効果
本実施形態に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、上側トリム130bの下面(下側トリム130aに対向する面)とプレート部材132との間にプレート部材131の一部(凸部131bおよび基部131aの一部)が挿入され、下側トリム130aの上面(上側トリム130bに対向する面)とプレート部材131との間にプレート部材132の一部(凸部132bおよび基部132aの一部)が挿入されることにより、下側トリム130aと上側トリム130bとが係止されている。よって、下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、下側トリム130aに対して上側トリム130bを係止しようとする際に、プレート部材131およびプレート部材132の各一部を上記のように挿入するという作業を行うだけでよく、ジップファスナーを用いて互いを固定する場合に比べて煩雑な作業を必要としない。
【0063】
また、下側トリム130aおよび上側トリム130bのそれぞれに対しては、予め板状の部材であるプレート部材131およびプレート部材132を固定しておくだけであるので、ジップファスナーを取り付ける場合に比べて簡易な作業で取付けが可能である。
【0064】
また、プレート部材131およびプレート部材132は、ジップファスナーに比べて部品コストの低減が容易であって、全体としてのアームレスト13を含むシート1の製造コストを低減するのも容易である。
【0065】
また、本実施形態に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、
図6(b)のように下側トリム130aの端部130fの上方が上側トリム130bで覆われることで開口部OPが閉じられる。即ち、下側トリム130aの端部と上側トリム130bの端部130eとの間に係止領域(一部領域)が配されているので、係止後の製品において、プレート部材131,132による膨らみなどが外観に現れることがない。よって、下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、高い品質を実現するのに優位である。
【0066】
また、本実施形態に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造は、プレート部材131が基部131aで下側トリム130aに係止され、且つ、プレート部材131の凸部131bが基部131aから端部130fの側へと延びるように形成されているので、基部131aの側から挿入されたプレート部材132が下側トリム130aから上向きに離れようとしても、プレート部材131が下側トリム130aとの係止箇所を中心に回転するのが抑制される。即ち、プレート部材131は、上記のようにプレート部材132からの力がかかった場合においても、プレート部材131が下側トリム130aとの固定箇所を中心に回転しようとするのに対して、プレート部材131の凸部131bが下側トリム130aにおける凸部131bの真下の部分と当接するため、凸部131bが回転に対するストッパとして機能することになり、回転が抑制される。よって、プレート部材132がプレート部材131から抜け難くすることができ、下側トリム130aと上側トリム130bとの係止状態を確実に維持することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、上側トリム130bへのプレート部材132の固定が縫製によりなされており、且つ、上側トリム130bへのプレート部材132の固定を上側トリム130bにおけるステッチ箇所の縫製(縫製部L1)と兼ねることができ、作業効率のさらなる向上を図ることができる。
【0068】
また、本実施形態に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、樹脂材料により形成されたプレート部材131,132を採用するので、金属などにより形成されたプレート部材を採用する場合に比べて製造コストの低減が容易である。
【0069】
また、樹脂板を打ち抜いたり、カットしたりしてプレート部材を形成する場合には、ジップファスナーを用いる場合に比べて製造コストの大幅な低減が可能である。
【0070】
さらに、薄い樹脂板からなるプレート部材131,132を採用することにより、係止後の製品において外観でのプレート部材131,132の影響(プレート部材131,132による膨らみなどの影響)を小さく抑えることが可能となる。
【0071】
また、本実施形態に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、下側トリム130aおよび上側トリム130bがアームレスト13の外皮の一部を構成するので、シートクッション10やシートバック11に比べてサイズが小さく、下側トリム130aと上側トリム130bとの係止作業も狭い領域で行うことが必要となる場合が生じるが、上記のように高い作業性をもってトリムの係止を行うことができる。
【0072】
また、本実施形態に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、下側トリム130aと上側トリム130bとが係止される係止領域130cがアームレストの回動軸Ax13の周辺に配置されているが、高い作業性を確保することが可能である。即ち、アームレスト13の回動軸Ax13の周辺は、シートバック11との配置関係で狭い作業スペースしかないが、本実施形態に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、このような場合にあっても高い作業性を確保することができる。
【0073】
また、本実施形態に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、プレート部材131とプレート部材132とを平面視で同じ形状を有する部材としているので、部品点数の増加を抑制することができ、製造時における部品管理や部品間違いなどを抑制することができる。さらに、プレート部材131,132のそれぞれを均一な板厚(板材の厚みバラツキは許容)で形成することとすれば、ベースとなる板材を打ち抜きやカットして安価なプレート部材を調達することが可能である。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、高い作業性をもって下側トリム130aと上側トリム130bとを固定できるとともに、製造コストの低減を図ることが可能である。
【0075】
[変形例1]
変形例1に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造について、
図7(a)を用いて説明する。なお、本変形例では、上側トリム130bに固定されるプレート部材(第2プレート部材)142の構造に特徴を有し、それ以外の構成については上記実施形態と同じである。このため、
図7(a)では、プレート部材142だけを図示するとともに、以下では、上記実施形態と重複する説明を省略する。
【0076】
図7(a)に示すように、本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止に用いられるプレート部材142は、長尺状の基部142aと、基部142aにおける長手方向の中程部分から突出形成された凸部142bと、が一体形成されている。プレート部材142では、基部142aにおける長手方向の両端部分(肩部142d)に切欠き部142eが設けられている。
【0077】
切欠き部142eは、基部142aにおける凸部142bの突出根元部分において、凸部142bの突出方向とは反対向きに凹入する部位である。
【0078】
本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、上側トリム130bに固定されるプレート部材142の形状を除き、上記実施形態と同じであるので、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0079】
また、本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、プレート部材142が切欠き部142eを有するので、プレート部材131へのプレート部材142の係止時において、プレート部材142の切欠き部142eに対してプレート部材131の基部131aの一部を差し込むことができる。このため、下側トリム130aと上側トリム130bとの係止時において、プレート部材142に対してプレート部材131を所定よりも深く挿入してしまうような事態が生じるのを防ぐことができる。
【0080】
また、プレート部材142の切欠き部142eに対してプレート部材131の基部131aの挿入により、当該部分でプレート部材131とプレート部材142とが噛み合う。よって、本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、下側トリム130aと上側トリム130bとをより強固に係止することができる。
【0081】
[変形例2]
変形例2に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造について、
図7(b)を用いて説明する。なお、本変形例では、上側トリム130bに対するプレート部材(第2プレート部材)142の固定方法に特徴を有し、それ以外の構成については上記実施形態や上記変形例1と同じである。このため、以下では、上記変形例1との差異点であるプレート部材142の固定方法だけを説明する。
【0082】
上記のように、プレート部材142は、縁辺部130gを折り返してステッチを形成する際の縫製部L1で上側トリム130bに固定されるのであるが(
図5および
図6を参照)、本変形例では、縫製部L1の形成前に、肩部142dを仮縫いする(仮縫い部L6)。そして、肩部142dを仮縫いした後に、上側トリム130bの縁辺部130gを折り返して縫製する(縫製部L1)。
【0083】
本変形例のように仮縫いを行った後に、縫製して縫製部L1で上側トリム130bにプレート部材142を固定することとすれば、上側トリム130bに対するプレート部材142の固定位置を正確なものとすることができる。即ち、仮縫いを行わないで縫製部L1でプレート部材142を固定する場合に比べて、上側トリム130bに対するプレート部材142のズレを抑制することができる。
【0084】
なお、本変形例は、上側トリム130bに対するプレート部材142の固定方法を除き、上記実施形態および上記変形例1と同様の構成を備えるので、上記実施形態や上記変形例1と同様の効果を得ることができる。
【0085】
また、本変形例では、上側トリム130bへのプレート部材142の固定方法を一例としたが、同じ固定方法を上側トリム130bに対するプレート部材132の固定などに適用することも可能である。
【0086】
[変形例3]
変形例3に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造について、
図7(c)を用いて説明する。なお、本変形例では、上側トリム130bに固定されるプレート部材(第2プレート部材)152の構造に特徴を有し、それ以外の構成については上記実施形態と同じである。このため、
図7(c)では、プレート部材152だけを図示するとともに、以下では、上記実施形態と重複する説明を省略する。
【0087】
図7(c)に示すように、本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止に用いられるプレート部材152は、平面視で角丸の矩形形状を有する板状の部材である。
【0088】
本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、上側トリム130bに固定されるプレート部材152の形状を除き、上記実施形態と同じであるので、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0089】
また、本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、平面視で矩形形状のプレート部材152を採用するので、ベースとなる板材から打ち抜きやカットでプレート部材152を形成する場合に、端材を少なくすることができる。よって、本変形例では、さらになる製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0090】
[変形例4]
変形例4に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造について、
図7(d)を用いて説明する。なお、本変形例では、上側トリム130bに固定されるプレート部材(第2プレート部材)162の構造に特徴を有し、それ以外の構成については上記実施形態と同じである。このため、
図7(d)では、プレート部材162だけを図示するとともに、以下では、上記実施形態と重複する説明を省略する。
【0091】
図7(d)に示すように、本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止に用いられるプレート部材162は、長尺状の基部162aと、基部162aと一体形成された、基部162aにおける長手方向の中程部分から突出する凸部162bと、を有する。また、プレート部材162は、上記変形例1のプレート部材142と同様に、基部162aにおける凸部162bの突出根元部分において、凸部162bの突出方向とは反対向きに凹入する切欠き部162eを有する。
【0092】
本変形例のプレート部材162では、基部162aにおける両端部(肩部162d)から凸部162bと同じ方向に延びる腕部162fも有する。腕部162fについても、基部162aおよび凸部162bと一体形成されている。
【0093】
本変形例でも、上記変形例2と同様に、腕部162fを仮縫いした後に(仮縫い部L6)、上側トリム130bの縁辺部130gを折り返して縫製する(縫製部L1)。
【0094】
本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、上側トリム130bに固定されるプレート部材162の形状を除き、上記実施形態と同じであるので、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0095】
また、本変形例でも、上側トリム130bに固定されるプレート部材162が切欠き部162eを有するので、上記変形例1と同様の効果を得ることができる。また、本変形例でも、腕部162fで仮縫いをした後に縫製部L1で上側トリム130bに固定するので、上記変形例2と同様の効果を得ることもできる。
【0096】
さらに、腕部162fの仮縫い部L6が縫製部L1が延びる方向と交差する方向に長く延びるので(変形例2の仮縫い部L6よりも長く延びるので)、下側トリム130aと上側トリム130bとをより強固に係止することができる。即ち、上側トリム130bに対する下側トリム130aから離れる方向に力が働いても、仮縫い部L6により凸部162bがプレート部材131と下側トリム130aとの間から抜けるのをより確実に抑制することができる。
【0097】
[変形例5]
変形例5に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造について、
図8(a)を用いて説明する。なお、本変形例では、下側トリム130aに固定されるプレート部材(第1プレート部材)171の構造に特徴を有し、それ以外の構成については上記実施形態と同じである。このため、
図8(a)では、プレート部材171だけを図示するとともに、以下では、上記実施形態と重複する説明を省略する。
【0098】
図8(a)に示すように、本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止に用いられるプレート部材171は、長尺状の基部171aと、基部171aと一体形成された、基部171aにおける長手方向の中程部分から突出する凸部171bと、を有する。そして、本変形例のプレート部材171は、基部171aの長手方向における両端部(肩部171d)において、被挿通部(下側トリム130aとの間をプレート部材132の一部が挿通する部分)171cの両端となる箇所に孔171gが開けられている。
【0099】
プレート部材171の孔171gは、下側トリム130aに対してプレート部材171を固定するための縫製で目印となるものである。即ち、下側トリム130aへのプレート部材171の固定に際しては、基部171aの長手方向における孔171gよりも外側部分で縫製を行えば、縫製部L3,L4が被挿通部171cにまで延設されてしまうのを抑制することができる。このため、縫製を行う作業者は、プレート部材132の一部が挿通可能な被挿通部171cを煩雑な確認作業を行わなくても確保することができる。
【0100】
本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、下側トリム130aに固定されるプレート部材171の構造を除き、上記実施形態と同じであるので、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0101】
[変形例6]
変形例6に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造について、
図8(b)を用いて説明する。なお、本変形例では、上側トリム130bに固定されるプレート部材(第2プレート部材)182の構造および配置に特徴を有し、それ以外の構成については上記実施形態と同じである。このため、以下では、上記実施形態と重複する説明を省略する。
【0102】
図8(b)に示すように、本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止に用いられるプレート部材182は、長尺状の基部182aと、基部182aと一体形成された、基部182aにおける長手方向の中程部分から突出する凸部182bと、を有する。ただし、本変形例では、凸部182bで上側トリム130bに固定されており(縫製部L1)、基部182aが上側トリム130bの端部130e(
図6などを参照。)とは反対側に配置されている。
【0103】
また、本変形例のプレート部材182は、基部182aの長手方向の寸法W1が、プレート部材131の被挿通部131cの長手方向での寸法よりも小さく設定されている。このため、矢印Cのようにプレート部材182をその基部182a側から下側トリム130aとプレート部材131との間に挿入させることができる。
【0104】
本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、上側トリム130bに固定されるプレート部材182の構造を除き、上記実施形態と同じであるので、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0105】
また、本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、相対的に小さなサイズのプレート部材182を採用するので、部品のさらなるコスト低減を図ることができる。
【0106】
[変形例7]
変形例7に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造について、
図8(c)を用いて説明する。なお、本変形例では、プレート部材(第1プレート部材)191およびプレート部材(第2プレート部材)192の構造および配置に特徴を有し、それ以外の構成については上記実施形態と同じである。このため、以下では、上記実施形態と重複する説明を省略する。
【0107】
図8(c)に示すように、本変形例のプレート部材191は、長尺状の基部191aと、基部191aと一体形成された、基部191aにおける長手方向の中程部分から突出する凸部191bと、を有する。ただし、本変形例では、基部191aが下側トリム130aの端部130fの近傍に固定されており(縫製部L3,L4)、凸部191bが下側トリム130aの端部130fから離れるように突出形成されている。
【0108】
プレート部材192は、上記実施形態と同様に、上側トリム130bの端部130eの側に基部192aが配され、凸部192bが端部130eから離れるように突出形成されている。ただし、本変形例のプレート部材192は、上記実施形態のように縫製部L1で上側トリム130bに固定されているのではなく、ステッチを構成する縫製部L1とは別の縫製部L7で上側トリム130bに固定されている。
【0109】
縫製部L7は、上側トリム130bにおける縫製部L1よりも縁辺部130gに近い部分と凸部192bとを固定するように設けられている。このため、矢印Dのようにプレート部材192をその凸部192bから下側トリム130aとプレート部材191の凸部191bとの間に挿入させることができる。
【0110】
本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、プレート部材191,192の構造および配置を除き、上記実施形態と同じであるので、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0111】
また、本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、上側トリム130bの一部(縁辺部130gの近傍)も下側トリム130aとプレート部材191との間に挿入されるので、下側トリム130aと上側トリム130bとの固定が外れ難い。
【0112】
[変形例8]
変形例8に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造について、
図9を用いて説明する。なお、本変形例では、プレート部材(第1プレート部材)201およびプレート部材(第2プレート部材)202の構造に特徴を有し、それ以外の構成については上記実施形態と同じである。このため、以下では、上記実施形態と重複する説明を省略する。
【0113】
図9(a)に示すように、本変形例では、プレート部材201が基部201aと凸部201bを有し、プレート部材202が基部202aと凸部202bとを有する。そして、下側トリム130aに対するプレート部材201の固定構造、および上側トリム130bに対するプレート部材202の固定構造は、上記実施形態と同様である。
【0114】
図9(b)に示すように、プレート部材201,202のそれぞれは、板厚が均一ではなく、互いが重なる部分の板厚が他の部分よりも薄く形成されている。具体的には、プレート部材201,202における重なる部分(重なり部201i,202j)の板厚は、他の部分(重なり部201i,202jに隣接する部分201h,202h)の1/2程度の板厚に設定されている。このため、
図9(b)に示すように、下側トリム130aとプレート部材201との間にプレート部材202の一部を挿入し、上側トリム130bとプレート部材202との間にプレート部材201の一部を挿入した場合に、プレート部材201とプレート部材202とが重なる部分の厚みが他の部分と略同じとなるため、係止後における外観において、プレート部材201,202による凹凸を視認し難くすることができる。
【0115】
よって、本変形例では、上記実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、外観品質のさらなる向上を図ることができる。
【0116】
[変形例9]
変形例9に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造について、
図10を用いて説明する。なお、本変形例では、プレート部材(第1プレート部材)211およびプレート部材(第2プレート部材)212の構造に特徴を有し、それ以外の構成については上記実施形態と同じである。このため、以下では、上記実施形態と重複する説明を省略する。
【0117】
図10(a)に示すように、本変形例では、プレート部材211が基部211aと凸部211bを有し、プレート部材212が基部212aと凸部212bとを有する。そして、下側トリム130aに対するプレート部材211の固定構造、および上側トリム130bに対するプレート部材212の固定構造は、上記実施形態と同様である。
【0118】
図10(a)、(b)に示すように、プレート部材212は、プレート部材211と重なる部分の一部に、上方向に向けて膨出するように形成された厚肉部212kを有する。これに対して、プレート部材211は、プレート部材211の厚肉部211kに対応した領域に、窓部211jが開口されている。そして、下側トリム130aへの上側トリム130bの係止時において、プレート部材212をプレート部材211に対して所定量だけ挿入すると、窓部211jに厚肉部212kが嵌合する。
【0119】
本変形例に係る下側トリム130aと上側トリム130bとの係止構造では、プレート部材(第1プレート部材)211およびプレート部材(第2プレート部材)212の構造以外は上記実施形態と同様であるので、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0120】
また、本変形例では、プレート部材211が窓部211jを有し、プレート部材212が厚肉部212kを有するので、下側トリム130aとプレート部材211との間にプレート部材212を挿入する場合に、窓部211jに厚肉部212kが嵌合されるまで挿入すればよく、作業を容易なものとすることができる。即ち、窓部211jに厚肉部212kが嵌合される際には、作業者はクリック感を感じることができ、プレート部材211,212同士を所定の深さまで挿入できたことを確認することができ、高い作業性を確保することができる。
【0121】
[その他の変形例]
上記実施形態および上記変形例1~9では、車両用のシート1におけるアームレスト13でのトリム130の係止構造を一例としたが、本発明の適用箇所はこれに限定を受けるものではない。例えば、シートクッション10、シートバック11、およびヘッドレスト12におけるトリムの係止などにも適用することが可能である。
【0122】
また、本発明は、車両用のシート1だけでなく、家屋内で用いられるシートなどの家具などにおけるトリムの係止構造に適用することも可能である。具体的には、家具、ソファー、座椅子カバー、クッションカバーや、スタジアムのベンチカバーにも適用が可能である。
【0123】
また、上記実施形態および上記変形例1~9では、固定しようとする下側トリム130aと上側トリム130bとが別の箇所で予め固定されて連続している形態を採用したが、別々の部材であって、互いに連続しないトリム同士を固定するのに本発明を適用することも可能である。
【0124】
また、上記実施形態および上記変形例1~9では、下側トリム130aの端部130fの近傍に固定されたプレート部材131と、上側トリム130bの端部130eの近傍に固定されたプレート部材132とを係止することで、下側トリム130aと上側トリム130bとを係止することとしたが、本発明では、各プレート部材をトリムの端部近傍に固定することは必須ではない。
【0125】
また、上記実施形態および上記変形例1~9では、トリム130a,130bに対して縫製によってプレート部材131,132を固定することとしたが、本発明は、トリムへのプレート部材の固定手段について、これに限定を受けるものではない。例えば、接着や溶着、ウェルドなどを採用することもできる。
【0126】
また、上記実施形態および上記変形例1~8では、下側トリム130aと上側トリム130bとの係止に上記構造を適用したが、本発明では、トリムを他の部材(トリム以外の部材)に係止する場合にも適用が可能である。例えば、クッションパッドにトリムを係止する場合や、フレームなどの剛性部材にトリムを係止する場合にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0127】
1 シート
13 アームレスト
130 トリム
130a 下側トリム(第1部材、第1トリム)
130b 上側トリム(第2部材、第2トリム)
130c,130d 係止領域
130e,130f 端部
131,132,142,152,162,171,182,191,192,201,202,211,212 プレート部材
131a,132a,142a,162a,171a,182a,191a,192a,201a,202a,211a,212a 基部
131b,132b,142b,162b,171b,182b,191b,192b,201b,202b,211b,212b 凸部
142e,162e 切欠き部
L1~L5,L7 縫製部