(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157753
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】移動体通行管理システム、及び移動体通行管理方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241031BHJP
【FI】
G05D1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072297
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】521453057
【氏名又は名称】株式会社Octa Robotics
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍋嶌 厚太
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD15
5H301EE13
5H301FF07
5H301FF17
5H301FF18
5H301GG09
5H301KK08
5H301KK09
5H301KK18
5H301KK19
5H301QQ02
(57)【要約】
【課題】自律して移動する移動体の通行を効率的に管理すること。
【解決手段】自律して移動する移動体の通行を管理する移動体通行管理システムであって、前記移動体が通行する対象施設に設置されたマーカーを識別するマーカー識別情報に、前記マーカーの前記対象施設における位置を示すマーカー位置情報を対応付けて格納する記憶部と、前記移動体と通信する通信部と、前記移動体から前記マーカー識別情報を受信した場合に、当該マーカー識別情報に対応付けたマーカー位置情報を前記記憶部から読み出して、前記移動体に送信する制御部とを備えたことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律して移動する移動体の通行を管理する移動体通行管理システムであって、
前記移動体が通行する対象施設に設置されたマーカーを識別するマーカー識別情報に、前記マーカーの前記対象施設における位置を示すマーカー位置情報を対応付けて格納する記憶部と、
前記移動体と通信する通信部と、
前記移動体から前記マーカー識別情報を受信した場合に、当該マーカー識別情報に対応付けたマーカー位置情報を前記記憶部から読み出して、前記移動体に送信する制御部と
を備えたことを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記記憶部は、前記マーカー識別情報に、対応するマーカーの近傍での通行に関するルールを対応付けて記憶し、
前記制御部は、前記移動体から受信したマーカー識別情報に前記ルールが対応付けられている場合には、当該ルールを前記マーカー位置情報とともに前記移動体に送信することを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記記憶部は、前記通行に関するルールを対応付けた地図データを記憶し、
前記制御部は、前記マーカー位置情報と前記地図データに基づいて、前記移動体に通知すべきルールを生成し、当該ルールを前記マーカー位置情報とともに前記移動体に送信することを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の移動体通行管理システムであって、
前記ルールは、速度制限、音量制限、光量制限、進入禁止、停止要求のいずれかを含むことを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の移動体通行管理システムであって、
前記記憶部は、前記ルールの適用対象となるエリアを規定するエリア情報をさらに対応付けて記憶することを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項6】
請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記記憶部は、前記マーカー識別情報に、前記対象施設の設備を利用する際に必要な設備利用情報を対応付けて記憶し、
前記制御部は、前記移動体から受信したマーカー識別情報に前記設備利用情報が対応付けられている場合には、当該設備利用情報を前記マーカー位置情報とともに前記移動体に送信することを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項7】
請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記記憶部は、前記対象施設の設備を利用する際に必要な設備利用情報を対応付けた地図データを記憶し、
前記制御部は、前記マーカー位置情報と前記地図データに基づいて、前記移動体に通知すべき設備利用情報を生成し、当該設備利用情報を前記マーカー位置情報とともに前記移動体に送信することを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の移動体通行管理システムであって、
前記設備利用情報は、設備の種類と、前記マーカーを基準とした前記対象施設の位置及び向きを含むことを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項9】
請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記マーカー位置情報は、前記対象施設を特定する情報、前記対象施設内のフロアを特定する情報、前記対象施設を基準とした前記マーカーの位置及び向きを含むことを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項10】
請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記マーカーは、光学的に読み取り可能な二値符号で前記マーカー識別情報を示すことを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項11】
請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記制御部は、前記移動体からの前記マーカー識別情報の受信について履歴を蓄積することを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項12】
自律して移動する移動体の通行を管理する移動体通行管理方法であって、
サーバが、前記移動体が通行する対象施設に設置されたマーカーを識別するマーカー識別情報に、前記マーカーの前記対象施設における位置を示すマーカー位置情報を対応付けて記憶部に格納するステップと、
前記サーバが、前記移動体から前記マーカー識別情報を受信するステップと、
前記サーバが、前記マーカー識別情報に対応付けたマーカー位置情報を前記記憶部から読み出して、前記移動体に送信するステップと、
を含むことを特徴とする移動体通行管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通行管理システム、及び移動体通行管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自律走行する移動体が工場や物流倉庫などで利用されている。一例として、規定の走行経路を走行し、部品の運搬や荷役作業を行う無人搬送車がある。自律走行する移動体の制御に関し、特許文献1が開示されている。この公報には、「予め設定された走行経路に応じて配置された平板標識と、前記走行経路に沿って自律走行する移動体と、を有する移動体システムであって、前記移動体に設けられ、所定の探索範囲に検出用光を走査することにより、前記移動体と前記探索範囲内に存在する物体までの距離及び方向を検出する距離方向検出装置と、前記距離方向検出装置の検出結果に基づいて前記移動体の進行方向を決定する進行方向決定手段と、を有し、前記平板標識は、鏡面と、入射光を拡散反射する割合が当該鏡面よりも高い拡散反射面と、を含む、移動体システム」との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術のように、無人の工場等を想定した移動体の走行制御はすでに利用されている。このように限定された環境下では、多数の移動体の運行を一括して統合管理することができる。
しかし近年、労働人口の減少などを背景に、より汎用性の高い移動体の運用が求められている。例えば、運搬ロボット、掃除ロボット、警備ロボットなどを、人のいる商業施設の建物内で動作させる、といった運用である。このような運用では、施設管理者が全ての移動体を一括管理することは現実的ではなく、施設管理者と移動体管理者が異なることが想定される。
【0005】
上記の従来技術では、移動体が標識を認識して走行制御を行っているが、例えば用途ごとに異なる移動体管理者が存在する場合、標識の仕様が移動体管理者ごとに異なると、それぞれが標識を配置することとなる。この結果、多数の標識が配置される不合理が生じ、美観を損ねることにもなる。
また、多様な移動体が存在する環境下では、通行の調停にも課題がある。施設管理者が多様な移動体の通行を一元管理するのは負担が大きく、異なる移動体管理者間で通行を調停することも難しい。
また、施設の設備、例えばエレベーターや自動ドアを移動体が利用する場合には、施設側管理者と移動体管理者の双方の負担を極力抑制して設備利用を実現することが求められる。
本発明では、施設管理者と移動体管理者が異なる場合であっても、自律して移動する移動体の通行を効率的に管理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、代表的な本発明の移動体通行管理システムの一つは、自律して移動する移動体の通行を管理する移動体通行管理システムであって、前記移動体が通行する対象施設に設置されたマーカーを識別するマーカー識別情報に、前記マーカーの前記対象施設における位置を示すマーカー位置情報を対応付けて格納する記憶部と、前記移動体と通信する通信部と、前記移動体から前記マーカー識別情報を受信した場合に、当該マーカー識別情報に対応付けたマーカー位置情報を前記記憶部から読み出して、前記移動体に送信する制御部とを備えたことを特徴とする。
また、代表的な本発明の移動体通行管理方法の一つは、自律して移動する移動体の通行を管理する移動体通行管理方法であって、サーバが、前記移動体が通行する対象施設に設置されたマーカーを識別するマーカー識別情報に、前記マーカーの前記対象施設における位置を示すマーカー位置情報を対応付けて記憶部に格納するステップと、前記サーバが、前記移動体から前記マーカー識別情報を受信するステップと、前記サーバが、前記マーカー識別情報に対応付けたマーカー位置情報を前記記憶部から読み出して、前記移動体に送信するステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、自律して移動する移動体の通行を効率的に管理できる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】移動体通行管理システムによる通行の管理の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて実施例を説明する。
【実施例0010】
図1は、移動体管理システムによる通行管理の説明図である。本実施例に示す移動体は、自律走行が可能なロボット30である。ロボット30が通行する対象施設である建物には、マーカー20を適宜設置している。マーカー20としては、光学的に読み取り可能な二値符号で情報を示す二次元バーコードを用いることができる。マーカー20は、マーカーを一意に特定する識別情報であるマーカーIDを情報として示す。
【0011】
建物管理サーバ60は、マーカーIDに、マーカー位置情報と、ルールと、設備利用情報とを対応付けてマーカーデータ64aとして管理する。マーカー位置情報は、マーカー20の建物における位置を示す。ルールは、マーカー20の近傍での通行に関するルールであり、例えば速度の制限や進入禁止などを示す。設備利用情報は、建物の設備、例えばエレベーターや自動ドアをロボット30が利用する際に必要な情報である。マーカー位置情報と、ルールと、設備利用情報の詳細については後述する。
【0012】
ロボット30は、周囲のマーカー20から、マーカーIDを読み取る(1)。ロボット30は、読み取ったマーカーIDを建物管理サーバ60に送信する(2)。建物管理サーバ60は、ロボット30からマーカーIDを受信すると、受信したマーカーIDに対応付けたマーカー位置、ルール、設備利用情報をマーカーデータ64aから読み出してロボット30に送信する(3)。ロボット30は、受信した情報を用いて走行を制御する。
【0013】
図2は、建物管理と移動体管理の説明図である。マーカー20の設置及び保守と、マーカーデータ64aの登録及び編集は、建物管理に属する。ロボット30の運行は、移動体管理に属する。
建物管理を行う建物管理者と、移動体管理を行う移動体管理者が異なる場合、建物管理者は、マーカー20とマーカーデータ64aの管理を行えばよく、個別移動体の運行に直接関与する必要はない。
【0014】
移動体であるロボット30は、マーカー20を介して受信したマーカー位置情報を自己の位置推定に使用する。また、ロボット30は、マーカー20を介して受信した設備利用情報を使用することで、エレベーターや自動ドアを利用することができる。ロボット30は、位置推定の結果を用い、マーカー20を介して受信したルールに従い、設備を利用しつつ走行制御する。
このように、ロボット30は、認識したマーカー20に基づいて走行制御可能であるので、移動体管理者がロボット30の運行を管理するに際し、マーカー20やマーカーデータ64aの管理に関わる必要はない。
【0015】
図3は、建物管理サーバ60の構成図である。
図4に示すように、建物管理サーバ60は、CPU(Central Processing Unit)61、メモリ62、通信部63及び記憶部64を備える。
【0016】
記憶部64は、プログラムや各種データを記憶する補助記憶装置である。記憶部64は、マーカーデータ64a、ログデータ64b等を記憶する。
マーカーデータ64aは、マーカーIDに対し、マーカー位置情報と、ルールと、設備利用情報とを対応付けたデータである。
ログデータ64bは、ロボット30からのマーカーIDの受信についての履歴であり、日時に対して、ロボット30の識別情報とマーカーIDを対応付けたデータである。
【0017】
通信部63は、ロボット30と無線通信する際に使用する通信インタフェースである。通信部63は、ロボット30からのマーカーIDの受信、ロボット30へのマーカー位置情報の送信、ロボット30へのルールの送信、ロボット30への設備利用情報の送信に用いる。
【0018】
CPU61は、記憶部64から読み出したプログラムを主記憶装置であるメモリ62に展開し、順次実行することで、マーカーデータ管理部61a、マーカーデータ提供部61b、及び履歴管理部61cの機能を実現する。
【0019】
マーカーデータ管理部61aは、マーカーデータ64aの登録や編集を行う処理部である。例えば、新規のマーカー20を建物に配置した場合には、マーカーデータ管理部61aは、マーカーデータ64aに対して新規のマーカー20のデータを登録する。また、マーカー20の位置を変更したならば、マーカーデータ管理部61aは、マーカー20のマーカー位置情報を書き換える。
【0020】
さらに、マーカー20の周辺の通行についてルールを規定するならば、マーカーデータ管理部61aは、マーカー20にルールを対応付けて登録する。同様に、マーカー20の近傍にエレベーターや自動ドアなどの設備があれば、マーカーデータ管理部61aは、マーカー20に設備利用情報を対応付けて登録する。ルールと設備利用情報は必要に応じて登録するものであり、必須ではない。また、ルールや設備に変更があれば、マーカーデータ64aを編集することで、動的に対応できる。
【0021】
マーカーデータ提供部61bは、ロボット30からマーカーIDを受信した場合に、マーカーデータ64aを参照し、受信したマーカーIDに対応付けたマーカー位置情報を読み出して、ロボット30に送信する。
また、マーカーデータ提供部61bは、ロボット30から受信したマーカーIDにルールが対応付けられている場合には、当該ルールをマーカー位置情報とともにロボット30に送信する。
同様に、マーカーデータ提供部61bは、ロボット30から受信したマーカーIDに設備利用情報が対応付けられている場合には、当該設備利用情報をマーカー位置情報とともにロボット30に送信する。
【0022】
履歴管理部61cは、ロボット30から受信したマーカーIDに、送信元のロボットIDと、受信の日時情報を対応付けて、ログデータ64bに蓄積する。このログデータ64bにより、各ロボット30が建物内でどのように移動したかを確認できる。
【0023】
図4は、ロボット30の構成図である。
図4に示すように、ロボット30は、CPU31、メモリ32、通信部33、記憶部34、駆動部35及びカメラ36を備える。
【0024】
カメラ36は、ロボット30の周囲を撮影するユニットである。
駆動部35は、ロボット30を駆動するユニットであり、車輪やモータなどを含む。
【0025】
記憶部34は、プログラムや各種データを記憶する補助記憶装置である。記憶部34は、ロボットID34a及び経路データ34bを記憶する。
ロボットID34aは、ロボット30を一意に特定する識別情報である。
経路データ34bは、ロボット30が走行する経路を示す。経路データ34bは、外部から与えられたものであってもよいし、ロボット30が地図データ等から生成したものであってもよい。
【0026】
通信部33は、建物管理サーバ60と無線通信する際に使用する通信インタフェースである。通信部33は、建物管理サーバ60へのマーカーIDの送信、建物管理サーバ60からのマーカー位置情報の受信、建物管理サーバ60からのルールの受信、建物管理サーバ60からの設備利用情報の受信に用いる。
【0027】
CPU31は、記憶部34から読み出したプログラムを主記憶装置であるメモリ32に展開し、順次実行することで、位置管理部31a、走行制御部31b、及び設備利用部31cの機能を実現する。
【0028】
位置管理部31aは、ロボット30の位置を管理する処理部である。位置管理部31aは、カメラ36の撮影した画像からマーカー20の像を抽出し、マーカー20の像からマーカーIDを読み取るとともに、マーカー座標系とカメラ座標系の相対関係を算出する。位置管理部31aは、読み取ったマーカーIDをロボットID34aとともに建物管理サーバ60に送信し、マーカー位置情報、ルール、設備利用情報を受信する。位置管理部31aは、建物管理サーバ60から受信したマーカー位置情報と、マーカー20に対する相対関係とを用い、ビル座標系におけるロボット30の位置を推定する自己位置推定を行う。
【0029】
設備利用部31cは、エレベーターや自動ドアなどの設備を利用するための各種処理を行う。具体的には、設備利用部31cは、設備利用情報によりロボット30の周辺に所在する設備の種別、位置、向きを識別する。設備利用部31cは、設備利用情報に示されたURIを用いて設備利用に必要なデータを取得する。設備利用部31cは、走行制御部31bから要求があれば、設備利用に必要なデータに基づいて、設備を利用する処理を実行する。例えば、自動ドアを利用する場合には、設備利用部31cは、自動ドアの制御装置に対して開扉を要求する。また、エレベーターを利用する場合には、設備利用部31cは、エレベーターの制御装置に対して現在のフロアまで乗カゴを呼び、目的階を設定する。
【0030】
走行制御部31bは、位置管理部31aによって推定された位置と経路データ34bに基づいて、駆動部35に動作指示を出力し、ロボット30の走行を制御する。このとき、位置管理部31aがルールを受信していれば、受信したルールを満たすよう走行を制御する。また、設備を利用する必要があれば、設備利用部31cに施設の利用を要求する。
【0031】
なお、自己位置推定は、マーカー位置情報のみに限定されず、他の情報と組み合わせて行ってもよい。また、建物内のマーカーの位置とマーカーIDとの対応関係を、建物データとして予めロボット30が保持しておいてもよい。
【0032】
建物データを予め持っている場合、走行制御部31bは、例えば、マーカー位置情報に従って走行しつつ、見えるはずのないマーカーが見えたら、自己位置推定の確信度を下げる、といった制御が可能である。自己位置推定の確信度が下がった場合、移動速度を落として自己位置推定に計算時間をかければよい。また、確信度が閾値を下回ったら、復帰行動をとることが望ましい。復帰行動では、マーカーが見える場合には、マーカー位置情報から自己位置の候補を生成し、その場での旋回等による自己位置推定を行う。マーカーが見えなければ、走行可能な一定範囲を低速で移動してマーカーを探索し、それでも見つからなければエラー停止する。なお、衝突や立ち往生が発生した場合にも走行制御部31bは復帰行動をとる。
【0033】
図5は、マーカーデータ64aの具体例の説明図である。
図5に示すように、マーカーデータ64aは、マーカーIDにマーカー位置情報、ルール及び設備利用情報を対応付けたデータである。このように、マーカーデータ64aは、マーカーIDに用途の異なる複数種類のデータを対応付けて一元管理している。
【0034】
マーカーデータ64aのマーカー位置情報は、ビルID、フロアID、マーカーサイズ、ビル座標系におけるマーカー原点の座標、ビル座標系におけるマーカーの姿勢等を含む。
ビルIDは、建物を一意に識別する識別情報である。
フロアIDは、フロアを一意に識別する識別情報である。
マーカーサイズは、マーカー20の物理的な大きさを示す。
ビル座標系におけるマーカー原点の座標は、マーカー20の基準位置である原点が、建物を基準としてどの位置にあるかを示す。
ビル座標系におけるマーカーの姿勢は、マーカー20が建物を基準としてどの方向を向いているかを、例えばクォータニオンによって示す。
【0035】
位置管理部31aは、カメラ36の撮影した画像におけるマーカー20の見え方と、マーカーサイズから、マーカー20に対するロボット30の相対的な位置を特定する。この相対的な位置に、ビル座標系におけるマーカー原点の座標と、ビル座標系におけるマーカーの姿勢とを組み合わせることで、ビル座標系におけるロボット30の相対的な位置を推定できる。
【0036】
マーカーデータ64aのルールは、速度制限、音量制限、光量制限、コマンド、コマンドエリア情報等を含む。
速度制限は、ロボット30の走行速度に対する制限を示す。
音量制限は、ロボット30が何らかの音声を発するタスクを持つ場合に、その音量に対する制限を示す。
光量制限は、ロボット30に搭載された画面やLEDの照度を落とす目的で用いる。
コマンドは、進入禁止や即時停止など、マーカー20との相対的な位置関係で指定される走行への規制である。
コマンドエリア情報は、コマンドの対象となるエリアの形状や大きさを規定する。
【0037】
マーカーデータ64aの設備利用情報は、設備種別、マーカー座標系における設備原点の座標、マーカー座標系における設備の姿勢、設備利用に必要なデータのURI等を含む。
設備種別は、たとえばエレベーターや自動ドアなどである。
マーカー座標系における設備原点の座標は、設備の基準位置である原点が、マーカー20を基準としてどの位置にあるかを示す。
マーカー座標系における設備の姿勢は、設備がマーカー20を基準としてどの方向を向いているかを、例えばクォータニオンによって示す。
設備利用に必要なデータのURIは、例えば各種設定ファイルの格納先とファイル名を示す。
【0038】
図6は、建物管理サーバ60の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図6の処理に先立って、マーカーデータ管理部61aがマーカーデータ64aを登録するステップを実行済みである。
図6の処理手順では、まず、マーカーデータ提供部61bがロボット30からマーカーIDを受信する(ステップS101)。マーカーデータ提供部61bは、受信したマーカーIDをキーとしてマーカーデータ64aを検索する(ステップS102)。
【0039】
マーカーデータ提供部61bは、検索の結果、すなわち、マーカーIDに対応するマーカー位置情報、ルール、設備利用情報をマーカーデータ64aから読み出して、ロボット30に送信する(ステップS103)。その後、履歴管理部61cが、ロボット30から受信したマーカーIDに、送信元のロボットIDと、受信の日時情報を対応付けて、ログデータ64bに蓄積し(ステップS104)、処理を終了する。
なお、ここでは、マーカーIDにルールと設備利用情報を対応付けて記憶する構成を例に説明を行っているが、マーカーに対応するルールと設備利用情報をリアルタイムで生成してもよい。具体的には、予めエリアベースでルール、設備利用情報を埋め込んだ地図データを用意し、マーカー位置情報から対応するエリアを特定し、ロボット30に送信すべきルールと設備利用情報をオンデマンド・リアルタイムに生成すればよい。
【0040】
図7は、ロボット30の走行制御に係る処理手順を示すフローチャートである。
まず、走行制御部31bは、経路データ34bを読み出す(ステップS201)。位置管理部31aは、カメラ36の撮影した画像からマーカー20を識別し(ステップS202)、マーカーIDとロボットID34aを建物管理サーバ60に送信する(ステップS203)。
【0041】
ステップS203の後、位置管理部31aは、建物管理サーバ60からマーカー位置情報、ルール、設備利用情報を受信する(ステップS204)。位置管理部31aは、建物管理サーバ60から受信したマーカー位置情報を用いて自己位置推定を行う(ステップS205)。
【0042】
走行制御部31bは、位置管理部31aによって推定された位置と経路データ34bに基づいて走行を制御する(ステップS206)。このとき、位置管理部31aがルールを受信していれば、受信したルールを満たすよう走行を制御する。設備を利用する必要があれば、設備利用部31cが施設の利用に必要な処理を実行する。
ロボット30は、ステップS201~S206を繰り返し実行する。
【0043】
上述してきたように、実施例に開示のシステムは、自律して移動する移動体であるロボット30の通行を管理する移動体通行管理システムであって、前記移動体が通行する対象施設に設置されたマーカー20を識別するマーカー識別情報に、前記マーカー20の前記対象施設における位置を示すマーカー位置情報を対応付けて格納する記憶部64と、前記移動体と通信する通信部63と、前記移動体から前記マーカー識別情報を受信した場合に、当該マーカー識別情報に対応付けたマーカー位置情報を前記記憶部から読み出して、前記移動体に送信する制御部(CPU61)とを備えたことを特徴とする。
この構成と動作により、移動体通行管理システムは、施設管理者と移動体管理者が異なる場合であっても、自律して移動する移動体の通行を効率的に管理できる。
【0044】
また、前記記憶部64は、前記マーカー識別情報に、対応するマーカーの近傍での通行に関するルールを対応付けて記憶し、前記制御部は、前記移動体から受信したマーカー識別情報に前記ルールが対応付けられている場合には、当該ルールを前記マーカー位置情報とともに前記移動体に送信する。または、エリアにルールを対応付けた地図データを参照し、マーカー位置情報に基づいて前記移動体に送信するルールを生成してもよい。
一例として、前記ルールは、速度制限、光量制限、音量制限、進入禁止、停止要求のいずれかを含む。
また、前記記憶部64は、前記ルールの適用対象となるエリアを規定するエリア情報をさらに対応付けて記憶する。
この構成と動作により、移動体通行管理システムは、マーカー20の周囲における移動体の通行を管理できる。
【0045】
また、前記記憶部64は、前記マーカー識別情報に、前記対象施設の設備を利用する際に必要な設備利用情報を対応付けて記憶し、前記制御部は、前記移動体から受信したマーカー識別情報に前記設備利用情報が対応付けられている場合には、当該設備利用情報を前記マーカー位置情報とともに前記移動体に送信する。または、エリアに設備利用情報を対応付けた地図データを参照し、マーカー位置情報に基づいて前記移動体に送信する設備利用情報を生成してもよい。
一例として、前記設備利用情報は、設備の種類と、前記マーカーを基準とした前記対象施設の位置及び向きを含む。
この構成と動作により、移動体通行管理システムは、移動体にエレベーターや自動ドアなどの設備を利用させることができる。
【0046】
また、開示のシステムでは、前記マーカー位置情報は、前記対象施設を特定する情報、前記対象施設内のフロアを特定する情報、前記対象施設を基準とした前記マーカーの位置及び向きを含む。
これらの情報の提供により、移動体の動作に直接関与することなく、移動体の通行を管理できる。
【0047】
なお、前記マーカー20は、光学的に読み取り可能な二値符号で前記マーカー識別情報を示すものを用いることができる。
この構成では、マーカー20のコストを抑制し、マーカー20の配置変更も容易である。
また、マーカー20の保守も容易である。例えば、マーカー20について専門的な知識を持たない施設管理担当者等であっても、マーカー20がなくなっていればすぐ気付くことができる。
【0048】
また、前記制御部は、前記移動体からの前記マーカー識別情報の受信について履歴を蓄積する。
この構成では、移動体の通行の履歴を後から分析できる。
【0049】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、かかる構成の削除に限らず、構成の置き換えや追加も可能である。
例えば、上記の実施例では、建物内で作業を行なうロボットを例示したが、本発明は、屋外を移動する移動体にも適用可能である。また、移動の態様も、走行に限らず、飛行、航行などであってよい。
20:マーカー、30:ロボット、31:CPU、31a:位置管理部、31b:走行制御部、31c:設備利用部、32:メモリ、33:通信部、34:記憶部、34a:ロボットID、34b:経路データ、35:駆動部、36:カメラ、60:建物管理サーバ、61:CPU、61a:マーカーデータ管理部、61b:マーカーデータ提供部、61c:履歴管理部、62:メモリ、63:通信部、64:記憶部、64a:マーカーデータ、64b:ログデータ