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特開2024-157757ストレッチ・ガーゼタオル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157757
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ストレッチ・ガーゼタオル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 27/08 20060101AFI20241031BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20241031BHJP
   D03D 15/217 20210101ALI20241031BHJP
   D03D 11/00 20060101ALI20241031BHJP
   D02G 3/26 20060101ALI20241031BHJP
   D06M 11/61 20060101ALI20241031BHJP
   D06M 101/06 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
D03D27/08
D03D1/00 Z
D03D15/217
D03D11/00 Z
D02G3/26
D06M11/61
D06M101:06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072302
(22)【出願日】2023-04-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】592186777
【氏名又は名称】株式会社カイタックホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100121784
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 稔
(72)【発明者】
【氏名】片山 正樹
(72)【発明者】
【氏名】浅野 真
【テーマコード(参考)】
4L031
4L036
4L048
【Fターム(参考)】
4L031AA02
4L031AB01
4L031BA16
4L031CA01
4L031DA01
4L036MA09
4L036MA35
4L036PA21
4L036UA01
4L048AA08
4L048AB01
4L048AB11
4L048AB12
4L048AB13
4L048BA09
4L048BA29
4L048CA04
4L048CA15
4L048DA01
4L048DA14
4L048EA00
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】従来のガーゼタオルの風合いや着心地を損なわず、ストレッチ性による更なる快適性を実現することにより、実用衣料として進化したストレッチ・ガーゼタオル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】表裏面がそれぞれガーゼ組織とループパイル組織とで構成されたガーゼタオル地のガーゼタオルを製織して、液体アンモニア処理を施す。その結果、弾性繊維を含むことなく織物幅方向にストレッチ性を有し、〔(7.35N/50mm幅)×60分〕の負荷をかけたときの伸長率の値が10%以上であり、負荷解除後24時間経過したときの伸長回復率の値が60%以上である。また、ループパイル長がガーゼ組織の表面から3mm以下であり、ループパイルを構成する綿糸の見掛けの撚り係数が2以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏面がそれぞれガーゼ組織とループパイル組織とで構成されたガーゼタオル地の綿織物であって、
弾性繊維を含むことなく織物幅方向にストレッチ性を有し、〔(7.35N/50mm幅)×60分〕の負荷をかけたときの伸長率の値が10%以上であって、負荷解除後24時間経過したときの伸長回復率の値が60%以上であることを特徴とするストレッチ・ガーゼタオル。
【請求項2】
前記ループパイル組織は、ループパイル長がガーゼ組織の表面から3mm以下であって、
当該ループパイルを構成する綿糸の見掛けの撚り係数が、2以下であることを特徴とする請求項1に記載のストレッチ・ガーゼタオル。
【請求項3】
主として綿糸からなる経糸、緯糸、及び、パイル糸を使用して、表裏面がそれぞれガーゼ組織とループパイル組織とで構成されたガーゼタオル地の綿織物を製織し、
製織後の前記綿織物に液体アンモニア処理を施して、主として当該綿織物の織物幅方向に収縮させることにより、
前記液体アンモニア処理後の前記綿織物は、弾性繊維を含むことなく織物幅方向にストレッチ性を有し、〔(7.35N/50mm幅)×60分〕の負荷をかけたときの伸長率の値が10%以上であって、負荷解除後24時間経過したときの伸長回復率の値が60%以上であることを特徴とするストレッチ・ガーゼタオルの製造方法。
【請求項4】
前記液体アンモニア処理において、前記綿織物の織物幅を13%以上収縮させることを特徴とする請求項3に記載のストレッチ・ガーゼタオルの製造方法。
【請求項5】
前記液体アンモニア処理後の前記ループパイル組織は、ループパイル長がガーゼ組織の表面から3mm以下であって、
当該ループパイルを構成する綿糸の見掛けの撚り係数が、2以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載のストレッチ・ガーゼタオルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチ・ガーゼタオル及びその製造方法に関するものである。特に、表裏綿がそれぞれループパイル組織とガーゼ組織とで構成され、ストレッチ性に優れたストレッチ・ガーゼタオル及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、目の粗い平織物であるガーゼ地を重ねた多重ガーゼ織物が普及している。多重ガーゼ織物は、吸湿性や柔軟性に富むガーゼ地を重ねて使用することから、吸湿性、通気性、軽量感、手触り、風合いがよく、使用者に快適感を与える。このことから、汗拭き用タオル、ハンカチ、ベビー用品などに使用され、更にパジャマなどの実用衣料にも使用されるようになってきた。
【0003】
また、多重ガーゼ織物においても、風合いや着用時の快適感を更に向上させるために表裏面の一方をループパイル組織としたガーゼタオルがパジャマなどの寝装品にも使用されるようになっている。
【0004】
パジャマなどの実用衣料は、着心地を重視したゆとりある縫製がなされている。ガーゼタオルをパジャマなどに使用して、パイル面を肌側にすれば風合いや着心地は確実に向上する。一方、近年の実用衣料においては、コンフォートストレッチという適度なストレッチ性が求められることが多くなっている。特に、パジャマなどは、リラックスした状態で着用し就寝時にも着用することから、ゆとりある縫製に加えて適度なストレッチ性を付加することが求められる。しかし、ガーゼタオルは、綿糸からなるパイル織物であることから弾力性に乏しくストレッチ性を有しないという問題があった。
【0005】
例えば、下記特許文献1においては、ガーゼタオルではないが伸縮性タオルを提案している。この伸縮性タオルは、タオル地を構成するパイル経糸・地経糸・地緯糸のうち、地緯糸又は地緯糸と地経糸にウレタン系弾性糸を使用し、パイル経糸に綿糸を使用するというものである。これにより、タオル地の緯方向又は経緯両方向に伸縮性を持たせるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭53-154270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のように、織地組織にウレタン系弾性糸を使用すれば、ガーゼタオルにストレッチ性を付加することもできる。しかし、ループパイル組織には綿糸を使用しても、ガーゼ組織に綿糸以外の合成繊維を使用したのでは、ガーゼタオルの特徴である風合いや着心地を低下させることになる。
【0008】
そこで、本発明は、以上のことに対処して、従来のガーゼタオルの風合いや着心地を損なわず、ストレッチ性による更なる快適性を実現することにより、実用衣料として進化したストレッチ・ガーゼタオル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、綿織物の加工法である液体アンモニア処理による柔軟性と寸法セット性(形態安定効果)に着目し、更にガーゼタオルのループパイル組織に使用する綿糸の撚り係数を工夫することにより上記目的を達成できることを見出し本発明の完成に至った。
【0010】
即ち、本発明に係るストレッチ・ガーゼタオルは、請求項1の記載によると、
表裏面がそれぞれガーゼ組織とループパイル組織とで構成されたガーゼタオル地の綿織物であって、
弾性繊維を含むことなく織物幅方向にストレッチ性を有し、〔(7.35N/50mm幅)×60分〕の負荷をかけたときの伸長率の値が10%以上であって、負荷解除後24時間経過したときの伸長回復率の値が60%以上であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、請求項2の記載によると、請求項1に記載のストレッチ・ガーゼタオルであって、
前記ループパイル組織は、ループパイル長が織地組織から3mm以下であって、
当該ループパイルを構成する綿糸の見掛けの撚り係数が、2以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るストレッチ・ガーゼタオルの製造方法は、請求項3の記載によると、
主として綿糸からなる経糸、緯糸、及び、パイル糸を使用して、表裏面がそれぞれガーゼ組織とループパイル組織とで構成されたガーゼタオル地の綿織物を製織し、
製織後の前記綿織物に液体アンモニア処理を施して、主として当該綿織物の織物幅方向に収縮させることにより、
前記液体アンモニア処理後の前記綿織物は、弾性繊維を含むことなく織物幅方向にストレッチ性を有し、〔(7.35N/50mm幅)×60分〕の負荷をかけたときの伸長率の値が10%以上であって、負荷解除後24時間経過したときの伸長回復率の値が60%以上であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、請求項4の記載によると、請求項3に記載のストレッチ・ガーゼタオルの製造方法であって、
前記液体アンモニア処理において、前記綿織物の織物幅を13%以上収縮させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、請求項5の記載によると、請求項3又は4に記載のストレッチ・ガーゼタオルの製造方法であって、
前記液体アンモニア処理後の前記ループパイル組織は、ループパイル長がガーゼ組織の表面から3mm以下であって、
当該ループパイルを構成する綿糸の見掛けの撚り係数が、2以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記構成によれば、本発明に係るストレッチ・ガーゼタオルは、表裏面がそれぞれガーゼ組織とループパイル組織とで構成されたガーゼタオル地の綿織物である。また、弾性繊維を含むことなく織物幅方向にストレッチ性を有し、〔(7.35N/50mm幅)×60分〕の負荷をかけたときの伸長率の値が10%以上である。また、負荷解除後24時間経過したときの伸長回復率の値が60%以上である。
【0016】
このことにより、従来のガーゼタオルの風合いや着心地を損なわず、ストレッチ性による更なる快適性を実現することにより、実用衣料として進化したストレッチ・ガーゼタオルを提供することができる。
【0017】
また、上記構成によれば、ループパイル組織は、ループパイル長がガーゼ組織の表面から3mm以下であって、当該ループパイルを構成する綿糸の見掛けの撚り係数が、2以下である。このことにより、上記作用効果をより具体的に、より効果的に発揮することができる。
【0018】
また、上記構成によれば、本発明に係るストレッチ・ガーゼタオルの製造方法は、主として綿糸からなる経糸、緯糸、及び、パイル糸を使用して、表裏面がそれぞれガーゼ組織とループパイル組織とで構成されたガーゼタオル地の綿織物を製織する。次に、製織後の綿織物に液体アンモニア処理を施して、主として当該綿織物の織物幅方向に収縮させる。このことにより、液体アンモニア処理後の綿織物は、弾性繊維を含むことなく織物幅方向にストレッチ性を有し、〔(7.35N/50mm幅)×60分〕の負荷をかけたときの伸長率の値が10%以上である。また、負荷解除後24時間経過したときの伸長回復率の値が60%以上である。
【0019】
このことにより、従来のガーゼタオルの風合いや着心地を損なわず、ストレッチ性による更なる快適性を実現することにより、実用衣料として進化したストレッチ・ガーゼタオルの製造方法を提供することができる。
【0020】
また、上記構成によれば、液体アンモニア処理において、綿織物の織物幅を13%以上収縮させることが好ましい。また、液体アンモニア処理後のループパイル組織は、ループパイル長がガーゼ組織の表面から3mm以下であって、当該ループパイルを構成する綿糸の見掛けの撚り係数が、2以下であることが好ましい。このことにより、上記作用効果をより具体的に、より効果的に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例に係るストレッチ・ガーゼタオルの1日目~5日目までの伸長率(%)の値を示すグラフである。
図2】実施例に係るストレッチ・ガーゼタオルの1日目~5日目までの伸長回復率(%)の値を示すグラフである。
図3】実施例に係るストレッチ・ガーゼタオルと比較例のモニター試験結果(着心地の良さの総合評価)を示すグラフである。
図4】実施例に係るストレッチ・ガーゼタオルと比較例のモニター試験結果(足を上げたときの着心地)を示すグラフと試験状態を示す写真である。
図5】実施例に係るストレッチ・ガーゼタオルと比較例のモニター試験結果(しゃがんだときの着心地)を示すグラフと試験状態を示す写真である。
図6】実施例に係るストレッチ・ガーゼタオルと比較例のモニター試験結果(体を丸めたときの着心地)を示すグラフと試験状態を示す写真である。
図7】実施例に係るストレッチ・ガーゼタオルと比較例のモニター試験結果(腕を上げたときの着心地)を示すグラフと試験状態を示す写真である。
図8】実施例に係るストレッチ・ガーゼタオル、比較例のガーゼタオル及び通常のハンドタオルの手触りをアンケート調査した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明に使用する用語について説明する。本発明において、ガーゼタオルとは、ガーゼ組織とタオル組織(ループパイル組織)を組み合わせた織物を意味し、表裏面の一方がガーゼ組織で他方がタオル組織を意味している。つまり、ガーゼタオルの織地組織がガーゼ織物であって、この織地組織の一方の面にループパイルを有するタオル織物を構成する。一般には、ガーゼ織物とは、甘撚り糸による粗い平織の柔らかい薄地綿織物と定義され、また、タオル織物とは、布面に大きなパイルを表した綿の経パイル織物、経二重織物の一つと定義される(新・繊維総合辞典;繊研新聞社)。なお、本発明においては、これらの定義に拘るものではなく、ガーゼ組織とタオル組織(ループパイル組織)を組み合わせた織物をガーゼタオルとして広く解釈する。
【0023】
本発明においては、主として綿糸からなる経糸、緯糸、及び、パイル糸を使用して、表裏面がそれぞれガーゼ組織とループパイル組織とで構成されたガーゼタオル地の綿織物(経パイル織物)を製織する。また、経糸、緯糸、及び、パイル糸は、一般のガーゼ織物のように綿100%に限定するものではなく、綿を主体とする糸を使用することができる。但し、後述の液体アンモニア処理を行うことから、この処理で効果を発揮しやすいことが要求される。従って、本発明においては、経糸、緯糸、及び、パイル糸に綿100%の糸を使用することが特に好ましい。
【0024】
また、従来のガーゼタオルのループパイル長は、ガーゼ組織の表面から4mm以上である。これに対して、本発明においては、ループパイル長が3mm以下であることが好ましい。また、2.5mm以下であることがより好ましく、2mm以下であることが更に好ましい。ループパイルを短くして、風合いの良好なタオル地を構成する。また、ループパイルを構成するパイル糸は、綿100%の糸であって無撚糸又は極甘撚糸を使用することが好ましい。
【0025】
糸の撚りは、撚り係数で表される。撚り係数とは、糸の太さに関係なく、撚りの効果(糸の締まり具合)を示す係数である。綿糸の場合には、撚り係数αは「α=撚り数/√N」で表される。ここで、撚り数は「回数/インチ」、Nは「恒重式番手」である。糸の太さ(番手)に関係なく、一般に、α=3.3以下を甘撚り、α=3.5~4.5を普通撚り、それ以上の撚り係数を強撚という(なぜ木綿「綿製品の商品知識」;日本綿業振興会)。
【0026】
なお、本発明においては、ストレッチ性を付与するために製織後のガーゼタオルに液体アンモニア処理を施して織物幅方向に収縮させる。従って、ガーゼタオルの緯糸及びパイル糸は、液体アンモニア処理により収縮して、製織後の糸の段階より糸の太さ(番手N)も撚り係数(α)も変化する。そこで、本発明においては、液体アンモニア処理後の収縮した糸の太さを「見掛けの番手」といい、撚り係数を「見掛けの撚り係数」ということとする。なお、本発明における各織物の撚り係数及び見掛けの撚り係数については後述する。
【0027】
本発明においては、ガーゼタオルの風合いや着心地に特に影響するループパイルの長さと撚り係数(収縮後の見掛けの撚り係数)が重要である。ループパイルの長さについては、上述のように、ループパイル長が3mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましい。一方、パイル糸は、上述のように、綿100%の糸であって無撚糸又は極甘撚糸を使用することが好ましいとした。そこで、液体アンモニア処理後の収縮したパイル糸の見掛けの撚り係数は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。このことから、製織段階で収縮前のパイル糸の撚り係数は、1.5以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。
【0028】
しかし、パイル糸の撚り係数を小さくすると、ガーゼタオルを製織することができない。これは、織機からパイル糸にかかる糸張力が大きく、製織段階でパイル糸が切れて製織できなくなるからである。そこで、製織段階で糸の引張強度を強くする工夫がなされる。本発明においては、綿の単糸(撚りが掛かっている)と水溶性PVA(ポリビニルアルコール)のフィラメントとを合わせ、単糸の撚りと反対方向に撚り合わせて双糸にする。単糸の撚り数だけ撚り戻せば、単糸の撚りはゼロになる。この綿と水溶性PVAの双糸を使ってガーゼタオルを製織し、その後に水溶性PVAを溶かせば、綿の無撚糸又は極甘撚糸のループパイルができる。なお、本発明においては、無撚糸又は極甘撚糸の製造方法を上記方法に限定するものではなく、特殊な精紡機で無撚糸又は極甘撚糸製造するようにしてもよい。
【0029】
また、本発明において、液体アンモニア処理とは、一般に綿織物の加工法として行われるものであって、綿織物を液体アンモニア(沸点:-33.4℃)に短時間浸漬した後、130℃前後に加熱したシリンダーに接触させてアンモニアを除去する処理である。一般に、綿織物の防皺性、防縮性、強度、柔軟性が向上する。なお、本発明においては、ガーゼタオルを織物幅方向に13%以上収縮させることが好ましい。また、15%以上収縮させることがより好ましく、18%以上収縮させることが更に好ましい(詳細は後述する)。ガーゼタオルを織物幅方向に13%以上収縮させることにより、実用的で快適なストレッチ性を発現することができる。
【0030】
以下、本発明に係るストレッチ・ガーゼタオルを実施例により説明する。また、本実施例と同じ構成で製織し、液体アンモニア処理をしていないガーゼタオル(ストレッチ性なし)を比較例として本実施例のストレッチ・ガーゼタオルと比較した。なお、本発明は下記の実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例0031】
≪ガーゼタオルの製織≫
本実施例に係るストレッチ・ガーゼタオルを製造するためには、まず通常の方法でガーゼタオルを製織する。ガーゼタオルの製織には、経糸開口装置付きのジャカード織機、ドビー織機、タペット織機などの各種織機を使用することができる。なお、本実施例においては、ドビー織機により製織した。
【0032】
また、本実施例においては、経糸、緯糸、及び、パイル糸には、綿100%の先染糸を使用したが、先染めに限定するものではなく、製織後に染色するようにしてもよい。経糸及び緯糸は、糸の番手を特に限定するものではないが、30~60番手の単糸又は双糸を使用することが好ましい。なお、本実施例においては、経糸に太さ40番手相当の80番手双子(80/2)、緯糸に40番手単糸(40/1)を使用した。撚り係数は、特に限定するものではなく、経糸及び緯糸には普通撚りの糸を使用した。また、パイル糸は、30~60番手の単糸であって、製織段階の撚り係数が1.5以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。なお、本実施例においては、綿40番手単糸(40/1)で撚り係数が0.948(撚り数:6回/インチ)の綿糸と水溶性PVAとの双糸を使用した。一方、比較例のガーゼタオルは、本実施例と同様の経糸及び緯糸を使用したが、パイル糸には綿40番手単糸(40/1)の普通撚りの糸を使用した。
【0033】
製織段階のガーゼタオルの経緯糸密度は、特に限定するものではないが、通気性、軽量感、手触り、風合いなどの観点から調整すればよい。例えば、経糸密度は、40~60本/インチとすることが好ましい。一方、緯糸密度は、70~90本/インチとすることが好ましい。このように、経糸密度に比べ緯糸密度を大きくするのは、パイル組織によるものである。なお、本実施例における製織段階では、経糸密度は50本/インチ、緯糸密度は79本/インチ、パイル糸密度は25本/インチとして製織した。また、本実施例においては、ループパイル長をガーゼ組織の表面から2mmとして製織した。一方、比較例のガーゼタオルの経糸密度、緯糸密度、パイル糸密度、及びループパイル長は、本実施例と同様とした。
【0034】
≪パイル糸のPVA溶解≫
製織後のガーゼタオルのループパイルは、未だ綿と水溶性PVAとの双糸の状態である。そこで、製織後のガーゼタオルを高温の湯で洗浄して水溶性PVAを溶解し、綿100%のループパイルとした。その後、乾燥して所定の織物幅に幅出しを行い、次工程の液体アンモニア処理を行う。一方、比較例のガーゼタオルは、パイル糸に普通撚りの綿糸(水溶性PVAを含まない)を使用したのでPVA溶解は行わず、通常の糊抜き・乾燥後、柔軟剤を付与して所定の織物幅に幅出しを行った。
【0035】
≪液体アンモニア処理≫
本実施例においては、一般的な液体アンモニア処理装置を使用することができる。通常、液体アンモニア処理装置は、織物を液体アンモニアに浸漬する浸漬装置、液体アンモニアの浸透と反応を促進するタイミング装置、液体アンモニアを蒸発させる乾燥装置、及び、残留アンモニアを除去するスチーミング装置で構成され、織物を走行させて連続的に処理する。
【0036】
本実施例に係るガーゼタオルは、液体アンモニアを吸収すると急激に収縮する。液体アンモニア処理装置内を連続走行するガーゼタオルは、織物の長さ方向(経糸方向)にはテンション(張力)が掛かり、経糸の収縮が抑えられる。一方、織物幅方向(緯糸方向)にはテンションが掛からず、緯糸が大きく収縮する。また、ループパイルにも、テンションが掛からず収縮する。液体アンモニア除去後のガーゼタオルは、織物幅が大きく収縮した状態で形状を記憶する。液体アンモニア処理後のガーゼタオルは、水洗・乾燥後、柔軟剤を付与して所定の幅に幅出ししてストレッチ・ガーゼタオルを得た。
【0037】
なお、本実施例においては、液体アンモニア除去後のストレッチ・ガーゼタオルは、経糸密度64本/インチ、緯糸密度81本/インチ、パイル糸密度は32本/インチであった。このことから、ストレッチ・ガーゼタオルは、液体アンモニア処理によって、織物の長さ方向(経糸方向)には殆ど収縮せず(約2%収縮)、織物幅方向(緯糸方向)に21%収縮したこととなる。
【0038】
このように、ガーゼタオルの経糸が殆ど収縮せず、緯糸のみが大きく収縮する。このことにより、液体アンモニア処理後のストレッチ・ガーゼタオルの経糸の番手と撚り係数は殆ど変化しない。これに対して、緯糸の番手は大きく(太く)なり、撚り係数も大きく(糸が締まる)なって、強撚糸のようにストレッチ性を発現するようになる。なお、パイル糸も緯糸と同様に収縮する(特にループパイル部分)。そのため、本発明においては、パイル糸に無撚糸又は極甘撚糸を使用する。このことで、パイル糸の撚り係数が大きくなっても締まった糸にならず、ループパイルが柔軟性を維持するように構成している。
【0039】
なお、液体アンモニア処理装置に導入するガーゼタオルの走行条件等を制御して、所定の織物幅に固定することが好ましい。本実施例においては、上述のように、織物幅が21%収縮した。その結果、後述するように、伸長率の値が10%以上、伸長回復率の値が60%以上と良好な結果となった。
【0040】
また、本発明においては、ガーゼタオルを織物幅方向に収縮させるために液体アンモニア処理を採用する。綿織物を収縮させるには、液体アンモニア以外にも高濃度の水酸化ナトリウム水溶液を使用するシルケット処理などがある。しかし、液体アンモニア処理は、シルケット処理などに比べ処理後の織物の柔軟性と収縮状態の形態安定効果が大きく、本発明の目的である柔軟性とストレッチ性による快適な着心地を実現することができる。
【0041】
≪物性評価≫
次に、本実施例で得られたストレッチ・ガーゼタオルの物性を評価した。評価項目として、パイル糸の見掛けの番手及び見掛けの撚り係数を算出した。次に、ストレッチ性を評価するために、定荷重時の伸長弾性率(伸長率と伸長回復率)を評価した。また、パジャマ用途(ループパイルを肌側に使用)としての着心地をモニター試験で評価した。なお、パジャマ用途の諸物性(吸水性、保温性、通気性)についても確認した。
【0042】
1.見掛けの番手及び見掛けの撚り係数
まず、液体アンモニア処理後の経糸、緯糸、パイル糸の見掛けの番手(収縮後)を算出した。なお、パイル糸に関しては、見掛けの撚り係数(収縮後)も算出した。上述のように、本実施例においては、液体アンモニア処理によって、織物の長さ方向(経糸方向)には殆ど収縮せず(約2%収縮)、織物幅方向(緯糸方向)に21%収縮した。そこで、緯糸の重量(単位長さ当たりの重量)が21%増加したものとして見掛けの番手を算出した。また、パイル糸の撚り数(回数/インチ)も21%増加したものとして、撚り係数の式「α=撚り数/√N」から見掛けの撚り係数を算出した。経糸、緯糸、パイル糸の収縮前の番手と見掛けの番手、及び、パイル糸の収縮前の撚り係数と見掛けの撚り係数を表1に示す。なお、パイル糸も21%収縮したので、液体アンモニア処理後のループパイル長は、約1.6mmとなった。
【0043】
【表1】
【0044】
表1において、パイル糸が21%収縮したことにより見掛けの番手が若干太くなっている。また、パイル糸の21%増加した撚り数(7.26回/インチ)と見掛けの番手(32番手)を使用して算出したパイル糸の見掛けの撚り係数は、2以下でありループパイルの柔軟性が維持されていることが分かる。
【0045】
2.伸長弾性率(伸長率と伸長回復率)
本実施例は、パジャマ用途のストレッチ・ガーゼタオルに関するものでることから、軽量織物に対する適度なストレッチ性を評価するオリジナル試験法(一般財団法人ボーケン品質評価機構による)を採用した。
【0046】
伸長率の試験法は、JIS L 1096(B-1法)に基づいた方法であって、荷重と時間を変更したものである。具体的には、幅50mm×長さ300mmの試験片を引張試験機にセット後、間隔200mm(L0)に印を付け、所定荷重(7.35N/50mm幅)で60分保持後の印間の長さ(L1)を測定し、下記の式(1)にて

伸長率(%)=〔(L1-L0)/L0〕×100・・・・・(1)

伸長率(%)の値を求めた。また、上記試験を1日目の試験とし、同一の試験片にて2日目~5日目までの伸長率(%)の値を求めた。得られた本実施例と比較例の1日目~5日目までの伸長率(%)の値を表2に示す。また、これらの値をグラフにして図1に示す。なお、図1には、6日目~8日目までの予測(仮想値)も示している。
【0047】
一方、伸長回復率の試験法は、上記伸長率の試験片において負荷解除後24時間経過したときに、初荷重を加えて印間の長さ(L2)を測定し、下記の式(2)にて

伸長回復率(%)=〔(L1-L2)/(L1-L0〕×100・・・・・(2)

伸長回復率(%)の値を求めた。また、上記試験を1日目の試験とし、同一の試験片にて2日目~5日目までの伸長回復率(%)の値を求めた。得られた本実施例と比較例の1日目~5日目までの伸長回復率(%)の値を表2に示す。また、これらの値をグラフにして図2に示す。なお、図2には、6日目~8日目までの予測(仮想値)も示している。
【0048】
【表2】
【0049】
表2及び図1において、実施例は、1日目~5日目までの伸長率(%)の値が全て13%以上であって5日間に亘って10%以上の安定で良好なストレッチ性を示した。これに対して、比較例は、1日目~5日目までの伸長率(%)の値が全て4%程度であってストレッチ性を有しておらず通常の綿織物としての値である。また、表2及び図2において、実施例は、1日目~5日目までの伸長回復率(%)の値が全て63%以上であって5日間に亘って60%以上の安定で良好な結果を得た。これに対して、比較例は、1日目~5日目までの伸長回復率(%)の値が全て60%以上となっているが、これは伸長率の値が4%程度であることから通常の綿織物としての値である。これらの結果から、本実施例に係るストレッチ・ガーゼタオルは、安定で良好なストレッチ性を有していた。
【0050】
3.着心地(モニター試験)
次に、本実施例に係るストレッチ・ガーゼタオルを実際にパジャマに縫製して着心地に関するモニター試験を実施した。具体的には、5名のモニターにより、着心地の良さ(総合評価)、及び、各項目(足を上げたときの着心地、しゃがんだときの着心地、体を丸めたときの着心地、腕を上げたときの着心地)について評価した。また、比較例についてもパジャマに縫製して同様に評価した。本実施例及び比較例の評価結果を表3に示す。また、これらの評価結果をグラフにして図3図7に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
表3及び図3図7において、5名のモニター全員が全ての評価項目において本実施例に係るストレッチ・ガーゼタオルを縫製したパジャマの着心地を満点評価した。なお、比較例も従来の着心地良好なパジャマとして市場で評価されているものである。これらのことから、本実施例に係るストレッチ・ガーゼタオルを縫製したパジャマの着心地は、市場で高く評価されている従来品(比較例)よりも更に高く評価されたことが分かる。
【0053】
4.手触り(アンケート)
次に、本実施例に係るストレッチ・ガーゼタオルの手触りを比較例のガーゼタオル及び通常のハンドタオルの手触りと比較するアンケート調査を実施した。具体的には、無作為に選んだ男女各20名に上記3点のうち最も手触りが良いものはどれかをアンケートした。アンケート結果を表4及び図8に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
表4及び図8において、男女ともに本実施例に係るストレッチ・ガーゼタオルの手触りが最もよいと評価する人が非常に多かった。なお、比較例も市場で評価されているガーゼタオルであり評価された。このことから、本実施例に係るストレッチ・ガーゼタオルの手触りは、市場で高く評価されている従来品(比較例)よりも更によく、通常のハンドタオルに比べて非常に高く評価されたことが分かる。
【0056】
5.パジャマ用途の諸物性
本実施例のストレッチ・ガーゼタオルについて、吸水性、保温性、通気性を評価し、比較例のガーゼタオル及び通常織物(綿ツイル、綿ブロード)と比較した。その評価結果を表4に示す。
【0057】
【表5】
【0058】
表4において、本実施例に係るストレッチ・ガーゼタオルの諸物性は、パジャマ用途として良好なものであった。また、比較例も従来の着心地良好なパジャマとして市場で評価されているものであり、パジャマ用途として良好なものであった。表4において、本実施例と比較例は、共にパジャマ用途として綿ツイルや綿ブロードなどの通常織物に比べて良好な性能を持つことが分かる。
【0059】
これまで説明したように、本発明によれば、従来のガーゼタオルの風合いや着心地を損なわず、ストレッチ性による更なる快適性を実現することにより、実用衣料として進化したストレッチ・ガーゼタオル及びその製造方法を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏面がそれぞれガーゼ組織とループパイル組織とで構成されたガーゼタオル地の綿織物であって、
前記ガーゼ組織は、30~60番手の綿の単糸又は双糸からなる経糸と、30~60番手の綿の単糸又は双糸が糸の長さ方向に収縮した緯糸とから構成され、
前記ループパイル組織は、30~60番手の綿の単糸が糸の長さ方向に収縮したパイル糸から構成され、ループパイル長が前記ガーゼ組織の表面から3mm以下であり、当該パイル糸の見掛けの撚り係数が、2以下であり、
弾性繊維を含むことなく織物幅方向にストレッチ性を有し、〔(7.35N/50mm幅)×60分〕の負荷をかけたときの伸長率の値が10%以上であって、負荷解除後24時間経過したときの伸長回復率の値が60%以上であることを特徴とするストレッチ・ガーゼタオル。
【請求項2】
表裏面がそれぞれ、30~60番手の綿の単糸又は双糸からなる経糸を経糸密度40~60本/インチとし、30~60番手の綿の単糸又は双糸からなる緯糸を緯糸密度70~90本/インチとして構成されたガーゼ組織と、主として綿の単糸からなるパイル糸から構成されたループパイル組織とで構成されたガーゼタオル地の綿織物を製織し、
製織後の前記綿織物に経糸方向のテンションを掛けた状態で緯糸方向に収縮するように制御した液体アンモニア処理を施して、主として当該綿織物の織物幅方向に収縮させることにより、
前記液体アンモニア処理後の前記綿織物は、弾性繊維を含むことなく織物幅方向にストレッチ性を有し、〔(7.35N/50mm幅)×60分〕の負荷をかけたときの伸長率の値が10%以上であって、負荷解除後24時間経過したときの伸長回復率の値が60%以上であることを特徴とするストレッチ・ガーゼタオルの製造方法。
【請求項3】
前記パイル糸は、30~60番手で撚り係数が1.5以下の綿の単糸と水溶性PVAとの双糸からなり、
前記液体アンモニア処理の前に、前記綿織物を高温洗浄して前記水溶性PVAを溶解して綿100%のループパイルとすることを特徴とする請求項2に記載のストレッチ・ガーゼタオルの製造方法。
【請求項4】
前記液体アンモニア処理において、前記綿織物の織物幅を13%以上収縮させることを特徴とする請求項に記載のストレッチ・ガーゼタオルの製造方法。
【請求項5】
前記液体アンモニア処理後の前記ループパイル組織は、ループパイル長がガーゼ組織の表面から3mm以下であって、
当該ループパイルを構成する綿糸の見掛けの撚り係数が、2以下であることを特徴とする請求項2~4のいずれか1つに記載のストレッチ・ガーゼタオルの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
即ち、本発明に係るストレッチ・ガーゼタオルは、請求項1の記載によると、
表裏面がそれぞれガーゼ組織とループパイル組織とで構成されたガーゼタオル地の綿織物であって、
前記ガーゼ組織は、30~60番手の綿の単糸又は双糸からなる経糸と、30~60番手の綿の単糸又は双糸が糸の長さ方向に収縮した緯糸とから構成され、
前記ループパイル組織は、30~60番手の綿の単糸が糸の長さ方向に収縮したパイル糸から構成され、ループパイル長が前記ガーゼ組織の表面から3mm以下であり、当該パイル糸の見掛けの撚り係数が、2以下であり、
弾性繊維を含むことなく織物幅方向にストレッチ性を有し、〔(7.35N/50mm幅)×60分〕の負荷をかけたときの伸長率の値が10%以上であって、負荷解除後24時間経過したときの伸長回復率の値が60%以上であることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
また、本発明に係るストレッチ・ガーゼタオルの製造方法は、請求項の記載によると、
表裏面がそれぞれ、30~60番手の綿の単糸又は双糸からなる経糸を経糸密度40~60本/インチとし、30~60番手の綿の単糸又は双糸からなる緯糸を緯糸密度70~90本/インチとして構成されたガーゼ組織と、主として綿の単糸からなるパイル糸から構成されたループパイル組織とで構成されたガーゼタオル地の綿織物を製織し、
製織後の前記綿織物に経糸方向のテンションを掛けた状態で緯糸方向に収縮するように制御した液体アンモニア処理を施して、主として当該綿織物の織物幅方向に収縮させることにより、
前記液体アンモニア処理後の前記綿織物は、弾性繊維を含むことなく織物幅方向にストレッチ性を有し、〔(7.35N/50mm幅)×60分〕の負荷をかけたときの伸長率の値が10%以上であって、負荷解除後24時間経過したときの伸長回復率の値が60%以上であることを特徴とする。
また、本発明は、請求項3の記載によると、請求項2に記載のストレッチ・ガーゼタオルの製造方法であって、
前記パイル糸は、30~60番手で撚り係数が1.5以下の綿の単糸と水溶性PVAとの双糸からなり、
前記液体アンモニア処理の前に、前記綿織物を高温洗浄して前記水溶性PVAを溶解して綿100%のループパイルとすることを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
また、本発明は、請求項4の記載によると、請求項に記載のストレッチ・ガーゼタオルの製造方法であって、
前記液体アンモニア処理において、前記綿織物の織物幅を13%以上収縮させることを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
また、本発明は、請求項5の記載によると、2~4のいずれか1つに記載のストレッチ・ガーゼタオルの製造方法であって、
前記液体アンモニア処理後の前記ループパイル組織は、ループパイル長がガーゼ組織の表面から3mm以下であって、
当該ループパイルを構成する綿糸の見掛けの撚り係数が、2以下であることを特徴とする。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
上記構成によれば、本発明に係るストレッチ・ガーゼタオルは、表裏面がそれぞれガーゼ組織とループパイル組織とで構成されたガーゼタオル地の綿織物である。また、ガーゼ組織は、30~60番手の綿の単糸又は双糸からなる経糸と、30~60番手の綿の単糸又は双糸が糸の長さ方向に収縮した緯糸とから構成されている。ループパイル組織は、30~60番手の綿の単糸が糸の長さ方向に収縮したパイル糸から構成され、ループパイル長がガーゼ組織の表面から3mm以下であり、当該パイル糸の見掛けの撚り係数が、2以下である。また、弾性繊維を含むことなく織物幅方向にストレッチ性を有し、〔(7.35N/50mm幅)×60分〕の負荷をかけたときの伸長率の値が10%以上である。また、負荷解除後24時間経過したときの伸長回復率の値が60%以上である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
また、上記構成によれば、本発明に係るストレッチ・ガーゼタオルの製造方法は、表裏面がそれぞれ、30~60番手の綿の単糸又は双糸からなる経糸を経糸密度40~60本/インチとし、30~60番手の綿の単糸又は双糸からなる緯糸を緯糸密度70~90本/インチとして構成されたガーゼ組織と、主として綿の単糸からなるパイル糸から構成されたループパイル組織とで構成されたガーゼタオル地の綿織物を製織する。次に、製織後の前記綿織物に経糸方向のテンションを掛けた状態で緯糸方向に収縮するように制御した液体アンモニア処理を施して、主として当該綿織物の織物幅方向に収縮させる。このことにより、液体アンモニア処理後の綿織物は、弾性繊維を含むことなく織物幅方向にストレッチ性を有し、〔(7.35N/50mm幅)×60分〕の負荷をかけたときの伸長率の値が10%以上である。また、負荷解除後24時間経過したときの伸長回復率の値が60%以上である。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
また、上記構成によれば、パイル糸は、30~60番手で撚り係数が1.5以下の綿の単糸と水溶性PVAとの双糸からなるものであってもよい。この場合には、液体アンモニア処理の前に、綿織物を高温洗浄して前記水溶性PVAを溶解して綿100%のループパイルとする。また、液体アンモニア処理において、綿織物の織物幅を13%以上収縮させることが好ましい。また、液体アンモニア処理後のループパイル組織は、ループパイル長がガーゼ組織の表面から3mm以下であって、当該ループパイルを構成する綿糸の見掛けの撚り係数が、2以下であることが好ましい。このことにより、上記作用効果をより具体的に、より効果的に発揮することができる。