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特開2024-157758デジタルアナログ変換器、データドライバ及び表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157758
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】デジタルアナログ変換器、データドライバ及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/74 20060101AFI20241031BHJP
   G09G 3/36 20060101ALI20241031BHJP
   G09G 3/3275 20160101ALI20241031BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H03M1/74
G09G3/36
G09G3/3275
G09G3/20 623F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072303
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土 弘
【テーマコード(参考)】
5C006
5C080
5C380
5J022
【Fターム(参考)】
5C006AF83
5C006BB15
5C006BC12
5C006BF03
5C006BF04
5C006BF25
5C006BF34
5C006BF46
5C006FA41
5C080AA06
5C080AA10
5C080BB05
5C080CC03
5C080DD22
5C080GG11
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ05
5C380AA01
5C380AB06
5C380AB32
5C380BA11
5C380CA04
5C380CA12
5C380CA16
5C380CA32
5C380CE04
5C380CF07
5C380CF09
5C380CF26
5C380CF28
5C380CF36
5C380CF48
5J022AB06
5J022BA06
5J022CB02
5J022CB04
5J022CB07
5J022CD03
5J022CE08
5J022CE09
5J022CF02
5J022CF04
5J022CF05
5J022CF07
5J022CF09
5J022CG01
5J022CG04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】回路面積の増大を抑えて、電源電圧の全範囲で動作可能なデジタルアナログ変換回路、表示ドライバ及び表示装置を提供する。
【解決手段】DA変換器100_1は、デジタルデータDTに基づき、参照電圧V0~VRから、電圧VA、VBをN個に分割した複数の電圧値のうちの1の出力電圧信号Voutを生成する差動増幅回路10_1を有する。差動増幅回路10_1は、夫々が電圧VI_N~VI_1に対応した電流をノードn11に流すと共に、出力電圧信号Voutに対応した電流をノードn12に流す第1導電型の差動段11_N~11_1、デジタルデータの値が所定範囲に含まれる場合に電圧VAとVBのうちの一方の電圧に対応した電流をノードn21に流すと共に出力電圧信号Voutに対応した電流をノードn22に流す第2導電型の差動段12_1及びノードn11~n22の電流に基づき出力電圧信号Voutを生成する出力増幅段15を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルデータをアナログの出力電圧信号に変換するデジタルアナログ変換器であって、
前記デジタルデータに基づき、複数の参照電圧のうちから重複を含む2つの電圧を第1の電圧及び第2の電圧として選択するデコーダと、
前記第1の電圧及び前記第2の電圧間をN(Nは2のべき乗で表される自然数)個に分割した電圧値各々のうちから前記デジタルデータに対応した1の電圧値を有する信号を前記出力電圧信号として出力する差動増幅回路と、を含み、
前記差動増幅回路は、
夫々が、自身の非反転入力端で前記第1の電圧又は前記第2の電圧を受けて前記第1の電圧又は前記第2の電圧に対応した差動電流を第1のノードに流すと共に、自身の反転入力端で前記出力電圧信号を受けて前記出力電圧信号に対応した差動電流を第2のノードに流す第1導電型の第1~第Nの差動段と、
自身の非反転入力端で前記第1の電圧及び前記第2の電圧のうちの一方の電圧を受けると共に自身の反転入力端で前記出力電圧信号を受け、前記デジタルデータにて示されるデジタル値が所定範囲に含まれる場合に活性状態となって自身の非反転入力端で受けた前記一方の電圧に対応した差動電流を第3のノードに流すと共に自身の反転入力端子で受けた前記出力電圧信号に対応した差動電流を第4のノードに流す単一の第2導電型の差動段と、
前記第1のノード及び前記第2のノードに夫々流れる差動電流同士の差分、又は前記第3のノード及び前記第4のノードに夫々流れる差動電流同士の差分に対応した出力電流を出力端子に流すことで前記出力端子に生じた電圧を前記出力電圧信号として出力する出力増幅段と、を有することを特徴とするデジタルアナログ変換器。
【請求項2】
前記デジタルデータにて示されるデジタル値が前記所定範囲に含まれる場合には活性化を指示し、前記デジタル値が前記所定範囲に含まれない場合には非活性化を指示する制御信号を前記第2導電型の差動段に供給する差動段制御回路を含み、
前記第2導電型の差動段は、前記活性化を指示する前記制御信号を受けた場合に前記活性状態となる一方、前記非活性化を指示する前記制御信号を受けた場合には非活性状態となり前記第3のノード及び前記第4のノードに流す電流を停止することを特徴とする請求項1に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項3】
前記第1導電型の第1~第Nの差動段の各々は、自身の前記非反転入力端及び自身の前記反転入力端を夫々担うゲートを有する一対の第1導電型のトランジスタを含み、
前記所定範囲は、前記デジタルデータのデジタル値に基づき前記デコーダが選択する前記第1の電圧及び前記第2の電圧のうちの少なくとも一方の電圧の電圧値が前記第1導電型のトランジスタの閾値電圧未満となる、前記デジタルデータのデジタル値の範囲であることを特徴とする請求項2に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項4】
前記出力電圧信号による電圧の範囲は、前記所定範囲に対応した電圧範囲からなる第1の区間と、
前記第1の区間に隣接する第2の区間と、を含み、
前記第2の区間では、前記第2導電型の差動段は非活性状態となり、前記第1導電型の第1~第Nの差動段の動作によって前記出力電圧信号が生成され、
前記第1の区間では、前記第2導電型の差動段が活性状態となり、前記第2導電型の差動段の動作によって前記出力電圧信号が生成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項5】
前記第2導電型の差動段は、
第2導電型の第1及び第2のトランジスタと、
電流源と、
前記制御信号が前記活性化を指示する場合にはオン状態となって前記電流源と前記第1及び第2のトランジスタ各々のソースとを接続する一方、前記制御信号が前記非活性化を指示する場合にはオフ状態となって前記電流源と前記第1及び第2のトランジスタ各々のソースとの接続を遮断するスイッチ素子と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項6】
前記第2導電型の差動段は、
第2導電型の第1及び第2のトランジスタと、
前記第1及び第2のトランジスタ各々のソースに接続されている電流源と、
前記第1のトランジスタのドレイン及び前記第3のノード間に接続されている第1のスイッチ素子と、
前記第2のトランジスタのドレイン及び前記第4のノード間に接続されている第2のスイッチ素子と、を有し、
前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子は、前記制御信号が前記活性化を指示する場合には共にオン状態となって、前記第1のトランジスタのドレインと前記第3のノードとを接続すると共に前記第2のトランジスタのドレインと前記第4のノードとを接続する一方、前記制御信号が前記非活性化を指示する場合には共にオフ状態となって、前記第1のトランジスタのドレインと前記第3のノードとの接続及び前記第2のトランジスタのドレインと前記第4のノードとの接続を共に遮断することを特徴とする請求項2に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項7】
前記第2導電型の差動段は、
自身の前記反転入力端子及び前記出力端子間に接続されている第1のスイッチ素子と、
自身の前記反転入力端子及び前記非反転入力端子間に接続されている第2のスイッチ素子と、を有し、
前記制御信号が前記活性化を指示する場合には前記第1のスイッチ素子がオン状態となり且つ前記第2のスイッチ素子がオフ状態になることで前記第2導電型の差動段が活性状態になる一方、前記制御信号が前記非活性化を指示する場合には前記第1のスイッチ素子がオフ状態となり且つ前記第2のスイッチ素子がオン状態になることで前記第2導電型の差動段が非活性状態になることを特徴とする請求項2に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項8】
前記差動段制御回路は、前記非活性化を指示する場合には、前記複数の参照電圧のうちで前記第2導電型の差動段の前記第1及び第2のトランジスタをオフにする電圧値を有する所定の参照電圧を前記第2導電型の差動段の非反転入力端及び反転入力端に供給することを特徴とする請求項7に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項9】
請求項1に記載の前記デジタルアナログ変換器を複数含み、
各画素毎の輝度レベルをデジタル値で表す映像デジタルデータ片の各々を、複数の前記デジタルアナログ変換器により、夫々がアナログの電圧値を有する複数の前記出力電圧信号に変換し、複数の前記出力電圧信号を夫々有する複数の駆動信号を表示パネルの複数のデータ線に夫々供給することを特徴とするデータドライバ。
【請求項10】
複数の表示セルが夫々に接続されている複数のデータ線を有する表示パネルと、
請求項1に記載の前記デジタルアナログ変換器を複数含み、
各画素毎の輝度レベルをデジタル値で表す映像デジタルデータ片の各々を、複数の前記デジタルアナログ変換器により、夫々がアナログの電圧値を有する複数の前記出力電圧に変換し、複数の前記出力電圧を夫々有する複数の駆動信号を前記表示パネルの前記複数のデータ線に夫々供給するデータドライバと、を有することを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルアナログ変換器、当該デジタルアナログ変換器を含むデータドライバ、及びこのデータドライバを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、アクティブマトリクス型の表示装置として、液晶表示装置、或いは有機EL表示装置等が主流となっている。このような表示装置には、複数のデータ線と複数の走査線が交差状に配線され、複数のデータ線に画素スイッチを介して接続されている表示セルがマトリクス状に配列された表示パネルと共に、表示パネルの複数のデータ線へ階調レベルに対応したアナログ電圧信号を供給するデータドライバと、表示パネルの複数の走査線へ各画素スイッチのオン、オフを制御する走査信号を供給する走査ドライバと、が搭載されている。データドライバには、映像デジタル信号を輝度レベルに対応したアナログの電圧に変換し、これを増幅した電圧信号を表示パネルの各データ線に供給するデジタルアナログ変換回路が含まれている。
【0003】
以下に、データドライバの概略構成について説明する。
【0004】
データドライバは、例えばシフトレジスタ、データレジスタラッチ、レベルシフタ、DA(digital to analog)変換部を含む。
【0005】
シフトレジスタは、表示コントローラから供給されたスタートパルスに応じて、クロック信号に同期してラッチの選択を行う為の複数のラッチタイミング信号を生成し、データレジスタラッチに供給する。データレジスタラッチは、シフトレジスタから供給されたラッチタイミング信号の各々に基づき、表示コントローラから供給された映像デジタルデータを所定個(例えばn個)毎に取り込み、各映像デジタルデータを表すn個の映像デジタルデータ信号をレベルシフタに供給する。レベルシフタは、データレジスタラッチから供給されたn個の映像デジタルデータ信号の各々に対して、その信号振幅を増加するレベルシフト処理を施して得たn個のレベルシフト後の映像デジタルデータ信号をDA変換部に供給する。
【0006】
DA変換部は、参照電圧生成回路、デコーダ部及び増幅部を含む。
【0007】
参照電圧生成回路は、互いに電圧値が異なる複数の参照電圧を生成してデコーダ部に供給する。例えば、参照電圧生成回路は、電源電圧及び基準電圧間をラダー抵抗で分圧した複数の分圧電圧を参照電圧群としてデコーダ部に供給する。デコーダ部は、データドライバの各出力に夫々対応して設けられているn個のデコーダ回路を有する。デコーダ回路の各々は、レベルシフタから供給された映像デジタルデータ信号を受け、この映像デジタルデータ信号に対応した参照電圧を、複数の参照電圧のうちから選択し、選択した参照電圧を増幅部に供給する。増幅部は、デコーダ部の各デコーダで選択された参照電圧を個別に増幅して階調電圧信号として出力するn個の増幅回路を有する。
【0008】
ところで、上記したDA変換部では、増幅回路から出力する階調電圧信号の電圧レベル数を多くするほど、表現できる輝度レベルの階調数(色数)を増やすことができる。しかしながら、階調電圧信号の電圧レベル数の増加に応じて参照電圧生成回路で生成する参照電圧の数を増やすとその分だけデータドライバのチップサイズ(製造コスト)が増加する。
【0009】
そこで、2系統の入力電圧を重み付けして平均化(加重平均とも称する)することで、2系統の入力電圧を複数個に分割して得られる補間電圧の1つを生成する、いわゆる内挿演算を行う差動増幅器を含むDA変換回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
図1は、特許文献1に記載の差動増幅器の構成を示す回路図である。
【0011】
図1に示すように、当該差動増幅器は、ソース同士が接続されたNチャネル型の一対のトランジスタからなる差動対とこの差動対にテイル電流を流す電流源(Nチャネル型のトランジスタ)とを夫々が有する4系統の差動段と、負荷としてのカレントミラー回路と、Pチャネル型の出力トランジスタと、を含む。ここで、各差動対の一方のトランジスタのゲートに夫々入力端子IN~INが接続されており、各差動対の他方のトランジスタのゲートが共に出力端子OUTに接続されている。尚、図1に示すように、入力端子INについては、2つの差動対各々の一方のトランジスタのゲートに接続されている。
【0012】
更に、各差動対の一方のトランジスタ各々のドレインが共にカレントミラー回路の出力電流路に接続されており、各差動対の他方のトランジスタ各々のドレインが共にカレントミラー回路の入力電流路に接続されている。出力トランジスタは、カレントミラー回路の出力電流路の電圧を自身のゲートで受け、当該電圧に対応した出力電流を出力端子に送出することで、当該出力端子から出力電圧Vdを出力する。
【0013】
ここで、入力端子IN~INには夫々入力電圧VIN~VINが入力されると、図1に示す差動増幅器は、以下に示す出力電圧Vdを出力する。
【0014】
Vd=(VIN1 ×2+VIN2 +VIN3 )/4
よって、例えば互いに異なる電圧値を有する2つの参照電圧を、重複も含めて入力デジタルデータに対応した組み合わせで入力電圧VIN1 ~VINに夫々割り当てることで、4系統の電圧値を有する出力電圧Vdを生成することができる。つまり、図1に示す構成を有する差動増幅器によれば、2つの参照電圧を用いて4つの電圧レベルを得ることができるので、装置規模の低減を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002-43944
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、特許文献1に記載の差動増幅器は各差動対がNチャネル型のトランジスタで構成されている、いわゆる単電源型のオペアンプであるため、トランジスタの閾値電圧Vth以下では動作しない。そこで、図1に示す構成に、この図1に示される各差動段のトランジスタをPチャネル型に置き換えて構成した新たな差動増幅器を加えることで、電源電圧の全範囲で動作可能な、いわゆるレール・ツー・レール型の差動増幅器を上記したDA変換部に用いることが考えられる。
【0017】
しかしながら、このような形態でレール・ツー・レール化した差動増幅器は単電源型のものに比べて回路規模が約2倍となり、DA変換部の回路面積が増大するという問題が生じる。
【0018】
そこで、本発明では、回路面積の増大を抑えて、電源電圧の全範囲で動作可能なデジタルアナログ変換回路、データドライバ及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係るデジタルアナログ変換器は、デジタルデータをアナログの出力電圧信号に変換するデジタルアナログ変換器であって、前記デジタルデータに基づき、複数の参照電圧のうちから重複を含む2つの電圧を第1の電圧及び第2の電圧として選択するデコーダと、前記第1の電圧及び前記第2の電圧間をN(Nは2のべき乗で表される自然数)個に分割した電圧値各々のうちから前記デジタルデータに対応した1の電圧値を有する信号を前記出力電圧信号として出力する差動増幅回路と、を含み、前記差動増幅回路は、夫々が、自身の非反転入力端で前記第1の電圧又は前記第2の電圧を受けて前記第1の電圧又は前記第2の電圧に対応した差動電流を第1のノードに流すと共に、自身の反転入力端で前記出力電圧信号を受けて前記出力電圧信号に対応した差動電流を第2のノードに流す第1導電型の第1~第Nの差動段と、自身の非反転入力端で前記第1の電圧及び前記第2の電圧のうちの一方の電圧を受けると共に自身の反転入力端で前記出力電圧信号を受け、前記デジタルデータにて示されるデジタル値が所定範囲に含まれる場合に活性状態となって自身の非反転入力端で受けた前記一方の電圧に対応した差動電流を第3のノードに流すと共に自身の反転入力端子で受けた前記出力電圧信号に対応した差動電流を第4のノードに流す単一の第2導電型の差動段と、前記第1のノード及び前記第2のノードに夫々流れる電流同士の差分、又は前記第3のノード及び前記第4のノードに夫々流れる電流同士の差分に対応した出力電流を出力端子に流すことで前記出力端子に生じた電圧を前記出力電圧信号として出力する出力増幅段と、を有する。
【0020】
本発明に係るデータドライバは、上記したデジタルアナログ変換器を複数含み、各画素毎の輝度レベルをデジタル値で表す映像デジタルデータ片の各々を、複数の前記デジタルアナログ変換器により、夫々がアナログの電圧値を有する複数の前記出力電圧に変換し、複数の前記出力電圧を夫々有する複数の駆動信号を表示パネルの複数のデータ線に夫々供給する。
【0021】
本発明に係る表示装置は、複数の表示セルが夫々に接続されている複数のデータ線を有する表示パネルと、上記したデジタルアナログ変換器を複数含み、各画素毎の輝度レベルをデジタル値で表す映像デジタルデータ片の各々を、複数の前記デジタルアナログ変換器により、夫々がアナログの電圧値を有する複数の前記出力電圧に変換し、複数の前記出力電圧を夫々有する複数の駆動信号を前記表示パネルの前記複数のデータ線に夫々供給するデータドライバと、を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、第1導電型の第1~第Nの差動段を含む差動増幅回路により、2つの電圧間をN個に分割した電圧値各々のうちのデジタルデータに対応した1の電圧値を有する出力電圧信号を生成する。ただし、デジタルデータにて示されるデジタル値が所定範囲に含まれる場合には単一の第2導電型の差動段を活性化し、この第2導電型の差動段により、当該所定範囲内の各デジタル値に対応した電圧値各々のうちのデジタルデータに対応した1の電圧値を有する出力電圧信号を生成する。
【0023】
これにより、第1導電型の第1~第Nの差動段に第2導電型の差動段を1つ加えるだけで差動増幅回路をレール・ツー・レール化することが可能となる。
【0024】
したがって、本発明によれば、第1導電型の差動段と同数(N個)の第2導電型の差動段を設けることで差動増幅回路のレール・ツー・レール化を図る場合に比べて回路面積の増大を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】デジタルアナログ変換回路に含まれる従来の差動増幅器の構成を示す回路図である。
図2】本発明に係る第1の実施例としてのDA変換器100_1の構成を示す回路図である。
図3】DA変換器100_1の仕様の一例を示す図である。
図4】DA変換器100_1によるDA変換特性の一例を示す図である。
図5】本発明に係る第2の実施例としてのDA変換器100_2の構成を示す回路図である。
図6】本発明に係る第3の実施例としてのDA変換器100_3の構成を示す回路図である。
図7】DA変換器100_3の仕様の一例を示す図である。
図8】出力増幅段15の内部構成の一例を示す回路図である。
図9】本発明に係るデータドライバを含む表示装置200の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0026】
図2は、本発明に係る第1の実施例としてのデジタルアナログ変換器(以下、DA変換器と称する)100_1の構成を示す回路図である。
【0027】
DA変換器100_1は、例えば8ビットのデジタルデータ信号DT(D7~D0)を、当該デジタルデータ信号DTによって表されるデジタル値の階調レベルに対応したアナログの電圧値に変換し、当該電圧値を有する出力電圧信号Voutを出力端子3から出力する。 DA変換器100_1は、図2に示すように、参照電圧生成回路90、デコーダ50_1、差動増幅回路10_1、及びPチャネル差動段制御回路51を含む。
【0028】
参照電圧生成回路90は、直流の基準電源電圧VGH、及びこの基準電源電圧VGHより低電圧の基準電源電圧VGLを受ける。参照電圧生成回路90は、基準電源電圧VGH及びVGLに基づき、夫々電圧値が異なる参照電圧V0~VR(Rは2以上の整数)を生成し、かかる参照電圧V0~VRをデコーダ50_1に供給する。
【0029】
デコーダ50_1は、サブデコーダ50S_1及び50S_2を含む。
【0030】
サブデコーダ50S_2は、デジタルデータ信号DTの上位ビット群に基づき、参照電圧V0~VRのうちから、重複を含む一対の電圧を2つの電圧(VA、VB)として選択する。サブデコーダ50S_2は、選択した2つの2つの電圧(VA、VB)をサブデコーダ50S_1に供給する。
【0031】
サブデコーダ50S_1は、電圧VA又はVBをN(Nは2のべき乗で表される自然数)系統の入力電圧VI_N~VI_1各々の電圧値として振り分ける組合せを、デジタルデータ信号DTの下位ビット群に基づき選択する。そして、サブデコーダ50S_1は、このように振り分けられた、夫々が電圧VA又はVBを有する入力電圧VI_N~VI_1を、差動増幅回路10_1に供給する。
【0032】
更に、サブデコーダ50S_1は、差動増幅回路10_1に供給する入力電圧VI_N~VI_1のうちのいずれか1つを入力電圧VI_Pとして、差動増幅回路10_1に供給する。
【0033】
Pチャネル差動段制御回路51は、デジタルデータ信号DTにて表される階調レベルが、所定範囲に含まれる場合にはPチャネル差動段の活性化を促す一方、この階調レベルが所定範囲に含まれない場合にはPチャネル差動段の非活性化を促す制御信号CTLを、差動増幅回路10_1に供給する。尚、所定範囲とは、デジタルデータ信号DTに基づきサブデコーダ50S_2が選択する2つの電圧(VA、VB)のうちの少なくとも一方の電圧値がNチャネル型のトランジスタの閾値電圧未満となる、デジタルデータ信号DTの階調レベルの範囲である。
【0034】
差動増幅回路10_1は、並列接続された第1導電型(Nチャネル型)のN(Nは2のべき乗で表される自然数)個の差動段11_1~11_Nと、第2導電型(Pチャネル型)の単一の差動段12_1と、出力増幅段15と、を含む。
【0035】
Nチャネル型の差動段11_1~11_Nの各々は、共に同一の構成、つまりNチャネル型の一対のトランジスタからなる差動対と、電源電圧E2を受けて当該差動対にテイル電流を流す電流源と、から構成される。
【0036】
例えば、差動段11_1は、Nチャネル型のトランジスタ111_1及び112_1からなる差動対、及び電流源113_1を含む。電流源113_1は、電源電圧E2を受けて所定の定電流を生成する。
【0037】
トランジスタ111_1は自身のゲート(非反転入力端子)で上記入力電圧VI_1を受け、トランジスタ112_1は自身のゲート(反転入力端子)で出力電圧信号Voutを受ける。トランジスタ111_1及び112_1各々のソースは電流源113_1に接続されており、トランジスタ111_1のドレインがノードn11に接続されており、トランジスタ112_1のドレインがノードn12に接続されている。これにより、トランジスタ111_1は電流源113_1の定電流のうち入力電圧VI_1に対応した差動電流をノードn11に流し、トランジスタ112_1は電流源113_1の定電流のうち出力電圧信号Voutに対応した差動電流をノードn12に流す。
【0038】
また、例えば、差動段11_2は、Nチャネル型のトランジスタ111_2及び112_2からなる差動対、及び電流源113_2を含む。電流源113_2は、電源電圧E2を受けて所定の定電流を生成する。トランジスタ111_2は自身のゲート(非反転入力端子)で上記入力電圧VI_2を受け、トランジスタ112_2は自身のゲート(反転入力端子)で出力電圧信号Voutを受ける。トランジスタ111_2及び112_2各々のソースは電流源113_2に接続されており、トランジスタ111_2のドレインがノードn11に接続されており、トランジスタ112_2のドレインがノードn12に接続されている。これにより、トランジスタ111_2は電流源113_2の定電流のうち入力電圧VI_2に対応した差動電流をノードn11に流し、トランジスタ112_2は電流源113_2の定電流のうち出力電圧信号Voutに対応した差動電流をノードn12に流す。
【0039】
また、例えば、差動段11_Nは、Nチャネル型のトランジスタ111_N及び112_Nからなる差動対、及び電流源113_Nを含む。電流源113_Nは、電源電圧E2を受けて所定の定電流を生成する。トランジスタ111_Nは自身のゲート(非反転入力端子)で上記入力電圧VI_Nを受け、トランジスタ112_Nは自身のゲート(反転入力端子)で出力電圧信号Voutを受ける。トランジスタ111_N及び112_N各々のソースは電流源113_Nに接続されており、トランジスタ111_Nのドレインがノードn11に接続されており、トランジスタ112_Nのドレインがノードn12に接続されている。これにより、トランジスタ111_Nは電流源113_Nの定電流のうち入力電圧VI_Nに対応した差動電流をノードn11に流し、トランジスタ112_Nは電流源113_Nの定電流のうち出力電圧信号Voutに対応した差動電流をノードn12に流す。
【0040】
よって、Nチャネル型の差動段11_1~11_Nにより、入力電圧VI_1~VI_Nに夫々対応したN個の差動電流を結合した電流がノードn11に流れ、出力電圧信号Voutに夫々対応したN個の差動電流を結合した電流がノードn12に流れる。
【0041】
Pチャネル型の差動段12_1は、Pチャネル型のトランジスタ121及び122からなる差動対、電流源123、及びスイッチ素子124を含む。電流源123は、電源電圧E1(E1>E2)を受けて所定の定電流を生成する。
【0042】
スイッチ素子124は、制御信号CTLを受け、当該制御信号CTLがPチャネル差動段の活性化を指示する場合にはオン状態となり、電流源123で生成された定電流をテイル電流としてトランジスタ121及び122各々のソースに送出する。これにより、差動段12_1は、活性状態となる。一方、制御信号CTLがPチャネル差動段の非活性化を指示する場合には、スイッチ素子124はオフ状態となり、電流源123と差動対(121、122)との接続を遮断する。これにより、差動段12_1は、自身の動作を停止させた、いわゆる非活性状態となる。
【0043】
トランジスタ121は自身のゲート(非反転入力端子)で上記した入力電圧VI_Pを受け、トランジスタ122は自身のゲート(非反転入力端子)で出力電圧信号Voutを受ける。トランジスタ121及び122各々のソースはスイッチ素子124に接続されており、トランジスタ121のドレインがノードn21に接続されており、トランジスタ122のドレインがノードn22に接続されている。これにより、差動段12_1が活性状態にある間、トランジスタ121は電流源123の定電流のうち入力電圧VI_Pに対応した差動電流をノードn21を介して出力増幅段15に送出し、トランジスタ122は電流源123の定電流のうち出力電圧信号Voutに対応した差動電流をノードn22を介して出力増幅段15に送出する。
【0044】
よって、差動段12_1により、入力電圧VI_Pに対応した差動電流がノードn21に流れ、出力電圧信号Voutに対応した差動電流がノードn22に流れる。
【0045】
出力増幅段15は、差動段11_1~11_Nが入力電圧VI_1~VI_Nに応じてノードn11及びn12に夫々流す差動電流同士の差分(Nch側差動電流と称する)、又は差動段12_1が入力電圧VI_Pに応じてノードn21及びn22に夫々流す差動電流同士の差分(Pch側差動電流と称する)に基づく出力電流を出力端子3に流すことで当該出力端子3に生じた電圧を出力電圧信号Voutとして出力する。なお、差動段11_1~11_Nに入力電圧VI_1~VI_Nとして電圧VA又はVBが所定の組合せで供給されるときに、出力電圧信号Voutは上記した電圧VA及びVB間を2のべき乗個に分割する各電圧レベルのうちの1の電圧レベルを有する電圧となる。また差動段12_1が活性化され、差動段12_1に入力電圧VI_Pが供給されるときは、出力電圧信号Voutは入力電圧VI_Pと同等電圧となる。
【0046】
したがって、図2に示す差動増幅回路10_1は、デコーダ50_1から供給された、デジタルデータ信号DTに基づく入力電圧VI_1~VI_Nに応じて、
Vout=(VI_1+VI_2+VI_3+、・・・、+VI_N)/N
にて示される出力電圧信号Voutを生成する。
【0047】
また、差動増幅回路10_1は、デジタルデータ信号DTにて表される階調レベルが所定範囲に含まれる場合には、
Vout=VI_P
にて示される出力電圧信号Voutを生成する。
【0048】
このように、差動増幅回路10_1では、デジタルデータ信号DTに基づきデコーダ50_1が参照電圧V0~VRのうちから選択した2つの電圧VA及びVB間をN個に分割した電圧値各々のうちのデジタルデータ信号DTに対応した1の電圧値を有する出力電圧信号Voutを、Nチャネル型の差動段11_1~11_Nによって生成する。ただし、デジタルデータ信号DTにて表される階調レベルが所定範囲に含まれる場合には単一のPチャネル型の差動段12_1を活性化し、当該Pチャネル型の差動段12_1により、この所定範囲内の各階調レベルに対応した電圧値各々のうちのデジタルデータ信号DTに対応した1の電圧値を有する出力電圧信号Voutを生成する。
【0049】
そして、差動増幅回路10_1は、生成した出力電圧信号Voutを出力端子3から出力すると共に、自身に含まれる差動段11_1~11_N及び12_1に帰還供給する。
【0050】
図3は、図2に示すDA変換器100_1を実際に動作させる際の仕様の一例を示す図である。すなわち、図3は、DA変換器100_1内のNチャネル型の差動段の数Nを4とし、映像信号の輝度レベルを8ビット(D7~D0)で表すデジタルデータ信号DTをDA変換の対象とした場合の仕様を示す。尚、DA変換器100_1は、図4に示す正極ガンマ特性γP又は負極ガンマ特性γNに沿ってデジタルデータ信号DTを256段階のアナログの電圧V0~V255に変換するものであるが、図3では、図4に示す負極ガンマ特性γNに対応した仕様例のみを示す。
【0051】
図3に示す仕様では、階調レベル0側を高電位(電源電圧E1近傍)、階調レベル255側を低電位(電源電圧E2近傍)の電圧に変換するものとする。更に、図3に示す仕様では、ガンマ特性の階調レベルの変化やレベル間電圧差の大きい階調レベル0~7の範囲及び階調レベル248~255の範囲を線形補間除外区間OLに設定し、ガンマ特性の階調レベルの変化が緩やかでレベル間電圧差が小さい階調レベル8~247の範囲を線形補間区間ILに設定する。
【0052】
また、図3に示す仕様により、参照電圧生成回路90は、階調レベル0~7に夫々対応した電圧値を有する参照電圧V0~V7と、階調レベル7~247における4個置きの各階調レベルに夫々対応した電圧値を有する参照電圧V7、V11、V15、・・・、V247と、階調レベル248~255に夫々対応した電圧値を有する参照電圧V248~V255を生成して、デコーダ50_1に供給する。
【0053】
デコーダ50_1は、デジタルデータ信号DTによって示される階調レベルが図3に示す線形補間除外区間OLに含まれる場合には、参照電圧V0~V255のうちから、その階調レベルに対応した参照電圧を選択する。例えば図3に示すように、デジタルデータ信号DTが階調レベル6を示すビットD7~D0[00000110]を表す場合、デコーダ50_1は、参照電圧V0~V255のうちから参照電圧V6を選択する。そして、デコーダ50_1は、この選択した1つの参照電圧を夫々が有する入力電圧VI_1~VI_4を、Nチャネル型の差動段11_1~11_4に夫々供給する。
【0054】
一方、デジタルデータ信号DTによって示される階調レベルが線形補間区間ILに含まれる場合、デコーダ50_1は、ビットD7~D2に基づき、4階調置きの参照電圧V7、V11、V15、・・・、V247のうちから、互いに異なる電圧値を有する2つの電圧VA及びVBを選択する。そして、デコーダ50_1は、ビットD1及びD0に基づき、当該2つの電圧VA及びVBを入力電圧VI_1~VI_4各々の電圧値として振り分けたものを、差動段11_1~11_4に夫々供給する。例えば図3に示すように、デジタルデータ信号DTが階調レベル13を示すビットD7~D0[00001101]を表す場合、デコーダ50_1は、参照電圧V0~V255のうちから参照電圧V11及びV15を選択する。そして、デコーダ50_1は、この選択した参照電圧V11を有する入力電圧VI_1を差動段11_1に供給すると共に、当該参照電圧V11を有する入力電圧VI_2を差動段11_2に供給する。更に、デコーダ50_1は、選択した参照電圧V15を有する入力電圧VI_3を差動段11_3に供給すると共に、当該参照電圧V15を有する入力電圧VI_4を差動段11_4に供給する。
【0055】
更に、デコーダ50_1は、デジタルデータ信号DTによって示される階調レベルに基づき、上記した入力電圧VI_1~VI_4のうちのいずれか1つと同一の電圧値を有する入力電圧VI_PをPチャネル型の差動段12_1に供給する。尚、図3に示す仕様では、入力電圧VI_1と同一の電圧値を有する入力電圧VI_Pを差動段12_1に供給している。
【0056】
また、図3に示す仕様では、Pチャネル差動段制御回路51は、デジタルデータ信号DTにて表される階調レベルが階調レベル248~255の範囲に含まれる場合にはPチャネル差動段の活性化を促す制御信号CTLを差動段12_1に供給する。一方、デジタルデータ信号DTにて表される階調レベルが階調レベル248~255の範囲に含まれない場合には、Pチャネル差動段制御回路51は、Pチャネル差動段の非活性化を促す制御信号CTLを差動段12_1に供給する。
【0057】
尚、階調レベル248~255の範囲とは、その範囲に含まれる階調レベルに対応した入力電圧(VI_1~VI_4、VI_P)の電圧値が、Nチャネル型のトランジスタ(111_1~111_4)の閾値電圧を下回り、差動段11_1~11_4が動作不可な状態となる階調レベルを含む範囲である。
【0058】
上記したように、図3に示す仕様では、デジタルデータ信号DTが階調レベル248~255の範囲以外の階調レベルを表す場合、つまりNチャネル型の差動段11_1~11_4が動作可能となる場合には、差動段11_1~11_4によって、
Vout=(VI_1+VI_2+VI_3+VI_4)/4 …(1)
式(1)にて示される出力電圧信号Voutが生成される。
【0059】
尚、N個のNチャネル型の差動段11_1~11_Nで構成される場合には、
Vout=(VI_1+VI_2+VI_3+…+VI_N)/N …(2)
式(2)にて示される出力電圧信号Voutが生成される。
【0060】
また、デジタルデータ信号DTが階調レベル248~255の範囲の階調レベルを表す場合、つまりNチャネル型の差動段11_1~11_4が動作不可となる場合でも、活性化されたPチャネル型の差動段12_1によって、
Vout=VI_P …(3)
式(3)にて示される出力電圧信号Voutが生成される。
【0061】
このように、図3の仕様で動作するDA変換器100_1では、デジタルデータ信号DTで表される階調レベルがNチャネル型の差動段11_1~11_4が動作可能な電圧範囲(階調レベル0~247)では、差動段11_1~11_4により、当該階調レベルに対応した入力電圧VI_1~VI_4を線形補間又は平均化した電圧値を有する出力電圧信号Voutを生成する。
【0062】
一方、デジタルデータ信号DTで表される階調レベルがNチャネル型の差動段11_1~11_4が動作不可能な電圧を含む所定範囲(階調レベル248~255)では、差動段12_1を活性化し、この差動段12_1により、当該階調レベルに対応した入力電圧VI_Pに対応した電圧値を有する出力電圧信号Voutを生成する。
【0063】
すなわち、DA変換器100_1は、デジタルデータ信号DTで表される階調レベルに対応した入力電圧VI_1~VI_4の電圧値がNチャネル型のトランジスタの閾値電圧以上となる場合には、Nチャネル型の差動段11_1~11_4を用いて出力電圧信号Voutを生成する。一方、当該階調レベルに対応した入力電圧VI_1~VI_4の電圧値がNチャネル型のトランジスタの閾値電圧未満となる場合には、Pチャネル型の差動段12_1を用いて出力電圧信号Voutを生成する。
【0064】
この際、Nチャネル型のトランジスタの閾値電圧未満の電圧は所定範囲(階調レベル248~255)内に設定される。この階調レベル248~255では、Nチャネル型の差動段11_1~11_4の入力電圧VI_1~VI_4とPチャネル型の差動段12_1の入力電圧VI_Pに同一の電圧値が入力される。この階調レベル248~255において、Nチャネル型のトランジスタの閾値電圧以上の入力電圧に対しては、Nチャネル型の差動段11_1~11_4とPチャネル型の差動段12_1が共に動作して、入力電圧VI_Pに対応した電圧値を有する出力電圧信号Voutが出力される。一方、Nチャネル型のトランジスタの閾値電圧未満の入力電圧に対しては、Nチャネル型の差動段11_1~11_4は非活性となり、Pチャネル型の差動段12_1のみが動作して、入力電圧VI_Pに対応した電圧値を有する出力電圧信号Voutが出力される。尚、所定範囲(階調レベル248~255)において、Nチャネル型の差動段11_1~11_4を非活性に制御してもよい。よって、図2に示すように、N系統のNチャネル型の差動段11_1~11_Nと共に、1系統のPチャネル型の差動段12_1を設けるだけで、電源電圧の全範囲(E1~E2)で動作する、いわゆるレール・ツー・レール型の差動増幅回路10_1を含むDA変換器100_1を実現することが可能となる。
【0065】
よって、DA変換器100_1によれば、Nチャネル型の差動段11_1~11_Nと同規模なN系統のPチャネル型の差動段を追加することで差動増幅回路のレール・ツー・レール化を図る場合に比べて、回路面積の増大を抑えることが可能となる。
【実施例0066】
図5は、本発明に係る第2の実施例としてのDA変換器100_2の構成を示す回路図である。
【0067】
尚、図5に示すDA変換器100_2では、図2に示す差動増幅回路10_1に代えて差動増幅回路10_2を採用したものであり、その他の構成(90、50_1、51)については図2に示されるものと同一である。また、差動増幅回路10_2では、図2に示すPチャネル型の差動段12_1に代えてPチャネル型の差動段12_2を採用したものであり、Nチャネル型の差動段11_1~11_Nについては図2に示されるものと同一である。
【0068】
よって、以下に差動段12_2の構成及びその動作についてのみ説明する。
【0069】
差動段12_2は、差動段12_1と同様に、Pチャネル型のトランジスタ121及び122からなる差動対と、電流源123とを含む。
【0070】
ただし、差動段12_2では、図2に示すスイッチ素子124に代えてスイッチ素子124A及び124Bを採用している。
【0071】
差動段12_2に含まれる電流源123は、電源電圧E1(E1>E2)を受けて所定の定電流を生成し、これをトランジスタ121及び122各々のソースに送出する。
【0072】
差動段12_2に含まれるトランジスタ121は、デコーダ50_1から供給された入力電圧VI_Pを自身のゲート(非反転入力端子)で受け、当該入力電圧VI_Pに対応した差動電流を自身のドレインからスイッチ素子124Bに送出する。差動段12_2に含まれるトランジスタ122は、出力電圧信号Voutを自身のゲート(反転入力端子)で受け、当該出力電圧信号Voutに対応した差動電流を自身のドレインからスイッチ素子124Aに送出する。
【0073】
スイッチ素子124A及び124Bの各々は、制御信号CTLを受け、当該制御信号CTLがPチャネル差動段の活性化を指示する場合にはオン状態となる一方、非活性を指示する場合にはオフ状態となる。スイッチ素子124A及び124Bは、オン状態となった場合に、トランジスタ121及び122から送出された電流を夫々ノードn21及びn22を介し出力増幅段15に送出する。これにより、差動段12_2は活性状態となる。一方、スイッチ素子124A及び124Bがオフ状態となった場合には、トランジスタ121及び122とノードn21及びn22との間の接続を遮断する。これにより、差動段12_2は非活性状態となる。
【0074】
すなわち、かかる構成により、差動段12_2は、差動段12_1と同様に、デジタルデータ信号DTにて表される階調レベルがNチャネル型の差動段11_1~11_4が動作不可となる電圧範囲を含む所定範囲(例えば図3に示す階調レベル248~255)で活性化される。これにより、デジタルデータ信号DTにて表される階調レベルが所定範囲内において、Nチャネル型の差動段11_1~11_Nが動作不可となっても差動段12_2の動作により、当該階調レベルに対応した電圧値を有する出力電圧信号Voutを生成する。
【実施例0075】
図6は、本発明に係る第3の実施例としてのDA変換器100_3の構成を示す回路図である。
【0076】
尚、図6に示すDA変換器100_3では、図2に示す差動増幅回路10_1に代えて差動増幅回路10_3を採用し、図2に示すデコーダ50_1に代えてデコーダ50_2を採用すると共に、図2に示すPチャネル差動段制御回路51に代えてPチャネル差動段制御回路52を採用したものである。図6に示す参照電圧生成回路90については図2に示されるものと同一である。
【0077】
デコーダ50_2は、図2に示されるデコーダ50_1と同様にサブデコーダ50S_2を含む。ただし、デコーダ50_2では、当該デコーダ50_1に含まれるサブデコーダ50S_1に代えてサブデコーダ50S_1aを採用している。尚、サブデコーダ50S_1aは、サブデコーダ50S_1から入力電圧VI_Pを生成する機能を省いた点を除きサブデコーダ50S_1と同一である。
【0078】
Pチャネル差動段制御回路52は、Pチャネル差動段制御回路51と同様に、デジタルデータ信号DTにて表される階調レベルが、所定範囲に含まれる場合にはPチャネル差動段の活性化を促す一方、この階調レベルが所定範囲に含まれない場合にはPチャネル差動段の非活性化を促す制御信号CTLを生成する。そして、Pチャネル差動段制御回路52は、この制御信号CTLをPチャネル型の差動段12_3に供給する。また、Pチャネル差動段制御回路52は、当該デジタルデータ信号DTにて表される階調レベルが所定範囲に含まれる場合には、サブデコーダ50S_2にて選択された2つの電圧VA及びVBのうちの一方を、入力電圧VI_Pとして差動段12_3に供給する。
【0079】
Pチャネル型の差動段12_3は、図5に示す差動段12_2と同様に、Pチャネル型のトランジスタ121及び122からなる差動対と、電流源123とを含む。
【0080】
ただし、差動段12_3では、図5に示すスイッチ素子124A及び124Bに代えてスイッチ素子124C及び124Dを採用している。更に、差動段12_3では、トランジスタ121のドレインがノードn21に接続されていると共に、トランジスタ122のドレインがノードn22に接続されている。
【0081】
スイッチ素子124C及び124Dは、制御信号CTLを受け、当該制御信号CTLに応じて相補的に夫々がオン状態又はオフ状態になる。
【0082】
すなわち、制御信号CTLがPチャネル差動段の非活性化を指示する場合にはスイッチ素子124Cがオフ状態、スイッチ素子124Dがオン状態となる。これにより、トランジスタ121及び122各々のゲート、つまり差動段12_3の非反転入力端子及び反転入力端子同士が短絡されるので、差動段12_3は差動増幅回路10_3の増幅作用に寄与せず実質的な非活性状態となる。
【0083】
一方、制御信号CTLがPチャネル差動段の活性化を指示する場合にはスイッチ素子124Cがオン状態、スイッチ素子124Dがオフ状態となる。これにより、差動段12_3の非反転入力端子及び反転入力端子同士の短絡状態が解除され、差動段12_3は活性状態となる。
【0084】
尚、差動段12_3を非活性状態にするにあたり、Pチャネル差動段制御回路52は、参照電圧V0~VRのうちでトランジスタ121及び122を共にオフ状態にする電圧値を有する参照電圧を入力電圧VI_Pとして、トランジスタ121及び122各々のゲート、つまり差動段12_3の非反転入力端子及び反転入力端子に供給するようにしても良い。これにより、差動段12_3が完全に停止することになるので、消費電力を更に低減することが可能となる。
【実施例0085】
図7は、図6に示すDA変換器100_3の仕様の一例を示す図である。
【0086】
尚、図7では、図3に示す仕様と同様に、図4に示す負極ガンマ特性γNに沿ってデジタルデータ信号DTを256段階のアナログの電圧V0~V255に変換する際の仕様を示す。更に、図7に示す仕様では、図3に示す仕様と同様な線形補間区間ILおよび線形補間除外区間OLが設定されている。
【0087】
図7に示す仕様により、Pチャネル差動段制御回路52は、デジタルデータ信号DTにて表される階調レベルが低電圧側の階調レベル248~255(線形補間除外区間OL)に含まれる場合にのみ、差動段(11_1~11_4)に供給する入力電圧(VI_1~VI_4)と同一電圧値を有する入力電圧VI_Pを差動段12_3の非反転入力端子に供給する。
【0088】
また、Pチャネル差動段制御回路52は、デジタルデータ信号DTにて表される階調レベルが階調レベル0~247の範囲に含まれる場合、差動対(121、122)がオフとなる電源電圧E1近傍の電圧値を有する例えば参照電圧V0を、入力電圧VI_Pとして差動段12_3の非反転入力端子及び反転入力端子に供給する。
【実施例0089】
図8は、図2図5及び図6に好適な出力増幅段15の構成を示す回路図である。
【0090】
図8に示すように、出力増幅段15は、電流電圧変換部15_1及び出力段15_2を含む。
【0091】
電流電圧変換部15_1は、カスコードカレントミラー回路30及び40、電流源55、及び浮遊電流源60を有する。
【0092】
カスコードカレントミラー回路30は、Pチャネル型のトランジスタ131~134を含み、カスコードカレントミラー回路40は、Nチャネル型のトランジスタ141~144を含む。浮遊電流源60は、Pチャネル型のトランジスタ161及びNチャネル型のトランジスタ162を含む。
【0093】
カスコードカレントミラー回路30のトランジスタ131及び132各々のソースには電源電圧E1が印加されており、夫々のゲートは互いに接続されている。トランジスタ131のドレインは、ノードn6を介してトランジスタ133のソースに接続されていると共に、ノードn12を介して図2図5又は図6に示される差動段11_1~11_N各々に接続されている。トランジスタ132のドレインはノードn5を介してトランジスタ134のソースに接続されていると共に、ノードn11を介して図2図5又は図6に示される差動段11_1~11_N各々に接続されている。トランジスタ133及び134のゲートには共にバイアス電圧BP1が印加されている。トランジスタ133のドレインは、ノードn2を介して電流源55に接続されていると共に、トランジスタ131及び132各々のゲートに接続されている。
【0094】
電流源55は、所定の定電流を生成しこれをノードn2からノードn4を介してカスコードカレントミラー回路40のトランジスタ143のドレインに送出する。
【0095】
トランジスタ134のドレインは、高電位側の駆動ノードとしてのノードn1を介して浮遊電流源60のトランジスタ161のソース及びトランジスタ162のドレインに接続されている。
【0096】
トランジスタ161のゲートにはバイアス電圧BP2が印加されており、トランジスタ162のゲートにはバイアス電圧BPNが印加されている。トランジスタ161のドレイン及びトランジスタ162のソースは、低電位側の駆動ノードとしてのノードn3を介して、カスコードカレントミラー回路40のトランジスタ144のドレインに接続されている。
【0097】
トランジスタ143及び144各々のゲートにはバイアス電圧BN1が印加されている。トランジスタ143のソースはノードn8を介してトランジスタ141のドレインに接続されていると共に、ノードn22を介して図2図5又は図6に示される差動段12_1、12_2、又は12_3に接続されている。トランジスタ144のソースは、ノードn7を介してトランジスタ142のドレインに接続されていると共に、ノードn21を介して図2図5又は図6に示される差動段12_1、12_2、又は12_3に接続されている。トランジスタ141及び142各々のソースには電源電圧E2が印加されており、これらトランジスタ141及び142各々のゲートはトランジスタ143のドレインに接続されている。
【0098】
出力段15_2は、Pチャネル型のトランジスタ171及びNチャネル型のトランジスタ172を含む。
【0099】
トランジスタ171のソースには電源電圧E3(E3>E1)が印加されており、そのゲートにノードn1の電圧PGを受ける。トランジスタ172のソースには電源電圧E4(E2>E4)が印加されており、そのゲートにノードn3の電圧NGを受ける。トランジスタ171、172の夫々のドレインは出力端子3に接続される。
【0100】
上記したカスコードカレントミラー回路30及び40、電流源55及び浮遊電流源60を含む電流電圧変換部15_1と、出力段15_2の作用について以下に説明する。
【0101】
なお、ノードn11、n12に接続されるNチャネル型の差動段11_1~11_Nの各差動対に入力電圧VI_1~VI_Nと出力電圧信号Voutが夫々差動入力され、ノードn21、n22に接続されるPチャネル型の差動段12_1(又は12_2、又は12_3)に入力電圧VI_Pと出力電圧信号Voutが差動入力されているものとする。また、出力安定状態では、入力電圧VI_1~VI_Nと出力電圧信号Voutは式(2)を満たすものとする。また、Pチャネル型の差動段12_1が所定範囲で活性化されるとき、入力電圧VI_Pと出力電圧信号Voutは式(3)を満たすものとする。このときノードn11、n12に流れる差動電流は等しく、ノードn21、n22に流れる差動電流も等しい。またカスコードカレントミラー回路30は、ほぼ一定の電流源55の電流をノードn2に受け、電源電圧E1で折返した電流をノードn1に供給し、カスコードカレントミラー回路40は、電流源55の定電流をノードn4に受け、電源電圧E2で折返した電流をノードn3から引き抜く。
【0102】
浮遊電流源60は両端のノードn1とノードn3を介して、それぞれ等しい電流の流入と流出を生じるため、ノードn1の電圧PGとノードn3の電圧NGは夫々安定状態を保ち、出力段15_2は出力端子3の出力電圧信号Voutを保持する。
【0103】
例えば、入力電圧VI_1~VI_Nとして出力安定状態より高電圧の電圧VA又はVBが供給される場合、ノードn11の差動電流は増加し、ノードn12の差動電流は減少する。これにより、カスコードカレントミラー回路30のノードn5は、ノードn11に流れ出る差動電流の増加によりその電圧が低下し、その作用によりトランジスタ134がノードn1へ流す電流が減少する。一方、カスコードカレントミラー回路40は、電流源55の定電流の折返し電流をノードn3から引き抜く。このときノードn1へ流れ込む電流よりノードn3から引き抜かれる電流の方が大きいため、浮遊電流源60を挟んでノードn1の電圧PG及びノードn3の電圧NGは夫々出力安定状態より低下する。これにより、出力段15_2において、トランジスタ171により電源電圧E3から出力端子3へ出力電流(充電電流)が流れ、出力端子3の出力電圧信号Voutが上昇する。出力電圧信号Voutの上昇に伴い、ノードn11とn12の差動電流の差は減少していき、出力電圧信号Voutが式(2)を満たす電圧まで変化すると再び出力安定状態となる。
【0104】
一方、入力電圧VI_1~VI_Nとして出力安定状態より低電圧の電圧VA又はVBが供給される場合、ノードn11の差動電流は減少し、ノードn12の差動電流は増加する。これにより、カスコードカレントミラー回路30のノードn5は、ノードn11に流れる差動電流の減少によりその電圧が上昇し、その作用によりトランジスタ134がノードn1へ流す電流が増加する。一方、カスコードカレントミラー回路40は、電流源55の定電流の折返し電流をノードn3から引き抜くが、ノードn1へ流れ込む電流の方が大きいため、浮遊電流源60を挟んでノードn1の電圧PG及びノードn3の電圧NGは夫々出力安定状態より上昇する。これにより出力段15_2において、トランジスタ172により出力端子3から電源電圧E4へ出力電流(放電電流)が流れ、出力端子3の出力電圧信号Voutが低下する。出力電圧信号Voutの低下に伴い、ノードn11とn12の差動電流の差は減少していき、出力電圧信号Voutが式(2)を満たす電圧まで変化すると再び出力安定状態となる。
【0105】
また、Pチャネル差動段が動作可能とされる所定の電圧範囲において、入力電圧VI_Pとして出力安定状態より高電圧の電圧VA又はVBの一方が供給される場合、ノードn21の差動電流は減少し、ノードn22の差動電流は増加する。これにより、カスコードカレントミラー回路40のノードn7は、ノードn21から流れ込む差動電流の減少によりその電圧が低下し、その作用によりトランジスタ144がノードn3から引き抜く電流が増加する。一方、カスコードカレントミラー回路30は、電流源55の定電流の折返し電流をノードn1へ供給するが、ノードn3から引き抜かれる電流の方が大きいため、浮遊電流源60を挟んで、ノードn1の電圧PG及びノードn3の電圧NGは夫々出力安定状態より低下する。これにより出力段15_2において、トランジスタ171により電源電圧E3から出力端子3へ出力電流(充電電流)が流れ、出力端子3の出力電圧信号Voutが式(3)を満たす電圧まで上昇すると再び出力安定状態となる。
【0106】
一方、入力電圧VI_Pとして出力安定状態より低電圧の電圧VA又はVBの一方が供給される場合、ノードn21の差動電流は増加し、ノードn22の差動電流は減少する。これにより、カスコードカレントミラー回路40のノードn7は、ノードn21から流れ込む差動電流の増加によりその電圧が上昇し、その作用によりトランジスタ144がノードn3から引き抜く電流が減少する。一方、カスコードカレントミラー回路30は、電流源55の定電流の折返し電流をノードn1へ供給する。ノードn3から引く抜かれる電流よりにノードn1へ流れ込む電流の方が大きいため、浮遊電流源60を挟んで、ノードn1の電圧PG及びノードn3の電圧NGは夫々出力安定状態より上昇する。これにより出力段15_2において、トランジスタ172により出力端子3から電源電圧E4へ出力電流(放電電流)が流れ、出力端子3の出力電圧信号Voutが式(3)を満たす電圧まで低下すると再び出力安定状態となる。
【0107】
かかる構成により、出力増幅段15では、先ず、カスコードカレントミラー回路30及び40により、差動段11_1~11_Nが入力電圧VI_1~VI_Nに応じてノードn11及びn12に夫々流す電流同士の差分、又は差動段12_1が入力電圧VI_Pに応じてノードn21及びn22に夫々流す電流同士の差分を電圧(PG、NG)に変換する。そして、トランジスタ171及び172により、この電圧(PG、NG)に対応した出力電流を出力端子3に流す。これにより、当該出力端子3に生じた電圧を、上記した電圧VA及びVB間をN個(2のべき乗個)に分割する各電圧レベルのうちの1の電圧レベルを有する出力電圧信号Voutとして出力する。この際、当該出力電圧信号Voutは前述したように、Nチャネル型の差動段(11_1~11_N)及びPチャネル型の差動段(12_1、12_2又は12_3)各々の反転入力端子に帰還供給される。
【0108】
尚、出力増幅段15の内部構成としては図8に示す回路に限定されない。つまり、出力増幅段15としては、ノードn11及びn12に夫々流れる電流同士の差分、又はノードn21及びn22に夫々流れる電流同士の差分に対応した出力電流を出力端子3に流すことでこの出力端子3に生じた電圧を出力電圧信号Voutとして出力する動作を実現する回路であれば良いのである。
【0109】
また、上記したDA変換器100_1、100_2又は100_3では、N系統の差動段11_1~11_Nを夫々Nチャネル型の差動段、単一の差動段12_1(又は12_2或いは12_3)をPチャネル型の差動段としているが、差動段11_1~11_NをPチャネル型の差動段、単一の差動段12_1(又は12_2或いは12_3)をNチャネル型の差動段で構成しても良い。つまり、差動段11_1~11_Nを第1導電型、単一の差動段12_1(又は12_2或いは12_3)を第1導電型とは逆導電型の第2の導電型で構成すれば良い。
【0110】
要するに、本発明に係るDA変換器としては、以下のデコーダと、差動増幅回路と、を含むものであれば良い。
【0111】
デコーダ(50S_2)は、デジタルデータ(DT)に基づき、複数の参照電圧(V0~VR)のうちから重複を含む2つの電圧を第1の電圧(VA)及び第2の電圧(VB)として選択する。
【0112】
差動増幅回路(10_1~10_3)は、第1の電圧(VA)及び第2の電圧(VB)間をN(Nは2のべき乗で表される自然数)個に分割した電圧値各々のうちからデジタルデータ(DT)に対応した1の電圧値を有する信号を出力電圧信号(Vout)として出力する。
【0113】
ここで、差動増幅回路は、以下の第1導電型の第1~第Nの差動段と、単一の第2導電型の差動段と、出力増幅段と、を含む。
【0114】
第1導電型の第1~第Nの差動段(11_1~11_N)は、夫々が、自身の非反転入力端で第1又は第2の電圧(VA、VB)を受けて第1又は第2の電圧に対応した差動電流を第1のノード(n11)に流すと共に、自身の反転入力端で出力電圧信号(Vout)を受けて出力電圧信号(Vout)に対応した差動電流を第2のノード(n12)に流す。
【0115】
第2導電型の差動段(12_1~12_3)は、自身の非反転入力端で第1の電圧(VA)及び第2の電圧(VB)のうちの一方の電圧を受けると共に自身の反転入力端で出力電圧信号(Vout)を受ける。この際、第2導電型の差動段(12_1~12_3)は、デジタルデータ(DT)にて示されるデジタル値(例えば階調レベル)が所定範囲に含まれる場合に活性状態となって自身の非反転入力端で受けた一方の電圧(VA又はVB)に対応した差動電流を第3のノード(n21)に流すと共に自身の反転入力端子で受けた出力電圧信号(Vout)に対応した差動電流を第4のノード(n22)に流す。
【0116】
出力増幅段(15)は、第1及び第2のノード(n11、n12)に夫々流れる電流同士の差分、又は第3及び第4のノード(n21、n22)に夫々流れる電流同士の差分に対応した出力電流を出力端子(3)に流すことでこの出力端子に生じた電圧を出力電圧信号(Vout)として出力する。
【実施例0117】
図9は、上記したDA変換器(100_1~100_3)を含むデータドライバを有する表示装置200の構成を示すブロック図である。
【0118】
表示装置200は、表示パネル25、表示コントローラ16(表示CNT)、走査ドライバ17及びデータドライバ18を含む。
【0119】
表示パネル25は、例えば液晶又は有機ELパネル等からなり、2次元画面の水平方向に伸張するm個(mは2以上の自然数)の水平走査線GL1~GLmと、2次元画面の垂直方向に伸張するn個(nは2以上の自然数)のデータ線DL1~DLnと、を含む。水平走査線及びデータ線の各交叉部には、画素を担う表示セルが形成されている。
【0120】
表示コントローラ16は、映像信号VDに基づき、スタートパルス、クロック信号、垂直及び水平同期信号等の各種制御信号、並びに各画素の輝度レベルを表す映像デジタルデータ片の系列を含む映像デジタル信号DVSを生成する。
【0121】
表示コントローラ16は、上記した水平同期信号に対応した走査タイミング信号を生成しこれを走査ドライバ17に供給すると共に、上記した映像デジタル信号DVSをデータドライバ18に供給する。
【0122】
尚、表示コントローラ16は、データドライバ18に内蔵される場合もある。
【0123】
走査ドライバ17は、表示コントローラ16から供給された走査タイミング信号に基づいて、水平走査パルスを表示パネル25の水平走査線GL1~GLmの各々に順次印加する。尚、走査ドライバ17は、表示パネル25の端部に薄膜トランジスタ回路により形成される場合もある。
【0124】
データドライバ18は、シフトレジスタ80、データレジスタラッチ70、レベルシフタ65、参照電圧生成回路90、n個のデコーダ50及びn個の差動増幅回路10を含む。
【0125】
シフトレジスタ80は、映像デジタル信号DVSに含まれるスタートパルスに応じて、クロック信号に同期してラッチの選択を行う為の複数のラッチタイミング信号を生成し、データレジスタラッチ70に供給する。
【0126】
データレジスタラッチ70は、シフトレジスタ80から供給されたラッチタイミング信号の各々に基づき、映像デジタル信号DVSに含まれる映像デジタルデータ片を所定個(例えばn個)毎に取り込み、各映像デジタルデータ片を表すn個の映像デジタルデータ信号をレベルシフタ65に供給する。
【0127】
レベルシフタ65は、データレジスタラッチ70から供給されたn個の映像デジタルデータ信号の各々に対して、その信号振幅を増加するレベルシフト処理を施して得たn個のレベルシフト後の映像デジタルデータ信号を、データドライバ18のn個の出力チャネルに夫々対応して設けられたn個のデコーダ50の各々に供給する。
【0128】
参照電圧生成回路90は、直流の基準電源電圧VGH、及び基準電源電圧VGHよりも低電圧の基準電源電圧VGLを受ける。参照電圧生成回路90は、基準電源電圧VGH及びVGLに基づき、夫々電圧値が異なる参照電圧V0~VRを生成し、n個のデコーダ50の各々に供給する。
【0129】
デコーダ50の各々は、上記した参照電圧群のうちから、レベルシフタ65にてレベルシフトされた映像デジタルデータ信号に対応した一対の参照電圧を選択する。そして、デコーダ50の各々は、選択した一対の参照電圧を2つの電圧(VA、VB)として、データドライバ18のn個の出力チャネルに夫々対応して設けられている差動増幅回路10に供給する。
【0130】
差動増幅回路10は、入力された電圧VA及びVB間を分割する例えば8レベルの電圧のうちの1つを有する出力電圧信号Voutを生成し、この出力電圧信号Voutを駆動信号として出力する。この際、n個の差動増幅回路10から出力されたn個の駆動信号は、駆動信号S1~Snとして表示パネル25のデータ線DL1~DLnに夫々供給される。
【0131】
ここで、図9に示されるデータドライバ18の出力チャネル毎に設けられるデコーダ50及び差動増幅回路10、並びに参照電圧生成回路90として、図2図5、又は図6に示されるDA変換器100_1、100_2又は100_3を採用する。例えば、図9に示すデコーダ50として、図2図5、又は図6に示されるデコーダ50_1又は50_2を採用する。また、差動増幅回路10として、図2図5、又は図6に示されるPチャネル差動段制御回路51又は52、及び差動増幅回路10_1、10_2又は10_3を採用する。これにより、データドライバ18自体の省面積化を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0132】
10_1~10_3 差動増幅回路
11_1~11_N Nチャネル型の差動段
12_1~12_3 Pチャネル型の差動段
15 出力増幅段
50_1、50_2 デコーダ
51、52 Pチャネル差動段制御回路
100_1~100_3 DA変換器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9