(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157761
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 3/08 20060101AFI20241031BHJP
F28D 9/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F28F3/08 301Z
F28D9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072308
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋本 明人
(72)【発明者】
【氏名】寺沢 雅喜
(72)【発明者】
【氏名】大月 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】松本 正之
(72)【発明者】
【氏名】横山 創
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 晴彦
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA01
3L103AA11
3L103BB50
3L103CC26
3L103DD15
3L103DD51
(57)【要約】
【課題】流路の内圧による変形を抑制することができると共に、製造性を向上させることができる熱交換器を提供すること。
【解決手段】熱交換器1において、流路4の第一側Z1を覆うプレート部材2の第二側Z2の面を流路側第二面22とし、流路4の第二側Z2を覆うプレート部材2の第一側Z1の面を流路側第一面21とする。また、流路側第二面22に固定された変形抑制部3を第一抑制部31とし、流路側第一面21に固定された変形抑制部3を第二抑制部32とする。このとき、第一抑制部31は、第二抑制部32の一部よりも第二側Z2に位置する第一重なり部311を有する。また、第二抑制部32は、第一重なり部311よりも第一側Z1に位置する第二重なり部321を有する。積層方向Zから見たとき、第一重なり部311と、第二重なり部321とは、互いに重なっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに積層された複数のプレート部材(2)と、
少なくとも、上記複数のプレート部材の積層方向(Z)において互いに隣接する一対の上記プレート部材に覆われることにより形成されると共に、熱交換を行う流体が流れる流路(4)と、を備え、
上記積層方向の一方側を第一側(Z1)とし、上記積層方向の他方側を第二側(Z2)としたとき、上記流路は、上記積層方向において互いに隣接する一対の上記プレート部材によって、上記第一側及び上記第二側の両側から覆われており、
上記流路の上記第一側を覆う上記プレート部材の上記第二側の面を流路側第二面(22)とし、上記流路の上記第二側を覆う上記プレート部材の上記第一側の面を流路側第一面(21)としたとき、上記流路側第二面及び上記流路側第一面のそれぞれには変形抑制部(3)が固定されており、
上記流路側第二面に固定された上記変形抑制部を第一抑制部(31)とし、上記流路側第一面に固定された上記変形抑制部を第二抑制部(32)としたとき、上記第一抑制部は、上記第二抑制部の一部よりも第二側に位置する第一重なり部(311)を有すると共に、上記第二抑制部は、上記第一重なり部よりも上記第一側に位置する第二重なり部(321)を有し、
上記積層方向から見たとき、上記第一重なり部と、上記第二重なり部とは、互いに重なっている、熱交換器(1)。
【請求項2】
上記変形抑制部は、上記プレート部材に固定された被固定部(33)を有し、上記積層方向から見て、上記第一重なり部と上記第二重なり部とが互いに重なる領域を重なり領域(R)としたとき、
上記積層方向から見たときの、上記第一抑制部の上記被固定部と上記第一重なり部との並び方向(Y)における上記重なり領域の長さ(L1)は、上記変形抑制部の厚み(T1)以上である、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
上記積層方向から見たときの、上記並び方向における上記重なり領域の長さは、上記変形抑制部の厚みの2倍以上である、請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
上記第一重なり部と上記第二抑制部とは、隙間(10)を介して、上記積層方向に互いに対向していると共に、上記第二重なり部と上記第一抑制部とは、上記隙間を介して、上記積層方向に互いに対向している、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、流体の熱交換を行うフラットチューブが知られている。特許文献1に記載のフラットチューブは、流れチャンネルを覆う2つの広幅側部を有すると共に、流れチャンネルを画定する内側曲げ部を有する。この内側曲げ部は、広幅側部の一部を屈曲させることにより形成されていると共に、一方の広幅側部から他方の広幅側部へと伸延している。特許文献1に記載のフラットチューブは、内側曲げ部を形成することにより、流れチャンネルの内圧による変形を抑制し、耐膨張性を向上させようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のフラットチューブにおいて、内側曲げ部は、その遠位端が、広幅側部にロウ付けによって固定されている。そのため、内側曲げ部によって流れチャンネルの内圧による変形を抑制しようとした場合、広幅側部の一部を屈曲させて内側曲げ部を形成すると共に、ロウ付けにより内側曲げ部と広幅側部とを互いに接合する必要があり、製造工程が複雑になりやすい。それゆえ、製造性向上の観点から、改善の余地があるといえる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、流路の内圧による変形を抑制することができると共に、製造性を向上させることができる熱交換器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、互いに積層された複数のプレート部材(2)と、
少なくとも、上記複数のプレート部材の積層方向(Z)において互いに隣接する一対の上記プレート部材に覆われることにより形成されると共に、熱交換を行う流体が流れる流路(4)と、を備え、
上記積層方向の一方側を第一側(Z1)とし、上記積層方向の他方側を第二側(Z2)としたとき、上記流路は、上記積層方向において互いに隣接する一対の上記プレート部材によって、上記第一側及び上記第二側の両側から覆われており、
上記流路の上記第一側を覆う上記プレート部材の上記第二側の面を流路側第二面(22)とし、上記流路の上記第二側を覆う上記プレート部材の上記第一側の面を流路側第一面(21)としたとき、上記流路側第二面及び上記流路側第一面のそれぞれには変形抑制部(3)が固定されており、
上記流路側第二面に固定された上記変形抑制部を第一抑制部(31)とし、上記流路側第一面に固定された上記変形抑制部を第二抑制部(32)としたとき、上記第一抑制部は、上記第二抑制部の一部よりも第二側に位置する第一重なり部(311)を有すると共に、上記第二抑制部は、上記第一重なり部よりも上記第一側に位置する第二重なり部(321)を有し、
上記積層方向から見たとき、上記第一重なり部と、上記第二重なり部とは、互いに重なっている、熱交換器(1)にある。
【発明の効果】
【0007】
上記熱交換器は、第一重なり部と第二重なり部とを有する。それゆえ、流路の内圧によってプレート部材が変形することを抑制することができる。また、積層方向から見て、第一重なり部と第二重なり部とが互いに重なるように、プレート部材同士を組み付けることにより、熱交換器を製造することができる。それゆえ、流路の内圧によってプレート部材が変形することを抑制することができる熱交換器を、容易に製造することができる。その結果、製造性を向上させることができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、流路の内圧による変形を抑制することができると共に、製造性を向上させることができる熱交換器を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態1における、第1流路を覆う外側プレートを第二側から見た図。
【
図3】実施形態1における、変形抑制部付近の、積層方向に沿った断面図。
【
図4】実施形態1における、変形抑制部の厚み等を示す断面図であって、
図5のIV-IV線矢視断面図。
【
図5】実施形態1における、第一抑制部及び第二抑制部を積層方向から見た図であって、
図4のV矢視図。
【
図6】実施形態1における、熱交換器の外周部の、積層方向に沿った断面図。
【
図7】実施形態1における、プレート部材とパイプとの接合部付近の断面図。
【
図8】実施形態1における、変形抑制部をプレート部材に溶接する様子を示す断面図。
【
図9】実施形態1における、熱交換器の製造時において、プレート部材を並び方向へスライドさせる様子を示す断面図。
【
図10】実施形態1における、熱交換器の製造時において、プレート部材をスライドさせる直前の、挿通孔に対するパイプの位置を示す図。
【
図11】実施形態1における、熱交換器の製造時において、プレート部材をスライドさせた直後の、挿通孔に対するパイプの位置を示す図。
【
図12】実施形態2における、第1流路を覆う外側プレートを第二側から見た図。
【
図13】実施形態3における、第1流路を覆う外側プレートを第二側から見た図。
【
図14】実施形態4における、第1流路を覆う外側プレートを第二側から見た図。
【
図15】実施形態5における、変形抑制部付近の、積層方向に沿った断面図。
【
図16】実施形態6における、変形抑制部付近の、積層方向に沿った断面図。
【
図17】実施形態6における、変形抑制部付近の、積層方向に沿った断面図であって、変形抑制部の長手方向に直交する断面図。
【
図18】実施形態6における、プレート部材同士を組み付ける様子を示す断面図。
【
図19】実施形態7における、変形抑制部付近の、積層方向に沿った断面図。
【
図20】実施形態7における、変形抑制部付近の、積層方向に沿った断面図であって、変形抑制部の長手方向に直交する断面図。
【
図21】
図20から、断面となっている第一抑制部及び第二抑制部を除いた断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
熱交換器に係る実施形態について、
図1~
図11を参照して説明する。
本形態の熱交換器1は、
図1、
図3、
図4、
図6に示すごとく、互いに積層された複数のプレート部材2と、熱交換を行う流体が流れる流路4と、を備える。流路4は、
図3、
図4、
図6に示すごとく、少なくとも、複数のプレート部材2の積層方向Zにおいて互いに隣接する一対のプレート部材2に覆われることにより形成される。
【0011】
積層方向Zの一方側を第一側Z1とし、積層方向Zの他方側を第二側Z2とする。このとき、流路4は、積層方向Zにおいて互いに隣接する一対のプレート部材2によって、第一側Z1及び第二側Z2の両側から覆われている。
【0012】
図3、
図4に示すごとく、流路4の第一側Z1を覆うプレート部材2の第二側Z2の面を流路側第二面22とし、流路4の第二側Z2を覆うプレート部材2の第一側Z1の面を流路側第一面21とする。このとき、流路側第二面22及び流路側第一面21のそれぞれには変形抑制部3が固定されている。
【0013】
流路側第二面22に固定された変形抑制部3を第一抑制部31とし、流路側第一面21に固定された変形抑制部3を第二抑制部32とする。このとき、第一抑制部31は、第二抑制部32の一部よりも第二側Z2に位置する第一重なり部311を有する。また、第二抑制部32は、第一重なり部311よりも第一側Z1に位置する第二重なり部321を有する。
図5に示すごとく、積層方向Zから見たとき、第一重なり部311と、第二重なり部321とは、互いに重なっている。なお、
図5においては、便宜上、プレート部材2の図示を省略している。
【0014】
本形態の熱交換器1は、例えば、高温の水蒸気を電気分解して水素を生成するSOEC(固体酸化物形電解セル、Solid Oxide Electrolysis Cell)における排熱を回収する手段として用いることができる。また、本形態の熱交換器1は、積層方向Zから見たとき(図示略)、角丸四角形状を有する。
【0015】
本形態の熱交換器1は、SOEC(図示略)に供給する水蒸気及び空気を、SOECから排出される水素を含有するガス、及び酸素を含有するガスによって加熱する。本形態の熱交換器1は、複数の流路4を備える。具体的には、熱交換器1は、
図3、
図6に示すごとく、4つの流路4を備える。本形態において、最も第一側Z1に形成された流路4である第1流路41には、SOECから排出された酸素を含有するガスが流れる。つまり、第1流路41を流れるガスは、SOECにおいて水蒸気が分解されることにより生成された酸素を含有する。また、第1流路41の第二側Z2に形成された流路4である第2流路42には、SOECに供給する空気が流れる。第2流路42の第二側Z2に形成された流路4である第3流路43には、SOECから排出された水素を含有するガスが流れる。つまり、第3流路43を流れるガスは、SOECにおいて水蒸気が分解されることにより生成された水素を含有する。また、最も第二側Z2に形成された流路4である第4流路44には、SOECに供給する水蒸気が流れる。熱交換器1は、プレート部材2を介して、SOECから排出された高温のガスから、SOECに供給する水蒸気及び空気へと熱を伝達させることにより、SOECにおける排熱を回収する。なお、それぞれの流路4に流れる流体は、目的に応じて、任意に選択することができる。
【0016】
また、熱交換器1には、
図1に示すごとく、流路4に水蒸気等を流入、もしくは流路4から水蒸気等を流出させるためのパイプ61、62、63、64、65、66、67、68が設けられている。それぞれのパイプ61、62、63、64、65、66、67、68は、
図7に示すごとく、プレート部材2に対し、TIG溶接又はレーザー溶接によって固定されていると共に、流路4に連通している。
【0017】
SOECから排出された酸素を含有するガスは、パイプ61から第1流路41に流入すると共に、
図1に示すパイプ62を通って、第1流路41から外部へと流出する。また、SOECに供給する空気は、パイプ63から第2流路42に流入すると共に、パイプ64を通って、第2流路42からSOECへと流出する。また、SOECから排出された水素を含むガスは、パイプ65から第3流路43に流入すると共に、パイプ66を通って、第3流路43から外部へと流出する。また、SOECに供給する水蒸気は、パイプ67から第4流路44に流入すると共に、パイプ68を通って、第4流路44からSOECへと流出する。第1流路41及び第3流路43に流入するSOECから排出されたガスの温度は、例えば、700℃程度とすることができる。また、第2流路42に流入する空気の温度は、例えば、20℃程度の常温とすることができ、第4流路44に流入する水蒸気の温度は、例えば、100℃以上とすることができる。
【0018】
また、本形態の熱交換器1は、
図3に示すごとく、5つのプレート部材2を有する。それぞれのプレート部材2は、平板状を呈すると共に、流路4に面する流路側第一面21及び流路側第二面22が積層方向Zに直交するように形成されている。また、それぞれのプレート部材2は、プレート部材2の厚み方向に積層していると共に、互いに平行となるように設けられている。プレート部材2は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料からなるものとすることができる。
【0019】
複数のプレート部材2は、積層方向Zにおける外側に配置された一対の外側プレート23と、一対の外側プレート23同士の間に配置された内側プレート24と、を有する。本形態においては、3つの内側プレート24を有する。
図4に示す外側プレート23の厚みT2は、内側プレート24の厚みT3よりも厚い。厚みT2は、例えば、1mmよりも厚くすることができる。また、厚みT3は、例えば、1mm以下とすることができる。
【0020】
それぞれのプレート部材2は、
図2に示すごとく、積層方向Zから見たとき、角丸四角形状を有する。積層方向Zから見たときのプレート部材2の面積は、例えば、3000cm
2以上とすることができる。また、本形態の熱交換器1は、内側プレート24及び変形抑制部3を介して、各流路4を流れる流体同士の熱交換を行うよう構成されている。
【0021】
変形抑制部3は、長尺形状を有する。本形態において、変形抑制部3の長手方向は、積層方向Zと直交する方向となっている。本形態において、変形抑制部3は、例えば、平板状の金属部材を屈曲させることにより、形成することができる。変形抑制部3は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料からなるものとすることができる。
【0022】
変形抑制部3は、抵抗溶接によって、プレート部材2に固定されている。抵抗溶接によって、変形抑制部3をプレート部材2に接合したことにより、変形抑制部3及びプレート部材2には、それぞれ複数の溶接痕511が形成されている。
【0023】
また、本形態の熱交換器1は、1つの流路4内に、2つの第一抑制部31と2つの第二抑制部32とが設けられている。第1流路41を覆う外側プレート23には、2つの第一抑制部31が固定されており、第4流路44を覆う外側プレート23には、2つの第二抑制部32が固定されている。また、3つの内側プレート24のそれぞれには、2つの第一抑制部31と2つの第二抑制部32とが固定されている。つまり、本形態の熱交換器1は、8つの第一抑制部31と、8つの第二抑制部32を有する。本形態において、8つの第一抑制部31は、互いに同等の形状を呈しており、8つの第二抑制部32も、互いに同等の形状を呈する。また、第一抑制部31と第二抑制部32とは、
図4に示すごとく、第一重なり部311と第二重なり部321との間に形成された隙間10にある所定の点(図示略)を中心として、互いに点対称となっている。
【0024】
本形態において、各流路4内にある2つの第一抑制部31は、
図2に示すごとく、一方の第一抑制部31の長手方向が、他方の第一抑制部31の長手方向に沿うように設けられている。また、各流路4内にある2つの第二抑制部32も、一方の第二抑制部32の長手方向が、他方の第二抑制部32の長手方向に沿うように設けられている。また、積層方向Zから見たとき、各流路4に設けられた第一抑制部31は、互いに重なるように配置されている。また、積層方向Zから見たとき、各流路4に設けられた第二抑制部32も、互いに重なるように配置されている。
【0025】
変形抑制部3は、
図4に示すごとく、プレート部材2に固定された被固定部33を有する。また、
図5に示すごとく、積層方向Zから見て、第一重なり部311と第二重なり部321とが互いに重なる領域を重なり領域Rとする。このとき、積層方向Zから見たときの、第一抑制部31の被固定部33と第一重なり部311との並び方向Yにおける重なり領域Rの長さL1は、
図4に示す変形抑制部3の厚みT1以上である。また、長さL1は、厚みT1の2倍以上であることが好ましい。また、本形態において、並び方向Yは、積層方向Zと変形抑制部3の長手方向との双方に直交する方向でもある。
【0026】
本形態において、被固定部33は、平板状を呈している。また、本形態においては、積層方向Zから見たとき、被固定部33は、重なり領域Rと互いに重ならないように形成されている。
【0027】
また、変形抑制部3は、平板状を呈すると共に、プレート部材2と平行になるように形成された平行部35を有する。また、変形抑制部3は、被固定部33と平行部35とを繋ぐ繋ぎ部34を有する。変形抑制部3において、被固定部33と平行部35とは、それぞれ繋ぎ部34から並び方向Yの一方側に突出していると共に、繋ぎ部34から互いに同じ方向に突出している。第一抑制部31における繋ぎ部34からの平行部35の突出方向と、第二抑制部32における繋ぎ部34からの平行部35の突出方向とは、互いに反対側となっている。また、第一抑制部31の繋ぎ部34は、並び方向Yの一方側であって、第二重なり部321とは反対側に凸となるように湾曲している。また、第二抑制部32の繋ぎ部34は、並び方向Yの一方側であって、第一重なり部311とは反対側に凸となるように湾曲している。
【0028】
第一抑制部31の平行部35は、第二抑制部32の平行部35を挟んで、第一抑制部31の一部と積層方向Zに対向している。また、第二抑制部32の平行部35は、第一抑制部31の平行部35を挟んで、第二抑制部32の一部と積層方向Zに対向している。つまり、本形態においては、第一抑制部31の平行部35が、第一重なり部311を有すると共に、第二抑制部32の平行部35が、第二重なり部321を有する。
【0029】
また、
図5に示す長さL1は、
図4に示す第一抑制部31の平行部35の並び方向Yにおける長さL2の半分以上である。本形態においては、第一抑制部31の平行部35の全体が第一重なり部311となっている。また、長さL1は、第二抑制部32の平行部35の並び方向Yにおける長さL3の半分以上である。本形態においては、第二抑制部32の平行部35の全体が第二重なり部321となっている。本形態において、長さL2と長さL3とは、互いに同等の長さとなっている。
【0030】
また、長さL1は、
図4に示す変形抑制部3の厚みT1よりも長いと共に、内側プレート24の厚みT3よりも長い。本形態において、長さL1は、厚みT1の2倍以上の長さであると共に、厚みT3の2倍以上の長さである。また、厚みT1は、厚みT3以上である。
【0031】
本形態において、変形抑制部3の長手方向における重なり領域Rの長さは、並び方向Yにおける変形抑制部3の長さよりも長い。また、変形抑制部3の長手方向において、重なり領域Rの長さは、変形抑制部3の長さと同等と長さである。
【0032】
また、第一重なり部311と第二抑制部32とは、隙間10を介して、積層方向Zに互いに対向している。また、第二重なり部321と第一抑制部31とは、隙間10を介して、積層方向Zに互いに対向している。隙間10の積層方向Zの長さは、例えば、0.1mm程度とすることができる。
【0033】
また、複数のプレート部材2は、
図6に示すごとく、スペーサ7を介在させて積層されている。スペーサ7は、熱交換器1の外周部の全周にわたって、プレート部材2の外周端部同士の間に介在している。スペーサ7は、その延設方向に直交する断面形状がU字形状となっている。また、スペーサ7は、
図2に示すごとく、環状に形成されている。スペーサ7は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料からなるものとすることができる。
【0034】
スペーサ7は、
図6に示すごとく、一対の被接合部71と、一対の被接合部71同士を接続する接続部72と、を有する。一対の被接合部71は、積層方向Zに互いに対向すると共に、積層方向Zにおいて互いに隣接する一対のプレート部材2にそれぞれ接合される。接続部72は、流路4の外周側を覆っている。つまり、流路4は、積層方向Zに隣接する一対のプレート部材2とスペーサ7とによって覆われている。
【0035】
プレート部材2の外周端部と被接合部71の外周端部とは、溶接によって互いに接合されている。プレート部材2の外周端部と被接合部71の外周端部との溶接部である外周溶接部52は、プレート部材2と被接合部71との間を封止している。
【0036】
スペーサ7において、一対の被接合部71は、外部に連通する対向空間70を介して、積層方向Zに互いに対向している。スペーサ7において、対向空間70には、一対の被接合部71のそれぞれと当接する介在部材73が介在している。本形態において、介在部材73は、スペーサ7に対し、溶接によって固定されている。介在部材73は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料からなるものとすることができる。
【0037】
また、外側プレート23と被接合部71とは、内側溶接部53によっても、互いに接合されている。内側溶接部53は、外側プレート23と被接合部71との抵抗溶接によって形成される。
【0038】
また、
図7に示すごとく、第2流路42の第一側Z1を覆う内側プレート24には、連通孔201が形成されている。具体的には、プレート部材2の一部が、積層方向Zにおける第一側Z1へ突出することにより形成された2つのプレート突出部25に、それぞれ連通孔201が形成されている。この内側プレート24における連通孔201の周囲には、パイプ63、64が接合されている。また、第3流路43の第二側Z2を覆う内側プレート24にも、第二側Z2へ突出した2つのプレート突出部(図示略)に、それぞれ連通孔(図示略)が形成されており、この内側プレート24における連通孔の周囲には、パイプ65、66が接合されている。また、第1流路41を形成する外側プレート23にも、第一側Z1へ突出した2つのプレート突出部25に、それぞれ連通孔201が形成されている。この外側プレート23における連通孔201の周囲には、パイプ61、62が接合されている。また、第1流路41を形成する外側プレート23には、パイプ63、64を挿通させる挿通孔202が形成されている。また、第4流路44を形成する外側プレート23にも、第二側Z2へ突出した2つのプレート突出部(図示略)に、それぞれ連通孔(図示略)が形成されている。この外側プレート23における2つの連通孔(図示略)の周囲には、パイプ67、68が接合されている。また、第4流路44を形成する外側プレート23には、パイプ65、66を挿通させる挿通孔(図示略)が形成されている。
図11に示すごとく、外側プレート23に形成された挿通孔202の内径は、パイプ63、64、65、66の外径よりも大きい。つまり、積層方向Zから見たとき、挿通孔202の内周面とパイプ63、64、65、66の外周面との間には隙間100が形成されている。
【0039】
次に、本形態の熱交換器1の製造方法について説明する。
本形態の熱交換器1を製造するにあたっては、まず、それぞれのプレート部材2に、変形抑制部3を固定する。具体的には、
図8に示すごとく、プレート部材2と変形抑制部3の被固定部33とを積層方向Zに互いに当接させつつ、溶接電極11とアース電極12とによって、プレート部材2及び被固定部33を積層方向Zに挟持した状態にて抵抗溶接を行う。これにより、プレート部材2と変形抑制部3とを、溶接部51によって互いに接合することができる。また、プレート部材2と変形抑制部3との溶接は、変形抑制部3の長手方向に沿って、所定の間隔をおいて、複数の溶接部51が形成されるように行う。プレート部材2と変形抑制部3との抵抗溶接によって、
図2に示すごとく、被固定部33及びプレート部材2には、複数の溶接痕511が形成される。
【0040】
次に、変形抑制部3が固定されたプレート部材2を用いて、流路4を形成する。具体的には、
図9に示すごとく、第二抑制部32が固定されたプレート部材2の流路側第一面21と、第一抑制部31が固定されたプレート部材2の流路側第二面22とを積層方向Zに互いに対向するように、一対のプレート部材2を配置する。また、このとき、第一抑制部31の平行部35が、第二抑制部32の平行部35から、並び方向Yにおいて、離れた位置となるように、一対のプレート部材2を配置する。また、プレート部材2を配置する際に、一対のプレート部材2同士の間にスペーサ7を介在させておく。そして、積層方向Zから見て、第一抑制部31の平行部35と第二抑制部32の平行部35とが互いに重なるように、
図9の矢印Mに示すごとく、一方のプレート部材2を、他方のプレート部材2に対し、相対的に並び方向Yの一方側へスライドさせる。これにより、
図4、
図5に示すごとく、重なり領域Rを形成することができる。また、重なり領域Rを形成したときに、一対のプレート部材2の外周端部同士が、積層方向Zから見たときに互いに重なるように、プレート部材2の所定の位置に変形抑制部3が固定されている。
【0041】
また、プレート部材2をスライドさせることによって重なり領域Rを形成する際、外側プレート23には、予め抵抗溶接によってスペーサ7を固定しておく。さらに、第1流路41を形成する際には、内側プレート24に接合されたパイプ63、64を、外側プレート23の挿通孔202に挿通させる。
図10に示すごとく、プレート部材2をスライドさせる直前において、パイプ63、64の中心軸(図示略)は、挿通孔202の中心軸(図示略)から偏心している。この状態から、内側プレート24に対し、外側プレート23を並び方向Yの一方側へ相対的にスライドさせて重なり領域Rを形成する。これにより、
図11に示すごとく、挿通孔202に対し、パイプ63、64も相対的に移動し、パイプ63、64の中心軸が、挿通孔202の中心軸に近づく。また、第4流路44を形成する内側プレート24と外側プレート23も、同様に組み付ける。また、重なり領域Rを形成した状態において、パイプ63、64、65、66に接合されたプレート突出部25と挿通孔202の内周面との間には隙間100が形成されている。
【0042】
次に、プレート部材2の外周端部とスペーサ7の被接合部71の外周端部とを、TIG溶接又はレーザー溶接によって、外周側から互いに溶接する。これにより、外周溶接部52が形成され、プレート部材2とスペーサ7との間が封止される。
【0043】
次に、外周溶接部52を形成した後、対向空間70に介在部材73を配置する。そして、介在部材73をスペーサ7に対し溶接によって固定する。また、
図7に示すごとく、外側プレート23の挿通孔202に挿通されたパイプ63、64、65、66と外側プレート23とを、環状の接続部材60を用いて、TIG溶接又はレーザー溶接によって互いに固定する。これにより、パイプ63、64、65、66と外側プレート23との間の隙間100が封止され、本形態の熱交換器1が製造される。
【0044】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
上記熱交換器1は、第一重なり部311と第二重なり部321とを有する。それゆえ、流路4の内圧によってプレート部材2が変形することを抑制することができる。また、積層方向Zから見て、第一重なり部311と第二重なり部321とが互いに重なるように、プレート部材2同士を組み付けることにより、熱交換器1を製造することができる。それゆえ、流路4の内圧によってプレート部材2が変形することを抑制することができる熱交換器1を、容易に製造することができる。その結果、製造性を向上させることができる。
【0045】
仮に、基本構造を実施形態1の熱交換器1と同様にしつつ、変形抑制部を備えない熱交換器を想定する。この熱交換器の場合、積層方向に互いに対向する一対のプレート部材同士は、外周側のみが互いに固定されているため、流路の内圧が比較的高い場合に、プレート部材の中央部が外側へ向かって膨らむおそれがある。そこで、本形態の熱交換器1は、変形抑制部3を備える。それゆえ、流路4の内圧によってプレート部材2の中央部が外側へ向かって膨らもうとした場合、第一重なり部311と第二重なり部321とが積層方向Zに互いに係止することにより、プレート部材2の変形を抑制することができる。つまり、第一重なり部311と第二重なり部321とが互いに引っ掛かることにより、プレート部材2の中央部が外側へ向かって膨らむことを抑えることができる。その結果、流路4の内圧が比較的高い場合であっても、外周溶接部52に負荷がかかることを確実に抑制することができ、流路4の気密性を確実に確保することができる。また、プレート部材2の変形による流路4の容積の変化を確実に抑制することができ、熱交換性能の低下を確実に抑制することができる。
【0046】
また、仮に、基本構造を実施形態1の熱交換器1と同様にしつつ、変形抑制部の代わりに、プレート部材の変形を抑制するための部材を流路側第一面と流路側第二面との双方に溶接した熱交換器を想定する。この熱交換器を製造する際に、プレート部材の中央部付近において、流路側第一面と流路側第二面との双方に、変形を抑制するための部材を溶接しようとしたとき、本形態のように流路の高さが比較的低いと、溶接を行いにくい。また、流路側第一面及び流路側第二面のうち、一方のみに変形を抑制するための部材を溶接した場合、熱交換器が積層方向に加圧されることによる熱交換器の潰れは抑制することができるものの、プレート部材の中央部が膨らむことを抑制しにくい。そこで、本形態の熱交換器1は、第一抑制部31と第二抑制部32とを備える。それゆえ、本形態の熱交換器1は、第二抑制部32が固定されたプレート部材2に対し、第一抑制部31が固定されたプレート部材2を、並び方向Yへ相対的にスライドさせることにより組み付けることができる。それゆえ、プレート部材2の変形を抑制することができる熱交換器1を、容易に製造することができる。
【0047】
また、本形態の熱交換器1は、プレート部材2とスペーサ7との溶接を行う際、プレート部材2への入熱量が多くなったとしても、プレート部材2の変形を確実に抑制することができる。つまり、仮に、基本構造を実施形態1の熱交換器1と同様にしつつ、変形抑制部を備えない熱交換器を想定する。この熱交換器の場合、プレート部材とスペーサとの溶接時において、溶接の出力が高くなることや、溶接を行う時間が長くなること等により、プレート部材への入熱量が多くなると、プレート部材の中央部が外側へ向かって膨らむなど、プレート部材が変形するおそれがある。そこで、本形態の熱交換器1は、変形抑制部3を有する。それゆえ、プレート部材2とスペーサ7との溶接の際、万が一、入熱量が多くなってプレート部材2が変形しそうになったとしても、第一重なり部311と第二重なり部321とが積層方向Zに互いに係止するため、プレート部材2の変形を抑制することができる。その結果、流路の内圧の低下や熱交換性能の低下を抑制することができる。
【0048】
長さL1は、厚みT1以上である。それゆえ、流路4の内圧等によってプレート部材2の中央部が外側へ向かって膨らもうとした場合、第一重なり部311と第二重なり部321とを確実に係止させることができる。それゆえ、プレート部材2の変形を確実に抑制することができる。また、長さL1は、厚みT1の2倍以上であることが好ましい。この場合には、プレート部材2が変形することを一層確実に抑制することができる。
【0049】
第一重なり部311と第二抑制部32とは、隙間10を介して、積層方向Zに互いに対向している。また、第二重なり部321と第一抑制部31とは、隙間10を介して、積層方向Zに互いに対向している。それゆえ、熱交換器1を製造する際に、プレート部材2同士を組み付けやすい。つまり、隙間10が形成されていない場合、プレート部材2をスライドさせて組み付ける際、重なり領域Rが形成される前に、第一抑制部31と第二抑制部32とが並び方向Yに互いに当接するおそれがある。そこで、本形態の熱交換器1は、隙間10を備える。これにより、重なり領域Rを形成する際、一方のプレート部材2に対し、他方のプレート部材2をスムーズにスライドさせることができる。その結果、製造性を向上させることができる。
【0050】
また、熱交換器1は、上述のごとく、変形抑制部3を備える。そのため、プレート部材2の厚みを薄くしたとしても、プレート部材2が変形することを抑制しやすい。それゆえ、流路4を流れる流体同士の熱交換を効率的に行いやすい。
【0051】
また、変形抑制部3は、プレート部材2に固定されていると共に、流路4に面している。それゆえ、プレート部材2及び変形抑制部3を介して、流体同士の熱交換を行うことができる。その結果、流体同士の熱交換効率を向上させることができる。
【0052】
変形抑制部3は、平行部35を有する。それゆえ、熱交換器1を製造する際、プレート部材2をスライドさせることにより、重なり領域Rを形成しやすい。その結果、製造性を向上させることができる。
【0053】
熱交換器1は、第一重なり部311と第二重なり部321とを有するため、熱交換器1が積層方向Zに加圧されたとしても、熱交換器1が積層方向Zに潰れて流路4の容積が小さくなることを抑制しやすい。それゆえ、流路4の内圧の上昇や、流路4を流れる流体の流量が少なくなることによる熱交換性能の低下を抑制することができる。
【0054】
また、積層方向Zから見たとき、各流路4に設けられた第一抑制部31は、互いに重なるように配置されている。また、積層方向Zから見たとき、各流路4に設けられた第二抑制部32も、互いに重なるように配置されている。それゆえ、熱交換器1が積層方向Zに加圧されたとしても、熱交換器1が積層方向Zに潰れて流路4の容積が小さくなることを一層抑制しやすい。
【0055】
積層方向Zから見たとき、被固定部33は、重なり領域Rと互いに重ならないように形成されている。それゆえ、被固定部33をプレート部材2に確実かつ容易に接合しやすい。それゆえ、製造性を向上させることができる。
【0056】
また、外側プレート23の厚みT2は、内側プレート24の厚みT3よりも厚い。それゆえ、流路4の内圧により、外側プレート23が変形することを一層確実に抑制することができる。つまり、内側プレート24は、2つの流路4の間に配置されているため、外側プレート23と比較し、流路4の内圧による変形が生じにくい。一方、外側プレート23は、積層方向Zにおける一方側のみに流路4が隣接しているため、内側プレート24と比較し、流路4の内圧によって変形しやすい。そこで、本形態においては、厚みT2を厚みT3よりも厚くしている。そのため、外側プレート23の剛性が高くなることにより、流路4の内圧によって外側プレート23が変形することを一層確実に抑制することができる。その結果、流路4の容積が変化することを一層確実に抑制することができる。また、厚みT2を厚くすることにより、熱交換器1の保温性を上昇させやすい。それゆえ、流路4を流れる流体同士の熱交換を一層効率的に行いやすい。
【0057】
プレート部材2は、平板状を呈する。それゆえ、プレート部材2を製造しやすい。また、熱交換器1を製造する際、一方のプレート部材2に対し、他方のプレート部材2を並び方向Yへスライドさせやすい。その結果、製造性を向上させやすい。
【0058】
厚みT1は、T3以上である。それゆえ、プレート部材2が変形することを一層確実に抑制することができる。
【0059】
プレート部材2及び変形抑制部3は、ステンレス鋼からなる。それゆえ、熱交換器1の耐熱性を確実に確保することができる。
【0060】
以上のごとく、本形態によれば、流路4の内圧による変形を抑制することができると共に、製造性を向上させることができる熱交換器1を提供することができる。
【0061】
(実施形態2)
本形態は、
図12に示すごとく、複数の変形抑制部3を放射状に配置した形態である。
【0062】
本形態の熱交換器1は、
図12に示すごとく、各流路4内に、積層方向Zから見て、長手方向が互いに交差する複数の変形抑制部3を備える。本形態において、各流路4には、4つの第一抑制部31と、4つの第二抑制部(図示略)とが設けられている。各流路4に設けられた4つの第一抑制部31及び4つの第二抑制部のうち、2つの第一抑制部31と、2つの第二抑制部とは、長手方向が互いに同じ方向となっている。また、各流路4に設けられた残りの2つの第一抑制部31と、残りの2つの第二抑制部とは、長手方向が互いに同じ方向となっている。各流路4に設けられた2つの第一抑制部31の長手方向は、残りの2つの第一抑制部31の長手方向に対し、直交する方向となっている。また、各流路4に設けられた2つの第二抑制部の長手方向も、残りの2つの第二抑制部の長手方向に対し、直交する方向となっている。
【0063】
本形態においては、熱交換器1を製造する際、第二抑制部が固定されたプレート部材2に対し、第一抑制部31が固定されたプレート部材2を、積層方向Zから見たときのパイプ61とパイプ64(
図1参照)との並び方向の一方側へ、相対的にスライドさせる。これにより、4つの重なり領域(図示略)を形成することができる。ただし、本形態の熱交換器1は、2つずつ重なり領域を形成して、組み付けることもできる。つまり、まず、長手方向が互いに同じ方向である2つの第一抑制部31と、2つの第二抑制部とによって、2つの重なり領域を形成するように、プレート部材2をスライドさせる。その後、2つの重なり領域を形成させた状態のまま、残りの2つの第一抑制部31と、残りの2つの第二抑制部とによって重なり領域が形成されるように、プレート部材2をスライドさせることにより、組み付けることができる。
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0064】
熱交換器1は、各流路4内に、積層方向Zから見て、長手方向が互いに交差する複数の変形抑制部3を備える。それゆえ、流路4内の流体の流れが乱流となりやすい。それゆえ、各流路4を流れる流体同士の熱交換を一層効率的に行いやすい。その結果、熱交換効率を一層向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0065】
(実施形態3)
本形態は、
図13に示すごとく、実施形態1に対し、変形抑制部3の数を増やした形態である。
【0066】
本形態において、各流路4には、5つの第一抑制部31と5つの第二抑制部(図示略)とが設けられている。5つの第一抑制部31と5つの第二抑制部とは、長手方向が、互いに同じ方向となっている。
その他の構成及び作用効果は、実施形態1と同様である。
【0067】
(実施形態4)
本形態は、
図14に示すごとく、実施形態3に対し、変形抑制部3の配置を変更した形態である。
【0068】
本形態の熱交換器1は、
図14に示すごとく、各流路4内に、積層方向Zから見て、長手方向が互いに交差する複数の変形抑制部3を備える。各流路4の中央部には、第一抑制部31と第二抑制部とが1つずつ設けられている。流路4の中央部に設けられた第一抑制部31及び第二抑制部は、積層方向Zから見たとき、4つの第一抑制部31及び4つの第二抑制部に囲まれるように配置されている。
その他は、実施形態3と同様である。
【0069】
本形態の熱交換器1は、各流路4内に、積層方向Zから見て、長手方向が互いに交差する複数の変形抑制部3を備える。それゆえ、流路4内の流体の流れが乱流となりやすい。それゆえ、各流路4を流れる流体同士の熱交換を一層効率的に行いやすい。
その他、実施形態3と同様の作用効果を有する。
【0070】
(実施形態5)
本形態は、
図15に示すごとく、実施形態1に対し、変形抑制部3の形状を変更した形態である。
【0071】
本形態において、変形抑制部3は、
図15に示すごとく、繋ぎ部34からの被固定部33の突出方向と、繋ぎ部34からの平行部35の突出方向とが、互いに反対側の方向となっている。繋ぎ部34からの被固定部33の突出方向、及び繋ぎ部34からの平行部35の突出方向は、それぞれ、並び方向Yに沿った方向となっている。そのため、それぞれの変形抑制部3は、変形抑制部3の一部同士が積層方向Zに対向しないように形成されている。また、繋ぎ部34は、積層方向Z及び並び方向Yの双方に対し傾斜するように形成されている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0072】
それぞれの変形抑制部3は、変形抑制部3の一部同士が積層方向Zに対向しないように形成されている。それゆえ、変形抑制部3の厚みを厚くしやすい。そのため、変形抑制部3の剛性を高くしやすい。その結果、流路4の内圧によるプレート部材2の変形を一層抑制することができる。また、変形抑制部3の厚みを厚くすることができるため、仮に、加工公差又は組み付け公差によって、長さL1(
図5参照)が短くなったとしても、プレート部材2が変形しようとした際、第一重なり部311と第二重なり部321とを確実に係止させることができる。その結果、プレート部材2の変形を確実に抑制することができる。また、変形抑制部3の厚みを厚くしやすいため、流路4の積層方向Zの高さを比較的低くしたとしても、プレート部材2の変形を確実に抑制することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0073】
(実施形態6)
本形態は、
図16~
図18に示すごとく、実施形態1に対し、変形抑制部3の形状を変更した形態である。
【0074】
本形態において、第一抑制部31は、
図16~
図18に示すごとく、並び方向Yの両側、かつ並び方向Yの外側へ突出した一対の第一突出部312を有する。
【0075】
第二抑制部32は、第一抑制部31の第二側Z2の端部を並び方向Yの両側から覆う一対の覆い部322を有する。一対の覆い部322は、被固定部33の並び方向Yの両端部から、第一側Z1へ向かって延設されている。また、第二抑制部32において、一対の覆い部322の第一側Z1の端部は、それぞれ、第一抑制部31側に突出した第二突出部323を有する。第二突出部323は、第一突出部312よりも第一側Z1に位置している。積層方向Zから見たとき、それぞれの第二突出部323は、第一突出部312と互いに重なっている。つまり、第二抑制部32において、それぞれの第二突出部323は、第二重なり部321を有すると共に、第一抑制部31において、それぞれの第一突出部312は、第一重なり部311を有する。
【0076】
本形態においては、熱交換器1を製造する際、
図18の矢印Mに示すごとく、第二抑制部32が固定されたプレート部材2に対し、第一抑制部31が固定されたプレート部材2を第二側Z2に相対的に移動させることにより、プレート部材2同士を組み付ける。つまり、一対のプレート部材2同士を積層方向Zに互いに近づけて、第一抑制部31を第二抑制部32に押し込むことにより、
図16、
図17に示すごとく、一対のプレート部材2同士を互いに組み付ける。
その他は、実施形態1と同様である。
【0077】
第一抑制部31は、一対の第一突出部312を有すると共に、第二抑制部32は、一対の覆い部322を有する。それゆえ、流路4の内圧を起因としてプレート部材2が変形しようとした際、一対の第一突出部312におけるそれぞれの第一重なり部311と、一対の覆い部322におけるそれぞれの第二重なり部321とを、互いに係止させることができる。その結果、プレート部材2の変形を一層抑制することができる。
【0078】
また、熱交換器1を製造する際、一対のプレート部材2同士を積層方向Zに互いに近づけて、第一抑制部31を第二抑制部32に押し込むことにより、一対のプレート部材2同士を互いに組み付ける。それゆえ、熱交換器1を容易に形成することができる。その結果、製造性を一層向上させることができる。
【0079】
また、第二抑制部32は、一対の覆い部322を有する。それゆえ、積層方向Zから見て第一重なり部311と第二重なり部321とが互いに重なるように、プレート部材2同士を組み付けた後は、第一抑制部31を固定したプレート部材2が、第二抑制部32を固定したプレート部材2に対し、並び方向Yにおいて移動しにくい。それゆえ、プレート部材2とスペーサ7とを、安定した状態にて溶接することができる。その結果、製造性を向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0080】
(実施形態7)
本形態は、
図19~
図21に示すごとく、実施形態6に対し、変形抑制部3の形状を変更した形態である。
【0081】
第一抑制部31は、
図19~
図21に示すごとく、並び方向Yの一方側の端部において、第二側Z2へ突出した凸部313を有する。また、凸部313は、後述する凹部324の内側に突出した凹部側突出部314を有する。
【0082】
第二抑制部32は、被固定部33の並び方向Yにおける一方の端部から、第一側Z1へ向かって延設された延設部325を有する。延設部325は、並び方向Yにおける一方側の面の一部が並び方向Yにおける他方側に後退することにより形成された凹部324を有する。上述のごとく、凹部324の内側に、第一抑制部31の凹部側突出部314が配置されている。本形態においては、凹部324の内側に配置された凹部側突出部314が第一重なり部311となっている。また、本形態においては、延設部325における凹部324の第一側Z1の面から第一側Z1の部分が第二重なり部321となっている。
【0083】
また、本形態の熱交換器1は、
図20に示すごとく、積層方向Zと並び方向Yとの双方に直交する方向から見て、積層方向Zに沿った所定の対称軸Sに対して、互いに線対称となる一対の第一抑制部31を有する。また、本形態の熱交換器1は、積層方向Zと並び方向Yとの双方に直交する方向から見て、対称軸Sに対して、互いに線対称となる一対の第二抑制部32を有する。
【0084】
互いに線対称となる一対の第二抑制部32のうち、一方の第二抑制部32に形成された凹部324は、並び方向Yにおける一方側に開口しており、他方の第二抑制部32に形成された凹部324は、並び方向Yにおける他方側に開口している。
【0085】
互いに線対称となる一対の第二抑制部32は、積層方向Zと並び方向Yとの双方に直交する方向から見たとき、それぞれの延設部325同士が、互いに重なるように配置されている。
【0086】
本形態においては、熱交換器1を製造する際、第二抑制部32が固定されたプレート部材2に対し、第一抑制部31が固定されたプレート部材2を、相対的に第二側Z2に移動させることにより、プレート部材2同士を組み付ける。つまり、プレート部材2に固定された第一抑制部31を、プレート部材2に固定された第二抑制部32に対し、積層方向Zに押し込んで、凹部324の内側に、凹部側突出部314を配置させることにより、プレート部材2同士を互いに組み付ける。
その他は、実施形態6と同様である。
【0087】
本形態の熱交換器1は、各流路4内において、並び方向Yにおける一方側に開口した凹部324を備える第二抑制部32と、並び方向Yにおける他方側に開口した凹部324を備える第二抑制部32と、を備える。また、凹部324の内側に、凹部側突出部314が配置されている。それゆえ、凹部324の内側に凹部側突出部314を配置させた後は、第一抑制部31を固定したプレート部材2が、第二抑制部32を固定したプレート部材2に対し、並び方向Yにおいて相対的に移動しにくい。それゆえ、プレート部材2とスペーサ7とを、安定した状態にて溶接することができる。その結果、製造性を向上させることができる。
その他、実施形態6と同様の作用効果を有する。
【0088】
また、上記実施形態1~7において、熱交換器1は、4つの流路4を備える。ただし、熱交換器は、流路を、4つより少なくすることもでき、また、流路を4つより多くすることもできる。熱交換器は、例えば、流路を1つのみ有する構成とすることもできる。この場合、熱交換器は、例えば、熱交換の対象となる対象物と、プレート部材とを互いに当接させることにより、熱交換を行う対象物と熱交換器との間で熱交換を行うことができる。
【0089】
また、上記実施形態1~7においては、すべての流路4に変形抑制部3が設けられている。ただし、複数の流路を備える場合、一部の流路に変形抑制部を設け、その他の流路には変形抑制部を設けない構成とすることもできる。
【0090】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…熱交換器、2…プレート部材、3…変形抑制部、4…流路、21…流路側第一面、22…流路側第二面、31…第一抑制部、32…第二抑制部、311…第一重なり部、321…第二重なり部、Z…積層方向、Z1…第一側、Z2…第二側