(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157769
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】表示制御装置及びそれを備えるヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G09G 5/00 20060101AFI20241031BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20241031BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20241031BHJP
G09G 5/37 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G09G5/00 510A
B60K35/00 A
G09G5/00 530D
G09G5/38 100
G09G5/37 300
G09G5/00 530H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072322
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本間 華子
(72)【発明者】
【氏名】林 武
【テーマコード(参考)】
3D344
5C182
【Fターム(参考)】
3D344AA19
3D344AB01
3D344AC25
5C182AA02
5C182AA03
5C182AA04
5C182AA05
5C182AB08
5C182AB15
5C182AB25
5C182AB31
5C182AC03
5C182BA29
5C182BA47
5C182CA21
5C182CB11
5C182CC27
5C182DA64
(57)【要約】
【課題】情報伝達性に優れた表示制御装置及びそれを備えるヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】進路変更地点における車両の進路変更方向を案内する主案内地点を通過した場合、進路変更方向を案内する主案内画像71を表示する主表示制御部と、主案内地点及び進路変更地点の間に進路変更地点以外に進路変更が可能な非進路変更地点がある場合、進路変更地点での進路変更方向を強調して案内する補助案内画像72を主案内画像71に加えて表示する補助表示制御部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
進路変更地点における車両の進路変更方向を案内する主案内地点を通過した場合、前記進路変更方向を案内する主案内画像を表示する主表示制御部と、
前記主案内地点及び前記進路変更地点の間に前記進路変更地点以外に進路変更が可能な非進路変更地点がある場合、前記進路変更地点での前記進路変更方向を強調して案内する補助案内画像を前記主案内画像に加えて表示する補助表示制御部と、を備える表示制御装置。
【請求項2】
前記補助表示制御部は、前記主案内画像の表示後、前記補助案内画像を表示する、請求項1記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記補助表示制御部は、前記主案内画像の表示後かつ前記非進路変更地点の到達前に前記車両が減速した場合、前記補助案内画像を表示し、前記車両が減速しない場合、前記補助案内画像を表示しない、請求項2記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記補助表示制御部は、前記主案内画像の表示後かつ前記非進路変更地点の到達前に前記車両が所定の速度以下である場合、前記補助案内画像を表示し、前記車両が前記所定の速度以下ではない場合、前記補助案内画像を表示しない、請求項2記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記表示制御装置は、前記車両の前景に重畳する虚像を表示するヘッドアップディスプレイであり、
前記主案内画像は、前記車両が走行する路面に重畳して前記進路変更方向を示す画像であり、
前記補助案内画像は、前記主案内画像と関連付けて表示され前記進路変更方向を示す画像である、請求項1記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記主表示制御部及び前記補助表示制御部は、上方が車の進行方向の前方に、下方が前記進行方向の後方になるように傾斜した表示領域に前記主案内画像及び前記補助案内画像を表示する、請求項5記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記主表示制御部は、前記主案内画像を前記路面に略平行に知覚されるように表示し、
前記補助表示制御部は、前記補助案内画像前記路面に対して略立ち上がって知覚されるように表示する、請求項6記載の表示制御装置。
【請求項8】
前記主案内画像は、案内する進路に沿う線状の画像であり、
前記補助表示制御部は、前記補助案内画像を前記主案内画像の線方向に沿って移動させる、請求項5記載の表示制御装置。
【請求項9】
前記補助表示制御部は、前記補助案内画像を移動した後、前記主案内画像に対する位置を維持して表示を継続する、請求項8記載の表示制御装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の表示制御装置を備える、ヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の表示装置に備えられる表示制御装置及びそれを備えるヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の視認者に対して経路を案内するため、右折、左折等の進路変更地点を間違いなく直感的に把握できるように案内画像を表示する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
進路変更地点の手前にも他の交差点が連続している場合等、複雑な道路状況の場合、視認者の誤認又は案内画像の知覚のし難さにより、案内地点とは異なる地点で進路を変更してしまう虞がある。
【0005】
本開示はこのような事情を考慮してなされたもので、情報伝達性に優れた表示制御装置及びそれを備えるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様における表示制御装置では、進路変更地点における車両の進路変更方向を案内する主案内地点を通過した場合、前記進路変更方向を案内する主案内画像を表示する主表示制御部と、前記主案内地点及び前記進路変更地点の間に前記進路変更地点以外に進路変更が可能な非進路変更地点がある場合、前記進路変更地点での前記進路変更方向を強調して案内する補助案内画像を前記主案内画像に加えて表示する補助表示制御部と、を備える。
【0007】
第1の態様に従属し得る第2の態様における表示制御装置では、前記補助表示制御部は、前記主案内画像の表示後、前記補助案内画像を表示する。
【0008】
第2の態様に従属し得る第3の態様における表示制御装置では、前記補助表示制御部は、前記主案内画像の表示後かつ前記非進路変更地点の到達前に前記車両が減速した場合、前記補助案内画像を表示し、前記車両が減速しない場合、前記補助案内画像を表示しない。
【0009】
第2の態様に従属し得る第4の態様における表示制御装置では、補助表示制御部は、主案内画像の表示後かつ非進路変更地点の到達前に車両が所定の速度以下である場合、前記補助案内画像を表示し、車両が前記所定の速度以下ではない場合、前記補助案内画像を表示しない
【0010】
第1から4のいずれかの態様に従属し得る第5の態様における表示制御装置では、前記表示制御装置は、前記車両の前景に重畳する虚像を表示するヘッドアップディスプレイであり、前記主案内画像は、前記車両が走行する路面に重畳して前記進路変更方向を示す画像であり、前記補助案内画像は、前記主案内画像と関連付けて表示され前記進路変更方向を示す画像である。
【0011】
第5の態様に従属し得る第6の態様における表示制御装置では、前記主表示制御部及び前記補助表示制御部は、上方が車の進行方向の前方に、下方が前記進行方向の後方になるように傾斜した表示領域に前記主案内画像及び前記補助案内画像を表示する。
【0012】
第6の態様に従属し得る第7の態様における表示制御装置では、前記主表示制御部は、前記主案内画像を前記路面に略平行に知覚されるように表示し、前記補助表示制御部は、前記補助案内画像前記路面に対して略立ち上がって知覚されるように表示する。
【0013】
第5の態様に従属し得る第8の態様における表示制御装置では、前記主案内画像は、案内する進路に沿う線状の画像であり、前記補助表示制御部は、前記補助案内画像を前記主案内画像の線方向に沿って移動させる。
【0014】
第8の態様に従属し得る第9の態様における表示制御装置では、前記補助表示制御部は、前記補助案内画像を移動した後、前記主案内画像に対する位置を維持して表示を継続する。
【0015】
第10の態様におけるヘッドアップディスプレイ装置では、第1から9のいずれかの態様の表示制御装置を備える。
【発明の効果】
【0016】
本開示の表示制御装置及びそれを備えるヘッドアップディスプレイ装置においては、情報伝達性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態におけるHUDのシステム構成例を示す図。
【
図2】車両の前方に形成される表示領域を示す説明図。
【
図3】進路変更地点及び非進路変更地点の例を説明する概念図。
【
図4】主案内画像及び補助案内画像の表示例を示す図。
【
図5】案内画像表示処理を説明するフローチャートである。
【
図7】主案内画像及び補助案内画像の遷移表示例を示す図。
【
図8】主案内画像及び補助案内画像の遷移表示例を示す図。
【
図9】主案内画像及び補助案内画像の遷移表示例を示す図。
【
図10】主案内画像及び補助案内画像の遷移表示例を示す図。
【
図11】主案内画像及び補助案内画像の遷移表示例を示す図。
【
図12】主案内画像及び補助案内画像の遷移表示例を示す図。
【
図13】視認者及び傾斜面である表示領域に表示される虚像を上方から示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の表示制御装置及びヘッドアップディスプレイ装置の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本開示の表示制御装置は、例えば自動車や二輪車、農業機械、建設機械等の車両に搭載される表示装置に適用することができる。本実施形態においては、表示制御装置が車両の一例としての自動車に搭載され、車両から取得した各種情報等に基づいて所要の情報を表示するヘッドアップディスプレイ装置(HUD、Head Up Display)に搭載される例を用いて説明する。
【0019】
図1は、本実施形態におけるHUD10のシステム構成例を示す図である。
【0020】
以下の説明において、「前」、「後」、「上」、「下」、「右」及び「左」は、
図1、2、4及び13における定義「Fr.」、「Re.」、「To.」、「Bo.」、「R」、及び「L」に従う。
【0021】
HUD10は、車両1のインストルメントパネル内に搭載される。HUD10は、表示器11と、平面鏡12と、凹面鏡13と、筐体15と、制御部30と、を有する。HUD10は、表示器11が表示した画像に係る表示光Lを、リレー光学系である平面鏡12及び凹面鏡13で反射させ、車両1上のウインドシールド3(投影部材)に照射する。車両1の視認者4(運転者及び同乗者を含む。)は、ウインドシールド3における表示光Lの反射光を虚像Vとして視認する。これにより、画像は、ウインドシールド3を介して(ウインドシールド3の前方で)視認者4に視認される前景と重なる仮想的な領域に表示されることになる。
【0022】
ここで、
図2は、車両1の前方に形成される表示領域20を示す説明図である。
【0023】
表示領域20は、車両1の前方の実空間に形成される四角形状の領域である。HUD10は、この表示領域20において、前両の前方風景(路面7や建物8)と重畳表示させて画像を視認させる。
【0024】
表示器11は、例えば四角形状の表示面に画像を表示し、画像に係る表示光Lを平面鏡12に向けて出射する。表示器11は、例えばTFT(Thin Film Transistor)型の液晶表示器や有機EL(Electroluminescence)表示器11である。尚、表示器11はプロジェクタ及び表示面を構成するスクリーンを有するものであってもよい。
【0025】
平面鏡12は、表示器11が出射した表示光Lを、凹面鏡13に向けて反射させる。凹面鏡13は、平面鏡12で反射した表示光Lを更に反射させ、ウインドシールド3に向けて出射する。凹面鏡13は、拡大鏡としての機能を有し、表示器11に表示された画像を拡大してウインドシールド3側へ反射する。すなわち、視認者4が視認する虚像Vは、表示器11に表示された画像が拡大された像である。
【0026】
筐体15は、筐体15の内部に、平面鏡12、凹面鏡13を取付部材(図示せず)を介して位置決めし固定する。また、筐体15は、例えば表示器11及び制御部30が実装された制御基板を取付部材(図示せず)を介して位置決めし固定する。
【0027】
制御部30は、特に、後述する車両1の各部から取得する情報や指示に基づいて、主に表示器11に表示される画像に関する処理を制御する。本実施形態においては特に、制御部30は、表示制御部31と、表示画像生成部32と、記憶部33と、を有する。
【0028】
制御部30は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、グラフィックコントローラ、集積回路等であり、所要の処理を実行する。表示制御部31(主表示制御部及び補助表示制御部)は、表示器11に画像を表示するための所要の制御を行う。表示画像生成部32は、表示制御部31の制御に基づいて、表示器11に表示される画像の描画処理を実行し、所要の画像を生成する。記憶部33は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、不揮発性メモリ等であり、プログラムやデータを記録する。
【0029】
車両1は、HUD10の他に、GPS41と、カーナビゲーションシステム42と、判定部43と、車両ECU44と、を有する。GPS41、カーナビゲーションシステム42、判定部43及び車両ECU44と制御部30とは、例えばCAN(Controller Area Network)バス50を介して接続されている。
【0030】
GPS41は、人工衛星等から受信したGPS信号に基づいて車両1の位置を算出する。カーナビゲーションシステム42は、地図データを記録する記憶部33を有し、GPS41からの位置情報に基づいて、現在位置近傍の地図データを記憶部33から読み出したり、所定の目的地までの案内経路を決定したりして、取得した情報を制御部30に出力する。
【0031】
判定部43は、表示制御部31からの要求に基づいて、後述する案内画像表示処理において必要な判定処理を行う。判定部43は、GPS41及びカーナビゲーションシステム42から取得される車両1の位置や地図データに基づいて、所定周期で判定処理を行う。判定処理の詳細は後述する。車両ECU44は、車両1に設けられた各種センサから車速やエンジン回転数等の車両1の走行に必要な車両情報を取得し、車両1の動作を制御する。尚、判定部43は、車両ECU44に含まれていてもよい。
【0032】
尚、GPS41、カーナビゲーションシステム42及び判定部43は、車両1に搭載されたものに限られず、制御部30との間で有線又は無線により通信を行う、これらと同等の機能を有する端末(例えばスマートフォン、タブレットPC(Personal Computer))により実現されてもよいし、一部がHUD10に搭載されてもよい。例えば、判定部43は、HUD10の制御部30に含まれていてもよい。
【0033】
ここで、本実施形態におけるHUD10は、特に、カーナビゲーションシステム42により算出される目的地までの経路を案内するための画像を表示する。具体的には、HUD10は、車両1の進路変更地点61の伝達性、知覚性を向上させるために、主案内画像71及び補助案内画像72を表示する。
【0034】
ここで、
図3は、進路変更地点61及び非進路変更地点62の例を説明する概念図である。
図4は、主案内画像71及び補助案内画像72の表示例を示す図である。
【0035】
主案内画像71は、進路変更を行う進路変更地点61における進路変更方向を案内する画像である。主案内画像71は、進路変更地点61の手前に位置する主案内地点63(例えば進路変更地点61の所定距離手前)を通過した場合に表示される。
【0036】
補助案内画像72は、進路変更地点61での進路変更方向を強調して案内する画像である。補助案内画像72は、主案内地点63及び進路変更地点61の間に、進路変更地点61以外に進路変更が可能な、一又は複数の非進路変更地点62がある場合に、運転者が非進路変更地点62において誤って進路変更してしまうことを防止する目的で表示される。補助案内画像72は、主案内画像71の表示後、一の非進路変更地点62の手前に位置する補助案内地点64(例えば進路変更地点61の所定距離手前)を通過した場合に表示される。
【0037】
以下、HUD10の制御部30により実行される、案内画像表示処理について詳細に説明する。
【0038】
図5は、案内画像表示処理を説明するフローチャートである。案内画像表示処理は、主に表示制御装置としての表示制御部31(制御部30)の制御に基づいて実行される処理である。案内画像表示処理は、車両ECU44やカーナビゲーションシステム42からの指示に基づいて、HUD10が経路案内のための画像を表示する際に繰り返し実行される処理である。
【0039】
ステップS1において、表示制御部31(主表示制御部)は、車両1が主案内地点63を通過したか否かを判定する。表示制御部31は、判定部43に対して判定結果を要求し、得られた判定結果に基づいて判定する。判定部43は、具体的には、主案内画像71を用いて進路変更方向を案内すべき進路変更地点61が進行方向前方にあること、及び主案内画像71を表示する主案内地点63を通過したこと、が成立するか否かを判定し、判定結果を表示制御部31に出力する。表示制御部31は、車両1が主案内地点63を通過していないと判定した場合(ステップS1のNO)、通過したと判定するまで待機する。
【0040】
一方、表示制御部31は、車両1が主案内地点63を通過したと判定した場合(ステップS1のYES)、ステップS2において、表示画像生成部32に主案内画像71を生成させ、表示器11において主案内画像71を表示させる。ここで、
図6は、主案内画像71の表示例を示す図である。主案内画像71は、例えば案内する進路に沿い、進路変更地点61において進路変更方向に折れ曲った、先端に矢印を有する線状の図形である。主案内画像71は、例えば視認性に優れたシアンや緑色で表示されることが好ましい。また、表示制御部31は、主案内画像71を、例えば視認者4から視認される前景としての路面7に略平行に知覚されるように、路面7に重畳させて表示する。
【0041】
ステップS3において、表示制御部31は、非進路変更地点62があるか否かを判定する。表示制御部31は、判定部43に対して判定結果を要求し、得られた判定結果に基づいて判定する。判定部43は、具体的には、カーナビゲーションシステム42から得られる情報に基づいて、主案内地点63から進路変更地点61の間に非進路変更地点62があること、が成立するか否かを判定し、判定結果を表示制御部31に出力する。表示制御部31は、非進路変更地点62がないと判定した場合(ステップS3のNO)、補助案内画像72の表示は不要であるため処理を終了する。
【0042】
一方、表示制御部31は、非進路変更地点62があると判定した場合(ステップS3のYES)、ステップS4において、表示制御部31(補助表示制御部)は、非進路変更地点62の到達前に、車両1が減速したか否かを判定する。非進路変更地点62の到達前に車両1が減速する場合には、運転者が進路変更のために減速していることが推定される。このことから、表示制御部31は、減速の有無により、運転者が進路変更地点61を非進路変更地点62と誤認しているか否かを判定している。表示制御部31は、車両ECU44より車速を取得し、減速したか否かを判定する。尚、表示制御部31は、車速が所定速度(例えば10km/h)以下であるか否かを判定してもよい。表示制御部31は、減速していないと判定した場合(ステップS4のNO)、進路変更地点61を正しく認識しているとみなし、補助案内画像72の表示は不要であるため処理を終了する。
【0043】
一方、表示制御部31は、減速したと判定した場合(ステップS4のYES)、ステップS5において、補助案内地点64を通過したか否かを判定する。表示制御部31は、判定部43に対して判定結果を要求し、得られた判定結果に基づいて判定する。判定部43は、具体的には、補助案内画像72を表示する補助案内地点64を通過したこと、が成立するか否かを判定し、判定結果を表示制御部31に出力する。表示制御部31は、車両1が補助案内地点64を通過していないと判定した場合(ステップS5のNO)、通過したと判定するまで待機する。
【0044】
一方、表示制御部31は、車両1が補助案内地点64を通過したと判定した場合(ステップS5のYES)、ステップS6において、表示制御部31(補助表示制御部)は、補助案内画像72を表示する。表示制御部31は、主案内画像71による情報の伝達を補助する観点から、例えば以下に示すように、主案内画像71と関連付けて表示される。
【0045】
ここで、
図7から
図12は、主案内画像71及び補助案内画像72の遷移表示例を示す図である。表示制御部31は、例えば
図7に示すように進行方向に沿って(表示領域20の下方から上方に向って)主案内画像71の線方向に沿うようにして補助案内画像72を移動させて表示する。表示制御部31は、
図9に示すように、進路変更地点61に相当する主案内画像71の折曲地点に到達すると、
図10から12に示すように、路面7に対して略立ち上がって知覚されるように補助案内画像72を表示することで、進路変更地点61の位置を確実に認識させる。
【0046】
また、いくつかの実施形態における表示制御部31は、ステップS4において、非進路変更地点62の到達前に、車両1が所定の速度以下であるか否かを判定してもよい。すなわち、本実施形態の表示制御部31は、減速の有無を判定せずに、非進路変更地点62の到達前に車両1の車速が所定速度(例えば、10km/h)以下であると判定した場合、(ステップS4のYES)、運転者が困惑していると推定し、ステップS5に移行し、ステップS5の判定に基づいて補助案内画像72を表示し、所定速度(例えば、10km/h)より速いと判定した場合(ステップS4のNO)、進路変更地点61を正しく認識しているとみなし、補助案内画像72の表示は不要であるため処理を終了してもよい。尚、本実施形態のステップS4で用いる判定値(所定速度)は、一定ではなく、可変であってもよい。例えば、判定値(所定速度)は、車両1が走行する道路の種別(高速で走行し得る種別程、所定速度を速く設定する)、車両1の平均速度(平均速度が高速である程、所定速度を速く設定する)等により、可変であってもよい。
【0047】
HUD10が、鉛直方向に対して傾きを有する表示領域20内に虚像Vを表示可能な場合には、より一層情報の伝達性を向上させることができる。この場合における、
図7から
図12に示す主案内画像71及び補助案内画像72の視覚(知覚)的効果について、以下詳細に説明する。
【0048】
人間の目の奥行の知覚は、輻輳角差を使って特徴づけられることが知られている。
図13は、視認者4及び表示領域20に表示される虚像Vを上方から示す模式図である。
図13においては、表示領域20は、上方が前方に、下方が後方になるように傾斜を有している。
【0049】
表示領域20のある2点を、点Cn、点Cfとする。このとき、点Cnと両眼EL、ERを結ぶ線との距離を距離Dとし、点Cfと両眼EL、ERを結ぶ線との距離を距離D+ΔDとする。両眼EL、ERの瞳孔の距離をaとする。輻輳角とは、左目ELと点Cnとを結ぶ直線と、右目ERと点Cnとを結ぶ直線とが成す角度θn、及び左目ELと点Cfとを結ぶ直線と、右目ERと点Cfとを結ぶ直線とが成す角度θfで定義される。
【0050】
輻輳角差Δθとは、Δθ=θ
n-θ
fで定義され、特に、輻輳角が小さいとき(おおよそ15度より小さいとき)は、a、Dを用いて、以下の式1で表される。
【数1】
【0051】
また、奥行知覚は、奥行感度と呼ばれる量をD/ΔDで定義すると、式1から以下の式2で表される。
【数2】
【0052】
式2により、奥行を知覚する感度は、輻輳角差Δθと点Cnの存在する距離で特徴づけることができる。式2から、輻輳角差Δθが小さいほど、つまりΔDが小さいほどその状況で奥行を知覚できた場合は奥行感度が高いと判断される。一方、輻輳角差Δθが大きいほど、すなわちΔDが大きくならないと奥行を知覚できない場合は、奥行感度が低いと判断される。
【0053】
ところで、人間の目の特性上、輻輳角差Δθがどんなに小さくても知覚できるわけではなく、ある一定の閾値Δθtが存在し、それ以上の輻輳角差Δθがないと、奥行を知覚できないことも知られている。また、幾何学的な性質から両眼からの距離が遠くなるほど、Δθt以上の値を与えるためにはΔDを大きくとらなければいけない。以上の事実から、人間の目は、点Cnが両眼の近くにあるときは、奥行感度は敏感で、小さなΔDでも奥行を感じることができる。一方、点Cnが両眼から遠ざかっていくと、奥行感度は鈍くなっていき、点CnからΔDを大きくとる、すなわち点Cfを点Cnから十分離さないと奥行を感じることができないといえる。
【0054】
以上の事実を踏まえて、傾斜した表示領域20に虚像Vを表示する技術を用いた効果的な表示制御例を紹介する。
【0055】
人間の目は、比較したい2つの点Cn及び点Cfがある場合、点Cnが両眼EL、ERから近いほど、そして点Cn及び点Cfの距離が離れているほど、2点の奥行を知覚しやすい。この事実を活用して、主案内画像71の前後方向をなるべく多くとることによって、主案内画像71全体の奥行感を知覚させることが容易になる。
【0056】
このとき、視認者4は、主案内画像71が路面7に対して沿っているように見える。一方、補助案内画像72は、視認者4から見て主案内画像71の上方すなわち、表示領域20中のより遠方に配置される。これにより、補助案内画像72は、主案内画像71に比べて上下方向における奥行を知覚し難くなる。さらに、表示領域20上の補助案内画像72の前後方向長さをあまりとらないような大きさにすることによって、より補助案内画像72の奥行感を知覚し難くすることができる。その結果、補助案内画像72は、この表示領域20内での奥行感を感じ難くなり、視認者4においては路面7から立ち上がって知覚しやすくなる。
【0057】
以上の考察から、各案内画像71、72の位置と表示領域20の前後方向の使用を工夫することによって、傾斜面である表示領域20に表示される虚像Vを、路面7と平行な表現と、路面7に対して立ち上がる表現との両者で描くことができる。したがって、路面7に平行に知覚される主案内画像71と、路面7に対して立ち上がって知覚される補助案内画像72とを、両立させることができる。これにより、HUD10は、三次元的に知覚され得る表現を用いることによって、視認者4への情報の伝達性をより一層向上できる。
【0058】
また、このような効果を発揮させるため、表示領域20の前後方向の使用量は、例えば、主案内画像71の表示領域20内の上下方向長さよりも補助案内画像72の上下方向長さが短いことが望ましい。
【0059】
また、表示制御部31は、
図7に示すように、補助案内画像72を表示領域20の下方から表示を開始し(出現させ)、
図8に示すように主案内画像71に大まかに沿って遷移させる。続けて、表示制御部31は、
図9に示すように、補助案内画像72が所定位置、例えば進路変更地点61に相当する主案内画像71の折曲地点に到達したら、
図10から
図12に示すように、主案内画像71に対する位置(相対位置関係)を維持した状態で表示を継続してもよい。
【0060】
このときの主案内画像71及び補助案内画像72の相対位置関係は、主案内画像71及び補助案内画像72の間の上下方向の隙間の長さd(
図4参照)は、なるべく近い方が望ましい。傾斜面に虚像Vを表示する場合、上下方向の隙間の長さを長くしていくと、奥行感から、視認者4から見たときの主案内画像71及び補助案内画像72の表示距離も離れていく。これに伴い、主案内画像71及び補助案内画像72が互いに異なる意味を持った情報と認識されてしまう虞がある。一例として、長さdは、表示領域20の上下方向長さの半分以下にすることにより、上記視覚的効果を得ることができる。
【0061】
また、表示制御部31は、補助案内画像72が路面7に対して立ち上がって表示される状態に遷移した場合、表示されている1本の矢印を2本、3本と段階的に増やすことで、視覚的演出を行ってもよい。
【0062】
このような案内画像表示処理は、ステップS6の後に終了し、進路変更が完了したタイミングで、表示制御部31は主案内画像71及び補助案内画像72の表示を終了する。
【0063】
以上説明した本実施形態におけるHUD10は、主案内画像71のみでは進路変更地点61を認識しづらいことが推定される、進路変更地点61の手前に非進路変更地点62がある場合において、補助案内画像72を表示するようにした。これにより、進路変更地点61の情報伝達性を向上できる。
【0064】
また、車両1におけるHUD10の配置の制限等から、画像を路面7に重畳させて表示可能な画角の大きい大型のHUDが搭載できない車両1であっても、主案内画像71に加え補助案内画像72を表示することにより、進路変更地点61を確実に伝達し、視認者4に進路変更地点61を直感的に認識させることができる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0066】
例えば、本開示の表示装置がHUD10である例を用いて説明したが、HUD10以外の、液晶ディスプレイ等に表示した画像を視認させるディスプレイ式の表示装置であってもよい。
【0067】
また、表示制御部31は、補助案内画像72を、主案内画像71の表示と同時に表示してもよいし、非進路変更地点62を通過した後に表示してもよい。また、表示制御部31は、補助案内画像72を表示領域20上で遷移させることなく、例えば
図4のように主案内画像71との相対位置関係を維持した状態で表示してもよい。
【0068】
補助案内画像72を主案内画像71と関連付けて表示する態様としては、上述したものに限定されず、例えば主案内画像71及び補助案内画像72を同色で表示する態様や、重ね合わせて表示する態様等、関連性を認識するものであれば種々の態様を含む。
【符号の説明】
【0069】
1 車両
3 ウインドシールド
4 視認者
7 路面
8 建物
10 ヘッドアップディスプレイ装置(HUD)
11 表示器
12 平面鏡
13 凹面鏡
15 筐体
20 表示領域
30 制御部
31 表示制御部(主表示制御部、補助表示制御部)
32 表示画像生成部
33 記憶部
41 GPS
42 カーナビゲーションシステム
43 判定部
44 車両ECU
50 CANバス
61 進路変更地点
62 非進路変更地点
63 主案内地点
64 補助案内地点
71 主案内画像
72 補助案内画像
L 表示光
V 虚像