(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015777
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】漫然運転防止光表示システム、漫然運転防止光表示方法、および、漫然運転防止光表示用発光装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240130BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240130BHJP
【FI】
G08G1/16 F
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118075
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 透
(72)【発明者】
【氏名】中村 翼
(72)【発明者】
【氏名】山本 和彦
【テーマコード(参考)】
3D344
5H181
【Fターム(参考)】
3D344AA20
3D344AA21
3D344AC25
5H181AA01
5H181CC04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】運転の妨げにならず、漫然運転を防止することができる光表示システムを提供する。
【解決手段】運転者の瞳孔の移動速度を検出する。検出した瞳孔の移動速度が、閾値よりも低い場合、車両のフロントガラス、または、フロントガラスよりも運転席寄りの空間に配置した構造体の所定の領域に、所定形状の光パターンを、車両の幅方向に移動させながら表示する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントガラス、または、前記フロントガラスよりも運転席寄りの空間に配置した構造物の所定の領域に、所定形状の光パターンを、前記車両の幅方向に移動させながら表示する発光部と、
前記発光部を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、運転者の瞳孔の移動速度を検出する移動速度検出部を備え、前記瞳孔の移動速度が、閾値よりも低い場合、前記発光部に発光を開始させることを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項2】
請求項1に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記発光部は、前記フロントガラスまたは構造物の前記車両の幅方向の3か所以上に前記光パターンを順次表示したのち、逆向きに順次表示し、前記光パターンを前記車両の幅方向に往復移動させることを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項3】
請求項1に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記光パターンは、前記フロントガラスの前記車両の幅方向の全体を移動しながら表示されることを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項4】
請求項1に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記発光部は、前記フロントガラスまたは構造物の前記車両の幅方向の、所定の間隔をあけた2か所に、前記光パターンを交互に表示することを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項5】
請求項4に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記光パターンは、前記フロントガラスの右半分の領域内と、前記フロントガラスの左半分の領域内に交互に表示されていることを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項6】
請求項4に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記2か所に交互に表示される前記光パターンは、色が異なることを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項7】
請求項1に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記光パターンは、前記フロントガラスの縦方向に長い線状の光パターン、予め定めた所定の形状を有するアイコン、および、消灯領域が移動する光パターンのうちのいずれかであることを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項8】
請求項1に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記閾値は、前記移動速度検出部が検出した前記瞳孔の移動速度の所定時間における平均値であることを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項9】
請求項1に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記制御部は、前記発光部に発光を開始させた後、前記移動速度検出部に前記瞳孔の移動速度を再度検出させ、前記瞳孔の移動速度が前記閾値以上に回復している場合、前記発光部に発光を停止させることを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項10】
請求項1に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記制御部は、前記発光部に発光を開始させた後、前記移動速度検出部に前記瞳孔の移動速度を再度検出させ、前記瞳孔の移動速度が前記閾値以上に回復していない場合、前記発光部の発光する前記光パターンの移動速度、発光する光量、発光色、前記光パターンのサイズ、および、前記光パターン移動範囲の大きさのうちの1以上の条件を変更することを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項11】
請求項1に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記発光部が、前記車両のフロントガラスに前記光パターンが表示する場合、その表示領域は、前記フロントガラスの下方の予め定めた範囲であることを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項12】
請求項1に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記発光部が、前記光パターンの像を前記フロントガラス、または、前記構造物に投影する構成であることを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項13】
請求項12に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記発光部が、前記フロントガラスの前記光パターンを投影する領域には、半透明反射フィルムが配置されていることを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項14】
請求項12に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記構造物の前記光パターンが投影される領域は、透明体で構成されており、前記透明体には半透明反射フィルムが配置されていることを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項15】
請求項1に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記発光部が、前記車両のフロントガラス、または、前記構造物に前記光パターンを表示する明るさは、1200cd/m2以下であることを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項16】
請求項1、9および10のいずれか1項に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記制御部は、運転者に休憩をとる、および/または、安全地帯まで車両を移動させて停止するように警告することを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項17】
請求項1に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記車両が自動運転機能を備える場合、前記制御部は、前記瞳孔の移動速度が前記閾値より低い場合、自動運転に切り替えるように前記車両または運転者に指示することを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項18】
請求項10に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記車両が自動運転機能を備える場合、前記制御部は、前記発光部に前記条件を変更させた後、前記移動速度検出部に前記瞳孔の移動速度を再度検出させ、前記瞳孔の移動速度が前記閾値以上に回復していない場合には、自動運転に切り替えるように前記車両または運転者に指示することを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項19】
請求項17または18に記載の漫然運転防止光表示システムであって、前記制御部は、前記自動運転に切り替え後、自動運転により安全地帯に移動させる、自動運転により前を走行する車両に接近させない、自動運転により道路の車線の変更をさせない、および、運転者が急ブレーキを踏んでも自動運転によりゆっくり減速させる、のうちの1以上を行わせることを特徴とする漫然運転防止光表示システム。
【請求項20】
運転者の瞳孔の移動速度を検出するステップと、
検出した瞳孔の移動速度が、閾値よりも低い場合、車両のフロントガラス、または、前記フロントガラスよりも運転席寄りの空間に配置した構造物の所定の領域に、所定形状の光パターンを、前記車両の幅方向に移動させながら表示するステップと
ことを特徴とする漫然運転防止光表示方法。
【請求項21】
車両のダッシュボード内に配置される漫然運転防止光表示用発光装置であって、
2以上の発光素子と、
前記発光素子が発した光を前記ダッシュボードまで導光し、ダッシュボードに設けられた開口から、車両のフロントガラス、または、前記フロントガラスよりも運転席寄りの空間に配置されている構造物に向かって照射する導光体と、
前記発光素子を駆動するドライバとを含み、
前記ドライバは、車両のフロントガラス、または、前記構造物の所定の領域に、所定形状の光パターンを、前記車両の幅方向に移動させながら表示することを特徴とする漫然運転防止光表示用発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を運転中の運転者が漫然状態にある場合に、その回復を補助する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の覚醒状態を検出する機能を備えた車両制御システムが、特許文献1等に提案されている。特許文献1には、運転者の覚醒状態を検出し、覚醒状態が低下している場合には、車内の警告ランプを点灯させて運転者に警告し、また、車両の緊急停止を補助し、さらに運転者以外の第三者に運転者の覚醒状態の低下を警告する等を行うことが開示されている。特許文献1の技術において、運転者の覚醒状態の検出は、運転者の視線認識や、小刻みに対象物を追う視線サッケード動作の解析や、車両の運転操作の解析によって行われる。
【0003】
また、特許文献2には、運転者の眼球の虹彩又は瞳孔の収縮に基づいて運転者の覚醒状態を判定し、自動運転中に、覚醒度が低下している場合には刺激を与えて覚醒度を高めた上で手動運転に切り替える運転制御システムが開示されている。覚醒度を高める方法としては、運転者の眼球に向けて光を照射する方法が開示されている。
【0004】
また、非特許文献1には、運転者のサッケード眼球運動が低下しやすい時間帯に、運転者の正面にから下方の周辺領域にヘッドアップディスプレイによってフロントガラスに映し出された2つの青色の円図形を運転手の正面を中心に間隔24cmを空けて交互に投影することにより、サッケード眼球運動の低下に対する抑制作用があることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-115023号公報
【特許文献2】特開2017-182249号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】自動車技術会論文集 Vol.47,No.3,May 2016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に開示されているように、運転者のサッケード眼球運動低下している場合には、2つのランプを交互に点灯させることにより、サッケード眼球運動の回復させることができる。これにより、運転者が漫然状態にある場合、回復させることができると考えられる。しかしながら、非特許文献1のように、運転席の正面で2つのランプを交互に点灯させる構造は、ランプが邪魔になり、前方の視認性を悪くなるため運転の妨げになる。一方、特許文献1のように、運転者の頭の上方で警告ランプを点灯する構成は、警告にはなっても、サッケード眼球運動を回復させることは難しいと考えられる。また、特許文献2のように、運転者の眼球に向けて光を照射する構成は、眼球に対する刺激が大きく、光量によってはグレア(眩しさ)を運転者に与え、瞳孔が収縮して車両の前方の視界を視認しにくくなったり、目を閉じてしまったりする可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、運転の妨げにならず、漫然運転を防止することができる光表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明によれば、車両のフロントガラス、または、フロントガラスよりも運転席寄りの空間に配置した構造体の所定の領域に、所定形状の光パターンを、車両の幅方向に移動させながら表示する発光部と、発光部を制御する制御部とを有する漫然運転防止光表示システムを提供する。制御部は、運転者の瞳孔の移動速度を検出する移動速度検出部を備え、瞳孔の移動速度が、閾値よりも低い場合、発光部に発光を開始させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両のフロントガラス、または、フロントガラスよりも運転席寄りの空間に配置した構造体に光パターンを、車両の幅方向に移動させながら表示することにより、運転者が光パターンを目で追うため、漫然運転を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1のサッケード誘発発光(漫然運転防止光)表示システム1の全体構成を示すブロック図。
【
図2】実施形態1のサッケード誘発発光表示システム1の動作を示すフローチャート。
【
図3】実施形態1のサッケード誘発発光表示システム1において(a)発光部10を側面方向からみた構成を示すブロック図、(b)発光部10を正面方向から見た構成を示すブロック図、(c)フロントガラスに表示される光のパターンを示す図である。
【
図4】実施形態1のサッケード誘発発光表示システム1のフロントガラス40の運転席側の半分の領域のみで光パターンを往復させる例を示す説明図。
【
図5】実施形態1のサッケード誘発発光表示システム1において、発光部10がフロントガラス40の手前の透明な構造物50に、光のパターンを順次投影する構成を示すブロック図。
【
図6】本発明の実施形態2のサッケード誘発発光表示システム2の全体構成を示すブロック図。
【
図7】実施形態2のサッケード誘発発光表示システム2の動作を示すフローチャート。
【
図8】実施形態3のサッケード誘発発光表示システムが表示する光パターンの動作を示す説明図。
【
図9】(a)実施形態4のサッケード誘発発光表示システムが表示する線状の光パターンの動作を示す説明図、(b)実施形態4のサッケード誘発発光表示システムのプロジェクタ91を示す説明図。
【
図10】実施形態5のサッケード誘発発光表示システムが表示する光パターンの動作を示す説明図。
【
図11】実施形態6のサッケード誘発発光表示システムが表示する光パターンの動作を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について図面を用いて以下に説明する。
【0013】
<<<実施形態1>>>
実施形態1のサッケード誘発発光(漫然運転防止光)表示システム1について図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、サッケード誘発発光表示システム1の全体構成を示す。
図2は、サッケード誘発発光表示システム1の動作を示すフローチャートである。
図3(a),(b)は、サッケード誘発発光表示システム1の発光部10の構成を示す図であり、
図3(c)は、フロントガラスに表示さえる光のパターンを示す図である。
【0015】
図1に示すように、実施形態1のサッケード誘発発光表示システム1は、発光部10と、制御部20とを含む。発光部10は、車両のフロントガラス、または、フロントガラスよりも運転席寄りの空間に配置した構造物(または透明体)の所定の領域に、所定形状の光パターンを、車両の幅方向に移動させながら表示する。制御部20は、運転者の瞳孔の移動速度を検出する瞳孔速度検出部21を備え、瞳孔の移動速度が、閾値よりも低い場合、発光部10に発光を開始させる。以下、詳しく説明する。
【0016】
<発光部10>
発光部10は、発光装置11と、発光装置11を駆動するLEDドライバ12と、警告報知部13とを含む。
【0017】
発光装置11は、
図3(a)、(b)のように、3以上のLED等の発光素子110と、発光素子110ごとに配置された導光部材111およびマスク112と、半透明反射フィルム113とを含む。発光素子110は、車両のダッシュボード30の内部に配置され、車両のフロントガラス40に光を照射し、
図3(c)のように所定のパターンの投影像を表示する。具体的には、発光素子110は、一定の間隔で水平方向に並べて配置され、導光部材111は、発光素子110が発した光を上方に向かって導き、ダッシュボード30に設けられた開口からフロントガラス40の下方の所定の高さに向かって照射する。マスク112は、導光部材111から照射される光を所定のパターン(例えば、四角形)に成形する。
【0018】
フロントガラス40の下方の所定の高さには水平方向に長い帯状の半透明反射フィルム113が貼り付けられている。よって、3以上の発光素子110から発せられた光は、それぞれ導光部材111内を導光し、マスク112を通過し、半透明反射フィルム113に向かって照射される。半透明反射フィルム113上に所定の光のパターンを投影し、表示することができる。発光素子110を3以上に配置することにより、2つのみの場合と異なり、端から1つずつ順番に点灯することにより順方向またはその逆方向に発光箇所が移動していく順次点灯感を生じさせることができる。順次点灯感を生じさせることにより、運転者の気を引くことができるため、運転者が無意識に光を目で追う動作を生じさせる効果が高い。また、順方向のみならず、順方向から逆方向への順次点灯に切り替えた場合、運転者は切り替えを認識しやすくなる。
【0019】
光のパターンが投影される半透明反射フィルム113は、運転者が車両を運転する際の視界の妨げにならず、かつ、視認可能なフロントガラス40の下方の位置に配置する。
【0020】
LEDドライバ12は、3以上の発光素子110を一方の端から所定時間ずつ順次発光させ、他方の端まで到達したならば、逆方向に順次発光させる制御を行う。これにより、フロントガラスの下方の半透明反射フィルム113上に、フロントガラス40の端から端まで光のパターン(サッケード誘発光とも呼ぶ)が順次投影されたのち逆方向にさらに順次投影され、往復する。
【0021】
光のパターンは、運転者の正面ではなく、正面より下方(つまり、運転者の視野の下方側)にあるため、前方視認性を妨げることがないのは当然だが、運転者が正面を向いたまま自身の視野の下方側の領域で光のパターンが左右に移動している(順次発光)のを「何となく」見ることができる。これにより、運転者は、光のパターンを「無意識」に目で追うため、光のパターンの往復に合わせて眼球が往復移動し、サッケード眼球運動が運転者の眼球に誘発される。このようにサッケード眼球運動が運転者の眼球に誘発されることにより、漫然状態に陥る前の運転者の意識レベルを改善させることが可能である。
【0022】
図3(b)に示した例では、発光素子110は、フロントガラス40の幅いっぱいに配列され、光のパターンをフロントガラス40の幅いっぱいに順次投影する。これにより、運転者の視線は、フロントガラス40の幅方向に端から端まで往復移動する。
【0023】
光のパターンは運転者の視野全体(特に下方側の領域)を使って見えることにより、効率よくサッケード眼球運動を誘発することができるが、人間の視野角度は個人差がある。フロントガラス40の幅全体を使って光のパターンを動かすことにより、ほとんどの人間の視野角度をカバーすることができる。ただし、助手席側のフロントガラス40の端まで視野をもつ人間は少ないため、本願は、フロントガラス40の幅いっぱいに光のパターンを順次投影する構成に限られるものではなく、
図4のように、フロントガラス40の運転席側の半分の領域のみで往復させてもよい。視野角度が比較的広い人間の場合、フロントガラス40の運転側の半分(かつ、下方)の領域のみでは、光のパターンの移動距離が十分ではないかもしれないが、3つ以上の光のパターンを順次発光しており、運転者は光のパターンの動きを順次追うように見せられることになるため、サッケード眼球運動を誘発することは可能である。
【0024】
また、半透明反射フィルム113に代えて、フロントガラス40の一部を乳白色にしたり、拡散面にして発光パターンを映しこんでもよい。
【0025】
さらに、
図5のように、フロントガラスの手前(運転者側)のダッシュボード上に、反射フィルム113を貼った構造物50を立設させ、構造物50の反射フィルム113に光のパターンを順次投影する構造としてもよい。さらに、構造物50のうち、発光部10の光を投影する領域50aは、運転者がフロントガラスを見通せるように、透明な構造物50、つまり透明体により構成してもよい。構造物50の領域50aを透明体にする場合、領域50aに貼る反射フィルム113として、半透明な反射フィルムを用い、半透明な反射フィルム113に光のパターンを順次投影する構造としてもよい。構造物50の領域50aを透明体とし、かつ、半透明な反射フィルム113を使用することにより、フロントガラス40を構造物50越しに見通すことができるため、構造物50が前方の視野を遮蔽することがなくなり、運転者は前方の視認性を確保することができる。
【0026】
なお、光のパターンは、運転者にとって眩しくなく、目で追いやすい輝度や色であることが望ましい。好ましくは、光のパターンの輝度は、400cd/m2~1200cd/m2であることが好ましい。また、車両内に配置されているナビゲーションシステム用のモニターの明るさを超えない輝度(または照度)であることが好ましい。光のパターンの色は、何色の光でもよいが、人間は黄色の光によって覚醒しやすいため、例えばアンバーであることが好ましい。
【0027】
フロントガラスを照らす光パターンのサイズは、一例だが、
図3(c)のようにフロントガラス40に対して、上下1/10程度、左右1/10程度でよい。フロントガラス40の上下左右の端から離し、かつ、隣接する光パターンと光パターンの間は隙間を空けて光を照らせたいためである。フロントガラスのサイズが、例えば上下700mm×左右1500mmの場合、光パターンのサイズは、上下70mm×左右150mmとなる。これぐらいのサイズであれば、フロンガラスに6つの光パターンを順次投影することができる。しかし、光パターンは、サイズに限定されるものではなく、隣接する光パターンの隙間をもっと広げてもよいし、
図3(b)のように縦長の光パターン形状にしてもよい。フロントガラス40に投影する光パターンの数が変われば、光パターンのサイズも適宜変更するのは当然のことである。
また、光のパターンの移動のスピード(発光素子110の点灯時間間隔)は、予め設定されたスピード(時間間隔)に設定する。ただし、運転者の状態に合わせて調整することでより高い効果が期待される。
【0028】
なお、警告報知部13は、運転者に警告等を報知する装置であり、音声でアナウンスする構造および/またはナビゲーションシステムの表示装置等に文字やアイコンを表示して報知する構成であってもよい。
【0029】
<制御部20>
つぎに、制御部20について
図1を用いて説明する。制御部20は、車両のECU(エンジンコントロールユニット: engine control unit)内に配置され、DMS(Driver Monitoring System)5に接続される。DMS5は、運転者の目をカメラで撮影し、瞳孔を検出する機能を備えている。
【0030】
制御部20は、瞳孔の速度を演算により求める瞳孔速度検出部21と、求めた瞳孔の速度を記憶する速度値メモリ部22と、瞳孔平均速度を演算により求める平均速度演算部23と、求めた瞳孔平均速度値を記憶する平均速度値メモリ部24と、瞳孔平均速度値と今回の瞳孔速度値を比較する比較部25とを備えて構成される。
【0031】
制御部20の各部(21~25)は、ハードウエアにより構成することができる。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて、各部の機能を実現するように回路設計を行えばよい。また、制御部20の各部(21~25)は、その一部および全部をソフトウエアにより機能を実現することも可能である。その場合、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサーと、メモリとを備えたコンピュータ等によって制御部20を構成し、CPUが、メモリに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、それらの機能を実現する。
以下、制御部20の各部(21~25)の動作について、
図2のフローを用いて説明する。
【0032】
(ステップ201~203)
瞳孔速度検出部21は、車両のイグニッションがオンされたことを検出した場合(ステップ201)、DMS5から運転手の瞳孔の動きの検知結果を受け取って(ステップ202)、瞳孔の動きの検知結果に基づいて、所定の時間間隔で瞳孔の移動速度を検出し、速度値メモリ部22に保存する(ステップ203)。
【0033】
(ステップ204)
平均速度演算部23は、瞳孔の移動速度の所定時間(例えば、運転開始後5分~10分まで)の平均移動速度を算出し、平均速度値メモリ部24に保存する。平均移動速度を算出するタイミングは、運転者が漫然状態になっていないタイミングであって、特別な運転操作を行っていないタイミングがよい。具体的には、運転開始から5分間は、駐車場を出たり、注意することが多いため、眼球移動が大きく、かつ、多すぎるため不適切である。また、運転開始から10分を超えると、運転慣れから漫然状態に落ちいる可能性があるため不適切になる可能性がある。このような観点から、例えば運転開始から5分間以降10分間以下の間が適度な緊張感とリラックスした運転状態になると推測されるため、平均移動速度を算出する時間帯として好適である。しかし、この時間帯に限られるものではなく、ある速度範囲で定速走行をしている2分程度の間の瞳孔の移動速度を、平均移動速度としてもよい。また、平均移動速度を測定している際、急激な眼球の動きがあった場合、異常事態(例えば、急な飛び出しなど)があったと推測し、測定した平均移動速度の数値をノイズとして除外してもよい。
【0034】
(ステップ205~206)
比較部25は、ステップ203で算出した今回の瞳孔移動速度値と、ステップ204で算出した瞳孔平均速度値とを比較し、今回の瞳孔の速度値が平均速度より遅いかどうかを判定し、平均速度より遅くない場合は、ステップ202に戻って、次の検知結果を受け取る。
【0035】
平均速度より遅い場合、比較部25は、LEDドライバ12に光のパターンの順次投影を指示する。
【0036】
これにより、LEDドライバ12は、発光素子110を一方の端から所定時間ずつ順次発光させ、他方の端まで到達したならば、逆方向に順次発光させる制御を行う。これにより、フロントガラス40の下方の半透明反射フィルム113上に、フロントガラス40の端から端まで光のパターン(サッケード誘発光)が順次投影されたのち逆方向にさらに順次投影され、往復移動する。
【0037】
これにより、運転者は、光のパターンを無意識に目で追うため、光のパターンの往復に合わせて眼球が往復移動し、サッケード眼球運動が運転者の眼球に誘発される。
【0038】
(ステップ207)
瞳孔速度検出部21は、所定の時間間隔で瞳孔の移動速度を演算し、速度値メモリ部22に保存しているので、比較部25は、現在の瞳孔速度値を速度値メモリ部22から読み出し、ステップ204で算出した瞳孔平均速度値とを比較することにより、現在の瞳孔の速度値が平均速度値以上に回復したかどうかを判定する。回復している場合、ステップ208に進む。回復していない場合ステップ212に進む。
【0039】
(ステップ208~210)
現在の瞳孔の速度値が回復している場合、比較部25は、LEDドライバ12にサッケード誘発光の発光の停止を指示する(ステップ208)。
【0040】
次に、比較部25は、警告報知部13に、運転者に対して休憩をとるように警告するアナウンスおよび/または表示を行わせる(ステップ209)。一時的にせよ漫然状態に陥ること自体が運転者にとって異常な状態なので、早めの休憩を促すことにより、居眠り運転を防止することができる。
【0041】
さらに比較部25は、警告報知部13に、運転者に対して安全地帯まで車両を移動させて停止させるように促すアナウンスおよび/または表示を行わせる(ステップ210)。
【0042】
(ステップ211、215、216)
運転者がイグニッションをオフにした場合、ステップ215に進み、瞳孔速度検出部21は、現在のDMS5から運転手の瞳孔の動きの検知結果を受け取って、所定の時間間隔で瞳孔の移動速度を演算し、速度値メモリ部22に保存し、比較部25は、現在の瞳孔速度値と、ステップ204で算出した瞳孔平均速度値とを比較することにより、現在の瞳孔の速度値が平均速度値以上に回復したかどうかを判定する(ステップ215)。
【0043】
回復している場合、比較部25は、運転者に対して回復したことを知らせ、再び運転可能であることを知らせるアナウンスおよび/表示を警告報知部13に行わせ、ステップ201に戻る(ステップ216)。なお、ステップ215,216を行わないフローにしてもよい。つまり、ステップ211がYES(イグニッションOFF)の場合、本フローは、終了(END)としてもよい。
【0044】
一方、ステップ211において、運転者がイグニッションをオフにしない場合、ステップ209に戻って、休憩の警告と車両停止のアナウンスを繰り返す(ステップ209,210)。
【0045】
(ステップ212)
上記ステップ207において、現在の瞳孔の速度値が回復していない場合、比較部25は、ステップ212に進み、LEDドライバに、光パターンの移動速度、発光する光量、発光色、光パターンのサイズ、および、光パターン移動範囲のサイズのうちの1以上を変更させる。例えば、発光素子110の光量を予め定めた光量だけ増加させるよう指示するとともに、光パターンの移動速度(サッケード誘発光の移動速度)を所定量大きくするように指示する。もしくは、フロントガラス40に投影する光パターンのサイズを所定量大きくしてよいし、光パターンの移動範囲の大きさを狭くまたは広く変更してもよい。また、比較部25は、ステップ209と同様に、警告報知部13に休憩の警告をアナウンスおよび/または表示を行わせる(ステップ212)。
【0046】
(ステップ213)
瞳孔速度検出部21は、所定の時間間隔で瞳孔の移動速度を演算し、速度値メモリ部22に保存しているので、比較部25は、現在の瞳孔速度値を速度値メモリ部22から読み出し、ステップ204で算出した瞳孔平均速度値とを比較することにより、現在の瞳孔の速度値が平均速度値以上に回復したかどうかを判定する。回復している場合、ステップ208に進む。
【0047】
回復していない場合、比較部25は、ステップ212に戻って、サッケード誘発光の光量を増加させ、移動スピードを大きくする動作を繰り返す。
【0048】
また、回復していない場合が、予め定め回数繰り返された場合、ステップ214に進む。
【0049】
(ステップ214)
比較部25は、警告報知部13に、車両を強制停止させる必要があることをアナウンスおよび/または表示を行わせ、ステップ210に進む。
【0050】
これにより、ステップ210において、安全地帯で車両停止するように促すアナウンス等がさらに行われ、その後は、ステップ215は、上述した通りである。
【0051】
上述してきたように、本実施形態のサッケード誘発発光表示システムは、瞳孔速度を検知して、瞳孔速度が低下している場合には、サッケード誘発光をフロントガラス40の下部(運転者の正面より下側の領域、かつ、運転者の視野内の領域)に照射(投影)しで往復移動させ、運転者に対して表示することにより、運転者に光パターンを視認させ、運転者のサッケード眼球運動を無意識に誘発させることができる。これにより、サッケード眼球運動を回復させ、覚醒レベルを上昇させ、漫然運転を防止することができる。
【0052】
また、瞳孔の移動速度が回復し、サッケード眼球運動が回復したならば、休憩をとるように運転者に警告し、安全地帯で車両を停止するように促すことができる。
【0053】
さらに、瞳孔の移動速度が回復しない場合には、フロントガラス40に投影するサッケード誘発光の光量や速度を大きくする調整を行うことができるため、サッケード誘発の作用を向上させることができる。
【0054】
このように、実施形態によれば、運転の妨げにならず、運転者のサッケード眼球運動を誘発することができる光表示システムを提供することができる。
【0055】
また、上述の実施形態1では、運転者が漫然状態に近くなっているかどうかを、ステップ205において、瞳孔の移動速度から判断する際に、瞳孔の移動速度の平均値を閾値として用いている。平均値を閾値として用いることにより、人によって異なる瞳孔移動速度から、精度よく漫然状態に近づいているかどうかを判断することができる。なお、平均値以外の値であってもよく、例えば、所定の時間内の最大値や最小値を閾値としてもよい。また、予め定めておいた閾値を用いることも可能である。
【0056】
<<<実施形態2>>>
実施形態2のサッケード誘発発光(漫然運転防止光)表示システム2について図面を用いて説明する。
【0057】
図6は、サッケード誘発発光表示システム2の全体構成を示す。
図7は、サッケード誘発発光表示システム2の動作を示すフローチャートである。
【0058】
図6のように、実施形態2のサッケード誘発発光表示システム2は、実施形態1と同様の構成であるが、車両には自動運転機能を実現する自動運転制御部6が備えられている。自動運転制御部6は、車両のステアリングやアクセルやブレーキ等の操作部を制御することにより自動運転を行う。
【0059】
比較部25は、自動運転制御部6に接続されている。
【0060】
実施形態2のサッケード誘発発光表示システム2の動作は、
図7のフローに示すように、実施形態1の
図2のフローとほぼ同様であるが、実施形態2では、車両が自動運転機能を備えているため、ステップ224が、実施形態1の
図2のフローのステップ214とは異なっている。
【0061】
すなわち、実施形態2では、ステップ206においてサッケード誘発光を照射しても、瞳孔の速度値が平均速度値以上に回復せず、サッケード誘発光のスピードや光量を複数回にわたって増加させても、瞳孔の速度値が平均速度値以上に回復しない場合(ステップ207,212,213)、ステップ224に進む。
【0062】
ステップ224において、比較部25は、自動運転制御部6に指示し、自動運転に切り替え、安全地帯まで車両を移動させて停止するように指示する。これを受けて自動運転制御部6は、ステアリング、アクセルおよびブレーキ等の操作部7を制御し、車両を路肩等の安全地帯まで移動させ、停止させる。もしくは、比較部25は、運転者に自動運転に切り替えるように警告し、運転者に自動運転に切り替えさせてもよい。
【0063】
ステップ211に進み、以降は実施形態1と同様である。
【0064】
このように、実施形態2では、サッケード誘発光をフロントガラス40の下部に照射(投影)しで往復移動させ、光量やスピードを調整しても、サッケード眼球運動を回復しない場合には、自動運転に切り替えて、安全地帯に移動することができる。サッケード眼球運動が回復しないということは、運転者は居眠り状態のような危険な状態に陥っていて、正常な運転ができない可能性が高い。そのため自動運転に切り替えられれば、運転者が危険な状態にかかわらず、運転者は自車両を運転することなく、安全地帯まで自車両を移動させることができるため、運転者は危険状態からの回復に専念することができる。
【0065】
他の効果は、実施形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0066】
なお、実施形態2では、サッケード誘発光を照射しても、瞳孔の速度値が平均速度値以上に回復せず、サッケード誘発光を照射する条件を変更しても瞳孔の速度値が平均速度値以上に回復せずしない場合、自動運転に切り替え、安全地帯に移動して停止させる構成であったが、自動運転に切り替えのタイミングは、このタイミングに限定されるものではない。例えば、サッケード誘発光の照射の開始(ステップ206)とともに、自動運転に切り替えてもよいし、休憩の警告アナウンス(ステップ209)とともに自動運転に切り替えてもよいし、最初のサッケード誘発光を照射しても、瞳孔の速度値が平均速度値以上に回復しなかった時点(ステップ212)で自動運転に切り替えつつ、サッケード誘発光を照射する条件を変更してもよい。
【0067】
また、自動運転に切り替え後の自動運転の動作は、安全地帯に移動する以外の動作であってもよい。例えば、自動運転に切り替え、前を走行する車両に接近させない、道路の車線の変更をさせないようにするに自動運転したり、急ブレーキを運転者が踏んでもゆっくり減速するように自動運転により制御する構成としてもよい。
【0068】
<<<実施形態3>>>
実施形態3のサッケード誘発発光(漫然運転防止光)表示システムについて
図8を用いて説明する。
【0069】
実施形態1では、3以上の発光素子110を用い、順次点灯していくことにより、光のパターンを移動させて往復させ、サッケード誘発光を照射する構成であったが、光のパターンは、色が異なる2つの光パターンのみであってもよい。
【0070】
すなわち、実施形態3では、
図8のように、フロントガラス40の下部の右半分(運転席側)に光パターン81を投影し、次のタイミングでは、左半分(助手席側)に光パターン82を投影する動作を繰り返す。
【0071】
実施形態3のシステムにおいて、フロントガラス40の右半分に投影する光パターン81の位置と、左半分に投影する光パターン82を投影する位置は、運転者の視野内でできるだけ距離が空いていることが望ましい。そのため、光パターン81,82の幅を、フロントガラス40の幅の1/2よりも小さくすることが好ましく、例えば、フロントガラス40の幅の1/3程度とする。
【0072】
フロントガラス40の右半分(運転席側)(の下方)の領域は、運転者の視野内にほぼ入るため、光パターン81を投影する位置は、フロントガラス40の右半分の領域内であれば、領域内の左の端であっても、右端であって、中央でもよいが、フロントガラス50の右半分の領域内の左端に光パターン81を投影した場合、次に、フロントガラス40の左半分(助手席側)の領域に光パターン82を投影すると、光パターン81と光パターン82の距離が短くなる。そのため、光パターン81と光パターン82の間隔を広く空けて左右の光パターン81,82を見分けやすくするため、フロントガラス40の右半分の領域(運転席側)に光パターン81を投影する位置は、フロントガラス40の右半分の領域内の中央から右端(フロントガラスの右端)であることが好ましい。
【0073】
一方、フロントガラスの左半分(助手席側)(の下方)の領域は、運転者の視野内に入りにくい。特に、フロントガラス40の左端は、視野から外れやすい。そのため、フロントガラス40の左半分の領域に光パターン82を投影する位置は、フロントガラス40の左端のみに投影することは避けることが好ましい。また、フロントガラス40の左半分の領域内の右端に光パターン82を投影した場合、光パターン82と、フロントガラス40の右半分の領域に投影した光パターン81との距離が短くなる。そのため、フロントガラス40の左半分の領域内の右端に光パターン82を投影するのも割けることが好ましい。よって、フロントガラス40の左半分の領域に光パターン82を投影する際には、中央と左端を含むように投影することが好ましい。これにより、フロントガラス40の左半分の領域に投影した光パターン82を、運転者は視野内に入れることができる。
【0074】
実施形態では、光パターン81,82の上下高さは、フロントガラス40の高さの1/10程度であることが望ましい。また、左右の光パターン81,82の幅は、フロントガラス40の幅の1/3程度に限定されず、1/4~1/10程度に設定してもよい。
なお、左右の光パターン81,82の幅を、フロントガラス40の幅の1/4~1/10程度に設定する場合、フロントガラス40の右半分の領域の少なくとも中央位置を含むように光パターン81を投影し、フロントガラス40の左半分の領域の少なくとも中央位置を含むように光パターン82を投影することが好ましい。これにより、投影するのが光パターン81,82の2つのみであっても、運転者が視野全体を使って、左右に交互に移動する光のパターンを無意識に追うように誘導することが可能になる。
【0075】
なお、左側に運転席のある車両の場合は、上記説明の左右は、逆になり、運手席側はフロントガラス40の左半分になり、助手席側は右半分になるのは当然のことである。
【0076】
また、右半分に投影される光パターン81の色と、左半分に投影される光パターン82の色とが異なることが望ましい。例えば、人間は黄色の光によって覚醒しやすいため、一方は、アンバーであり、他方は、アンバーではない色(例えば白)であることが好ましい。
【0077】
運転者は、点灯する光パターン81および82を視野内に入れながら交互に目で追うことにより、サッカード眼球運動が活性化され、意識レベルを改善されることが可能である。
<<<実施形態4>>>
実施形態4のサッケード誘発発光(漫然運転防止光)表示システムについて
図9を用いて説明する。
【0078】
実施形態1では、3以上の発光素子110を順次点灯していくことにより、光のパターンを移動させて往復させる構成であったが、実施形態4では、
図9(a)のように、線状の光のパターン83を左右に連続的に移動させる構成としてもよい。
【0079】
線状の光のパターン83は、例えば、フロントガラス40の上から下まで到達する線状とする。線状にすることにより、上から下まで到達する光のパターンであっても、運転者の視界の妨げになりにくい。
【0080】
実施形態4では、連続的に光を移動させるために、プロジェクタ91により光をフロントガラス40に照射する構成としている。
【0081】
<<<実施形態5>>>
実施形態5のサッケード誘発発光(漫然運転防止光)表示システムについて
図10を用いて説明する。
【0082】
実施形態5のサッケード誘発発光表示システムの構成は、実施形態1と同様であるが、フロントガラス40に投影する光のパターンとして、顔の形などのアイコン84を用い、アイコン84をフロントガラス40の左右の両端に交互に表示する。
【0083】
これにより、運転者は、アイコン84を目で追うため、サッケード眼球運動が誘発される。
【0084】
なお、3つ以上のアイコン84を、実施形態1の光のパターンの代わりに、順次表示して移動させていく構成にすることも可能である。
【0085】
<<<実施形態6>>>
実施形態6のサッケード誘発発光(漫然運転防止光)表示システムについて
図11を用いて説明する。
【0086】
実施形態6のサッケード誘発発光表示システムの構成は、実施形態1と同様であるが、フロントガラス40に投影する光のパターンとして、消灯領域をフロントガラス40の順次移動させていく光パターンである。すなわち、発光素子110を全点灯させた状態から、一方の端部の発光素子110を消灯し、消灯している発光素子110を順次逆側の端部まで移動させ、逆側の端部に到達したならば、逆向きに一方の端部まで消灯している端部まで順次移動させていく。
【0087】
これにより、運転者は、消灯領域を目で追うため、サッケード眼球運動が誘発される。
【0088】
<<<変形例>>>
上述の各実施形態では、フロントガラス40に光パターンを投影する構成であったが、フロントガラス40に、視界を遮らない微小な発光体もしくは一部透明な発光体を配置し、各実施形態の光パターンの形状で発光させる構成としてもよい。フロントガラス40に配置する発光体としては、微小なLED、有機EL、液晶パネル、HUD等を用いることができる。
【0089】
また、上述の実施形態では、運転中の瞳孔の移動速度に基づいてサッケード誘発光を投影する構成であったが、瞳孔の移動速度が、サッケード誘発光を照射するほどには低下していなかったが、相対的に移動速度が低下していた時間帯を検出し、漫然状態に近づく傾向にあった時間帯として、運転者に報知することも可能である。
【0090】
また、運転前に、実施形態1のステップ202~209、212、213を行って瞳孔の移動速度を測定し、閾値よりも低い場合にはサッケード誘発光を照射して回復したどうかを判定し、回復しない場合には、今日は運転しないように促すことも可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 サッケード誘発発光(漫然運転防止光)表示システム
2 サッケード誘発発光(漫然運転防止光)表示システム
6 自動運転制御部
7 操作部
10 発光部
11 発光装置
12 ドライバ
13 警告報知部
20 制御部
21 瞳孔速度検出部
22 速度値メモリ部
23 平均速度演算部
24 平均速度値メモリ部
25 比較部
30 ダッシュボード
40 フロントガラス
50 構造物
81 光パターン
82 光パターン
83 パターン
84 アイコン
91 プロジェクタ
110 発光素子
111 導光部材
112 マスク
113 半透明反射フィルム