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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157771
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20241031BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T8/17 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072326
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 僚太
(72)【発明者】
【氏名】杉本 佳啓
【テーマコード(参考)】
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D049BB02
3D049BB34
3D049CC02
3D049HH12
3D049HH20
3D049HH39
3D049HH41
3D049HH47
3D049HH48
3D049HH52
3D049PP02
3D049RR04
3D049RR13
3D246BA02
3D246CA03
3D246DA01
3D246GA01
3D246GA13
3D246GB37
3D246GC14
3D246HA03A
3D246HA43A
3D246HA45A
3D246KA13
3D246KA15
3D246KA19
3D246LA73B
3D246MA07
3D246MA08
3D246MA11
3D246MA19
3D246MA23
(57)【要約】
【課題】一例として、より信頼性高く冗長化されたブレーキシステムを得る。
【解決手段】実施形態に係るブレーキシステムは、一例として、第1の制御装置と、前記第1の制御装置に電気的に接続されるとともに操作部材の操作量に応じて変動する物理量を検出するよう構成された第1のセンサと、前記物理量を検出するよう構成された第2のセンサと、を有し、ホイールシリンダの液圧を調整するよう構成された、第1のユニットと、第2の制御装置を有し、前記ホイールシリンダの液圧を調整するよう構成された、第2のユニットと、前記第1のユニットと前記第2のユニットとの間で電気信号を伝達する通信バスと、前記第2のセンサの出力信号を直接的に前記第2の制御装置に伝達する配線と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の制御装置と、前記第1の制御装置に電気的に接続されるとともに操作部材の操作量に応じて変動する物理量を検出するよう構成された第1のセンサと、前記物理量を検出するよう構成された第2のセンサと、を有し、ホイールシリンダの液圧を調整するよう構成された、第1のユニットと、
第2の制御装置を有し、前記ホイールシリンダの液圧を調整するよう構成された、第2のユニットと、
前記第1のユニットと前記第2のユニットとの間で電気信号を伝達する通信バスと、
前記第2のセンサの出力信号を直接的に前記第2の制御装置に伝達する配線と、
を具備するブレーキシステム。
【請求項2】
前記第1のユニットは、前記第2のセンサに電気的に接続される第1のコネクタを有し、
前記第2のユニットは、前記第2の制御装置に電気的に接続される第2のコネクタを有し、
前記配線は、前記第1のコネクタに接続される第1の端子と、前記第2のコネクタに接続される第2の端子と、を有する、
請求項1のブレーキシステム。
【請求項3】
前記配線は、前記第2のセンサの出力信号を伝達する第1の配線と、前記第2のセンサに電力を供給する第2の配線と、グランド電位に設定される第3の配線と、を有する、
請求項1又は請求項2のブレーキシステム。
【請求項4】
前記第1の制御装置及び前記第2の制御装置のうち少なくとも一方は、前記第1のセンサが検出した前記物理量と前記第2のセンサが検出した前記物理量との差分が所定の範囲を外れた場合、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサのうち少なくとも一方が異常であると判定するよう構成された、
請求項1又は請求項2のブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上流側のユニットと下流側のユニットとを備え、ホイールシリンダの液圧を調整するブレーキシステムが知られている。上流側のユニットは、例えば、ブレーキペダルの操作量に応じた圧力を発生させる。下流側のユニットは、例えば、アンチスキッド制御のような種々の動作を行う。例えば、上流側のユニットに設けられたセンサが、ブレーキペダルの操作量を検出する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102012205861号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、上流側のユニットが故障した場合、下流側のユニットはブレーキペダルの操作量を取得することができない。このため、下流側のユニットは、ブレーキペダルの操作量に基づいて電動でホイールシリンダの液圧を調整することができなくなってしまう虞がある。
【0005】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたものであり、より信頼性高く冗長化された(redundant)ブレーキシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るブレーキシステムは、一例として、第1の制御装置と、前記第1の制御装置に電気的に接続されるとともに操作部材の操作量に応じて変動する物理量を検出するよう構成された第1のセンサと、前記物理量を検出するよう構成された第2のセンサと、を有し、ホイールシリンダの液圧を調整するよう構成された、第1のユニットと、第2の制御装置を有し、前記ホイールシリンダの液圧を調整するよう構成された、第2のユニットと、前記第1のユニットと前記第2のユニットとの間で電気信号を伝達する通信バスと、前記第2のセンサの出力信号を直接的に前記第2の制御装置に伝達する配線と、を備える。よって、一例としては、例えば第1の制御装置や通信バスが故障したとしても、第2の制御装置は、第2のセンサが検出した物理量を当該第2のセンサから取得することができる。従って、ブレーキシステムは、より信頼性高く冗長化される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一つの実施形態のブレーキシステムの構成を模式的に示す図である。
図2図2は、上記実施形態の下流ECUのプロセッサによる制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、一つの実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0009】
なお、以下の説明において、「抑制する」は、例えば、事象、作用、若しくは影響の発生を防ぐこと、又は事象、作用、若しくは影響の度合いを低減させること、として定義される。
【0010】
図1は、本実施形態のブレーキシステム10の構成を模式的に示す図である。ブレーキシステム10は、四輪自動車のような車両1に搭載される。なお、ブレーキシステム10は、この例に限られない。ブレーキシステム10は、車両1を制動する。
【0011】
図1に示すように、ブレーキシステム10は、複数のホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rと、ブレーキペダル13と、ブレーキ制御装置14とを有する。ブレーキペダル13は、操作部材の一例である。なお、操作部材は、ブレーキペダル13に限られず、ブレーキシステム10の操作のために操作されるレバーのような他の部材であっても良い。
【0012】
ホイールシリンダ11L,11Rは、液圧に応じてブレーキパッドを前輪に押し付け、前輪に対する制動力を生じさせる。ホイールシリンダ12L,12Rは、液圧に応じてブレーキパッドを後輪に押し付け、後輪に対する制動力を生じさせる。
【0013】
ブレーキペダル13は、車両1の室内に配置され、運転者に踏み込まれることにより操作される。運転者によるブレーキペダル13の踏み込み量(ペダルストローク)は、操作部材の操作量の一例であるとともに、操作部材の操作量に応じて変動する物理量の一例である。
【0014】
ブレーキ制御装置14は、ホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧を調整することで、車両1の制動力を制御する。ブレーキ制御装置14は、上流ユニット21と、下流ユニット22と、第1の液路23と、第2の液路24と、通信バス25と、冗長配線26とを有する。上流ユニット21は、第1のユニットの一例である。下流ユニット22は、第2のユニットの一例である。冗長配線26は、配線の一例である。
【0015】
上流ユニット21は、第1の液路23及び下流ユニット22を通じて、前輪のホイールシリンダ11L、11Rに接続される。さらに、上流ユニット21は、第2の液路24及び下流ユニット22を通じて、後輪のホイールシリンダ12L、12Rに接続される。
【0016】
上流ユニット21は、ケース30と、リザーブタンク31と、マスタシリンダ32と、電動シリンダ33と、マスタカット弁34と、系統遮断弁35と、シミュレータカット弁36と、ストロークシミュレータ37と、上流電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)38と、コネクタ39と、ストロークセンサ41と、複数の圧力センサ42,43とを有する。コネクタ39は、第1のコネクタの一例である。
【0017】
リザーブタンク31、マスタシリンダ32、電動シリンダ33、マスタカット弁34、系統遮断弁35、シミュレータカット弁36、ストロークシミュレータ37、上流ECU38、ストロークセンサ41、及び圧力センサ42,43のそれぞれは、ケース30に収容され、又はケース30に取り付けられる。コネクタ39は、ケース30の外部へ露出している。なお、例えばマスタシリンダ32は、上流ユニット21に含まれずにケース30の外部に位置しても良い。
【0018】
リザーブタンク31は、液圧の伝達媒体であるブレーキ液を貯留する。マスタシリンダ32は、ブレーキペダル13の踏み込み量に応じて液圧を発生させる。マスタシリンダ32は、シリンダ本体51と、マスタピストン52と、付勢部材53とを有する。なお、マスタシリンダ32は、この例に限られない。
【0019】
シリンダ本体51に、圧力室56と、入力ポート57と、出力ポート58とが設けられる。圧力室56は、シリンダ本体51の内部に設けられ、ブレーキ液で満たされる。マスタピストン52は、摺動可能にシリンダ本体51に収容される。マスタピストン52が摺動することで、圧力室56の容積が変化する。
【0020】
マスタピストン52は、ブレーキペダル13に連結される。マスタピストン52の位置及び圧力室56の容積は、ペダルストロークに応じて変化する。ペダルストロークが増加するほど、圧力室56の容積が減少する。付勢部材53は、シリンダ本体51の内部に配置され、圧力室56の容積を増加させる方向にマスタピストン52を押す。
【0021】
圧力室56は、入力ポート57を介してリザーブタンク31に接続される。入力ポート57は、ペダルストロークが所定の量より小さい場合に開放され、圧力室56とリザーブタンク31とを連通する。一方、入力ポート57は、ペダルストロークが所定の量より大きい場合、マスタピストン52により塞がれる。
【0022】
圧力室56は、出力ポート58及びシミュレータカット弁36を介して、ストロークシミュレータ37に連通する。さらに、圧力室56は、出力ポート58及びマスタカット弁34を介して、第1の液路23に連通する。
【0023】
電動シリンダ33は、電動で液圧を発生させる。電動シリンダ33は、シリンダ本体61と、ピストン62と、付勢部材63と、モータ64と、回転直動変換機構65とを有する。なお、電動シリンダ33は、この例に限られない。
【0024】
シリンダ本体61に、圧力室66と、入力ポート67と、出力ポート68とが設けられる。圧力室66は、シリンダ本体61の内部に設けられ、ブレーキ液で満たされる。ピストン62は、摺動可能にシリンダ本体61に収容される。ピストン62が摺動することで、圧力室66の容積が変化する。
【0025】
回転直動変換機構65は、モータ64の出力軸の回転を、ピストン62の直動に変換する。モータ64は、回転直動変換機構65により、ピストン62を移動させる。付勢部材63は、シリンダ本体61の内部に配置され、圧力室66の容積を増加させる方向にピストン62を押す。
【0026】
圧力室66は、入力ポート67を介してリザーブタンク31に接続される。入力ポート67は、圧力室66の容積が所定の量より大きくなる位置にピストン62が配置される場合に開放され、圧力室66とリザーブタンク31とを連通する。ピストン62が初期位置に位置するとき、圧力室66の容積は最大となる。一方、入力ポート67は、圧力室66の容積が所定の量より小さくなる位置にピストン62が配置される場合、ピストン62により塞がれる。
【0027】
圧力室66は、出力ポート68を介して第2の液路24に連通する。さらに、圧力室66は、出力ポート68及び系統遮断弁35を介して、第1の液路23に連通する。系統遮断弁35が開いているとき、第1の液路23と第2の液路24とは、系統遮断弁35を介して互いに連通する。
【0028】
マスタカット弁34及び系統遮断弁35は、上流ユニット21の状態を切り替える電磁弁である。マスタカット弁34は、通電時に閉じ、非通電時に開くノーマルオープン式の電磁弁である。系統遮断弁35は、通電時に開き、非通電時に閉じるノーマルクローズ式の電磁弁である。
【0029】
シミュレータカット弁36は、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ37との連通を切り替える電磁弁である。シミュレータカット弁36は、通電時に開き、非通電時に閉じるノーマルクローズ式の電磁弁である。ストロークシミュレータ37は、当該ストロークシミュレータ37とマスタシリンダ32の圧力室56とが連通するとき、ブレーキペダル13の操作に対する反力を発生させる。
【0030】
上流ECU38は、電動シリンダ33、マスタカット弁34、系統遮断弁35、及びシミュレータカット弁36を制御する。上流ECU38は、例えば、基板38aと、基板38aに実装されたプロセッサ38b、メモリ、及び種々の電子部品と、を有する。プロセッサ38bは、第1の制御装置の一例であり、例えばCPUである。プロセッサ38bは、上流ユニット21における種々の制御を実行する。メモリは、制御用のプログラム及びデータを記憶している。
【0031】
電動シリンダ33、マスタカット弁34、系統遮断弁35、シミュレータカット弁36、及び圧力センサ42,43は、プロセッサ38bに電気的に接続されている。例えば、電動シリンダ33、マスタカット弁34、系統遮断弁35、シミュレータカット弁36、及び圧力センサ42,43は、基板38aに実装され、基板38aの配線を介してプロセッサ38bに電気的に接続される。これにより、プロセッサ38bは、電動シリンダ33、マスタカット弁34、系統遮断弁35、及びシミュレータカット弁36を制御する。
【0032】
ストロークセンサ41は、第1のセンサ41aと第2のセンサ41bとを有する。第1のセンサ41aは、ストロークセンサ41の第1のチャンネルとも称され得る。第2のセンサ41bは、ストロークセンサ41の第2のチャンネルとも称され得る。
【0033】
第1のセンサ41aと第2のセンサ41bとは、例えば、互いに同一のセンサである。第1のセンサ41aと第2のセンサ41bとのいずれも、ペダルストロークを検出する。第1のセンサ41a及び第2のセンサ41bは、正常に動作する場合、略同一の出力信号を出力する。なお、第1のセンサ41a及び第2のセンサ41bは、この例に限られない。
【0034】
例えば、第1のセンサ41aの出力信号と第2のセンサ41bの出力信号とが、誤差によって互いに異なっても良い。また、第1のセンサ41aと第2のセンサ41bとが互いに異なっても良いが、第1のセンサ41a及び第2のセンサ41bの検知対象は同一の物理量である。第1のセンサ41aと第2のセンサ41bとが、互いに異なる形式の出力信号を出力しても良い。例えば、第1のセンサ41a及び第2のセンサ41bのうち、一方がアナログセンサで、他方がデジタルセンサであっても良い。
【0035】
第1のセンサ41a及び第2のセンサ41bは、例えば、一つのパッケージに格納される二つのセンサである。なお、第1のセンサ41a及び第2のセンサ41bは、別々のパッケージであっても良い。
【0036】
第1のセンサ41aは、例えば基板38aの配線を介して、プロセッサ38bに電気的に接続される。第1のセンサ41aは、出力信号をプロセッサ38bへ出力する。一方、第2のセンサ41bは、少なくとも上流ユニット21において、プロセッサ38bに接続されない。なお、第2のセンサ41bは、例えば下流ユニット22を経由してプロセッサ38bに電気的に接続されても良い。
【0037】
圧力センサ42は、マスタシリンダ32が出力ポート58から出力する液圧(マスタ圧)を検出する。圧力センサ43は、電動シリンダ33が出力ポート68から出力する液圧を検出する。圧力センサ42,43は、出力信号をプロセッサ38bへ出力する。さらに、プロセッサ38bには、種々のセンサから車輪速及び車体加速度のような種々の検出信号が入力される。
【0038】
上流ECU38のプロセッサ38bは、ストロークセンサ41及び圧力センサ42,43の検出結果に基づき、電動シリンダ33、マスタカット弁34、系統遮断弁35、及びシミュレータカット弁36を制御する。なお、プロセッサ38bは、他の要因に基づいて電動シリンダ33、マスタカット弁34、系統遮断弁35、及びシミュレータカット弁36を制御しても良い。
【0039】
下流ユニット22は、ホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧を個別に調整する。下流ユニット22は、例えば、アンチスキッド制御、横滑り防止制御、トラクションコントロールのような種々の制御を行う。なお、下流ユニット22は、この例に限られない。
【0040】
下流ユニット22は、ケース70と、第1の液圧調整装置71と、第2の液圧調整装置72と、モータ73と、下流ECU74と、圧力センサ75と、コネクタ76とを有する。コネクタ76は、第2のコネクタの一例である。
【0041】
第1の液圧調整装置71、第2の液圧調整装置72、モータ73、下流ECU74、及び圧力センサ75は、ケース70に収容され、又はケース70に取り付けられる。コネクタ76は、ケース70の外部へ露出している。
【0042】
第1の液圧調整装置71は、前輪のホイールシリンダ11L,11Rの液圧を調整する。第1の液圧調整装置71は、差圧制御弁81と、二つの保持弁82と、二つの減圧弁83と、ポンプ84と、調圧リザーバ85と、複数の液路86,87,88,89とを有する。
【0043】
差圧制御弁81、一方の保持弁82、一方の減圧弁83、ポンプ84、調圧リザーバ85、及び液路86,87,88は、ホイールシリンダ11Lの液圧を調整する液圧回路を形成する。差圧制御弁81、他方の保持弁82、他方の減圧弁83、ポンプ84、調圧リザーバ85、及び液路86,87,88は、ホイールシリンダ11Rの液圧を調整する液圧回路を形成する。以下、ホイールシリンダ11Lの液圧を調整する液圧回路について主に説明する。
【0044】
第1の液路23は、差圧制御弁81を介して液路86に連通する。差圧制御弁81は、ノーマルオープン式のリニアソレノイド弁である。差圧制御弁81は、開度を制御されることで、第1の液路23と液路86との間に差圧を発生させることができる。
【0045】
差圧制御弁81に、当該差圧制御弁81と並列なチェック弁81aが設けられる。チェック弁81aは、第1の液路23から液路86へのブレーキ液の流れを許容する。一方、チェック弁81aは、液路86から第1の液路23へのブレーキ液の流れを遮断する。
【0046】
液路86は、保持弁82を介して、ホイールシリンダ11Lに連通する。保持弁82は、液路87を介してホイールシリンダ11Lに連通する。保持弁82は、ノーマルオープン式の電磁弁である。
【0047】
保持弁82に、当該保持弁82と並列なチェック弁82aが設けられる。チェック弁82aは、液路87から液路86へのブレーキ液の流れを許容する。一方、チェック弁82aは、液路86から液路87へのブレーキ液の流れを遮断する。
【0048】
液路87は、減圧弁83を介して調圧リザーバ85に連通する。減圧弁83は、ノーマルクローズ式の電磁弁である。減圧弁83と調圧リザーバ85とは、液路88を通じて連通している。
【0049】
液路88は、ポンプ84を通じて液路86に連通する。ポンプ84は、モータ73により駆動され、調圧リザーバ85のブレーキ液を液路86へ吐出する。ポンプ84と液路86との間にチェック弁84aが設けられる。チェック弁84aは、ポンプ84から液路86へのブレーキ液の流れを許容する。一方、チェック弁84aは、液路86からポンプ84へのブレーキ液の流れを遮断する。
【0050】
調圧リザーバ85は、液路89を通じて第1の液路23に連通する。調圧リザーバ85は、所定の量よりも多いブレーキ液を貯留するとき、液路89との連通を遮断する。この場合、ポンプ84は、調圧リザーバ85のブレーキ液を吸引する。一方、調圧リザーバ85は、所定の量よりも少ないブレーキ液を貯留するとき、液路89に連通する。この場合、ポンプ84は、調圧リザーバ85及び液路89を通じて第1の液路23からブレーキ液を吸引することができる。
【0051】
ホイールシリンダ11Rの液圧を調整する液圧回路は、ホイールシリンダ11Lの液圧を調整する液圧回路と同様の構成を有する。ホイールシリンダ11Rの液圧を調整する液圧回路において、液路86は、保持弁82を介して、ホイールシリンダ11Rに連通する。保持弁82は、液路87を介してホイールシリンダ11Rに連通する。
【0052】
第2の液圧調整装置72は、後輪のホイールシリンダ12L,12Rの液圧を調整する。第2の液圧調整装置72は、第1の液圧調整装置71と同様の構成を有する。すなわち、第2の液圧調整装置72は、差圧制御弁81と、二つの保持弁82と、二つの減圧弁83と、ポンプ84と、調圧リザーバ85と、複数の液路86,87,88,89とを有する。第2の液路24が、差圧制御弁81を介して液路86に連通する。
【0053】
第2の液圧調整装置72において、差圧制御弁81、一方の保持弁82、一方の減圧弁83、ポンプ84、調圧リザーバ85、及び液路86,87,88は、ホイールシリンダ12Lの液圧を調整する液圧回路を形成する。差圧制御弁81、他方の保持弁82、他方の減圧弁83、ポンプ84、調圧リザーバ85、及び液路86,87,88は、ホイールシリンダ12Rの液圧を調整する液圧回路を形成する。
【0054】
下流ECU74は、モータ73、差圧制御弁81、保持弁82、及び減圧弁83を制御する。下流ECU74は、上流ECU38と同様に、基板74aと、基板74aに実装されたプロセッサ74b、メモリ、及び種々の電子部品と、を有する。プロセッサ74bは、第2の制御装置の一例であり、例えばCPUである。プロセッサ74bは、下流ユニット22における種々の制御を実行する。
【0055】
モータ73、圧力センサ75、差圧制御弁81、保持弁82、及び減圧弁83は、プロセッサ74bに電気的に接続されている。例えば、モータ73、圧力センサ75、差圧制御弁81、保持弁82、及び減圧弁83は、基板74aに実装され、基板74aの配線を介してプロセッサ74bに電気的に接続される。これにより、プロセッサ74bは、モータ73、差圧制御弁81、保持弁82、及び減圧弁83を制御する。
【0056】
圧力センサ75は、上流ユニット21が第1の液路23の第1の液圧調整装置71に供給する液圧を検出する。圧力センサ75は、出力信号をプロセッサ74bへ出力する。
【0057】
通信バス25は、上流ユニット21と下流ユニット22との間で電気信号を伝達する。例えば、上流ECU38と下流ECU74とは、通信バス25を通じて、Controller Area Network(CAN)に準拠した通信を行う。なお、通信バス25は、この例に限られない。
【0058】
冗長配線26は、通信バス25とは異なる経路で、第2のセンサ41bと下流ECU74のプロセッサ74bとを電気的に接続する。冗長配線26は、ワイヤハーネス91と、配線パターン92とを有する。ワイヤハーネス91は、ジカ線とも称され得る。
【0059】
ワイヤハーネス91は、第1の配線91aと、第2の配線91bと、第3の配線91cと、二つのプラグ91d,91eを有する。プラグ91dは、第1の端子の一例である。プラグ91eは、第2の端子の一例である。
【0060】
第1の配線91a、第2の配線91b、及び第3の配線91cは、並列に延びている。第1の配線91aは、信号線であり、第2のセンサ41bの出力信号を伝達する。第2の配線91bは、電源線であり、電源電圧に設定される。第3の配線91cは、グランド線であり、グランド電位に設定される。
【0061】
プラグ91d,91eは、第1の配線91a、第2の配線91b、及び第3の配線91cの両端に配置される。プラグ91dは、上流ユニット21のコネクタ39に接続される。プラグ91eは、下流ユニット22のコネクタ76に接続される。
【0062】
配線パターン92は、上流ECU38の基板38aに設けられる。配線パターン92は、通信バス25には含まれない。言い換えると、配線パターン92は、通信バス25とは異なる配線である。
【0063】
配線パターン92は、第2のセンサ41bとコネクタ39とを接続する。すなわち、コネクタ39は、配線パターン92を通じて第2のセンサ41bに電気的に接続される。配線パターン92は、プロセッサ38bからは離間している。
【0064】
下流ユニット22のコネクタ76は、下流ECU74のプロセッサ74bに電気的に接続される。このため、第2のセンサ41bは、配線パターン92、コネクタ39、ワイヤハーネス91、及びコネクタ76を通じて、プロセッサ74bに電気的に接続される。
【0065】
冗長配線26は、上流ECU38のプロセッサ38b及び通信バス25を経由せずに、第2のセンサ41bと下流ECU74のプロセッサ74bとを電気的に接続する。冗長配線26は、第2のセンサ41bの出力信号を、プロセッサ38bのような電気信号を処理又は取得する電子部品を介さず、直接的にプロセッサ74bに伝達する。さらに、第2のセンサ41bは、冗長配線26の第2の配線91bにより、電力を供給される。
【0066】
なお、車両1のモデルによっては、ワイヤハーネス91が省略され、第2のセンサ41bが上流ECU38のプロセッサ38bに電気的に接続されることがあっても良い。この場合、配線パターン92と上流ECU38のプロセッサ38bとが、ゼロオーム抵抗Rによって電気的に接続される。すなわち、配線パターン92は、第2のセンサ41bがワイヤハーネス91を通じて下流ECU74のプロセッサ74bに電気的に接続されるモデルと、第2のセンサ41bがゼロオーム抵抗Rを通じて上流ECU38のプロセッサ38bに電気的に接続されるモデルとの間で、上流ECU38を共通化することができる。
【0067】
以下、ブレーキ制御装置14によるホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧の制御について説明する。なお、ブレーキ制御装置14による制御は、以下の例に限られない。
【0068】
通常時において、上流ECU38のプロセッサ38bは、マスタカット弁34を閉じ、系統遮断弁35及びシミュレータカット弁36を開く。これにより、電動シリンダ33の出力ポート68は、第1の液路23及び第2の液路24に連通する。一方、マスタシリンダ32の出力ポート58は、第1の液路23及び第2の液路24には連通せず、ストロークシミュレータ37に連通する。
【0069】
第1の液圧調整装置71及び第2の液圧調整装置72は、電動シリンダ33を通じてリザーブタンク31に連通する。電動シリンダ33は、ブレーキ液をホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rへ送る。
【0070】
上流ECU38のプロセッサ38bは、第1のセンサ41aの出力信号を取得することで、第1のセンサ41aが検出したペダルストロークを得る。プロセッサ38bは、例えばペダルストロークに応じて電動シリンダ33を制御することで、ホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧を調整し、車両1の制動力を制御する。すなわち、上流ユニット21は、ペダルストロークに応じてホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧を調整する。
【0071】
一方、下流ECU74のプロセッサ74bは、ホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧を個別に制御する。例えば、プロセッサ74bは、ホイールシリンダ11Lを加圧するとき、ホイールシリンダ11Lの液圧を調整する液圧回路における保持弁82を開き、減圧弁83を閉じる。さらに、プロセッサ74bは、ホイールシリンダ11Lの液圧と第1の液路23の液圧との目標差圧を設定する。目標差圧は、ホイールシリンダ11Lの液圧が第1の液路23の液圧よりも高圧となるように設定される。
【0072】
プロセッサ74bは、目標差圧に応じた電流を差圧制御弁81に流すとともに、第1の液路23から調圧リザーバ85を通じて液路86にブレーキ液を供給するようポンプ84を駆動する。これにより、ポンプ84によるブレーキ液の供給に応じて、ホイールシリンダ11Lが加圧される。プロセッサ74bは、同様に、ホイールシリンダ11R,12L,12Rを制御する。
【0073】
図2は、本実施形態の下流ECU74のプロセッサ74bによる制御の一例を示すフローチャートである。以下に図2を参照して説明するように、下流ECU74のプロセッサ74bは、上流ユニット21、第1のセンサ41a、又は第2のセンサ41bが故障したとしても、ブレーキ制御装置14がホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧を制御できるようにする。
【0074】
図2に示すように、正常時において、下流ECU74のプロセッサ74bは、冗長配線26を介して、第2のセンサ41bの出力信号を取得する(S11)。すなわち、プロセッサ74bは、第2のセンサ41bが検出したペダルストロークを得る。
【0075】
上流ECU38のプロセッサ38bと下流ECU74のプロセッサ74bとは、通信バス25を通じて、互いに制御状態を出力している。例えば、プロセッサ74bは、通信バス25を介して、上流ECU38のプロセッサ38b又はメモリから、第1のセンサ41aが検出したペダルストロークを取得する。
【0076】
図2に示すように、下流ECU74のプロセッサ74bは、上流ECU38のプロセッサ38b又はメモリから第1のセンサ41aの検出値(ペダルストローク)を取得したか否かを判定する(S12)。下流ECU74のプロセッサ74bは、第1のセンサ41aの出力値を取得した場合(S12:Yes)、第1のセンサ41aが検出したペダルストロークと第2のセンサ41bが検出したペダルストロークとの差分の絶対値が閾値を上回るか否かを判定する(S13)。
【0077】
本実施形態において、第1のセンサ41a及び第2のセンサ41bは、同一のセンサである。このため、第1のセンサ41a及び第2のセンサ41bが正常である場合、第1のセンサ41aが検出したペダルストロークと第2のセンサ41bが検出したペダルストロークとは、略同一となる。反対に、第1のセンサ41aが検出したペダルストロークと第2のセンサ41bが検出したペダルストロークとが異なる場合、第1のセンサ41a及び第2のセンサ41bのうち少なくとも一方が異常であると推定され得る。
【0078】
第1のセンサ41aが検出したペダルストロークと第2のセンサ41bが検出したペダルストロークとの差分の絶対値が閾値以下である場合(S13:No)、プロセッサ74bは、S11に戻って再び第2のセンサ41bの出力信号を取得する。なお、プロセッサ74bは、S11に戻る前に、第1のセンサ41aが検出したペダルストローク又は第2のセンサ41bが検出したペダルストロークに基づき、ホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧を制御しても良い。
【0079】
一方、第1のセンサ41aが検出したペダルストロークと第2のセンサ41bが検出したペダルストロークとの差分の絶対値が閾値を上回る場合(S13:Yes)、プロセッサ74bは、異常時のために予め定められた動作を行う(S14)。すなわち、プロセッサ74bは、第1のセンサ41aが検出したペダルストロークと第2のセンサ41bが検出したペダルストロークとの差分が所定の範囲を外れた場合、第1のセンサ41a及び第2のセンサ41bのうち少なくとも一方が異常であると判定する。
【0080】
例えば、プロセッサ74bは、第1のセンサ41a及び第2のセンサ41bのいずれが故障しているかを判定するためのさらなる制御を行ったり、警告灯を点灯したり、アンテナを通じてサーバに情報を送ったりすることで、第1のセンサ41a又は第2のセンサ41bの故障の疑いに対応する。なお、プロセッサ74bが行う動作は、この例に限られない。
【0081】
なお、上流ECU38のプロセッサ38bも、同様に、下流ECU74のプロセッサ74b又はメモリから第2のセンサ41bが検出したペダルストロークを取得する。上流ECU38のプロセッサ38bは、第1のセンサ41aが検出したペダルストロークと第2のセンサ41bが検出したペダルストロークとの差分が所定の範囲を外れた場合、第1のセンサ41a及び第2のセンサ41bのうち少なくとも一方が異常であると判定する。
【0082】
下流ECU74のプロセッサ74bは、S12において第1のセンサ41aの検出値を取得できなかった場合(S12:No)、下流ユニット22を制御して、ホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧を調整し、車両1の制動力を制御する(S15)。
【0083】
例えば、上流ECU38は、上流ユニット21の故障により、第1のセンサ41aが検出したペダルストロークを下流ECU74のプロセッサ74bに通信バス25を通じて送ることができないことがある。上流ユニット21が故障した場合、上流ECU38のプロセッサ38bは、ペダルストロークに応じてホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧を調整することができない。この場合、本実施形態のブレーキ制御装置14では、下流ユニット22が上流ユニット21を代替する。
【0084】
上流ユニット21が故障したとしても、第2のセンサ41bは、第2の配線91bを通じて下流ユニット22から電力を供給される。さらに、第2のセンサ41bは、故障している上流ユニット21のプロセッサ38bを経由することなく、冗長配線26を通じて直接的に下流ユニット22のプロセッサ74bに出力信号を出力する。このため、プロセッサ74bは、第2のセンサ41bが検出したペダルストロークを取得することができる。
【0085】
プロセッサ74bは、例えば、差圧制御弁81を閉じるとともに、ペダルストロークに応じてモータ64を制御することで、ホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧を調整する。なお、プロセッサ74bは、他の方法により、下流ユニット22でホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧を調整しても良い。
【0086】
次に、下流ECU74のプロセッサ74bは、冗長配線26を介して、第2のセンサ41bの出力信号を取得する(S16)。さらに、プロセッサ74bは、ペダルストロークが閾値を下回るか否かを判定する(S17)。
【0087】
プロセッサ74bは、運転者がブレーキ操作を続けておりペダルストロークが閾値以上である場合(S17:No)、S16に戻って第2のセンサ41bの出力信号の取得を続ける。すなわち、運転者がブレーキ操作を続けている間、プロセッサ74bは、下流ユニット22を制御して、ホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧を調整し続ける。
【0088】
一方、プロセッサ74bは、運転者がブレーキ操作を止めてペダルストロークが閾値を下回った場合(S17:Yes)、下流ユニット22をマニュアル制動する状態に切り替える(S18)。
【0089】
例えば、プロセッサ74bは、モータ73、差圧制御弁81、保持弁82、及び減圧弁83への通電を止める。これにより、差圧制御弁81及び保持弁82が開き、減圧弁83が閉じる。
【0090】
また、上流ユニット21が故障している場合、電動シリンダ33、マスタカット弁34、系統遮断弁35、及びシミュレータカット弁36への通電は止まっている。このため、マスタカット弁34は開き、系統遮断弁35及びシミュレータカット弁36は閉じる。
【0091】
運転者がブレーキペダル13を操作すると、マスタピストン52は、第1の液路23を介してブレーキ液をホイールシリンダ11L,11Rに送る。これにより、運転者は、手動でホイールシリンダ11L,11Rの液圧を調整し、車両1の制動力を制御することができる。
【0092】
以上のように、本実施形態のブレーキ制御装置14は、運転者のブレーキ操作が止まるまで一時的に、下流ユニット22によってペダルストロークに基づくホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧の調整を行う。これにより、ブレーキ制御装置14は、上流ユニット21が故障したときの急激な操作性の変動を抑制することができる。なお、ブレーキ制御装置14は、運転者のブレーキ操作が止まった後も、下流ユニット22による液圧の調整を続けても良い。
【0093】
以上説明された実施形態に係るブレーキシステム10において、上流ユニット21は、プロセッサ38bと、第1のセンサ41aと、第2のセンサ41bとを有し、ホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧を調整するよう構成される。第1のセンサ41aは、プロセッサ38bに電気的に接続されるとともに、ブレーキペダル13の操作量に応じて変動するペダルストロークを検出するよう構成される。第2のセンサ41bは、同様に、ペダルストロークを検出するよう構成される。下流ユニット22は、プロセッサ74bを有し、ホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧を調整するよう構成される。通信バス25は、上流ユニット21と下流ユニット22との間で電気信号を伝達する。冗長配線26は、第2のセンサ41bの出力信号を直接的にプロセッサ74bに伝達する。すなわち、プロセッサ38bは、第1のセンサ41aが検出したペダルストロークを、当該第1のセンサ41aから取得することができる。一方、プロセッサ74bは、第2のセンサ41bが検出したペダルストロークを、プロセッサ38bや通信バス25を経由することなく、第2のセンサ41bから取得することができる。これにより、例えばプロセッサ38bや通信バス25が故障したとしても、プロセッサ74bは、第2のセンサ41bが検出したペダルストロークを当該第2のセンサ41bから取得することができ、ブレーキペダル13の操作量に応じてホイールシリンダ11L,11R,12L,12Rの液圧を調整することができる。従って、ブレーキシステム10は、より信頼性高く冗長化され得る。
【0094】
上流ユニット21は、第2のセンサ41bに電気的に接続されるコネクタ39を有する。下流ユニット22は、プロセッサ74bに電気的に接続されるコネクタ76を有する。冗長配線26は、コネクタ39に接続されるプラグ91dと、コネクタ76に接続されるプラグ91eと、を有する。これにより、例えば単一の導線が直接的に第2のセンサ41bの端子とプロセッサ74bの端子とに接続される場合に比べ、ブレーキシステム10は、容易に組み立てられることができる。
【0095】
冗長配線26は、第1の配線91aと、第2の配線91bと、第3の配線91cとを有する。第1の配線91aは、第2のセンサ41bの出力信号を伝送する。第2の配線91bは、第2のセンサ41bに電力を供給する。第3の配線91cは、グランド電位に設定される。これにより、プロセッサ38bや通信バス25が故障したとしても、第2のセンサ41bは、電力を供給され、第1の配線91aを通じてプロセッサ74bに出力信号を伝送することができる。従って、ブレーキシステム10は、より信頼性高く冗長化され得る。
【0096】
プロセッサ38b,74bのうち少なくとも一方は、第1のセンサ41aが検出したペダルストロークと第2のセンサ41bが検出したペダルストロークとの差分が所定の範囲を外れた場合、第1のセンサ41a及び第2のセンサ41bのうち少なくとも一方が異常であると判定する。これにより、ブレーキシステム10は、第1のセンサ41a及び第2のセンサ41bの故障を速やかに検知することができ、信頼性を向上させることができる。また、第2のセンサ41bは、プロセッサ38bが正常に動作する間も有効に使用されることができる。
【0097】
以上の実施形態において、第1のセンサ41a及び第2のセンサ41bは、ペダルストロークを検出するストロークセンサである。しかし、第1のセンサ及び第2のセンサは、ペダルストロークに応じて変動する他の物理量を検出しても良い。例えば、第1のセンサ及び第2のセンサは、ブレーキペダル13の回転角又はマスタ圧を検出しても良い。
【0098】
以上説明された少なくとも一つの実施形態に係るブレーキシステムは、一例として、第1の制御装置と、前記第1の制御装置に電気的に接続されるとともに操作部材の操作量に応じて変動する物理量を検出するよう構成された第1のセンサと、前記物理量を検出するよう構成された第2のセンサと、を有し、ホイールシリンダの液圧を調整するよう構成された、第1のユニットと、第2の制御装置を有し、前記ホイールシリンダの液圧を調整するよう構成された、第2のユニットと、前記第1のユニットと前記第2のユニットとの間で電気信号を伝達する通信バスと、前記第2のセンサの出力信号を直接的に前記第2の制御装置に伝達する配線と、を備える。よって、一例としては、第1の制御装置は、第1のセンサが検出した物理量を、当該第1のセンサから取得することができる。一方、第2の制御装置は、第2のセンサが検出した物理量を、第1の制御装置や通信バスを経由することなく、第2のセンサから取得することができる。これにより、例えば第1の制御装置や通信バスが故障したとしても、第2の制御装置は、第2のセンサが検出した物理量を当該第2のセンサから取得することができ、操作部材の操作量に応じてホイールシリンダの液圧を調整することができる。従って、ブレーキシステムは、より信頼性高く冗長化され得る。
【0099】
上記ブレーキシステムでは、一例として、前記第1のユニットは、前記第2のセンサに電気的に接続される第1のコネクタを有し、前記第2のユニットは、前記第2の制御装置に電気的に接続される第2のコネクタを有し、前記配線は、前記第1のコネクタに接続される第1の端子と、前記第2のコネクタに接続される第2の端子と、を有する。よって、一例としては、例えば単一の導線が直接的に第2のセンサの端子と第2の制御装置の端子とに接続される場合に比べ、ブレーキシステムは、容易に組み立てられることができる。
【0100】
上記ブレーキシステムでは、一例として、前記配線は、前記第2のセンサの出力信号を伝達する第1の配線と、前記第2のセンサに電力を供給する第2の配線と、グランド電位に設定される第3の配線と、を有する。よって、一例としては、第1の制御装置や通信バスが故障したとしても、第2のセンサは、電力を供給され、第1の配線を通じて第2の制御装置に出力信号を伝送することができる。従って、ブレーキシステムは、より信頼性高く冗長化され得る。
【0101】
上記ブレーキシステムでは、一例として、前記第1の制御装置及び前記第2の制御装置のうち少なくとも一方は、前記第1のセンサが検出した前記物理量と前記第2のセンサが検出した前記物理量との差分が所定の範囲を外れた場合、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサのうち少なくとも一方が異常であると判定するよう構成される。よって、一例としては、ブレーキシステムは、第1のセンサ及び第2のセンサの故障を速やかに検知することができ、信頼性を向上させることができる。また、第2のセンサは、第1の制御装置が正常に動作する間も有効に使用されることができる。
【0102】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各実施形態や各変形例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0103】
10…ブレーキシステム、11L,11R,12L,12R…ホイールシリンダ、13…ブレーキペダル(操作部材)、21…上流ユニット(第1のユニット)、22…下流ユニット(第2のユニット)、25…通信バス、26…冗長配線(配線)、38b…プロセッサ(第1の制御装置)、39…コネクタ(第1のコネクタ)、41a…第1のセンサ、41b…第2のセンサ、74b…プロセッサ(第2の制御装置)、76…コネクタ(第2のコネクタ)、91a…第1の配線、91b…第2の配線、91c…第3の配線、91d…プラグ(第1の端子)、91e…プラグ(第2の端子)。
図1
図2