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特開2024-157773二次電池の劣化診断システム、電池パック、および無人飛行体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157773
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】二次電池の劣化診断システム、電池パック、および無人飛行体
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20241031BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20241031BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241031BHJP
   G01R 31/374 20190101ALI20241031BHJP
   G01R 31/378 20190101ALI20241031BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20241031BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20241031BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20241031BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01R31/392
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
G01R31/374
G01R31/378
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/389
H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072329
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山方 政典
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA23
2G216BA51
2G216CB35
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB02
5G503CA11
5G503CB11
5G503EA05
5G503EA08
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA01
5H030AS03
5H030FF22
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】様々な運用下においてリチウムイオン二次電池の劣化状態を診断することができる劣化診断システム、電池パック、および無人飛行体を提供する。
【解決手段】満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュールの最高温度が、二次電池モジュールを搭載する無人飛行体(負荷)から、管制装置の送受信部に受信される。管制装置の制御部は、受信した情報をストレージに記憶し、記憶した最高温度を抽出する。そして、抽出した最高温度が、二次電池モジュールの劣化状態を弁別する最高温度についての所定の閾値を超えるかを判定する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリチウムイオン二次電池が積層されて構成される二次電池モジュールの劣化を診断する二次電池の劣化診断システムであって、
前記二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、前記二次電池モジュールの最高温度、放電開始から所定期間での前記二次電池モジュールの電圧変動量、および、放電開始時と放電終了時との前記二次電池モジュールの温度差のうちの少なくとも1つを、前記二次電池モジュールを搭載する負荷から受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された前記最高温度、前記電圧変動量、および、前記温度差のうちの少なくとも1つを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記最高温度、前記電圧変動量、および、前記温度差のうちの少なくとも1つを抽出するデータ抽出手段と、
前記データ抽出手段により抽出された前記最高温度、前記電圧変動量、および、前記温度差のうちの少なくとも1つが、前記二次電池モジュールの劣化状態を弁別する、前記最高温度、前記電圧変動量、または、前記温度差についての所定の閾値を超えるかを判定する判定手段と
を備えることを特徴とする二次電池の劣化診断システム。
【請求項2】
前記受信手段は、前記二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときにおける、前記二次電池モジュールの放電開始時の充電率および温度を含む放電履歴情報を、前記二次電池モジュールを搭載している負荷から受信し、
前記記憶手段は、前記受信手段により受信された前記充電率および温度を含む前記放電履歴情報を記憶し、
前記データ抽出手段は、前記記憶手段に記憶されている前記放電履歴情報のうち、前記充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる前記放電履歴情報を抽出し、
前記判定手段は、前記データ抽出手段により抽出された前記放電履歴情報に含まれる、前記最高温度、前記電圧変動量、および、前記温度差のうちの少なくとも1つが、前記二次電池モジュールの劣化状態を弁別する、前記最高温度、前記電圧変動量、または、前記温度差についての前記所定の閾値を超えるかを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の劣化診断システム。
【請求項3】
前記データ抽出手段は、前記記憶手段に記憶されている前記放電履歴情報のうち、前記二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの前記放電履歴情報であって、前記充電率および温度が前記有効範囲に含まれる前記放電履歴情報を抽出することを特徴とする請求項2に記載の二次電池の劣化診断システム。
【請求項4】
前記判定手段は、前記データ抽出手段により抽出された、前記所定期間での電圧の降下する前記電圧変動量が、電圧の降下する前記電圧変動量についての前記所定の閾値を超え、且つ、第2閾値未満である場合であって、前記所定期間に続く第2の所定期間で、電圧の上昇する前記電圧変動量が第3閾値を超える場合に、前記二次電池モジュールは劣化状態にないと判定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の二次電池の劣化診断システム。
【請求項5】
前記判定手段は、連続する所定回数にわたる放電における各前記温度差が前記温度差についての前記所定の閾値を超える場合に、前記二次電池モジュールは劣化状態にあると判定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の二次電池の劣化診断システム。
【請求項6】
複数のリチウムイオン二次電池が積層されて構成される二次電池モジュールを備える電池パックであって、
前記二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの前記二次電池モジュールの電圧を検出する電圧検出手段と、
前記二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの前記二次電池モジュールの温度を検出する温度検出手段と、
前記電圧検出手段により検出された電圧値および前記温度検出手段により検出された温度を含む放電履歴情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記放電履歴情報を抽出するデータ抽出手段と、
前記データ抽出手段によって抽出された前記放電履歴情報に含まれる前記電圧値についての、前記二次電池モジュールの放電開始から所定期間での電圧変動量、および、前記データ抽出手段によって抽出された前記放電履歴情報に含まれる前記温度についての、前記二次電池モジュールの放電開始時と放電終了時との温度差の少なくとも一方を算出する算出手段と、
前記データ抽出手段によって抽出された前記放電履歴情報に含まれる前記温度のうちの最高温度、並びに、前記算出手段により算出された前記電圧変動量および前記温度差のうちの少なくとも1つが、前記二次電池モジュールの劣化状態を弁別する、前記最高温度、前記電圧変動量、または、前記温度差についての所定の閾値を超えるかを判定する判定手段と
を備えることを特徴とする電池パック。
【請求項7】
前記二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときにおける前記二次電池モジュールの放電開始時の充電率を推定する推定手段をさらに備え、
前記記憶手段は、前記推定手段により推定された放電開始時の前記充電率を前記放電履歴情報に含めて記憶し、
前記データ抽出手段は、前記記憶手段に記憶されている前記放電履歴情報のうち、前記二次電池モジュールの放電開始時の前記充電率および前記温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる前記放電履歴情報を抽出し、
前記判定手段は、前記データ抽出手段によって抽出された前記放電履歴情報に含まれる前記温度のうちの最高温度、並びに、前記算出手段により算出された前記電圧変動量および前記温度差のうちの少なくとも1つが、前記二次電池モジュールの劣化状態を弁別する、前記最高温度、前記電圧変動量、または、前記温度差についての前記所定の閾値を超えるかを判定する
ことを特徴とする請求項6に記載の電池パック。
【請求項8】
前記データ抽出手段は、前記記憶手段に記憶されている前記放電履歴情報のうち、前記二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの前記放電履歴情報であって、前記充電率および前記温度が前記有効範囲に含まれる前記放電履歴情報を抽出することを特徴とする請求項7に記載の電池パック。
【請求項9】
前記判定手段は、前記算出手段により算出された、前記所定期間での電圧の降下する前記電圧変動量が、電圧の降下する前記電圧変動量についての前記所定の閾値を超え、且つ、前記第2閾値未満である場合であって、前記所定期間に続く第2の所定期間で、電圧の上昇する前記電圧変動量が第3閾値を超える場合に、前記二次電池モジュールは劣化状態にないと判定することを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項10】
前記判定手段は、連続する所定回数にわたる放電における各前記温度差が前記温度差についての前記所定の閾値を超える場合に、前記二次電池モジュールは劣化状態にあると判定することを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項11】
請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の電池パックを搭載した無人飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の劣化状態を診断することができる劣化診断システム、電池パック、および無人飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池(LIB:Lithium Ion Battery)は、ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池といった他の二次電池と比較して、エネルギー密度が高く、小型且つ軽量であることで知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、リチウムイオン電池の劣化要因として、高い充電状態で保存することで劣化が進む保存劣化と、使用頻度に応じて劣化が進むサイクル劣化とが存在すること、および、無停電電源装置は停電等のトラブルが発生しなければ使用されないため、無停電電源装置の二次電池として使用されるリチウムイオン電池では保存劣化が主な劣化要因となること、が記載されている(同文献の段落0017参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7149836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1は、無停電電源装置において採用されるリチウムイオン二次電池の保存劣化に対処する技術を開示するものである。無停電電源装置に搭載されるリチウムイオン二次電池以外に、電気自動車等の車両に搭載されるリチウムイオン二次電池においては、満充電状態または満充電状態に近い部分充電状態にまで充電された後に、異なる放置期間にわたって保存されることが繰り返される。
【0006】
さらに、ドローン等の無人飛行体に搭載されるリチウムイオン二次電池においては、例えば農薬散布が行われる特定の季節において、満充電状態または満充電状態に近い部分充電状態にまで充電された後に、例えば3~7日といった比較的短い放置期間にわたって保存されることが繰り返される場合がある。また、当該特定の季節の終了後には、満充電状態または満充電状態に近い部分充電状態にまで充電された後に、例えば3~6か月といった比較的長い放置期間にわたり保存される場合もある。
【0007】
このため、無停電電源装置に限定されず、電気自動車等の車両やドローン等の無人飛行体に搭載された場合に想定される、リチウムイオン二次電池の運用にも対処することができ、保存劣化が支配的な電池パックやサイクル劣化が支配的な電池パックについても対処することができる、リチウムイオン二次電池の劣化診断が望まれる。
【0008】
以上の点に鑑みて、本発明の目的は、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池の劣化状態を診断することができる劣化診断システム、電池パック、および無人飛行体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明は、
複数のリチウムイオン二次電池が積層されて構成される二次電池モジュールの劣化を診断する二次電池の劣化診断システムであって、
二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュールの最高温度、放電開始から所定期間での二次電池モジュールの電圧変動量、および、放電開始時と放電終了時との二次電池モジュールの温度差のうちの少なくとも1つを、二次電池モジュールを搭載する負荷から受信する受信手段と、
受信手段により受信された最高温度、電圧変動量、および、温度差のうちの少なくとも1つを記憶する記憶手段と、
記憶手段に記憶されている最高温度、電圧変動量、および、温度差のうちの少なくとも1つを抽出するデータ抽出手段と、
データ抽出手段により抽出された最高温度、電圧変動量、および、温度差のうちの少なくとも1つが、二次電池モジュールの劣化状態を弁別する、最高温度、電圧変動量、または、温度差についての所定の閾値を超えるかを判定する判定手段と
を備える劣化診断システムを構成した。
【0010】
本構成によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュールの最高温度、放電開始から所定期間での二次電池モジュールの電圧変動量、および、放電開始時と放電終了時との二次電池モジュールの温度差のうちの少なくとも1つが、二次電池モジュールを搭載する負荷から、劣化診断システムの受信手段に受信される。劣化診断システムは、受信した情報を記憶手段に記憶し、記憶した最高温度、電圧変動量、および、温度差のうちの少なくとも1つをデータ抽出手段によって抽出する。そして、抽出した最高温度、電圧変動量、および、温度差のうちの少なくとも1つが、二次電池モジュールの劣化状態を弁別する、最高温度、電圧変動量、または、温度差についての所定の閾値を超えるかを、判定手段によって判定する。
【0011】
満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュールの最高温度、放電開始から所定期間での二次電池モジュールの電圧変動量、および、放電開始時と放電終了時との二次電池モジュールの温度差は、二次電池モジュールの直流内部抵抗と相関があることが、今回、本発明者によって見い出された。二次電池モジュールの直流内部抵抗は、保存劣化が支配的な二次電池モジュールだけでなく、サイクル劣化が支配的な二次電池モジュールにも共通する、劣化診断の評価指標となる。
【0012】
したがって、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュールの最高温度、電圧変動量、および、温度差も、劣化診断の評価指標となる。このため、これらのうちの少なくとも1つが、二次電池モジュールの劣化状態を弁別するそれらについての所定の閾値を超えると、判定手段によって判定されると、劣化診断の判定対象となる二次電池モジュールは、劣化診断システムにより劣化状態にあるものと診断される。よって、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュールの劣化状態を診断することができる劣化診断システムを提供することができるようになる。
【0013】
また、本発明は、
受信手段が、二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときにおける、二次電池モジュールの放電開始時の充電率および温度を含む放電履歴情報を、二次電池モジュールを搭載している負荷から受信し、
記憶手段が、受信手段により受信された充電率および温度を含む放電履歴情報を記憶し、
データ抽出手段が、記憶手段に記憶されている放電履歴情報のうち、充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる放電履歴情報を抽出し、
判定手段が、データ抽出手段に抽出された放電履歴情報に含まれる、最高温度、電圧変動量、および、温度差のうちの少なくとも1つが、二次電池モジュールの劣化状態を弁別する、最高温度、電圧変動量、または、温度差についての所定の閾値を超えるかを判定する
ことを特徴とする。
【0014】
本構成によれば、二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときにおける、二次電池モジュールの放電開始時の充電率および温度を含む放電履歴情報が、二次電池モジュールを搭載している負荷から、受信手段によって受信され、記憶手段に記憶される。そして、記憶手段に記憶されている放電履歴情報のうち、充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる放電履歴情報が、データ抽出手段によって抽出される。さらに、抽出された放電履歴情報に含まれる最高温度、電圧変動量、および、温度差のうちの少なくとも1つが、二次電池モジュールの劣化状態を弁別するそれらついての所定の閾値を超えるかが、判定手段によって判定される。したがって、有効範囲を画定する所定の充電率範囲および所定の温度範囲を適切に選定し、劣化診断の対象にする二次電池モジュールの範囲を限定することで、二次電池モジュールの劣化診断が確度高く行えるようになる。
【0015】
また、本発明は、データ抽出手段が、記憶手段に記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報であって、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報を抽出することを特徴とする。
【0016】
二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に行われる放電は、複数回にわたって行われる場合がある。本構成によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報であって、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報がデータ抽出手段によって抽出され、抽出された放電履歴情報に含まれる最高温度、電圧変動量、および、温度差のうちの少なくとも1つが、二次電池モジュールの劣化状態を弁別するそれらついての所定の閾値を超えるかが、判定手段によって判定されて、劣化診断が行われる。満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報に含まれる最高温度、電圧変動量、および、温度差は、それ以降に放電したときの放電履歴情報に含まれるものと比べ、安定した値が得られる。このため、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュールの劣化診断をより確度高く行える二次電池の劣化診断システムを提供することができるようになる。
【0017】
また、本発明は、
判定手段が、データ抽出手段により抽出された、所定期間での電圧の降下する電圧変動量が、電圧の降下する電圧変動量についての所定の閾値を超え、且つ、第2閾値未満である場合であって、所定期間に続く第2の所定期間で、電圧の上昇する電圧変動量が第3閾値を超える場合に、二次電池モジュールは劣化状態にないと判定することを特徴とする。
【0018】
本構成によれば、電圧の降下する電圧変動量が、所定期間で、所定の閾値を超え、且つ、第2閾値未満である場合であって、所定期間に続く第2の所定期間で、電圧の上昇する電圧変動量が第3閾値を超える場合には、判定手段により、二次電池モジュールは劣化状態にないと判定される。
【0019】
また、本発明は、判定手段が、連続する所定回数にわたる放電における各温度差が温度差についての所定の閾値を超える場合に、二次電池モジュールは劣化状態にあると判定することを特徴とする。
【0020】
本構成によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、放電開始時と放電終了時との二次電池モジュールの温度差が、連続する所定回数にわたって、温度差についての所定の閾値を超える場合に、判定手段により、二次電池モジュールは劣化状態にあると判定される。このため、電池パックの劣化診断をより確度高く行えるようになる。
【0021】
また、本発明は、
複数のリチウムイオン二次電池が積層されて構成される二次電池モジュールを備える電池パックであって、
二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの二次電池モジュールの電圧を検出する電圧検出手段と、
二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの二次電池モジュールの温度を検出する温度検出手段と、
電圧検出手段により検出された電圧値および温度検出手段により検出された温度を含む放電履歴情報を記憶する記憶手段と、
記憶手段に記憶されている放電履歴情報を抽出するデータ抽出手段と、
データ抽出手段によって抽出された放電履歴情報に含まれる電圧値についての、二次電池モジュールの放電開始から所定期間での電圧変動量、および、データ抽出手段によって抽出された放電履歴情報に含まれる温度についての、二次電池モジュールの放電開始時と放電終了時との温度差の少なくとも一方を算出する算出手段と、
データ抽出手段によって抽出された放電履歴情報に含まれる温度のうちの最高温度、並びに、算出手段により算出された電圧変動量および温度差のうちの少なくとも1つが、二次電池モジュールの劣化状態を弁別する、最高温度、電圧変動量、または、温度差についての所定の閾値を超えるかを判定する判定手段と
を備える電池パックを構成した。
【0022】
本構成によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュールの電圧および温度が電池パック内の電圧検出手段および温度検出手段によって検出され、電池パック内の記憶手段に放電履歴情報として記憶される。記憶手段に記憶された放電履歴情報は電池パック内のデータ抽出手段によって抽出され、抽出された放電履歴情報から、二次電池モジュールの放電開始から所定期間での電圧変動量、および、放電開始時と放電終了時との温度差の少なくとも一方が、電池パック内の算出手段によって算出される。電池パックは、データ抽出手段によって抽出された温度のうちの最高温度、並びに、算出手段により算出された電圧変動量および温度差のうちの少なくとも1つが、二次電池モジュールの劣化状態を弁別する、最高温度、電圧変動量、または、温度差についての所定の閾値を超えるかを、判定手段によって判定する。
【0023】
上記のように、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュールの最高温度、電圧変動量、および、温度差も、二次電池モジュールの劣化診断の評価指標となる。このため、本構成により、これらのうちの少なくとも1つが、二次電池モジュールの劣化状態を弁別するそれらについての所定の閾値を超えると、電池パック内の判定手段によって判定されると、劣化診断の判定対象となる二次電池モジュールは、電池パックにより劣化状態にあるものと診断される。よって、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュールの劣化状態を診断することができる電池パックを提供することができるようになる。
【0024】
また、本発明は、上記の電池パックにおいて、
二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときにおける二次電池モジュールの放電開始時の充電率を推定する推定手段をさらに備え、
記憶手段が、推定手段により推定された放電開始時の充電率を放電履歴情報に含めて記憶し、
データ抽出手段が、記憶手段に記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュールの放電開始時の充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる放電履歴情報を抽出し、
判定手段が、データ抽出手段により抽出された放電履歴情報に含まれる温度のうちの最高温度、並びに、算出手段により算出された電圧変動量および温度差のうちの少なくとも1つが、二次電池モジュールの劣化状態を弁別する、最高温度、電圧変動量、または、温度差についての所定の閾値を超えるかを判定する
ことを特徴とする。
【0025】
本構成によれば、二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときにおける、二次電池モジュールの放電開始時の充電率が、電池パック内の推定手段によって推定され、放電履歴情報に含めて電池パック内の記憶手段に記憶される。そして、記憶手段に記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュールの放電開始時の充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる放電履歴情報が、電池パック内のデータ抽出手段によって抽出される。さらに、抽出された放電履歴情報に含まれる最高温度、並びに、算出手段により算出された電圧変動量および温度差のうちの少なくとも1つが、二次電池モジュールの劣化状態を弁別するそれらついての所定の閾値を超えるかが、電池パック内の判定手段によって判定される。したがって、有効範囲を画定する所定の充電率範囲および所定の温度範囲を適切に選定し、劣化診断の対象にする二次電池モジュールの範囲を限定することで、様々な運用下において二次電池モジュールの劣化診断が確度高く行える電池パックを提供することができるようになる。
【0026】
また、本発明は、上記の電池パックにおいて、データ抽出手段が、記憶手段に記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報であって、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報を抽出することを特徴とする。
【0027】
本構成によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報であって、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報がデータ抽出手段によって抽出される。最初に放電したときの放電履歴情報から得られる最高温度、電圧変動量、および、温度差は、上記のように、それ以降に放電したときの放電履歴情報から得られるものと比べ、安定した値が得られる。このため、様々な運用下においてより確度の高い二次電池モジュールの劣化診断を行える電池パックを提供することができるようになる。
【0028】
また、本発明は、上記の電池パックにおいて、
判定手段が、算出手段により算出された、所定期間での電圧の降下する電圧変動量が、電圧の降下する電圧変動量についての所定の閾値を超え、且つ、第2閾値未満である場合であって、所定期間に続く第2の所定期間で、電圧の上昇する電圧変動量が第3閾値を超える場合に、二次電池モジュールは劣化状態にないと判定することを特徴とする
【0029】
本構成によれば、電圧の降下する電圧変動量が、所定期間で、所定の閾値を超え、且つ、第2閾値未満である場合であって、所定期間に続く第2の所定期間で、電圧の上昇する電圧変動量が第3閾値を超える場合には、電池パック内の判定手段により、二次電池モジュールは劣化状態にないと判定される。
【0030】
また、本発明は、上記の電池パックにおいて、判定手段が、連続する所定回数にわたる放電における各温度差が温度差についての所定の閾値を超える場合に、二次電池モジュールは劣化状態にあると判定することを特徴とする。
【0031】
本構成によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、放電開始時と放電終了時との二次電池モジュールの温度差が、連続する所定回数にわたって、温度差についての所定の閾値を超える場合に、電池パック内の判定手段により、二次電池モジュールは劣化状態にあると判定される。このため、電池パックの劣化診断をより確度高く行えるようになる。
【0032】
また、本発明は、上記に記載の電池パックを搭載した無人飛行体を構成した。
【0033】
本構成によれば、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュールの劣化状態を診断することができる無人飛行体を提供できるようになる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュールの劣化状態を診断することができる劣化診断システム、電池パック、および無人飛行体を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の各実施の形態に係る二次電池の劣化診断システムを構成する無人飛行体の管制運航システムを例示するブロック構成図である。
図2図1に示す管制運航システムを構成する管制装置を例示するブロック構成図である。
図3図1に示す管制運航システムを構成する無人飛行体を例示するブロック構成図である。
図4図3に示す無人飛行体に搭載される電池パックを例示するブロック構成図である。
図5】(a)は、図4に示す複数の電池パック内における各二次電池モジュールの直流抵抗値と充放電サイクル数との関係を示すグラフ、(b)は、無人飛行体の飛行開始時における各二次電池モジュールの充電率と温度との関係、および、それらの有効範囲を示すグラフである。
図6】(a)は、図5(a)に示す複数の電池パックのうちのある電池パック内における二次電池モジュールの直流抵抗値と充放電サイクル数との関係を示すグラフ、(b)は、図5(b)に示す有効範囲に充電率と温度が含まれる二次電池モジュールの直流抵抗値を補正するための温度補正曲線を示すグラフである。
図7図6(a)に示される直流抵抗値の充放電サイクル特性のうちで、充電率と温度が有効範囲に含まれる電池パックの特性が、図6(b)に示される温度補正曲線によって補正された特性を示すグラフである。
図8図5(a)に示す複数の電池パック内における各二次電池モジュールの最高セル温度とセル積層体の膨れ量との関係を示すグラフである。
図9図5(a)に示す複数の電池パック内における各二次電池モジュールの電圧と放電時間との関係を示すグラフである。
図10】(a)は、図5(a)に示す複数の電池パックのうちのある電池パック内における二次電池モジュールのセル温度と充放電サイクル数との関係を示すグラフ、(b)は、それらのうちの他のある電池パック内における二次電池モジュールのセル温度と充放電サイクル数との関係を示すグラフである。
図11】本発明の第1実施の形態に係る二次電池の劣化診断システムの動作を例示するフローチャートである。
図12】本発明の第2実施の形態に係る二次電池の劣化診断システムの動作を例示するフローチャートである。
図13】本発明の第3実施の形態に係る二次電池の劣化診断システムの動作を例示するフローチャートである。
図14】本発明の第4実施の形態に係る二次電池の劣化診断システムの動作を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態に係る二次電池の劣化診断システム、電池パック、および無人飛行体を詳細に説明する。
【0037】
[第1実施の形態]
図1は、本発明の第1実施の形態および後述する各実施の形態に係る二次電池の劣化診断システムを構成する無人飛行体の管制運航システム1を例示するブロック図である。
【0038】
この管制運航システム1は、管制装置2、無人飛行体3a,3b,…,3gおよびネットワーク4から構成される。
【0039】
管制装置2は、ネットワーク4を介して複数の無人飛行体3a,3b,…,3gの運航を監視する。無人飛行体3a,3b,…,3gは、例えばドローンであり、自律飛行したり、管制装置2によって飛行が遠隔制御される。ネットワーク4は、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線,無線,WiFi(登録商標)によるポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、またはクラウド通信ネットワーク等である。
【0040】
無人飛行体3a,3b,…,3gからネットワーク4を介して管制装置2に送信される情報には、例えば、無人飛行体3a,3b,…,3gの飛行位置(緯度、経度、高度等)、飛行経路、飛行速度、飛行時間、加速度、傾き、その他、無人飛行体3a,3b,…,3gの動作状況に関する情報や、無人飛行体3a,3b,…,3gに搭載される後述する電池パック22(図4参照)の使用履歴等が含まれる。これらの情報は、無人飛行体3a,3b,…,3gから管制装置2に自動送信されるか、または管制装置2からの要求に応じて送信される。
【0041】
図2は、本実施の形態に係る管制装置2を例示するブロック構成図である。
【0042】
管制装置2は、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとして実現されるか、またはクラウドコンピューティングによって論理的に実現される。管制装置2は、制御部10、メモリ11、ストレージ12、送受信部13および入出力部14から構成されており、これらの要素は、バス15を通じて相互に電気的に接続される。
【0043】
制御部10は、管制装置2全体の動作を制御するものであり、例えばCPU(Central Processing Unit)であるプログラマブルプロセッサなどの1つ以上のプロセッサを有する。制御部10は、ストレージ12に格納されてメモリ11に展開された、各実施の形態に係る一連の動作を記述した後述するフローチャート(図11図14参照)に表されるコンピュータプログラムを実行する。本実施の形態では、制御部10は、(1)送受信部13を制御して、無人飛行体3a,3b,…,3gからネットワーク4に送信された各電池パック22の使用履歴データを受信し、(2)受信した各電池パック22の使用履歴データに関わるデータベースをストレージ12に構築し、(3)ストレージ12に構築された各電池パック22の使用履歴データに基づいて、電池パック22内の二次電池モジュール31の劣化診断を後述するように実行する。
【0044】
メモリ11は、制御部10のワークエリア等として機能し、管制装置2の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)プログラムや、各種設定情報等を格納する。メモリ11は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶と、フラッシュメモリやHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶とを含む。
【0045】
ストレージ12は、アプリケーションプログラム等の各種プログラムを格納するものであり、各処理に用いられるデータを格納したデータベースが構築される場合がある。本実施の形態では、ストレージ12は、無人飛行体3a,3b,…,3gのそれぞれからネットワーク4に送信された各電池パック22の使用履歴データに関わるデータベースを構築する。この使用履歴データは、例えば、無人飛行体3a,3b,…,3gの各電池パック22ごとに、充電情報、保存情報および放電履歴情報を一組にし、且つ時系列で構築される。
【0046】
充電情報は、例えば満充電状態または部分充電状態である所定の充電状態にまで電池パック22内の二次電池モジュール31を充電するのに要した時間情報(充電開始日時と充電終了日時)を含む。保存情報は、当該充電後に、電池パック22を保存(保管)するのに要した時間情報(保存開始日時と保存終了日時)を含む。放電履歴情報は、当該充電後における、電池パック22の各放電サイクル(回数)に応じた、放電開始時の二次電池モジュール31の充電率(SOC:State Of Charge)および温度、並びに、所定時間間隔での二次電池モジュール31の電圧値、電流値および温度を含む。なお、この放電履歴情報は、当該充電後であって最初の放電後に、充電を介することなく連続して実行された複数回の放電に係る放電データから構成される場合がある。
【0047】
送受信部13は、制御部10の指示に応じて管制装置2とネットワーク4との間の通信を確立するものであり、Bluetooth(登録商標)およびBLE(Bluetooth Low Energy)の近距離通信インタフェースを備える場合がある。本実施の形態では、送受信部13は、ネットワーク4を介して、無人飛行体3a,3b,…,3gのそれぞれから送信された電池パック22の使用履歴データを受信し、受信した使用履歴に関するデータを制御部10に送出する。
【0048】
入出力部14は、情報の入力や出力を行うものであり、例えばキーボード・マウス類等の情報入力機器、およびディスプレイ等の出力機器である。
【0049】
本実施の形態では、送受信部13は、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの放電履歴情報を、二次電池モジュール31を搭載している負荷である無人飛行体3a,3b,…,3gから受信する受信手段を構成する。
【0050】
また、送受信部13は、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュール31の最高温度、放電開始から所定期間での二次電池モジュール31の電圧変動量、および、放電開始時と放電終了時との二次電池モジュール31の温度差のうちの少なくとも1つを、二次電池モジュール31を搭載する無人飛行体3a,3b,…,3g等の負荷から受信する受信手段をも構成する。
【0051】
受信手段を構成する送受信部13は、これらの最高温度、電圧変動量、および、温度差のうちの少なくとも1つに加えて、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときにおける、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度を含む放電履歴情報を、二次電池モジュール31を搭載している負荷から受信することもある。
【0052】
また、ストレージ12は、受信手段により受信された放電履歴情報を記憶する記憶手段を構成する。記憶手段を構成するこのストレージ12は、受信手段により受信された最高温度、電圧変動量、および、温度差のうちの少なくとも1つを記憶することがあり、また、受信手段により受信された充電率および温度を含む放電履歴情報を記憶することがある。
【0053】
また、制御部10は、記憶手段に記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される後述する有効範囲(図5(b)参照)に含まれる放電履歴情報を抽出するデータ抽出手段を構成する。また、制御部10は、記憶手段に記憶されている最高温度、電圧変動量、および、温度差のうちの少なくとも1つを抽出するデータ抽出手段をも構成する。データ抽出手段は、ストレージ12に記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報であって、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報を抽出することがある。
【0054】
また、制御部10は、データ抽出手段によって抽出された放電履歴情報に含まれる、放電開始から所定期間の電圧値と電流値とから二次電池モジュール31の直流抵抗値を算出する算出手段を構成する。また、制御部10は、算出手段により算出された直流抵抗値を、有効範囲を代表する温度での直流抵抗値に換算する換算手段を構成する。
【0055】
さらに、制御部10は、換算手段により換算された直流抵抗値が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超えるかを判定する判定手段を構成する。また、制御部10は、データ抽出手段により抽出された放電履歴情報に含まれる、最高温度、電圧変動量、および、温度差のうちの少なくとも1つが、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する、最高温度、電圧変動量、または、温度差についての所定の閾値を超えるかを判定する判定手段をも構成する。
【0056】
図3は、本実施の形態に係る無人飛行体3a,3b,…,3gを例示するブロック構成図である。
【0057】
無人飛行体3a,3b,…,3gは、フライトコントローラ21、電池パック22、送受信部23、カメラ/センサ類24、ジンバル25、ESC(Electronic Speed Controller)26、モータ27およびプロペラ28から構成される。フライトコントローラ21は、メモリ21aおよびセンサ類21bを含む。
【0058】
フライトコントローラ21は、送受信部23で送受信される送受信機(プロポ)29からの遠隔操作信号に基づいて、無人飛行体3a,3b,…,3g全体の動作を制御するものであり、例えば、CPUであるプログラマブルプロセッサなどの1つ以上のプロセッサを有する。本実施の形態では、フライトコントローラ21は、送受信部23を制御して、電池パック22から受けた使用履歴データをネットワーク4に送信する送受信制御を実行する。
【0059】
また、フライトコントローラ21は、無人飛行体3a,3b,…,3gの状態を制御する制御モジュールを含む。この制御モジュールは、例えば6自由度(並進運動x、yおよびz、並びに回転運動θx、θyおよびθz)を有する無人飛行体3a,3b,…,3gの空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために、ESC26を経由するモータ27のプロペラ28に対する駆動制御により、無人飛行体3a,3b,…,3gの推進機構を制御する。
【0060】
メモリ21aは、1つ以上のステップをCPUが行うためにフライトコントローラ21が実行可能なロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶する。後述する実施の形態では、メモリ21aは、電池パック22からの使用履歴データを記憶する場合がある。また、メモリ21aは、例えばSDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部記憶装置を含む。
【0061】
カメラ/センサ類24は、ジンバル25を介して無人飛行体3a,3b,…,3gに設置される。カメラ/センサ類24のカメラは、静止画または動画データを撮影し、センサは、例えば慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、GPSセンサ、近接センサ(例えば、ライダー)、またはビジョン/イメージセンサ(例えば、カメラ)として、それぞれ対象物に関する情報を検出する。撮影された画像データおよび検出された情報はメモリ21aに記憶される。
【0062】
送受信部23は、フライトコントローラ21の指示を受けてデータの送受信処理を行うものであり、有線通信または無線通信等の通信手段である。本実施の形態では、送受信部23は、電池パック22からの使用履歴データを受けて、フライトコントローラ21(メモリ21a)に送出するほか、電池パック22からの使用履歴データをネットワーク4に送信する。
【0063】
図4は、本実施の形態に係る電池パック22のブロック構成図である。
【0064】
電池パック22は、無人飛行体である負荷3a,3b,…,3gに電力を供給するものであり、二次電池モジュール31、電流センサ32、およびバッテリ・マネジメント・ユニット(BMU)33を有する。
【0065】
二次電池モジュール31は、ラミネートセルから構成される二次電池34が複数積層されて、直列に接続されて構成される。本実施形態では、二次電池34はリチウムイオン二次電池であり、電極積層体が電解液と共に例えばラミネートフィルムである外装体に収容されて構成される。電極積層体は、例えばアルミニウム箔等である正極集電体に、例えばLiFePO4等のオリビン型正極活物質からなる正極層が設けられた正極と、例えば銅箔等である負極集電体に、例えば黒鉛等の炭素材からなる負極層が設けられた負極とが、セパレータを介して積層されて、構成される。
【0066】
二次電池モジュール31は、電流センサ32と配線35を介して直列に接続されて負荷3a,3b,…,3gに電力を供給するか、または、充電器(図示せず)から充電される。電流センサ32は、二次電池モジュール31に流れる電流を測定するものであり、二次電池モジュール31の電流値を一定周期で計測し、計測した電流計測値のデータをBMU33内の制御部36に送出する。電流センサ32は、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときに二次電池モジュール31に流れる電流を検出する電流検出手段を構成する。
【0067】
BMU33は、制御部36、電圧検出回路37および温度センサ38を備える。
【0068】
制御部36は、BMU33全体の動作を制御するものであり、CPU36a、メモリ36bおよび通信部36cを含む。CPU36aは、メモリ36bに記憶されている本実施の形態に係る一連の動作を記述したプログラムに従う動作を実行する。本実施の形態では、CPU36aは、二次電池モジュール31を放電したときに、二次電池モジュール31を構成している二次電池34の充電率を例えば公知の電流積算法に従って推定する場合がある。この場合、CPU36aは、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、放電開始時の二次電池モジュール31の充電率を推定する推定手段を構成する。
【0069】
メモリ36bには、本実施の形態に係る一連の動作を記述したプログラム、およびそのプログラムを実行するのに必要なデータが予め記憶されている。後述する実施の形態では、メモリ36bは、管制装置2のストレージ12に記憶されているのと同じ電池パック22の使用履歴データを記憶する場合がある。
【0070】
通信部36cは、CPU36aからの指示に応じて、負荷3a,3b,…,3gに搭載されるECU(Electronic Control Unit)40と通信する。本実施の形態では、通信部36cは、電池パック22の使用履歴データを負荷3a,3b,…,3gの送受信部23に送出する。
【0071】
電圧検出回路37は、検出ラインを介して各二次電池34の両端にそれぞれ接続され、制御部36からの指示に応答して各二次電池34の端子間電圧を測定する。電圧検出回路37は、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュール31の電圧を検出する電圧検出手段を構成する。
【0072】
温度センサ38は、接触式あるいは非接触式で、各二次電池34の温度を測定する。本実施の形態では、温度センサ38は、二次電池モジュール31の中央に配置される二次電池34のセル温度を測定する。温度センサ38は、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュール31の温度を検出する温度検出手段を構成する。メモリ36bは、温度検出手段により検出された温度を記憶する記憶手段を構成する。
【0073】
図5(a)は、無人飛行体3a,3b,…,3gに使用された複数の電池パック22のそれぞれの放電履歴情報に基づいて算出された二次電池モジュール31の直流抵抗値と、二次電池モジュール31の充放電サイクル数との関係を示すグラフである。同グラフの横軸は充放電サイクル数(Cycle)、縦軸は直流抵抗値(DCR:Direct Current Resistance)[Ω]である。直流抵抗値は、二次電池モジュール31の直流内部抵抗値であり、各電池パック22のそれぞれを満充電状態にまで充電した後の放電時における放電履歴情報に基づいて、算出手段を構成する制御部10によって以下の式(1)から算出される。
(直流抵抗値)=(放電開始時の電圧-60秒後の電圧)÷(60秒間の平均電流)…(1)
【0074】
上記式(1)における(放電開始時の電圧)は二次電池モジュール31の放電開始時の端子間電圧であり、(60秒後の電圧)は二次電池モジュール31の放電開始から60秒後の端子間電圧、(60秒間の平均電流)は、放電開始から60秒間に二次電池モジュール31を流れる電流の平均値である。直流抵抗値は、上記の式(1)に示されるように、無人飛行体3a,3b,…,3gの飛行開始、言い換えれば電池パック22の放電開始から所定期間、例えば60秒間の二次電池モジュール31の電圧値と電流値から算出される。これら電圧値と電流値は、上記の電圧検出手段を構成する電圧検出回路37と電流検出手段を構成する電流センサ32によって検出される。
【0075】
同グラフにおける「×」印で示される電池パック22は、充放電サイクル数が10未満であり、満充電状態にまで充電した後に所定の期間(例えば30日)を超えて放置された保存期間を有さない。また、「△」印で示される電池パック22は、充放電サイクル数が43~258であり、満充電状態にまで充電した後に上記所定の期間を超えて放置された保存期間を有さない。「○」印で示される電池パック22は、充放電サイクル数が10以上40未満であり、満充電状態にまで充電した後に上記所定の期間を超えて放置された保存期間を有する。
【0076】
「×」印および「△」印で示される電池パック22は、換算手段により換算された直流抵抗値が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超えず、使用可能なものと、判定手段を構成する制御部10によって判定されたものである。「○」印で示される電池パック22は、換算手段により換算された直流抵抗値が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超え、使用不可能なものと、判定手段によって判定されたものである。
【0077】
「×」印で示される電池パック22のうち、AおよびBで示されるものは、満充電状態にまで二次電池モジュール31を充電した後に放電したときにおける、後述する二次電池モジュール31の膨れ量(図8参照)が、最も小さいものと最も大きいものである。また、「△」印で示される電池パック22のうち、CおよびDで示されるものは、後述する二次電池モジュール31の膨れ量が、最も小さいものと最も大きいものである。また、「○」印で示される電池パック22のうち、EおよびFで示されるものは、後述する二次電池モジュール31の膨れ量が、最も小さいものと最も大きいものである。
【0078】
CおよびDで示される電池パック22を含む「△」印で示される電池パック22の直流抵抗値は、充放電サイクル数の増加に応じて緩やかに増加している。これに対して、EおよびFで示される電池パック22を含む「○」印で示される電池パック22の直流抵抗値は、充放電サイクル数の増加に応じて急激に増加している。
【0079】
また、EおよびFで示される電池パック22は、充放電サイクル数が40サイクル未満であるが、直流抵抗値は0.15[Ω]を超えている。また、Dで示される電池パック22は、充放電サイル数が258サイクルであるが、直流抵抗値は0.15[Ω]未満である。C,D,EおよびFで示される電池パック22の間の直流抵抗値の大小関係(C<D<E<F)は、これら電池パック22間の、後述する図8に示す、二次電池モジュール31の最高セル温度の大小関係(C<D<F<E)とほぼ一致する。また、これら電池パック22間の、後述する図9に示す、二次電池モジュール31の放電開始時における電圧降下量の大小関係(C<D<E<F)と一致する。
【0080】
本実施の形態に係る劣化診断システムでは、図5(a)に示される直流抵抗値に着目した電池パック22の劣化診断の信頼性を高めるため、診断対象とすべき電池パック22を限定する。この診断対象とすべき電池パック22は、図5(b)に示されるように、二次電池モジュール31の放電開始時における充電率と温度とが、所定の充電率の範囲と所定の温度の範囲とにより画定される有効範囲に含まれる、電池パック22に限定される。上記のように二次電池モジュール31の充電率は推定手段を構成する制御部10によって推定され、二次電池モジュール31の温度は温度検出手段を構成する温度センサ38によって検出される。
【0081】
直流抵抗値(DCR)計算のこの有効範囲は、例えば、図5(b)のグラフの網掛け範囲に示されるように、充電率の範囲が90~100%で、温度の範囲が20~35℃に設定される。同グラフの横軸は、無人飛行体3a,3b,…,3gの飛行開始時における二次電池モジュール31の温度[℃]、縦軸は、無人飛行体3a,3b,…,3gの飛行開始時における二次電池モジュール31の充電率(SOC)[%]である。また、同グラフにおける「×」印、「△」印および「○」印、並びに符号A~Fは、図5(a)に示すグラフにおけるものと同じである。
【0082】
同グラフにおける有効範囲に含まれる、D,EおよびFで示される電池パック22の直流抵抗値は、二次電池モジュール31が満充電状態にまで充電された後に最初に放電されたときに算出手段によって算出されたときの直流抵抗値である。
【0083】
無人飛行体3a,3b,…,3gの実際の運用では、例えば1回の飛行において電池パック22が放電可能な時間を10分とすると、1度の飛行で10分間放電する場合や、5度の飛行に分けて2分間ずつ放電する場合等が考えられ、それぞれの放電時における放電開始時の二次電池モジュール31の充電率や温度には違いがある。そこで、図5(b)に示される有効範囲に含まれる、満充電状態にまで充電された後に最初に放電された電池パック22のみを劣化診断の対象とすると、満充電または満充電に近い充電状態で、適切な温度の二次電池モジュール31を有する電池パック22について、劣化診断が行われることになり、高い信頼度で劣化診断が行われることになる。すなわち、放電開始時の充電率および温度が有効範囲に含まれる、D,EおよびFで示される電池パック22については、高い信頼度で劣化診断が行われることになる。一方、A,BおよびCで示される他の電池パック22は劣化診断の対象にならなくなる。
【0084】
有効範囲は、無人飛行体3a,3b,…,3gが飛行するときの季節や時間帯等により予め設定することができる。例えば夏の季節では、有効範囲を画定する温度範囲を例えば20~35℃に設定し、また、冬の季節であれば、有効範囲を画定する温度範囲を例えば0~15℃に設定することができる。なお、二次電池モジュール31の放電開始時の温度は、その季節の外気温に依存するものではなく、あくまでも電池パック22が保管されている室内の温度や、電池パック22が輸送されている環境(例えば車両内)の温度等に直接依存する。
【0085】
有効範囲は、劣化診断の対象となる放電履歴データが、二次電池モジュール31を満充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴データに限定されず、最初に放電したときの放電履歴データと実質的に同じであると見做すことができる2回目以降に放電されたときの放電履歴データをも、劣化診断の対象とするためのものである。
【0086】
図6(a)は、図5(b)に示される有効範囲により劣化診断の対象とされた、Fで示される電池パック22の直流抵抗値と充放電サイクルとの関係、つまり、直流電流値の充放電サイクル特性を示すグラフである。同グラフの横軸は充放電サイクル(Cycle)、縦軸は二次電池モジュール31の式(1)により算出された直流抵抗値(DCR)[Ω]である。
【0087】
また、同グラフにおける垂直な直線の下端のプロットは、満充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電開始時の直流抵抗値、上端のプロットは、満充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電終了時の直流抵抗値、または、満充電状態にまで充電した後における最初の放電後に、充電を介することなく、最後に放電したときの放電終了時の直流抵抗値を表す。また、斜めの直線は、前の充放電サイクルの放電終了時の直流抵抗値と、次の充放電サイクルの放電開始時の直流抵抗値とを結ぶ直線である。また、プロットの中には放電開始時のデータが欠けて、垂直な直線に乗っていない、放電終了時の直流抵抗値を表すプロットがある。このため、斜めの直線の中には、前の充放電サイクルの放電終了時の直流抵抗値と、次の充放電サイクルの放電終了時の直流抵抗値とを結ぶ直線がある。
【0088】
同グラフを参照すると、放電サイクルごとに、放電開始時の直流抵抗値と放電終了時の直流抵抗値とでは、ばらつきが見られる。同グラフに示される、Fで示される電池パック22の直近の直流抵抗値は、最後の充放電サイクルの放電終了時において、約0.165[Ω]になっている。
【0089】
図6(b)は、図5(b)に示した有効範囲に含まれる電池パック22に特化した、二次電池モジュール31の直流抵抗値の温度補正曲線を示している。この温度補正曲線は、二次電池モジュール31の温度をx、二次電池モジュール31の直流抵抗値をyとして、以下の式(2)の二次式により表される。
y=0.0003x-0.0213x+0.4866 …(2)
【0090】
図5(b)に示した有効範囲に含まれるFで示される電池パック22は、飛行開始時における温度33℃のときの直流抵抗値が、上記式(2)および図6(b)に示すグラフから、約0.11[Ω]と求まる。また、図5(b)に示した有効範囲を代表する例えば温度25℃での、Fで示される電池パック22の直流抵抗値は、上記式(2)および図6(b)に示すグラフから、約0.14[Ω]と求まる。したがって、Fで示される電池パック22における、放電開始から60秒間で測定された電圧値および電流値から算出された直近の直流抵抗値0.165[Ω](図6(a)参照)は、換算手段を構成する制御部10により、以下の式(3)によって、有効範囲を代表する温度25℃での直流抵抗値に換算され、0.21[Ω]に補正される。
0.165×(0.14/0.11)≒0.21 …(3)
【0091】
図7は、Fで示される電池パック22の図6(a)に示される直流抵抗値のうち、図5(b)に示される有効範囲の充電率および温度を同電池パック22が有するときの直流抵抗値を、図6(b)に示される温度補正曲線にしたがって補正した直流抵抗値を示すグラフである。同グラフの横軸および縦軸は図6(a)に示すグラフにおけるものと同じである。
【0092】
同グラフを参照すると、Fで示される電池パック22の図6(a)に示される直近の直流抵抗値0.165[Ω]は、0.21[Ω]に補正されていることが分かる。また、33サイクル目の放電時の直流抵抗値が、点線で示す0.175[Ω]を超えて急激に上昇しており、この上昇した直流抵抗値は、その後の放電時において残存していることが分かる。この場合、0.175[Ω]は、二次電池モジュール31の劣化状態を判定手段が弁別する際における所定の閾値となる。
【0093】
図6(b)の温度補正曲線は、例えば、有効範囲を画定する温度範囲が例えば夏の季節で20~35℃に設定されて、当該有効範囲を代表する温度が例えば25℃に設定されるときには、二次電池モジュール31の放電開始時の温度と当該有効範囲を代表する温度25℃とに対応する曲線部分が、着目される。また、有効範囲を画定する温度範囲が例えば冬の季節で0~15℃に設定されて、当該有効範囲を代表する温度が例えば10℃に設定されるときには、二次電池モジュール31の放電開始時の温度と当該有効範囲を代表する温度10℃とに対応する曲線部分(図示せず)が、着目される。
【0094】
なお、図5(a)に示す直流抵抗値の充放電サイクル特性は、電池パック22を満充電状態にまで充電した後に放電したときの、電池パック22の直流抵抗値と充放電サイクル数との関係を示している。しかし、例えば満充電状態に近い充電率95%である部分充電状態まで充電した後に放電したときの電池パック22について、図5(a)のように得られる直流抵抗値も、図7に示されるような温度補正された直流抵抗値にして、電池パック22の劣化診断の評価指標とすることができる。
【0095】
また、図5(a)に示す直流抵抗値の充放電サイクル特性は、電池パック22を満充電状態にまで充電した後の最初の放電時や、充電を介することなく2回目等の放電時での直流抵抗値をも含んでいる。この点については、満充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの直流抵抗値のみに限定して、電池パック22の劣化診断することが好ましい。これに対して、放電開始時の電池パック22の充電率や温度の条件が実質的に同じ電池パック、言い換えれば図5(b)に示される有効範囲に含まれる電池パック22であれば、満充電状態にまで充電した後の最初の放電時や、充電を介することなく2度目等で放電したときの直流抵抗を、電池パック22の劣化診断の対象としてもよい。
【0096】
図8は、無人飛行体3a,3b,…,3gに使用された複数の電池パック22のそれぞれの最高温度に関する放電履歴を示すグラフである。このグラフは、満充電状態にまで充電した後に放電したときの二次電池モジュール31の最高セル温度(Max cell temp [℃])を縦軸として、それぞれの電池パック22を解体したときに測定された二次電池モジュール31のセル積層体全体の膨れ量[mm]を横軸として示す。最高セル温度は、温度検出手段を構成する温度センサ38によって検出されたものである。同グラフにおける「×」印、「△」印および「○」印、並びに符号A~Fは、図5(a)に示すグラフにおけるものと同じである。
【0097】
同グラフに示されるように、充放電サイクル数が10未満であり、満充電状態にまで充電した後に所定の期間を超えて放置された保存期間を有さない、「×」印で示される電池パック22は、「△」印および「○」印に示される電池パック22に比べて、最高セル温度が低い傾向にあり、また、膨れ量も小さい傾向にある。上記したように、「×」印で示される電池パック22のうち、AおよびBで示されるものは、二次電池モジュール31の膨れ量が、最も小さいものと最も大きいものに相当している。
【0098】
また、充放電サイクル数が43~258であり、満充電状態にまで充電した後に所定の期間を超えて放置された保存期間を有さない、「△」印で示される電池パック22は、「×」印および「○」印に示される電池パック22に比べて、最高セル温度が中程度の傾向にあり、また、膨れ量がやや小さい傾向にある。上記したように、「△」印で示される電池パック22のうち、CおよびDで示されるものは、二次電池モジュール31の膨れ量が、最も小さいものと最も大きいものに相当している。
【0099】
また、充放電サイクル数が10以上40未満であり、満充電状態にまで充電した後に所定の期間を超えて放置された保存期間を有する、「○」印で示される電池パック22は、「×」印および「△」印に示される電池パック22に比べて、最高セル温度が高い傾向にあり、また、膨れ量も大きい傾向にある。上記したように、「○」印で示される電池パック22のうち、EおよびFで示されるものは、二次電池モジュール31の膨れ量が、最も小さいものと最も大きいものに相当しており、新しくGで示されるものは、最高セル温度の最も高いものに相当している。
【0100】
CおよびDで示される電池パック22は充放電サイクル数がそれぞれ43,258サイクルで多くなっているが、何れも、放電時の二次電池モジュール31の最高セル温度は80℃に到達しておらず、二次電池モジュール31におけるラミネートセルのセル積層体の膨れ量もそれほど大きくなってはいない。これに対して、E,FおよびGで示される電池パック22は、充放電サイクル数が10以上40サイクル未満でそれほど多くはないが、最高セル温度が80℃に到達しており、二次電池モジュール31におけるラミネートセルのセル積層体の膨れ量も増加している。したがって、最高セル温度が高い電池パック22は、膨れ量が大きくなる傾向にあり、劣化が進んでいるものと推定される。
【0101】
また、上記したように、「×」印および「△」印で示される電池パック22は、換算手段により換算された直流抵抗値、つまり、電池パック22の直流内部抵抗値が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超えず、全て使用可能なものと、判定手段によって判定されたものである。「○」印で示される電池パック22は、換算手段により換算された直流抵抗値が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超え、全て使用不可能なものと、判定手段によって判定されたものである。
【0102】
電池パック22の直流内部抵抗値は、「○」印で示される電池パック22のような、保存劣化が支配的な電池パック22だけでなく、「△」印で示される電池パック22のような、サイクル劣化が支配的な電池パック22にも共通する劣化診断の評価指標とすることができる。したがって、電池パック22の直流内部抵抗値と、図8のグラフに示される放電時の最高セル温度との相関に着目し、放電時の最高セル温度を劣化診断の評価指標とすることで、保存劣化が支配的な電池パック22だけでなく、同時に、サイクル劣化が支配的な電池パック22の劣化を診断することができる。
【0103】
なお、図8のグラフに示される最高セル温度に関する放電履歴は、図5(a)に示す直流内部抵抗値に関する放電履歴と同様、電池パック22を満充電状態にまで充電した後に放電したときの、電池パック22の最高セル温度と膨れ量との関係を示しているが、例えば満充電状態に近い充電率95%である部分充電状態まで充電した後に放電したときの電池パック22についても同様に、放電時の最高セル温度と直流内部抵抗値との間に相関が認められた。
【0104】
また、図8のグラフに示される最高セル温度に関する放電履歴は、電池パック22を満充電状態にまで充電した後の最初の放電時や、充電を介することなく2回目等の放電時での最高セル温度をも含んでいる。この点については、満充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの最高セル温度のみに限定して、電池パック22の劣化診断することが好ましい。これに対して、放電開始時の電池パック22の充電率や温度の条件が実質的に同じ電池パック、言い換えれば図5(b)に示される有効範囲に含まれる電池パック22であれば、満充電状態にまで充電した後の最初の放電時や、充電を介することなく2度目等で放電したときの最高セル温度を、電池パック22の劣化診断の対象としてもよい。
【0105】
図9は、無人飛行体3a,3b,…,3gに使用された複数の電池パック22のそれぞれの電圧挙動に関する放電履歴を示すグラフである。このグラフは、電池パック22を最後に満充電状態にまで充電した後の最初の放電時における二次電池モジュール31の電圧[mV]を縦軸、放電時における放電時間[分]を横軸として示す。この電圧は、電圧検出手段を構成する電圧検出回路37によって検出されたものである。同グラフにおける符号A~Fは、図5(a)に示すグラフにおけるものと同じである。
【0106】
同グラフを参照すると、A,CおよびDで示される電池パック22では、放電開始から60秒間での電圧降下量が6000mV程度であり、放電時間は11分を超えている。これに対して、Fで示される電池パック22では、放電開始から60秒間での電圧降下量は10000mVを超え、放電時間は11分に到達していない。また、Eで示される電池パック22では、放電開始から60秒間での電圧降下量は8000mV程度であり、放電時間は11分に到達していない。さらに、Bで示される電池パック22では、放電開始から60秒間程度、Eで示される電池パック22と同様な電圧降下を示し、その後、放電開始から120秒間程度に電圧上昇が見られ、この電圧上昇により放電時間は11分を超えている。
【0107】
図5(a)を用いて説明したように、AおよびBで示される電池パック22、並びに、CおよびDで示される電池パック22は、全て、所定の直流内部抵抗値を超えていないとの観点から、「使用可能な電池パック」と判断されたものである。これに対して、EおよびFで示される電池パック22は、全て、所定の直流内部抵抗値を超えるとの観点から、「使用不可能な電池パック」と判断されたものである。
【0108】
電池パック22の直流内部抵抗値は、「○」印で示される電池パック22のような、保存劣化が支配的な電池パック22だけでなく、「△」印で示される電池パック22のような、サイクル劣化が支配的な電池パック22にも共通する劣化診断の評価指標とすることができる。したがって、電池パック22の直流内部抵抗値と、図9のグラフに示される、放電開始時における二次電池モジュール31の電圧挙動との相関に着目し、放電開始時における二次電池モジュール31の電圧挙動を劣化診断の評価指標とすることで、保存劣化が支配的な電池パック22だけでなく、同時に、サイクル劣化が支配的な電池パック22の劣化を診断することができる。
【0109】
例えば、図9に示すグラフから、放電開始から所定期間(例えば0~60秒間)での電圧の降下する電圧変動量が、電圧の降下する電圧変動量についての所定の閾値(例えば7000mV)を超える、EおよびFで示す電池パック22の二次電池モジュール31は、劣化状態にあるとすることができる。
【0110】
しかし、放電開始から所定期間(例えば0~60秒間)での電圧の降下する電圧変動量が、電圧の降下する電圧変動量についての所定の閾値(例えば7000mV)を超える場合であっても、次のような、Bで示す電池パック22の二次電池モジュール31については、劣化状態にないとすることができる。つまり、同グラフにおけるBで示す電池パック22のように、所定期間(例えば0~60秒間)での電圧の降下する電圧変動量が、電圧の降下する電圧変動量についての所定の閾値(例えば7000mV)を超え、且つ、第2閾値(例えば8000mV)未満である場合であって、所定期間(例えば0~60秒間)に続く第2の所定期間(例えば60~120秒間)で、電圧の上昇する電圧変動量が第3閾値(例えば700mV)を超える場合には、二次電池モジュール31は劣化状態にないとすることができる。
【0111】
なお、図9のグラフに示される電圧挙動に関する放電履歴は、図5(a)に示す直流内部抵抗値に関する放電履歴と同様、電池パック22を満充電状態にまで充電した後に放電したときの、放電開始時における二次電池モジュール31の電圧挙動を示しているが、例えば満充電状態に近い充電率95%である部分充電状態まで充電した後に放電したときの電池パック22についても同様に、放電開始時における二次電池モジュール31の電圧挙動と直流内部抵抗値との間に相関が認められた。
【0112】
また、放電開始時における二次電池モジュール31の電圧挙動を評価指標とする劣化診断は、満充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの電池パック22に限定して、行うことが好ましい。これに対して、放電開始時の電池パック22の充電率や温度の条件が実質的に同じ電池パック、言い換えれば図5(b)に示される有効範囲に含まれる電池パック22であれば、満充電状態にまで充電した後の最初の放電時や、充電を介することなく2度目等で放電したときの電圧挙動を、電池パック22の劣化診断の対象としてもよい。
【0113】
なお、図5(a)に示す直流抵抗値の算出に用いられる「放電開始から60秒間の電圧降下量」は、上述した図9に示すグラフから読み取ることもできる。
【0114】
図10(a)および(b)は、無人飛行体3a,3b,…,3gに使用されたFおよびGで示される電池パック22のそれぞれの温度変動に関する放電履歴を示すグラフである。これらのグラフは、電池パック22を満充電状態にまで充電した後の放電時における二次電池モジュール31の温度(セル温度)[℃]を縦軸、電池パック22の充放電サイクル数(cycle)を横軸として示す。この温度は、温度検出手段を構成する温度センサ38によって検出されたものである。各グラフにおける符号FおよびGは、図5(a)および図8に示す各グラフにおけるものと同じである。
【0115】
また、同グラフにおける垂直な直線の下端のプロットは、満充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電開始時のセル温度、上端のプロットは、最初に放電したときの放電終了時のセル温度、または、最初の放電後に、充電を介することなく、最後に放電したときの放電終了時のセル温度を表す。また、斜めの直線は、前の充放電サイクルの放電終了時のセル温度と、次の充放電サイクルの放電開始時のセル温度とを結ぶ直線である。
【0116】
図10(a)に示されるグラフを参照すると、「○」印で示される電池パック22のうちのFで示される電池パック22は、充放電サイクルが32サイクルと33サイクルとの間に152日にわたり放置された保存期間が存在し、この152日間空き直後の33サイクル目の最初の放電における、放電開始時のセル温度と放電終了時のセル温度との間で、40℃を超える顕著な温度差が生じている。この顕著な温度差は、その後の充放電サイクルの放電時においても残存している。この顕著な温度差は、図5(a)に「×」印で示される電池パック群には見られない現象である。
【0117】
この顕著な温度差が発生するタイミングは、Fで示される電池パック22の、図7におけるグラフで、その直流内部抵抗が急激に上昇して、所定の閾値(0.175[Ω])を超えるタイミングと一致する。また、この顕著な温度差が発生した後における放電終了時のセル温度は、図10(a)に示されるグラフで80℃を超えている場合があり、図8に示されるグラフにおける、Fで示される電池パック22の最高セル温度とほぼ整合する。
【0118】
また、図10(b)に示されるグラフを参照すると、「○」印で示される電池パック22のうちのGで示される電池パック22は、充放電サイクル数が4サイクルと7サイクルとの間に273日にわたり放置された保存期間が存在する。この273日間空き直後の7サイクル目の最初の放電における、放電開始時のセル温度と放電終了時のセル温度との間には、40℃程度の顕著な第1温度差が生じている。しかし、この顕著な第1温度差を生じさせるサイクルにおける放電終了時の高い温度は、その後の放電時において残存していない。これは、273日にわたる長期保存が10サイクル未満という充放電サイクル数において行われたためと、思われる。
【0119】
一方、充放電サイクルが18サイクルと19サイクルとの間に22日にわたり放置された保存期間が存在し、この22日間空き直後の19サイクル目の最初の放電における、放電開始時のセル温度と放電終了時のセル温度との間で、40℃を超える顕著な第2温度差が生じている。この顕著な第2温度差、および、この顕著な第2温度差を生じさせるサイクルにおける放電終了時の高い温度は、その後の放電時においても残存している。
【0120】
また、この顕著な第2温度差が発生するタイミングは、Fで示される電池パック22と同様に、Gで示される電池パック22の直流内部抵抗が急激に上昇して、所定の閾値を超えるタイミングと一致する。また、この顕著な第2温度差が発生した後における放電終了時のセル温度は、図10(b)に示されるグラフで80℃を超える場合がある。これは、図8に示されるグラフにおける、Gで示される電池パック22の最高セル温度とほぼ整合する。
【0121】
電池パック22の直流内部抵抗値は、既述のように、「○」印で示される電池パック22のような、保存劣化が支配的な電池パック22だけでなく、「△」印で示される電池パック22のような、サイクル劣化が支配的な電池パック22にも共通する劣化診断の評価指標とすることができる。したがって、電池パック22の直流内部抵抗値と、図10の各グラフに示される、放電開始時のセル温度と放電終了時のセル温度との温度差との相関に着目し、放電開始時のセル温度と放電終了時のセル温度との温度差を劣化診断の評価指標とすることで、保存劣化が支配的な電池パック22だけでなく、同時に、サイクル劣化が支配的な電池パック22の劣化を診断することができる。
【0122】
また、放電開始時のセル温度と放電終了時のセル温度との顕著な温度差が所定サイクル数継続する場合、その電池パック22の直流内部抵抗値は高くなっていて、劣化が進んでいるものと、より確実に推定することができる。
【0123】
なお、図10の各グラフに示される放電履歴は、電池パック22を満充電状態にまで充電した後に放電したときの、放電開始時のセル温度と放電終了時のセル温度との温度差の推移を示しているが、例えば満充電状態に近い充電率95%である部分充電状態まで充電した後に放電したときの電池パック22についても、同様に、放電開始時のセル温度と放電終了時のセル温度との温度差と直流内部抵抗値との間に、相関が認められた。
【0124】
また、放電開始時のセル温度と放電終了時のセル温度との温度差を評価指標とする劣化診断は、満充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの電池パック22に限定して、行うことが好ましい。これに対して、放電開始時の電池パック22の充電率や温度の条件が実質的に同じ電池パック、言い換えれば図5(b)に示される有効範囲に含まれる電池パック22であれば、満充電状態にまで充電した後の最初の放電時や、充電を介することなく2度目等で放電したときの上記温度差を、電池パック22の劣化診断の対象としてもよい。
【0125】
図11は、第1実施の形態に係る二次電池の劣化診断システムの動作を例示するフローチャートである。本動作は、図1に例示された管制装置2の制御部10により実行され、また、管制装置2のストレージ12に各電池パック22について記憶されている使用履歴データのうちの、図5から図7に示される二次電池モジュール31の直流抵抗値に関する放電履歴データを基にして行われる。
【0126】
なお、無人飛行体3a,3b,…,3gの送受信部23からは、搭載する電池パック22の使用履歴データが管制装置2へ逐次送信されている。管制装置2は、無人飛行体3a,3b,…,3gの送受信部23から送信された使用履歴データを送受信部13で受信し、受信した使用履歴データをストレージ12に順次記憶している。
【0127】
はじめに、ステップS101で、劣化診断を要求する特定の電池パック22を指定する情報が、キーボード等の入出力部14から入力されたかが、制御部10によって判定される。特定の電池パック22を指定する情報の入力が無くて、ステップS101の判定結果がNoである場合、ステップS101の処理が繰り返される。
【0128】
一方、特定の電池パック22を指定する情報が入力されて、ステップS101の判定結果がYesである場合、次に、ステップS102で、ストレージ12に各電池パック22について記憶されている使用履歴データのうちの、指定された電池パック22の使用履歴データの中から、放電履歴データが、データ抽出手段を構成する制御部10によって抽出されて、特定される。
【0129】
次に、ステップS103で、ステップS102で特定された放電履歴データのうち、予め設定された有効範囲に該当する放電履歴データがあるかが、データ抽出手段を構成する制御部10によって判定される。この有効範囲は、図5(b)に例示された、放電開始時の充電率90~100%の範囲およびセル温度20~35℃の範囲により画定される範囲である。また、ステップS103で判定の対象とされる放電履歴データは、制御部10によって特定されたストレージ12に記憶されている放電履歴データのうち、最後(直近)に放電されたときの最新の放電履歴データのなかで、上記有効範囲に該当する放電履歴データである。
【0130】
最新の放電履歴データは、例えば、最後(直近)の充放電サイクルで最初に放電されたときの放電データに続いて、充電を介することなく、2回目に放電されたときの放電データ、3回目に放電されたときの放電データ、そして例えば最後となる4回目に放電されたときの放電データが、時系列で構成されている場合がある。この場合、ステップS103の判定処理は、最新の放電履歴データのなかで、最後となる4回目に放電されたときの放電データから最初に放電されたときの放電データへと過去に遡って順次に実行されてもよく、また、最初に放電されたときの放電データのみに着目して実行されてもよい。すなわち、放電履歴データは、最後(直近)の充放電サイクルで最初に放電されたときの放電履歴データに限定されず、最初に放電されたときの放電履歴データと実質的に同じであると見做すことができる2回目以降に放電されたときの放電履歴データをも対象とすることができる。
【0131】
有効範囲に該当する放電履歴データがストレージ12になく、ステップS103の判定結果がNoである場合、指定された電池パック22の劣化診断処理は行われずに、劣化診断処理は終了する。
【0132】
一方、有効範囲に該当する放電履歴データがストレージ12にあり、ステップS103の判定結果がYesである場合、次に、ステップS104で、有効範囲に該当する放電履歴データから、ステップS101で指定のあった特定の電池パック22の直流抵抗値が、算出手段を構成する制御部10によって算出される。この直流抵抗値の算出は、図5(a)のグラフの説明で使用した式(1)から、有効範囲に該当する放電データのうち、放電開始時から60秒間の電圧値および電流値が着目されて、行われる。
【0133】
次に、ステップS105で、ステップS104で算出された直流抵抗値が、有効範囲を代表する温度での直流抵抗値に換算される温度補正処理が、換算手段を構成する制御部10によって行われる。有効範囲に含まれる放電履歴データであっても、放電開始時のセル温度には例えば20~35℃といったばらつきがある。そこで、算出された直流抵抗値について、有効範囲を代表するセル温度での直流抵抗値に換算する温度補正処理が行われることで、次のステップで行われる判定処理に用意する所定の閾値の数が抑制される。
【0134】
この温度補正処理は、式(3)のように、図6(b)に示される温度補正曲線および式(2)にしたがって求められる、放電開始時のセル温度での直流抵抗値と、図5(b)で説明した有効範囲を代表するセル温度(例えば25℃)での直流抵抗値との比が、ステップS104で算出された直流抵抗値に乗じられることで、行われる。
【0135】
ステップS105で、ステップS104で算出された直流抵抗値が温度補正されると、次に、ステップS106で、ステップS105で補正された直流抵抗値が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超えるかが、判定手段を構成する制御部10によって判定される。この所定の閾値には、例えば、図7で説明した閾値(例えば0.175[Ω])が用いられる。
【0136】
温度補正された直流抵抗値が所定の閾値を超え、ステップS106の判定結果がYesである場合には、次に、ステップS107で、指定された電池パック22は劣化状態にあるために「使用不可」であると、判定手段によって判定される。この判定結果は、制御部10により、ストレージ12の、当該有効範囲に該当する放電履歴データに対応する箇所等に記憶されると共に、入出力部14であるディスプレイにその旨が表示されて、劣化診断処理は終了する。
【0137】
また、温度補正された直流抵抗値が所定の閾値を超えず、ステップS106の判定結果がNoである場合には、次に、ステップ108で、指定された電池パック22は劣化状態にないために「使用可」であると、判定手段によって判定される。この判定結果は、制御部10により、ストレージ12の、当該有効範囲に該当する放電履歴データに対応する箇所等に記憶されると共に、入出力部14であるディスプレイにその旨が表示されて、劣化診断処理は終了する。
【0138】
このような第1実施の形態による二次電池の劣化診断システムでは、上記のように、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの放電履歴情報が、二次電池モジュール31を搭載する無人飛行体(負荷)3a,3b,…,3gから、劣化診断システムの送受信部13に受信される。受信された放電履歴情報はストレージ12に記憶される。そして、ストレージ12に記憶された放電履歴情報に含まれる二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度が、ステップS103の判定処理で、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる場合に、ステップS104の処理で、算出手段により、二次電池モジュール31の直流抵抗値が算出される。算出された直流抵抗値は、ステップS105の処理で、換算手段により、有効範囲を代表する温度での直流抵抗値に換算され、換算された直流抵抗値は、ステップS106の判定処理で、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超えるかが、判定手段によって判定される。
【0139】
算出手段により算出される二次電池モジュール31の直流抵抗値、つまり、その直流内部抵抗は、保存劣化が支配的な二次電池モジュールだけでなく、サイクル劣化が支配的な二次電池モジュールにも共通する劣化診断の評価指標となる。また、この評価指標の算出は、ステップS103の判定処理により、放電履歴情報に含まれる、二次電池モジュールの放電開始時の充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる場合に、行われる。さらに、評価指標となる直流抵抗値は、ステップS105の処理により、換算手段によって有効範囲を代表する温度での直流抵抗値に換算され、換算された直流抵抗値が、ステップS106の判定処理により、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超えるかが、判定手段によって判定される。
【0140】
したがって、劣化診断システムによる二次電池モジュール31の劣化診断は、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる二次電池モジュール31に限定して、行われる。このため、有効範囲を画定する所定の充電率範囲および所定の温度範囲を適切に選定することで、確度の高い劣化診断を効率的に行えるようになる。また、評価指標となる直流抵抗値の所定の閾値との比較は、直流抵抗値が有効範囲を代表する温度での値に換算されて、行われる。このため、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値は、有効範囲を代表する温度での直流抵抗値に対応したものに限定され、二次電池モジュール31の直流抵抗値の評価が効率的に行えるようになる。この結果、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化診断を確度高く効率的に行える劣化診断システムを提供することができるようになる。
【0141】
なお、上記の第1の実施の形態では、最後(直近)の充放電サイクルで最初に放電されたときの放電履歴データに限定されず、最初に放電されたときの放電履歴データと実質的に同じであると見做すことができる2回目以降に放電されたときの放電履歴データをも対象として、有効範囲に属する放電履歴データがステップS103で抽出された。算出手段は、このステップS103で抽出された放電履歴データから、ステップS104で直流抵抗値を算出した。
【0142】
しかし、ステップS103で抽出する放電履歴データを、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報のうちの有効範囲に属するものとし、算出手段が、ステップS104で、その放電履歴情報に含まれる充電率および温度が、有効範囲に属する場合に、二次電池モジュール31の直流抵抗値を算出するようにしてもよい。
【0143】
このような構成によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報であって、放電開始時の充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報がデータ抽出手段によって抽出され、抽出された放電履歴情報から直流抵抗値が算出手段によって算出される。そして、その直流抵抗値が換算手段によって有効範囲を代表する温度での直流抵抗値に換算され、換算された直流抵抗値が判定手段によって所定の閾値と比較されて、劣化診断が行われる。
【0144】
満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報から算出される直流抵抗値は、それ以降に放電したときの放電履歴情報から算出される直流抵抗値と比べ、安定した値が得られる。このため、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化診断をより確度高く行える二次電池の劣化診断システムを提供することができるようになる。
【0145】
なお、上記の第1実施の形態では、管制装置2が、図11のフローチャートに例示される動作を実行している場合について、説明した。しかし、他の実施の形態として、電池パック22が搭載される無人飛行体3a,3b,…,3gが、図11のフローチャートに例示される動作を実行するようにしてもよい。この場合、無人飛行体3a,3b,…,3gのフライトコントローラ21、メモリ21aおよび送受信部23が、管制装置2の制御部10、ストレージ12および送受信部13にそれぞれ対応する役割を果たす。
【0146】
また、他の実施の形態として、各電池パック22が、図11のフローチャートに例示される動作を実行するようにしてもよい。この場合、管制装置2のストレージ12のデータベースに構築されている各電池パック22の使用履歴データと同じ使用履歴データが、電池パック22のBMU33内のメモリ36bに記憶される。BMU33内のCPU36aは、例えば無人飛行体3a,3b,…,3gのフライトコントローラ21からの指示、または、管制装置2からのフライトコントローラ21を介する指示に応答して、図11のフローチャートに例示された動作を実行する。管制装置2の入出力部14に入力される電池パック22を指定する情報は、フライトコントローラ21を介してBMU33内のCPU36aへ伝達される。
【0147】
BMU33内のCPU36aが図11のフローチャートに例示された動作を実行するとき、CPU36aは、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、放電開始時の二次電池モジュール31の充電率を推定する推定手段を構成する。メモリ36bは、電圧検出手段を構成する電圧検出回路37により検出された電圧値、電流検出手段を構成する電流センサ32により検出された電流値、温度検出手段を構成する温度センサ38により検出された温度、および、推定手段により推定された充電率を含む放電履歴情報を記憶する記憶手段を構成する。
【0148】
CPU36aは、さらに、メモリ36bに記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる放電履歴情報を抽出するデータ抽出手段を構成する。さらに、CPU36aは、データ抽出手段によって抽出された放電履歴情報に含まれる、放電開始から所定期間の電圧値と電流値とから二次電池モジュール31の直流抵抗値を算出する算出手段と、算出手段により算出された直流抵抗値を、有効範囲を代表する温度での直流抵抗値に換算する換算手段と、換算手段により換算された直流抵抗値が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超えるかを判定する判定手段とを構成する。
【0149】
このような実施の形態によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュール31の電圧値、二次電池モジュール31に流れる電流値、および、二次電池モジュール31の温度は、それぞれ、電池パック22内の電圧検出手段、電流検出手段、および、温度検出手段により検出されて、放電履歴情報として電池パック22内のメモリ36bに記憶される。また、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの充電率は、電池パック22内の推定手段によって推定されて、放電履歴情報として電池パック22内のメモリ36bに記憶される。電池パック22は、メモリ36bに記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる放電履歴情報を、電池パック22内のデータ抽出手段によって抽出する。
【0150】
さらに、電池パック22は、抽出した放電履歴情報から、電池パック22内の算出手段により、二次電池モジュール31の直流抵抗値を算出する。そして、算出した直流抵抗値を、電池パック22内の換算手段により、有効範囲を代表する温度での直流抵抗値に換算し、換算した直流抵抗値が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超えるかを、電池パック22内の判定手段によって判定する。
【0151】
算出手段により算出される二次電池モジュール31の直流抵抗値、つまり、その直流内部抵抗は、保存劣化が支配的な二次電池モジュールだけでなく、サイクル劣化が支配的な二次電池モジュール31にも共通する劣化診断の評価指標となる。また、この評価指標の算出は、放電履歴情報に含まれる、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる場合に、行われる。さらに、評価指標となる直流抵抗値は、換算手段によって有効範囲を代表する温度での直流抵抗値に換算され、換算された直流抵抗値が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超えるかが、判定手段によって判定される。
【0152】
したがって、二次電池モジュール31の劣化診断は、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる場合に限定して、電池パック22内で行われる。このため、有効範囲を画定する所定の充電率範囲および所定の温度範囲を適切に選定することで、確度の高い劣化診断を電池パック22内で行えるようになる。
【0153】
また、評価指標となる直流抵抗値の所定の閾値との比較は、直流抵抗値が有効範囲を代表する温度での値に換算されて、電池パック22内で行われる。このため、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値は、有効範囲を代表する温度での直流抵抗値に対応したものに限定され、二次電池モジュール31の直流抵抗値の評価が電池パック22内で効率的に行えるようになる。この結果、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化診断を確度高く効率的に行える電池パック22を提供できるようになる。
【0154】
なお、BMU33内のCPU36aが図11のフローチャートに例示された動作を実行するとき、ステップS103では、最後(直近)の充放電サイクルで最初に放電されたときの放電履歴データに限定されず、2回目以降に放電されたときの放電履歴データをも対象として、有効範囲に属する放電履歴データの抽出が行われる。電池パック22内の算出手段は、このステップS103で抽出された放電履歴データから、ステップS104で直流抵抗値を算出することになる。
【0155】
しかし、ステップS103で抽出する放電履歴データを、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報のうちの有効範囲に属するものとし、算出手段が、ステップS104で、その放電履歴情報に含まれる充電率および温度が、有効範囲に属する場合に、二次電池モジュール31の直流抵抗値を算出するようにしてもよい。
【0156】
このような変形例の構成によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報であって、放電開始時の充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報がデータ抽出手段によって抽出され、抽出された放電履歴情報から直流抵抗値が算出手段によって算出される。そして、その直流抵抗値が電池パック22内の換算手段によって有効範囲を代表する温度での直流抵抗値に換算され、換算された直流抵抗値が電池パック22内の判定手段によって所定の閾値と比較されて、劣化診断が行われる。
【0157】
満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報から算出される直流抵抗値は、それ以降に放電したときの放電履歴情報から算出される直流抵抗値と比べ、安定した値が得られる。このため、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化診断をより確度高く行える電池パック22を提供することができるようになる。
【0158】
また、BMU33内のCPU36aが図11のフローチャートに例示された動作、または上記変形例による動作を実行する、上記に記載の電池パック22を無人飛行体3a,3b,…,3gに搭載することで、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化診断を確度高く効率的に行える無人飛行体3a,3b,…,3gを提供できるようになる。
【0159】
[第2実施の形態]
図12は、本発明の第2実施の形態に係る二次電池の劣化診断システムの動作を例示するフローチャートである。
【0160】
本動作は、図1に例示された管制装置2の制御部10により実行され、また、管制装置2のストレージ12に各電池パック22について記憶されている使用履歴データのうちの、図8に示される最高セル温度に関する放電履歴データを基にして、行われる。第1実施の形態では、劣化診断の評価指標として、図7に例示した直流抵抗値が着目されたが、第2実施の形態では、簡易的な劣化診断として、図8に例示した放電時の最高セル温度を劣化診断の評価指標として着目する。
【0161】
第2実施の形態では、送受信部13は、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュール31の放電時の最高温度、並びに、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときにおける、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度を含む放電履歴情報を、二次電池モジュール31を搭載する無人飛行体3a,3b,…,3gから受信する。ストレージ12は受信した放電履歴情報を記憶する。
【0162】
図12のステップS111~S113では、図11のステップS101~S103と同じ処理が行われるため、説明を省略する。
【0163】
ステップS113で、有効範囲に該当する放電履歴データがストレージ12になく、ステップS113の判定結果がNoである場合、指定された電池パック22の劣化診断処理は行われずに、劣化診断処理は終了する。
【0164】
一方、有効範囲に該当する放電履歴データがストレージ12にあり、ステップS113の判定結果がYesである場合、次に、ステップS114で、ステップS113で判定された有効範囲に該当する放電履歴データから、二次電池モジュール31の最高セル温度がデータ抽出手段を構成する制御部10によって取得される。
【0165】
次に、ステップS115で、ステップS114で取得された最高セル温度が、最高セル温度についての所定の閾値、例えば80℃を超えるかが、判定手段を構成する制御部10によって判定される。
【0166】
取得された最高セル温度が所定の閾値を超え、ステップS115の判定結果がYesである場合、次に、ステップS116で、制御部10により、指定された電池パック22は劣化状態にあるために「使用不可」であると、判定される。この判定結果は、制御部10により、ストレージ12の、当該有効範囲に該当する放電履歴データに対応する箇所等に記憶されるとともに、入出力部14であるディスプレイにその旨が表示されて、劣化診断処理は終了する。
【0167】
一方、取得された最高セル温度が所定の閾値を超えず、ステップS115の判定結果がNoである場合、次に、ステップS117で、制御部10により、指定された電池パック22は劣化状態にないために「使用可」と、判定される。この判定結果は、制御部10により、ストレージ12の、当該有効範囲に該当する放電履歴データに対応する箇所等に記憶されるとともに、入出力部14であるディスプレイにその旨が表示されて、劣化診断処理は終了する。
【0168】
第2実施の形態に係る二次電池の劣化診断システムによれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュールの最高温度が、二次電池モジュール31を搭載する無人飛行体3a,3b,…,3gから、管制装置2の送受信部13に受信される。管制装置2の制御部10は、受信した情報をストレージ12に記憶し、記憶した最高温度を抽出する。そして、抽出した最高温度が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する最高温度についての所定の閾値を超えるかを判定する。
【0169】
満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュール31の最高温度は、二次電池モジュール31の直流内部抵抗と相関があることが、今回、本発明者によって見い出された。二次電池モジュール31の直流内部抵抗は、保存劣化が支配的な二次電池モジュール31だけでなく、サイクル劣化が支配的な二次電池モジュール31にも共通する、劣化診断の評価指標となる。
【0170】
したがって、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュール31の最高温度も、劣化診断の評価指標となる。このため、二次電池モジュール31の最高温度が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する最高温度についての所定の閾値を超えると、制御部10によって判定されると、劣化診断の判定対象となる二次電池モジュール31は、劣化診断システムにより劣化状態にあるものと診断される。よって、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化状態を診断することができる劣化診断システムを提供することができるようになる。
【0171】
また、第2実施の形態に係る二次電池の劣化診断システムによれば、ステップS113で、ストレージ12に記憶されている放電履歴情報のうち、充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる放電履歴情報が、制御部10によって抽出される。したがって、有効範囲を画定する所定の充電率範囲および所定の温度範囲を適切に選定し、劣化診断の対象にする二次電池モジュール31の範囲を限定することで、二次電池モジュール31の劣化診断が確度高く行えるようになる。
【0172】
なお、本実施形態では、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報がデータ抽出手段によって抽出される場合について、説明した。しかし、最高セル温度を取得する放電履歴情報は、必ずしも、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報に限られることはない。
【0173】
また、二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に行われる放電は、複数回にわたって行われる場合がある。本実施形態では、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に充電を介することなく複数回放電したときの、いずれかの放電回における放電履歴情報に含まれる二次電池モジュールの最高温度がデータ抽出手段によって抽出された。しかし、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報であって、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報がデータ抽出手段によって抽出されるように構成し、抽出された放電履歴情報に含まれる最高温度が、二次電池モジュールの劣化状態を弁別する所定の閾値を超えるかが、判定手段によって判定されて、劣化診断が行われるようにしてもよい。満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報に含まれる最高温度は、それ以降に放電したときの放電履歴情報に含まれるものと比べ、安定した値が得られる。このため、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化診断をより確度高く行える二次電池の劣化診断システムを提供することができるようになる。
【0174】
また、本実施形態では、二次電池モジュール31を搭載する無人飛行体3a,3b,…,3gから、管制装置2の送受信部13に最高セル温度が受信される場合について、説明した。しかし、二次電池モジュール31を搭載する無人飛行体3a,3b,…,3gから、温度検出手段によって検出される温度そのものが、管制装置2の送受信部13に受信されるようにして、ステップS114で、温度検出手段で検出されたセル温度のうちで、最も値の大きい最高セル温度が制御部10によって取得されるように構成してもよい。
【0175】
また、上記の第2実施の形態では、管制装置2が、図12のフローチャートに例示される動作を実行している場合について、説明した。しかし、他の実施の形態として、電池パック22が搭載される無人飛行体3a,3b,…,3gが、図12のフローチャートに例示される動作を実行するようにしてもよい。この場合、無人飛行体3a,3b,…,3gのフライトコントローラ21、メモリ21aおよび送受信部23が、管制装置2の制御部10、ストレージ12および送受信部13にそれぞれ対応する役割を果たす。
【0176】
また、他の実施の形態として、各電池パック22が、図12のフローチャートに例示される動作を実行するようにしてもよい。この場合、管制装置2のストレージ12のデータベースに構築されている各電池パック22の使用履歴データと同じ使用履歴データが、電池パック22のBMU33内のメモリ36bに記憶される。BMU33内のCPU36aは、例えば無人飛行体3a,3b,…,3gのフライトコントローラ21からの指示、または、管制装置2からのフライトコントローラ21を介する指示に応答して、図12のフローチャートに例示された動作を実行する。管制装置2の入出力部14に入力される電池パック22を指定する情報は、フライトコントローラ21を介してBMU33内のCPU36aへ伝達される。
【0177】
BMU33内のCPU36aが図12のフローチャートに例示された動作を実行するとき、BMU36内のメモリ36bは、温度検出手段を構成する温度センサ38により検出された温度を含む放電履歴情報を記憶する記憶手段を構成する。また、CPU36aは、メモリ36bに記憶されている放電履歴情報を抽出するデータ抽出手段と、データ抽出手段によって抽出された放電履歴情報に含まれる温度のうちの最高温度が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する最高温度についての所定の閾値を超えるかを判定する判定手段とを構成する。
【0178】
本構成によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、温度が電池パック内の温度検出手段によって検出され、電池パック内の記憶手段に放電履歴情報として記憶される。記憶手段に記憶された放電履歴情報は電池パック内のデータ抽出手段によって抽出され、抽出された温度のうちの最高温度が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する最高温度についての所定の閾値を超えるかが、判定手段によって判定される。
【0179】
上記のように、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュールの最高温度も、二次電池モジュールの劣化診断の評価指標となる。このため、本構成により、二次電池モジュールの最高温度が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する最高温度についての所定の閾値を超えると、電池パック22内の判定手段によって判定されると、劣化診断の判定対象となる二次電池モジュール31は、電池パック22により劣化状態にあるものと診断される。よって、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化状態を診断することができる電池パック22を提供することができるようになる。
【0180】
BMU33内のCPU36aが図12のフローチャートに例示された動作を実行するとき、さらに、CPU36aは、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときにおける二次電池モジュール31の放電開始時の充電率を推定する推定手段を構成する。また、記憶手段を構成するメモリ36bは、推定手段により推定された放電開始時の充電率を放電履歴情報に含めて記憶する。
【0181】
また、データ抽出手段を構成するCPU36aは、メモリ36bに記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる放電履歴情報を抽出する。判定手段を構成するCPU36aは、データ抽出手段により抽出されたこの放電履歴情報に含まれる温度のうちの最高温度が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する最高温度についての所定の閾値を超えるかを判定する。
【0182】
本構成によれば、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときにおける、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率が、電池パック22内の推定手段によって推定され、放電履歴情報に含めて電池パック22内のメモリ36bに記憶される。そして、メモリ36bに記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる放電履歴情報が、電池パック22内のデータ抽出手段によって抽出される。さらに、抽出された放電履歴情報に含まれる温度のうちの最高温度が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超えるかが、電池パック22内の判定手段によって判定される。したがって、有効範囲を画定する所定の充電率範囲および所定の温度範囲を適切に選定し、劣化診断の対象にする二次電池モジュール31の範囲を限定することで、様々な運用下において二次電池モジュール31の劣化診断が確度高く行える電池パック22を提供することができるようになる。
【0183】
なお、最高セル温度を取得する放電履歴情報は、本構成においても、必ずしも、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報に限られることはない。
【0184】
また、上記の電池パック22において、データ抽出手段を構成するCPU36aは、メモリ36bに記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報であって、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報を抽出する構成にすることが、好ましい。
【0185】
このような変形例の構成によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報であって、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報がデータ抽出手段によって抽出される。最初に放電したときの放電履歴情報から得られる最高温度は、それ以降に放電したときの放電履歴情報から得られるものと比べ、安定した値が得られる。このため、様々な運用下においてより確度の高い二次電池モジュール31の劣化診断を行える電池パック22を提供することができるようになる。
【0186】
また、BMU33内のCPU36aが図12のフローチャートに例示された動作、または上記変形例による動作を実行する、上記に記載の電池パック22を無人飛行体3a,3b,…,3gに搭載することで、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化診断を確度高く効率的に行える無人飛行体3a,3b,…,3gを提供できるようになる。
【0187】
[第3実施の形態]
図13は、本発明の第3実施の形態に係る二次電池の劣化診断システムの動作を例示するフローチャートである。
【0188】
本動作は、図1に例示された管制装置2の制御部10により実行され、また、管制装置2のストレージ12に各電池パック22について記憶されている使用履歴データのうちの、図9に示される電圧変動に関する放電履歴データを基にして行われる。第1実施の形態では、劣化診断の評価指標として、図7に例示した直流抵抗値が着目されたが、第3実施の形態では、簡易的な劣化診断として、図9に例示した放電時の電圧変動量を劣化診断の評価指標として着目する。
【0189】
第3実施の形態では、送受信部13は、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュール31の放電時の電圧、並びに、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときにおける、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度を含む放電履歴情報を、二次電池モジュール31を搭載する無人飛行体3a,3b,…,3gから受信する。ストレージ12は受信した放電履歴情報を記憶する。
【0190】
図13のステップS121~S123でも、図11のステップS101~S103と同じ処理が行われるため、説明を省略する。
【0191】
ステップS123で、有効範囲に該当する放電履歴データがストレージ12になく、ステップS123の判定結果がNoである場合、指定された電池パック22の劣化診断処理は行われずに、劣化診断処理は終了する。
【0192】
一方、有効範囲に該当する放電履歴データがストレージ12にあり、ステップS123の判定結果がYesである場合、次に、ステップS124で、ステップS123で判定された有効範囲に該当する放電履歴データから、放電開始から所定期間内、例えば図9のグラフに示すように、放電開始から60秒内での電圧降下量が、算出手段を構成する制御部10によって算出される。
【0193】
次に、ステップS125で、ステップS124で算出された電圧降下量が、電圧降下量についての所定の閾値、例えば図9のグラフに示す場合のように7000mVを超えるかが、判定手段を構成する制御部10によって判定される。
【0194】
算出された電圧降下量が所定の閾値を超え、ステップS125の判定結果がYesである場合、次に、ステップS126で、制御部10により、指定された電池パック22は劣化状態にあるために「使用不可」であると、判定される。この判定結果は、制御部10により、ストレージ12の、当該有効範囲に該当する放電履歴データに対応する箇所等に記憶されるとともに、入出力部14であるディスプレイにその旨が表示されて、劣化診断処理は終了する。
【0195】
一方、算出された電圧降下量が所定の閾値を超えず、ステップS125の判定結果がNoである場合、次に、ステップS127で、制御部10により、指定された電池パック22は劣化状態にないために「使用可」と、判定される。この判定結果は、制御部10により、ストレージ12の、当該有効範囲に該当する放電履歴データに対応する箇所等に記憶されるとともに、入出力部14であるディスプレイにその旨が表示されて、劣化診断処理は終了する。
【0196】
第3実施の形態に係る二次電池の劣化診断システムによれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュールの電圧が、二次電池モジュール31を搭載する無人飛行体3a,3b,…,3gから、管制装置2の送受信部13に受信される。管制装置2の制御部10は、受信した情報をストレージ12に記憶し、記憶した電圧を抽出する。そして、抽出した電圧から算出した電圧変動量が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する電圧の降下する電圧変動量についての所定の閾値を超えるかを判定する。
【0197】
満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュール31の電圧変動量は、二次電池モジュール31の直流内部抵抗と相関があることが、今回、本発明者によって見い出された。二次電池モジュール31の直流内部抵抗は、保存劣化が支配的な二次電池モジュール31だけでなく、サイクル劣化が支配的な二次電池モジュール31にも共通する、劣化診断の評価指標となる。
【0198】
したがって、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュール31の電圧変動量も、劣化診断の評価指標となる。このため、二次電池モジュール31の電圧の降下する電圧変動量が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超えると、制御部10によって判定されると、劣化診断の判定対象となる二次電池モジュール31は、劣化診断システムにより劣化状態にあるものと診断される。よって、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化状態を診断することができる劣化診断システムを提供することができるようになる。
【0199】
また、第3実施の形態に係る二次電池の劣化診断システムによれば、ステップS123で、ストレージ12に記憶されている放電履歴情報のうち、充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる放電履歴情報が、制御部10によって抽出される。したがって、有効範囲を画定する所定の充電率範囲および所定の温度範囲を適切に選定し、劣化診断の対象にする二次電池モジュール31の範囲を限定することで、二次電池モジュール31の劣化診断が確度高く行えるようになる。
【0200】
なお、本実施形態では、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報がデータ抽出手段によって抽出される場合について、説明した。しかし、電圧変動量を算出する放電履歴情報は、必ずしも、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報に限られることはない。
【0201】
また、二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に行われる放電は、複数回にわたって行われる場合がある。本実施形態では、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に充電を介することなく複数回放電したときの、いずれかの放電回における放電履歴情報に含まれる二次電池モジュールの電圧がデータ抽出手段によって抽出され、電圧変動量が算出手段によって算出された。しかし、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報であって、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報がデータ抽出手段によって抽出されるように構成し、抽出された放電履歴情報に含まれる電圧から算出される電圧変動量が、二次電池モジュールの劣化状態を弁別する所定の閾値を超えるかが、判定手段によって判定されて、劣化診断が行われるようにしてもよい。満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報に含まれる電圧変動量は、それ以降に放電したときの放電履歴情報に含まれるものと比べ、安定した値が得られる。このため、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化診断をより確度高く行える二次電池の劣化診断システムを提供することができるようになる。
【0202】
また、本実施形態では、二次電池モジュール31を搭載する無人飛行体3a,3b,…,3gから、電圧検出手段によって検出される電圧が管制装置2の送受信部13に受信されるようにして、ステップS124で、電圧検出手段で検出された電圧から、放電開始時の電圧変動量が制御部10によって算出される場合について、説明した。しかし、二次電池モジュール31を搭載する無人飛行体3a,3b,…,3gから管制装置2の送受信部13に、電圧変動量そのものが受信されるように構成してもよい。
【0203】
また、本実施形態では、ステップS125における判定処理で、ステップS124で算出された電圧降下量と所定の閾値とを単に比較することで、電池パック22の劣化状態を判定した。しかし、判定手段を構成する制御部10は、例えば図9のグラフに示す場合では、同グラフにおけるBで示す電池パック22のように、所定期間(例えば0~60秒間)での電圧の降下する電圧変動量が、電圧の降下する電圧変動量についての所定の閾値(例えば7000mV)を超え、且つ、第2閾値(例えば8000mV)未満である場合であって、所定期間(例えば0~60秒間)に続く第2の所定期間(例えば60~120秒間)で、電圧の上昇する電圧変動量が第3閾値(例えば700mV)を超える場合には、二次電池モジュール31は劣化状態にないと、判定するようにしてもよい。
【0204】
この場合、制御部10は、データ抽出手段により抽出された、所定期間での電圧の降下する電圧変動量が、電圧の降下する電圧変動量についての所定の閾値を超え、且つ、第2閾値未満である場合であって、所定期間に続く第2の所定期間で、電圧の上昇する電圧変動量が第3閾値を超える場合に、二次電池モジュールは劣化状態にないと判定する判定手段を構成する。
【0205】
また、上記の第3実施の形態では、管制装置2が、図13のフローチャートに例示される動作を実行している場合について、説明した。しかし、他の実施の形態として、電池パック22が搭載される無人飛行体3a,3b,…,3gが、図13のフローチャートに例示される動作を実行するようにしてもよい。この場合、無人飛行体3a,3b,…,3gのフライトコントローラ21、メモリ21aおよび送受信部23が、管制装置2の制御部10、ストレージ12および送受信部13にそれぞれ対応する役割を果たす。
【0206】
また、他の実施の形態として、各電池パック22が、図13のフローチャートに例示される動作を実行するようにしてもよい。この場合、管制装置2のストレージ12のデータベースに構築されている各電池パック22の使用履歴データと同じ使用履歴データが、電池パック22のBMU33内のメモリ36bに記憶される。BMU33内のCPU36aは、例えば無人飛行体3a,3b,…,3gのフライトコントローラ21からの指示、または、管制装置2からのフライトコントローラ21を介する指示に応答して、図13のフローチャートに例示された動作を実行する。管制装置2の入出力部14に入力される電池パック22を指定する情報は、フライトコントローラ21を介してBMU33内のCPU36aへ伝達される。
【0207】
BMU33内のCPU36aが図13のフローチャートに例示された動作を実行するとき、BMU36内のメモリ36bは、電圧検出手段を構成する電圧検出回路37により検出された電圧値を含む放電履歴情報を記憶する記憶手段を構成する。また、CPU36aは、メモリ36bに記憶されている放電履歴情報を抽出するデータ抽出手段と、データ抽出手段によって抽出された放電履歴情報に含まれる電圧値についての、二次電池モジュール31の放電開始から所定期間での電圧変動量を算出する算出手段と、算出手段によって算出された電圧変動量が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する電圧の降下する電圧変動量についての所定の閾値を超えるかを判定する判定手段とを構成する。
【0208】
本構成によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの電圧が電池パック22内の電圧検出手段によって検出され、電池パック22内のメモリ36bに放電履歴情報として記憶される。メモリ36bに記憶された放電履歴情報は電池パック22内のデータ抽出手段によって抽出され、抽出された放電履歴情報から、二次電池モジュール31の放電開始から所定期間での電圧変動量が、電池パック22内の算出手段によって算出される。電池パック22は、算出手段により算出された電圧変動量が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する電圧変動量についての所定の閾値を超えるかを、判定手段によって判定する。
【0209】
上記のように、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュールの電圧変動量も、二次電池モジュールの劣化診断の評価指標となる。このため、本構成により、二次電池モジュールの電圧の降下する電圧変動量が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超えると、電池パック22内の判定手段によって判定されると、劣化診断の判定対象となる二次電池モジュール31は、電池パック22により劣化状態にあるものと診断される。よって、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化状態を診断することができる電池パック22を提供することができるようになる。
【0210】
また、BMU33内のCPU36aが図13のフローチャートに例示された動作を実行するとき、さらに、CPU36aは、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときにおける二次電池モジュール31の放電開始時の充電率を推定する推定手段を構成する。また、記憶手段を構成するメモリ36bは、推定手段により推定された放電開始時の充電率を放電履歴情報に含めて記憶する。
【0211】
データ抽出手段を構成するCPU36aは、メモリ36bに記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる放電履歴情報を抽出する。判定手段を構成するCPU36aは、データ抽出手段により抽出されたこの放電履歴情報に含まれる電圧から算出される電圧変動量が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する電圧の降下する電圧変動量についての所定の閾値を超えるかを判定する。
【0212】
本構成によれば、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときにおける、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率が、電池パック22内の推定手段によって推定され、放電履歴情報に含めて電池パック22内のメモリ36bに記憶される。そして、メモリ36bに記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる放電履歴情報が、電池パック22内のデータ抽出手段によって抽出される。さらに、抽出された放電履歴情報に含まれる電圧から算出される電圧変動量が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超えるかが、電池パック22内の判定手段によって判定される。したがって、有効範囲を画定する所定の充電率範囲および所定の温度範囲を適切に選定し、劣化診断の対象にする二次電池モジュール31の範囲を限定することで、様々な運用下において二次電池モジュール31の劣化診断が確度高く行える電池パック22を提供することができるようになる。
【0213】
なお、電圧変動量を算出する放電履歴情報は、本構成においても、必ずしも、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報に限られることはない。
【0214】
また、上記の電池パック22において、データ抽出手段を構成するCPU36aは、メモリ36bに記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報であって、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報を抽出する構成にすることが、好ましい。
【0215】
このような変形例の構成によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報であって、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報がデータ抽出手段によって抽出される。最初に放電したときの放電履歴情報から得られる電圧変動量は、それ以降に放電したときの放電履歴情報から得られるものと比べ、安定した値が得られる。このため、様々な運用下においてより確度の高い二次電池モジュール31の劣化診断を行える電池パック22を提供することができるようになる。
【0216】
また、BMU33内のCPU36aが図13のフローチャートに例示された動作、または上記変形例による動作を実行するとき、判定手段を構成するCPU36aは、図9のグラフにおけるBで示す電池パック22のように、所定期間(例えば0~60秒間)での電圧の降下する電圧変動量が、電圧の降下する電圧変動量についての所定の閾値(例えば7000mV)を超え、且つ、第2閾値(例えば8000mV)未満である場合であって、所定期間(例えば0~60秒間)に続く第2の所定期間(例えば60~120秒間)で、電圧の上昇する電圧変動量が第3閾値(例えば700mV)を超える場合には、二次電池モジュール31は劣化状態にないと、判定するようにしてもよい。
【0217】
また、BMU33内のCPU36aが図13のフローチャートに例示された動作、または上記変形例による動作を実行する、上記に記載の電池パック22を無人飛行体3a,3b,…,3gに搭載することで、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化診断を確度高く効率的に行える無人飛行体3a,3b,…,3gを提供できるようになる。
【0218】
[第4実施の形態]
図14は、本発明の第4実施の形態に係る二次電池の劣化診断システムの動作を例示するフローチャートである。
【0219】
本動作は、図1に例示された管制装置2の制御部10により実行され、また、管制装置2のストレージ12に各電池パック22について記憶されている使用履歴データのうちの、図10に示される温度差に関する放電履歴データを基にして行われる。第1実施の形態では、劣化診断の評価指標として、図7に例示した直流抵抗値が着目されたが、第4実施の形態では、簡易的な劣化診断として、図10に例示した放電時の温度差を劣化診断の評価指標として着目する。
【0220】
第4実施の形態では、送受信部13は、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときにおける、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度を含む放電履歴情報を、二次電池モジュール31を搭載する無人飛行体3a,3b,…,3gから受信する。ストレージ12は受信した放電履歴情報を記憶する。
【0221】
図14のステップS131~S133でも、図11のステップS101~S103と同じ処理が行われるため、説明を省略する。
【0222】
ステップS133で、有効範囲に該当する放電履歴データがストレージ12になく、ステップS133の判定結果がNoである場合、指定された電池パック22の劣化診断処理は行われずに、劣化診断処理は終了する。
【0223】
一方、有効範囲に該当する放電履歴データがストレージ12にあり、ステップS133の判定結果がYesである場合、次に、ステップS134で、ステップS133で判定された有効範囲に該当する放電履歴データに含まれる温度から、二次電池モジュール31の放電開始時と放電終了時の温度差が、算出手段を構成する制御部10によって算出される。
【0224】
次に、ステップS135で、ステップS134で算出された温度差が、温度差についての所定の閾値、例えば図10のグラフに示す場合のように40℃を超えるかが、判定手段を構成する制御部10によって判定される。
【0225】
算出された温度差が所定の閾値を超え、ステップS135の判定結果がYesである場合、次に、ステップS136で、制御部10により、指定された電池パック22は劣化状態にあるために「使用不可」であると、判定される。この判定結果は、制御部10により、ストレージ12の、当該有効範囲に該当する放電履歴データに対応する箇所等に記憶されるとともに、入出力部14であるディスプレイにその旨が表示されて、劣化診断処理は終了する。
【0226】
一方、算出された温度差が所定の閾値を超えず、ステップS135の判定結果がNoである場合、次に、ステップS137で、制御部10により、指定された電池パック22は劣化状態にないために「使用可」と、判定される。この判定結果は、制御部10により、ストレージ12の、当該有効範囲に該当する放電履歴データに対応する箇所等に記憶されるとともに、入出力部14であるディスプレイにその旨が表示されて、劣化診断処理は終了する。
【0227】
第4実施の形態に係る二次電池の劣化診断システムによれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュールの温度が、二次電池モジュール31を搭載する無人飛行体3a,3b,…,3gから、管制装置2の送受信部13に受信される。管制装置2の制御部10は、受信した情報をストレージ12に記憶し、記憶した温度を抽出する。そして、算出手段を構成する制御部10は、抽出した温度から、放電開始時と放電終了時との温度差を算出する。電池パック22は、算出手段により算出された温度差が、二次電池モジュールの劣化状態を弁別する温度差についての所定の閾値を超えるかを、判定手段によって判定する。
【0228】
満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュール31の放電開始時と放電終了時の温度差は、二次電池モジュール31の直流内部抵抗と相関があることが、今回、本発明者によって見い出された。二次電池モジュール31の直流内部抵抗は、保存劣化が支配的な二次電池モジュール31だけでなく、サイクル劣化が支配的な二次電池モジュール31にも共通する、劣化診断の評価指標となる。
【0229】
したがって、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュール31の放電開始時と放電終了時の温度差も、劣化診断の評価指標となる。このため、二次電池モジュール31の放電開始時と放電終了時の温度差が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超えると、制御部10によって判定されると、劣化診断の判定対象となる二次電池モジュール31は、劣化診断システムにより劣化状態にあるものと診断される。よって、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化状態を診断することができる劣化診断システムを提供することができるようになる。
【0230】
また、第4実施の形態に係る二次電池の劣化診断システムによれば、ステップS133で、ストレージ12に記憶されている放電履歴情報のうち、充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる放電履歴情報が、制御部10によって抽出される。したがって、有効範囲を画定する所定の充電率範囲および所定の温度範囲を適切に選定し、劣化診断の対象にする二次電池モジュール31の範囲を限定することで、二次電池モジュール31の劣化診断が確度高く行えるようになる。
【0231】
なお、本実施形態では、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報がデータ抽出手段によって抽出される場合について、説明した。しかし、温度差を算出する放電履歴情報は、必ずしも、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報に限られることはない。
【0232】
また、二次電池モジュールを満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に行われる放電は、複数回にわたって行われる場合がある。本実施形態では、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に充電を介することなく複数回放電したときの、いずれかの放電回における放電履歴情報に含まれる、二次電池モジュールの放電開始時と放電終了時の温度差が、算出手段によって算出された。しかし、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報であって、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報がデータ抽出手段によって抽出されるように構成し、抽出された放電履歴情報に含まれる温度から算出される放電開始時と放電終了時の温度差が、二次電池モジュールの劣化状態を弁別する所定の閾値を超えるかが、判定手段によって判定されて、劣化診断が行われるようにしてもよい。満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報に含まれる放電開始時と放電終了時の温度差は、それ以降に放電したときの放電履歴情報に含まれるものと比べ、安定した値が得られる。このため、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化診断をより確度高く行える二次電池の劣化診断システムを提供することができるようになる。
【0233】
また、本実施形態では、二次電池モジュール31を搭載する無人飛行体3a,3b,…,3gから、管制装置2の送受信部13に温度が受信され、受信された温度から、放電開始時と放電終了時の温度差が算出手段によって算出される場合について、説明した。しかし、二次電池モジュール31を搭載する無人飛行体3a,3b,…,3gから、放電開始時と放電終了時の温度差そのものが、管制装置2の送受信部13に受信されるようにして、ステップS134における算出手段による温度差の算出を行わないように構成してもよい。
【0234】
また、本実施形態では、ステップS135における判定処理で、ステップS134で算出された温度差と所定の閾値とを単に比較することで、電池パック22の劣化状態を判定した。しかし、判定手段を構成する制御部10は、連続する所定回数にわたる放電における各温度差が温度差についての所定の閾値を超える場合に、二次電池モジュール31は劣化状態にあると判定するように構成してもよい。
【0235】
本構成によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、放電開始時と放電終了時との二次電池モジュール31の温度差が、連続する所定回数にわたって、温度差についての所定の閾値を超える場合に、判定手段により、二次電池モジュール31は劣化状態にあると判定される。このため、電池パック22の劣化診断をより確度高く行える二次電池の劣化診断システムを提供することができるようになる。
【0236】
なお、上記の第4実施の形態では、管制装置2が、図14のフローチャートに例示される動作を実行している場合について、説明した。しかし、他の実施の形態として、電池パック22が搭載される無人飛行体3a,3b,…,3gが、図14のフローチャートに例示される動作を実行するようにしてもよい。この場合、無人飛行体3a,3b,…,3gのフライトコントローラ21、メモリ21aおよび送受信部23が、管制装置2の制御部10、ストレージ12および送受信部13にそれぞれ対応する役割を果たす。
【0237】
また、他の実施の形態として、各電池パック22が、図14のフローチャートに例示される動作を実行するようにしてもよい。この場合、管制装置2のストレージ12のデータベースに構築されている各電池パック22の使用履歴データと同じ使用履歴データが、電池パック22のBMU33内のメモリ36bに記憶され、BMU33内のCPU36aは、例えば無人飛行体3a,3b,…,3gのフライトコントローラ21からの指示、または、管制装置2からのフライトコントローラ21を介する指示に応答して、図14のフローチャートに例示された動作を実行する。管制装置2の入出力部14に入力される電池パック22を指定する情報は、フライトコントローラ21を介してBMU33内のCPU36aへ伝達される。
【0238】
BMU33内のCPU36aが図14のフローチャートに例示された動作を実行するとき、BMU36内のメモリ36bは、温度検出手段を構成する温度センサ38により検出された温度を含む放電履歴情報を記憶する記憶手段を構成する。また、CPU36aは、メモリ36bに記憶されている放電履歴情報を抽出するデータ抽出手段と、データ抽出手段によって抽出された放電履歴情報に含まれる温度についての、二次電池モジュールの放電開始時と放電終了時との温度差を算出する算出手段と、算出手段によって算出された温度差が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する温度差についての所定の閾値を超えるかを判定する判定手段とを構成する。
【0239】
本構成によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの温度が電池パック22内の温度検出手段によって検出され、電池パック22内のメモリ36bに放電履歴情報として記憶される。メモリ36bに記憶された放電履歴情報は電池パック22内のデータ抽出手段によって抽出され、抽出された放電履歴情報から、二次電池モジュール31の放電開始時と放電終了時の温度差が、電池パック22内の算出手段によって算出される。電池パック22は、算出手段により算出された温度差が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する温度差についての所定の閾値を超えるかを、判定手段によって判定する。
【0240】
上記のように、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、二次電池モジュールの放電開始時と放電終了時の温度差も、二次電池モジュールの劣化診断の評価指標となる。このため、本構成により、二次電池モジュールの放電開始時と放電終了時の温度差が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超えると、電池パック22内の判定手段によって判定されると、劣化診断の判定対象となる二次電池モジュール31は、電池パック22により劣化状態にあるものと診断される。よって、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化状態を診断することができる電池パック22を提供することができるようになる。
【0241】
また、BMU33内のCPU36aが図14のフローチャートに例示された動作を実行するとき、さらに、CPU36aは、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときにおける二次電池モジュール31の放電開始時の充電率を推定する推定手段を構成する。また、記憶手段を構成するメモリ36bは、推定手段により推定された放電開始時の充電率を放電履歴情報に含めて記憶する。
【0242】
データ抽出手段を構成するCPU36aは、メモリ36bに記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる放電履歴情報を抽出する。判定手段を構成するCPU36aは、データ抽出手段により抽出されたこの放電履歴情報に含まれる温度から算出される温度差が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する温度差についての所定の閾値を超えるかを判定する。
【0243】
本構成によれば、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときにおける、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率が、電池パック22内の推定手段によって推定され、放電履歴情報に含めて電池パック22内のメモリ36bに記憶される。そして、メモリ36bに記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュール31の放電開始時の充電率および温度が、所定の充電率範囲および所定の温度範囲により画定される有効範囲に含まれる放電履歴情報が、電池パック22内のデータ抽出手段によって抽出される。さらに、抽出された放電履歴情報に含まれる温度から算出される放電開始時と放電終了時の温度差が、二次電池モジュール31の劣化状態を弁別する所定の閾値を超えるかが、電池パック22内の判定手段によって判定される。したがって、有効範囲を画定する所定の充電率範囲および所定の温度範囲を適切に選定し、劣化診断の対象にする二次電池モジュール31の範囲を限定することで、様々な運用下において二次電池モジュール31の劣化診断が確度高く行える電池パック22を提供することができるようになる。
【0244】
なお、放電開始時と放電終了時の温度差を算出する放電履歴情報は、本構成においても、必ずしも、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報に限られることはない。
【0245】
また、上記の電池パック22において、データ抽出手段を構成するCPU36aは、メモリ36bに記憶されている放電履歴情報のうち、二次電池モジュール31を満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報であって、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報を抽出する構成にすることが、好ましい。
【0246】
このような変形例の構成によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に最初に放電したときの放電履歴情報であって、充電率および温度が有効範囲に含まれる放電履歴情報がデータ抽出手段によって抽出される。最初に放電したときの放電履歴情報から得られる放電開始時と放電終了時の温度差は、それ以降に放電したときの放電履歴情報から得られるものと比べ、安定した値が得られる。このため、様々な運用下においてより確度の高い二次電池モジュール31の劣化診断を行える電池パック22を提供することができるようになる。
【0247】
また、BMU33内のCPU36aが図14のフローチャートに例示された動作、または上記変形例による動作を実行するとき、判定手段を構成するCPU36aは、連続する所定回数にわたる放電における各温度差が温度差についての所定の閾値を超える場合に、二次電池モジュール31は劣化状態にあると判定するように構成してもよい。
【0248】
本構成によれば、満充電状態または部分充電状態にまで充電した後に放電したときの、放電開始時と放電終了時との二次電池モジュール31の温度差が、連続する所定回数にわたって、温度差についての所定の閾値を超える場合に、判定手段により、二次電池モジュール31は劣化状態にあると判定される。このため、電池パック22の劣化診断をより確度高く行える電池パック22を提供することができるようになる。
【0249】
また、BMU33内のCPU36aが図14のフローチャートに例示された動作、または上記変形例による動作を実行する、上記に記載の電池パック22を無人飛行体3a,3b,…,3gに搭載することで、様々な運用下においてリチウムイオン二次電池モジュール31の劣化診断を確度高く効率的に行える無人飛行体を提供できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0250】
本発明は、無停電電源装置、電気車両および無人飛行体といった負荷が想定される電池パックの運用に適用可能であり、また、サイクル劣化が支配的な電池パックと保存劣化が支配的な電池パックの両者に適用されるものであるから、産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0251】
1:管制運航システム
2:管制装置
3a,3b,…,3g:無人飛行体
4:ネットワーク
10:制御部
11:メモリ
12:ストレージ
13:送受信部
14:入出力部
15:バス
21:フライトコントローラ
21a:メモリ
22:電池パック
23:送受信部
26:ESC(Electronic Speed Controller)
27:モータ
28:プロペラ
29:送受信機(プロポ)
31:二次電池モジュール
32:電流センサ
33:制御部
34:リチウムイオン二次電池
36:バッテリ・マネジメント・ユニット(BMU)
36a:CPU
36b:メモリ
36c:通信部
37:電圧検出回路
38:温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14