(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157785
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】グリップ用ゴム組成物およびゴルフクラブグリップ
(51)【国際特許分類】
A63B 60/08 20150101AFI20241031BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20241031BHJP
C08K 5/40 20060101ALI20241031BHJP
C08K 5/44 20060101ALI20241031BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20241031BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20241031BHJP
A63B 53/14 20150101ALI20241031BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20241031BHJP
【FI】
A63B60/08
C08L15/00
C08K5/40
C08K5/44
C08K3/06
C08J5/00 CEQ
A63B53/14 Z
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072362
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】郷司 翔
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
【テーマコード(参考)】
2C002
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
2C002AA06
2C002GG07
2C002MM08
4F071AA12X
4F071AA15X
4F071AA28X
4F071AA34X
4F071AA74
4F071AA78
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4F071AE11
4F071AF05Y
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4F071AG05
4F071AH19
4F071BC01
4F071BC04
4F071BC12
4J002AC111
4J002DA048
4J002EV166
4J002EV277
4J002GC00
(57)【要約】
【課題】基材ゴムとして水素添加カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴムを含有するゴム組成物であって、高温加硫においても、機械的強度に優れた架橋ゴムが得られるゴム組成物を提供する。
【解決手段】グリップ用ゴム組成物は、基材ゴム、加硫剤および加硫促進剤を含有し、前記基材ゴムが、水素添加カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴムを含有し、前記加硫促進剤が、チウラム系加硫促進剤およびスルフェンアミド系加硫促進剤を含有し、前記チウラム系加硫促進剤の含有量が、前記基材ゴム100質量部に対して4質量部以上であり、前記スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量が、前記基材ゴム100質量部に対して0.3質量部以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ゴム、加硫剤および加硫促進剤を含有し、
前記基材ゴムが、水素添加カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴムを含有し、
前記加硫促進剤が、チウラム系加硫促進剤およびスルフェンアミド系加硫促進剤を含有し、
前記チウラム系加硫促進剤の含有量が、前記基材ゴム100質量部に対して4質量部以上であり、
前記スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量が、前記基材ゴム100質量部に対して0.3質量部以上であることを特徴とするグリップ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記グリップ用ゴム組成物を加硫温度185℃で硬化させた架橋ゴムの切断時引張強さが、23MPa以上である請求項1に記載のグリップ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記グリップ用ゴム組成物は、加硫温度185℃で測定した加硫曲線における90%加硫時間(t90)が8min以下である請求項1に記載のグリップ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記グリップ用ゴム組成物を加硫温度185℃で硬化させた架橋ゴムについて、40℃のトルエンに24時間浸漬した際の膨潤率が200%~250%である請求項1に記載のグリップ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記グリップ用ゴム組成物を加硫温度185℃で硬化させた架橋ゴムについて、動的粘弾性装置を用いて、加振周波数10Hz、歪振幅0.05%、引張モードの測定条件で測定した、40℃における貯蔵弾性率(E'40)(MPa)と、25℃における貯蔵弾性率(E'25)(MPa)との比(E'40/E'25)が0.888~0.900である請求項1に記載のグリップ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記グリップ用ゴム組成物が、軟化点が120℃以下の樹脂を含有する請求項1に記載のグリップ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記グリップ用ゴム組成物が、外部滑剤として、リン酸エステル系化合物を含有する請求項1に記載のグリップ用ゴム組成物。
【請求項8】
前記加硫促進剤が、チオウレア系加硫促進剤を含有する請求項1に記載のグリップ用ゴム組成物。
【請求項9】
円筒部を有し、前記円筒部の少なくとも一部が、請求項1~8のいずれか一項に記載のグリップ用ゴム組成物から形成されていることを特徴とするゴルフクラブグリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリップの製造に用いられるグリップ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ用品等に装着されるグリップ(防滑部材)として、ゴム製のグリップが多用されている。このようなグリップにおいて、基材ゴムとして、水素添加カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴムを使用することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、最表層が、(A)基材ゴムおよび(B)軟化点が5℃~120℃である樹脂を含有し、前記(A)基材ゴムが、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムを含有し、前記(B)樹脂が、水素添加ロジンエステル、不均化ロジンエステル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、クマロン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂およびスチレン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である表層用ゴム組成物から形成されていることを特徴とするスポーツ用品用グリップが記載されている(特許文献1(請求項1、段落0013、0019)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素添加カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴムは、不飽和結合量が少ないことで耐候性や耐オゾン性といった性能を発現しているが、一方で不飽和結合量が少ないことで加硫速度が遅く、架橋ゴムの生産性が悪いといった課題があった。また、グリップに水素添加カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴムを使用する場合、架橋ゴムの摩擦係数を向上させる為に樹脂等が添加されるが、この樹脂も加硫速度を遅くする原因となっている。
ここで、ゴム組成物の加硫速度を速める方法としては、加硫温度を高くすることが一般的である。しかしながら、高温での加硫は、得られる架橋ゴムの機械的強度が低下する傾向がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、基材ゴムとして水素添加カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴムを含有するゴム組成物であって、高温加硫においても、機械的強度に優れた架橋ゴムが得られるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することができた本発明のグリップ用ゴム組成物は、基材ゴム、加硫剤および加硫促進剤を含有し、前記基材ゴムが水素添加カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴムを含有し、前記加硫促進剤がチウラム系加硫促進剤およびスルフェンアミド系加硫促進剤を含有し、前記チウラム系加硫促進剤の含有量が前記基材ゴム100質量部に対して4質量部以上であり、前記スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量が前記基材ゴム100質量部に対して0.3質量部以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のグリップ用ゴム組成物は、高温加硫でも、機械的強度に優れたゴム組成物が得られる。よって、グリップ成形時の加硫温度を高く設定し、加硫時間を短縮することができ、グリップの生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のゴルフクラブ用グリップの一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明のゴルフクラブ用グリップを備えたゴルフクラブの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ゴム組成物]
本発明のグリップ用ゴム組成物(以下、単に「ゴム組成物」と称する場合がある。)は、グリップの成形に用いられるものである。
前記ゴム組成物は、基材ゴム、加硫剤および加硫促進剤を含有し、前記基材ゴムが水素添加カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴムを含有し、前記加硫促進剤がチウラム系加硫促進剤およびスルフェンアミド系加硫促進剤を含有し、前記チウラム系加硫促進剤の含有量が前記基材ゴム100質量部に対して4質量部以上であり、前記スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量が前記基材ゴム100質量部に対して0.3質量部以上であることを特徴とする。
【0011】
基材ゴムとして、水素添加カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴムを含有するゴム組成物において、加硫促進剤として、チウラム系加硫促進剤およびスルフェンアミド系加硫促進剤を所定量配合することで、高温で加硫を行っても、機械的強度に優れた架橋ゴムを得ることができる。
【0012】
なお、高温加硫でも得られる架橋ゴムの機械的強度が低下しない理由は必ずしも明らかでないが、以下のように考えられる。不飽和結合量が少ない水素添加カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴムを加硫する際に、加硫温度を高めた場合、分子内架橋や、加硫促進剤の架橋前駆体がゴム鎖にぶら下がったままで架橋点とならない、所謂ペンダントの生成が増加する。そのため、架橋密度が低下し、架橋ゴムの強度が低下すると考えられる。本発明のグリップ用ゴム組成物では、塩基性であるチウラム系加硫促進剤と酸性であるスルフェンアミド系加硫促進剤を所定量配合することで、これらの加硫促進剤が互いに活性化し合い、加硫速度が高められる。これによって、高温加硫下においても、架橋密度と強度低下の原因となる分子内架橋やペンダント形成を低減することができ、架橋密度低下に伴う機械的強度の低下を防ぐことができると考えられる。
【0013】
(基材ゴム)
前記ゴム組成物は、基材ゴムを含有する。前記ゴム組成物中の基材ゴムの含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは55質量%以上である。
【0014】
前記基材ゴムは、水素添加カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴム(以下、「HXNBR」と称する場合がある。)を含有する。前記HXNBRとは、カルボキシ基を有する単量体と、アクリロニトリルと、ブタジエンとの共重合体の水素添加物である。なお、前記HXNBRは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記HXNBRのアクリロニトリル含有率は、15質量%以上が好ましく、より好ましくは18質量%以上、さらに好ましくは21質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。アクリロニトリル含有率が15質量%以上であればグリップの耐摩耗性が良好となり、50質量%以下であれば寒冷地や冬場におけるグリップの触感が良好となる。
【0016】
前記HXNBRにおいて、カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。前記HXNBRにおいて、カルボキシ基を含有する単量体の含有率は、1.0質量%以上が好ましく、より好ましくは2.0質量%以上、さらに好ましくは3.5質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。カルボキシ基を含有する単量体の含有率が1.0質量%以上であればグリップの耐摩耗性がより良好となり、30質量%以下であれば寒冷地や冬場におけるグリップの触感が良好となる。
【0017】
前記HXNBRにおいて、カルボキシ基含有量は、1.0質量%以上が好ましく、より好ましくは2.0質量%以上、さらに好ましくは3.5質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。カルボキシ基含有量が1.0質量%以上であればグリップの耐摩耗性がより良好となり、30質量%以下であれば寒冷地や冬場におけるグリップの触感が良好となる。
【0018】
前記HXNBRの二重結合含有量は、0.09mmol/g以上が好ましく、より好ましくは0.2mmol/g以上であり、2.5mmol/g以下が好ましく、より好ましくは2.0mmol/g以下、さらに好ましくは1.5mmol/g以下である。二重結合含有量が0.09mmol/g以上であれば成形時に加硫しやすくなりグリップの引張強度がより向上し、2.5mmol/g以下であればグリップの耐久性(耐候性)および引張強さがより良好となる。二重結合含有量は、共重合体中のブタジエン含有率や、共重合体への水素添加量により調整できる。
【0019】
前記基材ゴム中のHXNBRの含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。また、ゴム組成物が、基材ゴムとしてHXNBRのみを含有することも好ましい。基材ゴム中のHXNBRの含有率が高い程、得られるグリップの耐摩耗性、耐久性(耐候性)および引張強さがより良好となる。
【0020】
前記基材ゴムは、本発明の効果を損なわない程度にHXNBR以外の他のゴム成分を含有してもよい。前記他のゴム成分としては、天然ゴム(NR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)、カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴム(XNBR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリウレタンゴム(PU)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)等が挙げられる。これらの基材ゴムは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
(加硫剤)
前記加硫剤としては、硫黄系加硫剤、有機過酸化物を使用できる。前記加硫剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記硫黄系加硫剤としては単体硫黄、硫黄ドナー型化合物が挙げられる。前記単体硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド状硫黄、不溶性硫黄が挙げられる。前記硫黄ドナー型化合物としては、4,4’-ジチオビスモルホリン等が挙げられる。
前記有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-ジイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。前記加硫剤としては、硫黄系加硫剤が好ましく、単体硫黄がより好ましい。
【0022】
前記加硫剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.4質量部以上、さらに好ましくは0.6質量部以上であり、4.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.5質量部以下、さらに好ましくは3.0質量部以下である。前記加硫剤の含有量が0.2質量部以上であれば加硫がより進行しやすくなり、4.0質量部以下であればスコーチの発生を低減できる。
【0023】
(加硫促進剤)
前記ゴム組成物は、加硫促進剤として、チウラム系加硫促進剤およびスルフェンアミド系加硫促進剤を含有する。チウラム系加硫促進剤およびスルフェンアミド系加硫促進剤を含有することで、高温で加硫を行っても、機械的強度に優れた架橋ゴムを得ることができる。
【0024】
チウラム系加硫促進剤
前記チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド等が挙げられる。前記チウラム系加硫促進剤は、単独で使用してもよいが、ブルーム防止の観点から2種以上を併用することが好ましい。
【0025】
前記チウラム系加硫促進剤の含有量は、前記基材ゴム100質量部に対して、4質量部以上が好ましく、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは6質量部以上であり、9質量部以下が好ましく、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。前記チウラム系加硫促進剤の含有量が、上記範囲内であれば二重結合量が少ない基材ゴムにおいても、耐スコーチ性を維持しつつ、より一層の高速加硫を実現することができる。
【0026】
スルフェンアミド系加硫促進剤
前記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾ-ルスルフェンアミド(BBS)等が挙げられる。前記スルフェンアミド系加硫促進剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量は、前記基材ゴム100質量部に対して、0.3質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは0.7質量部以上であり、2.5質量部以下が好ましく、より好ましくは2.0質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部以下である。前記スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量が、上記範囲内であればブルームの発生をより低減できる。
【0028】
前記ゴム組成物中のチウラム系加硫促進剤とスルフェンアミド系加硫促進剤との合計含有量は、前記基材ゴム100質量部に対して、4.5質量部以上が好ましく、より好ましくは5.5質量部以上、さらに好ましくは6.5質量部以上であり、11.5質量部以下が好ましく、より好ましくは10.0質量部以下、さらに好ましくは8.5質量部以下である。前記合計含有量が4.5質量部以上であれば二重結合量が少ない基材ゴムでも加硫速度をより高めることができ、11.5質量部以下であれば二重結合量が少ないゴムにおいて耐スコーチ性がより良好となる。
【0029】
前記ゴム組成物中のチウラム系加硫促進剤とスルフェンアミド系加硫促進剤との質量比(チウラム系加硫促進剤/スルフェンアミド系加硫促進剤)は1.5以上が好ましく、より好ましくは3.0以上、さらに好ましくは4.5以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。前記質量比(チウラム系加硫促進剤/スルフェンアミド系加硫促進剤)が1.5以上であれば二重結合量が少ない基材ゴムでも加硫速度をより高めることができ、30以下であれば高温かつ高速での加硫において得られる架橋ゴムの強度の低下をより抑制できる。
【0030】
チオウレア系加硫促進剤
前記ゴム組成物は、加硫促進剤として、さらにチオウレア系加硫促進剤を含有することが好ましい。前記チオウレア系加硫促進剤を含有することで、チウラム系加硫促進剤を活性化し、加硫時間をより短縮することができる。
前記チオウレア系加硫促進剤としては、トリメチルチオ尿素、N,N'-ジエチルチオ尿素等が挙げられる。前記チオウレア系加硫促進剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記ゴム組成物がチオウレア系加硫促進剤を含有する場合、ゴム組成物中のチウラム系加硫促進剤とチオウレア系加硫促進剤との質量比(チウラム系加硫促進剤/チオウレア系加硫促進剤)は4以上が好ましく、より好ましくは6以上、さらに好ましくは8以上であり、20以下が好ましく、より好ましくは18以下、さらに好ましくは16以下である。前記質量比(チウラム系加硫促進剤/チオウレア系加硫促進剤)が4以上であれば得られる架橋ゴムの強度がより向上し、20以下であればチオウレア系促進剤によるチウラム系促進剤の活性化がより向上する。
【0032】
前記ゴム組成物は、本発明の効果を損なわない程度に他の加硫促進剤を含有してもよい。他の加硫促進剤としては、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ベンゾチアゾールジスルフィド等のチアゾール系;ジフェニルグアニジン(DPG)等のグアニジン系;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnPDC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系等が挙げられる。
【0033】
前記基材ゴム中の加硫促進剤の合計含有量は、前記基材ゴム100質量部に対して、4.3質量部以上が好ましく、より好ましくは5.0質量部以上、さらに好ましくは6.0質量部以上であり、12質量部以下が好ましく、より好ましくは11.5質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。前記加硫促進剤の合計含有量が上記範囲内であればブルーム等の発生をより抑制できる。
【0034】
(加硫活性剤)
前記ゴム組成物は、さらに加硫活性剤を含有してもよい。
前記加硫活性剤としては、金属酸化物、金属過酸化物、脂肪酸などが挙げられる。前記金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛などが挙げられる。前記金属過酸化物としては、過酸化亜鉛、過酸化クロム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウムなどが挙げられる。前記脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などが挙げられる。これらの加硫活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記加硫活性剤の合計使用量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは0.6質量部以上、さらに好ましくは0.7質量部以上であり、10.0質量部以下が好ましく、より好ましくは9.5質量部以下、さらに好ましくは9.0質量部以下である。
【0036】
(樹脂)
前記ゴム組成物は、さらに軟化点が120℃以下の樹脂(以下、単に「樹脂」と称する場合がある。)を含有してもよい。軟化点が120℃以下の樹脂を含有することで、得られる架橋ゴムが柔らかくなり、変形時の応力が小さくなる。なお、前記樹脂を配合すると加硫に要する時間が長くなる傾向がある。しかし、本発明のゴム組成物では、加硫促進剤としてチウラム系加硫促進剤とスルフェンアミド系加硫促進剤を所定量含有するため、樹脂を配合した場合でも、短時間での加硫が可能である。
【0037】
前記樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ロジンエステル、クマロン樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられる。
【0038】
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、80質量%以下が好ましく、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。酢酸ビニル含有率が10質量%以上であればグリップのフィーリングがより良好となり、80質量%以下であればグリップの耐摩耗性がより向上する。
【0039】
前記ロジンエステルとは、前記ロジンとアルコール類とを反応させて得られるエステル化合物である。ロジンとは、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸を含有する天然樹脂である。前記アルコール類としては、n-オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等の1価のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の2価のアルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価のアルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の4価のアルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビトール等の6価のアルコールが挙げられる。これらの中でも2価以上の多価アルコールが好ましく、グリセリンがより好ましい。
【0040】
前記ロジンエステルには、水素添加ロジンエステル、不均化ロジンエステルが含まれる。前記水素添加ロジンエステルおよび不均化ロジンエステルは、いわゆる安定化ロジンエステルである。
【0041】
前記水素添加ロジンエステルは、ロジエンエステルのロジンに由来する部分が水素添加されているエステル化合物である。水素添加ロジンエステルは、ロジンを水素添加した後、この水素添加ロジンとアルコール類とを反応させるか、あるいは、ロジンとアルコール類とを反応させた後、得られたロジンエステルを水素添加することで得られる。
【0042】
前記不均化ロジンエステルは、ロジンエステルのロジンに由来する部分が不均化されているエステル化合物である。不均化ロジンエステルは、ロジンを不均化した後、この不均化ロジンとアルコール類とを反応させるか、あるいは、ロジンとアルコール類とを反応させた後、得られたロジンエステルを不均化することで得られる。
【0043】
前記クマロン樹脂は、単量体成分としてクマロン類を含有する樹脂である。前記クマロン樹脂としては、クマロン・インデン樹脂が好ましい。前記クマロン・インデン樹脂は、単量体成分としてクマロン類およびインデン類を含有し、全単量体成分中のクマロン類およびインデン類の合計含有率が50質量%以上の共重合体である。前記クマロン類としては、クマロン、メチルクマロン等が挙げられる。全単量体成分中のクマロン類の含有率は1質量%~20質量%が好ましい。前記インデン類としては、インデン、メチルインデン等が挙げられる。全単量体成分中のインデン類の含有率は40質量%~95質量%が好ましい。前記クマロン・インデン樹脂は、クマロン類、インデン類以外の他の単量体成分を含有してもよい。前記他の単量体成分としては、スチレン、ビニルトルエン、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。
【0044】
前記フェノール樹脂としては、例えば、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物が挙げられる。フェノール類としては、フェノール、m-クレゾール等が挙げられる。また、前記フェノール樹脂には、フェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾール;酸触媒で縮合反応させて得られるノボラック等が含まれる。さらに、前記フェノール樹脂には、ロジンにフェノール類を酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂等も含まれる。
【0045】
前記ゴム組成物が樹脂を含有する場合、樹脂の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上であり、50質量部以下が好ましく、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。前記樹脂の含有量が、10質量部以上であれば得られるグリップのフィーリングがより良好となり、50質量部以下であればグリップの耐摩耗性がより向上する。
【0046】
(加工助剤)
前記ゴム組成物は、加工助剤を含有することも好ましい。前記加工助剤としては、内部滑剤、外部滑剤等が挙げられる。
前記内部滑剤としては、鉱物油、可塑剤が挙げられる。前記鉱物油としては、パラフィンオイル、ナフテンオイル、アロマチックオイル等が挙げられる。前記可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルセパケート、ジオクチルアジペート等が挙げられる。
前記外部滑剤としては、リン酸エステル系化合物、長鎖アルキルアミン系化合物等が挙げられる。
前記ゴム組成物は、外部滑剤としてリン酸エステル系化合物を含有することが好ましい。外部滑剤としてリン酸エステル系化合物を含有することで、少量添加でも混練り時の装置内付着を防ぐことができ、均質なゴム組成物を得ることができる。
【0047】
前記ゴム組成物が外部滑剤を含有する場合、外部滑剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.15質量部以上、さらに好ましくは0.25質量部以上であり、1.0質量部以下が好ましく、より好ましくは0.75質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。前記外部滑剤の含有量が上記範囲内であれば、滑剤としての効果が高く、かつ、ブルームの発生を抑制できる。
【0048】
前記ゴム組成物は、さらに必要に応じて補強材、老化防止剤、スコーチ防止剤、着色剤等を配合してもよい。
【0049】
前記補強材としては、カーボンブラック、シリカ等が挙げられる。前記ゴム組成物が補強材を含有する場合、補強材の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、2.0質量部以上が好ましく、より好ましくは3.0質量部以上、さらに好ましくは4.0質量部以上であり、50質量部以下が好ましく、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。前記補強材の含有量が2.0質量部以上であれば加硫後ゴムの着色を隠蔽することができ、50質量部以下であれば得られるグリップのフィーリングが良好となる。
【0050】
前記老化防止剤としては、イミダゾール類、アミン類、フェノール類、チオウレア類等が挙げられる。前記イミダゾール類としては、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(NDIBC)、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩等が挙げられる。アミン類としては、フェニル-α-ナフチルアミン等が挙げられる。フェノール類としては、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)(MBMBP)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール等が挙げられる。チオウレア類としては、トリブチルチオ尿素、1,3-ビス(ジメチルアミノプロピル)-2-チオ尿素等が挙げられる。これらの老化防止剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記ゴム組成物が老化防止剤を含有する場合、老化防止剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.4質量部以上であり、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは4.8質量部以下、さらに好ましくは4.6質量部以下である。
【0052】
前記スコーチ防止剤としては、有機酸、ニトロソ化合物等が挙げられる。前記有機酸としては、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、安息香酸、サリチル酸、リンゴ酸等が挙げられる。前記ニトロソ化合物としては、N-ニトロソ・ジフェニルアミン、N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド、スルホンアミド誘導体、ジフェニルウレア、ビス(トリデシル)ペンタエリスルトールジホスファイト、2-メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0053】
前記ゴム組成物は、マイクロバルーンを含有してもよい。ゴム組成物にマイクロバルーンを配合することで、多孔質構造のグリップが得られる。前記マイクロバルーンとしては、有機マイクロバルーン、無機マイクロバルーンのいずれも使用できる。有機マイクロバルーンとしては、熱可塑性樹脂からなる中空粒子、熱可塑性樹脂の殻に低沸点炭化水素が内包された樹脂カプセル等が挙げられる。
【0054】
前記ゴム組成物は、従来公知の方法で調製できる。例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロール等の混練機を用いて、各原料を混練りすることで調製できる。なお、ゴム組成物がマイクロバルーンを含有する場合は、マイクロバルーン以外の成分を予め混練した後、この混練物とマイクロバルーンとを混練することが好ましい。前記混練物とマイクロバルーンとを混練する際の材料温度は、マイクロバルーンの膨張開始温度未満の温度に設定することが好ましい。
【0055】
(加硫特性)
前記ゴム組成物は、加硫温度185℃で測定した加硫曲線における90%加硫時間(t90)が、8min以下であることが好ましく、より好ましくは7min以下、さらに好ましくは6min以下、特に好ましくは5min以下である。前記90%加硫時間が8min以下であれば天然ゴム等の不飽和結合が多い基材ゴムと同等のサイクルでグリップを製造することができ、生産性が高くなる。前記90%加硫時間の下限は特に限定されないが、通常3minである。
【0056】
前記ゴム組成物は、加硫温度185℃で測定した加硫曲線における5%加硫時間(t5)が、0.5min以上であることが好ましく、より好ましくは0.7min以上、さらに好ましくは0.9min以上である。前記5%加硫時間が0.5min以上であれば金型へのゴム組成物の仕込み時にスコーチすることがより抑制される。前記5%加硫時間の上限は特に限定されないが、通常2minである。
【0057】
前記ゴム組成物は、加硫温度185℃で測定した加硫曲線におけるトルクの最大値(MH)が、0.76N・m以上であることが好ましく、より好ましくは0.78N・m以上、さらに好ましくは0.80N・m以上であり、2.0N・m以下であることが好ましく、より好ましくは1.8N・m以下、さらに好ましくは1.6N・m以下である。前記最大値(MH)が上記範囲内であれば得られるグリップのフィーリングと強度を両立できる。
【0058】
前記90%加硫時間および5%加硫時間は、加硫温度185℃で測定した加硫曲線から求める。具体的には、加硫曲線におけるトルクの最小値をML、最大値をMHとし、その差をMEとしたとき、トルクがML+90%ME、ML+5%MEとなるのに要した時間をそれぞれ90%加硫時間、5%加硫時間とした。
【0059】
(架橋ゴム)
前記ゴム組成物は、加硫温度185℃で硬化させた架橋ゴムが後述する物性を有することが好ましい。なお、ゴム組成物を加硫する際の加硫時間は、加硫曲線における90%加硫時間(t90)に2分間を追加した時間とした。
【0060】
前記ゴム組成物を加硫温度185℃で硬化させた架橋ゴムは、切断時引張強さが、23MPa以上であることが好ましく、より好ましくは24MPa以上、さらに好ましくは25MPa以上である。切断時引張強さが23MPa以上であればグリップの耐摩耗性がより良好となる。前記ゴム組成物を加硫温度185℃で硬化させた架橋ゴムの切断時引張強さの上限は特に限定されないが、通常40MPaである。
【0061】
前記ゴム組成物を加硫温度185℃で硬化させた架橋ゴムは、密度が、1.00g/cm3以上であることが好ましく、より好ましくは1.02g/cm3以上、さらに好ましくは1.04g/cm3以上であり、1.3g/cm3以下が好ましく、より好ましくは1.25g/cm3以下、さらに好ましくは1.2g/cm3以下である。密度が上記範囲内であれば得られるグリップの重量が従来品のグリップと同程度となり、従来品と問題なく取り換えることができる。
【0062】
前記ゴム組成物を加硫温度185℃で硬化させた架橋ゴムは、40℃のトルエンに24時間浸漬した際の膨潤率が、200%以上が好ましく、より好ましくは210%以上、さらに好ましくは220%以上であり、250%以下が好ましく、より好ましくは245%以下、さらに好ましくは240%以下である。前記膨潤率が200%以上であればグリップにシャフトを挿入する際に、挿入液を吸収することでシャフトとの接着性が向上し、250%以下であれば架橋ゴムの架橋密度がより良好となる。膨潤率は、後述する測定方法により測定する。
【0063】
前記架橋ゴムの硬度(ショアA硬度)は、30以上が好ましく、より好ましくは40以上、さらに好ましくは45以上であり、80以下が好ましく、より好ましくは70以下、さらに好ましくは60以下である。架橋ゴムの硬度(ショアA硬度)が30以上であればグリップの機械的強度がより向上し、80以下であればグリップが硬くなりすぎず、掴んだ時のフィーリングがより良好となる。
【0064】
前記ゴム組成物を加硫温度185℃で硬化させた架橋ゴムは、動的粘弾性装置を用いて、加振周波数10Hz、歪振幅0.05%、引張モードの測定条件で測定した、40℃における損失正接(tanδ40)が、0.154以下であることが好ましく、より好ましくは0.153以下、さらに好ましくは0.152以下である。前記損失正接(tanδ40)が0.154以下であれば架橋ゴムの架橋密度がより良好となる。前記損失正接(tanδ40)の下限は特に限定されないが、0.100以上が好ましく、より好ましくは0.120以上である。
【0065】
前記ゴム組成物を加硫温度185℃で硬化させた架橋ゴムは、動的粘弾性装置を用いて、加振周波数10Hz、歪振幅0.05%、引張モードの測定条件で測定した、40℃における貯蔵弾性率(E'40)が、4.20MPa以上が好ましく、より好ましくは4.22MPa以上、さらに好ましくは4.24MPa以上であり、6.00MPa以下が好ましく、より好ましくは5.50MPa以下、さらに好ましくは5.00MPa以下である。前記貯蔵弾性率(E'40)が4.20MPa以上であれば架橋の進行がより良好であり、6.00MPa以下であれば得られるグリップのフィーリングがより良好となる。
【0066】
前記ゴム組成物を加硫温度185℃で硬化させた架橋ゴムは、動的粘弾性装置を用いて、加振周波数10Hz、歪振幅0.05%、引張モードの測定条件で測定した、25℃における損失正接(tanδ25)が、0.201以上であることが好ましく、より好ましくは0.202以上、さらに好ましくは0.203以上である。前記損失正接(tanδ25)が0.201以上であれば得られるグリップの防滑性能がより良好となる。前記損失正接(tanδ25)の下限は特に限定されないが、0.300以下が好ましく、より好ましくは0.250以下である。
【0067】
前記ゴム組成物を加硫温度185℃で硬化させた架橋ゴムは、動的粘弾性装置を用いて、加振周波数10Hz、歪振幅0.05%、引張モードの測定条件で測定した、25℃における貯蔵弾性率(E'25)が、4.72MPa以上が好ましく、より好ましくは4.73MPa以上、さらに好ましくは4.74MPa以上であり、7.00MPa以下が好ましく、より好ましくは6.50MPa以下、さらに好ましくは6.00MPa以下である。前記貯蔵弾性率(E'25)が4.72MPa以上であれば架橋ゴムの架橋密度がより良好となり、7.00MPa以下であれば得られるグリップのフィーリングがより良好となる。
【0068】
前記ゴム組成物を加硫温度185℃で硬化させた架橋ゴムは、前記40℃における貯蔵弾性率(E'40)(MPa)と、前記25℃における貯蔵弾性率(E'25)(MPa)との比(E'40/E'25)が、0.888以上が好ましく、より好ましくは0.889以上、さらに好ましくは0.890以上、特に好ましくは0.891以上であり、0.900以下が好ましく、より好ましくは0.898以下、さらに好ましくは0.896以下である。前記比(E'40/E'25)が0.889以上であれば架橋ゴムの架橋密度がより良好となり、0.900以下であれば得られるグリップのフィーリングがより良好となる。
【0069】
本発明のグリップ用ゴム組成物は、グリップの成形に使用される。前記グリップ用ゴム組成物は、硬化後の耐摩耗性や引張強度が優れるため、ゴルフクラブグリップに好適に使用できる。
【0070】
[ゴルフクラブグリップ]
本発明のゴルフクラブグリップは、円筒部を有し、少なくとも一部が前記グリップ用ゴム組成物から形成されていることを特徴とする。すなわち、円筒部の少なくとも一部が、前記グリップ用ゴム組成物を加硫させた架橋ゴムから構成されている。
【0071】
前記ゴルフクラブグリップは、シャフトが挿入される円筒部を有する。前記円筒部の構成としては、単層構造、2層構造、3層構造等が挙げられる。前記円筒部が単層構造である場合、円筒部全体が前記ゴム組成物から形成されている。前記円筒部が多層構造の場合、少なくとも1層が前記ゴム組成物から形成されている。なお、前記円筒部が多層構造の場合、少なくとも最外層が前記ゴム組成物から形成されていることが好ましい。
【0072】
前記ゴルフクラブグリップの円筒部は、単層構造が好ましい。前記グリップ用ゴム組成物は高温での加硫が可能であるため、肉厚な部材でも短時間で成形が可能である。そのため、前記グリップ用ゴム組成物を用いて単層構造の円筒部を製造すれば、構造が簡素であり、かつ、加硫時間も短縮できるため、グリップの生産性が一層向上する。
【0073】
前記円筒部は、中実構造でもよいし、多孔質構造としてもよい。円筒部が中実構造であれば、グリップの機械的強度が高くなり、円筒部が多孔質構造であればグリップの軽量化が可能となる。
【0074】
ゴルフクラブグリップは、前記ゴム組成物を、金型内で成形することで得られる。成型方法としては、プレス成形、射出成形が挙げられる。また、内層と外層とを有するゴルフクラブ用グリップは、例えば、前記外層用ゴム組成物から形成した未加硫のゴムシートと、前記内層用ゴム組成物から形成した未加硫のゴムシートとの積層物を、金型内でプレス成形することで得られる。
【0075】
[ゴルフクラブ]
本発明には、前記ゴルフクラブグリップを用いたゴルフクラブも含まれる。前記ゴルフクラブは、シャフトと、前記シャフトの一端に取り付けられたヘッドと、前記シャフトの他端に取り付けられたグリップとを備え、前記グリップが前記ゴルフクラブ用グリップである。前記シャフトは、ステンレス鋼製や炭素繊維強化樹脂製が使用できる。前記ヘッドとしては、ウッド型、ユーティリティ型、アイアン型が挙げられる。前記ヘッドを構成する材料は、特に限定されるものではなく、例えばチタン、チタン合金、炭素繊維強化プラスチック、ステンレス鋼、マルエージング鋼、軟鉄等が挙げられる。
【0076】
以下、図面を参照して、ゴルフクラブグリップおよびゴルフクラブについて説明する。
図1は、ゴルフクラブグリップの一例を示す斜視図である。グリップ1は、シャフトが挿嵌される円筒部2と、前記円筒部の後端の開口を覆うように一体形成されたキャップ部3とを有する。前記円筒部2は、単層構造である。そして、前記円筒部2の厚みは、先端部から後端部に向かって徐々に厚くなるように形成されている。
図1に示したグリップ1では、キャップ部3は円筒部2と同様のゴム組成物から形成されている。
【0077】
図2は、本発明のゴルフクラブグリップを備えたゴルフクラブの一例を示す斜視図である。ゴルフクラブ4は、シャフト5と、前記シャフト5の一端に取り付けられたヘッド6と、前記シャフト4の他端に取り付けられたグリップ1とを備えている。グリップ1の円筒部2にシャフト5の後端が嵌入されている。
【実施例0078】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0079】
[評価方法]
(1)アクリロニトリル含有率
アクリロニトリル含有率は、水素添加前のアクリロニトリル-ブタジエンゴムについて、ISO 24698-1(2008)により測定した。
【0080】
(2)二重結合含有量(mmol/g)
二重結合含有量は、共重合体中のブタジエン含有率(質量%)と残存二重結合量(%)から算出した。前記残存二重結合量とは、水素添加前の共重合体中の二重結合と水素添加後の共重合体中の二重結合との質量比(水素添加後の二重結合量/水素添加前の二重結合量)であり、赤外分光法により測定できる。アクリロニトリル-ブタジエンゴムが、アクリロニトリル-ブタジエン2元共重合体の場合、共重合体中のブタジエン含有率は100からアクリロニトリル含有率(質量%)を減ずることで求められる。
二重結合量={ブタジエン含有率/54}×残存二重結合量×10
【0081】
(3)カルボキシ基を含有する単量体の含有率
水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴムを1g量りとり、クロロホルム50mLに溶解させ、ここにチモールブルー指示薬を滴下した。この溶液を攪拌しながら、水酸化ナトリウムの0.05mol/Lメタノール溶液を滴下し、最初に変色するまでの滴下量(VmL)を記録した。ブランクとして水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴムを含有しないクロロホルム50mLについても、チモールブルーを指示薬として、水酸化ナトリウムの0.05mol/Lメタノール溶液を滴下し、最初に変色するまでの滴下量(BmL)を記録した。下記式により、カルボキシ基含有率を算出した。
カルボキシ基含有単量体含有率={0.05×(V-B)×PM}/(10×X)
(式中、V:試験溶液の水酸化ナトリウム溶液滴下量(mL)、B:ブランクの水酸化ナトリウム溶液滴下量(mL)、PM:カルボキシ基含有単量体の分子量、X:カルボキシ基含有単量体の価数)
【0082】
(4)加硫試験
ゴム組成物について、加硫試験機(JSRトレーディング株式会社製、キュラストメーター(登録商標)7型)を用いて、表2に記載の加硫温度で加硫試験を行った。JIS K6300-2(2001)の「振動式加硫試験機による加硫特性の求め方」の「9.ダイ加硫試験A法」に従い、下ダイからゴム試験片に破壊しない程度の低振幅の正弦波振動を与え、試験片から上ダイに伝わるトルクを未加硫から過加硫に至るまで測定した。測定条件は、ねじり振動数を毎分100回、振幅角を1°、測定時間30分間とした。得られた加硫曲線から、トルクの最小値(ML)および最大値(MH)、ならびに、5%加硫時間(t5)、90%加硫時間(t90)を求めた。
【0083】
(5)硬度(ショアA硬度)
ゴム組成物を用いて、表2に記載の条件で加硫して、厚み2mmのシートを作製した。このシートを、23℃で2週間保存し、測定基板等の影響が出ないように、3枚重ねた状態で、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて硬度を測定した。検出器は、「Shore A」を用いた。
【0084】
(6)密度(g/cm3)
ゴム組成物を用いて、表2に記載の条件で加硫して、13cm角で厚み2mmのシートを作製した。このシートから2cm角に打ち抜いて、試験片を作製した。得られた試験片の密度を、自動比重計(エムエステック社製、SP-GR1、アルキメデスの原理)を用いて測定した。
【0085】
(7)膨潤率
ゴム組成物を用いて、表2に記載の条件で加硫して、13cm角で厚み2mmのシートを作製した。このシートから2cm角に打ち抜いて、試験片を作製した。得られた試験片について、自動比重計(エムエステック社製、SP-GR1、アルキメデスの原理)を用いて、40℃のトルエンに24時間浸漬した際の膨潤率を測定した。なお、膨潤率は下記式により求められる。
膨潤率(%)={(膨潤後体積-膨潤前体積)/膨潤前体積}×100
【0086】
(8)切断時引張強さ(MPa)
切断時引張強さは、JIS K 6251(2017)に準拠して測定した。具体的には、ゴム組成物を用いて、表2に記載の条件で加硫して、厚さ1mmのシートを作製し、これをダンベル形状(ダンベル状3号形)に打ち抜いて試験片を作製した。引張試験測定装置(島津製作所社製、オートグラフAGS-D)を用いて物性を測定した(測定温度23℃、引張速度500mm/分)。そして、試験片が切断したときに記録される引張力を試験片の試験前の断面積で除することで切断時引張強さを算出した。
【0087】
(9)粘弾性
損失正接(tanδ)、貯蔵弾性率(E')は、動的粘弾性測定装置(ユービーエム社
製、Rheogel-E4000)を用いて測定した。
試験試料は、グリップを厚さ方向に2mmの厚さにスライスし、これを所定サイズに打ち抜くことにより作製した。測定条件は、温度;-100℃~100℃、昇温速度;3℃/min、測定間隔;3℃、周波数;10Hz、歪振幅;10%、治具;引張り、試料形状;幅4mm、厚さ2mm、長さ40mmとした。動的粘弾性測定により得られた粘弾性スペクトルから25℃、40℃におけるtanδおよびE'を求めた。
【0088】
[ゴム組成物の調製]
表1に示す配合で各原料を混練し、ゴム組成物を調製した。なお、ゴム組成物は、全ての原料を密閉式混練機で混練した。
【0089】
【0090】
表1で用いた材料は下記のとおりである。
HXNBR:水素添加カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴム(ARANXEO社製、Therban XT VPKA 8889(残存二重結合量3.5%、アクリロニトリル含有率33.0質量%、二重結合含有量0.40mmol/g、カルボキシ基含有単量体含有率5.0質量%))
硫黄:鶴見化学工業社製、5%油入微粉硫黄(200メッシュ)
サンセラー(登録商標)TBzTD:三新化学工業社製、テトラベンジルチウラムジスルフィド
ノクセラー(登録商標)TOT-N:大内新興化学工業社製、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド
ノクセラーEUR:大内新興化学工業社製、N,N'-ジエチルチオ尿素
サンセラーNS:三新化学工業社製、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド
過酸化亜鉛:struktol社製、struktol ZP 1014(過酸化亜鉛含有量29質量%)
EVA:エチレン-酢酸ビニル共重合体(ARANXEO社製、Levapren500(酢酸ビニル含有率50質量%、軟化点100±5℃、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))27)
SYLVATAC RE-5S:Arizona Chemical製、ロジンエステル(融点25℃以下)
カーボンブラック:東海カーボン社製、シースト(SEAST)(登録商標)3
vanfre VAM:Vanderbilt Chemicals社製、ポリオキシエチレン-オクタデシルエーテル-リン酸
【0091】
[グリップの作製]
ゴム組成物を、キャビティ面に溝パターンを備えた金型に投入した。そして、表2に記載の条件で加硫してゴムに架橋反応を起こさせ、ゴルフクラブ用グリップを得た。グリップについて粘弾性特性の評価を行い、結果を表2に示した。
【0092】
【0093】
ゴム組成物No.Aは、加硫促進剤として、チウラム系加硫促進剤とチオウレア系加硫促進剤を含有し、スルフェンアミド系加硫促進剤を含有しない。このゴム組成物No.Aを用いた場合、加硫温度165℃および加硫温度175℃で加硫した架橋ゴムNo.1および2は切断時引張強さが26MPa以上であり機械的特性が優れている。しかしながら、加硫温度165℃での90%加硫時間は11min、加硫温度175℃での90%加硫時間は5.9minであり、加硫に長時間を有している。また、このゴム組成物No.Aは、加硫温度185℃での90%加硫時間は3.5minであり、加硫速度が速くなる。しかしながら、ゴム組成物No.Aを加硫温度185℃で加硫した架橋ゴムNo.3は、切断時引張強さが21MPaであり機械的特性が劣っていた。
【0094】
ゴム組成物No.B~Eは、加硫促進剤として、チウラム系加硫促進剤とスルフェンアミド系加硫促進剤を所定量含有する。これらのゴム組成物No.B~Eは、加硫温度185℃での90%加硫時間は4.1min以下であり、加硫速度が速くなっている。また、これらのゴム組成物No.B~Eを加硫温度185℃で加硫した架橋ゴムNo.4~7は、切断時引張強さが24MPa以上であり機械的特性も優れていた。また、これらの中でもゴム組成物No.C~Eは、加硫温度185℃で加硫した架橋ゴムNo.5~7の切断時引張強さは25MPa以上であり、機械的特性が一層優れていた。
【0095】
本発明(1)は、基材ゴム、加硫剤および加硫促進剤を含有し、前記基材ゴムが、水素添加カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴムを含有し、前記加硫促進剤が、チウラム系加硫促進剤およびスルフェンアミド系加硫促進剤を含有し、前記チウラム系加硫促進剤の含有量が、前記基材ゴム100質量部に対して4質量部以上であり、前記スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量が、前記基材ゴム100質量部に対して0.3質量部以上であることを特徴とするグリップ用ゴム組成物である。
【0096】
本発明(2)は、前記グリップ用ゴム組成物を加硫温度185℃で硬化させた架橋ゴムの切断時引張強さが、23MPa以上である本発明(1)に記載のグリップ用ゴム組成物である。
【0097】
本発明(3)は、前記グリップ用ゴム組成物を加硫温度185℃で測定した加硫曲線における90%加硫時間(t90)が8min以下である本発明(1)または(2)に記載のグリップ用ゴム組成物である。
【0098】
本発明(4)は、前記グリップ用ゴム組成物を加硫温度185℃で硬化させた架橋ゴムについて、40℃のトルエンに24時間浸漬した際の膨潤率が200%~250%であるである本発明(1)~(3)のいずれか1項に記載のグリップ用ゴム組成物である。
【0099】
本発明(5)は、前記グリップ用ゴム組成物を加硫温度185℃で硬化させた架橋ゴムについて、動的粘弾性装置を用いて、加振周波数10Hz、歪振幅0.05%、引張モードの測定条件で測定した、40℃における貯蔵弾性率(E'40)と、25℃における貯蔵弾性率(E'25)との比(E'40/E'25)が0.888~0.900である本発明(1)~(4)のいずれか1項に記載のグリップ用ゴム組成物である。
【0100】
本発明(6)は、前記グリップ用ゴム組成物が、軟化点が120℃以下の樹脂を含有する本発明(1)~(5)のいずれか1項に記載のグリップ用ゴム組成物である。
【0101】
本発明(7)は、前記グリップ用ゴム組成物が、外部滑剤としてリン酸エステル系化合物を含有する本発明(1)~(6)のいずれか1項に記載のグリップ用ゴム組成物である。
【0102】
本発明(8)は、前記加硫促進剤が、チオウレア系加硫促進剤を含有する本発明(1)~(7)のいずれか1項に記載のグリップ用ゴム組成物である。
【0103】
本発明(9)は、円筒部を有し、前記円筒部の少なくとも一部が、本発明(1)~(8)のいずれか1項に記載のグリップ用ゴム組成物から形成されていることを特徴とするゴルフクラブグリップである。