(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157789
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 7/06 20060101AFI20241031BHJP
B22F 10/18 20210101ALI20241031BHJP
B22F 10/47 20210101ALI20241031BHJP
B22F 3/02 20060101ALI20241031BHJP
B22F 3/10 20060101ALI20241031BHJP
B22F 5/10 20060101ALI20241031BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241031BHJP
【FI】
B22F7/06 D
B22F10/18
B22F10/47
B22F3/02 S
B22F3/10 C
B22F5/10
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072367
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】▲角▼谷 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】横山 孝幸
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA03
4K018AA06
4K018AA07
4K018AA10
4K018AA13
4K018AA14
4K018AA24
4K018AA33
4K018AA40
4K018BA02
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA07
4K018BA08
4K018BA13
4K018BA17
4K018BA20
4K018BC12
4K018CA09
4K018CA29
4K018DA03
4K018HA01
4K018JA09
4K018KA53
(57)【要約】
【課題】熱処理によるオーバーハング部の変形に起因する製品の寸法精度の低下を抑制する。
【解決手段】第1無機粉末と第1バインダーとを含む層を積層することで、第2無機粉末と第2バインダーとを含む第2部品と熱処理によって接合される第1部品を形成する工程と、層を積層することで、熱処理後に除去される支持体を形成する支持体形成工程とを備える。熱処理は、集合物に対して実行される。支持体は、集合物において第1部品と第2部品との間でオーバーハング部を下から支持するように形成される。支持体形成工程は、第1無機粉末と第1バインダーとを含む層を積層することで支持本体部を形成する工程と、それぞれ、第1無機粉末および第2無機粉末より高い融点を有する第3無機粉末を含む層を積層することで、集合物において第1部品と接触する第1接触部を形成する工程と、集合物において第2部品と接触する第2接触部を形成する工程とを含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1無機粉末と第1バインダーとを含む層を積層することで、第1部品であって、第2無機粉末と第2バインダーとを含む第2部品と熱処理によって接合される第1部品、を形成する第1部品形成工程と、
層を積層することで、前記熱処理後に除去される支持体を、前記第1部品と一体に形成する支持体形成工程と、を備え、
前記熱処理は、前記第1部品と前記第2部品と前記支持体とが互いに接触するように組み合わされた集合物に対して実行され、
前記集合物において、前記第1部品と前記第2部品との少なくともいずれか一方は、他方に対して鉛直方向に離間するとともに上から重なるオーバーハング部を有し、
前記支持体形成工程では、前記支持体は、前記集合物において、前記第1部品と前記第2部品との間で前記オーバーハング部を下から支持するように形成され、
前記支持体形成工程は、
前記第1無機粉末と前記第1バインダーとを含む層を積層することで、前記支持体のうち、前記集合物において前記第1部品および前記第2部品と接触しない部分である支持本体部を形成する第1工程と、
第3無機粉末を含む層を積層することで、前記支持体のうち、前記集合物において前記第1部品と接触する部分である第1接触部を形成する第2工程と、
前記第3無機粉末を含む層を積層することで、前記支持体のうち、前記集合物において前記第2部品と接触する部分である第2接触部を形成する第3工程と、を含み、
前記第3無機粉末の融点は、前記第1無機粉末の融点および前記第2無機粉末の融点よりも高い、三次元造形物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第3工程において、前記第2接触部を、前記第2接触部の一面が造形ステージの上面に接するように形成し、
前記第1工程において、前記支持本体部を、形成された前記第2接触部の上に形成し、
前記集合物において、前記第2接触部は、前記一面を介して前記第2部品に接する、三次元造形物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第1無機粉末と、前記第2無機粉末とは、それぞれ同じ元素を主成分とする無機材料によって構成されている、三次元造形物の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第1部品を形成するのに用いられる材料における前記第1無機粉末と前記第1バインダーとの質量比と、前記第2部品を形成するのに用いられる材料における前記第2無機粉末と前記第2バインダーとの質量比と、は異なる、三次元造形物の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第1無機粉末の粒径と、前記第2無機粉末の粒径とは、それぞれ異なる、三次元造形物の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第1部品と前記支持本体部とは、それぞれ同じ材料を用いて形成される、三次元造形物の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記集合物を形成する前に、前記第1部品に含まれる前記第1バインダーと、前記支持体に含まれる前記第1バインダーと、を加熱によって除去する工程を備える、三次元造形物の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第1部品形成工程が実行されている間に実行され、前記集合物を形成するために、予め準備された前記第2部品を途中まで形成された前記第1部品である第1部分の上に配置する部品配置工程を備える、三次元造形物の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記部品配置工程の完了後に、前記第1部品形成工程によって、前記第1部品のうち前記第1部分以降に形成される部分である第2部分の少なくとも一部を、前記第2部品の上方に形成する、三次元造形物の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第2部品は、射出成形機によって形成される、三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、それぞれ無機粉末およびバインダーを含む第1部品と第2部品とを接合して製品を製造する方法が開示されている。この方法では、第1部品を三次元造形装置によって生成し、第1部品と第2部品とを組み立てて組立体を得た後に、当該組立体を脱脂および焼結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献の方法であれば、簡易な手法で第1部品と第2部品とを接合して製品を製造できる。しかしながら、例えば、第1部品や第2部品が、下方に支えのないオーバーハング部を有している場合、焼結工程においてオーバーハング部が重力による影響で変形し、製品が所望の寸法精度を満たさない虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、三次元造形物の製造方法が提供される。この三次元造形物の製造方法は、第1無機粉末と第1バインダーとを含む層を積層することで、第1部品であって、第2無機粉末と第2バインダーとを含む第2部品と熱処理によって接合される第1部品、を形成する第1部品形成工程と、層を積層することで、前記熱処理後に除去される支持体を、前記第1部品と一体に形成する支持体形成工程と、を備える。前記熱処理は、前記第1部品と前記第2部品と前記支持体とが互いに接触するように組み合わされた集合物に対して実行される。前記集合物において、前記第1部品と前記第2部品との少なくともいずれか一方は、他方に対して鉛直方向に離間するとともに上から重なるオーバーハング部を有し、前記支持体形成工程では、前記支持体は、前記集合物において、前記第1部品と前記第2部品との間で前記オーバーハング部を下から支持するように形成される。前記支持体形成工程は、前記第1無機粉末と前記第1バインダーとを含む層を積層することで、前記支持体のうち、前記集合物において前記第1部品および前記第2部品と接触しない部分である支持本体部を形成する第1工程と、第3無機粉末を含む層を積層することで、前記支持体のうち、前記集合物において前記第1部品と接触する部分である第1接触部を形成する第2工程と、前記第3無機粉末を含む層を積層することで、前記支持体のうち、前記集合物において前記第2部品と接触する部分である第2接触部を形成する第3工程と、を含む。前記第3無機粉末の融点は、前記第1無機粉末の融点および前記第2無機粉末の融点よりも高い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態における製造システムの概略構成を示す図。
【
図2】三次元造形装置に備えられたホッパーおよび吐出部の概略構成を示す図。
【
図3】スクリューの溝形成面側の構成を示す概略斜視図。
【
図4】バレルのスクリュー対向面側の構成を示す上面図。
【
図6】第1実施形態における製品の製造方法を示す工程図。
【
図7】第1実施形態における第1造形物の造形方法を示す工程図。
【
図8】第2実施形態における製品の製造方法を示す工程図。
【
図9】第2実施形態における第1造形物の製造方法を示す工程図。
【
図10】第3実施形態における製品の製造方法を示す工程図。
【
図11】第2造形物の製造方法を説明する第1の図。
【
図12】第2造形物の製造方法を説明する第2の図。
【
図13】他の実施形態において造形物が造形される様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における製造システム5の概略構成を示す図である。製造システム5は、三次元造形装置100と、射出成形機200と、脱脂装置300と、焼成炉400とを備える。
図1に示したX,Y,Z方向は、
図2以降に示したX,Y,Z方向に対応している。以下の説明において、方向の向きを特定する場合には、各図において矢印が指し示す方向を「+」、その反対の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。以下では、+Z方向のことを「上」、-Z方向のことを「下」ともいう。また、X方向およびY方向に沿った平面のことを「XY平面」とも呼ぶ。
【0008】
三次元造形装置100は、金属やセラミックなどの無機粉末とバインダーとを含む三次元造形物を付加製造法によって形成する。本実施形態では、三次元造形装置100は、三次元造形物として、第1部品と支持体とを含む第1造形物を形成する。射出成形機200は、金属やセラミックなどの無機粉末とバインダーとを含む第2部品を射出成形によって生成する。第1部品と第2部品とは、後述する焼成を経た後に、製品を構成する部分である。支持体は、製品を構成せず、製品の完成までに除去される部分である。
【0009】
脱脂装置300は、第1造形物や第2部品を脱脂温度で加熱することで、第1造形物や第2部品を脱脂する。脱脂装置300では、例えば、多孔質材によって構成されたセッターの上に第1造形物や第2部品が載置された状態で、第1造形物や第2部品が脱脂される。このセッターには、当該セッターと第1造形物や第2部品との接触面積を減少させるために、凹凸や溝等が設けられていてもよい。焼成炉400は、第1部品と第2部品と支持体とが互いに接触するように組み合わされた集合物を、脱脂温度よりも高い焼成温度で加熱することによって、第1部品と第2部品とを焼結によって接合させる。焼成炉400による加熱においても、例えば、上述したセッターが用いられてもよい。本明細書では、焼成炉400による、第1部品と第2部品とを焼結させるための加熱のことを熱処理や焼成とも呼ぶ。支持体は、集合物の焼成が完了した後に、焼成された集合物から除去される。このように、焼成後の集合物から支持体が除去されることによって、製品が完成する。本明細書において、「製品」とは、製造システム5において製造される物を意味しており、他の製品の一部となる物や、支持体の除去後に後処理や加工が行われる物も含む。
【0010】
三次元造形装置100は、第1吐出部10aと、第2吐出部10bと、第1ホッパー20aと、第2ホッパー20bと、移動機構部70と、造形ステージ80と、制御部90とを備える。以下では、第1吐出部10aと第2吐出部10bとを特に区別することなく説明する場合、単に、吐出部10と呼ぶこともある。同様に、第1ホッパー20aと第2ホッパー20bとを特に区別することなく説明する場合、単に、ホッパー20と呼ぶこともある。
【0011】
移動機構部70は、吐出部10と造形ステージ80との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動機構部70は、第1吐出部10aおよび第2吐出部10bに対して、造形ステージ80を移動させる。本実施形態における移動機構部70は、3つのモーターの駆動力によって、造形ステージ80をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。各モーターは、制御部90の制御下にて駆動する。なお、他の実施形態では、移動機構部70は、造形ステージ80を移動させる構成ではなく、例えば、造形ステージ80を移動させずに吐出部10を移動させる構成であってもよい。また、移動機構部70は、造形ステージ80と吐出部10との両方を移動させる構成であってもよい。
【0012】
制御部90は、1以上のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成されている。本実施形態では、制御部90は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、三次元造形物を造形するための三次元造形処理を実行する機能等、種々の機能を発揮する。制御部90は、第1吐出部10aと第2吐出部10bとを選択的に使い分けることにより、2種類の異なる材料を切り替えて三次元造形物を造形することができる。なお、制御部90は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0013】
図2は、三次元造形装置100に備えられたホッパー20および吐出部10の概略構成を示す図である。吐出部10は、可塑化部30とノズル60とを備えている。吐出部10には、ホッパー20に収容されている材料が供給される。吐出部10は、制御部90の制御下で、ホッパー20から供給された材料の少なくとも一部を可塑化部30によって可塑化して可塑化材料を生成し、生成した可塑化材料をノズル60から造形ステージ80上に吐出して積層させる。本実施形態において「可塑化」とは 、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0014】
ホッパー20には、金属やセラミックなどの無機粉末とバインダーとを含むペレット状の材料が収容されている。ホッパー20に収容された材料は、ホッパー20と吐出部10とを接続するようにホッパー20の下方に設けられた供給路22を介して、可塑化部30に供給される。本実施形態では、第1ホッパー20aには第1材料が収容されており、第2ホッパー20bには第3材料が収容されている。そのため、第1吐出部10aには、第1ホッパー20aに収容されている第1材料が供給され、第2吐出部10bには第2ホッパー20bに収容されている第3材料が供給される。
【0015】
可塑化部30は、スクリューケース31と、スクリューケース31内に収容されたスクリュー41と、スクリュー41を駆動させる駆動モーター32と、バレル50と、ヒーター58とを備えている。バレル50には連通孔56が設けられている。ヒーター58は、バレル50に埋設されている。本実施形態のスクリュー41は、いわゆるフラットスクリューであり、「スクロール」と呼ばれることもある。
【0016】
スクリュー41は、その中心軸RXに沿った方向の高さが直径よりも小さい略円柱形状を有している。スクリュー41は、バレル50に対向する面に、スクリュー溝45が形成された溝形成面42を有している。溝形成面42は、バレル50のスクリュー対向面52と対向する。
【0017】
駆動モーター32は、スクリュー41の溝形成面42とは反対側の面に接続されている。駆動モーター32は、制御部90の制御下で駆動される。スクリュー41は、駆動モーター32の回転で生じるトルクによって、中心軸RXを中心に回転する。なお、駆動モーター32は、直接、スクリュー41と接続されていなくてもよく、例えば、減速機を介して接続されていてもよい。
【0018】
バレル50は、スクリュー41の溝形成面42に対向するスクリュー対向面52を有している。バレル50に設けられた連通孔56は、スクリュー41の中心軸RXに沿うように形成されている。
【0019】
ノズル60は、先端にノズル開口63を有している。ノズル開口63は、バレル50に設けられた連通孔56に連通している。ノズル60は、ノズル開口63から、造形ステージ80に向けて、可塑化部30により可塑化された材料を吐出する。
【0020】
図3は、スクリュー41の溝形成面42側の構成を示す概略斜視図である。
図3には、スクリュー41の中心軸RXの位置が一点鎖線で示されている。上述したように、溝形成面42には、スクリュー溝45が設けられている。スクリュー41の溝形成面42の中央部であるスクリュー中央部47は、スクリュー溝45の一端が接続されている窪みとして構成されている。スクリュー中央部47は、バレル50の連通孔56に対向する。スクリュー中央部47は、中心軸RXと交差する。
【0021】
スクリュー41のスクリュー溝45は、いわゆるスクロール溝を構成する。スクリュー溝45は、スクリュー中央部47から、スクリュー41の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。スクリュー溝45は、インボリュート曲線状や、螺旋状に延びるように構成されてもよい。溝形成面42には、スクリュー溝45の側壁部を構成し、各スクリュー溝45に沿って延びている凸条部46が設けられている。スクリュー溝45は、スクリュー41の側面43に形成された材料導入口44まで連続している。この材料導入口44は、ホッパー20から供給路22を介して供給された材料を受け入れる部分である。
【0022】
図3には、3つのスクリュー溝45と、3つの凸条部46と、を有するスクリュー41の例が示されている。スクリュー41に設けられるスクリュー溝45や凸条部46の数は、3つには限定されず、1つのスクリュー溝45のみが設けられていてもよいし、2以上の複数のスクリュー溝45が設けられていてもよい。また、
図3には、材料導入口44が3箇所に形成されているスクリュー41の例が図示されている。スクリュー41に設けられる材料導入口44の数は、3箇所に限定されず、1箇所にのみ設けられていてもよいし、2箇所以上の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0023】
図4は、バレル50のスクリュー対向面52側の構成を示す上面図である。上述したとおり、スクリュー対向面52の中央には、連通孔56が形成されている。スクリュー対向面52における連通孔56の周りには、複数の案内溝54が形成されている。それぞれの案内溝54は、一端が連通孔56に接続され、連通孔56からスクリュー対向面52の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝54は、可塑化材料を連通孔56に導く機能を有している。なお、案内溝54の一端は連通孔56に接続されていなくてもよい。また、バレル50には案内溝54が形成されていなくてもよい。
【0024】
説明を
図1に戻す。射出成形機200は、可塑化装置210と型締装置230とを備えている。可塑化装置210と型締装置230とは、それぞれ、基台205に固定されている。基台205には、制御部290が備えられている。射出成形機200は、型締装置230に装着された成形型220内に、可塑化装置210から可塑化材料を射出して成形品を成形する。本実施形態では、型締装置230には、金属製の成形型220が装着されている。型締装置230に装着される成形型220は、金属製に限られず、樹脂製あるいはセラミック製でもよい。金属製の成形型220のことを金型と呼ぶ。
【0025】
可塑化装置210には、成形品の材料が投入される材料供給部208が接続されている。成形品の材料としては、金属やセラミックなどの無機粉末とバインダーとを含むペレット状の材料が用いられる。本実施形態では、材料供給部208には、第2材料が投入される。可塑化装置210は、材料供給部208から供給された材料の少なくとも一部を可塑化して可塑化材料を生成する。
【0026】
制御部290は、1つ、または、複数のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成されている。プロセッサーが主記憶装置上にプログラムを読み込んで実行することにより、制御部290は、可塑化装置210と型締装置230とを制御し、成形品の製造を行う。
【0027】
図5は、射出成形機200の概略構成を示す断面図である。射出成形機200は、上記の通り、可塑化装置210と型締装置230と成形型220とを備えており、また、射出制御機構240を備えている。
【0028】
可塑化装置210は、スクリュー211とバレル212とヒーター213とノズル214とを有している。スクリュー211は、スクリュー211を収容する収容部215に収容されている。本実施形態のスクリュー211は、いわゆるフラットスクリューであり、「スクロール」とも呼ばれる。スクリュー211は、駆動モーターを備えるスクリュー駆動部216によって、その中心軸RXを中心に収容部215内で回転駆動される。バレル212の中心には、連通孔217が形成されている。連通孔217には、後述する射出シリンダー241が接続されている。連通孔217には、射出シリンダー241よりも上流部に、逆止弁218が備えられている。スクリュー駆動部216によるスクリュー211の回転と、ヒーター213による加熱とは、制御部290によって制御される。
【0029】
射出制御機構240は、射出シリンダー241と、プランジャー242と、駆動モーターを備えるプランジャー駆動部243とを備えている。射出制御機構240は、射出シリンダー241内の可塑化材料を、後述するキャビティー223に射出注入する機能を有している。射出制御機構240は、制御部290の制御下で、ノズル214からの可塑化材料の射出量を制御する。射出シリンダー241は、バレル212の連通孔217に接続された略円筒状の部材であり、内部にプランジャー242を備えている。プランジャー242は、射出シリンダー241の内部を摺動し、射出シリンダー241内の可塑化材料を、可塑化装置210に備えられたノズル214に圧送する。プランジャー242は、プランジャー駆動部243により駆動される。
【0030】
成形型220は、可動型221と固定型222とを備えている。可動型221と固定型222とは、互いに対面して設けられ、その間に成形品の形状に応じた空間であるキャビティー223を有している。キャビティー223には、バレル212の連通孔217から流出した可塑化材料が、射出制御機構240によって圧送されてノズル214から射出される。
【0031】
型締装置230は、駆動モーターを備える成形型駆動部231を備えており、可動型221と固定型222との開閉を行う機能を有している。型締装置230は、制御部290の制御下で、モーターによって構成される成形型駆動部231を駆動することによってボールネジ232を回転させ、ボールネジ232に結合された可動型221を固定型222に対して移動させて成形型220を開閉させる。
【0032】
上述したように、本実施形態では、三次元造形装置100および射出成形機200は、いずれも、材料を可塑化するためにフラットスクリューを備えている。これに対して、三次元造形装置100および射出成形機200は、材料の可塑化のために、インラインスクリューを備えてもよい。
【0033】
図6は、第1実施形態における製品PDの製造方法を示す工程図である。ステップS110では、三次元造形装置100によって、三次元造形物である第1造形物Md1が形成される。第1造形物Md1は、上述した第1部品CP1と支持体SPとを含む。支持体SPは、支持本体部SBと、第1接触部TP1と、第2接触部TP2とを含む。第1部品CP1と支持本体部SBとは、第1無機粉末と第1バインダーとを含む。第1接触部TP1と第2接触部TP2とは、第3無機粉末と第3バインダーとを含む。本実施形態におけるステップS110では、第1無機粉末と第1バインダーとを含む第1材料が、第1部品CP1および支持本体部SBの形成に用いられ、第3無機粉末と第3バインダーとを含む第3材料が、第1接触部TP1および第2接触部TP2の形成に用いられる。ステップS110では、第1部品CP1と支持体SPとは、一体に形成される。
【0034】
ステップS120では、射出成形機200によって第2無機粉末と第2バインダーとを含む第2部品CP2が成形される。本実施形態におけるステップS120では、第2無機粉末と第2バインダーとを含む第2材料が、第2部品CP2の成形に用いられる。なお、第1部品CP1や第2部品CP2や支持体SPの形状は、
図6に示した形状に限られず、様々な形状とすることが可能である。また、ステップS110とステップS120との順序は任意であり、例えば、同時であってもよい。ステップS110の詳細については後述する。
【0035】
本実施形態では、第1材料における第1無機粉末と第1バインダーとの質量比と、第2材料における第2無機粉末と第2バインダーとの質量比とは、それぞれ異なる。より詳細には、本実施形態では、第1材料における第1無機粉末と第1バインダーとの質量比が、第2材料における第2無機粉末と第2バインダーとの質量比よりも高い。
【0036】
本実施形態において、第1無機粉末と、第2無機粉末とは、それぞれ同じ元素を主成分とする無機材料によって構成されている。より詳細には、第1無機粉末は、析出硬化系ステンレスであるSUS630によって構成されている。第2無機粉末は、オーステナイト径ステンレス鋼であるSUS316Lによって構成されている。主成分とは、無機粉末の主要な元素を意味し、その無機粉末における質量分率が50%以上である元素を意味する。また、本実施形態では、第1無機粉末の粒径と第2無機粉末の粒径とは、それぞれ異なる。本実施形態において、粒径とは、動的光散乱法による測定結果から算出されるメディアン径を意味する。より詳細には、本実施形態では、第1無機粉末の粒径は、第2無機粉末の粒径よりも小さい。
【0037】
第3無機粉末の融点は、第1無機粉末の融点および第2無機粉末の融点よりも高い。本実施形態では、第3無機粉末は、第1無機粉末および第2無機粉末の融点よりも高い融点を有するセラミックス材料によって構成されている。このような第3無機粉末としては、例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムを用いることができる。
【0038】
他の実施形態では、第1無機粉末や第2無機粉末は、SUSに限らず、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金や、マルエージング鋼、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金などの合金を用いてもよい。また、第1無機粉末や第2無機粉末は、金属に限らず、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムや窒化ケイ素などの非酸化物セラミックスなどを用いてもよい。同様に、第3無機粉末は、第1無機粉末および第2無機粉末の融点よりも高い融点を有していれば、種々のセラミックス材料や、種々の金属材料によって構成されていてもよい。
【0039】
本実施形態において、第1バインダー、第2バインダーおよび第3バインダーは、それぞれ、樹脂とワックスとを含む。各バインダーに用いられる樹脂としては、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの熱可塑性樹脂から採用することができる。第1バインダーと第2バインダーとは、それぞれ同じバインダーであってもよいし、異なるバインダーであってもよい。また、第3バインダーは、第1バインダーや第2バインダーと同じバインダーであってもよいし、異なるバインダーであってもよい。
【0040】
ステップS130では、第1部品CP1と第2部品CP2と支持体SPとを互いに接触するように組み合わせることで、集合物Asが形成される。ステップS130のように第1部品CP1と第2部品CP2と支持体SPとを組み合わせる工程のことを、組み合わせ工程とも呼ぶ。集合物Asにおいて、第1部品CP1と第2部品CP2との少なくともいずれか一方は、他方に対して鉛直方向に離間するとともに上から重なる部分であるオーバーハング部OHを有する。オーバーハング部OHは、第1部品CP1と第2部品CP2とのいずれか一方が他方に対して浮き上がった、下方に支えのない出っ張り部分であるとも言える。本明細書において、オーバーハング部OHの意味は、橋状の部分であるブリッジ部を含む。本実施形態では、第1部品CP1がオーバーハング部OHを有している。つまり、本実施形態におけるオーバーハング部OHは、第2部品CP2に対して鉛直方向に離間するとともに上から重なる部分である。ステップS130において、集合物Asは、第1部品CP1と支持体SPと第2部品CP2とが互いに接触するように、かつ、第1部品CP1と第2部品CP2とのいずれかがオーバーハング部OHを有するように、第1造形物Md1と第2部品CP2とが組み合わされることで形成されるとも言える。本実施形態におけるステップS130では、図示しないロボットによって第1造形物Md1と第2部品CP2とが組み合わされることで、集合物Asが形成される。
【0041】
ステップS140では、脱脂装置300において第1造形物Md1や第2部品CP2を加熱することで、第1造形物Md1や第2部品CP2が脱脂される。本実施形態におけるステップS140では、脱脂装置300において、集合物Asが加熱される。ステップS150では、焼成炉400において、ステップS140で脱脂された集合物Asが加熱されることで、集合物Asが焼成される。以下では、焼成された集合物Asのことを、焼成物Bsとも呼ぶ。
図6のステップS150では、集合物Asの焼成が完了した直後の様子、より詳細には、焼成炉400における焼成物Bsの様子が示されている。焼成物Bsには、焼成された第1部品CP1である第1焼成部品CP1s、および、焼成された第2部品CP2である第2焼成部品CP2sと、焼成された支持体SPsとが含まれる。
図6に示すように、集合物Asは、焼成が完了するまで、つまり、焼成炉400内で焼成物Bsが生成されるまで、焼成炉400内で同じ姿勢を保ったまま加熱される。以下では、この姿勢のことを加熱姿勢とも呼ぶ。集合物Asは、加熱姿勢と同じ姿勢を取るように形成されるとも言える。ステップS160では、焼成物Bsから焼成された支持体SPsが除去される。
図6のステップS160では、除去された支持体SPsが破線によって示されている。焼成物Bsから支持体SPsが除去されることで、製品PDが完成する。ステップS140からステップS160の詳細については後述する。
【0042】
図7は、
図6のステップS110において実行される第1造形物Md1の造形方法の工程図である。
図7は、本実施形態における三次元造形物の製造方法を表す。
図7に示した製造方法は、第1部品CP1を形成するための第1部品形成工程と、支持体SPを第1部品CP1と一体に形成するための支持体形成工程とを備える。支持体形成工程は、支持本体部SBを形成するための第1工程と、第1接触部TP1を形成するための第2工程と、第2接触部TP2を形成するための第3工程とを含む。本実施形態では、第1造形物Md1は、造形ステージ80上で加熱姿勢と同じ姿勢を取るように形成される。
【0043】
第1部品形成工程では、第1無機粉末とバインダーとを含む層を積層することで、第1部品CP1が形成される。本実施形態における第1部品形成工程では、三次元造形装置100の制御部90が、可塑化部30によって第1材料を可塑化するとともに、可塑化された第1材料を第1吐出部10aから吐出させることによって、造形ステージ80の上方に、可塑化された第1材料の層を積層する。以下では、このような可塑化された第1材料の層のことを、単に、第1材料の層とも呼ぶ。
【0044】
支持体形成工程において、支持体SPは、後のステップS130で形成される集合物Asにおいて、第1部品CP1と第2部品CP2との間でオーバーハング部OHを下から支持するように形成される。第1工程で形成される支持本体部SBは、支持体SPのうち、集合物Asにおいて第1部品CP1と第2部品CP2とのいずれにも接触しない部分である。第2工程で形成される第1接触部TP1は、集合物Asにおいて第1部品CP1と接触する部分であり、支持本体部SBと第1部品CP1との間に位置するように形成される。第3工程で形成される第2接触部TP2は、集合物Asにおいて第2部品CP2と接触する部分であり、集合物Asにおいて第2部品CP2と支持本体部SBとの間に位置するように形成される。なお、支持体SPのうち、第1部品CP1と第2部品CP2との両方に接触する部分は、第1接触部TP1でもあり、かつ、第2接触部TP2でもある。
【0045】
第1工程では、第1無機粉末とバインダーとを含む層を積層することで、支持本体部SBが形成される。本実施形態における第1工程では、制御部90が、可塑化された第1材料を第1吐出部10aから吐出させることによって、造形ステージ80の上方に第1材料の層を積層させる。第2工程では、第3無機粉末を含む層を積層することで、第1接触部TP1が形成される。第3工程では、第3無機粉末を含む層を積層することで、第2接触部TP2が形成される。本実施形態における第2工程や第3工程では、制御部90は、可塑化部30によって第3無機粉末と第3バインダーとを含む第3材料を可塑化するとともに、可塑化された第3材料を第2吐出部10bから吐出させることによって、造形ステージ80の上方に、可塑化された第3材料の層を積層する。以下では、このような可塑化された第3材料の層のことを、単に、第3材料の層とも呼ぶ。
【0046】
図7に示すように、第1造形物Md1は、第1部品形成工程、第1工程、第2工程および第3工程が適宜実行されることによって形成される。
図7では、各ステップで形成されている層が太線によって示されている。ステップS112では、第1造形物Md1を構成する層のうち第1層L1が造形ステージ80の上面に形成される。第1層L1は、第1部品CP1の一部に相当する層部分L1aと、第2接触部TP2に相当する層部分L1bとを含んでおり、第1部品形成工程と第3工程とが実行されることで形成される。ステップS114では、第1層L1の上面に第2層L2が形成される。第2層L2は、第1部品CP1の一部に相当する層部分L2aと、第1接触部TP1に相当する層部分L2bと、支持本体部SBに相当する層部分L2cとを含んでおり、第1部品形成工程と第1工程と第2工程とが実行されることで形成される。より詳細には、ステップS114では、層部分L2aが層部分L1aの上に積層され、層部分L2bと層部分L2cが層部分L1bの上に積層される。ステップS116では、第2層L2の上面に第3層L3が形成される。第3層L3は、第1部品CP1の一部に相当する層部分L3aと、第1接触部TP1に相当する層部分L3bとを含んでおり、第1部品形成工程と第1工程とが実行されることで形成される。より詳細には、ステップS116では、層部分L3aが層部分L2aの上に積層され、層部分L3bが層部分L2bおよび層部分L2cの上に積層される。ステップS118では、第3層L3の上面に第4層L4が形成される。第4層L4は、第1部品CP1の一部に相当する層であり、第1部品形成工程が実行されることで形成される。第4層L4は、層部分L3aおよび層部分L3bの上に積層される。なお、第1層L1から第4層L4は、それぞれ、積層方向において1層のみによって構成されていてもよいし、積層方向において2以上の層によって構成されていてもよい。
【0047】
図7に示した各工程を実行することで、第2接触部TP2が、その一面F2が造形ステージ80の上面に接するように形成され、支持本体部SBが、その第2接触部TP2の上に接するように、つまり、第2接触部TP2の他面に接するように形成される。このようにすることで、一面F2が、造形ステージ80の上面に沿って平面状に形成される。
図6に示すように、一面F2は、集合物Asにおいて、第2部品CP2の接触面F1と接する。接触面F1は、一面F2と同様に平面状を有している。
【0048】
図6に説明を戻す。本実施形態におけるステップS140では、集合物Asが脱脂温度で加熱される。本実施形態における脱脂温度は、第1温度と、第1温度よりも高い第2温度とを含む。より詳細には、ステップS140において、集合物Asは、第1温度で加熱された後、更に、第2温度で加熱される。第1温度は、第1造形物Md1と第2部品CP2とに含まれるワックス成分を除去するための温度であり、例えば、110℃である。第2温度は、第1造形物Md1と第2部品CP2とに含まれる樹脂成分を除去するための温度であり、例えば、400℃以上500℃以下の温度である。
【0049】
ステップS150では、ステップS140で脱脂が完了した集合物Asが、焼成炉400によって焼成温度で加熱される。焼成温度は、第1部品CP1と第2部品CP2と支持本体部SBとを焼結させることが可能な程度に高い温度である。また、焼成温度は、第1接触部TP1と第2接触部TP2とが焼結しない程度に低い温度であるとより好ましい。本実施形態における焼成温度は、例えば、1200℃である。ステップS150では、焼成物Bsのうち、焼結した部分に斜線のハッチングが付され、焼結していない部分に点模様のハッチングが付されている。
図6に示すように、本実施形態におけるステップS150では、焼成された支持本体部SBsは焼結しているのに対し、焼成された第1接触部TP1sと焼成された第2接触部TP2sとは焼結しない。ステップS160において、焼成された支持体SPsは、例えば、支持体SPsへの工具の接触や、振動等によって除去可能である。このような支持体SPsの除去は、例えば、図示しないロボットによって行われる。
【0050】
以上で説明した本実施形態における三次元造形物の製造方法によれば、第1部品CP1と第2部品CP2と支持体SPとが組み合わされた集合物Asの焼成後に除去される支持体SPを、第1部品CP1と一体に形成する支持体形成工程を備える。支持体形成工程では、支持体SPは、集合物Asにおいて、第1部品CP1と第2部品CP2との間でオーバーハング部OHを下から支持するように形成される。支持体形成工程は、集合物Asにおいて第1部品CP1および第2部品CP2と接触しない部分である支持本体部SBを形成する第1工程と、集合物Asにおいて第1部品CP1と接触する部分である第1接触部TP1を形成する第2工程と、集合物Asにおいて第2部品CP2と接触する部分である第2接触部TP2を形成する第3工程とを含む。第1接触部TP1と第2接触部TP2とに含まれる第3無機粉末の融点は、第1部品CP1と支持本体部SBとに含まれる第1無機粉末の融点、および、第2部品CP2に含まれる第2無機粉末の融点よりも高い。
【0051】
このような形態であれば、支持体SPを、集合物Asにおいてオーバーハング部OHを支持するように第1部品CP1と一体に形成できる。支持本体部SBは、第1部品CP1と同様に第1無機粉末を含むので、焼成時に第1部品CP1と支持本体部SBとの焼結を良好に進行させることができる。そのため、焼成時に支持体SPによってオーバーハング部OHを効果的に支持できる。一方で、第1接触部TP1および第2接触部TP2は、第1無機粉末および第2無機粉末の融点よりも高い融点を有する第3無機粉末を含むので、第1部品CP1や第2部品CP2と比較して、焼成時に焼結が進行しにくい。そのため、焼成時に第1接触部TP1と第1部品CP1とが接合すること、および、第2接触部TP2と第2部品CP2とが接合することが抑制される。従って、本実施形態では、支持体SPによってオーバーハング部OHが効果的に支持された状態を保ちながら、第1部品CP1と第2部品CP2とを焼結によって接合させることができる。また、第1部品CP1と第2部品CP2とが接合された後、支持体SPsを容易に除去して製品PDを得ることができる。そのため、焼成時におけるオーバーハング部OHの変形に起因して製品PDの寸法精度が低下することを抑制できる。
【0052】
本実施形態では、第2部品CP2を射出成形機200によって成形するため、三次元造形装置100によって形成される第1部品CP1と比較して、第2部品CP2を大型の形状とすることは困難であるものの、サポート材などを用いることなく小さく複雑な形状とすることができる。そのため、このような第2部品CP2を第1部品CP1と組み合わせることで、より多様な形状を有する製品PDを製造できる。また、第2部品CP2を短時間で生成できるので、製品PDをより効率良く製造できる。
【0053】
また、本実施形態では、第3工程において、第2接触部TP2は、第2接触部TP2の一面F2が造形ステージ80の上面に接するように形成され、第1工程において、支持本体部SBは、形成された第2接触部TP2の上に形成され、集合物Asにおいて、第2接触部TP2は、一面F2を介して第2部品CP2に接する。このようにすれば、第3工程において、第2接触部TP2の一面F2を造形ステージ80の上面に沿って平面状に形成できる。集合物Asにおいて、第2接触部TP2は、この一面F2を介して第2部品CP2に接する。より詳細には、集合物Asにおいて、一面F2と、第2部品CP2の接触面F1とが接する。そのため、焼結時に、第2部品CP2を支持体SPによって効果的に支持できる。特に、本実施形態では、
図7に示すように、第1部品CP1の第2部品CP2に対する接触面も造形ステージ80の上面に形成される。また、第2部品CP2の第1部品CP1に対する接触面は、平面状である。そのため、第2部品CP2を支持体SPによって効果的に支持しつつ、焼結によって第1部品CP1と第2部品CP2とを良好に接合できる。
【0054】
また、本実施形態では、第1無機粉末と第2無機粉末とは、それぞれ同じ元素を主成分とする無機材料によって構成されているので、第1部品CP1と第2部品CP2との接合部分にロウなどを用いることなく、第1部品CP1と第2部品CP2とを接合できる。そのため、製品PDの接合部分における強度が低下することを抑制できる。
【0055】
また、本実施形態では、第1無機粉末と第2無機粉末とは、それぞれ異なる種類のステンレス粉末によって構成されている。このように第1無機粉末と第2無機粉末とをそれぞれ異なる無機材料によって構成すれば、第1部品の形成に用いる材料と、第2部品の形成に用いる材料とをそれぞれ最適化できる。より詳細には、本実施形態では、第1材料として、三次元造形装置100による第1部品の形成により適した無機粉末を含む材料を選択可能であり、かつ、第2材料として、射出成形機200による第2部品の成形により適した無機粉末を含む材料を選択可能である。
【0056】
また、本実施形態では、第1部品CP1を形成するのに用いられる第1材料における第1無機粉末と第1バインダーとの質量比と、第2部品CP2を形成するのに用いられる第2材料における第2無機粉末と第2バインダーとの質量比とは、それぞれ異なる。このようにすれば、各部品を形成するのに用いられる材料における無機粉末とバインダーとの質量比を、各部品の形状や大きさ、形成方法等に応じて、それぞれ最適化できる。例えば、本実施形態では、第1材料として、三次元造形装置100による第1部品の形成により適した質量比の材料を選択可能であり、かつ、第2材料として、射出成形機200による第2部品の成形により適した質量比の材料を選択可能である。
【0057】
また、本実施形態では、第1無機粉末の粒径と、第2無機粉末の粒径とはそれぞれ異なる。このようにすれば、各無機粉末の粒径を調整することによって、焼結時における第1部品CP1と第2部品CP2との熱収縮量を調整できる。例えば、本実施形態では、第1無機粉末の粒径が、第2無機粉末の粒径よりも小さい。射出成形機200では、材料を高圧で成形型220に射出することによって造形物を形成する。そのため、仮に射出成形機200と三次元造形装置100とで同じ材料を用いた場合であっても、通常、射出成形機200による造形物における無機粉末の充填率は、三次元造形装置100による造形物における無機粉末の充填率よりも小さくなる。この場合、焼結時に、三次元造形装置100による造形物の熱収縮率は、射出成形機200による造形物の熱収縮率と比較して大きくなる。上記のように第1無機粉末の粒径を小さくすることで、第1部品CP1において第1無機粉末をより高密度に充填できるので、焼成時の第1部品CP1の熱収縮量をより小さくでき、第1部品CP1および第2部品CP2の焼結および第1部品CP1と第2部品CP2との接合をより良好に進行させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、第1部品CP1と支持本体部SBとは、それぞれ同じ第1材料を用いて形成されている。そのため、第1部品CP1と支持本体部SBとをそれぞれ異なる材料で形成する場合と比較して、三次元造形装置100において使用される材料の種類を削減できる。また、使用される材料の種類を削減できることにより、例えば、三次元造形装置100におけるノズル60の切り替え回数を削減でき、三次元造形物の造形時間を短縮できる可能性が高まる。
【0059】
B.第2実施形態:
図8は、第2実施形態における製品の製造方法を示す工程図である。
図9は、
図8のステップS110bで実行される第1造形物Md1の製造方法を説明する図である。
図8では、
図6と同様の工程には、
図6と同じ符号が付されている。
図9では、
図7と同様の工程には、
図7と同じ符号が付されている。
図8のステップS110bでは、第1実施形態と略同様に、
図9に示した製造方法が実行されることで、第1造形物Md1が形成される。本実施形態における第1造形物Md1の製造方法は、第1実施形態とは違って、集合物Asが形成される前に、第1部品CP1に含まれるバインダーと支持体SPに含まれるバインダーとを加熱によって除去する工程を備える。具体的には、
図9に示した第1造形物Md1の製造方法は、この工程として、ステップS119の第1脱脂工程を備える。第2実施形態における製造システム5のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0060】
ステップS119の第1脱脂工程では、脱脂装置300によって、第1部品CP1、および、第1部品CP1と一体に形成された支持体SPが、脱脂温度で加熱される。ステップS119が実行されることで、第1部品CP1と支持体SPとに含まれるバインダーが除去される。
【0061】
図8のステップS125では、第2脱脂工程が実行される。第2脱脂工程は、第1造形物Md1と組み合わせられていない状態の第2部品CP2を脱脂するための工程である。本実施形態におけるステップS125では、脱脂装置300によって第2部品CP2が脱脂温度で加熱され、第2部品CP2に含まれるバインダーが除去される。なお、他の実施形態では、例えば、第1脱脂工程と第2脱脂工程とを同時に実行してもよい。この場合、第1脱脂工程と第2脱脂工程とは、同じ脱脂装置300によって脱脂されてもよいし、製造システム5に複数の脱脂装置が備えられている場合、それぞれ異なる脱脂装置によって脱脂されてもよい。また、例えば、第2脱脂工程が第1脱脂工程に先立って実行されてもよい。
【0062】
ステップS130bでは、
図6のステップS130とは違って、それぞれ脱脂が完了した第1造形物Md1と第2部品CP2とが組み合わせられる。そのため、ステップS130bの後には、脱脂工程が実行されない。
【0063】
以上で説明した第2実施形態によれば、集合物Asを形成する前に、第1部品CP1と支持体SPとに含まれるバインダーを加熱によって除去する工程を備える。そのため、集合物Asを形成した後に第1部品CP1や支持体SPに含まれるバインダーを除去する場合と比較して、第1部品CP1や支持体SPに含まれるバインダーを効率的に除去できる。特に、第1部品CP1と第2部品CP2との接合部分近傍において、より効率的にバインダーを除去できる。そのため、第1造形物Md1と第2部品CP2との脱脂を同時に行えば、第1造形物Md1と第2部品CP2との脱脂に要する時間を短縮できる。
【0064】
C.第3実施形態:
図10は、第3実施形態における製品の製造方法を示す工程図である。
図11は、第2造形物Md2の製造方法を説明する第1の図である。
図12は、第2造形物Md2の製造方法を説明する第2の図である。本実施形態における製品の製造方法は、第1部品CP1bと支持体とを含む三次元造形物として、第2造形物Md2を形成する工程を含む。第2造形物Md2の製造方法は、後述する部品配置工程を備える。第3実施形態における製造システム5の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0065】
図10のステップS310では、第2部品CP2bが準備される。本実施形態におけるステップS310では、第1実施形態と同様に、射出成形機200によって第2部品CP2bが形成される。
図10のステップS320では、上述したように、第2造形物Md2が形成される。
【0066】
図11には、第1部品形成工程が実行されている途中の様子が示されており、途中まで造形された第2造形物Md2である途中造形物Mp1が示されている。
図12には、完成した第2造形物Md2が示されている。第2造形物Md2は、第1実施形態で説明した第1造形物Md1と同様に、造形ステージ80上で加熱姿勢と同じ姿勢を取るように形成される。途中造形物Mp1は、途中まで形成された第1部品CP1bである第1部分p1と、支持体SPaおよび支持体SPbとを有している。支持体SPaは、支持本体部SBaと第1接触部TP1aと第2接触部TP2aとを有している。支持体SPbは、支持本体部SBbと第1接触部TP1bと第2接触部TP2bとを有している。
図11に示すように、支持体SPaおよび支持体SPbは、第2部品CP2bが有するオーバーハング部OH2を下から支持する。
【0067】
上述した部品配置工程は、集合物Asbを形成するために、予め準備された第2部品CP2bを第1部分p1の上に第2部品CP2bを配置する工程であり、
図11に示すように第1部品形成工程が実行されている間に実行される。
図11では、
図10のステップS310で準備された第2部品CP2bが第1部分p1の上に配置される様子が示されている。
【0068】
図12に示すように、第2造形物Md2は、配置工程が実行された後に、第2造形物Md2のうち、途中造形物Mp1以降に造形される部分Mp2が造形されることによって完成する。部分Mp2には、第1部品CP1bのうち、第1部分p1以降に造形される部分である第2部分p2と、支持体SPcおよび支持体SPdとが含まれる。支持体SPcは、支持本体部SBcと第1接触部TP1cと第2接触部TP2cとを有している。支持体SPdは、支持本体部SBdと第1接触部TP1dと第2接触部TP2dとを有している。
図11に示すように、支持体SPcおよび支持体SPdは、第1部品CP1bが有するオーバーハング部OH1を下から支持する。
図12に示すように、第2部分p2の一部は、第2部品CP2bの上方に形成されている。そのため、第2造形物Md2において、第2部品CP2は、第2部品CP2bが第1部品CP1bに組み込まれるように、第1部品CP1bと各支持体とに組み合わされる。より詳細には、第2部品CP2bは、鉛直方向において第2部品CP2bが第1部品CP1bの構成部分同士の間に位置するように、第1部品CP1bと各支持体とに組み合わされる。本実施形態では、こうして形成される第2造形物Md2は、集合物Asbに相当する。
【0069】
図10のステップS330からステップS350は、それぞれ、
図6のステップS140からステップS160と同様である。このように、本実施形態では、ステップS320で形成される第2造形物Md2が集合物Asbに相当するので、ステップS320の後には、組み合わせ工程が実行されない。
【0070】
以上で説明した第3実施形態によれば、第1部品形成工程が実行されている間に実行され、集合物Asbを形成するために、予め準備された第2部品CP2bを第1部分p1の上に配置する配置工程を備える。このようにすれば、第1部品CP1bが形成されている途中に、集合物を形成するために、途中まで形成された第1部品CP1bに第2部品CP2bを組み合わせることができる。そのため、第1部品CP1bに第2部品CP2bを容易に組み込むことができる。また、第1部品形成工程の完了後の組み合わせ工程を短縮あるいは省略できるので、より効率的に製品を製造できる。
【0071】
また、本実施形態では、部品配置工程の完了後に、第1部品形成工程によって、第2部分p2の少なくとも一部が第2部品CP2bの上方に形成される。そのため、より複雑な形状を有する製品を容易に製造できる。
【0072】
また、本実施形態では、第2部品CP2bが射出成形機200によって形成される。そのため、例えば、より小さく複雑な形状に形成された第2部品CP2bを、第1部品CP1bに容易に組み込むことができる。
【0073】
なお、例えば、第1部品や支持体に2以上の第2部品を組み合わせることによって集合物を形成することも可能である。この場合、例えば、第3実施形態のように配置工程を実行することと、第1実施形態や第2実施形態のように、第2接触部をその一面が造形ステージ80と接するように形成することを実行してもよい。また、第3実施形態のように配置工程を実行することと、第2実施形態のように、集合物が形成される前に第1部品および支持体の脱脂を実行することと、を実行してもよい。
【0074】
D.他の実施形態:
(D-1)上記実施形態では、第2部品CP2は、射出成形機200によって形成されている。これに対して、第2部品CP2は、射出成形機200によって形成されなくてもよく、例えば、第1部品CP1と同様に、三次元造形によって造形されてもよい。この場合、第2部品CP2は、例えば、第1部品CP1を形成するのに用いられる三次元造形装置と同じ装置を用いて造形されてもよい。この場合、例えば、三次元造形装置は、可塑化された第1材料や第3材料に加えて、可塑化された第2材料を吐出可能に構成されていればよい。また、第2部品CP2は、第1部品CP1を形成するのに用いられる三次元造形装置とは別の装置を用いて造形されてもよい。このように、ともに三次元造形装置によって形成された第1部品CP1と第2部品CP2とを接合することで、上述したように複雑な形状の製品PDを製造するだけでなく、例えば、三次元造形装置で一度に造形可能なサイズに制約されない大型の製品PDを製造できる。
【0075】
(D-2)上記実施形態では、第1部品CP1の形成には、ペレット状の材料が用いられている。これに対して、第1部品CP1の形成にペレット状の材料が用いられなくてもよく、例えば、フィラメント状の材料が用いられてもよい。この場合、第1実施形態で説明したように、第1部品CP1の形成に用いられる材料と第2材料とにおける無機粉末とバインダーとの質量比をそれぞれ異ならせることで、例えば、第1部品CP1の形成に用いられる材料における第1無機粉末とバインダーとの質量比を、当該材料がフィラメント形状を保つのに適するように容易に調整できる。また、他の実施形態では、第1部品CP1の形成に用いられる材料における第1無機粉末とバインダーとの質量比と、第2部品CP2の形成に用いられる材料における第2無機粉末とバインダーとの質量比とが、それぞれ同じであってもよい。
【0076】
(D-3)上記実施形態では、第1無機粉末の粒径と第2無機粉末の粒径とはそれぞれ異なっているが、それぞれ同じであってもよい。
【0077】
(D-4)上記実施形態では、第1部品CP1と支持本体部SBとは、それぞれ同じ材料を用いて形成されている。これに対して、第1部品CP1と支持本体部SBとがそれぞれ第1無機粉末およびバインダーを含んでいれば、第1部品CP1と支持本体部SBとは、それぞれ異なる材料を用いて形成されてもよい。
【0078】
(D-5)上記実施形態において、第1造形物Md1や第2造形物Md2は、造形ステージ80上において、加熱姿勢と同じ姿勢を取るように造形されている。これに対して、造形時における第1部品CP1や支持体SPの姿勢と、加熱姿勢とが異なっていてもよい。つまり、造形時における第1部品CP1や支持体SPの姿勢と、集合物Asにおける第1部品CP1や支持体SPの姿勢とが異なっていてもよい。例えば、
図13は、他の実施形態において、第1造形物Md1と略同様の形状を有する造形物Md3が造形される様子を示す説明図である。造形物Md3は、第1造形物Md1とは異なり、第2接触部TP2の一面F2が造形ステージ80の上面に対して垂直に延びるように形成されている。このように第1部品CP1や支持体SPを形成してもよい。また、例えば、造形ステージ80上において第1部品CP1や支持体SPが加熱姿勢と上下反対の姿勢を取るように、第1部品CP1や支持体SPを形成してもよい。
【0079】
(D-6)上記実施形態において、第1接触部TP1や第2接触部TP2を形成するための層には第3バインダーが含まれているが、第1接触部TP1や第2接触部TP2を形成するための層にバインダーが含まれていなくてもよい。つまり、これらの層を形成するための材料にバインダーが含まれていなくてもよい。
【0080】
(D-7)上記実施形態において、第1部品CP1と第2部品CP2との接合面は、水平面に沿っている。これに対して、第1部品CP1と第2部品CP2との接合面は、水平面に沿っていなくてもよく、例えば、水平面に交差していてもよい。
【0081】
(Dー8)上記実施形態において、組み合わせ工程や除去工程は、ロボットによって実行されている。これに対して、組み合わせ工程や除去工程は、例えば、作業者の手によって実行されてもよい。
【0082】
(D-9)上記実施形態では、可塑化した材料を積層する材料押出方式を例として説明したが、本開示は、バインダージェット方式やマテリアルジェット方式等、種々の方式に適用できる。
【0083】
E.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0084】
(1)本開示の一形態によれば、三次元造形物の製造方法が提供される。この三次元造形物の製造方法は、第1無機粉末と第1バインダーとを含む層を積層することで、第1部品であって、第2無機粉末と第2バインダーとを含む第2部品と熱処理によって接合される第1部品、を形成する第1部品形成工程と、層を積層することで、前記熱処理後に除去される支持体を、前記第1部品と一体に形成する支持体形成工程と、を備える。前記熱処理は、前記第1部品と前記第2部品と前記支持体とが互いに接触するように組み合わされた集合物に対して実行される。前記集合物において、前記第1部品と前記第2部品との少なくともいずれか一方は、他方に対して鉛直方向に離間するとともに上から重なるオーバーハング部を有し、前記支持体形成工程では、前記支持体は、前記集合物において、前記第1部品と前記第2部品との間で前記オーバーハング部を下から支持するように形成される。前記支持体形成工程は、前記第1無機粉末と前記第1バインダーとを含む層を積層することで、前記支持体のうち、前記集合物において前記第1部品および前記第2部品と接触しない部分である支持本体部を形成する第1工程と、第3無機粉末を含む層を積層することで、前記支持体のうち、前記集合物において前記第1部品と接触する部分である第1接触部を形成する第2工程と、前記第3無機粉末を含む層を積層することで、前記支持体のうち、前記集合物において前記第2部品と接触する部分である第2接触部を形成する第3工程と、を含む。前記第3無機粉末の融点は、前記第1無機粉末の融点および前記第2無機粉末の融点よりも高い。
このような形態によれば、支持体を、集合物においてオーバーハング部を支持するように第1部品と一体に形成できる。支持本体部は、第1部品と同様に第1無機粉末を含むので、支持体によってオーバーハング部が効果的に支持された状態を保ちながら、熱処理によって第1部品と第2部品とを接合させることができる。また、第1接触部および第2接触部は、第1無機粉末および第2無機粉末の融点よりも高い融点を有する第3無機粉末を含むので、熱処理によって第1部品と第2部品とが接合された後、支持体を容易に除去して製品を得ることができる。そのため、熱処理によるオーバーハング部の変形に起因して製品の寸法精度が低下することを抑制できる。
【0085】
(2)上記形態では、前記第3工程において、前記第2接触部を、前記第2接触部の一面が造形ステージの上面に接するように形成し、前記第1工程において、前記支持本体部を、形成された前記第2接触部の上に形成し、前記集合物において、前記一面は、前記第2接触部の前記第2部品との接触面を構成してもよい。このような形態によれば、第3工程において、第2接触部の一面を、造形ステージの上面に沿って平面状に形成できる。そして、集合物において、第2接触部がこの一面を介して第2部品に接するので、焼結時に第2部品を支持体によって効果的に支持できる。
【0086】
(3)上記形態では、前記第1無機粉末と、前記第2無機粉末とは、それぞれ同じ元素を主成分とする無機材料によって構成されていてもよい。このような形態によれば、第1部品と第2部品との接合部分にロウなどを用いることなく、第1部品と第2部品とを接合できる。そのため、製品の接合部分における強度が低下することを抑制できる。
【0087】
(4)上記形態では、前記第1部品を形成するのに用いられる材料における前記第1無機粉末と前記第1バインダーとの質量比と、前記第2部品を形成するのに用いられる材料における前記第2無機粉末と前記第2バインダーとの質量比と、は異なっていてもよい。このような形態によれば、各部品を形成するのに用いられる材料における無機粉末とバインダーとの質量比を、各部品の形状や大きさ、形成方法等に応じて、それぞれ最適化できる。
【0088】
(5)上記形態では、前記第1無機粉末の粒径と、前記第2無機粉末の粒径とは、それぞれ異なっていてもよい。このような形態によれば、各無機粉末の粒径を調整することによって、焼結時における第1部品と第2部品との熱収縮量を調整できる。
【0089】
(6)上記形態では、前記第1部品と前記支持本体部とは、それぞれ同じ材料を用いて形成されてもよい。このような形態によれば、第1部品と支持本体部とをそれぞれ異なる材料で形成する場合と比較して、使用される材料の種類を削減できる。
【0090】
(7)上記形態では、前記集合物を形成する前に、前記第1部品に含まれる前記第1バインダーと、前記支持体に含まれる前記第1バインダーと、を加熱によって除去する工程を備えていてもよい。このような形態によれば、集合物を形成した後に第1部品や支持体に含まれるバインダーを除去する場合と比較して、第1部品や支持体に含まれるバインダーを効率的に除去できる。
【0091】
(8)上記形態では、前記第1部品形成工程が実行されている間に実行され、前記集合物を形成するために、予め準備された前記第2部品を途中まで形成された前記第1部品である第1部分の上に配置する部品配置工程を備えてもよい。このような形態によれば、第1部品が形成されている途中に、集合物を形成するために、途中まで形成された第1部品に第2部品を組み合わせることができる。そのため、第1部品に第2部品を容易に組み込むことができる。
【0092】
(9)上記形態では、前記部品配置工程の完了後に、前記第1部品形成工程によって、前記第1部品のうち前記第1部分以降に形成される部分である第2部分の少なくとも一部を、前記第2部品の上方に形成してもよい。このような形態によれば、より複雑な形状を有する製品を容易に製造できる。
【0093】
(10)上記形態では、前記第2部品は、射出成形機によって形成されてもよい。このような形態によれば、射出成形によって、より小さく複雑な形状に形成された第2部品を、第1部品に容易に組み込むことができる。
【符号の説明】
【0094】
5…製造システム、10…吐出部、10a…第1吐出部、10b…第2吐出部、20…ホッパー、20a…第1ホッパー、20b…第2ホッパー、22…供給路、30…可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、41…スクリュー、42…溝形成面、43…側面、44…材料導入口、45…スクリュー溝、46…凸条部、47…スクリュー中央部、50…バレル、52…スクリュー対向面、54…案内溝、56…連通孔、58…ヒーター、60…ノズル、63…ノズル開口、70…移動機構部、80…造形ステージ、90…制御部、100…三次元造形装置、200…射出成形機、205…基台、208…材料供給部、210…可塑化装置、211…スクリュー、212…バレル、213…ヒーター、214…ノズル、215…収容部、216…スクリュー駆動部、217…連通孔、218…逆止弁、220…成形型、221…可動型、222…固定型、223…キャビティー、230…型締装置、231…成形型駆動部、232…ボールネジ、240…射出制御機構、241…射出シリンダー、242…プランジャー、243…プランジャー駆動部、290…制御部、300…脱脂装置、400…焼成炉