(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157793
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】シート製造装置、および水蒸気回収機構
(51)【国際特許分類】
D04H 1/732 20120101AFI20241031BHJP
【FI】
D04H1/732
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072371
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】鴫原 健太
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047AB02
4L047AB06
4L047EA01
(57)【要約】
【課題】簡素な構成にて結露に由来する水滴の要部への落下を抑えるシート製造装置および水蒸気回収機構を提供すること。
【解決手段】シート製造装置1は、繊維を含むウェブWを加熱する加熱部70と、加熱部70の上方に配置され、ウェブWから発生する水蒸気Vを集めるフード部41と、を有し、フード部41は、フード部41の内表面に生じた水滴Dを保持する捕集部410を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含むウェブを加熱する加熱部と、
前記加熱部の上方に配置され、前記ウェブから発生する水蒸気を集めるフード部と、を有し、
前記フード部は、前記フード部の内表面に生じた水滴を保持する捕集部を含むことを特徴とするシート製造装置。
【請求項2】
前記捕集部は、下方の端部に、鉛直方向と交差する第1面を有することを特徴とする、請求項1に記載のシート製造装置。
【請求項3】
前記捕集部は、前記第1面と交差する第2面を有することを特徴とする、請求項2に記載のシート製造装置。
【請求項4】
前記フード部の内部に連通する排気部を有し、
前記排気部は、前記内部の空気を吸引して、前記水蒸気を集めることを特徴とする、請求項1に記載のシート製造装置。
【請求項5】
前記フード部を懸架する支持部を有することを特徴とする、請求項1に記載のシート製造装置。
【請求項6】
下方から生じる水蒸気を集めるフード部と、
前記フード部の内部に連通する排気部と、を有し、
前記フード部は、前記フード部の内表面に生じた水滴を保持する捕集部を含み、
前記排気部は、前記内部の空気を吸引して、前記水蒸気を集めることを特徴とする水蒸気回収機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート製造装置、および水蒸気回収機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装置内部に発生する結露の影響を抑える機構が知られていた。結露が水滴となって部材や製品に落下すると、様々な不具合を引き起こす場合がある。例えば、特許文献1には、特定の箇所に結露を限定的に発生させ、上記特定の箇所以外での結露の発生を低減する画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、ダクトや水蒸気移動部などの構成が複雑になり易いという課題があった。具体的には、例えば、水蒸気移動部は升目状の断面形状を有している。そのため、部材が複雑になって製造コストが上昇するおそれがあった。すなわち、簡素な構成にて、結露に由来する水滴の要部への落下を抑える装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
シート製造装置は、繊維を含むウェブを加熱する加熱部と、前記加熱部の上方に配置され、前記ウェブから発生する水蒸気を集めるフード部と、を有し、前記フード部は、前記フード部の内表面に生じた水滴を保持する捕集部を含むことを特徴とする。
【0006】
水蒸気回収機構は、下方から生じる水蒸気を集めるフード部と、前記フード部の内部に連通する排気部と、を有し、前記フード部は、前記フード部の内表面に生じた水滴を保持する捕集部を含み、前記排気部は、前記内部の空気を吸引して、前記水蒸気を集めることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るシート製造装置の構成を示す模式図。
【
図2】加熱部に対するフード部の配置を示す模式図。
【
図4】フード部を懸架する支持部の配置を示す斜視図。
【
図5】捕集部の構成を示す、
図2における領域Aの模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の実施形態では、乾式にて古紙などの紙片を再生するシート製造装置1を例示し、図面を参照して説明する。本発明のシート製造装置は、乾式であることに限定されず、湿式であってもよい。なお、本明細書において乾式とは、液体中で実施されずに、大気などの空気中で実施されることをいう。
【0009】
以下の各図においては、相互に直交する座標軸としてXYZ軸を付し、各矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を-方向とする。Z軸は鉛直方向に沿う仮想軸であって+Z方向を上方とし、-Z方向を下方とする。-Z方向は重力が作用する方向である。また、シート製造装置1において、原料、ウェブ、およびシートなどの搬送方向の先を下流、搬送方向を遡る側を上流ということもある。図示の便宜上、各部材の大きさを実際とは異ならせている。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係るシート製造装置1は、第1ユニット群101、第2ユニット群102、および第3ユニット群103を有する。第1ユニット群101、第2ユニット群102、および第3ユニット群103は、図示しないフレームに支持される。なお、
図1においては、古紙C、シートP3、スリット片S、および不要な端材などが移動する方向を白抜きの矢印で示している。
【0011】
シート製造装置1は古紙CからシートP3を製造する。シート製造装置1では、-X方向からの側面視にて、-Y方向から+Y方向に向かって、第1ユニット群101、第3ユニット群103、および第2ユニット群102が配置される。
【0012】
古紙Cは、第1ユニット群101から、第3ユニット群103内を横断する配管21を介して第2ユニット群102へ搬送される。そして古紙Cは、第2ユニット群102にて解繊などが施されて繊維と成ってから、結着材などを含む混合物とされる。混合物は、配管24を介して第3ユニット群103へ搬送される。混合物は、第3ユニット群103にてウェブWとされてから、帯状のシートP1に成形される。帯状のシートP1は、第1ユニット群101にて切断されてシートP3と成る。
【0013】
第1ユニット群101は、バッファータンク13、定量供給部15、合流部17、および配管21を有する。第1ユニット群101では、上流から下流に向かって、これらの構成が上記の順番にて配置される。また、第1ユニット群101は、第1切断部81、第2切断部82、トレイ91、および細断部95も有する。第1切断部81および第2切断部82は、帯状のシートP1を所定の形状のシートP3に切断する。さらに、第1ユニット群101は給水部67を有する。給水部67は貯水タンクである。給水部67は、後述する第1加湿部65および第2加湿部66の各々へ、図示しない給水管にて加湿用の水を供給する。
【0014】
古紙Cは、原料投入口11からバッファータンク13へ投入される。古紙Cは、セルロースなどの繊維を含み、例えば細断された古紙の紙片である。バッファータンク13の内部には、第3ユニット群103に備わる第2加湿部66から、加湿された空気が供給される。
【0015】
解繊される古紙Cは、バッファータンク13にて一時的に貯留された後、シート製造装置1の稼働に応じて定量供給部15へ搬送される。シート製造装置1は、バッファータンク13の上流側に、古紙などを細断するシュレッダーを備えてもよい。
【0016】
定量供給部15は、計量器15a、および図示しない供給機構を有する。計量器15aは古紙Cの質量を計量する。供給機構は、計量器15aにて計量された古紙Cを、下流の合流部17に供給する。すなわち、定量供給部15は、計量器15aにて古紙Cを所定の質量毎に計量して、供給機構にて下流の合流部17へ供給する。
【0017】
計量器15aには、デジタル式およびアナログ式の何れの計量機構も適用可能である。具体的には、計量器15aとして、ロードセルなどの物理センサー、およびバネ秤や天秤などが挙げられる。本実施形態では計量器15aとしてロードセルを用いる。計量器15aが古紙Cを計量する所定の質量とは、例えば、数gから数10g程度である。
【0018】
供給機構には、振動式フィーダーなどの公知の技術を適用可能である。供給機構は、計量器15aに含まれる構成であってもよい。
【0019】
定量供給部15での古紙Cの計量および供給はバッチ処理である。すなわち、定量供給部15から合流部17への古紙Cの供給は、間欠的に実施される。定量供給部15は、計量器15aを複数有してもよく、複数の計量器15aを時差稼働させて、計量の効率を向上させてもよい。
【0020】
合流部17では、定量供給部15から供給される古紙Cに対して、細断部95から供給されるスリット片Sの細断片が合流して混合される。スリット片Sおよび細断部95については後述する。上記細断片が混合された古紙Cは、合流部17から配管21へと流入する。
【0021】
配管21は、図示しないブロアーが発生させる気流によって、古紙Cを第1ユニット群101から第2ユニット群102へ搬送する。
【0022】
第2ユニット群102は、乾式解繊機である解繊部31、分離部32、配管23、混合部33、および配管24を有する。第2ユニット群102では、上流から下流に向かって、これらの構成が上記の順番にて配置される。また、第2ユニット群102は、分離部32に接続される配管25、回収部35、コンプレッサー38、および電源部39も有する。
【0023】
配管21を搬送された古紙Cは、解繊部31に流入する。解繊部31は、定量供給部15から供給される古紙Cを乾式にて解繊して繊維にする。解繊部31には、公知の解繊機構が適用可能である。
【0024】
解繊部31としては、例えば以下の構成が挙げられる。解繊部31は、ステーターおよびローターを備える。ステーターは略円筒状の内側面を有する。ローターは、ステーターの内部に設置されて、ステーターの内側面に沿って回転する。古紙Cの細片は、ステーターの内側面とローターとの間に挟まれて、これらの間に生じるせん断力によって解繊される。これにより、古紙Cは、紙片に含まれる絡まった繊維が解きほぐされる。古紙Cは繊維とされて分離部32に搬送される。
【0025】
分離部32は解繊された繊維を分別する。詳しくは、分離部32は、繊維に含まれる、シートP3の製造に不要な成分を取り除く。具体的には、分離部32は、比較的に長い繊維と、比較的に短い繊維とを分別する。比較的に短い繊維は、シートP3の強度低下を招く場合があるため、分離部32にて分別される。また、分離部32は、古紙Cに含まれる色材や添加剤なども分別して排除する。分離部32には、円盤メッシュ方式などの公知の技術が適用可能である。
【0026】
分離部32の内部には、第3ユニット群103の第2加湿部66から加湿された空気が供給される。
【0027】
解繊された繊維は、比較的に短い繊維などが排除されて、配管23を介して混合部33へ搬送される。比較的に短い繊維や色材などの不要分は、配管25を介して回収部35へ排出される。
【0028】
混合部33は、繊維に結着材などを空気中で混合して混合物とする。図示を省略するが、混合部33は、繊維が搬送される流路、ファン、ホッパー、供給管、およびバルブを備える。
【0029】
ホッパーは、供給管を介して繊維の流路に連通する。バルブは、ホッパーと流路との間の供給管に設けられる。ホッパーは、でんぷんなどの結着材を流路内へ供給する。バルブは、ホッパーから流路に供給される結着材の質量を調整する。これにより、繊維と結着材との混合比が調整される。
【0030】
混合部33は、結着材を供給する上記構成の他に、色材や添加剤などを供給する同様な構成を備えてもよい。
【0031】
混合部33のファンは、発生させる気流により、繊維を下流へ搬送しながら結着材などを空気中で混入させて混合物とする。混合物は、混合部33から配管24へ流入する。
【0032】
回収部35は、図示しないフィルターを備える。フィルターは、配管25を気流にて搬送された比較的に短い繊維などの不要分を濾し取る。
【0033】
コンプレッサー38は圧縮空気を生成する。上記フィルターでは、不要分のうちの微細な粒子などによって目詰まりが生じる場合がある。コンプレッサー38が生成する圧縮空気をフィルターに吹き付けて、付着した粒子を吹き飛ばしてフィルターをクリーニングすることが可能である。
【0034】
電源部39は、図示しない制御部、およびシート製造装置1に電力を供給する電力供給装置を含む。電源部39は、外部から供給される電力をシート製造装置1の各構成に分配する。制御部は、シート製造装置1の各構成と電気的に接続され、これらの構成の稼働を統合的に制御する。
【0035】
第3ユニット群103は、繊維を含む混合物を堆積させて圧縮し、再生紙である帯状のシートP1に成形する。第3ユニット群103は、堆積部50、第1搬送部61、第2搬送部62、第1加湿部65、第2加湿部66、排水部68、加熱部70、および水蒸気回収機構40を有する。水蒸気回収機構40は、フード部41、配管48、および排気部49を含む。なお
図1では、図を見易くするために、フード部41や加熱部70に対して、-X方向に配置される配管48および排気部49を破線としている。
【0036】
第3ユニット群103では、上流から下流に向かって、堆積部50、第1搬送部61、第2搬送部62、第1加湿部65、加熱部70が、上記の順番にて配置される。第2加湿部66は、第1加湿部65の下方に配置される。水蒸気回収機構40のうち、フード部41は加熱部70の上方に配置される。
【0037】
堆積部50は、分別された繊維が含まれる混合物を空気中で堆積させてウェブWを生成する。堆積部50は、ドラム部材53、ドラム部材53内に設置される羽根部材55、ドラム部材53を収容するハウジング51、吸引部59を有する。混合物は、配管24からドラム部材53の内部に取り込まれる。
【0038】
堆積部50の下方には、第1搬送部61が配置される。第1搬送部61は、メッシュベルト61a、メッシュベルト61aを張架する図示しない5つの張架ローラーを有する。吸引部59は、Z軸に沿う方向において、メッシュベルト61aを挟んでドラム部材53と対向する。
【0039】
羽根部材55は、ドラム部材53の内部にあって、図示しないモーターによって回転駆動される。ドラム部材53は半円柱状の篩である。ドラム部材53の下方を向く側面には、篩の機能を有する網が設けられる。ドラム部材53は、篩の網の目開きの大きさより小さい繊維や混合物などの粒子を、内部から外側に通過させる。
【0040】
混合物は、ドラム部材53内において、回転する羽根部材55に撹拌されながらドラム部材53の外側に放出される。ドラム部材53の内部には、第2加湿部66から加湿された空気が供給される。
【0041】
吸引部59はドラム部材53の下方に配置される。吸引部59は、メッシュベルト61aが有する複数の穴を介して、ハウジング51内の空気を吸引する。メッシュベルト61aの複数の穴は、空気を通し、混合物に含まれる繊維や結着材などを通し難い。これにより、ドラム部材53の外側に放出された混合物は、空気と共に下方に吸引される。吸引部59はブロアーなどの公知の吸引装置である。
【0042】
混合物は、ハウジング51内の空気中に分散されて、重力と吸引部59の吸引によって、メッシュベルト61aの上方の面に堆積してウェブWとなる。
【0043】
メッシュベルト61aは、無端ベルトであって、5つの張架ローラーによって張り架けられる。メッシュベルト61aは、張架ローラーの自転によって、
図1において反時計回りに回動する。これにより、メッシュベルト61aに連続して混合物が堆積し、ウェブWが形成される。ウェブWは、空気を比較的に多く含み、柔らかく膨らんでいる。第1搬送部61は、形成されたウェブWを、メッシュベルト61aの回動により下流へ搬送する。
【0044】
第2搬送部62は、第1搬送部61の下流において、第1搬送部61に代わってウェブWを搬送する。第2搬送部62は、メッシュベルト61aの上方の面からウェブWを剥離させて、加熱部70に向けて搬送する。第2搬送部62は、ウェブWの搬送経路の上方にあって、メッシュベルト61aのリターン側の起点よりもやや上流側に配置される。第2搬送部62の+Y方向と、メッシュベルト61aの-Y方向とは、鉛直方向において一部が重なる。
【0045】
第2搬送部62は、図示しない輸送ベルト、複数のローラー、およびサクション機構を有する。輸送ベルトには空気を通す複数の穴が設けられる。輸送ベルトは、複数のローラーによって張り架けられ、ローラーの回転により回動する。
【0046】
第2搬送部62は、サクション機構が発生させる負圧により、ウェブWの上方の面を輸送ベルトの下方の面に吸着させる。この状態にて輸送ベルトが回動することによって、ウェブWは、輸送ベルトに吸着されて下流へ搬送される。
【0047】
第1加湿部65は、第3ユニット群103の堆積部50にて堆積された繊維を含むウェブWを加湿する。詳しくは、第1加湿部65は、例えば、ミスト式加湿器であって、第2搬送部62によって搬送されるウェブWへ下方からミストMを供給して加湿する。第1加湿部65は、第2搬送部62の下方に配置され、第2搬送部62が搬送するウェブWとZ軸に沿う方向に対向する。第1加湿部65には、例えば超音波式などの公知の加湿装置が適用可能である。
【0048】
ウェブWがミストMにて加湿されることにより、でんぷんの結着材としての機能が促進されて、シートP3の強度が向上する。また、ウェブWに対して下方から加湿するため、ミスト由来の雫のウェブWへの落下が防止される。さらに、輸送ベルトとウェブWとの接触面の反対側から加湿するため、輸送ベルトに対するウェブWの貼り付きが低減される。第2搬送部62はウェブWを加熱部70へ搬送する。
【0049】
加熱部70は、ウェブWを加熱および加圧して帯状のシートP1に成形する。加熱部70は、一対の加熱ローラー71,72を有する。一対の加熱ローラー71,72の各々は、電熱ヒーターを内蔵し、ローラー表面を加熱する機能を有する。
【0050】
一対の加熱ローラー71,72の間へ、ウェブWを連続的に通過させることにより、ウェブWが加熱されながらプレス加工される。これにより、比較的に空気を多く含んで柔らかいウェブWから、内包する空気が低減されると共に結着材によって繊維同士が結着されて、帯状のシートP1が成形される。帯状のシートP1は、図示しない搬送ローラーにより、第1ユニット群101へ搬送される。
【0051】
加熱部70にてウェブWが加熱されることにより、ウェブWに含まれる水分が水蒸気Vとして揮散する。一般に、水蒸気は冷やされると結露を生じさせる。従来、結露が顕著になると水滴が下方に落下して、完成品などの品質を低下させる場合があった。これに対して、水蒸気回収機構40は、ウェブWから生じる水蒸気Vを回収して、水蒸気Vの結露に由来する水滴が、加熱部70などの要部やシートP1へ落下することを抑えるものである。
【0052】
フード部41は、下方が開放され、下方から上方へ向かってテーパー状に内部の空間が狭まる形状である。これにより、フード部41は、下方から生じる水蒸気V、すなわちウェブWから発生する水蒸気Vを集める機能を有する。なお、フード部41の詳細については後述する。
【0053】
フード部41の頂部には配管48が接続される。配管48は、下方に引き回されて、第1加湿部65の内部に接続される。配管48の経路において、フード部41から第1加湿部65までの途中に排気部49が設けられる。排気部49は、フード部41の内部に連通する。
【0054】
排気部49は、例えば電動式の吸引ファンであって、フード部41の内部の空気を吸引して、ウェブWから発生する水蒸気Vおよび多湿な空気を集めて第1加湿部65へと送り出す。排気部49の吸引によって、フード部41の内部へ水蒸気Vがさらに集まり易くなる。そのため、フード部41の外側において、結露の発生をさらに抑えることができる。
【0055】
これらにより、加熱部70においてウェブWから発生した水蒸気Vは、上方のフード部41の内部に集められる。そして、水蒸気Vの一部はフード部41の内表面に結露する。その他の水蒸気Vは、配管48を介して第1加湿部65へ戻されて、第1加湿部65が発生させるミストMと共にウェブWを加湿する。
【0056】
第2加湿部66は、第1加湿部65の下方に配置される。第2加湿部66には、公知の気化式の加湿装置が適用可能である。気化式の加湿装置としては、例えば、湿らせた不織布などに風をあてて水分を気化させ、加湿した空気を発生させるものが挙げられる。
【0057】
第2加湿部66は、シート製造装置1の所定の領域を加湿する。所定の領域とは、バッファータンク13、分離部32、および堆積部50のドラム部材53内のうちの1つ以上である。具体的には、図示しない複数の管を介して、第2加湿部66から上記領域へ加湿された空気が供給される。加湿された空気は、上記の各構成において、古紙Cや繊維などの帯電を抑制して、これらの静電気による部材への付着を抑える。
【0058】
排水部68は排水タンクである。排水部68は、第1加湿部65および第2加湿部66などで使用され、古くなった水分を集めて貯留する。排水部68は、必要に応じてシート製造装置1から取り外して、溜まった水を廃棄することが可能である。
【0059】
第1ユニット群101に搬送される帯状のシートP1は、第1切断部81に至る。第1切断部81は、帯状のシートP1を搬送方向と交差する方向、例えばX軸に沿う方向に切断する。帯状のシートP1は、第1切断部81にて単票状のシートP2に切断される。単票状のシートP2は、第1切断部81から第2切断部82へ搬送される。
【0060】
第2切断部82は、単票状のシートP2を搬送方向、例えばY軸に沿う方向に切断する。詳しくは、第2切断部82は、単票状のシートP2において、X軸に沿う方向の両側の辺近傍を切断する。これにより、単票状のシートP2は、A4判やA3判などの所定の形状のシートP3と成る。シートP3は、斜め上方に搬送されてトレイ91に集積される。シートP3は、例えばコピー用紙などの代替品として適用可能である。
【0061】
第2切断部82にて、単票状のシートP2をシートP3に切断する際に、端材であるスリット片Sが生じる。スリット片Sは、略-Y方向へ搬送されてシュレッダーである細断部95に至る。細断部95は、スリット片Sを細断して細断片として、合流部17へ供給する。細断部95と合流部17との間には、スリット片Sの細断片を計量して合流部17へ供給する機構が設置されてもよい。
【0062】
図2に示すように、フード部41は、下方が広く上方が狭い形状を有する。X軸に沿う方向において、フード部41の下端の長さは、加熱部70の加熱ローラー71,72の長さより長い。そして、X軸に沿う方向において、フード部41の下方の両端は、一対の加熱ローラー71,72の両端よりも外側に張り出している。そのため、図示しないウェブWからの水蒸気Vが、フード部41に集まり易くなっている。なお、二点鎖線で囲んだ領域Aについては
図5の説明で述べる。
【0063】
図3に示すように、フード部41は、略角錐状であって、角錐の側面に相当する部位から成る。図示を省略するが、フード部41において、角錐の底面に相当する領域は開放されている。フード部41は樹脂や金属などで形成される。
【0064】
フード部41の上方の頂部には配管48が接続される。
図3では、配管48のうち、フード部41側の一部分のみを図示している。
【0065】
図4に示すように、シート製造装置1は、フード部41を懸架する一対の支持部43を有する。一対の支持部43は、各々X軸に沿って延在し、Y軸に沿う方向に並んで配置される。
【0066】
上方からの平面視にて、フード部41の四隅に支持部43が固定される。これにより、シート製造装置1の稼働時の振動などが、フード部41に伝播し難くなる。そのため、フード部41の内表面に生じた水滴が落下し難くなる。フード部41と支持部43との固定には、例えばねじ締結が適用される。
【0067】
支持部43は、上述したシート製造装置1のフレームに支持される。つまり、フード部41は、支持部43を介してフレームに支持される。
【0068】
支持部43は、例えば、金属板から板金加工によって作製される。本実施形態では、支持部43はフード部41を4点で懸架しているが、これに限定されない。支持部43は、1点以上でフード部41を懸架すればよい。
【0069】
図5に示すように、フード部41は捕集部410を含む。詳しくは、略角錐状のフード部41において、角錐側面の下方の辺、換言すれば角錐底面の外周に相当する部位に、捕集部410が配置される。図示を省略するが、上方からの平面視にて、捕集部410はフード部41の下端の外周を囲んで設けられる。捕集部410は、フード部41の内表面に水蒸気Vの結露によって生じた水滴Dを保持する。
【0070】
捕集部410は、第1面411および第2面412を有する。第1面411は、捕集部410の下方の端部にあって、鉛直方向と交差する面である。本実施形態では、第1面411はXY平面に沿う。第1面411によって、捕集部410に水滴Dが保持され易くなる。そのため、下方への水滴の落下をより抑えることができる。
【0071】
第2面412は、第1面411と交差する面である。本実施形態では、第2面412はYZ平面に沿う。第2面412によって、捕集部410に保持可能な水滴Dの量が増加する。そのため、下方への水滴の落下をよりいっそう抑えることができる。
【0072】
捕集部410に捕集された水滴Dを、チューブなどを介して給水部67または排水部68へ流入させてもよい。
【0073】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0074】
簡素な構成にて、水蒸気Vの結露に由来する水滴Dの要部やシートP1への落下を抑えることができる。詳しくは、従来技術のように特定の箇所へ限定的に結露を生じさせる構成によらず、フード部41および捕集部410によって下方への水滴Dの落下が抑制される。これにより、水滴Dの落下に由来する装置内での錆の発生や、ウェブWから製造されるシートP3の品質低下が抑えられる。すなわち、簡素な構成にて、結露に由来する水滴Dの落下を抑えるシート製造装置1および水蒸気回収機構40を提供することができる。
【符号の説明】
【0075】
1…シート製造装置、40…水蒸気回収機構、41…フード部、43…支持部、49…排気部、70…加熱部、410…捕集部、411…第1面、412…第2面、D…水滴、V…水蒸気、W…ウェブ。