(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157799
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】通船ゲートシステム
(51)【国際特許分類】
E02B 5/06 20060101AFI20241031BHJP
E02C 1/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
E02B5/06
E02C1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072383
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000108270
【氏名又は名称】ゼニヤ海洋サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】山中 康史
(72)【発明者】
【氏名】田尻 康秀
(72)【発明者】
【氏名】堤 修
(57)【要約】
【課題】 船舶に損傷を与え難く、特に船舶のスクリュー部への破損がなく、安全に開閉できる通船ゲートシステムを提供する。
【解決手段】 ゲート領域を開放若しくは閉鎖する通船ゲートシステム1であって、ネットNとゲートフレーム5とからなるゲート本体と、前記ゲート本体から離間して押倒し可能に配置されたローラスイッチ43、43と、前記ローラスイッチ43、43の押倒しにより前記ゲート本体を開放させるローラメインフレーム40とゲートメインフレーム50とヒンジフレーム6、7とからなる連動機構を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート領域を開放若しくは閉鎖する通船ゲートシステムであって、
ゲート本体と、前記ゲート本体から離間して押倒し可能に配置されたローラスイッチと、前記ローラスイッチの押倒しにより前記ゲート本体を開放させる連動機構を有することを特徴とする通船ゲートシステム。
【請求項2】
ローラスイッチは左右一対に配置された浮体であり、左右方向に軸支された回転可能な回転体であることを特徴とする請求項1に記載の通船ゲートシステム。
【請求項3】
左右一対のローラスイッチはゲート本体の前後に各々配置され、前後のローラスイッチは船舶が通過する際に前後とも押倒し可能な位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の通船ゲートシステム。
【請求項4】
連動機構は、ローラスイッチの回転軸を接続する上下方向に延びるローラメインフレームと、ゲート本体の左右両側に位置する上下方向に延びるゲートメインフレームと、前記ローラメインフレームと前記ゲートメインフレームとを押倒し可能に接続する前後方向に延びるヒンジフレームを有することを特徴とする請求項2または3のいずれか一項に記載の通船ゲートシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム、河川、湖沼などの水域を区画した状態で、区画水域間を通過するための通船ゲートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水上において水域を区画する通船ゲートにおいて、船舶で移動する際に通船ゲートに備えられた扉の開閉や、扉を乗り越えることによって通船可能とするものがある。このうち扉を船舶で押し倒して進むもの(特許文献1)や、船で乗り上げるもの(特許文献2)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-21054号公報
【特許文献2】特許第6506465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の通船ゲートは、船が直接扉に接触するので船自体、特に船首に損傷を生じてしまう欠点があった。さらに特許文献1は扉体にローラが配置されているが、船舶の進入位置によってはローラではなく扉自体に接触することもあり、船舶の損傷が発生する可能性がある。特許文献2のようにかかる船舶の損傷を防ぐために乗り上げ式のローラを用いた先行技術も存在した。しかし、乗り上げ式のローラを用いた場合も軽量な船や小型な船では通船しにくく、船舶の中央後ろ側位置にあるスクリュー部を破損させることがあり、乗り上げ部の構造を変える必要があった。
【0005】
そこで、本発明は、船舶に損傷を与え難く、特に船舶のスクリュー部への破損がなく、安全に開閉できる通船ゲートシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、ゲート領域を開放若しくは閉鎖する通船ゲートシステムであって、ゲート本体と、前記ゲート本体から離間して押倒し可能に配置されたローラスイッチと、前記ローラスイッチの押倒しにより前記ゲート本体を開放させる連動機構を有することを特徴とする。
【0007】
また、ローラスイッチは左右一対に配置された浮体であり、左右方向に軸支された回転可能な回転体であることが好ましい。
【0008】
また、左右一対のローラスイッチはゲート本体の前後に各々配置され、前後のローラスイッチは船舶が通過する際に前後とも押倒し可能な位置に配置されていることが好ましい。
【0009】
また、連動機構は、ローラスイッチの回転軸を接続する上下方向に延びるローラメインフレームと、ゲート本体の左右両側に位置する上下方向に延びるゲートメインフレームと、前記ローラメインフレームと前記ゲートメインフレートとを倒立可能に接続する前後方向に延びるヒンジフレームを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、ゲートから離間した乗り上げ式のローラスイッチを用いているため船舶が直接ゲートに接触せず、船舶の損傷を防ぐことが可能になる。また、ローラスイッチを用いることで船舶の接触は点接触になることから船舶への損傷の発生を生じにくくして通船することが可能である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明によれば、左右一対のローラスイッチとしたことで船舶が通船しようとする状態において、船舶の船首を案内しやすい。また、船舶の中央後部のスクリューに接触することがなくなり、スクリュー部の損傷を防ぐことが可能となる。さらに浮体素材を用いることで船舶通過後はローラスイッチが浮き上がり、連動機構によりゲート本体を自然に閉じることも可能になる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明によれば、前後にローラスイッチを配し、船舶が前後のローラスイッチを押倒し可能な位置に配していることから、船舶が通過する際に前側のローラスイッチの押倒しでゲート本体が開き、ゲート本体を通過後に後側のローラスイッチの押倒し状態を維持したまま通過することができる。これで通過時にゲート本体が閉じて船舶の損傷を防ぐことができるとともに、ゲートの前後から一つの機構で開閉することを可能にしている。
【0013】
また、請求項4記載の発明によれば、ローラフレーム、メインフレーム、ヒンジフレームの連動機構により連動させることができ、簡易な構成で船舶の損傷が少ない通船ゲートシステムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の通船ゲートシステムの全体斜視図である。
【
図3】メインフレームを取り除いた状態の通船ゲートシステムの側面図である。
【
図6】ヒンジを示すものであって、(a)は回転ヒンジの背面図、(b)は回転ヒンジの側面図、(c)は可変ヒンジの背面図、(d)は可変ヒンジの側面図である。
【
図7】ローラフレーム全体を示すものであって、(a)はローラフレームの正面図、(b)はローラフレームの平面図、(c)はローラフレームの側面図である。
【
図8】(a)は錘部の平面図、(b)は錘部の側面図を示す。
【
図9】ゲート本体を示すものであって、(a)はゲートフレームのみの正面図、(b)はゲートフレームのみの側面図である。
【
図12】船舶が進入する直前の状態を示す通船ゲートシステムの平面図である。
【
図14】船舶が通過途中で前後のローラスイッチに乗り上げている状態の通船ゲートシステムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る通船ゲートシステム1の一例について
図1-15に基づいて説明する。本説明において
図1の矢印線Xの方向が船舶の進行方向であり前後方向、矢印線Yが高さ方向であり上下方向、矢印線Zの方向が幅方向であり左右方向として説明し、メインフレーム2の開口部を内側、それ以外を外側と呼称する。
【0016】
本実施形態の通船ゲートシステム1は、1つの水域を複数の領域に区画するために区画ネットを配置することがあるが、区画ネットの一部をゲート領域として内外を船舶が往来するにあたり、当該ゲート領域を開放、閉鎖するための通船ゲートシステム1である。図面を省略しているが、
図1に示すコの字状のメインフレーム2の外側に区画ネットが接続されている。また、
図4、
図5に示すように、本実施形態の通船ゲートシステム1は、上下方向に延びる左右位置にある上下メインフレーム2a、2aのさらに外側に浮体F、Fが配置され、全体の約3分の1程度が水面上に位置するように維持している。
【0017】
まず、本実施形態の全体的構成を説明する。
図1に示すように、通船ゲートシステム1は上方を開口した略コの字状のメインフレーム2と、メインフレーム2から交差するように延出された左右一対の固定ヒンジフレーム3、3と、固定ヒンジフレーム3の前後両端で接続された上下方向に延びる前後及び左右一対のローラフレーム4、4と、前後のローラフレーム4、4の中間位置で上下方向に延びる左右一対のゲートフレーム5、5と、前後のローラフレーム4、4とゲートフレーム5とを接続する左右一対の上部ヒンジフレーム6、6と下部ヒンジフレーム7、7とを有する。固定ヒンジフレーム3、3は回転ヒンジ10、10によってローラフレーム4、4、ゲートフレーム5を回動自在に接続し、同じく上部ヒンジフレーム6、6は上部ヒンジ20,20、下部ヒンジフレーム7、7は下部ヒンジ30、30を介してローラフレーム4、4、ゲートフレーム5と接続している。これにより、ローラフレーム4、4が押し倒されたときに追従してゲートフレーム5が押し倒されるように連動させる連動機構としている。なお、各部材はステンレス製の鋼管や角形からなるものである。
【0018】
本実施形態の通船ゲートシステム1の基本枠体であるメインフレーム2と固定ヒンジフレーム3について説明する。
図1乃至
図3に示すように、メインフレーム2は全体的に太い形鋼を用いて、上方を開口するように略コの字状にして曲折するものであって、その左右位置にあって上下方向に延びる上下メインフレーム2a、2aと、上下メインフレーム2a、2aの下端部同士を水中で繋ぎ合わせるように左右方向に延びる左右メインフレーム2bを有する。上下メインフレーム2a、2aの中段付近には、上下メインフレーム2a、2aと直交するようにして角型鋼管を用いた固定ヒンジフレーム3、3が前後方向に延びるように貫装されている。
【0019】
固定ヒンジフレーム3、3の内側の面には、その長手方向の両端と、中心部には回転ヒンジ10、10が配置されている。回転ヒンジ10、10は、
図6(a)、(b)に示すように、略矩形状の板部11と垂直方向に円柱型の挿通部12が、突出されており、挿通部12は、第1段部12a、第2段部12b、第3段部12cと段に連なる様に形成されている。各段部の径は第2段部12bより第1段部12aが小さく、第1段部12aより第3段部12cが小さい。一方、各段部の垂直方向の長さは、第2段部12bの略5倍ほどの長さを第1段部12aが有しており、第1段部12aの略2.5倍ほどの長さを第3段部12cが有している。そして、固定ヒンジフレーム3、3の内側の面と、挿通部12を有しない方の板部11の面と、が接合される。この回転ヒンジ10、10によりローラフレーム4とゲートフレーム5が回動可能となるように接続されている。
【0020】
次に、
図1,
図7を示してローラフレーム4について説明する。ローラフレーム4とはローラメインフレーム40、トラスフレーム41、ローラスイッチ43、43を回転自在に支持する回転軸42とからなる。ローラフレーム4は、全体としてメインフレーム2よりも細い丸型鋼管を用いている。上下方向に延びる前後及び左右一対のローラメインフレーム40、40は、上述した回転ヒンジ10の第3段部12cを挿通するためのヒンジ孔40bを、その長手方向(上下方向)の中央付近やや下方に開孔しており、ローラメインフレーム40、40は固定ヒンジフレーム3の長手方向と直交するようにしてヒンジ孔40bが回転ヒンジ10の第3段部12cによって回動自在に軸支されている。ローラメインフレーム40、40の上端の位置は、上下メインフレーム2aの上端より低く位置し、ローラメインフレーム40、40の上端のやや下方には上部ヒンジ20、20を挿通するためのヒンジ孔40aを開孔し、ヒンジ孔40aの位置より下方から左右方向に延びるトラスフレーム41、41を内側に向けて延長している。また、ローラメインフレーム40、40の下端の位置は、左右メインフレーム2bの上端より高く位置し、ローラメインフレーム40、40の下端のやや上方には、錘部44、44と下部ヒンジ30、30を挿通するためのヒンジ孔40cを開孔している。
【0021】
トラスフレーム41は、中央付近やや下方に左右一対のローラメインフレーム40、40を接続する下フレーム41aと、上方に、ローラスイッチを軸支する上フレーム41bとが左右メインフレーム2bと略平行となるように左右方向に向けて配置され、上フレーム41bと下フレーム41aを斜めに接続する斜材フレーム41cと、がトラス状に構成される。
【0022】
上フレーム41bから延長するようにして、内側に略T字状に分岐し更に内側へと延長した二又状のフレームとなる回転軸42、42が配置される。回転軸42において、上フレーム41bから二又状に分かれたローラスイッチ43、43同士は、外面がお互いに摺動しないような距離を確保しており、上フレーム41bの中心にはブレース41d、41dが連結する。
【0023】
ローラスイッチ43、43は、左右方向(水平方向)に延びる回転軸42で回転自在に軸支されている。ローラスイッチ43、43の位置はゲートフレーム5の上端よりも下方に位置しており、水面付近に位置している(
図3参照)。これにより船舶がゲート本体に近づいたときにローラスイッチ43、43に接触し、ローラを回転させつつ押倒しながら進行することができる。ローラスイッチ43、43の形状は全体的に丸みを帯びた形態を有しており、
図1に示すように軸孔を開けた球体を図示しているが、両端面の角を丸めた円柱状の形態やラグビーボールのような形態であってもよい。ローラスイッチ43、43が回転可能に接続されており、丸みを帯びた形状であることから船舶との接触位置を少なくし、接触時の衝撃を軽減させている。
【0024】
図8(a)、(b)に示すように、錘部44は、一定の重量を有するウェイトプレート44aを複数枚積み重ね、その重心位置で吊具44bによって懸垂支持され、所定の重量を有するものである。錘部44はローラフレーム4の下端から吊り下げられ、ローラフレーム4を下方に沈下させるように力をかけている。
【0025】
ゲート本体について説明する。ゲート本体とはゲートフレーム5、5とネットNとからなるもので、ゲート領域を開放若しくは閉鎖するための部位である。ゲートフレーム5は、
図9(a)、(b)に示すようにメインフレーム2の開口部内において、ローラメインフレーム40の長手方向と略平行となるように上下方向に向けて延びる左右一対のゲートメインフレーム50、50と、左右一対のゲートメインフレーム50、50の上方と下方とを掛け渡すように接続する上方フレーム51と下方フレーム52とからなり、各フレームは丸型鋼管からなる。このゲートフレーム5、5にネットNを張り付けることでゲート本体としている。
【0026】
ゲートメインフレーム50、50において、その上端はローラメインフレーム40、40の上端と同じ高さに位置し、ゲートメインフレーム50、50の下端は、左右メインフレーム2b付近でローラメインフレーム40、40の下端の位置の高さに位置している。また、ゲートメインフレーム50、50は、ローラメインフレーム40の各々のヒンジ孔40a、40b、40cと同じ高さの位置にヒンジ孔50a、50b、50cを開孔している。上方フレーム51の両端はヒンジ孔50a、50aに挿入されてゲートメインフレーム50、50間を接続し、下方フレーム52の両端はヒンジ孔50b、50bに挿入されてゲートメインフレーム50、50間を接続している。そしてヒンジ孔50b、50bは、固定ヒンジフレーム3、3の中心に配した回転ヒンジ10、10の第3段部12c、12cを受けて回動自在に軸支される。
【0027】
ネットNは網目を有したもので、左右一対のゲートメインフレーム50、50の間に位置している。ネットNはネットN1とネットN2とからなり、ネットN1が上下一対の上方フレーム51と下方フレーム52とに接着などによって取り付けられているが、ネットN2は下方フレーム52に上方を取り付けられた状態で垂下している。
【0028】
上部ヒンジフレーム6と下部ヒンジフレーム7を
図10、
図11により説明する。
図10に示すように、上部ヒンジフレーム6は固定ヒンジフレーム3、3と略平行となるよう前後方向に延びるものであり、両端を丸めて形成されている。上部ヒンジフレーム6,6の長手方向の両端は略円弧状であってその円弧の中心には、ローラフレーム4に開孔されたヒンジ孔40a(
図7参照)と同形状のヒンジ孔6a、6aを開孔されている。上部ヒンジフレーム6,6の配置位置は、ローラフレーム4、4が左右方向内側に配置されるようにし、メインフレーム2の開口部位置において上下メインフレーム2aとゲートメインフレーム50との間に位置している。また、上部ヒンジフレームのヒンジ孔6a、6aとローラフレーム4のヒンジ孔40a、40aとが同じ高さで対向しあうと共に、その上部ヒンジフレーム6、6の長手方向の中心部にはゲートフレーム5のヒンジ孔50aと同形状のヒンジ孔6bが開孔され、上部ヒンジフレームのヒンジ孔6bとゲートフレーム5のヒンジ孔50aとが同じ高さで対向しあっている。
【0029】
下部ヒンジフレーム7は
図11に示すように、板部70から、その長手方向の両端は上方に傾斜して広がるようにして第1延出部71、71が配置され、長手方向の中心からは上方に起立するようにして第2延出部72が延出したものを左右2つ用いてゲートメインフレーム50と、ローラメインフレーム40、40を挟持している。各々の延出部は、板部70の短手方向の長さだけ延出し、各々延出部の端部は円弧状であり、その円弧状の中心には下部ヒンジ30を挿通するためのヒンジ孔71a、71a、とヒンジ孔72aを開放している。
【0030】
上部ヒンジ20、及び下部ヒンジ30は、
図6(c)、(d)に示すように、略円板状の円板部21(31)から、挿通部22(32)が円板部21(31)を縮径した面を垂直方向に片側だけ突出されている。上部ヒンジ20においては、挿通部22が、ヒンジ孔6a、6aとヒンジ孔40a、40aと、ヒンジ孔6bとヒンジ孔50aを各々挿通し、ワッシャによって回動自在に挟持している。一方、下部ヒンジ30においては、挿通部32がヒンジ孔71a、71aとヒンジ孔40cと錘部44の挿通孔と、ヒンジ孔72aとヒンジ孔50cとを各々挿通し、ワッシャによって回動自在に挟持している。なお、メインフレーム2の開口部において、各回転ヒンジ10、10は、上部ヒンジフレーム6が外側に、ローラ―フレーム4、4とゲートフレーム5が内側に配されるようにして軸支している一方で、上部ヒンジ20、20と下部ヒンジ30、30は上下メインフレーム2a、2aを軸支していない。
【0031】
メインフレーム1に船舶Zが通船する際の、ゲートフレーム5、ローラフレーム4、4と上部ヒンジフレーム6、6及び下部ヒンジフレーム7、7の連動状態について説明する。連動機構とは、ローラスイッチ43、43を押倒したときに、少なくとも、上下方向に延びるローラメインフレーム40と、ゲート本体のうち上下方向に延びるゲートメインフレーム50と、ローラメインフレーム40の押倒しをゲートメインフレーム50も押倒すように連動する上部ヒンジフレーム6若しくは下部ヒンジフレーム7のいずれかを有するものであればよい。
【0032】
本実施形態では、上下方向に延びる左右一対及び前後一対のローラメインフレーム40、40と上下方向に延びる左右一対のゲートメインフレーム50、50は、固定ヒンジフレーム3、3に接続されていることで、枠体内で連動するようにしている。また、ローラメインフレーム40、40とゲートメインフレーム50、50とが、上部ヒンジ20、20を介して上部ヒンジフレーム6、6、下部ヒンジ30、30を介して下部ヒンジフレーム7、7に回動可能に接続されているため、ローラフレーム4、4のローラスイッチ43、43が前方に向けて押し倒されたとき、ゲートフレーム5とネットNからなるゲート本体が追従して連動することで押倒されて、開放されるものである。
【0033】
図1、
図12、13に示すように、通船ゲートシステム1は、通常の状態において錘部44、44の重量によって、ローラフレーム4、4、ゲートフレーム5、上部ヒンジフレーム6、6と下部ヒンジフレーム7、7は、回転ヒンジ10、10、20、30を介して発生するモーメントを均衡させるように、各々の位置を静止して維持している。
【0034】
近くにいる船舶Zが一方の区画領域から他方の区画領域へと進むため、通船ゲートシステム1の領域に進入する際、船舶Zの船首位置の船底部分がローラスイッチ43、43と接触する。ローラスイッチ43、43は船舶Zの左右側の船底の傾斜に沿って船舶の下方へと案内されるとともに、船舶Zはローラスイッチ43、43を乗り上げるようにしてゲート領域に進入する。このとき、ローラスイッチ43、43は船舶の船底に沿って下方に押倒される。
【0035】
ローラスイッチ43、43の押倒しにより、ローラスイッチ43、43を支持するローラフレーム4、4は、固定メインフレーム3の回転ヒンジ10、10を介して回動し、上方が船舶の進行方向に沿って後方に倒れるように連動する。ローラフレーム4、4の動きに追従して、上部ヒンジフレーム6、6が上部ヒンジ20、20を介して後方に連動し、下部ヒンジフレーム7、7が下部ヒンジ30、30を介して前方に連動する。そして上部ヒンジフレーム6、6と、下部ヒンジフレーム7、7の動きに追従して上部ヒンジ20、20と下部ヒンジ30、30と、によって軸支されたゲートフレーム5が後方に押倒されるように連動する。
【0036】
ネットN1は、ゲートフレーム5のゲートメインフレーム50、50に接続された上方フレーム51と下方フレーム52に接続されているため、ゲートフレーム5、5の押倒しに追従して、後方に向けて押倒されるように連動する。この連動によりゲート領域のネットN1が開放される。なお、ネットN1の下方に位置するネットN2はゲートフレーム5の下方フレーム52に上方を支持されて、下方は支持されていないため、水中で垂下した状態を維持する。すなわち、船舶Zの進入に合わせてゲートフレーム5が回動した際、ネットN1のみが押し倒された状態となる。(
図15参照)
【0037】
図14、15に示すように、船舶Zが通船ゲートシステム1のゲート領域を進行すると、後方側で左右一対に配置されたローラスイッチ43、43を更に乗り上げるようにして進行する。前側の左右一対のゲートスイッチ43、43のみであれば、船舶が前側のゲートスイッチを通過したときに(
図14から少しだけ進行した状態)、ゲートスイッチ43、43の押倒し状態が解除されて、船舶の進行中にゲートが起立して閉鎖状態に移行することがあり、船舶の中央に位置するスクリュー部に損傷を与えたり、ネットが絡みついてしまう懸念がある。ゲート領域の後方にもゲートスイッチ43、43を配して、船舶が前後両方のゲートスイッチを同時に可能な位置に配置することで船舶進行中にネットが立ち上がることを防止することができる。さらに言うと、当該前後にゲートスイッチを配置することで、一方領域からの進行だけでなく、他方領域から進行する場合にも対応することが可能になる。
【0038】
船舶Zがローラスイッチ43、43を押倒すことは、換言すれば船舶Zの船体の重さによってローラスイッチ43、43を押倒すことになるが、船舶Zが通船した状態のときには船舶Zの重量分の作用力が排されたこととなる。このとき、押倒されたローラフレーム4、4は、錘部44、44によって下方から沈下する力が作用して押倒し方向と反対の方向に動き、静止状態へと回帰する。なお、これらの連動は他方の水域から一方の水域へと船舶Zが通船するときも同様の作用を奏す。
【0039】
以上、船舶Zが進入した状態における通船ゲートシステム1は、船舶Zが直接ゲートに接触せずとも、ゲートの前方に位置するローラスイッチ43、43を押倒すことによってゲート本体を開放して通過可能にすることが可能となる。加えて、船舶はローラスイッチ43,43のみに乗り上げるだけで通船するため、小型な船で通船可能となり、また、船舶Zの形状に限定されない。
【0040】
ローラスイッチ43、43を船舶Zが摺動する時は、ローラスイッチ43、43のその形状は円柱状であることから、その接触して摺動する面積を少なくすることができ、ローラ43、43自体も回転軸42によって回動するので、船舶Zに擦損が生じにくくなる。また、ローラスイッチ43、43の両端面が丸みを帯びていることから船首を案内しやすく、一つのローラフレーム4において、その対向するローラスイッチ43、43同士の間に船舶Zのスクリューを安定して誘導することが可能となる。
【0041】
また、少なくとも一方のローラスイッチ43、43、もしくは、他方のローラスイッチ43、43に、船舶Zが接触しているときは、ゲートフレーム5が回動している状態となり、一方の水域から他方の水域、もしくは他方の水域から一方の水域へと船舶Zが擦損することなく通船することが可能となる。更に、メインフレーム1が静止している状態のローラスイッチ43、43は水面から離れて存しているため、船舶Zの船首に接触しやすく船底へと案内されて摺動し易くなる。
【0042】
加えて、下部ヒンジフレーム7は、その短手方向の長さ分を上方に延出しているので、その長さ分がローラフレーム4、4は下部ヒンジフレーム7と略平行になるまで回動しやすくなり、全てのローラ43が同一水平面上に配され、船舶が水平に維持され通船しやすくなる。更に、ネットNは、N1のみが回動し、N2は垂直状態を維持している(
図15参照)ので、船舶Zが通船する際には、N2によって一方の水域から他方の水域へと水中のごみが移動することを防止できる。
【符号の説明】
【0043】
1…通船ゲートシステム、2…メインフレーム、2a…上下メインフレーム、2b…左右メインフレーム、3…固定ヒンジフレーム、4…ローラフレーム、5…ゲートフレーム(ゲート本体)、6…上部ヒンジフレーム(連動機構)、7…下部ヒンジフレーム(連動機構)、10…回転ヒンジ、11…板部、12…挿通部、20…上部ヒンジ、30…下部ヒンジ、40…ローラメインフレーム(連動機構)、41…トラスフレーム、42…回転軸、43…ローラスイッチ、44…錘部、50…ゲートメインフレーム(連動機構)、51…上方フレーム、52…下方フレーム、N…ネット(ゲート本体)、Z…船舶。