(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157808
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】膨らみのよい揚げドーナツ
(51)【国際特許分類】
A21D 2/18 20060101AFI20241031BHJP
A21D 13/60 20170101ALI20241031BHJP
A23L 29/206 20160101ALI20241031BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20241031BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20241031BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20241031BHJP
【FI】
A21D2/18
A21D13/60
A23L29/206
A23L7/10 H
A23L5/10 D
A23L5/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072397
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石堂 絢子
(72)【発明者】
【氏名】関谷 竜希
【テーマコード(参考)】
4B023
4B032
4B035
4B041
【Fターム(参考)】
4B023LC08
4B023LE26
4B023LG06
4B023LK08
4B023LP09
4B032DB24
4B032DB35
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4B032DK35
4B032DL01
4B032DP23
4B032DP30
4B032DP47
4B035LC05
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4B035LE07
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4B035LP07
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4B041LC07
4B041LC10
4B041LD01
4B041LE05
4B041LH04
4B041LK22
4B041LK24
4B041LK28
4B041LP01
4B041LP12
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、揚げた後に一定時間経過しても膨らみの良い揚げドーナツを提供することにある。
【解決手段】穀粉と、(A)ヒドロキシプロピル化ワキシータピオカ澱粉、(B)α化架橋澱粉及び(C)非ワキシー種の架橋澱粉の澱粉とを含み、かつ、当該穀粉と澱粉との合計100質量部中に、(C)非ワキシー種の架橋澱粉2~12質量部を含む生地を調製し、これを揚げドーナツ生地とすることにより、上記課題は解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)乃至(C)を含む、揚げドーナツ生地用の澱粉組成物:
(A)ヒドロキシプロピル化ワキシータピオカ澱粉、
(B)α化架橋澱粉、及び
(C)非ワキシー種の架橋澱粉。
【請求項2】
前記(C)が、エンドウ豆架橋澱粉及び/又はタピオカ架橋澱粉である、請求項1記載の揚げドーナツ生地用の澱粉組成物。
【請求項3】
前記(A)乃至(C)の合計100質量部中に(C)を3~17質量部含む、請求項1又は2に記載の揚げドーナツ生地用の澱粉組成物。
【請求項4】
前記(C)が、澱粉と穀粉の合計100質量部中に2~12質量部となるように使用される、請求項1又は2に記載の揚げドーナツ生地用の澱粉組成物。
【請求項5】
澱粉と穀粉の合計を100質量部としたときに、前記(A)が50質量%以上かつ(B)が5~15質量部となるように使用される、請求項1又は2に記載の揚げドーナツ生地用の澱粉組成物。
【請求項6】
以下の(A)乃至(C)と穀粉とを含む、揚げドーナツ生地用のミックス粉:
(A)ヒドロキシプロピル化ワキシータピオカ澱粉、
(B)α化架橋澱粉、及び
(C)非ワキシー種の架橋澱粉。
【請求項7】
前記(C)が、エンドウ豆架橋澱粉及び/又はタピオカ架橋澱粉である、請求項6記載の揚げドーナツ生地用のミックス粉。
【請求項8】
前記(A)乃至(C)の合計100質量部中に(C)を3~17質量部含む、請求項6又は7に記載の揚げドーナツ生地用のミックス粉。
【請求項9】
前記(A)乃至(C)と穀粉の合計100質量部中に(C)を2~12質量部含む、請求項6又は7に記載の揚げドーナツ生地用のミックス粉。
【請求項10】
請求項6又は7に記載の揚げドーナツ用のミックス粉を含む生地。
【請求項11】
請求項6又は7に記載の揚げドーナツ用のミックス粉を含む生地を油ちょうしてなる揚げドーナツ。
【請求項12】
以下の(A)乃至(C)と穀粉との合計100質量部中に(C)が2~12質量部となるように配合した生地を調製する工程と、当該生地を成形して油ちょうする工程を含む、揚げドーナツの製造方法:
(A)ヒドロキシプロピル化ワキシータピオカ澱粉、
(B)α化架橋澱粉、及び
(C)非ワキシー種の架橋澱粉。
【請求項13】
生地を調製する工程の後に、当該生地で具材を包餡する工程を含む、請求項12記載の揚げドーナツの製造方法。
【請求項14】
生地を成形して油ちょうする工程の後に、当該揚げドーナツ内部に具材を充填する工程を含む、請求項12記載の揚げドーナツの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨らみのよい揚げドーナツ、その揚げドーナツを調製するためのミックス粉若しくは生地、及びその揚げドーナツの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「ドーナツ」と一口にいっても、その製法や性状は様々である。例えば、原料としてのイースト使用有無の観点から、イーストを使用する「イーストドーナツ」と、イーストを使用せず膨張剤を使用する「ケーキドーナツ」とに分類されることもあるし、生地の性状の観点から、パン生地のように原料を混捏する「ドウ生地」と、ケーキ生地のように原料を攪拌混合するのみの流動性ある「バッター生地」とに分類されることもある。また、加熱工程の違いから、ドーナツ生地を成形又はモールド充填してオーブンなどで焼成する「焼きドーナツ」と、熱した油中に落とし油ちょうする「揚げドーナツ」とに分類されることもある。そして、前記「ドウ生地」で小豆餡、肉野菜餡、カスタード、カレーなどの餡を予め包んで油ちょうした揚げドーナツは「包餡ドーナツ」とよばれ、例えば、小豆餡ドーナツ、ピロシキ、カレーパンなどが挙げられる。また、ドウ生地又はバッター生地を油ちょうしたときに形成される生地内部にホイップクリームなどのフィリングが充填された「フィリングドーナツ」とよばれるタイプのものもある。
【0003】
上述の様々なドーナツのなかでも、前記「揚げドーナツ」はもっともポピュラーなドーナツの加工形態であるが、油ちょう直後の膨らみは、生地内部で発生した水蒸気に起因するため冷めるにつれて生地が萎み、外観が悪くなるという問題がある。特に近年はソフトな食感が好まれる傾向にあるため、加水量が多い柔らかな生地で揚げドーナツを製造することが多いが、そうするとこの問題はさらに顕著となる。また、生地が萎むとフィリングを充填できないという不具合も生じる。
【0004】
そのようなところ、膨らみの良いベーカリー食品を製造するために、生地中に非穀物アミロペクチンデンプン(具体的には、ワキシーポテト澱粉)を含有させる方法(特許文献1)、膨らみの良いシューパフを製造するために、生地中にワキシータピオカ澱粉とα化澱粉とを含有させる方法(特許文献2)などが提案されている。
【0005】
しかし、そのような先行文献を参考に揚げドーナツを調製しても、揚げた後にドーナツが萎んでしまい、膨らみの良い揚げドーナツを得られないということがわかった。特に包餡揚げドーナツにおいてこの問題は顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2002-538799号公報
【特許文献2】国際公開第2017/037756号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、揚げた後に一定時間経過しても膨らみの良い揚げドーナツを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはかかる課題を解決すべく種々検討したところ、穀粉と、(A)ヒドロキシプロピル化ワキシータピオカ澱粉、(B)α化架橋澱粉及び(C)非ワキシー種の架橋澱粉の澱粉とを含み、かつ、(穀粉と澱粉の合計100質量部中に(C)非ワキシー種の架橋澱粉2~12質量部を含む生地を揚げドーナツの生地として使用することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、以下[1]~[14]から構成されるものである。
[1]以下の(A)乃至(C)を含む、揚げドーナツ生地用の澱粉組成物:
(A)ヒドロキシプロピル化ワキシータピオカ澱粉、
(B)α化架橋澱粉、及び
(C)非ワキシー種の架橋澱粉。
[2]前記(C)が、エンドウ豆架橋澱粉及び/又はタピオカ架橋澱粉である、上記[1]記載の揚げドーナツ生地用の澱粉組成物。
[3]前記(A)乃至(C)の合計100質量部中に(C)を3~17質量部含む、上記[1]又は[2]に記載の揚げドーナツ生地用の澱粉組成物
[4]前記(C)が、澱粉と穀粉の合計100質量部中に2~12質量部となるように使用される、上記[1]~[3]のいずれかに記載の揚げドーナツ生地用の澱粉組成物。
[5]澱粉と穀粉の合計を100質量部としたときに、前記(A)が50質量%以上かつ(B)が5~15質量部となるように使用される、上記[1]~[4]のいずれかに記載の揚げドーナツ生地用の澱粉組成物。
[6]以下の(A)乃至(C)と穀粉とを含む、揚げドーナツ生地用のミックス粉:
(A)ヒドロキシプロピル化ワキシータピオカ澱粉、
(B)α化架橋澱粉、及び
(C)非ワキシー種の架橋澱粉。
[7]前記(C)が、エンドウ豆架橋澱粉及び/又はタピオカ架橋澱粉である、上記[6]記載の揚げドーナツ生地用のミックス粉。
[8]前記(A)乃至(C)の合計100質量部中に(C)を3~17質量部含む、上記[6]又は[7]に記載の揚げドーナツ生地用のミックス粉。
[9]前記(A)乃至(C)と穀粉の合計100質量部中に(C)を2~12質量部含む、上記[6]~[8]のいずれかに記載の揚げドーナツ生地用のミックス粉。
[10]上記[6]~[9]のいずれかに記載の揚げドーナツ用のミックス粉を含む生地。
[11]上記[6]~[9]に記載の揚げドーナツ用のミックス粉を含む生地を油ちょうしてなる揚げドーナツ。
[12]以下の(A)乃至(C)と穀粉との合計100質量部中に(C)が2~12質量部となるように配合した生地を調製する工程と、当該生地を成形して油ちょうする工程を含む、揚げドーナツの製造方法:
(A)ヒドロキシプロピル化ワキシータピオカ澱粉、
(B)α化架橋澱粉、及び
(C)非ワキシー種の架橋澱粉。
[13]生地を調製する工程の後に、当該生地で具材を包餡する工程を含む、上記[12]記載の揚げドーナツの製造方法。
[14]生地を成形して油ちょうする工程の後に、当該揚げドーナツ内部に具材を充填する工程を含む、上記[12]記載の揚げドーナツの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、膨らみの良い揚げドーナツを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明にいう「揚げドーナツ」は、主成分である穀粉、澱粉、砂糖及び油脂のほか、イースト、ベーキングパウダー、食塩、乳原料、卵、乳化剤、水などの副原料を必要に応じて混捏し、醗酵させ又は発酵させずに得られる生地を、一定形状に成形等し、油ちょうしてなるものをいう。本明細書における「揚げドーナツ」は、先述の「包餡ドーナツ」を含み、包餡ドーナツには「フィリングドーナツ」が含まれる。
【0012】
ヒドロキシプロピル化ワキシータピオカ澱粉(以降、(A)ともいう。)とは、ワキシータピオカ澱粉にプロピレンオキサイドを定法により作用させて得られる水酸基置換型加工澱粉のことであり、これをα化したものは本発明の(A)には含まれない。(A)の好ましい例は、当該ヒドロキシプロピル化の反応と同時又は異時に架橋化剤のトリメタリン酸ナトリウムやオキシ塩化リンなどをワキシータピオカ澱粉に対して定法により作用させて得られるヒドロキシプロピル化架橋ワキシータピオカ澱粉である。また、上記澱粉の置換度や架橋度はとくに限定されるものではないが、本発明の効果をより効率的に得る観点から、置換度(澱粉を構成するグルコース残基の3つのフリーの水酸基すべてが置換されたときの置換度を3とする)にあっては、0.03~0.2の範囲にあるものが好ましく、0.07~0.18、さらには0.09~0.18の範囲にあるものがより好ましい。また、ヒドロキシプロピル化の置換に加えて架橋化された澱粉を用いる場合、その架橋程度は低度であることが好ましく、ヒドロキシプロピル化架橋澱粉としての沈降積でいえば、6.0~10mlであることが好ましく、8.0~10ml、さらには9.0~10mlのものがより好ましい。ここでいう沈降積は、よく知られる一般的な分析項目であって、測定方法は以下である。まず、澱粉試料0.15g(固形分換算)を試験管に計量し、あらかじめ調製しておいた試薬(塩化アンモニウム26質量%、塩化亜鉛10質量%、水64質量%により調製)15mlを注ぎ込む。次に、卓上バイブレーターを用いて、試験管中の澱粉試料を均一に分散させ、直ちに沸騰浴中に固定して10分間加熱後、25~35℃まで冷却する。この試験管中の澱粉試料を、卓上バイブレーターを用いて再度分散させ、10ml容量メスシリンダーの10mlの目盛りまで流し込み、25℃にて20時間静置後、沈降物の目盛りを読み取り、この値を沈降積とする。なお、沈降積の値は、架橋度の高い澱粉(高架橋澱粉)ほど小さくなる。
【0013】
α化架橋澱粉(以降、(B)ともいう。)とは、架橋澱粉に水分を含有させて加熱糊化したものを指し、一般に流通するものは、これをさらに乾燥させたものである。(B)の原料となる澱粉の起源は、ワキシー種であるか、ウルチ種であるか、ハイアミロース種であるかは問わず、馬鈴薯、米、小麦、タピオカ、コーン、エンドウ豆、緑豆、サゴ、甘藷などのいずれの起源の澱粉であっても用いることができる。(B)としては、架橋処理にくわえてヒドロキシプロピル化処理又はアセチル化処理がされたα化架橋澱粉を使用することができるが、好ましくは、架橋処理のみが施されたα化架橋澱粉を使用することができる。本発明で用いるα化架橋澱粉は、その原料種及び架橋程度に制限はないものの、本発明の効果をより効率的に得る観点から、その冷水膨潤度は、15~100mlが好ましく、30~99mlであることがより好ましい。ここで、α化澱粉の冷水膨潤度の測定方法は、以下である。まず、澱粉試料2.0g(固形分換算)を水50mlに均一に分散させ、この懸濁液を100mlメスシリンダーに入れて水で100mlに調整し、24時間静置する。その後、白濁層の容量(ml)を測定し、その値を冷水膨潤度とする。架橋の度合いが高いほうが膨潤度は小さくなる。
【0014】
非ワキシー種の架橋澱粉(以降、(C)ともいう。)とは、非ワキシー種澱粉に架橋化剤を定法により作用させて得られる加工澱粉のことであり、これをα化したものは本発明の(C)には含まれない。(C)としては、架橋処理に加えてヒドロキシプロピル化処理又はアセチル化処理された架橋澱粉を使用することもできるが、好ましくは、架橋処理のみが施された単なる架橋澱粉を使用するのがよい。原料である非ワキシー種澱粉の由来は特に限定されないが、好ましくは、タピオカ又はエンドウ豆由来である。
【0015】
穀粉とは、小麦粉、米粉、コーンフラワー、大豆粉、ライ麦粉、大麦粉、あわ粉、ひえ粉を指す。小麦粉は、特に限定されず市販されている薄力粉、中力粉、強力粉、全粒粉など何れも使用可能であるが、グルテン含量により、発現する弾力性が多少異なるため好みにより選択することができる。本発明においては、穀粉として小麦粉を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の揚げドーナツ用生地は、上述の(A)ヒドロキシプロピル化ワキシータピオカ澱粉、(B)α化架橋澱粉及び(C)非ワキシー種の架橋澱粉の澱粉を必須成分とし、それら澱粉と穀粉の合計100質量部中に(C)非ワキシー種の架橋澱粉を2~12質量部含むことが好ましく、2~11質量部又は3~10質量部で含むことがより好ましい。澱粉と穀粉の合計100質量部中に含まれる(A)又は(B)の配合量は、特に限定されないが、(A)は、好ましくは50質量部以上、より好ましくは55~60質量部であり、(B)は、好ましくは5~15質量部、より好ましくは7~13質量部である。なお、本発明の揚げドーナツ用生地は、本発明の効果を阻害しない範囲で、(A)乃至(C)以外の澱粉を含んでもよいが、その場合、穀粉を減量した分を添加することとなるため、当該(A)乃至(C)以外の澱粉は穀粉の一として計上する。また、ここでいう「2~12質量部」とは、2質量部以上~12質量部以下のことを意味し、他の数値でも同様の意味とする。
【0017】
上述の本発明の揚げドーナツ用生地は、穀粉と(A)乃至(C)の澱粉とを含むことから、穀粉と(A)乃至(C)の澱粉とを含む、揚げドーナツ用生地を調製するための「ミックス粉」として提供することもできる。当該ミックス粉を用いることにより、揚げドーナツ用生地を調製する際の原料混合工程が簡略化されるため、簡便に膨らみのよい揚げドーナツが得られることとなる。当該ミックス粉は、上述の(A)乃至(C)と穀粉とを70:30~80:20程度の質量割合で混合することが好ましい。
【0018】
上述の本発明の揚げドーナツ用ミックス粉は、(A)乃至(C)の澱粉を含むことを必須とするものであるから、(A)乃至(C)の澱粉を含む、揚げドーナツ用生地を調製するための「澱粉組成物」として提供することもできる。当該澱粉組成物を用いることにより、揚げドーナツ用生地を調製する際の原料混合工程が簡略化されるため、簡便に膨らみのよい揚げドーナツが得られることとなる。当該澱粉組成物は、上述の(A)乃至(C)を含み、澱粉組成物100質量部中に(C)を3~17質量部、好ましくは3~15質量部、より好ましくは4~12.5質量部含む。なお、当該澱粉組成物は、(A)乃至(C)の3成分からなることが好ましいが、本発明の効果を阻害しない程度に(A)乃至(C)以外の澱粉を含んでもよく、その配合量は、例えば、10質量%以下、5質量%以下である。
【0019】
本発明の揚げドーナツ用生地は、上述の(A)乃至(C)を含む澱粉と穀粉に水をはじめとする副原料を加えて混合等して得られる。ここで、副原料とは、一般に、揚げドーナツを製造するにあたり、原料として加えられうるものすべてを指し、例えば、水、牛乳、卵、バター、マーガリン、ショートニング、オリーブオイル、ラード、加工油脂、砂糖、黒糖、グルコース、オリゴ糖、異性化糖、水飴、はちみつ、糖アルコール、脱脂粉乳、全乳粉、塩、イースト、乳化剤、食物繊維、グルテン、香辛料、着色料、イーストフード、増粘剤、カカオ、チーズ、木の実、ハーブ、フルーツ、抹茶、紅茶、ココアなどが挙げられる。
【0020】
上述の揚げドーナツ用生地を成形等し、油で油ちょうすることにより、膨らみのよい揚げドーナツが得られる。ここで、「膨らみのよい」とは、揚げドーナツの体積が基準体積の1.2倍以上、好ましくは1.3倍以上であることをいう。「基準体積」は、包餡揚げドーナツ(以降、単に「包餡ドーナツ」ともいう。)の場合は表7、包餡なしの揚げドーナツの場合は表9に記載される「基準」の配合で調製される揚げドーナツの体積である。ここで包餡とは、先に例示した餡やクリーム等(以下、単に「餡」ともいう。)をあらかじめ生地で包むことをいい、包餡した生地を油ちょうすると、その生地内部の餡やクリームが保持する水分が水蒸気となって油ちょう生地の体積が大きくなりやすいものの、油から取り出した後には急激に萎みやすくなる。このような包餡揚げドーナツを調製する場合に本発明の効果はより発揮され、油ちょう後にもその体積は維持されるため、油ちょう後にさらに餡やクリーム等を注入・充填しやすくなる。なお、油ちょう前に生地で包餡される具材は、カスタードクリーム、小豆餡、肉餡、野菜餡、カレー、シチューなどが例示され、油ちょう後に注入・充填されるものとしては、ホイップクリーム、生クリーム、チーズクリーム、チョコレートクリーム、ピザソースなどが例示される。
【0021】
以下、実験例を提示して本発明を詳細かつ具体的に説明するが、本発明は、これら実験例に限定されるものではない。
【実施例0022】
以降に説明する試験で使用した澱粉を[表1]に示す(すべて松谷化学工業株式会社が販売する澱粉製品)。
【0023】
【0024】
1.2種類の澱粉を使用して調製した包餡揚げドーナツ
表2及び表3に記載の配合と、表4記載の手順で包餡ドーナツを調製し、表5の評価基準によりドーナツ外観を評価した。評価結果は表6に示す。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
以上の実験の結果、ヒドロキシプロピル化ワキシータピオカ澱粉(A1)及びα化架橋澱粉(B1又はB2)の組合せ(試作1~5)では、製造直後に潰れてしまい好ましい包餡ドーナツは得られなかった。一方で、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉(A4)とα化架橋澱粉(B1)の組合せ(試作6)では、製造直後に潰れることはなく、2種類の澱粉を使用した場合において、一番膨らみのよい揚げドーナツが得られた。以降の試験では、この試作6の配合で調製した揚げドーナツを体積評価の基準とした。
【0030】
【0031】
2.3種類の澱粉を使用して調製した包餡ドーナツ―澱粉種類の検討―
澱粉と穀粉を表7記載の配合に変更した以外は先の実験と同様に、包餡ドーナツを調製した。得られた包餡ドーナツの外観を先と同様に評価した結果が〇又は◎の場合のみ、製造60分後の体積をレーザー体積計(Selnac-WinVM2100、株式会社ASTEX製)により測定し、以下の基準で評価した。なお、基準体積は、試作6の配合で調製した包餡揚げドーナツの体積である。評価結果は表7に示す。
[体積評価基準]
〇:基準体積の1.3倍以上、
△:基準体積の1.2倍以上~1.3倍未満、
×:基準体積の1.2倍未満。
【0032】
【0033】
2-結果
A1、B1及びC(C1、C2又はC3)を用いた場合、好ましい包餡ドーナツが得られた(試作7,8,9)。一方で、試作6の配合のうち、C1をC4に変更して調製した包餡ドーナツ(試作10)は、製造直後に大きく潰れてしまった。また、試作6の配合のうち、A1を、A2、A3又はA4に変更した配合(それぞれ試作11、12、13)では、製造直後に潰れることはなかったが、膨らみのよい包餡ドーナツが得られなかった。
【0034】
3.3種類の澱粉を使用して調製した包餡ドーナツ―配合割合の検討―
澱粉と穀粉を表8記載の配合に変更した以外は先の実験と同様に、包餡ドーナツを調製し、外観と体積を評価した。評価結果は表8に示す。
【0035】
【0036】
A1、B1及びC(C1又はC2)を用いた配合において、澱粉と穀粉の合計100質量部中にC(C1又はC2)を3~10質量%含む場合に好ましい包餡ドーナツが得られた(試作15~19)。この配合から計算すると、(A)乃至(C)を含む澱粉の合計100質量部に含まれる(C)は、4.1~12.5質量部、澱粉と穀粉の合計100質量部に含まれる澱粉の量は、70~80質量部であった。一方で、澱粉と穀粉の合計100質量部中に、C1を1質量%又は15%含む配合(それぞれ試作14、試作20)では、膨らみのよい揚げドーナツが得られなかった。
【0037】
4.包餡なしの揚げドーナツ
表9記載の配合で、内部にクリームを含まないこと以外は先の実験と同様に、包餡なしの揚げドーナツを調製した。得られた揚げドーナツの外観は先の実験と同様に評価した。なお、基準体積は、試作6の配合で調製した包餡なしの揚げドーナツの体積である。
その結果、包餡なしの揚げドーナツにおいても、本発明の澱粉組成物を用いることにより膨らみのよい揚げドーナツが得られた(試作21)。
【0038】