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特開2024-157812風速風向測定装置及び風速風向測定装置用センサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157812
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】風速風向測定装置及び風速風向測定装置用センサ
(51)【国際特許分類】
   G01P 13/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01P13/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072403
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】永井 耕一
(72)【発明者】
【氏名】日野 直文
【テーマコード(参考)】
2F034
【Fターム(参考)】
2F034AA02
2F034AB03
2F034DA05
2F034DA17
2F034DB04
2F034DB15
(57)【要約】
【課題】立体的な3次元のどの方向からの気流に対しても同様に圧力を受けることが可能であり、かつ傾斜面への設置又は設置後の移動等による傾きなどの影響を排除し、気流からの圧力の強度と方向を正確に測定することが可能な風速風向測定装置及び当該装置用センサを提供する。
【解決手段】受風用の球体3と、板状体4と、一端が球体と接続され他端が板状体と接続された支柱5とを有し、かつ受風部重心6が板状体側にあって気流の圧力を受ける受風部2と、受風部の重心を通る板状体の平面9に感圧部8がそれぞれ接して、受風部で受けた圧力を検出する少なくとも3個の感圧センサ7と、感圧センサからの検出値を基に風速と風向とを算出する演算部とを備える。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受風用の球体と、板状体と、一端が前記球体と接続され他端が前記板状体と接続された支柱とを有し、かつ受風部重心が板状体側にあって気流の圧力を受ける受風部と、
前記受風部の前記重心を通る前記板状体の平面に感圧部がそれぞれ接して、前記受風部で受けた前記圧力を検出する少なくとも3個の感圧センサと、
前記感圧センサからの検出値を基に風速と風向とを算出する演算部とを備える、風速風向測定装置。
【請求項2】
前記感圧センサは、前記板状体に対して平面的に見て、前記重心を囲む三角形の頂点に配置されている、請求項1に記載の風速風向測定装置。
【請求項3】
前記各感圧センサの前記感圧部と、前記受風部の前記重心を通る前記板状体の前記平面とは、前記受風部の前記重心を通る前記板状体の平面方向の相対位置が固定されるように、前記各感圧センサが固定されるベース部材をさらに備える請求項1に記載の風速風向測定装置。
【請求項4】
前記感圧センサの前記感圧部は、前記受風部の重心を通る前記板状体の平面に対して垂直方向の圧力のみを測定する請求項1に記載の風速風向測定装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記受風部に気流による負荷が無い状態での前記各感圧センサの検出値を初期値とし、前記受風部に気流による負荷が付与された際に、前記各感圧センサが前記受風部から受ける圧力の検出値と前記各感圧センサの初期値との差分によって前記気流の風速と風向を算出する請求項1に記載の風速風向測定装置。
【請求項6】
前記受風部の前記板状体に前記各感圧センサの方向に力を常時付与する手段を備え、前記手段により、前記受風部の前記重心を通る前記板状体の前記平面に、前記各感圧センサの感圧部が常時接する請求項1に記載の風速風向測定装置。
【請求項7】
前記受風部の前記板状体に前記各感圧センサの方向に力を常時付与する手段は、一端が前記板状体に接し、他端が、前記支柱と前記球体とを除き前記板状体を覆うケーシングに固定されたばねである請求項6に記載の風速風向測定装置。
【請求項8】
前記受風部の前記重心を通る前記板状体の前記平面が同一面として前記板状体の表裏に形成され、前記3個の感圧センサの感圧部がそれぞれ前記板状体の表裏両面から接する請求項1に記載の風速風向測定装置。
【請求項9】
受風用の球体と、板状体と、一端が前記球体と接続され他端が前記板状体と接続された支柱とを有し、かつ受風部重心が板状体側にあって気流の圧力を受ける受風部と、
前記受風部の前記重心を通る前記板状体の平面に感圧部がそれぞれ接して、前記受風部で受けた前記圧力を検出する少なくとも3個の感圧センサとを備える、風速風向測定装置用センサ。
【請求項10】
前記感圧センサは、前記板状体に対して平面的に見て、前記重心を囲む三角形の頂点に配置されている、請求項9に記載の風速風向測定装置用センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧センサによって3次元空間における気流の風速と風向を測定する風速風向測定装置及び風速風向測定装置用センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な工業製品もしくは家電の組み立て製造工程、又はそれらの製品の構成部品となる各種電子部品、各種の電池、もしくは、電子部品が実装された基板などのデバイス製造工程において、熱処理のための加熱炉、乾燥炉をはじめとする加熱装置も多様化し、それぞれの機能が大幅に向上している。また、主に熱風を被加熱物に付与して熱風から被加熱物に熱の伝達を行い、被加熱物の加熱、乾燥を行う工程においては、他の工程と比べても熱エネルギーを大量に消費することから、エネルギー消費削減のために加熱効率又は乾燥効率の向上が大きな課題になっており、そのため加熱装置の設定条件の管理が非常に重要となっている。一般的に熱風による加熱、乾燥工程においては、熱風を生成して被加熱物に付与する加熱装置の熱風吹き出し部からの吹き出し風量を、熱風を装置内で循環させる循環ファンの回転数設定等によって制御し、これと熱風吹き出し部の開口面積又は装置内の循環経路の圧力損失、流路損失との兼ね合いで吹き出し風速が決定される。多くの場合は、この熱風吹き出し部における風速を、例えば計測器の先端に設置された羽根車の回転数から気流の風速を算出するベーン式風速計、又は熱線に電流を流して加熱しつつ、その熱線が気流によって熱を奪われた度合によって気流の風速を算出する熱線式風速計などを用いて風速を測定し、生産工程の管理対象としている。熱風あるいは冷風を物体に接触させて効率的に物体を加熱又は冷却するためには、熱風又は冷風と言った流体と被加熱物との間の熱伝達率が重要となる。この熱伝達率の決定には、流体が物体に衝突する際の速度と角度が大きな要素となっている。また、熱の授受だけでなく、例えば物体の乾燥のように物体の表面から水分を除去する工程などの場合においても、流体と個体との界面付近の流体を効率的に移動させる必要がある。このとき、流体が一般的な粘性流体で、かつ極端な例として物体の面に対して流体が平行に流れている場合は、理論的に物体表面での流体の流速はゼロとなってしまう。このように、物体の加熱、冷却、又は乾燥等の工程においては、その流体の流速に加えて、流体と被加熱物とが接触する界面での角度が重要となる。よって、物体の加熱、冷却、又は乾燥のような工程で気流をはじめとする流体を物体に付与する際には、上記の装置側での熱風吹き出し部の風速又は風量の管理に加えて、流体と被加熱物との間の熱伝達率を考慮する必要があり、そのためには、流体の速度と被加熱物に対する角度の両方を管理することが重要となる。
【0003】
これに対し、一般的には加熱、冷却、又は乾燥対象となる被加熱物の界面近傍における風の状態を管理するために、極力、界面付近を測定する手段として小型の熱線式風速計と小型の温度計を併用することで、被加熱物近傍の風速を測定するなどしている。
【0004】
しかし、熱線式風速計は風速の算出が主目的であり、特性として無指向性のため流体の流れの方向は特定できない。また、ベーン式風速計は計測部先端の羽根車の回転数から風速を検出するが、この場合の風向はあらかじめ設置したベーン式風速計の羽根車が対面する羽根車の軸方向の風速に限定されてしまう上に、計測器そのものが大型となるため、被加熱物の界面近傍、特に被加熱物の直上の風速の測定は困難である。
【0005】
そのため、小型で被加熱物直上の風速と風向を測定する測定装置として、圧力分布センサを用いて風速と風向を測定する技術として、例えば特許文献1の方式が知られている。
【0006】
図11は特許文献1の従来の風速と風向を測定する圧力センサについての説明図である。特許文献1には、図11に示す様に、圧力センサ65は、基板60上に設置した導電体61と、これを覆う導電性弾力体62と、導電性弾力体62の上に設置した感圧体(感圧体下部(支持体)63と感圧体上部(細長形状体)64で構成)により構成される。図11に示す圧力センサ65では、感圧体上部(細長形状体)64が棒状であり、感圧体下部(支持体)63が十文字の形状をした板状体であり、上下面正方形の平べったい直方体の導電性弾力体62の側面4方向に電極部を含む導電体61が設置されて基板60上に固定されている。本圧力センサ65は、感圧体上部(細長形状体)64に加わる圧力を、感圧体下部(支持体)63を介して導電性弾力体62に伝達する。導電性弾力体62は圧力によって抵抗値が変化するという特性を有しており、導電体61における4つの電極間の抵抗R1、R2,R3,R4を抵抗値測定装置(図示せず)によって測定することにより、感圧体上部(細長形状体)64が気流から受ける圧力(流速)及び方向の変化を検出することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-67542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1の構成では、風速と風向を同時に検出する手段として風を受ける部分(感圧体上部(細長形状体))が円柱状の細長形状体であるため、気流の水平方向の圧力は検知できるが、垂直方向の圧力を受けにくい仕様である。明細書に記載はないが、仮に圧力センサの上方からの風の場合は風の圧力を感圧体下部(支持体)で受けることも可能だが、下方から上方に向かう風の場合は、感圧体下部(支持体)では圧力を受けることは出来ない。また、前記特許文献1の構成を傾斜面に設置した際、又は移動体に設置するなどして移動中にデバイスが傾いた際には、風の影響とは別に、感圧体上部(細長形状体)の重心移動による荷重のバランス変化をも検出することになるため、風の影響のみの検出とはならず、その結果、風速と風向の正確な測定ができない、という課題を有している。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、立体的な3次元のどの方向からの気流に対しても同様に圧力を受けることが可能であり、かつ傾斜面への設置又は設置後の移動等による傾きなどの影響を排除し、気流からの圧力の強度と方向を正確に測定することが可能な風速風向測定装置及び風速風向測定装置用センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の一態様にかかる風速風向測定装置は、
受風用の球体と、板状体と、一端が前記球体と接続され他端が前記板状体と接続された支柱とを有し、かつ受風部重心が板状体側にあって気流の圧力を受ける受風部と、
前記受風部の前記重心を通る前記板状体の平面に感圧部がそれぞれ接して、前記受風部で受けた前記圧力を検出する少なくとも3個の感圧センサと、
前記感圧センサからの検出値を基に風速と風向とを算出する演算部とを備える。 前記目的を達成するために、本発明の別の態様にかかる風速風向測定装置用センサは、
受風用の球体と、板状体と、一端が前記球体と接続され他端が前記板状体と接続された支柱とを有し、かつ受風部重心が板状体側にあって気流の圧力を受ける受風部と、
前記受風部の前記重心を通る前記板状体の平面に感圧部がそれぞれ接して、前記受風部で受けた前記圧力を検出する少なくとも3個の感圧センサとを備える。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の前記態様にかかる風速風向測定装置及び風速風向測定装置用センサによれば、空間における3次元のどの方向から気流の圧力を受けても球体であることで均等に力を受けることができ、上方からの気流の圧力においても球体に係る押し付け力として、また下方からの気流の圧力においても球体に係る浮力として区別した測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明の実施の形態1における風速風向測定装置の説明図
図1B】本発明の実施の形態1における風速風向測定装置の透視斜視図
図1C】本発明の実施の形態1における風速風向測定装置の感圧センサの配置説明図
図2】本発明の実施の形態1における風速風向測定装置の水平面での重量荷重の説明図
図3】本発明の実施の形態1における風速風向測定装置の傾斜面での重量荷重の説明図
図4】実施の形態1における風速風向測定装置が気流の圧力を受けた状態の説明図
図5A】実施の形態1における風速風向測定装置の気流の圧力の方向による差についての説明図
図5B】実施の形態1における風速風向測定装置の気流の圧力の方向による差についての説明図
図6A】実施の形態1における風速風向測定装置の気流の圧力による圧力測定についての説明図
図6B】実施の形態1における風速風向測定装置の気流の圧力による圧力測定についての説明図
図7】本発明の実施の形態2における風速風向測定装置の説明図
図8A】本発明の実施の形態3における風速風向測定装置の説明図
図8B】本発明の実施の形態3における風速風向測定装置の感圧センサの配置等の説明図
図9】実施の形態1における風速風向測定装置を逆さ面に設置した状態の説明図
図10】実施の形態1における風速風向測定装置において気流の圧力影響がない初期状態についての説明図
図11】従来の風速測定センサの説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施形態)
図1A図1Cは、本発明の実施の形態1における風速風向測定装置1の説明図である。図1Bは、理解しやすくするため、ケーシング11を透視した斜視図として示している。風速風向測定装置1において、気流の圧力を受ける受風部2と、受風部2で受けた圧力を検出する少なくとも3個の感圧センサ7と、感圧センサ7からの検出値を基に風速と風向とを算出する演算部30とを備えている。受風部2と少なくとも3個の感圧センサ7とで風速風向測定装置用のセンサを構成している。
【0015】
受風部2は、球体3と、例えば平面が正方形でかつ周囲の四隅に凹部4dが形成された側面T字状の板状体4と、この球体3と板状体4とをそれぞれの中心軸が一致しかつ受風部2の重心6を通るように接続する例えば円柱の支柱5とで構成されている。支柱5は、測定時に球体3が、板状体4を覆うケーシング11に接触しないようにするためのものであり、一例として、支柱5の軸方向の長さは球体3の直径よりも短く、支柱5の軸方向と直交する幅方向の長さは球体3の直径よりも短くしている。
【0016】
なお、受風部2は、その受風部2の重心6が板状体4側すなわち板状体4内となるようにするため、例えば、球体3は軽量の素材、たとえば発砲スチロール又は内部を空洞にした樹脂製などとし、支柱5は所定の剛性を有する樹脂等の軽量素材を用いる。
【0017】
感圧センサ7については、球体3と受風部2の重心6とを結ぶ線の周囲に少なくとも3個の感圧センサ7を配置している。例えば図1Aでは、感圧センサ7は、正方形平面の板状体4の四隅の凹部4dにそれぞれ配置されており、全ての感圧センサ7の感圧部8は、上向き凸の半球面であり、受風部2の重心6を通る平面9において受風部2の板状体4の周囲の下面すなわち凹部底面4eと接点で接する。感圧センサ7の感圧部8と受風部2の板状体4とは接点で接触すれば、どのように構成してもよい。例えば、感圧部8を上向き凸の半球面又は三角錐面又は円錐面として平面9に接点で接触してもよい。逆に、感圧部8の平面に対して、下向き凸の半球面又は三角錐面又は円錐面の凸部を平面9に備えて両者が接点で接触してもよい。なお、感圧センサ7の感圧部8と受風部2の板状体4との接点においては、感圧部8は受風部2の重心6を通る平面9の面方向には変位しないように略固定されている。このように略固定する一例としては、各感圧センサ7はベース部材の一例としての矩形平板のベース板10上に固定して配置され、受風部2の板状体4には気流が直接当たらないようにベース板10と矩形箱体状のケーシング11とで受風部2の板状体4を囲う構造となっている。ケーシング11は、中央に、支柱5が貫通しかつ接触しない程度の大きさの円形穴11aを有している。
【0018】
なお、感圧センサ7は、矩形板状体4の四隅に配置するものに限定されず、少なくとも3個の感圧センサ7が、一例として図1Cの底面図に円形板状体4bとの関係で示すように、板状体4bに対して平面的に見て、板状体4b内の受風部2の重心6を囲む三角形37の頂点の位置に配置されていればよい。
【0019】
演算部30はすべての感圧センサ7と接続されて、感圧センサ7からの検出値を基に風速と風向とを算出する。例えば、各感圧センサ7の測定値の総合計と各感圧センサ7の測定値のバランスとによって、気流13の圧力の量と方向、すなわち、風速と風向を演算部30で算出する。なお、以下の図では、演算部30の図示を省略している場合がある。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態1における風速風向測定装置1を水平面31に載置した場合での重量荷重の説明図である。ここでは、気流による圧力が受風部2に付与されていない状態を表しており、受風部2の重心6を通る平面9も水平面に平行である場合を示している。この時、例として各感圧センサ7の感圧部8と受風部2の重心6を通る平面9とが接する位置が、受風部2の重心6からの距離が等しい場合、感圧部8には受風部2の重量が均等にかかることになる。そのため、各感圧センサ7に付与される重量の垂直成分12は、(受風部2の重量/感圧センサ7の個数)のように均等になる。なお、各感圧部8は、受風部2の重心6を通る平面9に対して垂直成分を検出するような感圧センサ7を用いる。また、各感圧部8は、圧力を付与された際にその圧力によって変形しない、または極力変形しにくいものが好ましい。
【0021】
図3は本発明の実施の形態1における風速風向測定装置1を、水平面に対して角度θだけ傾斜した傾斜面32に載置した場合での重量荷重の説明図である。ここでも、気流による圧力が受風部2に付与されていない状態を表しており、受風部2の重心6を通る平面9も水平面に対して角度θだけ傾斜している状態を示している。なお、この場合も図2の場合と同様に、各感圧センサ7の感圧部8が受風部2の重心6を通る平面9と接する位置が、受風部2の重心6からの距離が等しい場合とし、この時、感圧部8には受風部2の重量が均等にかかる。この場合、受風部2の重心6を通る平面9と各感圧センサ7の感圧部8との接点には図のように重量の垂直成分12が付与される。受風部2の板状体4と、各感圧センサ7の感圧部8との接点は、受風部2の重心6を通る平面9で接しているため、受風部2の重心6を通る平面9の傾きによる受風部2の重心移動は、受風部2の重心6を通る平面9の面方向にしか発生しないため、各感圧センサ7に付与される重量の垂直成分12は、(受風部2の重量×cosθ/感圧センサ7の個数)のようになり、受風部2の重心6を通る平面9が図2のように水平の状態の時の各感圧センサ7の検出値に対してcosθを積算した分だけ少なくはなるが、均等のままとなる。このように、傾斜面32に設置した場合でも、受風部2の重量が感圧センサ7同士の検出値の差、つまりバランスに変化を与えることは無い。
【0022】
図4は、載置面35に載置された風速風向測定装置1が載置面35に平行な気流13の圧力を受けた状態の説明図である。例えば図4に示すように受風部2の球体3に対して気流13が付与される場合、球体3に気流13による、載置面35に平行な方向の圧力14がかかる。球体3に上記のように気流13が付与された際には、受風部2は気流13による圧力14の方向に倒れようとするが、受風部2は受風部2の重心6を通る平面9と感圧部8とが受風部2の重心6を通る平面9の面方向には変位しないため、ここでは、気流13の上流側の感圧部8と平面9との接点が支点15となり、気流13の下流側の感圧部8と平面9との接点が作用点16となって気流13による圧力14のモーメントによる垂直成分17が作用する。この支点15と作用点16については逆の場合にも作用し、例えば上記説明において、気流13の下流側の感圧部8と平面9との接点が支点となり、気流13の上流側の感圧部8と平面9との接点が作用点として作用する。ここでは、二つの感圧センサ7の感圧部8に関する関係性を説明したが、一つの感圧センサ7の感圧部8に対しては、その時の気流13の圧力の量と方向によって、自らを除く他の感圧センサ7の感圧部8と平面9との接点の全てが支点となり、自らの感圧部8と平面9との接点が作用点としてそれらが総合されて一つの圧力として感圧部8で検出される。図4の場合は無風状態における受風部2の重量の垂直成分12に加えて、気流13による圧力14で倒れようとするモーメントの影響を各感圧センサ7がそれぞれの位置で検出し、これら各感圧センサ7の測定値の総合計と各感圧センサ7の測定値のバランスとによって、気流13の圧力の量と方向、すなわち、風速と風向を演算部30で算出することができる。
【0023】
図5A及び図5Bは気流13の圧力の方向による差についての説明図である。
【0024】
図5Aは、水平面に対して斜め下方から斜め上方に向かって気流13が風速風向測定装置1に付与された場合の説明図である。球体3に斜め上方向の気流13による圧力14が風速風向測定装置1に付与された場合、球体3には水平面に対して浮く方向に力がかかる。そのため、受風部2全体も水平面に対して浮く方向に力がかかり、受風部2の重量が浮力の垂直成分18の分だけ軽減される方向に働く。さらには、球体3に付与される圧力の量と方向とによって、各感圧部8には、他の感圧部8と平面9との接点が支点となった作用点の合計としての圧力が検出される。
【0025】
同様に、図5Bは、水平面に対して斜め上方から斜め下方に向かって気流13が風速風向測定装置1に付与された場合の説明図である。球体3に斜め下方向の気流13による圧力14が風速風向測定装置1に付与された場合、球体3には水平面に対して押し付けられる方向に力がかかることになる。そのため、受風部2全体にも水平面に対して押し付けられる方向に力がかかることになり、受風部2の重量が押し付け力の垂直成分19の分だけ加算される方向に働く。さらには、球体3に付与される気流13による圧力14によって、各感圧部8では、他の感圧部8と平面9との接点が支点となる作用点の合計としての圧力が検出される。このように、3次元方向からの気流13の状態によって、その気流13の風速及び風向を演算部30で一義的に決定することが可能となる。
【0026】
図6Aは気流13の圧力による圧力測定についての説明図である。この図6Aの場合は4つの感圧センサ7が板状体4の四隅に配置されている状態を示している。図6Aのように気流13が風速風向測定装置1に付与された場合、図6Bのように、重量の垂直成分12と押し付け力の垂直成分19の合計については各感圧センサ7の検出値は同じになるが、モーメントによる垂直成分17の値はそれぞれの感圧センサ7で異なる値を取る。この4つの感圧センサ7の検出値の総検出量と各感圧センサ7の測定値との差分であるバランスから気流13の強さと向きを演算部30で算出する。
【0027】
なお、ここまでは説明を簡素化するために、受風部2の受風部2の重心6からの距離が同じになるように均等に配置された感圧センサ7の場合を例として説明したが、受風部2の重心6からの距離が異なる位置にそれぞれの感圧センサ7が配置されているような場合であっても、気流13の圧力が無い状態での受風部2の重量の各感圧センサ7の配分、又は、気流13の圧力によって各感圧部8が検出する値に影響を与える支点となる感圧部8と作用点となる感圧部8、さらには球体3との位置関係が異なる場合においても、各検出値が均等配置の場合とは異なるが、3次元方向からの気流13の圧力に対して一義的にその力と方向とを演算部30で決定するという点については変わらずに可能である。
【0028】
図7は本発明の実施の形態2における風速風向測定装置1Bの説明図である。受風部2の板状体4に対して、各感圧センサ7と接する面の反対面から感圧センサ7に常時圧力がかかるような位置にばね20を備えており、ばね20の一端は矩形箱体状のケーシング11に固定されている。これにより、受風部2の板状体4は感圧センサ7の感圧部8に常に接する状態となる。なお、ばね20の軸、あるいはばね20の押し付け力の方向は必ずしも図7のように感圧センサ7の軸に重なる必要はない。このばね20は、板状体4に各感圧センサ7の方向に力を常時付与する手段の一例である。
【0029】
このような構成によれば、図9のような逆さ面への配置又は急な傾斜面への配置が可能になる。
【0030】
図8A及び図8Bは本発明の実施の形態3における風速風向測定装置1Cの説明図である。受風部2の板状体4Cには、周囲の表裏に凹部4Cd,4Ceが形成されて平面9沿いの凹部底面4Ca,4Cbを形成することにより、受風部2の重心6を通る平面9が受風部2の板状体4の表裏両面に加工されている。よって、受風部2の板状体4Cの上側の凹部底面すなわち上面4Caに接する複数の下向き感圧センサ21と、受風部2の板状体4Cの下側の凹部底面すなわち下面4Cbに接する複数の上向き感圧センサ22とによって板状体4が挟まれる形で構成されている。図8A及び図8Bの場合は、感圧センサ7の代わりとして、上下それぞれ3個の感圧センサ22,21を同心円状に配置して用いることで、受風部2を定位置に固定することができる。このように、上面4Caに接する下向き感圧センサ21と下面4Cbに接する上向き感圧センサ22とで受風部2を定位置に固定できる状態にさえなっていれば、上方、下方の感圧センサ21,22の個数と配置する位置とは特に限定しなくてもよい。
【0031】
このような構成によれば、図9のような逆さ面への配置又は急な傾斜面への配置が可能になる。
【0032】
図9は逆さ面23に風速風向測定装置1Bを設置した状態の説明図である。風速風向測定装置1が図7、あるいは図8Aのような構成となっている場合、傾斜角度の大きな面や、図9の逆さ面23のような設置面に設置した場合においても、設置面に固定さえできていれば、気流13の風速とその設置面に対する風向との測定が可能となる。
【0033】
図10は気流の圧力影響がない初期状態についての説明図である。風速風向測定装置1を配置した際に気流の負荷による圧力が無い状態を初期値とし、その状態から各感圧センサ7の検出値のバランスの変化と圧力の差分から設置面に対する風速と風向を演算部30で算出するために、設置した面の傾きによる重量の垂直成分12を認識しておく必要がある。そのため、気流の流れが無い無風状態で設置できる場合は問題ないが、すでに気流の流れがある状態で風速風向測定装置1を設置する必要がある場合は、設置した後にケーシング11を取り除きかつ風防カバー24を設置し、風速風向測定装置1が無風状態での重量の垂直成分12を検出しておき、これを初期値として、風防カバー24を撤去した後に、初期値からの各感圧センサ7の検出値の差分をもって風速と風向を演算部30で算出する。
【0034】
前記実施の形態によれば、空間における3次元のどの方向から気流13の圧力を受けても球体3であることで均等に力を受けることができ、上方からの気流13の圧力においても球体3に係る押し付け力として、また下方からの気流13の圧力においても球体3に係る浮力として区別した測定が可能である。言い換えれば、風を受ける部分を球体3とすることで風の影響を三次元のどの方向からも均等に受ける構造とし、気流13の風速と風向を受風部2の荷重の面内バランスと総荷重の変化から演算部30で算出することが可能となり、風速と風向の測定箇所が傾斜面32の場合においても、設置した面に対する信頼性の高い風速と風向の測定を可能とする。
【0035】
また、感圧センサ7の感圧部8と板状体4とが受風部2の重心6を通る平面9において接する構造とすることで、風速風向測定装置1,1B,1Cが傾斜している際にも傾きの影響を受けずに高精度な風速と風向の測定を行うことができる。
【0036】
従って、前記実施の形態によれば、立体的な3次元のどの方向からの気流13に対しても同様に圧力を受けることが可能であり、かつ傾斜面32への設置又は設置後の移動等による傾きなどの影響を排除し、気流13からの圧力の強度と方向を正確に測定することが可能となる。
【0037】
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の前記態様にかかる風速風向測定装置及び風速風向測定装置用センサは、物体に付与される気流の風速と角度が刻々と変化するような状況においても、特に気流と物体との界面近傍において、物体の表面に対する風速と風向を特定することが可能となる。このため、本発明の前記態様は、物体の加熱又は冷却の工程において重要となる気流と物体との熱伝達率の管理、及び物体の乾燥工程における物体の界面近傍の気流の流れの管理を行う風速風向測定装置として、工業製品又は家電製品の製造工程又は各種電子部品の製造工程における乾燥炉、キュア炉、又はリフロー炉などの各種熱処理を行う熱処理方法及び装置に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
1,1B,1C 風速風向測定装置
2 受風部
3 球体
4、4b、4C 板状体
4d 凹部
4e 凹部底面
4Ca、4Cb 凹部底面
4Cd、4Ce 凹部
5 支柱
6 受風部の重心
7 感圧センサ
8 感圧部
9 受風部の重心を通る平面
10 ベース板
11 ケーシング
12 重量の垂直成分
13 気流
14 気流による圧力
15 支点
16 作用点
17 モーメントによる垂直成分
18 浮力の垂直成分
19 押し付け力の垂直成分
20 ばね
21 下向き感圧センサ
22 上向き感圧センサ
23 逆さ面
24 風防カバー
30 演算部
31 水平面
32 傾斜面
35 載置面
37 三角形
60 基板
61 導電体
62 導電性弾力体
63 感圧体下部(支持体)
64 感圧体上部(細長形状体)
65 圧力センサ
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11