(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157814
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20241031BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241031BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241031BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20241031BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241031BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20241031BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241031BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20241031BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/133
H01M4/36 E
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/36 A
H01M4/13
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072407
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】花▲崎▼ 亮
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ09
5H029HJ12
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA02
5H050DA03
5H050FA08
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA09
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】正極活物質中のコバルト含有量を低減させながらも、初期抵抗および保存時における抵抗増加を抑えたリチウムイオン二次電池を目的とする。
【解決手段】ここに開示されるリチウムイオン二次電池100において、正極活物質56は、LiとNiとMnとを含む層状構造のリチウム遷移金属複合酸化物56aと、被覆部56cとを備え、リチウム遷移金属複合酸化物は56a、Li以外の金属元素の合計に対するNiの含有率が75モル%以上であり、一次粒子56pが凝集してなる二次粒子であり、該二次粒子の平均空隙率は、2%以上10%以下であり、被覆部56cはホウ素化合物を含む。一方で、負極活物質66は、炭素材料66cと、Si含有材料66sと、を含み、負極活物質66の総量を100質量%としたときに、負極活物質66中のSi元素の含有比率が5質量%以上10質量%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、セパレータと、非水電解質と、を備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記正極は、正極活物質を含有する正極活物質層を備え、
前記正極活物質は、LiとNiとMnとを含む層状構造のリチウム遷移金属複合酸化物と、前記リチウム遷移金属複合酸化物の表面の少なくとも一部に配置された被覆部と、を備え、
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、
Li以外の金属元素の合計に対するNiの含有率が75モル%以上であり、
一次粒子が凝集してなる二次粒子であり、
走査型電子顕微鏡による前記二次粒子の断面観察における、前記二次粒子の平均空隙率は、2%以上10%以下であり、
前記被覆部はホウ素化合物を含み、
前記負極は、負極活物質を含有する負極活物質層を備え、
前記負極活物質は、炭素材料と、Si含有材料と、を含み、
前記負極活物質の総量を100質量%としたときに、前記負極活物質中のSi元素の含有比率が5質量%以上10質量%以下である、
リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、以下の一般式:
LiαNixMnyMzO2
(なお、0.8≦α≦1.2、0.75≦x≦0.95、0.05≦y≦0.25、0≦z≦0.2、x+y+z=1であって、MがMg,Ca,Co,Al,Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wから選択される1種以上である。)で表される、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記リチウム遷移金属複合酸化物はWを含む、
請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記リチウム遷移金属複合酸化物中において、Co元素の含有量(モル)とMn元素の含有量(モル)とが以下の関係:
0≦Co/Mn≦0.42
を満たす、
請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記ホウ素化合物としてホウ酸リチウム塩を含む、
請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
前記被覆部は、酸化アルミニウムをさらに含む、
請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
前記負極は、負極集電体をさらに含み、
前記負極活物質層は、厚み方向に見て、前記負極集電体に接する負極下層と、前記負極下層よりも前記負極集電体から離れた負極上層と、を備え、
前記負極活物質全体のSi元素を100質量%としたときの、前記負極上層のSi元素の含有比率が90質量%以上である、
請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
前記負極活物質層の全体の厚みに対する前記負極上層の厚みの比が、0.4以上0.8以下である、
請求項7に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項9】
前記Si含有材料は、Si、酸化ケイ素、Si-C複合体から選択される1種以上を含む、
請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)等の車両に搭載される駆動用電源として好適に用いられており、その需要は急速に拡大している。リチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が用いられ、中でも、特許文献1に示されるような、Ni、CoおよびMnを含有するリチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、近年、リチウムイオン二次電池の需要の拡大に際し、リチウムイオン二次電池に用いられるコバルト(Co)の枯渇が懸念されている。かかる対策として、正極活物質中のCoの含有率を低減することが考えられる。しかしながら、本発明者が鋭意検討した結果、正極活物質中のCoの含有率を低減させた場合、リチウムイオン二次電池の初期抵抗および保存時における抵抗の増加が著しくなるという問題を見出した。
【0005】
ここに開示される技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、正極活物質中のコバルト含有量を低減させながらも、初期抵抗および保存時における抵抗増加を抑えたリチウムイオン二次電池の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される技術は、リチウムイオン二次電池に関し、正極と、負極と、セパレータと、非水電解質と、を備え、上記正極は、正極活物質を含有する正極活物質層を備え、上記正極活物質は、LiとNiとMnとを含む層状構造のリチウム遷移金属複合酸化物と、上記リチウム遷移金属複合酸化物の表面の少なくとも一部に配置された被覆部と、を備え、上記リチウム遷移金属複合酸化物は、Li以外の金属元素の合計に対するNiの含有率が75モル%以上であり、一次粒子が凝集してなる二次粒子であり、走査型電子顕微鏡による上記二次粒子の断面観察における、上記二次粒子の平均空隙率は、2%以上10%以下であり、上記被覆部はホウ素化合物を含み、上記負極は、負極活物質を含有する負極活物質層を備え、上記負極活物質は、炭素材料と、Si含有材料と、を含み、上記負極活物質の総量を100質量%としたときに、上記負極活物質中のSi元素の含有比率が5質量%以上10質量%以下であることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、正極活物質中の組成、具体的にはリチウム遷移金属複合酸化物中のNiの含有率を所定の範囲としている。リチウム遷移金属複合酸化物は所定の範囲の空隙率を有する二次粒子であり、該リチウム遷移金属複合酸化物の少なくとも一部にホウ素化合物を含む被覆部が配置される。さらに、負極活物質として、炭素材料に加えSi含有材料を所定量含む。これにより、正極活物質中のコバルト含有量を低減させながらも、初期抵抗および保存時における抵抗増加を抑えたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の内部構造を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の電極体の構成を示す模式分解図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る正極活物質の構成を示す模式図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る負極シート(負極)の構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る、負極シート(負極)の構成を示す
図4対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、ここに開示されるリチウムイオン二次電池のいくつかの好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本開示の実施に必要な事柄(例えば、本開示を特徴付けないリチウムイオン二次電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示されるリチウムイオン二次電池は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0010】
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」(以下、単に「電池」ということもある)とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般をいう。
【0011】
以下、扁平形状の電極体と扁平形状の電池ケースとを有する扁平角型のリチウムイオン二次電池を例にして、本開示について詳細に説明するが、本開示をかかる実施形態に記載されたものに限定することを意図したものではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の内部構造を模式的に示す断面図である。
図1に示すリチウムイオン二次電池100は、扁平形状の電極体20と非水電解質80とが扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)30に収容されることにより構築される密閉型電池である。電池ケース30には外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36とが設けられている。また、電池ケース30には、非水電解質80を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。正極端子42は、正極集電板42aと電気的に接続されている。負極端子44は、負極集電板44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質としては、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。
【0013】
図2は、一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の電極体の構成を示す模式分解図である。電極体20は、
図1および
図2に示すように、帯状の正極シート50と、帯状の負極シート60とが、2枚の帯状のセパレータ70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成されている構成を有する。正極活物質層非形成部分52a(すなわち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)および負極活物質層非形成部分62a(すなわち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)は、電極体20の捲回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交するシート幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。なお、正極シート50は、ここに開示される「正極」の一例であって、負極シート60は、ここに開示される「負極」の一例である。
【0014】
<正極>
ここに開示される正極(正極シート50)は、正極活物質層54を備える。
図2に示すように、正極(正極シート50)は、ここでは、正極集電体52と、正極集電体52に支持された正極活物質層54と、を備える。なお、本実施例では、正極集電体52の片側の表面にのみ正極活物質層54が図示されているが、正極集電体52の両側の表面に正極活物質層54がそれぞれ設けられていてもよい。
【0015】
図3は、一実施形態に係る正極活物質56の構成を示す模式図である。正極活物質層54は、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質56を含んでいる。本実施形態に係る正極活物質56は、母材となるリチウム遷移金属複合酸化物56aと、リチウム遷移金属複合酸化物56aの表面の少なくとも一部に配置された被覆部56cと、を備える。被覆部56cは、典型的には、物理的および/または化学的な結合によって、リチウム遷移金属複合酸化物56aに配置される。
【0016】
本実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物56aは、層状構造を有し、かつ、必須元素としてリチウム(Li)と、ニッケル(Ni)と、マンガン(Mn)と、を含む。本実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物56aは、Li以外の金属元素に対するNiの含有率が75モル%以上である、いわゆる高Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物である。なお、高Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物は、ここに開示される「Li以外の金属元素の合計に対するNiの含有率が75モル%以上であるリチウム遷移金属複合酸化物」の一例である。
【0017】
正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物56a以外の正極活物質を本開示の効果を阻害しない範囲内(例えば正極活物質の全質量に対し10質量%未満、好ましくは5質量%以下)で含有していてもよい。また、正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物56aのみから構成されていてもよい。
【0018】
リチウムイオン二次電池の高い体積エネルギー密度の観点から、リチウム遷移金属複合酸化物56aにおいて、Li以外の金属元素の合計に対するNiの含有率は、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。一方、高い安定性の観点から、Li以外の金属元素の合計に対するNiの含有率は、好ましくは95モル%以下であり、より好ましくは93モル%以下である。
【0019】
層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物56aとしては、例えば、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。高Ni含有リチウム遷移金属複合酸化物の粒子が層状構造(すなわち、層状の結晶構造)を有することは、公知方法(例、X線回折法など)により確認することができる。
【0020】
なお、本明細書において「リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物」とは、Li、Ni、Co、Mn、Oを構成元素とする酸化物の他に、それら以外の1種または2種以上の添加的な元素を含んだ酸化物をも包含する用語である。かかる添加的な元素の例としては、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、Fe、Zn、Sn等の遷移金属元素や典型金属元素等が挙げられる。また、添加的な元素は、B、C、Si、P等の半金属元素や、S、F、Cl、Br、I等の非金属元素であってもよい。このことは、上記したリチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等についても同様である。
【0021】
いくつかの好適な態様において、リチウム遷移金属複合酸化物56aは、以下の一般式(i)で表される組成を有することが好ましい。
LiαNixMnyMzO2・・・式(i)
上記式(i)中の、x、y、zおよびαはそれぞれ、0.8≦α≦1.2、0.75≦x≦0.95、0.05≦y≦0.25、0≦z≦0.2、x+y+z=1を満たす。式(i)中のMは、Mg,Ca,Co,Al,Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素である。
【0022】
上記式(i)中のαは、好ましくは0.9≦α≦1.2を満たし、より好ましくは1.0≦α≦1.1を満たす。xは、電池特性(例えばエネルギー密度、サイクル特性、熱安定性)の観点から、好ましくは0.8≦x≦0.95を満たし、より好ましくは0.8≦x≦0.9を満たす。yは、例えばエネルギー密度、熱安定性、コストの観点から、好ましくは0.1≦y≦0.25を満たし、より好ましくは0.17≦y≦0.25を満たす。zは、好ましくは0≦z≦0.1を満たし、より好ましくは0≦z≦0.03を満たし、さらに好ましくは0である。なお、上記式(i)において、「x+y+z=1」は、x+y+zが1であることの他、ここで開示される技術の効果を実現し得る限り、実質的に1とみなす場合を包含し、典型的には、x+y+z=0.95~1.1であり得、好ましくはx+y+z=0.99~1.05であり得る。
【0023】
いくつかの好適な態様において、リチウム遷移金属複合酸化物56aは、添加元素としてWがドープされていることが好ましい。これにより、リチウム遷移金属複合酸化物56aの層状構造が安定するため、初期抵抗をより好適に改善するほか、Mnの非水電解質80への溶出が抑えられ、より好適に保存時の抵抗増加の抑制効果を得られる。リチウム遷移金属複合酸化物56aに添加元素としてWをドープ(固溶)する場合、W以外のリチウム遷移金属複合酸化物56aの遷移金属元素の合計に対して、0.1~0.5モル%ドープすることが好ましく、0.1~0.3モル%ドープすることがより好ましい。
【0024】
リチウム遷移金属複合酸化物56aは、Co元素の含有量(モル)とMn元素の含有量(モル)とが以下の関係:
0≦Co/Mn≦0.42
であることが好ましい。これにより、リチウム遷移金属複合酸化物56a中のCo元素及びMn元素の含有比率を制御している。なお、上記した関係において、Co/Mnの値が小さいほど、好適にリチウム遷移金属複合酸化物56a中のコバルト含有量を低減させながらも、初期抵抗および保存時における抵抗増加を抑えることができることから、0≦Co/Mn≦0.32であることが好ましく、0≦Co/Mn≦0.25であることがより好ましく、0≦Co/Mn≦0.21であることがさらに好ましい。
【0025】
従来のリチウムイオン電池で用いられる、リチウム遷移金属複合酸化物においては、Li以外の金属元素に対するCo元素の含有比率は、典型的には10モル%~40モル%程度である。しかしながら、コバルト資源が限られていることから、本実施形態においては、リチウム遷移金属複合酸化物56aのCoの含有率を従来に比べ低減することが好ましい。従って、いくつかの好適な態様においては、Li以外の金属元素の合計に対するCoの含有比率は、例えば、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、0モル%(即ち、Coフリー)であることが更に好ましい。
【0026】
図3に示すように、リチウム遷移金属複合酸化物56aは、複数の一次粒子56pが典型的には、物理的または化学的な結合力によって凝集した二次粒子状である。リチウム遷移金属複合酸化物56aの二次粒子を構成するリチウム遷移金属複合酸化物56aの一次粒子56pの個数は、特に限定されないが、例えば、おおよそ10個以上であり、好ましくはおおよそ30個以上、より好ましくはおおよそ50個以上である。一次粒子56pの個数は、特に限定されないが、例えば、おおよそ120個以下であり得る。なお、本明細書において「一次粒子」とは、正極活物質を構成する粒子の最小単位をいい、具体的には、電子顕微鏡観察下で認められる外見上の幾何学的形態から判断した最小の単位のことをいう。また、本明細書において、かかる一次粒子56pが10個以上凝集してなる集合物を「二次粒子」という。
【0027】
リチウム遷移金属複合酸化物56aは、二次粒子内部に、凝集した一次粒子56p間の隙間に由来する空隙Sを有する。なお、空隙Sは、開口していても、開口していなくてもよい。空隙Sが開口している場合は、1つの空隙Sが2以上の開口部を有していてもよい。空隙Sは、断面視において、二次粒子の仮想的な外形線OLの内部に位置し、典型的には複数の一次粒子56pによって囲まれた空間である。
【0028】
本実施形態において、リチウム遷移金属複合酸化物56a(二次粒子)の空隙率は、2%以上10%以下である。二次粒子の空隙率は、例えば2%以上であり、3%以上、または5%以上であってもよい。二次粒子の空隙率を所定以上とすることで、リチウムイオン二次電池100の初期抵抗を低減することができる。また、リチウム遷移金属複合酸化物56aの二次粒子の内部に適切な空隙Sを確保することができ、例えば二次粒子の中心部まで、後述の被覆部56cを満遍なく配置することができる。一方、二次粒子の空隙率が過多(典型的には、空隙率が10%を超える場合。)であると、保存時の抵抗増加が増大する。従って、二次粒子の空隙率は、例えば10%以下であり、9%以下、または8%以下であってもよい。なお、本明細書において、「リチウム遷移金属複合酸化物の平均空隙率」はリチウム遷移金属複合酸化物の断面電子顕微鏡画像から把握され、かつ任意に選ばれる複数の二次粒子の空隙率を測定することによって平均値を算出することができる。複数の二次粒子とは、例えば20個以上であり得る。まず、クロスセクションポリッシャー加工等によってリチウム遷移金属複合酸化物56aの断面観察用試料を作製する。次に、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて断面観察用試料のSEM画像を取得する。得られたSEM画像より、画像解析ソフト(例えば、「ImageJ」。)を用いて、二次粒子全体の面積と、二次粒子内部の全空隙の合計面積をそれぞれ求める。そして、下記に示す式(ii):
空隙率(%)=(全空隙の合計面積/二次粒子全体の面積)×100…(ii)
を用いて空隙率を求め、平均値を算出する。
【0029】
リチウム遷移金属複合酸化物56aの空隙率は、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物56aの前駆体である水酸化物を晶析法によって合成する際、合成条件を変更することによって、調整することができる。具体的には、晶析法では、反応液に、リチウム以外の金属元素を含有する原料水溶液、およびpH調整液を添加することによって、水酸化物の合成を行う。このときの反応液のpH値と、撹拌速度を変更することにより、水酸化物の空隙率を調整することができる。この水酸化物とリチウム源となる化合物(例えば、水酸化リチウム等。)を混合し、焼成することにより、二次粒子状であって空隙率が調整されたリチウム遷移金属複合酸化物56aを得ることができる。
【0030】
リチウム遷移金属複合酸化物56aの表面の少なくとも一部には、被覆部56cが配置される。そして、本実施形態においては、被覆部56cにはホウ素化合物が少なくとも含まれる。リチウム遷移金属複合酸化物56aの表面に被覆部56cとしてのホウ素化合物が配置されることにより、リチウム遷移金属複合酸化物56aから非水電解質80へのMn溶出を抑え、保存時の抵抗増加を抑えることができる。また、正極活物質56では、被覆部56cを備えることにより、一次粒子56p同士の結合力が高まる。これにより、膨張収縮時の応力を緩和し、リチウム遷移金属複合酸化物56aの粒子割れを抑制することができる。この観点からも、好適に保存時の抵抗増加を抑制することができる。上記ホウ素化合物としては、例えば、ホウ素含有酸化物あるいはホウ素およびリチウムを含有する酸化物が好ましく、ホウ酸リチウム塩が特に好ましい。ホウ素化合物の具体例として、LiBO2、LiB(OH)4、Li3BO3、B2O3等があり得、特にLiBO2が好適に用いられる。被覆部56cとしてのホウ素化合物の割合は、正極活物質中のNiとMnの総量を100モル%としたときのホウ素(B)換算で、たとえば0.5~2.0モル%であり、0.7~1.5モル%であることが好ましい。
【0031】
被覆部56cは、少なくともリチウム遷移金属複合酸化物56aの二次粒子の表面に配置されることが好ましい。このとき、被覆部56cによる正極活物質56の被覆率は、60%以上であってもよい。なお、被覆部56cが二次粒子の表面に配置されること、および、被覆部56cで被覆されている部分の割合(被覆率)は、例えば正極活物質56に対してXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析によって確認できる。
【0032】
被覆部56cは、上記二次粒子の表面に加えて、あるいは、上記二次粒子の表面にかえて、二次粒子の内部に存在することが好ましい。具体的には、二次粒子の内部の一次粒子56pの表面に被覆部56cが存在することが好ましい。二次粒子の内部に存在する被覆部56cの量は、二次粒子の表面に存在する被覆部56cの量よりも多くてもよいし、少なくてもよい。これにより、ここに開示される技術の効果をより高いレベルで発揮できる。なお、被覆部56cが二次粒子の内部に存在することは、LA―ICP―MS(Laser Ablation Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)分析によって確認できる。
【0033】
いくつかの好適な態様において、被覆部56cは、ホウ素化合物に加え、酸化アルミニウム(Al2O3)をさらに含むことが好ましい。詳述すると、酸化アルミニウムは、非水電解質80の分解によって発生するフッ化水素ガス(フッ酸)をトラップする働きを持つ。これにより、正極活物質56(リチウム遷移金属複合酸化物56a)とフッ化水素ガスとの反応を起因とするMnの非水電解質80への溶出を抑えることができる。従って、酸化アルミニウムを表面に配置することで、より好適に保存時の抵抗増加を抑えることができる。被覆部56cとしての酸化アルミニウムの割合は、リチウム遷移金属複合酸化物56a中のNiとMnの総量を100モル%としたときのアルミニウム(Al)換算で、たとえば0.1~0.5モル%であり、0.3~0.5モル%であることが好ましい。
【0034】
リチウム遷移金属複合酸化物56a(二次粒子)の平均粒子径(D50)は、特に限定されない。特に高い正極活物質層54の充填性およびリチウムイオン二次電池100の高い体積エネルギー密度の観点から、リチウム遷移金属複合酸化物56a(二次粒子)の平均粒子径(D50)は、好ましくは5μm~30μmであり、より好ましくは10μm~20μmである。
【0035】
なお、本明細書において「平均粒子径(D50)」とは、メジアン径(D50)を指し、また、レーザ回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径が小さい微粒子側からの累積頻度50体積%に相当する粒径を意味する。よって、二次粒子の平均粒子径(D50)は、レーザ回折・散乱式の粒度分布測定装置等を用いて求めることができる。
【0036】
リチウム遷移金属複合酸化物56aの一次粒子56pの平均粒子径は、特に限定されない。例えば、正極活物質56のエネルギー密度や出力特性の観点から、リチウム遷移金属複合酸化物56aの一次粒子56pの平均粒子径は、0.05μm~2.5μmであり、好ましくは1.2μm以上であり、より好ましくは1.5μm以上であり、さらに好ましくは1.7μm以上である。一方で、正極活物質56のより高いサイクル特性の観点から、リチウム遷移金属複合酸化物56aの一次粒子56pの平均粒子径は、好ましくは2.2μm以下であり、より好ましくは2.1μm以下である。
【0037】
なお、「リチウム遷移金属複合酸化物の一次粒子の平均粒子径」とは、リチウム遷移金属複合酸化物56aの一次粒子56pの長径の平均粒子径であって、リチウム遷移金属複合酸化物56aの断面電子顕微鏡画像から把握され、かつ任意に選ばれる複数の一次粒子56pの長径の平均値を指す。複数の一次粒子56pとは、例えば20個以上であり得る。具体的には、一次粒子56pの平均粒子径は、例えば、クロスセクションポリッシャー加工によってリチウム遷移金属複合酸化物56aの断面観察用試料を作製する。次に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてリチウム遷移金属複合酸化物56aの断面観察用試料のSEM画像を取得する。そして、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(例えば「Mac-View」)を用いて、SEM画像より任意に選択した複数の一次粒子56pの長径をそれぞれ求め、その平均値を算出することにより求めることができる。
【0038】
リチウム遷移金属複合酸化物56aの一次粒子56pは、典型的には略球状である。ただし、不定形状等であってもよい。なお、本明細書において「略球状」とは、全体として概ね球体と見なせる形態を示し、電子顕微鏡の断面観察画像に基づく平均アスペクト比(長径/短径比)が、例えば1~1.5であることをいう。
【0039】
リチウム遷移金属複合酸化物56a平均粒子径(D50)は、特に限定されない。正極活物質層のエネルギー密度や出力特性の向上の観点から、リチウム遷移金属複合酸化物56aの平均粒子径(D50)は、好ましくは5μm~30μmであり、より好ましくは10μm~20μmである。なお、本明細書において「平均粒子径(D50)」とは、メジアン径(D50)を指し、また、レーザ回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径が小さい方(微粒子側)からの累積頻度50体積%に相当する粒径を意味する。よって、平均粒子径(D50)は、レーザ回折・散乱式の粒度分布測定装置等を用いて求めることができる。
【0040】
リチウム遷移金属複合酸化物56aのBET比表面積は、特に限定されない。リチウムイオン二次電池100に優れた出力特性を付与できることから、リチウム遷移金属複合酸化物56aのBET比表面積は、好ましくは0.50m2/g~0.85m2/gであり、より好ましくは0.55m2/g~0.80m2/gである。なお、リチウム遷移金属複合酸化物56aのBET比表面積は、市販の比表面積測定装置を用いて、窒素吸着法によって測定することができる。
【0041】
正極活物質層54中の正極活物質56の含有量(すなわち、正極活物質層54の全質量に対する正極活物質56の含有量)は、特に限定されないが、例えば80質量%以上であり、87質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは97質量%以上である。
【0042】
正極集電体52としては、リチウムイオン二次電池100に用いられる公知の材料を用いてよく、その例としては、導電性の良好な金属(例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製のシートまたは箔が挙げられる。本実施形態に係る正極集電体52としては、アルミニウム箔が好ましい。
【0043】
正極集電体52の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定することができる。正極集電体52としてアルミニウム箔を用いる場合には、正極集電体52の厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0044】
<負極>
ここに開示される負極(負極シート60)は、負極活物質層64を備える。
図2に示すように、負極(負極シート60)は、負極集電体62と、負極集電体62上に支持された負極活物質層64と、を備える。なお、本実施例では、負極集電体62の片側の表面にのみ負極活物質層64が図示されているが、負極集電体62の両側の表面に負極活物質層64がそれぞれ設けられていてもよい。
【0045】
負極活物質層64は電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質66を含有する。
図4は、一実施形態に係る負極シート60(負極)の構成を示す模式図である。本実施形態に係る負極活物質66は、必須として、炭素材料66cと、Si含有材料66sと、を含んでいる。ただし、負極活物質66は、炭素材料66cおよびSi含有材料66sに加えて、その他の負極活物質をさらに含んでいてもよい。また、説明の便宜上、ここでは図示しないが、負極活物質層64は、負極活物質66の他に導電材やバインダ、増粘剤等を含み得る。
【0046】
炭素材料66cとしては、例えば、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等が用いられ、中でも黒鉛が好適に用いられる。黒鉛は、天然黒鉛であっても人造黒鉛であってもよく、黒鉛が非晶質な炭素材料で被覆された形態の非晶質炭素被覆黒鉛であってもよい。
【0047】
炭素材料66cの平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上50μm以下であり、好ましくは1μm以上25μm以下であり、より好ましくは5μm以上20μm以下である。なお、炭素材料の平均粒子径(D50)は、例えば、レーザ回折散乱法により求めることができる。
【0048】
Si含有材料66sは、例えば、ケイ素(Si)、SiOx(0.05<x<1.95)で表される酸化ケイ素、炭素粒子中にSi粒子を含むSi-C複合体、リチウムシリケート(LixSiyOz)等が挙げられる。Si含有材料66sは、ケイ素、酸化ケイ素、Si-C複合体を好適に用いることができる。また、Si含有材料66sは、SiとSi以外の元素とからなる合金を用いることができる。Si以外の元素としては、例えば、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn、Ti等が挙げられる。負極活物質66中に、Si含有材料66sを含むことで、負極活物質層64表面に正極活物質より溶出したMnを起点とした被膜層の形成を抑制することができる。したがって、保存時における抵抗増加を好適に抑制することができる。
【0049】
Si含有材料66sの平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上50μm以下であり、好ましくは1μm以上25μm以下であり、より好ましくは5μm以上20μm以下である。なお、炭素材料の平均粒子径(D50)は、例えば、レーザ回折散乱法により求めることができる。
【0050】
本実施形態において、負極活物質66の総量を100質量%としたときの負極活物質66中のSi元素の含有比率は、保存時の抵抗増加抑制効果と容量維持率の両立の観点から、5質量%以上10質量%以下である。Si元素の含有比率が少ない(典型的には、5質量%未満)、負極活物質層64表面に正極活物質より溶出したMnを起点とした被膜層の形成抑制効果が好適に得られず、保存抵抗の抑制効果をうまく得られない。一方、Si元素の含有比率が高すぎる(典型的には、10質量%を超える。)場合、保存時における容量維持率が低下する。
【0051】
負極活物質層64における、Si含有材料66sの分布については、特に限定されず、Si含有材料は、負極活物質層64全体に亘って分散されていてもよく、負極活物質層64の上層(負極活物質層64の表層側)に集中して分散していてもよく、負極活物質層64の下層(負極集電体62側)に集中して分散していてもよい。いくつかの好適な態様において、Si含有材料66sは、後述する第2実施形態(
図5)にも示すように、負極活物質層64の上層(
図5の負極上層164uに相当。)に集中して分散していることが好ましい。
図4に示すように、本実施形態では、Si含有材料66sは負極活物質層64全体に亘ってほぼ均一に分散されている。なお、「負極活物質層64の上層に集中して分散している」は、ここに開示される「負極活物質全体のSi元素を100質量%としたときの、負極上層のSi元素の含有比率が90質量%以上である」の一例である。
【0052】
負極活物質層64は、負極活物質66以外の成分、例えば導電材やバインダ、増粘剤等を含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等、従来からリチウム二次電池で用いられているものを特に制限なく使用できる。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0053】
負極活物質層64は、導電材をさらに含むことが好ましい。導電材としては、例えば、アセチレンブラック(AB)やケッチェンブラック等のカーボンブラック(CB)、カーボンナノチューブ(CNT)、気相法炭素繊維(VGCF)等の炭素繊維、活性炭、黒鉛等の炭素材料を好適に使用し得、中でもCNTを含むことが好ましい。導電材として、CNTを含むことにより、好適に容量維持率を維持することができる。CNTとしては、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、2層カーボンナノチューブ(DWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)のいずれであってもよく、これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。負極活物質層64は、導電材としてCNTを用いる場合、SWCNTを用いることが好ましい。負極活物質層64の導電材としてCNTを用いる場合、負極活物質層全体に対し、0.5質量%以下CNTを含むことが好ましい。
【0054】
負極活物質層64中の負極活物質66の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上99質量%以下がより好ましい。負極活物質層64中のバインダの含有量は、0.1質量%以上8質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がより好ましい。負極活物質層64中の増粘剤の含有量は、0.3質量%以上3質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2質量%以下がより好ましい。
【0055】
負極活物質層64の厚みは、特に限定されないが、負極集電体62の片側の表面にのみ負極活物質層64を設けた場合、例えば10μm以上200μm以下であり、好ましくは20μm以上100μm以下である。また、負極集電体62の両面に負極活物質層64を設けた場合、片面につき(一方の面および他方の面それぞれの厚みが)、例えば10μm以上200μm以下であり、好ましくは20μm以上100μm以下である。
【0056】
負極集電体62としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の負極集電体を用いてよく、その例としては、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製のシートまたは箔が挙げられる。負極集電体62としては、銅箔が好ましい。
【0057】
負極集電体62の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定することができる。負極集電体62として銅箔を用いる場合には、負極集電体62の厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0058】
セパレータ70としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられるものと同様の各種多孔質シートを用いることができ、その例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から成る多孔質樹脂シートが挙げられる。かかる多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータ70は、耐熱層(HRL)を備えていてもよい。
【0059】
非水電解質80としては、従来のリチウムイオン二次電池と同様のものを使用可能であり、典型的には有機溶媒(非水溶媒)中に、支持塩を含有させたものを用いることができる。非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。なかでも、正極材料による低温抵抗の低減効果が特に高くなることから、カーボネート類が好ましい。カーボネート類の例としては、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)等が挙げられる。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)等のリチウム塩を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、0.7モル/L以上1.3モル/L以下が好ましい。
【0060】
なお、非水電解質80は、本開示の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した非水溶媒および支持塩以外の成分、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。非水電解質80に用いられる添加剤としては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,3-プロパンスルトン(PS)等の正負極被膜形成剤;ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン等の過充電防止剤などが挙げられる。中でも、非水電解質80は、FECを含むことが好ましい。非水電解質80中に添加剤としてFECを含む場合、非水電解質80に対し、20vol%以下の割合でFECを含むことが好ましい。
【0061】
以上のように構成されるリチウムイオン二次電池100は、高Niリチウム遷移金属複合酸化物であるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、かつ、該リチウム遷移金属複合酸化物は、一次粒子が凝集してなる二次粒子であり、該二次粒子の平均空隙率は、2%以上10%以下である正極活物質を用いる。さらに、上記正極活物質は、上記リチウム遷移金属複合酸化物の表面にホウ素化合物を含み被覆部を備える。また、リチウムイオン二次電池100の負極活物質は、炭素材料と、Si含有材料と、を含み、該負極活物質の総量を100質量%としたときに、負極活物質中のSi元素の含有比率が5質量%以上10質量%以下である負極活物質を備える。これにより、正極活物質中のコバルト含有量を低減させながらも、初期抵抗の増大を抑制し、保存時における抵抗増加を抑えることができる。
【0062】
詳述すれば、Mnを含む層状構造のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いた際、リチウム遷移金属複合酸化物中のCo含有率を低減すると、リチウム遷移金属複合酸化物の安定性が低下する。典型的には、リチウム遷移金属複合酸化物の層間が狭くなるため、Liイオンの伝導性が低下することにより、初期抵抗が増大する。また、リチウム遷移金属複合酸化物の安定性が低下することにより、保存時において正極活物質層(具体的には、リチウム遷移金属複合酸化物)からMn溶出が顕著となる。例えば、正極活物質層から溶出したMnは負極活物質層の表面(典型的には黒鉛表面)に析出し、更に析出したMnを起点とした被膜成長が起こる。かかる被膜により、リチウムイオン電池の耐久劣化が起こる。そのため、従来、Mnを含む層状構造のリチウム遷移金属複合酸化物であって、Coの含有率を減らしたものを正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池では、初期抵抗の悪化および保存時における抵抗増加が大きくなるという課題があった。
【0063】
これに対し、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100では、リチウム遷移金属複合酸化物56a中において、Li以外の金属元素の合計に対するNiの含有率が75モル%以上であるため、リチウム遷移金属複合酸化物56a中のMn比率を抑えることができる。そして、リチウム遷移金属複合酸化物56aの二次粒子の空隙率を2~10%とすることで、非水電解質80とリチウム遷移金属複合酸化物56aとの反応面積が増大する。これにより、Liイオンの伝導性が向上し、初期抵抗が改善される。ところで、リチウム遷移金属複合酸化物56aの二次粒子間に空隙を設けることにより、初期抵抗が改善される一方で、かかる反応面積の増大により、リチウム遷移金属複合酸化物56aから非水電解質80へMnの溶出が促進されるという背反が生じる。そこで、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100では、リチウム遷移金属複合酸化物56aの表面の少なくとも一部に被覆部56cとしてホウ素化合物を配置している。ホウ素化合物は、リチウム遷移金属複合酸化物56a表面に配置されることで、例えば、非水電解質80とリチウム遷移金属複合酸化物56aとの反応面積を抑えることができる。これにより、リチウム遷移金属複合酸化物56aからMn溶出を抑制することができる。さらに、負極活物質66中に含まれるSi含有材料66sによれば、Mnの負極活物質層64表面への析出を抑制する。これにより負極活物質層64表面にMn被膜形成を抑えることができる。従って、リチウム遷移金属複合酸化物中のCo含有率を低減しても、初期抵抗の増加を抑制し、保存時における抵抗増加を抑制したリチウムイオン二次電池100を提供することができる。
【0064】
リチウムイオン二次電池100は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。また、リチウムイオン二次電池100は、小型電力貯蔵装置等の蓄電池として使用することができる。リチウムイオン二次電池100は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用され得る。
【0065】
なお、一例として扁平形状の捲回構造を持つ電極体20を備える角形のリチウムイオン二次電池100について説明した。しかしながら、ここに開示されるリチウムイオン二次電池は、積層型電極体(すなわち、複数の正極と、複数の負極とが交互に積層された電極体)を備えるリチウムイオン二次電池として構成することもできる。積層型電極体は、正極と負極の間のそれぞれに1枚のセパレータが介在するように、複数のセパレータを含むものであってよく、1枚のセパレータが折り返されながら、正極と負極とが交互に積層されたものであってよい。また、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、円筒型リチウムイオン二次電池、コイン型リチウムイオン二次電池、ラミネート型リチウムイオン二次電池等などの形態としても構築されうる。さらに、電解質を固体電解質とした全固体二次電池を構築することもできる。
【0066】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る負極シート160(負極)の
図4対応図である。
図5では、負極活物質層64に代えて、負極活物質層164を備えること以外は、上述したリチウムイオン二次電池100と同様であってよい。
図5に示すように、負極活物質層164は、負極上層164uと負極下層164dとを備える、いわゆる複層構造である。
【0067】
いくつかの好適な態様において、負極活物質層164は、厚み方向に見て、負極集電体62に接する負極下層164dと、負極下層164dよりも負極集電体62から離れた負極上層164uと、を備え得る。ただし、負極活物質層164は3層以上の複層構造であってもよい。例えば、負極上層164uと負極下層164dとの間に、更に負極上層164u及び負極下層164dと異なる組成を有する層が形成されていてもよい。
【0068】
負極上層164uは、負極活物質層164の厚み方向に見た時、負極下層164dよりも表面側に位置する層である。負極上層164uは、負極下層164dよりも負極集電体62から離れて位置する。負極上層164uは、ここでは負極活物質層164の最表層を構成している。換言すれば、負極上層164uは、負極下層164dよりも正極(正極シート50)側に位置する。
【0069】
負極上層164uに係る負極活物質66は、必須として、Si含有材料66sを含む。負極活物質層164全体のSi元素量を100質量%とした時、負極上層164uに含まれるSi元素の含有比率は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることが更に好ましい。典型的には、負極上層164uに含まれるSi元素の含有量は、負極下層164dに含まれるSi元素の含有量より多い。換言すれば、負極活物質層164において、Si元素が正極(正極シート50)側に集中して分散している。
【0070】
上述したように、正極活物質層54(典型的には、リチウム遷移金属複合酸化物56a)より溶出したMnは、負極活物質層64のうち正極(正極シート50)側、換言すれば負極活物質層164の表層から析出し、被膜を形成する。ここで、負極活物質層164のうち正極(正極シート50)側、即ち負極上層164u側にSi含有材料を集中して分散する構成をとることにより、Mnによる負極活物質層164表面の被膜形成を抑制する効果をより効率よく発現する。従って、好適に保存時における抵抗増加を抑制することができる。
【0071】
なお、本明細書中における、「負極活物質層全体のSi元素量を100%とした時の負極上層に含まれるSi元素の含有比率(質量%)」は、以下のように算出することができる。まず、負極活物質層164の断面SEM画像を観察することにより、負極上層の厚みを取得する。次に、負極活物質層の所定の面積につき、上記取得した負極上層の厚み分、負極活物質層を掻き取ることでサンプルを回収し、ICP(Inductively Coupled Plasma)分析を行うことで負極上層中のSi元素量を算出する。負極下層についても同様に、所定の面積分負極活物質層を掻き取ることでサンプルを回収し、ICP分析により負極下層中のSi元素量を算出する。そして、それぞれ得られた負極上層および負極下層のSi元素量の値より、負極活物質層全体のSi元素量に対する負極上層のSi元素の含有比率を求めることができる。
【0072】
負極上層164uに含まれるSi元素の含有量は、負極上層164uの負極活物質66の合計を100質量%としたときに、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。
【0073】
負極下層164dは、負極活物質層64の厚み方向に見た時、負極上層164uよりも負極集電体62側に位置する層である。ここでは、負極下層164dは、負極集電体62と接している。
【0074】
負極下層164dに係る負極活物質66は、必須として、炭素材料66cを含む。負極下層164dは、Si含有材料66sを含んでもよく、Si含有材料66sを含まなくてもよい。負極下層164dに含まれるSi元素の含有量は、特に限定されないが、負極下層164dの負極活物質を100質量%としたときに、例えば、2質量%以下であり得、1質量%以下であることが好ましい。負極下層164dに含まれるC元素の含有量は、特に限定されないが、負極下層164dの負極活物質を100質量%としたときに、98質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましい。
【0075】
負極活物質層164の全体の厚みTaに対する負極上層164uの厚みTuの比(Tu/Ta)は、例えば、0.8以下であって、好ましくは0.7以下であるとよい。これにより、負極活物質層164中のSi含有材料66s(換言すれば、Si元素)を正極(正極シート50)側に分散させることができるため、より効率よくMnによる被膜形成を抑制する効果を発現する。従って、好適に保存時における抵抗増加を抑制することができる。また、充填性の観点から、負極活物質層164の全体の厚みTaに対する負極上層164uの厚みTuの比は、例えば、0.4以上であって、好ましくは0.5以上であるとよい。なお、明細書中の「負極活物質層の全体の厚みに対する負極上層の厚みの比」は、負極活物質層164の断面SEM画像において測定される。
【0076】
なお、上記したような負極上層164u及び負極下層164dは、従来公知の方法によって作製することができる。これに限定されないが、例えば、組成(典型的には、Si含有材料の含有比率)の異なる2種類以上の負極活物質66を用いて負極活物質層形成用スラリーを調製し、該負極活物質層形成用スラリーを塗布することで形成され得る。
【0077】
以下、ここに開示される技術に関する実施例を説明するが、ここに開示される技術をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0078】
<試験例1:正極活物質の構造及び負極活物質中のSi有無の検討>
(例1)
[正極シートの作製]
まず、例1に係る正極活物質を用意した。具体的には、晶析法によって前駆体である水酸化物を生成する際に、アルカリ性の化合物としてアンモニウムイオンを含む化合物を用い、反応液中のアンモニウムイオン濃度を1wt%とし、かつ、水酸化物とリチウム源とを混合して焼成する際に、焼成温度を800℃とし、焼成時間を12時間とした。これにより、二次粒子状であり、空隙率が5%である層状構造のリチウム遷移金属複合酸化物(Li1Ni0.83Mn0.17O2)を得た。なお、空隙率は、上述の方法により測定を行った。
【0079】
上記得られたリチウム遷移金属複合酸化物の母体に対し、H3BO4を、乾式混合した。この時、リチウム遷移金属複合酸化物のNiとMnの総量と、ホウ素のモル比は、100:1.0となるようにした。そして、第1リチウム遷移金属複合酸化物の表面にホウ素を複合化させた後、酸素雰囲気下にて300℃で3時間熱処理を行った。このようにして、NiとCoとMnの組成(モル比)がNi:Co:Mn=83:0:17(表1の「Ni/Co/Mn」欄の83/0/17に対応)である層状構造のリチウム遷移金属複合酸化物の表面にリチウム遷移金属複合酸化物のNiとMnの総量100モル%に対し、被覆部として、ホウ素換算で1モル%のホウ素化合物(LiBO2)が配置された、例1に係る正極活物質を得た。
【0080】
上記で準備した正極活物質と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、正極活物質:AB:PVDF=100:1:1の固形分質量比で混合した。得られた混合物にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて、混錬し、正極活物質層形成用スラリーを調製した。得られた正極活物質層形成用スラリーを、厚み15μmのアルミニウム箔製の正極集電体の両面に塗布し、乾燥して正極活物質層を形成した。得られた正極活物質層を、圧延ローラーを用いてロールプレスした後、所定の寸法に裁断して例1に係る正極シートを作製した。
【0081】
[負極シートの作製]
まず、炭素材料としての黒鉛とSi含有材料としてのSi-C複合体とを、負極活物質の総量を100質量%としたときのSi元素の含有比率が10質量%、C元素の含有比率が90質量%となるように混合して、例1に係る負極活物質を作製した。
【0082】
上記で準備した負極活物質と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)と、導電材としての単層カーボンナノチューブ(SWCNT)とを、負極活物質:SBR:CMC:SWCNT=100:1:1:0.5の固形分質量比で、イオン交換水中で混合し、負極活物質層形成用スラリーを調製した。得られた負極活物質層形成用スラリーを、厚み10μmの銅箔製の負極集電体上に塗布し、乾燥を行い、負極活物質層を形成した。得られた負極活物質層を、圧延ローラーを用いてロールプレスした後、所定の寸法に裁断した。これにより、負極活物質全体に亘って、Si含有材料がほぼ均一に分散した例1に係る負極シートを作製した。
【0083】
[セパレータの準備]
セパレータとして、PP/PE/PEの三層構造を有する厚み20μmの多孔性ポリオレフィンシートを用意した。
【0084】
[非水電解質の調製]
非水電解質として、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)とフルオロエチレンカーボネート(FEC)とを、EC:EMC:DMC:FEC=25:40:30:5の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPF6を1mol/Lの濃度で溶解したものを用意した。
【0085】
[評価用リチウムイオン二次電池の作製]
正極シートと、負極シートとをセパレータが介在するようにしつつ重ね合わせ、積層体を得た。次いで、積層体を捲回して捲回体を得、これを扁平形状になるようにプレス処理して扁平形状の電極体を得た。電極体に集電端子を取り付け、これを電池ケースに挿入し、溶着した後、非水電解質を注液した。その後、電池ケースを封止することによって、評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0086】
[初期充電処理]
得られた例1に係る評価用リチウムイオン二次電池に対して、25℃の温度環境下で初期充電処理として0.1Cの電流値で、4.2Vの電圧まで定電流充電を行った後、電流値が1/20Cになるまで定電圧充電を行った。その後、0.1Cの電流値で3.0Vまで定電流放電した。
【0087】
(例2)
Li1Ni0.83Mn0.17O2に添加元素としてW(タングステン)が0.3モル%ドープされたリチウム遷移金属複合酸化物を用いたこと以外は、例1と同様にして、例2に係る評価用リチウムイオン二次電池を作製し、初期充電処理を行った。
【0088】
(例3)
負極活物質を黒鉛のみ(即ち、Si含有材料を含まない。)としたこと以外は例1と同様にして、例3に係る評価用リチウムイオン二次電池を作製し、初期充電処理を行った。
【0089】
(例4)
リチウム遷移金属複合酸化物(二次粒子)の空隙率が0%(即ち、空隙が形成されていない中実構造。)であること以外は例1と同様にして、例4に係る評価用リチウムイオン二次電池を作製し、初期充電処理を行った。なお、正極活物質の空隙率は、前駆体となる水酸化物の生成条件を変更することによって調整した。
【0090】
(例5)
リチウム遷移金属複合酸化物の表面にLiBO2が配置していない(表1の「被覆部」欄にて傍線で示す。)こと以外は例1と同様にして、例5に係る評価用リチウムイオン二次電池を作製し、初期充電処理を行った。
【0091】
(例6)
リチウム遷移金属複合酸化物(二次粒子)の空隙率が0%(即ち、空隙が形成されていない中実構造。)であり、かつ、リチウム遷移金属複合酸化物の表面にLiBO2が配置していないこと以外は例1と同様にして、例6に係る評価用リチウムイオン二次電池を作製し、初期充電処理を行った。
【0092】
(例7)
リチウム遷移金属複合酸化物(二次粒子)の空隙率が0%(即ち、空隙が形成されていない中実構造。)であり、かつ、リチウム遷移金属複合酸化物の表面にLiBO2が配置していないこと、かつ、負極活物質を黒鉛のみ(即ち、Si含有材料を含まない。)としたこと以外は例1と同様にして、例7に係る評価用リチウムイオン二次電池を作製し、初期充電処理を行った。
【0093】
[初期抵抗の評価]
例1~7に係る評価用リチウムイオン二次電池に対し、まず、25℃の恒温槽中で、各々の評価用リチウムイオン二次電池に対し、0.3Cの電流値で定電流定電圧(CCCV)充電を行い、SOC(State of Charge)が50%の状態に調整した。その後、5Cの電流値で10秒間パルス放電を実施した。該パルス放電の際の電圧変化量(ΔV)を取得し、下記に示す式(I):
抵抗値=電圧変化量(ΔV)/電流値(5C)…(I)
を用いて、保存前の抵抗値(初期抵抗値)を算出した。結果を表1に示す。
【0094】
[保存抵抗増加率の評価]
初期抵抗値を測定後の例1~7に係る評価用リチウムイオン二次電池に対し、25℃の温度環境下でSOC100%に調整した。この各評価用リチウムイオン二次電池を60℃の恒温層内に置き、14日間保存した。そして、初期抵抗と同じ方法により、保存後の抵抗値を算出した。そして、下記に示す式(II):
抵抗増加率(%)=(保存後の抵抗値/保存前の抵抗値)×100…(II)
より、抵抗増加率(%)を求めた。結果を表1に示す。
【0095】
[容量維持率]
上記した保存抵抗増加率の評価と並行して容量維持率の評価を行った。具体的には、例1~7に係る評価用リチウムイオン二次電池に対し、抵抗増加率評価時に測定した放電容量を、初期容量とした。その後、上記した保存抵抗増加率評価にて保存を行った(即ち、60℃で14日間保存した後)評価用リチウムイオン二次電池の放電容量を、初期容量と同様の方法で求めた。そして、下記に示す式(III):
容量維持率(%)=14日保存後の放電容量/初期容量×100…(III)
を用いて、各例に係る容量維持率(%)を求めた。結果を表1に示す。
【0096】
【0097】
例1および例7の結果より、リチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子に空隙を5%持たせ、該リチウム遷移金属複合酸化物の表面に被覆部としてホウ素化合物を配置し、かつ、炭素材料とSi含有材料とを含む負極活物質を用いた例1では、初期抵抗の低減および保存時の抵抗増加がいずれも好適にみられた。一方、リチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子の空隙率が0%(即ち、中実構造)である正極活物質を用いた例4、例6および例7では初期抵抗の低減が見られなかった。このことから、リチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子に空隙を持たせることにより、初期抵抗の低減効果が得られると考えられる。また、例1、例3および例5の比較から、リチウム遷移金属複合酸化物の表面に被覆部としてホウ素化合物が配置されていること、および、炭素材料とSi含有材料とを含む負極活物質を用いること、のいずれも満たすことにより、保存時の抵抗増加の抑制効果を好適に得られることが分かった。
【0098】
また、例1の構成に加え、リチウム遷移金属複合酸化物に添加元素としてWをドープした例2では、初期抵抗および保存時の抵抗増加について更に良好な結果が得られた。この理由として、リチウム遷移金属複合酸化物の層状構造がWをドープしたことより安定化したことで、Liイオンの伝導性がより向上し、また、Mnの非水電解質への溶出が抑えられたことによるものであると考えられる。
【0099】
<試験例2:Si比率の検討>
(例8~10)
炭素材料としての黒鉛とSi含有材料としてのSi-C複合体とを負極活物質の総量を100質量%としたときのSi元素の含有比率を表2の「Si含有比率」欄に示すように変更したこと以外は、例1と同様にして、例8~10に係る評価用リチウムイオン二次電池を作製し、初期充電処理を行った。例8~10に係る評価用リチウムイオン二次電池に対し、上述した方法によって試験例1と同様の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0100】
【0101】
表2の結果に示すように、負極活物質中のSi元素の含有比率が5質量%あるいは10質量%であった例9、例1については、いずれも保存時の抵抗増加が好適に抑制され、容量維持率の低下も見られなかった。Si元素の含有比率が2質量%である例8においては、保存時の抵抗増加抑制効果があまり得られなかった。この理由として、例8では、Mnの負極活物質表面への析出を十分に抑制できるだけのSi含有材料が負極中に含まれていなかったことが考えられる。また、Si元素の含有比率が高くなるほど電池抵抗の増加抑制効果が良好に発現する一方、Si元素の含有率が13質量%である例10では、容量維持率が他の例に比べ低下がみられた。従って、保存時の抵抗増加抑制効果と容量維持率の両立の観点では、負極活物質中のSi元素の含有比率は5~10質量%がより好適な範囲であると考えられる。
【0102】
<試験例3:正極活物質の空隙率の検討>
(例11~13)
リチウム遷移金属複合酸化物(二次粒子)の空隙率を表3の「空隙率(%)」に示す割合とした以外は、例1と同様にして、例11~13に係る評価用リチウムイオン二次電池を作製し、初期充電処理を行った。なお、正極活物質の空隙率は、前駆体となる水酸化物の生成条件を変更することによって調整した。例11~13に係る評価用リチウムイオン二次電池に対し、上述した方法によって試験例1と同様の評価を実施した。結果を表3に示す。
【0103】
【0104】
リチウム遷移金属複合酸化物(二次粒子)の空隙率が2%である例11では、空隙率が0%である例4に比べ、初期抵抗が好適に抑えられた。空隙率が高くなると初期抵抗の改善について良好な結果が得られる一方で、空隙率が13%である例13では、例1,例11~12に比べて保存時の抵抗増加の抑制が少なく見られた。この理由として、空隙率を高くしたことにより、非水電解質と正極活物質との反応面積増加によるMn溶出の影響が大きくなったことによるものと考えられる。
【0105】
<試験例4:被覆部の検討>
(例14)
リチウム遷移金属複合酸化物の表面に、被覆部としてのLiBO2に加えAl2O3が配置された正極活物質を用いたこと以外は、例1と同様にして、例14に係る評価用リチウムイオン二次電池を作製し、初期充電処理を行った。なお、LiBO2およびAl2O3の割合は、それぞれLiおよびAl換算で、リチウム遷移金属複合酸化物のNiとMnの総量100モル%に対し、LiBO2:Al2O3=1:0.5のモル比率とした。
【0106】
(例15)
リチウム遷移金属複合酸化物のNiとMnの総量100モル%に対し、Al換算で0.5モル%のAl2O3がリチウム遷移金属複合酸化物の表面に配置された正極活物質を用いたこと以外は、例1と同様にして、例15に係る評価用リチウムイオン二次電池を作製し、初期充電処理を行った。
【0107】
例14および15に係る評価用リチウムイオン二次電池に対し、上述した方法によって試験例1と同様の評価を実施した。結果を表4に示す。
【0108】
【0109】
例1および例14の結果より、被覆部としてLiBO2に加え、Al2O3が含有された例14では、保存時の抵抗増加の抑制についてより良好な結果が得られた。一方、Al2O3のみがリチウム遷移金属複合酸化物の表面に配置された例15については、保存時の抵抗増加の抑制が例1ほど良好に得られなかった。この理由として、以下のことが考えられる。ホウ素化合物は、リチウム遷移金属複合酸化物表面に配置されることで、非水電解質とリチウム遷移金属複合酸化物との反応面積を抑え、Mn溶出を抑制する働きを持つ。酸化アルミニウムは、非水電解質が分解することにより発生したフッ化水素ガスをトラップする働きを持つ。そのため、例14では、ホウ素化合物の持つMn溶出抑制効果に加え、酸化アルミニウムの持つフッ化水素ガスのトラップ効果のいずれも好適に発現したことにより、好適にMnの非水電解質への溶出が抑制されたと考えられる。しかし、リチウム遷移金属複合酸化物のMn溶出は、非水電解質とリチウム遷移金属複合酸化物とが反応することにより起因するものが大きい。したがって、Al2O3を配置するだけでは、リチウム遷移金属複合酸化物からのMn溶出を十分に抑制できなかったものと考えられる。
【0110】
<試験例5:正極活物質中のNi配合比の検討>
(例18~24)
リチウム遷移金属複合酸化物のNiとCoとMnの組成(モル比)を表5の「Ni/Co/Mn」欄に示すように変更したこと以外は、例1と同様にして、例18~24に係る評価用リチウムイオン二次電池を作製し、初期充電処理を行った。例18~24に係る評価用リチウムイオン二次電池に対し、上述した方法によって試験例1と同様の評価を実施した。結果を表5に示す。
【0111】
【0112】
表5の結果に示すように、リチウム遷移金属複合酸化物のNi配合比率が83モル%である例1および例18~20において、リチウム遷移金属複合酸化物のCo含有率を減らした場合でも、初期抵抗の低減と保存時の抵抗抑制効果と容量維持率が安定して両立した。また、リチウム遷移金属複合酸化物のNi配合比率が95モル%である例21~22、および、リチウム遷移金属複合酸化物のNi配合比率が75モル%である例23~24についても、同様に初期抵抗の低減と保存時の抵抗抑制効果と容量維持率の両立が見られた。また、リチウム遷移金属複合酸化物のCo/Mn比で見た場合、Co/Mn比が0.42である例20についても、好適に初期抵抗の低減と保存時の抵抗抑制効果と容量維持率の両立が得られた。
【0113】
<試験例6:負極活物質層中のSi含有材料分布の検討>
(例25~26)
負極活物質を黒鉛のみ(即ち、負極活物質の総量を100質量%としたときのSi元素の含有比率が0質量%、C元素の含有比率が100質量%である。)としたこと以外は、例1と同様にして第1の負極活物質層形成用スラリーを調製した。
同様に、黒鉛とSi-C複合体とを、負極活物質の総量を100質量%としたときのSi元素の含有比率が20質量%、C元素の含有比率が80質量%となるようにした点以外は、例1と同様にして第2の負極活物質層形成用スラリーを調製した。
【0114】
例1で用いたものと同じ銅箔製の負極集電体上に、第1の負極活物質層形成用スラリーを塗布し、乾燥を行い、所定の密度となるように圧延ローラーを用いてロールプレスした。次いで、第1の負極活物質層形成用スラリーの乾燥塗膜上に、第2の負極活物質層形成用スラリーを塗布し、乾燥を行い、所定の密度となるように圧延ローラーを用いてロールプレスした。この時、第2の負極活物質層形成用スラリーの厚みが、負極活物質層全体の厚みに対して、0.5となるようにした。これにより、第1の負極活物質層形成用スラリーによって形成された負極下層と、第2の負極活物質層形成用スラリーによって形成された負極上層とが、負極集電体上に支持された例25の負極シートを得た。なお、例25の、負極シートでは、負極活物質全体のSi元素を100質量%としたときの、負極上層のSi元素の含有比率が99質量%であった。
同様に、例1で用いたものと同じ銅箔製の負極集電体上に、第2の負極活物質層形成用スラリーを塗布し、乾燥を行い、所定の密度となるように圧延ローラーを用いてロールプレスした。次いで、第2の負極活物質層形成用スラリーの乾燥塗膜上に、第1の負極活物質層形成用スラリーを塗布し、乾燥を行い、所定の密度となるように圧延ローラーを用いてロールプレスした。この時、第1の負極活物質層形成用スラリーの厚みが、負極活物質層全体の厚みに対して、0.5となるようにした。これにより、第2の負極活物質層形成用スラリーによって形成された負極下層と、第1の負極活物質層形成用スラリーによって形成された負極上層とが、負極集電体上に支持された例26の負極シートを得た。なお、例26の負極シートでは、負極活物質全体のSi元素を100質量%としたときの、負極上層のSi元素の含有比率が1質量%であった。
【0115】
上記した負極シートを用いた点以外は例1と同様にして例25および例26に係る評価用電池を作製し、初期充電処理を行った。例25および例26に係る評価用リチウムイオン二次電池に対し、上述した方法によって試験例1と同様の評価を実施した。結果を表6に示す。
【0116】
【0117】
表6の結果に示すように、例1、例25および例26のいずれについても、負極活物質として黒鉛のみを用いた例3に比べ、保存時の抵抗増加抑制効果が見られた。Si配合比率がいずれも10質量%である例1,25および例26でみると、Si含有材料の分布による保存時の容量維持率についてほぼ違いは見られなかった。また、例1、例25および例26で比べると、負極活物質層全体にSi含有材料(Si-C複合体)が均一に分散された例1では、保存時における抵抗増加率の抑制効果が良好であり、Si含有材料(Si-C複合体)が上層に集中して配置された例25では保存時における抵抗増加率の抑制についてさらに良好な結果が得られた。これは、Si含有材料を負極活物質の上層に集中して配置したことにより、負極活物質表面において、Si含有材料によるMnの析出の抑制効果をより効率よく発現したためと考えられる。
【0118】
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本開示は、他にも種々の形態にて実施することができる。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形例に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形例を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0119】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:正極と、負極と、セパレータと、非水電解質と、を備えるリチウムイオン二次電池であって、上記正極は、正極活物質を含有する正極活物質層を備え、上記正極活物質は、LiとNiとMnとを含む層状構造のリチウム遷移金属複合酸化物と、上記リチウム遷移金属複合酸化物の表面の少なくとも一部に配置された被覆部と、を備え、上記リチウム遷移金属複合酸化物は、Li以外の金属元素の合計に対するNiの含有率が75モル%以上であり、一次粒子が凝集してなる二次粒子であり、走査型電子顕微鏡による上記二次粒子の断面観察における、上記二次粒子の平均空隙率は、2%以上10%以下であり、上記被覆部はホウ素化合物を含み、上記負極は、負極活物質を含有する負極活物質層を備え、上記負極活物質は、炭素材料と、Si含有材料と、を含み、上記負極活物質の総量を100質量%としたときに、上記負極活物質中のSi元素の含有比率が5質量%以上10質量%以下である、リチウムイオン二次電池。
項2:上記リチウム遷移金属複合酸化物は、以下の一般式:LiαNixMnyMzO2(なお、0.8≦α≦1.2、0.75≦x≦0.95、0.05≦y≦0.25、0≦z≦0.2、x+y+z=1であって、MがMg,Ca,Co,Al,Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,Wから選択される1種以上である。)で表される、項1に記載のリチウムイオン二次電池。
項3:上記リチウム遷移金属複合酸化物はWを含む、項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
項4:上記リチウム遷移金属複合酸化物中において、Co元素の含有量(モル)とMn元素の含有量(モル)とが以下の関係:0≦Co/Mn≦0.42を満たす、項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
項5:上記ホウ素化合物としてホウ酸リチウム塩を含む、項1~4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
項6:上記被覆部は、酸化アルミニウムをさらに含む、項1~5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
項7:上記負極は、負極集電体をさらに含み、上記負極活物質層は、厚み方向に見て、上記負極集電体に接する負極下層と、上記負極下層よりも上記負極集電体から離れた負極上層と、を備え、上記負極活物質全体のSi元素を100質量%としたときの、上記負極上層のSi元素の含有比率が90質量%以上である、項1~6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
項8:上記負極活物質層の全体の厚みに対する上記負極上層の厚みの比が、0.4以上0.8以下である、項7に記載のリチウムイオン二次電池。
項9:上記Si含有材料は、Si、酸化ケイ素、Si-C複合体から選択される1種以上を含む、項1~8のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【符号の説明】
【0120】
20 電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
56 正極活物質
56a リチウム遷移金属複合酸化物
56c 被覆部
56p 一次粒子
60、160 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64、164 負極活物質層
164u 負極上層
164d 負極下層
66 負極活物質
66c 炭素材料
66s Si含有材料
70 セパレータ
80 非水電解質
100 リチウムイオン二次電池