特開 2024-157816 風速風向測定装置及び風速風向測定装置用センサ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024157816

(43)【公開日】2024-11-08

(54)【発明の名称】風速風向測定装置及び風速風向測定装置用センサ

(51)【国際特許分類】

   G01P 13/00 20060101AFI20241031BHJP

【ＦＩ】

G01P13/00 E

【審査請求】未請求

【請求項の数】9

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023072410

(22)【出願日】2023-04-26

(71)【出願人】

【識別番号】314012076

【氏名又は名称】パナソニックＩＰマネジメント株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100132241

【弁理士】

【氏名又は名称】岡部 博史

(74)【代理人】

【識別番号】100091524

【弁理士】

【氏名又は名称】和田 充夫

(72)【発明者】

【氏名】永井 耕一

(72)【発明者】

【氏名】日野 直文

【テーマコード（参考）】

2F034

【Ｆターム（参考）】

2F034AA02

2F034AB03

2F034DA05

2F034DA17

2F034DB04

2F034DB15

(57)【要約】

【課題】立体的な３次元のどの方向からの気流に対しても同様に圧力を受けることが可能であり、かつ傾斜面への設置又は設置後の移動等による傾きなどの影響を排除し、気流からの圧力の強度と方向を正確に測定することが可能な風速風向測定装置及び当該装置用センサを提供する。
【解決手段】 受風用の球体３と、板状体４と、一端が球体と接続され他端が板状体と接続された支柱５とを有し、かつ受風部重心６が板状体側にあって気流１７の圧力を受ける受風部２と、受風部の重心を点で支持する頂点を有する支持部８と、支持部と第一の感圧部１０が接続されて受風部の重量を検出する第一の感圧センサ９と、受風部の重心を通る板状体の平面１２に第二の感圧部３０が接して受風部の重量と受風部で受けた圧力とを検出する少なくとも３個の第二の感圧センサ１１と、第一の感圧センサ及び第二の感圧センサからの検出値を基に風速と風向とを算出する演算部５０とを備える。
【選択図】 図１Ａ

【特許請求の範囲】

【請求項1】

受風用の球体と、板状体と、一端が前記球体と接続され他端が前記板状体と接続された支柱とを有し、かつ受風部重心が板状体側にあって気流の圧力を受ける受風部と、
前記受風部の前記重心を点で支持する頂点を有する支持部と、前記支持部と第一の感圧部が接続されて前記受風部の重量を検出する第一の感圧センサと、
前記受風部の前記重心を通る前記板状体の平面に第二の感圧部が接して前記受風部の重量と前記受風部で受けた前記圧力とを検出する少なくとも３個の第二の感圧センサと、
前記第一の感圧センサ及び前記第二の感圧センサからの検出値を基に風速と風向とを算出する演算部とを備える、風速風向測定装置。

【請求項2】

前記第二の感圧センサは、前記板状体に対して平面的に見て、前記重心を囲む三角形の頂点に配置されている、請求項１に記載の風速風向測定装置。

【請求項3】

前記支持部は、前記受風部の前記重心を通る前記板状体の前記平面内での位置が固定されるように、前記第一の感圧センサが固定されるベース部材をさらに備える請求項１に記載の風速風向測定装置。

【請求項4】

前記第一の感圧センサの前記第一の感圧部および前記各第二の感圧センサの前記第二の感圧部は、それぞれ、前記受風部の前記重心を通る前記板状体の前記平面に対して垂直方向の圧力のみを検出する請求項１に記載の風速風向測定装置。

【請求項5】

前記演算部は、前記受風部に気流による負荷が無い状態での前記第一の感圧センサの検出値および前記第二の感圧センサの検出値のそれぞれを初期値とし、前記受風部に気流による負荷が付与された際に、前記第一の感圧センサおよび前記第二の感圧センサが前記受風部から受ける圧力の検出値と前記初期値との各々の差分によって前記気流の風速と風向を算出する、請求項１に記載の風速風向測定装置。

【請求項6】

前記受風部の前記板状体に、前記第一の感圧センサおよび前記各第二の感圧センサの方向に力を常時付与する手段をさらに備え、
前記手段により、前記第一の感圧センサの前記第一の感圧部と接続された前記支持部と前記受風部の前記重心とが、常時接するとともに、前記受風部の前記重心を通る前記板状体の前記平面と前記各第二の感圧センサの前記第二の感圧部とが、常時接する請求項１に記載の風速風向測定装置。

【請求項7】

前記受風部の前記板状体に、前記第一の感圧センサおよび前記各第二の感圧センサの方向に力を常時付与する前記手段は、一端が前記板状体に接し、他端が、前記支柱と前記球体とを除き前記板状体を覆うケーシングに固定されたばねである請求項６に記載の風速風向測定装置。

【請求項8】

受風用の球体と、板状体と、一端が前記球体と接続され他端が前記板状体と接続された支柱とを有し、かつ受風部重心が板状体側にあって気流の圧力を受ける受風部と、
前記受風部の前記重心を点で支持する頂点を有する支持部と、前記支持部と第一の感圧部が接続されて前記受風部の重量を検出する第一の感圧センサと、
前記受風部の前記重心を通る前記板状体の平面に第二の感圧部が接して前記受風部の重量と前記受風部で受けた前記圧力とを検出する少なくとも３個の第二の感圧センサとを備える、風速風向測定装置用センサ。

【請求項9】

前記第二の感圧センサは、前記板状体に対して平面的に見て、前記重心を囲む三角形の頂点に配置されている、請求項８に記載の風速風向測定装置用センサ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、感圧センサによって３次元空間における気流の風速と風向を測定する風速風向測定装置及び風速風向測定装置用センサに関するものである。

【背景技術】

【0002】

近年、様々な工業製品もしくは家電の組み立て製造工程、又はそれらの製品の構成部品となる各種電子部品、各種の電池、もしくは、電子部品が実装された基板などのデバイス製造工程において、熱処理のための加熱炉、乾燥炉をはじめとする加熱装置も多様化し、それぞれの機能が大幅に向上している。また、主に熱風を被加熱物に付与して熱風から被加熱物に熱の伝達を行い、被加熱物の加熱、乾燥を行う工程においては、他の工程と比べても熱エネルギーを大量に消費することから、エネルギー消費削減のために加熱効率又は乾燥効率の向上が大きな課題になっており、そのため加熱装置の設定条件の管理が非常に重要となっている。一般的に熱風による加熱、乾燥工程においては、熱風を生成して被加熱物に付与する加熱装置の熱風吹き出し部からの吹き出し風量を、熱風を装置内で循環させる循環ファンの回転数設定等によって制御し、これと熱風吹き出し部の開口面積又は装置内の循環経路の圧力損失、流路損失との兼ね合いで吹き出し風速が決定される。多くの場合は、この熱風吹き出し部における風速を、例えば計測器の先端に設置された羽根車の回転数から気流の風速を算出するベーン式風速計、又は熱線に電流を流して加熱しつつ、その熱線が気流によって熱を奪われた度合によって気流の風速を算出する熱線式風速計などを用いて風速を測定し、生産工程の管理対象としている。熱風あるいは冷風を物体に接触させて効率的に物体を加熱又は冷却するためには、熱風又は冷風と言った流体と被加熱物との間の熱伝達率が重要となる。この熱伝達率の決定には、流体が物体に衝突する際の速度と角度が大きな要素となっている。また、熱の授受だけでなく、例えば物体の乾燥のように物体の表面から水分を除去する工程などの場合においても、流体と個体との界面付近の流体を効率的に移動させる必要がある。このとき、流体が一般的な粘性流体で、かつ極端な例として物体の面に対して流体が平行に流れている場合は、理論的に物体表面での流体の流速はゼロとなってしまう。このように、物体の加熱、冷却、又は乾燥等の工程においては、その流体の流速に加えて、流体と被加熱物とが接触する界面での角度が重要となる。よって、物体の加熱、冷却、又は乾燥のような工程で気流をはじめとする流体を物体に付与する際には、上記の装置側での熱風吹き出し部の風速又は風量の管理に加えて、流体と被加熱物との間の熱伝達率を考慮する必要があり、そのためには、流体の速度と被加熱物に対する角度の両方を管理することが重要となる。

【0003】

これに対し、一般的には加熱、冷却、又は乾燥対象となる被加熱物の界面近傍における風の状態を管理するために、極力、界面付近を測定する手段として小型の熱線式風速計と小型の温度計を併用することで、被加熱物近傍の風速を測定するなどしている。

【0004】

しかし、熱線式風速計は風速の算出が主目的であり、特性として無指向性のため流体の流れの方向は特定できない。また、ベーン式風速計は計測部先端の羽根車の回転数から風速を検出するが、この場合の風向はあらかじめ設置したベーン式風速計の羽根車が対面する羽根車の軸方向の風速に限定されてしまう上に、計測器そのものが大型となるため、被加熱物の界面近傍、特に被加熱物の直上の風速の測定は困難である。

【0005】

そのため、小型で被加熱物直上の風速と風向を測定する測定装置として、圧力分布センサを用いて風速と風向を測定する技術として、例えば特許文献１の方式が知られている。

【0006】

図１１は特許文献１の従来の風速と風向を測定する圧力センサについての説明図である。特許文献１には、図１１に示す様に、圧力センサ６５は、基板６０上に設置した導電体６１と、これを覆う導電性弾力体６２と、導電性弾力体６２の上に設置した感圧体（感圧体下部（支持体）６３と感圧体上部（細長形状体）６４で構成）により構成される。図１１に示す圧力センサ６５では、感圧体上部（細長形状体）６４が棒状であり、感圧体下部（支持体）６３が十文字の形状をした板状体であり、上下面正方形の平べったい直方体の導電性弾力体６２の側面４方向に電極部を含む導電体６１が設置されて基板６０上に固定されている。本圧力センサ６５は、感圧体上部（細長形状体）６４に加わる圧力を、感圧体下部（支持体）６３を介して導電性弾力体６２に伝達する。導電性弾力体６２は圧力によって抵抗値が変化するという特性を有しており、導電体６１における４つの電極間の抵抗Ｒ１、Ｒ２，Ｒ３，Ｒ４を抵抗値測定装置（図示せず）によって測定することにより感圧体上部（細長形状体）６４が気流から受ける圧力（流速）及び方向の変化を検出することができるとしている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0007】

【特許文献1】特開２０２１－６７５４２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0008】

しかしながら、前記特許文献１の構成では、風速と風向を同時に検出する手段として風を受ける部分（感圧体上部（細長形状体））が円柱状の細長形状体であるため、気流の水平方向の圧力は検知できるが、垂直方向の圧力を受けにくい仕様である。明細書に記載はないが、仮に圧力センサの上方からの風の場合は風の圧力を感圧体下部（支持体）で受けることも可能だが、下方から上方に向かう風の場合は、感圧体下部（支持体）では圧力を受けることは出来ない。また、前記特許文献１の構成を傾斜面に設置した際、又は移動体に設置するなどして移動中にデバイスが傾いた際には、風の影響とは別に、感圧体上部（細長形状体）の重心移動による荷重のバランス変化をも検出することになるため、風の影響のみの検出とはならず、その結果、風速と風向の正確な測定ができない、という課題を有している。

【0009】

本発明は、前記従来の課題を解決するもので、立体的な３次元のどの方向からの気流に対しても同様に圧力を受けることが可能であり、かつ傾斜面への設置又は設置後の移動等による傾きなどの影響を排除し、気流からの圧力の強度と方向を正確に測定することが可能な風速風向測定装置及び風速風向測定装置用センサを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0010】

前記目的を達成するために、本発明の一態様にかかる風速風向測定装置は、
受風用の球体と、板状体と、一端が前記球体と接続され他端が前記板状体と接続された支柱とを有し、かつ受風部重心が板状体側にあって気流の圧力を受ける受風部と、
前記受風部の前記重心を点で支持する頂点を有する支持部と、前記支持部と第一の感圧部が接続されて前記受風部の重量を検出する第一の感圧センサと、
前記受風部の前記重心を通る前記板状体の平面に第二の感圧部が接して前記受風部の重量と前記受風部で受けた前記圧力とを検出する少なくとも３個の第二の感圧センサと、
前記第一の感圧センサ及び前記第二の感圧センサからの検出値を基に風速と風向とを算出する演算部とを備える。

【0011】

前記目的を達成するために、本発明の別の態様にかかる風速風向測定装置用センサは、
受風用の球体と、板状体と、一端が前記球体と接続され他端が前記板状体と接続された支柱とを有し、かつ受風部重心が板状体側にあって気流の圧力を受ける受風部と、
前記受風部の前記重心を点で支持する頂点を有する支持部と、前記支持部と第一の感圧部が接続されて前記受風部の重量を検出する第一の感圧センサと、
前記受風部の前記重心を通る前記板状体の平面に第二の感圧部が接して前記受風部の重量と前記受風部で受けた前記圧力とを検出する少なくとも３個の第二の感圧センサとを備える。

【発明の効果】

【0012】

以上のように、本発明の前記態様にかかる風速風向測定装置及び風速風向測定装置用センサによれば、空間における３次元のどの方向から気流の圧力を受けても球体であることで均等に力を受けることができ、上方からの気流の圧力においても球体に係る押し付け力として、また下方からの気流の圧力においても球体に係る浮力として区別した測定が可能である。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1A】本発明の実施の形態１における風速風向測定装置の説明図

【図1B】本発明の実施の形態１における風速風向測定装置の重心支持感圧センサの斜視説明図

【図1C】本発明の実施の形態１における風速風向測定装置の感圧センサの配置説明図

【図2】本発明の実施の形態１における外観の透視説明図

【図3】本発明の実施の形態１における水平面での重量荷重の説明図

【図4】本発明の実施の形態１における傾斜面での重量荷重の説明図

【図5】気流の圧力を受けた状態の説明図

【図6A】気流の圧力の方向による差についての説明図

【図6B】気流の圧力の方向による差についての説明図

【図7】本発明の実施の形態２における風速風向測定装置の説明図

【図8】本発明の実施の形態３における風速風向測定装置の説明図

【図9】逆さ面に設置した状態の説明図

【図10】気流の圧力影響がない初期状態についての説明図

【図11】従来の風速測定センサの説明図

【発明を実施するための形態】

【0014】

以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。

【0015】

（実施形態）
図１Ａ～図１Ｃは、本発明の実施の形態１における風速風向測定装置１の説明図である。風速風向測定装置１において、気流の圧力を受ける受風部２と、受風部２で受けた圧力をそれぞれ検出する第一の感圧センサの一例としての重心支持感圧センサ９と第二の感圧センサの一例としての少なくとも３個の周囲感圧センサ１１と、重心支持感圧センサ９と少なくとも３個の周囲感圧センサ１１からの検出値を基に風速と風向とを算出する演算部５０とを備えている。受風部２と重心支持感圧センサ９と少なくとも３個の周囲感圧センサ１１とで風速風向測定装置用のセンサを構成している。

【0016】

受風部２は、球体３と、例えば平面が正方形でかつ周囲の四隅に凹部４ｄが形成された側面Ｔ字状の板状体４と、この球体３と板状体４とをそれぞれの中心軸が一致しかつ受風部２の重心６を通るように接続する例えば円柱の支柱５とで構成されている。支柱５は、測定時に球体３が、板状体４を覆うケーシング１４に接触しないようにするためのものであり、一例として、支柱５の軸方向の長さは球体３の直径よりも短く、支柱５の軸方向と直交する幅方向の長さは球体３の直径よりも短くしている。

【0017】

なお、受風部２は、その受風部２の重心６が板状体４側すなわち板状体４内となるようにするため、例えば、球体３は軽量の素材、たとえば発砲スチロール又は内部を空洞にした樹脂製などとし、支柱５は所定の剛性を有する樹脂等の軽量素材を用いる。

【0018】

板状体４には、球体３とは反対側の面の中央に、受風部２の重心６が頂点となるように、例えば円錐状の座繰り加工を行い、重心支持受け部７として設ける。この重心支持受け部７の座繰り加工の頂点である受風部２の重心６を、例えば円錐状の重心支持部８によって支持し、重心支持部８は重心支持感圧センサ９の感圧部１０と連結して機能する。重心支持感圧センサ９は、受風部２の重量が圧力として垂直方向に付与された重量の垂直成分を検出する。

【0019】

さらに、球体３と受風部２の重心６とを結ぶ線の周囲に少なくとも３個の周囲感圧センサ１１を配置している。例えば図１Ａでは、周囲感圧センサ１１は、正方形平面の板状体４の四隅の凹部４ｄにそれぞれ配置されており、全ての周囲感圧センサ１１の感圧部３０は、上向き凸の円柱体であり、受風部２の重心６を通る平面１２において受風部２の板状体４の周囲の下面すなわち凹部底面４ｅと平面で接する。周囲感圧センサ１１の感圧部３０と受風部２の板状体４とは平面で接触すれば、どのように構成してもよい。例えば、感圧部３０を上向き凸の円柱体又は角柱体として平面１２に平面で接触してもよい。逆に、感圧部３０の平面に対して、下向き凸の円柱体又は角柱体の凸部を平面１２に備えて両者が平面で接触してもよい。なお、周囲感圧センサ１１の感圧部３０と受風部２の板状体４との接触面においては、感圧部３０は受風部２の重心６を通る平面１２の面方向には変位しないように略固定されている。このように略固定する一例としては、各周囲感圧センサ１１はベース部材の一例としての矩形平板のベース板１３上に固定して配置され、受風部２の板状体４には気流が直接当たらないようにベース板１３と矩形箱体状のケーシング１４とで受風部２の板状体４を囲う構造となっている。重心支持感圧センサ９はベース板１３の上面の中央の凹部１３ａの底面上に固定して配置されている。ケーシング１４は、中央に、支柱５が貫通しかつ接触しない程度の大きさの円形穴１４ａを有している。

【0020】

各周囲感圧センサ１１は、受風部２の重量が圧力として垂直方向に付与された重量の垂直成分を検出するとともに、気流１７が付与された際の気流１７による圧力１８によるモーメントによる垂直成分２０を検出する。

【0021】

なお、周囲感圧センサ１１は、矩形板状体４の四隅に配置するものに限定されず、少なくとも３個の周囲感圧センサ１１が、一例として図１Ｃの底面図に円形板状体４ｂとの関係で示すように、板状体４ｂに対して平面的に見て、板状体４ｂ内の受風部２の重心６を囲む三角形３７の頂点の位置に配置されていればよい。

【0022】

演算部５０は重心支持感圧センサ９とすべての周囲感圧センサ１１と接続されて、重心支持感圧センサ９と周囲感圧センサ１１とからの検出値を基に風速と風向とを算出する。例えば、重心支持感圧センサ９の検出値と、各周囲感圧センサ１１の検出値の総合計と、各周囲感圧センサ１１の検出値のバランスとによって、気流１７の圧力の量と方向、すなわち、風速と風向を演算部５０で算出する。なお、以下の図では、演算部５０の図示を省略している場合がある。

【0023】

図２は本発明の実施の形態１の風速風向測定装置１における外観の説明図である。周囲感圧センサ１１がベース板１３の４隅に配置され、受風部２の板状体４とともにベース板１３とケーシング１４で囲われている状態を示している。

【0024】

図３は、本発明の実施の形態１における風速風向測定装置１を水平面３１に載置した場合での重量荷重の説明図である。ここでは、気流による圧力が受風部２に付与されていない状態を表しており、受風部２の重心６を通る平面１２も水平面に平行である場合を示している。この時、重心支持感圧センサ９と各周囲感圧センサ１１には受風部２の重量のみが圧力として垂直方向に付与されることになる。ここで説明を簡素化するために、例として、重心支持感圧センサ９以外の各周囲感圧センサ１１の各感圧部３０と受風部２の重心６を通る平面１２とが接する位置が、受風部２の重心６からの距離が等しい場合とする。このとき、各周囲感圧センサ１１の感圧部３０には、受風部２の重量から重心支持感圧センサ９にかかる重量の垂直成分（重心）１５を除いた重量が均等にかかることになる。そのため、各周囲感圧センサ１１に付与される重量の垂直成分（周囲）１６は、（（受風部２の重量－重心支持感圧センサ９にかかる重量）／周囲感圧センサ１１の個数））のように均等になる。なお、重心支持感圧センサ９及び周囲感圧センサ１１の感圧部１０、３０は、受風部２の重心６を通る平面１２に対して垂直成分のみを検出する。また、各感圧部１０、３０は、圧力を付与された際にその圧力によって変形しない、または極力変形しにくいものが好ましい。

【0025】

図４は本発明の実施の形態１における風速風向測定装置１を、水平面に対して角度θだけ傾斜した傾斜面３２に載置した場合での重量荷重の説明図である。ここでも、気流による圧力が受風部２に付与されていない状態を表しており、受風部２の重心６を通る平面１２も水平面に対して角度θだけ傾斜している状態を示している。なお、この場合も図３の場合と同様に、各周囲感圧センサ１１の感圧部３０が受風部２の重心６を通る平面１２と接する位置が、受風部２の重心６からの距離が等しい場合とする。このとき、各周囲感圧センサ１１の感圧部３０には、受風部２の重量から重心支持感圧センサ９にかかる重量の垂直成分（重心）１５を除いた重量が均等にかかることになる。この場合、受風部２の重心６を通る平面１２と周囲感圧センサ１１の感圧部３０との接点には図４のように重量の垂直成分（周囲）１６が付与される。受風部２の板状体４と、周囲感圧センサ１１の感圧部３０との接点は、受風部２の重心６を通る平面１２で接しているため、受風部２の重心６を通る平面１２の傾きによる受風部２の重心移動は、受風部２の重心６を通る平面１２の面方向にしか発生しないため、各周囲感圧センサ１１に付与される重量の垂直成分（周囲）１６は、（（受風部２の重量－重心支持感圧センサ９にかかる重量）×ｃｏｓθ／周囲感圧センサ１１の個数））のようになり、受風部２の重心６を通る平面１２が図３のように水平の状態の時の各周囲感圧センサ１１の検出値に対してｃｏｓθを積算した分だけ小さくはなるが、均等のままとなる。このように傾斜面３２に設置した場合でも、受風部２の重量が周囲感圧センサ１１同士の検出値の差、つまりバランスに変化を与えることは無い。

【0026】

図５は、載置面３５に載置された風速風向測定装置１が載置面３５に平行な気流１７の圧力を受けた状態の説明図である。受風部２の重心６を通る平面１２が例えば水平になるように設置された状態で、受風部２の球体３に対して水平方向に気流１７が付与される場合、球体３には気流１７による水平方向の圧力１８がかかり、受風部２は気流１７による圧力１８の方向に倒れようとする力がかかる。このとき、受風部２は受風部２の重心６において、板状体４の円錐状に座繰り加工された重心支持受け部７の頂点を、円錐状の重心支持部８の頂点が点で支えているため、接点である受風部２の重心６が支点となり、気流１７の下流側の周囲感圧センサ１１の感圧部３０と平面１２との接触部分が作用点１９となって、この作用点１９に気流１７による圧力１８のモーメントによる垂直成分２０が作用する。この支点となる受風部２の重心６と作用点１９の関係については逆の場合にも作用し、上記説明において、気流１７の上流側の周囲感圧センサ１１の感圧部３０と平面１２との接触部分についても作用点１９としてモーメントによる垂直成分２０が作用する。このように、周囲感圧センサ１１の全てに対して、気流１７が付与された際の気流１７による圧力１８によるモーメントによる垂直成分２０が作用することになる。図５の場合は無風状態における受風部２の重量の垂直成分（周囲）１６に加えて、気流１７による圧力１８で倒れようとするモーメントの影響を各周囲感圧センサ１１がそれぞれの位置で検出し、これら各周囲感圧センサ１１の検出値の総合計と各周囲感圧センサ１１の検出値のバランスとによって、気流１７の圧力の量と方向、すなわち、風速と風向を演算部５０で算出することができる。

【0027】

図６Ａ及び図６Ｂは気流１７の圧力の方向による差についての説明図である。このときも受風部２の重心６を通る平面１２が水平になるような状態で設置されているとする。

【0028】

図６Ａは、水平面に対して斜め下方から斜め上方に向かって気流１７が風速風向測定装置１に付与された場合の説明図である。球体３に斜め上方向の気流１７による圧力１８が風速風向測定装置１に付与された場合、球体３には水平面に対して浮く方向に力がかかる。そのため、受風部２全体も水平面に対して浮く方向に力がかかり、受風部２の重量が浮力の垂直成分２１の分だけ軽減される方向に働く。さらには、図５で説明したように、球体３に付与される圧力の量と方向とによって、各周囲感圧センサ１１の感圧部３０には、受風部２の重心６が支点となった作用点としての圧力が検出される。

【0029】

同様に、図６Ｂは、水平面に対して斜め上方から斜め下方に向かって気流１７が風速風向測定装置１に付与された場合の説明図である。球体３に斜め下方向の気流１７による圧力１８が風速風向測定装置１に付与された場合、球体３には水平面に対して押し付けられる方向に力がかかることになる。そのため、受風部２全体にも水平面に対して押し付けられる方向に力がかかることになり、受風部２の重量が押し付け力の垂直成分２２の分だけ加算される方向に働く。さらには、球体３に付与される気流１７による圧力１８によって、各感圧部３０では、受風部２の重心６が支点となる作用点としての圧力が検出される。このように、重心支持感圧センサ９の検出値と、各周囲感圧センサ１１の検出値の総合計と、各周囲感圧センサ１１間の検出値のバランスとによって、３次元方向からの気流１７の圧力１８の量と方向、すなわち風速と風向を演算部５０で一義的に算出し、決定することが可能となる。

【0030】

なお、ここまでは説明を簡素化するために、受風部２の受風部２の重心６からの距離が同じになるように均等に配置された周囲感圧センサ１１の場合を例として説明している。一方、受風部２の重心６からの距離がそれぞれ異なる位置に周囲感圧センサ１１が配置されているような場合については、受風部２の重量の各周囲感圧センサ１１への配分は均等ではなく、また、支点となる受風部２の重心６と作用点となる各感圧部３０と平面１２との接触部分との位置関係が異なるために気流１７の影響によるモーメントの検出値もそれぞれの周囲感圧センサ１１で異なる値を検出するが、３次元方向からの気流１７の圧力に対して一義的にその圧力の量と方向、すなわち風速と風向とを演算部５０で決定できるという点については同じように可能である。

【0031】

図７は本発明の実施の形態２における風速風向測定装置１Ｂの説明図である。受風部２の板状体４に対して、各周囲感圧センサ１１の感圧部３０と接する面の反対面から重心支持感圧センサ９及び周囲感圧センサ１１の感圧部３０に圧力が常時かかるような位置にばね２３を備えている。ばね２３の一端は矩形箱体状のケーシング１４に固定されている。これにより、受風部２の板状体４は重心支持感圧センサ９および各周囲感圧センサ１１に対して圧力を常に付与する状態としている。なお、ばね２３の軸、あるいはばね２３の押し付け力の方向は、必ずしも図７のように周囲感圧センサ１１の軸に重なる必要はない。このばね２３は、板状体４に重心支持感圧センサ９および各周囲感圧センサ１１の方向に力を常時付与する手段の一例である。

【0032】

このような構成によれば、図９のような逆さ面への配置又は急な傾斜面への配置が可能になる。

【0033】

図８は本発明の実施の形態３における風速風向測定装置１Ｃの説明図である。受風部２の板状体４Ｃには、周囲の下面ではなく上面に凹部４Ｃｄが形成されて平面１２沿いの凹部底面４Ｃａを形成することにより、受風部２には受風部２の重心６を通る平面１２が板状体４の球体３の側に加工されている。よって、この受風部２の重心６を通る平面１２に接する、周囲感圧センサ１１の代わりとしての、少なくとも３個、ここでは例えば４個の下向き周囲感圧センサ２４と、重心支持感圧センサ９とによって板状体４が挟まれる形で構成されている。なお、図８の場合、下向き周囲感圧センサ２４はケーシング１４に固定されている。この場合は下向き周囲感圧センサ２４が３個以上であれば受風部２を定位置に固定することができる。このように、板状体４の上面に接する下向き周囲感圧センサ２４と板状体４を下方から支持する重心支持感圧センサ９とで受風部２を定位置に固定できる状態にさえなっていれば、下向き周囲感圧センサ２４の個数と配置する位置とは特に限定しなくてもよい。

【0034】

このような構成によれば、図９のような逆さ面への配置又は急な傾斜面への配置が可能になる。

【0035】

図９は逆さ面２５に風速風向測定装置１Ｂを設置した状態の説明図である。風速風向測定装置１が図７、あるいは図８のような構成となっている場合、傾斜角度の大きな面又は、図９の逆さ面２５のような設置面に設置した場合においても、設置面に固定さえできていれば、気流１７の風速とその設置面に対する風向との測定が可能となる。

【0036】

図１０は気流の圧力影響がない初期状態についての説明図である。風速風向測定装置１を配置した際に気流１７の負荷による圧力が無い状態を初期値とし、この初期値と、気流１７の負荷による圧力がかかった際の重心支持感圧センサ９の検出値および各周囲感圧センサ１１の検出値との差分から設置面に対する風速と風向を演算部５０で算出するために、設置した面における、重量の垂直成分（重心）１５、および重量の垂直成分（周囲）１６を認識しておく必要がある。そのため、気流の流れが無い無風状態で設置できる場合は問題ないが、すでに気流の流れがある状態で風速風向測定装置１を設置する必要がある場合は、設置した後にケーシング１４を取り除きかつ風防カバー２６を設置し、風速風向測定装置１が無風状態での重量の垂直成分（重心）１５と重量の垂直成分（周囲）１６を検出しておき、これを初期値として、風防カバー２６を撤去した後に、初期値からの重心支持感圧センサ９の検出値、および各周囲感圧センサ１１の検出値の差分をもって風速と風向を演算部５０で算出する。

【0037】

前記実施の形態によれば、空間における３次元のどの方向から気流１７の圧力を受けても球体３であることで均等に力を受けることができ、上方からの気流１７の圧力においても球体３に係る押し付け力として、また下方からの気流１７の圧力においても球体３に係る浮力として区別した測定が可能である。言い換えれば、風を受ける部分を球体３とすることで風の影響を三次元のどの方向からも均等に受ける構造とし、気流１７の風速と風向を受風部２の荷重の面内バランスと総荷重の変化から演算部５０で算出することが可能となり、風速と風向の測定箇所が傾斜面の場合においても、設置した面に対する信頼性の高い風速と風向の測定を可能とする。

【0038】

また、重心支持感圧センサ９の感圧部１０と少なくとも３個の周囲感圧センサ１１の感圧部３０と板状体４とが受風部２の重心６を通る平面１２において接する構造とすることで、風速風向測定装置１，１Ｂ，１Ｃが傾斜している際にも傾きの影響を受けずに高精度な風速と風向の測定を行うことができる。

【0039】

従って、前記実施の形態によれば、立体的な３次元のどの方向からの気流１７に対しても同様に圧力を受けることが可能であり、かつ傾斜面３２への設置又は設置後の移動等による傾きなどの影響を排除し、気流１７からの圧力の強度と方向を正確に測定することが可能となる。

【0040】

なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。

【産業上の利用可能性】

【0041】

本発明の前記態様にかかる風速風向測定装置及び風速風向測定装置用センサは、物体に付与される気流の風速と角度が刻々と変化するような状況においても、特に気流と物体との界面近傍において、物体の表面に対する風速と風向を特定することが可能となる。このため、本発明の前記態様は、物体の加熱、冷却の工程において重要となる気流と物体との熱伝達率の管理、及び物体の乾燥工程における物体の界面近傍の気流の流れの管理を行う風速風向測定装置及び風速風向測定装置用センサとして、工業製品又は家電製品の製造工程又は各種電子部品の製造工程における乾燥炉、キュア炉、又はリフロー炉などの各種熱処理を行う熱処理方法及び装置に適用できる。

【符号の説明】

【0042】

１，１Ｂ，１Ｃ 風速風向測定装置
２ 受風部
３ 球体
４、４ｂ、４Ｃ 板状体
４ｄ 凹部
４ｅ 凹部底面
４Ｃａ 凹部底面
４Ｃｄ 凹部
５ 支柱
６ 受風部の重心
７ 重心支持受け部
８ 重心支持部
９ 重心支持感圧センサ
１０ 感圧部
１１ 周囲感圧センサ
１２ 受風部の重心を通る平面
１３ ベース板
１４ ケーシング
１５ 重量の垂直成分（重心）
１６ 重量の垂直成分（周囲）
１７ 気流
１８ 気流による圧力
１９ 作用点
２０ モーメントによる垂直成分
２１ 浮力の垂直成分
２２ 押し付け力の垂直成分
２３ ばね
２４ 下向き感圧センサ
２５ 逆さ面
２６ 風防カバー
３０ 感圧部
３１ 水平面
３２ 傾斜面
３５ 載置面
３７ 三角形
５０ 演算部
６０ 基板
６１ 導電体
６２ 導電性弾力体
６３ 感圧体下部（支持体）
６４ 感圧体上部（細長形状体）
６５ 圧力センサ

【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6A】

【図6B】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】