(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157827
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20241031BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20241031BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F27/29 Q
H01F17/04 A
H01F17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072424
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100188802
【弁理士】
【氏名又は名称】澤内 千絵
(72)【発明者】
【氏名】川村 翔人
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070CB13
5E070CB17
5E070EA01
5E070EA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】焼成時にコイルに生じる内部応力を抑制するインダクタ部品を提供する。
【解決手段】インダクタ部品1は、素体10と、素体内に設けられ、軸AXに沿って螺旋状に巻き回されるコイル20と、素体に設けられ、コイルに電気的に接続される第1外部電極30および第2外部電極40とを備える。素体は、互いに対向する第1端面15および第2端面16と、互いに対向する第1側面13と第2側面14と、第1端面と第2端面との間および第1側面と第2側面との間に接続された底面17と、底面と対向する天面18とを含む。第1外部電極および第2外部電極は、少なくとも底面に設けられる。軸は、底面に平行でかつ第1側面および第2側面に交差する。コイルは、軸に沿って螺旋状に巻回されている巻回部20aを有する。軸方向からみたとき、巻回部の外周面と第1外部電極との間の第1最短距離は、外周面と天面との間の第2最短距離よりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体内に設けられ、軸に沿って螺旋状に巻き回されるコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続される第1外部電極および第2外部電極と
を備え、
前記素体は、互いに対向する第1端面および第2端面と、互いに対向する第1側面と第2側面と、前記第1端面と前記第2端面との間および前記第1側面と前記第2側面との間に接続された底面と、前記底面と対向する天面とを含み、
前記第1外部電極および前記第2外部電極は、少なくとも前記底面に設けられ、
前記軸は、前記底面に平行でかつ前記第1側面および前記第2側面に交差し、
前記コイルは、軸に沿って螺旋状に巻回されている巻回部を有し、
前記軸方向からみたとき、前記巻回部の外周面と前記第1外部電極との間の第1最短距離は、前記外周面と前記天面との間の第2最短距離よりも大きい、
インダクタ部品。
【請求項2】
前記第1最短距離は、15μm以上であり、
前記第2最短距離は、14μm以上である、
請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記第1最短距離は、前記素体の前記第1端面と前記第2端面の対向する長さ方向の寸法に対して、5%以上であり、
前記第2最短距離は、前記素体の前記底面と前記天面の対向する高さ方向の寸法に対して、6%以上である、
請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記素体の前記第1端面と前記第2端面の対向する長さ方向の寸法に対する、前記素体の前記底面と前記天面の対向する高さ方向の寸法の比より、前記軸方向からみたときの、前記巻回部における前記長さ方向の第1内径寸法L1に対する、前記巻回部における前記高さ方向の第2内径寸法T1の比T1/L1の方が大きい、
請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記巻回部における前記素体の前記第1端面と前記第2端面の対向する長さ方向の第1内径寸法L1に対する、前記巻回部における前記素体の前記底面と前記天面の対向する高さ方向の第2内径寸法T1の比率は、110%以上である、
請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記コイルは、前記軸に沿って積層されたコイル配線層と、前記軸方向に隣り合う前記コイル配線層の間に位置し、前記軸方向に隣り合う前記コイル配線層を接続するビア配線層とを有し、
前記ビア配線層は、縦長ビア配線層を含み、
前記縦長ビア配線層は、前記素体の前記底面から前記天面方向へのT成分の高さが、前記第1端面から前記第2端面方向へのL成分の長さよりも大きい、
請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記縦長ビア配線層の幅に対する、前記縦長ビア配線層の配線長の比率が、130%以上でありかつ2500%以下である、
請求項6に記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記コイルは、前記軸に沿って積層されたコイル配線層と、前記軸に隣り合う前記コイル配線層の間に位置し、前記軸方向に隣り合う前記コイル配線層を接続するビア配線層とを有し、
前記ビア配線層は、横長ビア配線層を含み、
前記横長ビア配線層は、前記第1端面から前記第2端面方向へのL成分の長さが、前記底面から前記天面方向へのT成分の高さよりも大きい、
請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項9】
前記横長ビア配線層の幅に対する、前記横長ビア配線層の配線長の比が、130%以上でありかつ2200%以下である、
請求項8に記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品としては、特開2017-216428号公報(特許文献1)に記載されたものがある。このインダクタ部品は、絶縁体部と、前記絶縁体部の内部に配置され、軸方向のまわりに券回された周回部を有するコイル部とを有し、小型であり、かつ、高特性のインダクタ部品が得られると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のようなインダクタ部品では、第1、第2外部電極とコイルとの距離が近いので、第1、第2外部電極とコイルとの間で生じる焼成時の内部応力が大きくなり、素体のヒビ、割れ、歪などの構造欠陥が発生することがあった。
【0005】
そこで、本開示の目的は、焼成時にコイルに生じる内部応力を抑制するインダクタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
素体と、
前記素体内に設けられ、軸に沿って螺旋状に巻き回されるコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続される第1外部電極および第2外部電極と
を備え、
前記素体は、互いに対向する第1端面および第2端面と、互いに対向する第1側面と第2側面と、前記第1端面と前記第2端面との間および前記第1側面と前記第2側面との間に接続された底面と、前記底面と対向する天面とを含み、
前記第1外部電極および前記第2外部電極は、少なくとも前記底面に設けられ、
前記軸は、前記底面に平行でかつ前記第1側面および前記第2側面に交差し、
前記コイルは、軸に沿って螺旋状に巻回されている巻回部を有し、
前記軸方向からみたとき、前記巻回部の外周面と前記第1外部電極との間の第1最短距離は、前記外周面と前記天面との間の第2最短距離よりも大きい。
【0007】
第1最短距離が、第2最短距離よりも大きいことは、第1外部電極とコイルとの間の距離が離隔されていることを意味する。第1外部電極とコイルとの間の距離を離隔することにより、第1外部電極とコイルとの間で生じる焼成時の内部応力は低減され、コイル配線層やビア配線層において剥離などの構造欠陥が発生することを抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様であるインダクタ部品によれば、焼成時にコイルに生じる内部応力を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】インダクタ部品の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図2】インダクタ部品の第1側面側からみた透視正面図である。
【
図4】インダクタ部品の第2実施形態を示すインダクタ部品の第1側面側からみた透視正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、インダクタ部品の第1実施形態を示す斜視図である。
図2は、インダクタ部品の第1側面側からみた透視正面図である。
図3は、インダクタ部品の分解平面図である。
図1と
図2と
図3に示すように、インダクタ部品1は、素体10と、素体10内に設けられ軸AXに沿って螺旋状に巻き回されたコイル20と、素体10に設けられコイル20に電気的に接続された第1外部電極30および第2外部電極40とを有する。なお、便宜上、
図2では、構造を容易に理解できるよう、素体およびコイルを透明に描いているが、半透明や不透明であってもよい。
【0012】
インダクタ部品1は、第1、第2外部電極30,40を介して、図示しない回路基板の配線に電気的に接続される。インダクタ部品1は、例えば、高周波回路のインピーダンス整合用コイル(マッチングコイル)として用いられ、パソコン、DVDプレーヤー、デジカメ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクス、医療用・産業用機械などの電子機器に用いられる。ただし、インダクタ部品1の用途はこれに限られず、例えば、同調回路、フィルタ回路や整流平滑回路などにも用いることもできる。
【0013】
素体10は、略直方体状に形成されている。素体10の表面は、互いに対向する第1端面15および第2端面16と、互いに対向する第1側面13と第2側面14と、第1端面15と第2端面16との間および第1側面13と第2側面14との間に接続された底面17と、底面17と対向する天面18とを含む。底面17は、インダクタ部品1を図示しない実装基板に実装した際に、実装基板側を向く面である。
【0014】
図示するように、X方向は、第1端面15および第2端面16に直交し、第1端面15から第2端面16に向かう方向である。Y方向は、第1側面13および第2側面14に直交し、第2側面14から第1側面13に向かう方向である。Z方向は、底面17および天面18に直交し、底面17から天面18に向かう方向である。X方向は、素体10の長さ方向ともいい、Y方向は、素体10の幅方向ともいい、Z方向は、素体10の高さ方向ともいう。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する方向であって、X,Y,Zの順に並べたとき、左手系を構成する。
【0015】
X方向は、素体10の長さ方向ともいい、Y方向は、素体10の幅方向ともいい、Z方向は、素体10の高さ方向ともいう。長さ方向とは、第1端面15と第2端面16の対向する方向であり、第1端面15と第2端面16を最短距離で結ぶ直線に平行な方向である。幅方向とは、第1側面13と第2側面14の対向する方向であり、第1側面13と第2側面14を最短距離で結ぶ直線に平行な方向である。高さ方向とは、天面18と底面17の対向する方向であり、天面18と底面17を最短距離で結ぶ直線に平行な方向である。
【0016】
素体10は、複数の絶縁層11を積層して構成される。絶縁層11は、例えば、硼珪酸ガラスを主成分とする材料や、フェライト、樹脂などの材料からなる。絶縁層11の積層方向は、素体10の第1、第2端面15,16および底面17に、平行な方向(Y方向)である。すなわち、絶縁層11は、XZ平面に広がった層状である。本願における「平行」とは、厳密な平行関係に限定されず、現実的なばらつきの範囲を考慮し、実質的な平行関係も含む。なお、素体10は、焼成などによって、複数の絶縁層11同士の界面が明確となっていない場合がある。なお、
図3では、左上から右下に向かう方向を積層方向(Y方向)とする。
【0017】
第1外部電極30および第2外部電極40は、例えば、Ag、Cu、Auやこれらを主成分とする合金などの導電性材料から構成される。なお、第1外部電極30および第2外部電極40は、素体10から露出する表面がNiやSnなどのめっきにより覆われていてもよい。
【0018】
第1外部電極30は、第1端面15から底面17にかけて形成されたL字形状である。第1外部電極30は、第1端面15および底面17から露出するように素体10に埋め込まれている。第1外部電極30は、第1端面15に沿って延在する第1端面部31と、第1端面部31に接続され底面17に沿って延在する第1底面部32とを有する。
【0019】
第2外部電極40は、第2端面16から底面17にかけて形成されたL字形状である。第2外部電極40は、第2端面16および底面17から露出するように素体10に埋め込まれている。第2外部電極40は、第2端面16に沿って延在する第2端面部41と、第2端面部41に接続され底面17に沿って延在する第2底面部42とを有する。
【0020】
第1外部電極30は、素体10(絶縁層11)に埋め込まれた複数の第1外部電極導体層33が積層された構成を有している。第2外部電極40は、素体10(絶縁層11)に埋め込まれた複数の第2外部電極導体層43が積層された構成を有している。第1外部電極導体層33は、第1端面15および底面17に沿って延在しており、第2外部電極導体層43は、第2端面16および底面17に沿って延在している。
【0021】
これにより、素体10内に第1、第2外部電極30,40を埋め込むことができるため、素体10に外部電極を外付けする構成に比べて、インダクタ部品の小型化を図ることができる。また、コイル20と第1、第2外部電極30,40を同一工程で形成することができ、コイル20と第1、第2外部電極30,40との間の位置関係のばらつきを低減することで、インダクタ部品1の電気的特性のばらつきを低減することができる。
【0022】
なお、第1外部電極30は、第1端面部31を有さないで、第1底面部32から構成されていてもよく、同様に、第2外部電極40は、第2端面部41を有さないで、第2底面部42から構成されていてもよい。つまり、第1外部電極30および第2外部電極40は、少なくとも素体10の底面17に設けられていればよい。
【0023】
コイル20は、例えば、第1、第2外部電極30,40と同様の導電性材料から構成される。コイル20は、絶縁層11の積層方向に沿って、螺旋状に巻き回されている。コイル20の第1端は、第1外部電極30に接続され、コイル20の第2端は、第2外部電極40に接続されている。なお、本実施形態では、コイル20と第1、第2外部電極30,40とは一体化されており、明確な境界は存在しないが、これに限られず、コイルと外部電極とが異種材料や異種工法で形成されることにより、境界が存在していても良い。
【0024】
コイル20は、軸AXが底面17と平行であり、かつ、軸AXが第1側面13と第2側面14とを交差するように、軸AXに沿って巻回されている。コイル20の軸AXは、絶縁層11の積層方向(Y方向)と一致する。言い換えると、複数の絶縁層11は、軸AXに沿って積層される。コイル20の軸AXは、コイル20の螺旋形状の中心軸を意味する。具体的に述べると、軸AXは、コイル20の最内周の中心を意味する。
【0025】
コイル20は、巻回部20aと、巻回部20aの第1端と第1外部電極30の間に接続された第1引出部20bと、巻回部20aの第2端と第2外部電極40の間に接続された第2引出部20cとを有する。本実施形態では、巻回部20aと第1、第2引出部20b,20cとは一体化されており、明確な境界は存在しないが、これに限られず、巻回部と引出部とが異種材料や異種工法で形成されることにより、境界が存在していても良い。
【0026】
巻回部20aは、軸AXに沿って螺旋状に巻回されている。つまり、巻回部20aとは、軸AXに平行な方向からみたときにコイル20同士が互いに重なり合う螺旋状に巻回された部分を指す。第1、第2引出部20b,20cとは、重なり合う部分から外れた部分を指す。
【0027】
コイル20の軸AX方向からみて、コイル20の形状は、コイル20の軸AXを通過しZ方向に平行な直線に対して、左右対称な形状となる。これにより、インダクタ部品1の特性のばらつきを抑制できる。
【0028】
図3に示すように、コイル20は、軸AXに沿って積層された2つの第1、第2コイル配線層501,502と、軸AX方向に隣り合う第1、第2コイル配線層501,502の間に位置し軸AX方向に隣り合う第1、第2コイル配線層501,502を接続する第1ビア配線層601とを有する。第1、第2コイル配線層501,502は、それぞれ、絶縁層11に設けられる。第1ビア配線層601は、絶縁層11に設けられる。なお、コイル配線層の数は、本実施形態では2つであるが、3つ以上であってもよい。コイル配線層の巻回数は、1周未満であるが、1周以上であってもよい。
【0029】
第1、第2コイル配線層501,502は、それぞれが平面に沿って巻回され、電気的に直列に接続されながら螺旋を構成している。コイル配線層は、軸AX方向(Y方向)に直交するXZ平面(絶縁層11の主面)に沿って巻回されて形成される。各コイル配線層501,502は、延在方向に沿って一定の幅を有する。
【0030】
第1ビア配線層601は、絶縁層11を厚み方向(Y方向)に貫通する。そして、積層方向に隣り合うコイル配線層は、ビア配線層を介して、電気的に直列に接続される。このように、第1、第2コイル配線層501,502は、第1ビア配線層601を介して、互いに電気的に直列に接続されながら、コイル20の螺旋を構成している。
【0031】
具体的に述べると、第1コイル配線層501、第2コイル配線層502は、Y方向に沿って順に積層されている。第1コイル配線層501の端部は、第1外部電極30の第1外部電極導体層33に接続されている。第2コイル配線層502の端部は、第2外部電極40の第2外部電極導体層43に接続されている。
【0032】
第1ビア配線層601は、第1コイル配線層501と第2コイル配線層502の間に位置し、第1コイル配線層501の端部と第2コイル配線層502の端部を接続する。
【0033】
第1ビア配線層601は、軸AX方向からみて、コイル20の螺旋方向に沿って延在する長手ビア配線層601である。長手ビア配線層601は、延在方向に沿って一定の幅を有する。上記構成によれば、第1ビア配線層601が円形である場合と比較して、第1、第2コイル配線層501,502と第1ビア配線層601との接触面積を大きくできて、コイル20の直流抵抗を低減できる。また、インダクタ部品1の製造の際、第1、第2コイル配線層501,502と長手ビア配線層601との積層ずれが発生しても、長手ビア配線層601の第1,第2コイル配線層501,502に対向する面の面積が大きいので、第1、第2コイル配線層501,502と長手ビア配線層601の接触確率が大きくなり、第1、第2コイル配線層501,502と長手ビア配線層601との導通不良がおきる可能性を低減できる。また、長手ビア配線層601の断線を防ぐことができる。
【0034】
なお、本実施形態ではビア配線層の数は1つであるが、複数のビア配線層が存在してもよい。複数のビア配線層が存在する場合、全てのビア配線層が長手ビア配線層であってもよい。また、複数のビア配線層が存在する場合、少なくとも一つのビア配線層が、長手ビア配線層であってもよく、その他のビア配線層が、軸AX方向からみて、円形(または四角形)のビア配線層であってもよい。このとき、円形のビア配線層に接続されるコイル配線層の端部は、軸方向からみて、円形のパッド部を構成し、円形のパッド部の径は、コイル配線層の中間部の線幅よりも大きい。
【0035】
巻回部20aは、外周面20eと内周面20dとを有する。軸AX方向からみたとき、巻回部20aの外周面20eと第1外部電極30との間の第1最短距離71は、外周面20eと天面18との間の第2最短距離72よりも大きい。第1最短距離71が、第2最短距離72よりも大きいことにより、第1外部電極30とコイル20との間の距離を離隔することができる。離隔することにより、第1外部電極30とコイル20との間で生じる焼成時の内部応力は低減され、第1、第2コイル配線層501,502や第1ビア配線層601における剥離などの構造欠陥が発生することを抑制できる。さらに、第2最短距離72が小さくなると、コイル20が天面18方向に近づき、第1外部電極30から離隔できる。これにより、第1外部電極30からの応力がインダクタ部品1に加わりにくくなる。また、第1最短距離71が小さいと、実装した際に実装基板側からコイル20に曲げ応力や熱応力、実装時の衝撃応力が加わりやすい。これに対して、第1最短距離71を第2最短距離72よりも大きくすると、コイル20に応力が加わりにくくなり、コイル20への応力の負荷が低減する。さらに、第2最短距離72が小さくなり、底面17と外周面20eと間の最短距離が変動しない場合、コイル20の外径は大きくなる。この場合、インダクタンス値(L値)は大きくなる。同様の作用効果により、外周面20eと第2外部電極40の第2底面部42との間の第1最短距離は、外周面20eと天面18との間の第2最短距離よりも大きい。なお、外周面20eとは、巻回部20aにおいて、軸AXに平行な方向からみたときにコイル20同士が互いに重なり合う螺旋状に巻回された部分のうち、もっとも外側の外周面である。すなわち、第1最小距離71は、各コイル配線層の巻回部20aを構成する部分のうち、第1外部電極30との間の距離が最も小さいコイル配線層の外周面と第1外部電極30との間の距離であり、第2最小距離72は、各コイル配線層の巻回部20aを構成する部分のうち、天面18との間の距離が最も小さいコイル配線層の外周面と天面18との間の距離である。
【0036】
ここで、第1最短距離71は、外周面20eと第1外部電極30との間の最短距離である。第2最短距離72は、外周面20eと天面18との間の最短距離である。なお、
図2では、第1最短距離71は、第1外部電極30の第1底面部32と外周面20eとの間の距離であるが、第2外部電極40の第2底面部42と外周面20eとの間の距離でもよい。また、第1最短距離71は、第1外部電極30の第1端面部31と外周面20eとの間の距離でもよく、第2外部電極40の第2端面部41と外周面20eとの間の距離でもよい。
【0037】
好ましくは、第1最短距離71は、15μm以上であり、第2最短距離72は、14μm以上である。例えば、第1最短距離71は、17μm以上であり、第2最短距離72は、16.5μm以上である。第1、第2最短距離71,72が上記値であることにより、第1外部電極30と巻回部20aの外周面20eとの間の絶縁層の厚み、および、素体10の天面18側と外周面20eとの間の絶縁層の厚みが大きくなり、強度が上がる。これにより、実装時にクラックが生じることを抑制できる。第1最短距離の上限値は、特に限定されないが、例えば、51μm以下である。第1最短距離の上限値が、51μm超であると、インダクタンス値の低下を招く。第2最短距離の上限値は、特に限定されないが、例えば、50μm以下である。第2最短距離の上限値が、50μm超であると、インダクタンス値の低下を招く。
【0038】
好ましくは、第1最短距離71は、軸AX方向からみて、素体10の第1端面15と第2端面16の対向する長さ方向の寸法(以下、長さ寸法Lともいう。)に対して、5%以上である。第2最短距離72は、素体10の天面18と底面17の対抗する高さ方向の寸法(以下、高さ寸法Tともいう。)に対して、6%以上である。第1最短距離71および第2最短距離72が上記範囲にあることにより、第1外部電極30と巻回部20aの外周面20eとの間の絶縁層の厚み、および、素体10の天面18側と外周面20eとの間の絶縁層の厚みが大きくなり、強度が上がる。これにより、実装時のクラックを抑制できる。例えば、素体10の長さ寸法Lが263μm、高さ寸法Tが213μmのインダクタ部品1において、第1最短距離71は15μm、第2最短距離72は14μmであり、長さ寸法Lに対する第1最短距離71の比率は5.7%、高さ寸法Tに対する第2最短距離72の比率は、6.6%となる。また、例えば、素体10の長さ寸法Lが250μm、高さ寸法Tが200μmのインダクタ部品1において、第1最短距離71は15μm、第2最短距離72は14μmであり、長さ寸法Lに対する第1最短距離71の比率は、6.0%、高さ寸法Tに対する第2最短距離72の比率は、7.0%となる。第2外部電極40と外周面20eとの間の絶縁層の厚み、および、素体10の天面18側と外周面20eとの間の絶縁層の厚みについても、同様の作用効果が生じる。
【0039】
ここで、素体10の長さ寸法Lとは、軸AX方向からみて、素体10の長さ方向の最大の寸法をいう。高さ寸法Tとは、軸AX方向からみて、素体10の高さ方向の最大の寸法をいう。
【0040】
第1最短距離71は、長さ寸法Lに対して、21%以下であってもよい。第1最短距離71が21%超であると、インダクタンス値の低下を招く。第2最短距離72は、高さ寸法Tに対して、26%以下であってもよい。第2最短距離72が26%超であると、インダクタンス値の低下を招く。例えば、第1最短距離71が51μm、長さ寸法Lが250μmのとき、長さ寸法Lに対する第1最短距離71の比率は、20.4%である。第2最短距離72が50μm、高さ寸法Tが250μmのとき、高さ寸法Tに対する第2最短距離72の比率は、25%である。
【0041】
好ましくは、長さ寸法Lに対する、高さ寸法Tの比T/Lより、軸AX方向からみたときの、巻回部20aにおける長さ方向の(即ち、第1端面15と第2端面16の対向する長さ方向の)第1内径寸法L1に対する、巻回部20aにおける高さ方向の(即ち、底面17と天面18の対向する高さ方向の)第2内径寸法T1の比T1/L1の方が大きい。例えば、素体10の幅Lが263μm、長さTが213μmのインダクタ部品1において、第1内径寸法L1を94μm、第2内径寸法T1を109μmとする。幅Lに対する高さTの比は0.81、第1内径寸法L1に対する第2内径寸法T1の比は1.16となり、比T/Lより、比T1/L1が大きくなる。
【0042】
ここで、巻回部20aの内径とは、軸AX方向からみてコイル20の内側の径をいう。コイル20が軸AXに直交する平面において1周以上で巻回されている場合、軸AX方向からみてコイル20の最も内側の径を巻回部20aの内径という。第1内径寸法L1とは、軸AX方向からみて、長さ方向における巻回部20aの内径のうちの最も大きい内径の寸法をいう。第2内径寸法T1とは、軸AX方向からみて、高さ方向における巻回部20aの内径のうちの最も大きい内径の寸法をいう。なお、第1内径寸法L1は、内周面20dで囲われた内径の重心(軸)をとおって、第1端面15から第2端面16方向に延在する方向(L方向)に平行な長さであってもよい。第2内径寸法T1は、内周面20dで囲われた内径の重心(軸)をとおって、底面17から天面18に延在する方向(T方向)に平行な長さであってもよい。
【0043】
上記構成を有することにより、第1外部電極30と外周面20eとの距離が大きくなる。上記距離が大きくなることにより、第1外部電極30とコイル20との間における浮遊容量の発生を抑制できる。さらに、第2内径寸法T1を大きくすることにより、内径の面積を大きくでき、Q値を高くできる。また、第1外部電極30が、第1端面部31と第1底面部32とを有するときに、第1端面部31と巻回部20aの外周面20eとの間の第3最短距離73を大きくできる。距離が大きくなることにより、第1端面部31と巻回部20aの外周面20eとの間における浮遊容量をより低減できる。第2外部電極40においても、同様の作用効果を生じる。
【0044】
ここで、第3最短距離73は、軸AX方向からみて、外周面20eから第1端面部31に向かって外周面20eと第1端面部31との間の距離である。
【0045】
好ましくは、第1内径寸法L1に対する、第2内径寸法T1の比率(即ち、100×T1/L1)は、110%以上である。上記比率の上限値は特に限定されないが、例えば、125%以下である。例えば、第1内径寸法L1が94μm、第2内径寸法T1が109μmのインダクタ部品1において、第1内径寸法L1に対する第2内径寸法T1の比率は、116%となる。上記比率を有することにより、第2内径寸法T1を大きくすることができ、内径の面積を大きくでき、Q値を高くできる。また、第1内径寸法L1を小さくすることにより、第1外部電極30の第1端面部31と巻回部20aの外周面20eとの間の第3最短距離73を大きくでき、これにより、第1外部電極30の第1端面部31と巻回部20aの外周面20eとの間における浮遊容量をより低減できる。
【0046】
(製造方法)
次に、インダクタ部品1の製造方法について説明する。
【0047】
図3に示すように、図中左上から右下に向かって、第1、第2コイル配線層501,502と第1ビア配線層601とを絶縁層11と共に交互に積層することで、インダクタ部品1を製造する。また、第1、第2コイル配線層501,502は、例えばスクリーン印刷により絶縁層11に設けられる。第1ビア配線層601は、例えばフォトリソグラフィ工法またはレーザー工法により絶縁層11に開口部を設けて、例えばスクリーン印刷により開口部に設けられる。
【0048】
(第2実施形態)
図4は、インダクタ部品の第2実施形態を示すインダクタ部品の第1側面側からみた透視正面図である。
図5Aと
図5Bと
図5Cとは、インダクタ部品の分解平面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、コイル配線層およびビア配線層の数および位置が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
図4と
図5Aと
図5Bと
図5Cとに示すように、第2実施形態のインダクタ部品1Aでは、コイル20Aは、軸AXに沿って積層された複数のコイル配線層501Aから510Aと、軸AX方向に隣り合うコイル配線層の間に位置し軸AX方向に隣り合うコイル配線層を接続する複数のビア配線層601Aから609Aとを有する。複数のコイル配線層501Aから510Aは、それぞれ、絶縁層11に設けられ、複数のビア配線層601Aから609Aは、それぞれ、絶縁層11に設けられている。
【0050】
複数のコイル配線層501Aから510Aは、それぞれが平面に沿って巻回され、電気的に直列に接続されながら螺旋を構成している。複数のコイル配線層501Aから510Aは、それぞれ、軸AX方向(Y方向)に直交するXZ平面(絶縁層11の主面)に沿って巻回されて形成される。全てのコイル配線層501Aから510Aは、それぞれ、延在方向に沿って一定の幅を有する。
【0051】
複数のビア配線層601Aから609Aは、絶縁層11を厚み方向(Y方向)に貫通する。軸AX方向からみて、複数のビア配線層601Aから609Aは、コイル20Aの螺旋方向に沿って延在している。そして、積層方向に隣り合うコイル配線層は、ビア配線層を介して、電気的に直列に接続される。ビア配線層601Aから609Aは、いずれも、長手ビア配線層である。
【0052】
具体的に述べると、第1コイル配線層501A、第2コイル配線層502A、第3コイル配線層503A、第4コイル配線層504A、第5コイル配線層505A、第6コイル配線層506A、第7コイル配線層507A、第8コイル配線層508A、第9コイル配線層509Aおよび第10コイル配線層510Aは、Y方向に沿って順に積層されている。第1コイル配線層501Aの端部は、第1外部電極30の第1外部電極導体層33に接続されている。第10コイル配線層510Aの端部は、第2外部電極40の第2外部電極導体層43に接続されている。
【0053】
第1ビア配線層601A、第2ビア配線層602A、第3ビア配線層603A、第4ビア配線層604A、第5ビア配線層605A、第6ビア配線層606A、第7ビア配線層607A、第8ビア配線層608A、第9ビア配線層609Aは、Y方向に沿って順に積層されている。第1ビア配線層601Aおよび第7ビア配線層607Aは、軸AX方向からみて、重なる。第2ビア配線層602Aおよび第8ビア配線層608Aは、軸AX方向からみて、重なる。第3ビア配線層603Aおよび第9ビア配線層609Aは、軸AX方向からみて、重なる。全てのビア配線層601Aから609Aは、それぞれ、延在方向に沿って一定の幅を有する。なお、一部のビア配線層は、延在方向に沿って異なる幅を有していてもよい。
【0054】
第1ビア配線層601Aは、第1コイル配線層501Aと第2コイル配線層502Aとの間に位置し、第1コイル配線層501Aの端部と第2コイル配線層502Aの端部とを接続する。第2ビア配線層602Aは、第2コイル配線層502Aと第3コイル配線層503Aとの間に位置し、第2コイル配線層502Aの端部と第3コイル配線層503Aの端部とを接続する。第3ビア配線層603Aは、第3コイル配線層503Aと第4コイル配線層504Aとの間に位置し、第3コイル配線層503Aの端部と第4コイル配線層504Aの端部とを接続する。第4ビア配線層604Aは、第4コイル配線層504Aと第5コイル配線層505Aとの間に位置し、第4コイル配線層504Aの端部と第5コイル配線層505Aの端部とを接続する。第5ビア配線層605Aは、第5コイル配線層505Aと第6コイル配線層506Aとの間に位置し、第5コイル配線層505Aの端部と第6コイル配線層506Aの端部とを接続する。
【0055】
第6ビア配線層606Aは、第6コイル配線層506Aと第7コイル配線層507Aとの間に位置し、第6コイル配線層506Aの端部と第7コイル配線層507Aの端部とを接続する。第7ビア配線層607Aは、第7コイル配線層507Aと第8コイル配線層508Aとの間に位置し、第7コイル配線層507Aの端部と第8コイル配線層508Aの端部とを接続する。第8ビア配線層608Aは、第8コイル配線層508Aと第9コイル配線層509Aとの間に位置し、第8コイル配線層508Aの端部と第9コイル配線層509Aとの端部を接続する。第9ビア配線層609Aは、第9コイル配線層509Aと第10コイル配線層510Aとの間に位置し、第9コイル配線層509Aの端部と第10コイル配線層510Aとの端部を接続する。
【0056】
ビア配線層は、縦長ビア配線層と横長ビア配線層とを含む。縦長ビア配線層においては、底面17から天面18方向へのT成分の高さ81が、第1端面15から第2端面16方向へのL成分の長さ82よりも大きい。横長ビア配線層においては、第1端面15から第2端面16方向へのL成分の長さ84が、底面17から天面18方向へのT成分の高さ83よりも大きい。なお、ビア配線層は、縦長ビア配線層のみでもよく、横長ビア配線層のみでもよい。
【0057】
ここで、素体10の底面17から天面18方向へのT成分の高さとは、ビア配線層を素体10の第1端面15に対してX方向に平行な方向に投影したときの高さをいう。素体10の第1端面15から第2端面16方向へのL成分の長さとは、ビア配線層を素体10の底面17に対してZ方向に平行な方向に投影したときの長さをいう。
【0058】
具体的には、第1ビア配線層601Aは、第1縦長ビア配線層601Aである。第3ビア配線層603Aは、第2縦長ビア配線層603Aである。第4ビア配線層604Aは、第3縦長ビア配線層604Aである。第6ビア配線層606Aは、第4縦長ビア配線層606Aである。第7ビア配線層607Aは、第5縦長ビア配線層607Aである。第9ビア配線層609Aは、第6縦長ビア配線層609Aである。
【0059】
また、具体的には、第2ビア配線層602Aは、第1横長ビア配線層602Aである。第5ビア配線層605Aは、第2横長ビア配線層605Aである。第8ビア配線層608Aは、第3横長ビア配線層608Aである。
【0060】
なお、ビア配線層は、第1端面15から第2端面16方向へのL成分の長さ84と、底面17から天面18方向へのT成分の高さ83とが、同じ長さである場合を含んでいてもよい。この場合、該ビア配線層は、縦長ビア配線層および横長ビア配線層の何れでもない。
【0061】
ビア配線層は、縦長ビア配線層を含む。具体的には、ビア配線層は、第1から第6縦長ビア配線層601A,603A,604A,606A,607A,および609Aを含む。第1から第6縦長ビア配線層601A,603A,604A,606A,607A,および609Aのような長手ビア配線層を有することにより、長手ビア配線層とコイル配線層との接触面積が大きくなり、両者の接続性を向上できる。さらに、第1から第6縦長ビア配線層601A,603A,604A,606A,607A,および609Aを有することにより、第1底面部32および第2底面部42との間に発生する浮遊容量を低く抑えることができる。
【0062】
好ましくは、第1縦長ビア配線層601Aの幅に対する、第1縦長ビア配線層601Aの配線長の比率が、130%以上であり、かつ、2500%以下である。縦長ビア配線層が2500%超であると、インダクタンス値の低下を招く。ここで、第1縦長ビア配線層601Aの配線長は、第1縦長ビア配線層601Aが延在する方向に沿った中心線601aの長さである。第1縦長ビア配線01Aの幅は、該中心線601aに直交する方向の幅の最大値である。第2から第6縦長ビア配線層603A,604A,606A,607A,および609Aにおいても、第1縦長ビア配線層601Aと同様の作用効果を有する。なお、縦長ビア配線層のうち、少なくとも1つが上記比率を有していてもよい。
【0063】
ビア配線層は、横長ビア配線層を含む。具体的には、ビア配線層は、第1から第3横長ビア配線層602A,605A,および608Aを有する。第1から第3横長ビア配線層602A,605A,および608Aのような長手ビア配線層を有することにより、長手ビア配線層とコイル配線層との接触面積が大きくなり、両者の接続性を向上できる。さらに、第1から第3横長ビア配線層602A,605A,および608Aを有することにより、横長ビア配線層と第1端面部31および第2端面部41との間に発生する浮遊容量を低く抑えることができる。
【0064】
好ましくは、第1横長ビア配線層602Aの幅に対する、第1横長ビア配線層602Aの配線長の比が、130%以上である。上記比率の上限値は特に限定されないが、2200%以下である。横長ビア配線層が2200%超であると、インダクタンス値の低下を招く。
【0065】
ここで、第1横長ビア配線層602Aの配線長は、第1横長ビア配線層602Aが延在する方向に沿った中心線602aの長さである。第1横長ビア配線層602Aの幅は、該中心線602aに直交する方向の幅の最大値である。第2および第3横長ビア配線層605A,608Aにおいても、第1横長ビア配線層602Aと同様の作用効果を有する。なお、横長ビア配線層のうち、少なくとも1つが上記比率を有していてもよい。
【0066】
一態様において、ビア配線層が、縦長ビア配線層と横長ビア配線層とを有する場合、縦長ビア配線層の総数が、横長ビア配線層の総数よりも多い。上記構成を有することにより、コイル20を縦長のコイルとすることができ、ビア配線層とコイル配線層との接触面積を大きくしつつ、コイル20の巻き効率を向上させるようなコイル20の巻き方を実現でき、ビア配線層とコイル配線層との接続性の向上と高いL値取得を両立できる。
【0067】
一態様において、ビア配線層が、縦長ビア配線層と横長ビア配線層とを有する場合、横長ビア配線層の総数が、縦長ビア配線層の総数よりも多い。上記構成を有することにより、コイルを横長のコイルとすることができき、ビア配線層とコイル配線層との接触面積を大きくしつつ、コイル20の巻き効率を向上させるようなコイル20の巻き方を実現でき、ビア配線層とコイル配線層との接続性の向上と高いL値取得を両立できる。
【0068】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1と第2実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。また、コイル配線層の層数を増減してもよく、また、ビア配線層の層数を増減してもよい。
【0069】
本開示は以下の態様を含む。
<1>
素体と、
前記素体内に設けられ、軸に沿って螺旋状に巻き回されるコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続される第1外部電極および第2外部電極と
を備え、
前記素体は、互いに対向する第1端面および第2端面と、互いに対向する第1側面と第2側面と、前記第1端面と前記第2端面との間および前記第1側面と前記第2側面との間に接続された底面と、前記底面と対向する天面とを含み、
前記第1外部電極および前記第2外部電極は、少なくとも前記底面に設けられ、
前記軸は、前記底面に平行でかつ前記第1側面および前記第2側面に交差し、
前記コイルは、軸に沿って螺旋状に巻回されている巻回部を有し、
前記軸方向からみたとき、前記巻回部の外周面と前記第1外部電極との間の第1最短距離は、前記外周面と前記天面との間の第2最短距離よりも大きい、
インダクタ部品。
<2>
前記第1最短距離は、15μm以上であり、
前記第2最短距離は、14μm以上である、
<1>に記載のインダクタ部品。
<3>
前記第1最短距離は、前記素体の前記第1端面と前記第2端面の対向する長さ方向の寸法に対して、5%以上であり、
前記第2最短距離は、前記素体の前記底面と前記天面の対向する高さ方向の寸法に対して、6%以上である、
<1>または<2>に記載のインダクタ部品。
<4>
前記素体の前記第1端面と前記第2端面の対向する長さ方向の寸法に対する、前記素体の前記底面と前記天面の対向する高さ方向の寸法の比より、前記軸方向からみたときの、前記巻回部における前記長さ方向の第1内径寸法L1に対する、前記巻回部における前記高さ方向の第2内径寸法T1の比T1/L1の方が大きい、
<1>から<3>のいずれか1つに記載のインダクタ部品。
<5>
前記巻回部における前記素体の前記第1端面と前記第2端面の対向する長さ方向の第1内径寸法L1に対する、前記巻回部における前記素体の前記底面と前記天面の対向する高さ方向の第2内径寸法T1の比率は、110%以上である、
<1>から<4>のいずれか1つに記載のインダクタ部品。
<6>
前記コイルは、前記軸に沿って積層されたコイル配線層と、前記軸方向に隣り合う前記コイル配線層の間に位置し、前記軸方向に隣り合う前記コイル配線層を接続するビア配線層とを有し、
前記ビア配線層は、縦長ビア配線層を含み、
前記縦長ビア配線層は、前記素体の前記底面から前記天面方向へのT成分の高さが、前記第1端面から前記第2端面方向へのL成分の長さよりも大きい、
<1>から<5>のいずれか1つに記載のインダクタ部品。
<7>
前記縦長ビア配線層の幅に対する、前記縦長ビア配線層の配線長の比率が、130%以上でありかつ2500%以下である、
<6>に記載のインダクタ部品。
<8>
前記コイルは、前記軸に沿って積層されたコイル配線層と、前記軸に隣り合う前記コイル配線層の間に位置し、前記軸方向に隣り合う前記コイル配線層を接続するビア配線層とを有し、
前記ビア配線層は、横長ビア配線層を含み、
前記横長ビア配線層は、前記第1端面から前記第2端面方向へのL成分の長さが、前記底面から前記天面方向へのT成分の高さよりも大きい、
<1>から<7>のいずれか1つに記載のインダクタ部品。
<9>
前記横長ビア配線層の幅に対する、前記横長ビア配線層の配線長の比が、130%以上でありかつ2200%以下である、
<8>に記載のインダクタ部品。
【符号の説明】
【0070】
1、1A インダクタ部品
10 素体
11 絶縁層
13 第1側面
14 第2側面
15 第1端面
16 第2端面
17 底面
18 天面
20、20A コイル
20a 巻回部
20b 第1引出部
20c 第2引出部
20d 内周面
20e 外周面
30 第1外部電極
31 第1端面部
32 第1底面部
33 第1外部電極導体層
40 第2外部電極
41 第2端面部
42 第2底面部
43 第2外部電極導体層
501~502、501A~510A コイル配線層
601、601A~609A ビア配線層
71、72、73 最短距離
AX 軸
L 長さ寸法
T 高さ寸法
L1,T1 内径寸法