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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157828
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】仮設エレベータの盛替え方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 9/187 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B66B9/187 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072425
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】石井 健広
(72)【発明者】
【氏名】仲林 清文
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 紘光
(72)【発明者】
【氏名】山分 幸信
(72)【発明者】
【氏名】金子 哲也
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 敏康
【テーマコード(参考)】
3F301
【Fターム(参考)】
3F301AA13
3F301BA15
3F301CA06
(57)【要約】
【課題】エレベータの盛替え作業により工事の効率が低下することを抑制できるエレベータの盛替方法を提供する。
【解決手段】施工中の構造物の開口空間12内に、エレベータ吊り機10と搬器13とレール部15とを配置して仮設エレベータ17を設置し、仮設エレベータ17により揚重して工事を進行させるとともに、フロア数を増加して開口空間12を上方に延伸させ、増加したフロアまで仮設エレベータ17を延伸させる仮設エレベータの盛替方法であり、構造物に仮設エレベータ17を複数設け、少なくとも一つの仮設エレベータ17Aを稼働させつつ他の仮設エレベータ17Bの開口空間12及びレール部15を上方に延伸させ、開口空間12の延伸位置までエレベータ吊り機10を上昇させて配置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工中の構造物に形成された開口空間内に、エレベータ吊り機と、該エレベータ吊り機に昇降可能に吊下支持された搬器と、前記搬器の昇降を案内するレール部と、を配置して仮設エレベータを設置し、該仮設エレベータを使用して前記構造物の施工を進めるとともに、前記構造物のフロア数を増加して前記開口空間を上方に延伸させ、増加したフロアまで前記仮設エレベータの運転範囲を延伸させるエレベータの盛替方法であって、
前記構造物に前記仮設エレベータを複数設置し、
少なくとも一つの仮設エレベータを稼働させつつ、他の仮設エレベータの前記レール部を上方に延伸させ、
前記他の仮設エレベータの前記レール部の延伸位置まで前記エレベータ吊り機を上昇させて配置し、前記他の仮設エレベータの運転範囲を延伸する仮設エレベータの盛替え方法。
【請求項2】
運転範囲を延伸する前記他の仮設エレベータの前記エレベータ吊り機は、運転中の前記少なくとも一つの仮設エレベータの前記エレベータ吊り機とは異なる高さの前記延伸位置に上昇させる請求項1に記載の仮設エレベータの盛替え方法。
【請求項3】
複数の前記開口空間は、本設エレベータ用シャフトを含み、該本設エレベータ用シャフト内に前記エレベータ吊り機及び前記搬器を配置して、前記仮設エレベータを設置する請求項1に記載の仮設エレベータの盛替え方法。
【請求項4】
前記エレベータ吊り機の平面視における外形形状を前記開口空間より小さく変形し、前記開口空間内で上昇させ、前記変形を復元することで前記延伸位置に配置する請求項1に記載の仮設エレベータの盛替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設エレベータの盛替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
施工中の構造物に設けられる仮設エレベータは、盛替え作業を行うことで、工事の進行に応じて延伸させて使用される。高層建築物を建設する際には、盛替え作業を繰り返し行うことで、工事の進行に伴って仮設エレベータを延伸させながら使用している。
例えば、特許文献1に記載された揚重装置では、上下方向に複数階に延在する開口空間の中に、仮設リフトおよび仮設エレベータが上下に配設されている。仮設エレベータは、構造物の1階から躯体工事が完了したフロアまでに設けられていて、エレベータマストの仮設リフト付近に配置された蓮台にトップシーブ及び駆動部等が装着されてエレベータ吊り機が構成されている。工事が進行すると、エレベータマストを上方に延伸させ、エレベータ吊り機をエレベータマストの上部に移動させることで、仮設エレベータを上方に延伸させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-284179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような従来の仮設エレベータの盛替え方法では、仮設エレベータを上方に延伸させるには、まず仮設エレベータの上方に配置された仮設リフトの盛替え作業を行い、リフトマストを上方に延伸させてリフトベースやリフト搬器を上昇させた後、仮設エレベータの盛替え作業を行っていた。仮設エレベータの盛替え作業では、エレベータマストを上方に延伸させるとともに、蓮台をエレベータマストに沿って上昇させるための機構を蓮台及びエレベータマストに設置し、蓮台をトップシーブや駆動装置などとともにエレベータマストに沿って上昇させ、搬器を吊下支持するワイヤロープを調整するなどにより行われていた。このような仮設エレベータの盛替え作業中には当該エレベータが使用できないため、盛替え作業により構造物の施工効率が低下するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、仮設エレベータの盛替え作業により施工効率が低下することを抑制できる仮設エレベータの盛替方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の仮設エレベータの盛替え方法は、施工中の構造物に形成された開口空間内に、エレベータ吊り機と、該エレベータ吊り機に昇降可能に吊下支持された搬器と、前記搬器の昇降を案内するレール部と、を配置して仮設エレベータを設置し、該仮設エレベータを使用して前記構造物の施工を進めるとともに、前記構造物のフロア数を増加して前記開口空間を上方に延伸させ、増加したフロアまで前記仮設エレベータの運転範囲を延伸させるエレベータの盛替方法であって、前記構造物に前記仮設エレベータを複数設置し、少なくとも一つの仮設エレベータを稼働させつつ、他の仮設エレベータの前記レール部を上方に延伸させ、前記他の仮設エレベータの前記レール部の延伸位置まで前記エレベータ吊り機を上昇させて配置し、前記他の仮設エレベータの運転範囲を延伸することを特徴とする。
【0007】
このようにすれば、施工中の構造物に仮設エレベータを複数設け、一部の仮設エレベータを稼働させつつ、他の仮設エレベータを延伸させることができる。そのため仮設エレベータの盛替え作業中であっても一部の仮設エレベータを使用して構造物の施工を進めることができ、仮設エレベータの盛替え作業により構造物の施工が中断することがなく、施工効率が低下することを抑制できる。
【0008】
本発明の仮設エレベータの盛替え方法では、運転範囲を延伸する前記他の仮設エレベータの前記エレベータ吊り機は、運転中の前記少なくとも一つの仮設エレベータの前記エレベータ吊り機とは異なる高さの前記延伸位置に上昇させてもよい。
このようにすれば、構造物のフロア数を順次増加させる工事の進行において、一部の仮設エレベータの盛替え作業と他の仮設エレベータの盛替え作業とを異なるタイミングで分散して実施することができる。そのため、仮設エレベータの盛替え作業により構造物の施工が中断することを確実に防止することができ、構造物の施工効率が低下することを抑制できる。
【0009】
本発明の仮設エレベータの盛替え方法では、複数の前記開口空間は、本設エレベータ用シャフトを含み、該本設エレベータ用シャフト内に前記エレベータ吊り機及び前記搬器を配置して、前記仮設エレベータを設置してもよい。
このようにすれば、本設エレベータ用シャフトを利用して仮設エレベータを設置できるため、仮設エレベータ用の開口空間を別途設ける必要がなくなる。そのため、仮設エレベータ用の開口空間を後から閉塞する工事を無くすことができ、構造物の施工期間の短縮を図ることができる。
【0010】
本発明の仮設エレベータの盛替え方法では、前記エレベータ吊り機の平面視における外形形状を前記開口空間より小さく変形し、前記開口空間内で上昇させ、前記変形を復元することで前記延伸位置に配置してもよい。
このようにすれば、仮設エレベータの盛替え時にエレベータ吊り機を上昇させて延伸位置に配置する作業の手間を簡略化でき、仮設エレベータの盛替え作業の作業効率を向上できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の仮設エレベータの盛替え方法によれば、仮設エレベータの盛替え作業により施工効率が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る仮設エレベータの盛替え方法が適用される構造物を示す模式図である。
図2】本実施形態の仮設エレベータの盛替え方法が適用される構造物の開口空間に設置された仮設エレベータを示す概略正面図である。
図3】本実施形態の仮設エレベータの盛替え方法が適用される構造物の開口空間に設置された仮設エレベータを示す概略平面図である。
図4】本実施形態の仮設エレベータの盛替え方法に用いるエレベータ吊り機の架台部の側面図である。
図5】本実施形態の仮設エレベータの盛替え方法に用いるエレベータ吊り機の架台部を示す正面図である。
図6】本実施形態の仮設エレベータの盛替え方法に用いるエレベータ吊り機の架台部の伸縮脚部の平面図であり、(a)は伸縮脚部を伸長させた状態を示し、(b)は伸縮脚部を収縮させた状態を示す。
図7】本実施形態の仮設エレベータの盛替え方法を適用して構造物の施工状態を説明する図であり、(a)~(d)の順番に構造物が施工される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態の仮設エレベータの盛替え方法が適用される構造物を示す模式図、図2及び図3は、その構造物の開口空間に設置された仮設エレベータを示す概略正面図及び概略平面図である。
【0014】
本実施形態の盛替え方法が適用される構造物1は、建設途中の高層建築物である。詳細には、工事の進行とともにフロア数が増加する途中の躯体であり、各フロアには床を構成する床構造部11が設けられている。各フロアの床構造部11には、上下に貫通する開口部12aが複数形成され、各フロアの開口部12aが鉛直方向に配列することで開口空間12が複数形成されている。本実施形態では、2つの開口空間12A,12Bが形成されている。
【0015】
開口空間12は、建築物の完成後に使用される本設エレベータが設置される本設エレベータ用の開口空間12Aと、建築物の工事期間中に使用されて完成前に閉塞される仮設エレベータ用の開口空間12Bと、が含まれる。
【0016】
各開口空間12A,12B内には、図2及び図3に示すように、エレベータ吊り機10と、エレベータ吊り機10に昇降可能に吊下支持された搬器13と、搬器13の昇降を案内するレール部15と、を備えた工事用の仮設エレベータ17が設置されている。
【0017】
エレベータ吊り機10は、工事進行に沿った高さ位置に設置されている。エレベータ吊り機10の下方には、搬器13とウエイト18とが昇降可能に配置されている。搬器13及びウエイト18は、ワイヤロープ14により連結され、エレベータ吊り機10にワイヤロープ14が支持されることで昇降駆動可能に構成されている。
【0018】
エレベータ吊り機10より下方の開口空間12には、搬器13やウエイト18の昇降を案内するためのレール部15が、開口空間12の内側に突出した状態で、鉛直方向に下端からエレベータ吊り機10の高さ位置まで連続して設置されている。レール部15は、ラックギヤであってもよく、搬器13とウエイト18とに別々に設置されていてもよい。
【0019】
本実施形態のエレベータ吊り機10は、各開口空間12A,12Bに配置されて、開口部12a周囲の床構造部11に固定された架台部20と、架台部20に載置されて、搬器13に連結されたワイヤロープ14を巻上可能に支持する巻上機21と、を備えている。
【0020】
巻上機21は、ワイヤロープ14を支持するトップシーブ22と、トップシーブ22を回転駆動する駆動装置23と、トップシーブ22とともにワイヤロープ14が巻き掛けられたそらせ車24と、を備えている。
【0021】
図4及び図5は、本実施形態のエレベータ吊り機の架台部を示す側面図及び正面図である。図6(a)、(b)は、架台部の伸縮脚部の平面図である。
【0022】
架台部20は、巻上機21が固定された架台本体26と、架台本体26に装着された伸縮脚部27と、を有する。
【0023】
伸縮脚部27は、架台本体26の下部に設けられていて、平面視において最大幅が拡大縮小するように伸縮可能に構成されている。伸縮脚部27は、アウトリガーからなり、架台本体26の下部に設けられた複数の脚部本体27aと、一端側が脚部本体27aに挿入されて他端側に床構造部11との支持部27cが設けられた複数の脚体27bと、を備えている。本実施形態では、伸縮脚部27は2本設けられている。各脚体27bは脚部本体27aに収容される一端側の長さを変化させることでそれぞれ略水平方向に直線的に伸縮可能であり、伸長状態或いは収縮状態で脚部本体27aに対して固定可能に構成されている。脚部本体27aに対する脚体27bの固定方法は任意であり、例えば、ボルトを用いて固定すればよい。
【0024】
図6(a)に示すように、架台部20は、伸縮脚部27を伸長させることで、平面視において最大幅を床構造部11の開口部12aよりも拡大できる。この状態で各支持部27cを床構造部11に固定することで、開口部12aの周囲の床構造部11間にエレベータ吊り機10を構造物1に設置することができる。
【0025】
本実施形態のエレベータ吊り機10では、架台部20により開口部12aに架設した状態で、平面視において搬器13及びウエイト18のレール部15と、架台部20及び巻上機21と、が互いに干渉しない位置に配置されている。
【0026】
さらに、開口空間12の周囲に設置されるシャフト区画壁16が、伸縮脚部27以外の架台部20及び巻上機21と、平面視において干渉しない位置に配置されている。
【0027】
図6(b)に示すように、伸縮脚部27を収縮させると、平面視において最大幅が床構造部11の開口部12aよりも縮小できて外形形状を開口空間12より小さくすることができる。
【0028】
図7(a)~(d)は、本実施形態のエレベータの盛替え方法を説明する図である。
本実施形態の仮設エレベータの盛替え方法を適用して構造物1の工事を構築するには、次のように行う。
【0029】
まず、図7(a)に示すように、構造物1の低層階の躯体を構築し、各フロアの床構造部11に開口部12aを同じ位置に設けて複数の開口空間12A,12Bを形成する。
【0030】
各開口空間12A,12B内の上部にエレベータ吊り機10,10をそれぞれ配置する。エレベータ吊り機10,10にワイヤロープ14,14を支持させるとともに、ワイヤロープ14,14に連結された搬器13,13及びウエイト18,18を昇降可能にエレベータ吊り機10,10の下方に配置する。ワイヤロープ14,14の余剰分は図示しない余巻ドラムに巻付けて収容しておく。これにより、2基の仮設エレベータ17A,17Bを構造物1に設置し、各仮設エレベータ17A,17Bを2台とも稼働させて工事を進める。その後、構造物1のフロア数(床構造部11の数)を増加して両方の開口空間12A,12Bを上方に延伸させる。
【0031】
次いで、図7(b)に示すように、構造物1の施工が進捗すると、少なくとも1基の仮設エレベータ17Bの運転範囲を延伸する。このとき、一方の仮設エレベータ17Aは稼働させつつ構造物1の施工を進行させる。他方の仮設エレベータ17Bのレール部15を開口空間12内で上方に延伸させる。
【0032】
このとき搬器13及びウエイト18のレール部15と、架台部20及び巻上機21と、が互いに干渉しない位置に配置されているため、他方の仮設エレベータ17Bをエレベータ吊り機10より下方の区間で稼働させた状態でレール部15を上方に延長させることができる。また、シャフト区画壁16が、伸縮脚部27以外の架台部20及び巻上機21と、平面視において干渉しない位置に配置されているため、他方の仮設エレベータ17Bをエレベータ吊り機10より下方の区間で稼働させた状態で、シャフト区画壁16を上方に延長させることができる。
【0033】
他方の仮設エレベータ17Bのレール部15を延長した後、開口空間12B内で延伸位置までエレベータ吊り機10を上昇させて配置する。このとき、搬器13及びウエイト18を一定位置に保持した状態で、伸縮脚部27を開口部12a周囲の床構造部11から取り外すとともに、図6(b)に示すように、脚体27bと脚部本体27aとの固定を解除して、脚部本体27aに脚体27bの一端側を収容する長さを増加させることで伸縮脚部27を収縮させる。これにより、エレベータ吊り機10の平面視における外形形状を開口空間12Bより小さくすることができる。
【0034】
この状態で、図示しない余剰ドラムからワイヤロープ14を繰出しつつ、エレベータ吊り機10をクレーン等により吊上げて開口空間12B内でフロア数の増加に応じた所定の延伸位置まで上昇させる。
【0035】
そして、図6(a)に示すように、再び伸縮脚部27を伸長させて、エレベータ吊り機10の変形を復元し、対応するフロアにおける開口部12a周囲の床構造部11に再び伸縮脚部27を固定する。エレベータ吊り機10を開口空間12Bの延伸位置に配置して、他方の仮設エレベータ17Bの盛替えが完了する。
【0036】
これにより、一方の仮設エレベータ17Aのエレベータ吊り機10と、他方の仮設エレベータ17Bのエレベータ吊り機10とが異なる高さ位置に設置される。この状態で、一方の仮設エレベータ17Aをエレベータ吊り機10より下方の区間で稼働させるとともに、他方の仮設エレベータ17Bを延伸位置までの区間で稼働させて、両方の仮設エレベータ17A,17Bを使用して構造物1の施工を進行させる。
【0037】
次いで、図7(c)に示すように、さらに構造物1の施工が進み、所定の高さの床構造部11の施工が完了すると、他方の仮設エレベータ17Bを稼働させつつ、一方の仮設エレベータ17Aの運転範囲を延伸する。仮設エレベータ17Aの運転範囲を延伸する方法は、上述した仮設エレベータ17Bの運転範囲の延伸方法と同様である。このとき、他方の仮設エレベータ17Bをエレベータ吊り機10より下方の区間で稼働させた状態のままで、この一方の仮設エレベータ17Aの運転範囲の延伸作業を行うことができる。
【0038】
一方の仮設エレベータ17Aのレール部15を延長した後、開口空間12A内で延伸位置までエレベータ吊り機10を上昇させて配置する。上述の他方の仮設エレベータ17Bのエレベータ吊り機10と同様に、搬器13及びウエイト18を保持した状態で、伸縮脚部27を取り外すとともに、伸縮脚部27を収縮させて、エレベータ吊り機10の平面視における外形形状を開口空間12Aより小さく変形する。
【0039】
この状態で、エレベータ吊り機10を開口空間12A内で、他方の仮設エレベータ17Bのエレベータ吊り機10とは異なる高さの新たな延伸位置まで上昇させる。そして、再び伸縮脚部27を伸長させて復元して固定することで、エレベータ吊り機10を新たな延伸位置に配置して、一方の仮設エレベータ17Aの盛替えが完了する。
【0040】
この状態で、他方の仮設エレベータ17Bをエレベータ吊り機10より下方の区間で稼働させるとともに、一方の仮設エレベータ17Aを新たな延伸位置までの区間で稼働させて、両方の仮設エレベータ17A,17Bを使用しつつ構造物1の施工を進行させる。
【0041】
その後、図7(d)に示すように、一方の仮設エレベータ17Aと他方の仮設エレベータ17Bとの盛替えを交互に繰り返すことで、高層の構造物1を仮設エレベータ17A,17Bを使用しながら施工をすることができる。
【0042】
そして、仮設エレベータ17A,17Bの使用期間が終了したら、複数の開口空間12A,12Bのうちの本設エレベータ用の開口空間12Aに配置された仮設エレベータ17Aを撤去して本設エレベータを設置する。また、仮設エレベータ用の開口空間12Bに配置された仮設エレベータ17Bを撤去した後、開口空間12Bの各フロアの開口部12aを閉塞し、各フロアの開口部12a廻りの仕上げ工事を行う。
【0043】
以上のような、本実施形態の仮設エレベータ17の盛替え方法によれば、施工中の構造物に仮設エレベータ17(17A,17B)を複数設け、一部の仮設エレベータ17を稼働させつつ、他の仮設エレベータ17を延伸させることができるため、盛替え作業中であっても一部の仮設エレベータ17を使用して工事を進めることができ、仮設エレベータ17の盛替え作業により工事が中断することがなく、工事の施工効率が低下することを抑制できる。
【0044】
また、上記実施形態では、少なくとも一部の仮設エレベータ17のエレベータ吊り機10を、他の仮設エレベータ17のエレベータ吊り機10とは異なる高さの延伸位置となる異なるフロアに上昇させて配置している。そのため、フロア数を順次増加させる工事の進行において、一部の仮設エレベータ17の盛替え作業と他の仮設エレベータ17の盛替え作業とを異なるタイミングで異なるフロアで分散して実施することができる。そのため、仮設エレベータ17が全て停止することがなくなり、仮設エレベータ17の盛替え作業により工事が中断することを確実に防止することができる。結果として、構造物1の施工効率が低下することを抑制できる。
【0045】
さらに、上記実施形態では、複数の開口空間12A,12Bには本設エレベータ用シャフトが含まれていて、本設エレベータ用シャフト内にエレベータ吊り機10及び搬器13を配置して仮設エレベータ17を設置している。そのため、本設エレベータ用シャフトを利用して仮設エレベータ17を設置して稼働させることができ、施工中の構造物1に設ける仮設エレベータ用シャフトを減らす、あるいは、無くすことができる。これにより、開口空間12として各フロアに設けられて完成までに閉塞する必要のある開口部12aを少なくすることができ、工期短縮を図ることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、エレベータ吊り機10の平面視における外形形状を開口空間12(12A,12B)より小さく変形し、開口空間12内で上昇させ、変形を復元することで延伸位置に配置することができる。そのため、盛替え時にエレベータ吊り機10を上昇させて延伸位置に配置する作業の手間を簡略化でき、仮設エレベータ17の盛替え作業の作業効率を向上できる。
【0047】
なお、上記実施形態は、本発明の範囲内において適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、開口空間12A,12Bを2つ設けて2つの仮設エレベータ17A,17Bを構造物1に設置した例について説明したが、3つ以上の開口空間12を設けて3基以上の仮設エレベータを設けることも可能である。
【0048】
また、上記実施形態では、開口空間12Aを本設エレベータ用のシャフト、開口空間12Bを仮設エレベータ用のシャフト、として説明をしたが、全ての開口空間12が本設エレベータ用のシャフトであってもよいし、全ての開口空間12が仮設エレベータ用のシャフトであってもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、エレベータ吊り機10の平面視における外形形状を変形させるために架台部20の伸縮脚部27直線的に伸縮可能に構成した例について説明したが、それぞれ異なる方向に伸縮するものであってもよく、架台本体26に回動可能に装着された脚体により構成することも可能である。さらに伸縮脚部27以外の部位が変形可能であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 エレベータ吊り機
11 床構造部
12(12A,12B) 開口空間
12a 開口部
13 搬器
14 ワイヤロープ
15 レール部
16 シャフト区画壁
17(17A,17B) 仮設エレベータ
20 架台部
21 巻上機
22 トップシーブ
23 駆動装置
24 そらせ車
26 架台本体
27 伸縮脚部
27a 脚部本体
27b 脚体
27c 支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7