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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157831
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】磁気共鳴信号収集装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A61B5/055 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072433
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹島 秀則
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA13
4C096AB37
4C096AB38
4C096AB39
4C096AD06
4C096DC28
(57)【要約】
【課題】3軸局所励起による複数領域に対する信号収集法において、信号収集領域の位置の設定の自由度を向上しつつ信号収集時間を短縮すること。
【解決手段】
実施形態に係る磁気共鳴信号収集装置は、設定部と収集部とを有する。設定部は、3軸局所励起による信号収集対象である第1の収集領域と第2の収集領域とを、第1の収集領域が第2の収集領域のための第2の励起領域に3次元的に重複せず且つ第2の収集領域が第1の収集領域のための第1の励起領域に3次元的に重複しないように設定する。収集部は、第1の励起領域を選択的に励起して第1の磁気共鳴信号を収集し、第1の励起領域を再び励起する前に、第2の励起領域を選択的に励起して第2の磁気共鳴信号を収集する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3軸局所励起による信号収集対象である第1の収集領域と第2の収集領域とを、前記第1の収集領域が前記第2の収集領域のための第2の励起領域に3次元的に重複せず且つ前記第2の収集領域が前記第1の収集領域のための第1の励起領域に3次元的に重複しないように設定する設定部と、
前記第1の励起領域を選択的に励起して第1の磁気共鳴信号を収集し、前記第1の励起領域を再び励起する前に、前記第2の励起領域を選択的に励起して第2の磁気共鳴信号を収集する収集部と、
を具備する磁気共鳴信号収集装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記第1の収集領域と共に、前記第1の収集領域で3軸直交する3個の帯領域からなる前記第1の励起領域を設定し、前記第2の収集領域と共に、前記第2の収集領域で3軸直交する3個の帯領域からなる前記第2の励起領域を設定する、請求項1記載の磁気共鳴信号収集装置。
【請求項3】
前記第1の収集領域と前記第2の収集領域とを設定するためのユーザインタフェース画面を表示機器に表示する表示制御部を更に備え、
前記設定部は、前記ユーザインタフェース画面を介したユーザ指示に基づき前記第1の収集領域と前記第2の収集領域とを設定する、
請求項1記載の磁気共鳴信号収集装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、3次元的に特定の角度だけ傾いた前記第1の収集領域と前記第2の収集領域とを表示する、請求項3記載の磁気共鳴信号収集装置。
【請求項5】
前記ユーザインタフェース画面は、前記特定の角度を指定するためのGUI部品を有する、請求項4記載の磁気共鳴信号収集装置。
【請求項6】
前記設定部は、
前記ユーザインタフェース画面を介したユーザ指示に基づき前記第1の収集領域の位置と前記第2の収集領域の位置とを初期的に設定し、
前記第1の収集領域が前記第2の励起領域に重複し及び/又は前記第2の収集領域が前記第1の励起領域に重複する場合、前記第1の収集領域と前記第2の励起領域とが及び/又は前記第2の収集領域と前記第1の励起領域とが重複しないように、前記第1の収集領域及び/又は前記第2の収集領域の3次元的な傾き角度を自動的に調整する、
請求項3記載の磁気共鳴信号収集装置。
【請求項7】
前記設定部は、物理的な信号収集不可領域に対する前記第1の収集領域と前記第2の収集領域との設定を制限する、請求項3記載の磁気共鳴信号収集装置。
【請求項8】
前記信号収集不可領域は、前記第1の収集領域及び前記第2の収集領域各々を覆い、特定の幅を有する空間領域に設定される、請求項7記載の磁気共鳴信号収集装置。
【請求項9】
前記収集部は、前記第1の収集領域のための磁場不均一補正に関する第1の補正値と前記第2の収集領域のための磁場不均一補正に関する第2の補正値とを、前記第1の励起領域に対する磁場印加前と前記第2の励起領域に対する磁場印加前とに交互に切り替える、請求項1記載の磁気共鳴信号収集装置。
【請求項10】
前記収集部は、前記第1の補正値及び前記第2の補正値を、前記第1の励起領域及び前記第2の励起領域についての前記第1の磁気共鳴信号及び前記第2の磁気共鳴信号の収集シーケンスにおける水抑制パルスの印加前又はOVS(Outer Volume Suppression)パルスの印加に先立ち、又は直前の前記第2の励起領域及び前記第1の励起領域における前記第2の磁気共鳴信号及び前記第1の磁気共鳴信号の収集シーケンスにおける読出傾斜磁場の印加に後続するスポイラー傾斜磁場の印加に後続して切り替える、請求項9記載の磁気共鳴信号収集装置。
【請求項11】
前記収集部は、前記第1の収集領域のための水抑制に関する第1の制御値と前記第2の収集領域のための水抑制に関する第2の制御値とを、前記第1の励起領域に対する水抑制パルスの印加前と前記第2の励起領域に対する水抑制パルスの印加前とに交互に切り替える、請求項1記載の磁気共鳴信号収集装置。
【請求項12】
前記第1の制御値と前記第2の制御値とは、水抑制パルスのフリップアングル及び/又はパルス間隔である、請求項11記載の磁気共鳴信号収集装置。
【請求項13】
前記設定部は、前記第1の収集領域と前記第2の収集領域との双方に重ならない位置にOVS(Outer Volume Suppression)パルスの印加領域を設定する、請求項1記載の磁気共鳴信号収集装置。
【請求項14】
前記第1の磁気共鳴信号に基づいてケミカルシフト周波数毎の前記第1の磁気共鳴信号の信号強度の分布を表す第1のスペクトルを生成し、前記第2の磁気共鳴信号に基づいてケミカルシフト周波数毎の前記第2の磁気共鳴信号の信号強度の分布を表す第2のスペクトルを生成する生成部を更に備える、請求項1記載の磁気共鳴信号収集装置。
【請求項15】
前記第1の収集領域及び前記第2の収集領域各々は、単一のボクセル又は複数のボクセルにより規定される、請求項1記載の磁気共鳴信号収集装置。
【請求項16】
前記第1の収集領域及び前記第2の収集領域各々は、3次元の空間領域である、請求項1記載の磁気共鳴信号収集装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、磁気共鳴信号収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRスペクトロスコピー(MRS:magnetic resonance spectroscopic)は、関心ボクセル(VOI:volume of interest)と呼ばれる信号収集領域を3軸局所励起して磁気共鳴信号を収集している。1回の繰り返し時間(TR:time of repetition)は1500ms程度であり、64~128回程度TRが繰り返される。全体の信号収集時間は3~5分程度であり、比較的長いといえる。
【0003】
信号収集時間の短縮を目指したMRSの信号収集方法として、マルチスライス法を用いたMRSI(magnetic resonance spectroscopic imaging)による信号収集手法であるMUSCLE(multi slice localized excitation)が知られている。MUSCLEは、1回のTRにおいて、複数スライス各々についてOVS(outer volume suppression)のみを使用して信号を収集しているが、スライスの位置の自由度は限定的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-154619号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Alexander Gussew等、”MUSCLE: MUlti SliCe Localized Excitation 31P-MRS”、Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med. 25 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、3軸局所励起による複数領域に対する信号収集法において、信号収集領域の位置の自由度を向上しつつ信号収集時間を短縮することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る磁気共鳴信号収集装置は、設定部と収集部とを有する。前記設定部は、3軸局所励起による信号収集対象である第1の収集領域と第2の収集領域とを、前記第1の収集領域が前記第2の収集領域のための第2の励起領域に3次元的に重複せず且つ前記第2の収集領域が前記第1の収集領域のための第1の励起領域に3次元的に重複しないように設定する。前記収集部は、前記第1の励起領域を選択的に励起して前記第1の磁気共鳴信号を収集し、前記第1の励起領域を再び励起する前に、前記第2の励起領域を選択的に励起して第2の磁気共鳴信号を収集する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る磁気共鳴信号収集装置の構成例を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係るMRSパルスシーケンスの一例を示す図である。
図3図3は、収集領域及び励起領域の位置関係を3次元的に表す図である。
図4図4は、第2収集領域が第1収集領域の励起領域に重複する配置を3次元的に表す図である。
図5図5は、第2収集領域が第1収集領域の励起領域に重複しない配置を3次元的に表す図である。
図6図6は、磁気共鳴信号収集装置によるMRSの処理手順を示す図である。
図7図7は、ステップS1において表示される設定画面の一例を示す図である。
図8図8は、第2の設定例による第1収集領域及び第2収集領域の設定方法を示す図である。
図9図9は、第3の設定例による第1収集領域及び第2収集領域の設定画面I3を示す図である。
図10図10は、磁場不均一補正値の切り替えタイミングを例示する図である。
図11図11は、不均一磁場補正のために重畳されるオフセット磁場の印加タイミングを例示する図である。
図12図12は、水抑制制御値の切り替えタイミングを例示する図である。
図13図13は、OVSパルスの印加領域(OVS領域)と収集領域との位置関係を示す図である。
図14図14は、収集領域の大きさを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る磁気共鳴信号収集装置について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る磁気共鳴信号収集装置1の構成例を示す図である。図1に示すように、磁気共鳴信号収集装置1は、架台11、寝台13、傾斜磁場電源21、送信回路23、受信回路25、寝台駆動装置27、シーケンス制御回路29及びホストコンピュータ50を有する。
【0011】
架台11は、静磁場磁石41と傾斜磁場コイル43とを有する。静磁場磁石41と傾斜磁場コイル43とは架台11の筐体に収容されている。架台11の筐体には中空形状を有するボアが形成されている。架台11のボア内には送信コイル45と受信コイル47とが配置される。
【0012】
静磁場磁石41は、中空の略円筒形状を有し、略円筒内部に静磁場を発生する。静磁場磁石41としては、例えば、永久磁石、超伝導磁石または常伝導磁石等が使用される。ここで、静磁場磁石41の中心軸をZ軸に規定し、Z軸に対して鉛直に直交する軸をY軸に規定し、Z軸に水平に直交する軸をX軸に規定する。X軸、Y軸及びZ軸は、直交3次元座標系を構成する。
【0013】
傾斜磁場コイル43は、静磁場磁石41の内側に取り付けられ、中空の略円筒形状に形成されたコイルユニットである。傾斜磁場コイル43は、傾斜磁場電源21からの電流の供給を受けて傾斜磁場を発生する。より詳細には、傾斜磁場コイル43は、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸に対応する3つのコイルを有する。当該3つのコイルは、X軸、Y軸、Z軸の各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を形成する。X軸、Y軸、Z軸の各軸に沿う傾斜磁場は合成されて互いに直交するスライス選択傾斜磁場Gs、位相エンコード傾斜磁場Gp及び周波数エンコード傾斜磁場Grが所望の方向に形成される。スライス選択傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面(スライス)を決めるために利用される。位相エンコード傾斜磁場Gpは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号(以下、MR信号と呼ぶ)の位相を変化させるために利用される。周波数エンコード傾斜磁場Grは、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。なお、以下の説明においてスライス選択傾斜磁場Gsの傾斜方向はZ軸、位相エンコード傾斜磁場Gpの傾斜方向はY軸、周波数エンコード傾斜磁場Grの傾斜方向はX軸であるとする。
【0014】
傾斜磁場電源21は、シーケンス制御回路29からのシーケンス制御信号に従い傾斜磁場コイル43に電流を供給する。傾斜磁場電源21は、傾斜磁場コイル43に電流を供給することにより、X軸、Y軸及びZ軸の各軸に沿う傾斜磁場を傾斜磁場コイル43により発生させる。当該傾斜磁場は、静磁場磁石41により形成された静磁場に重畳されて被検体Pに印加される。
【0015】
送信コイル45は、例えば、傾斜磁場コイル43の内側に配置され、送信回路23から電流の供給を受けて高周波パルス(以下、RFパルスと呼ぶ)を発生する。
【0016】
送信回路23は、被検体P内に存在する対象プロトンを励起するためのRFパルスを、送信コイル45を介して被検体Pに印加するために、送信コイル45に電流を供給する。RFパルスは、対象プロトンに固有の共鳴周波数で振動し、対象プロトンを励起させる。励起された対象プロトンからMR信号が発生され、受信コイル47により検出される。送信コイル45は、例えば、全身用コイル(WBコイル)である。全身用コイルは、送受信コイルとして使用されても良い。
【0017】
受信コイル47は、RFパルスの作用を受けて被検体P内に存在する対象プロトンから発せられるMR信号を受信する。受信コイル47は、MR信号を受信可能な複数の受信コイルエレメントを有する。受信されたMR信号は、有線又は無線を介して受信回路25に供給される。図1に図示しないが、受信コイル47は、並列的に実装された複数の受信チャネルを有している。受信チャネルは、MR信号を受信する受信コイルエレメント及びMR信号を増幅する増幅器等を有している。MR信号は、受信チャネル毎に出力される。受信チャネルの総数と受信コイルエレメントの総数とは同一であっても良いし、受信チャネルの総数が受信コイルエレメントの総数に比して多くてもよいし、少なくてもよい。
【0018】
受信回路25は、励起された対象プロトンから発生されるMR信号を、受信コイル47を介して受信する。受信回路25は、受信されたMR信号を信号処理してデジタルのMR信号を発生する。デジタルのMR信号は、空間周波数により規定されるk空間にて表現することができる。以下、デジタルのMR信号をk空間データと呼ぶことにする。k空間データは、MR信号の信号強度値を時間関数で表すデジタルデータである。k空間データは、有線又は無線を介してホストコンピュータ50に供給される。
【0019】
なお、上記の送信コイル45と受信コイル47とは一例に過ぎない。送信コイル45と受信コイル47との代わりに、送信機能と受信機能とを備えた送受信コイルが用いられても良い。また、送信コイル45、受信コイル47及び送受信コイルが組み合わされても良い。
【0020】
架台11に隣接して寝台13が設置される。寝台13は、天板131と基台133とを有する。天板131には被検体Pが載置される。基台133は、天板131をX軸、Y軸、Z軸各々に沿ってスライド可能に支持する。基台133には寝台駆動装置27が収容される。寝台駆動装置27は、シーケンス制御回路29からの制御を受けて天板131を移動する。寝台駆動装置27は、例えば、サーボモータやステッピングモータ等の如何なるモータ等を含んでも良い。
【0021】
シーケンス制御回路29は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)あるいはMPU(Micro Processing Unit)のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。シーケンス制御回路29は、処理回路51の設定機能511により設定された信号収集条件に基づいて傾斜磁場電源21、送信回路23及び受信回路25を同期的に制御して、被検体Pから発せられるMR信号を収集する。シーケンス制御回路29は、収集部の一例である。
【0022】
本実施形態に係るシーケンス制御回路29は、ケミカルシフト計測の一種であるMRスペクトロスコピー(以下、MRSともいう)のための信号収集を実行する。ケミカルシフト計測は、化学的環境の違いに応じて生じる、水素原子核等の対象プロトンの共鳴周波数の微小な差異であるケミカルシフトを計測する技術である。ケミカルシフト値毎のMR信号強度を解析することにより収集対象領域に含まれる代謝物の物質量を計測することが可能である。
【0023】
シーケンス制御回路29は、信号収集条件に基づくMRSパルスシーケンスに従い、被検体P内に設定された収集対象領域に対する信号収集を実行する。MRSパルスシーケンスを実行することにより被検体Pの体内から自由誘導減衰(FID:Free induction decay)信号又はスピンエコー信号等のMR信号が発生される。受信回路25は、受信コイル47を介してMR信号を受信し、受信されたMR信号を信号処理して、測定対象に関するデータを収集する。
【0024】
図1に示すように、ホストコンピュータ50は、処理回路51、メモリ52、ディスプレイ53、入力インタフェース54及び通信インタフェース55を有するコンピュータである。処理回路51、メモリ52、ディスプレイ53、入力インタフェース54及び通信インタフェース55間のデータ通信は、バスを介して行われる。
【0025】
処理回路51は、ハードウェア資源としてCPU等のプロセッサを有する。処理回路51は、磁気共鳴信号収集装置1の中枢として機能する。例えば、処理回路51は、各種プログラムの実行により設定機能511、収集機能512、生成機能513及び表示制御機能514を実現する。
【0026】
設定機能511により処理回路51は、本実施形態に係るMRSの信号収集条件を設定する。信号収集条件としては、一例として、収集領域及び当該収集領域に付随する励起領域の位置が挙げられる。本実施形態に係る収集領域及び励起領域各々は、2個以上設定される。具体的には、処理回路51は、3軸局所励起による信号収集対象である第1収集領域と第2収集領域とを、第1収集領域が第2収集領域のための第2励起領域に3次元的に重複せず且つ前記第2収集領域が第1収集領域のための第1励起領域に3次元的に重複しないように設定する。処理回路51は、第1収集領域と共に、第1収集領域で3軸直交する3個の帯領域からなる第1励起領域を設定し、第2収集領域と共に、第2収集領域で3軸直交する3個の帯領域からなる第2励起領域を設定する。なお、本実施形態において設定可能な収集領域の個数は2個に限定されず、3個以上でもよい。
【0027】
信号収集条件は、収集領域及び励起領域の位置の他、MRSの基本シーケンスの種類、磁場不均一補正の補正値、水抑制の制御値、OVS、繰り返し時間(TR)、エコー時間(TE)、積算回数(NEX:number of excitation)、スペクトル幅、サンプリング数、領域選択パルス等の条件項目がある。撮像条件は、ユーザにより手動的に又はアルゴリズムに従い自動的に設定されればよい。
【0028】
収集機能512により処理回路51は、設定機能511により設定された信号収集条件に基づくMRスペクトロスコピーの実行を、シーケンス制御回路29に指令する。シーケンス制御回路29は、処理回路51からの指令に従いMRスペクトロスコピーを実行する。MRスペクトロスコピーにおいてシーケンス制御回路29は、第1収集領域に対する信号収集と第2収集領域に対する信号収集とを交互に繰り返す。この際、シーケンス制御回路29は、第1励起領域を選択的に励起して第1MR信号を収集し、第1励起領域を再び励起する前に、第2励起領域を選択的に励起して第2MR信号を収集する。第1MR信号は第1収集領域から発生されると期待されるMR信号を、第2MR信号は第2収集領域から発生されると期待されるMR信号を意味する。第1及び第2MR信号は、受信回路25により受信され、デジタル変換される。デジタル変換後の第1及び第2MR信号は、処理回路51に伝送される。処理回路51は、受信回路25から伝送された第1及び第2MR信号を取得する。収集機能512は収集部の一例である。
【0029】
生成機能513により処理回路51は、収集機能512により収集された第1MR信号に基づいて、ケミカルシフト周波数毎の第1MR信号の信号強度の分布を表す第1スペクトルを生成し、第2MR信号に基づいてケミカルシフト周波数毎の第2MR信号の信号強度の分布を表す第2スペクトルを生成する。更に処理回路51は、第1及び第2スペクトルに基づいて第1及び第2収集領域に含まれる代謝物の物質量の絶対値及び/又は相対値等を推定してもよい。生成機能513は生成部の一例である。
【0030】
表示制御機能514により処理回路51は、種々の情報をディスプレイ53等の表示機器に表示する。一例として処理回路51は、収集領域及び/又は励起領域の設定画面を表示する。表示制御機能514は表示制御部の一例である。
【0031】
メモリ52は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、メモリ52は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬型記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。
【0032】
ディスプレイ53は、表示制御機能514による制御に従い種々の情報を表示する。ディスプレイ53としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
【0033】
入力インタフェース54は、ユーザからの各種指令を受け付ける入力機器を含む。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ、タッチスクリーン、タッチパッド等が利用可能である。なお、入力機器は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限らない。例えば、磁気共鳴信号収集装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、受け取った電気信号を種々の回路へ出力するような電気信号の処理回路も入力インタフェース54の例に含まれる。また、入力インタフェース54は、マイクロフォンにより収集された音声信号を指示信号に変換する音声認識装置でもよい。
【0034】
通信インタフェース55は、LAN(Local Area Network)等を介して磁気共鳴信号収集装置1と、ワークステーションやPACS(Picture Archiving and Communication System)、HIS(Hospital Information System)、RIS(Radiology Information System)等とを接続するインタフェースである。通信インタフェース55は、各種情報を接続先のワークステーション、PACS、HIS及びRISとの間で送受信する。
【0035】
次に、本実施形態に係る磁気共鳴信号収集装置1の動作例について説明する。まず、本実施形態に係るMRSパルスシーケンスについて説明する。なお、本実施形態に係るMRSは2個以上の収集領域に対して信号収集を実施するが、収集領域の個数は一例として2個であることを想定する。収集領域の個数が3個以上である場合にも2個の例に倣い同様に実施可能である。
【0036】
図2は、本実施形態に係るMRSパルスシーケンスの一例を示す図である。図2に示すように、本実施形態に係るMRSパルスシーケンスでは、第1収集領域に対する信号収集と第2収集領域に対する信号収集とが交互に繰り返される。各収集領域に対するパルスシーケンスは、水抑制及びOVSのための事前処理部61と、当該事前処理部61に後続する信号収集部62とを含む。事前処理部61は、収集領域に含まれる自由水の信号を抑制するための水抑制シーケンスと、OVS領域からの信号を抑制するためのOVSのためのOVSシーケンスとを含む。
【0037】
信号収集部62では、MRSパルスシーケンスの基本シーケンスが実施される。基本シーケンスとしては、PRESS(Point resolved spectroscopy)、STEAM(Stimulated echo acquisition mode)、LASER(Localization by adiabatic selective refocusing)、semi-LASER、SPECIAL(spin-echo full-intensity acquired localized spectroscopy)及びこれらの発展法その他の手法が使用されればよい。具体的には、信号収集部62は、収集領域を選択するためのローカライザ部と、MR信号を収集するリードアウト部とを含む。ローカライザ部では、Z軸方向に領域選択するための傾斜磁場パルスと当該傾斜磁場パルスに重畳した90度励起パルスとが印加され、次にY軸方向に領域選択するための傾斜磁場パルスと当該傾斜磁場パルスに重畳した180度再収束パルスとが印加され、次にX軸方向に領域選択するための傾斜磁場パルスと当該傾斜磁場パルスに重畳した180度再収束パルスとが印加される。90度励起パルスにより励起される励起領域、1番目の180度再収束パルスにより励起される励起領域及び2番目の180度再収束パルスにより励起される励起領域に交差する3次元の空間領域が収集領域である。このような領域選択操作は、3軸局所励起と呼ばれる。
【0038】
リードアウト部では、リードアウト傾斜磁場の印加と共に受信回路25によりMR信号が受信される。MR信号の受信後、X軸、Y軸及びZ軸方向各々に対してスポイラーパルスが印加され、励起領域に残留する磁化が低減される。
【0039】
図2に示すように、第1収集領域に対する信号収集と第2収集領域に対する信号収集とが交互に繰り返される。第1収集領域に対する信号収集後、第1収集領域に付随する第1励起領域において飽和した磁化が完全に回復する前に、第2収集領域に対する信号収集が行われる。第2収集領域に対する信号収集後、第2収集領域に付随する第2励起領域において飽和した磁化が完全に回復する前に、第1収集領域に対する信号収集が行われる。これにより、第1収集領域に対する信号収集と第2収集領域に対する信号収集との信号収集時間を短縮する。本実施形態に係る信号収集法によれば、第1収集領域に対する信号収集時間と第2収集領域に対する信号収集時間との和に相当する時間がTRとなる。
【0040】
次に、本実施形態に係る収集領域及び励起領域について説明する。
【0041】
図3は、収集領域V0及び励起領域E0の位置関係を3次元的に表す図である。収集領域V0は、3軸局所励起により選択される、MR信号の収集対象の空間領域である。収集領域V0は、単一のボクセル(シングルボクセル)により規定されるものとする。収集領域V0は、VOI(volume of interest)とも呼ばれる。励起領域E0は、収集領域V0を空間的に選択するために3軸局所励起される帯状(スラブ状)の空間領域である。具体的には、励起領域E0は、スライス選択傾斜磁場の傾斜方向Zに関するスラブ状の励起領域E0Z、位相エンコード傾斜磁場の傾斜方向Yに関するスラブ状の励起領域E0Y、リードアウト傾斜磁場の傾斜方向Xに関するスラブ状の励起領域E0Xを有する。励起領域E0Z、E0Y及びE0Xが交差する3次元空間領域が収集領域V0に設定される。
【0042】
次に、複数の収集領域を設定するときの問題点について説明する。図4は、第2収集領域V2が第1収集領域V1の励起領域E1Xに重複する配置を3次元的に表す図である。図4に示すように、収集領域V1のX方向に関する励起領域E1Xに第2収集領域V2が一部重なっていることを想定する。上記の通り、信号収集時においては、第1収集領域V1に対する信号収集と第2収集領域V2に対する信号収集とが交互に繰り返し行われるので、励起領域E1Xは第2収集領域V2に対する信号収集に先立ち励起されることとなる。励起領域E1Xに重複する第2収集領域V2に関する第2MR信号の収集時点において、励起領域E1X内に磁化が残留する場合、第2MR信号の信号強度は、磁化が残留しない場合に比して低減する。すなわち、ある収集領域が他の収集領域に付随する励起領域に重畳している場合、正確な強度のMR信号を収集することができないおそれがある。
【0043】
図5は、第2収集領域V2が第1収集領域V1の励起領域E1に重複しない配置を3次元的に表す図である。図5に示すように、第1収集領域V1と第2収集領域V2とは、図4と同様の位置関係にあるものとする。すなわち、第2収集領域V2は、励起領域E1XがX軸に平行に配置される場合において当該励起領域E1Xに重複する位置に配置され、第1収集領域V1は、励起領域E2XがX軸に平行に配置される場合において当該励起領域E2Xに重複する位置に配置されている。
【0044】
図5に示すように、設定機能511の実現により、処理回路51は、3軸局所励起による信号収集対象である第1収集領域V1と第2収集領域V2とを、第1収集領域V1が第2収集領域V2のための第2励起領域E2X,E2Y,E2Zに3次元的に重複せず且つ第2収集領域V2が第1収集領域V1のための第1励起領域E1X,E1Y,E1Zに、2次元的にではなく、3次元的に重複しないように設定する。具体的には、第1励起領域E1X,E1Y,E1Z及び/又は第2励起領域E2X,E2Y,E2Zを、初期3次元角度から3次元的に特定3次元角度に回転(オブリーク)させることにより、第1収集領域V1を第2励起領域E2X,E2Y,E2Zに、第2収集領域V2を第1励起領域E1X,E1Y,E1Zに重複なく配置する。
【0045】
「3次元角度」は、X軸に対する角度、Y軸に対する角度及びZ軸に対する角度の組合せで規定される。「初期3次元角度」は、初期的に設定された3次元角度を意味し、例えば、X軸に対する角度、Y軸に対する角度及びZ軸に対する角度各々が0度を意味する。「特定3次元角度」は、第1収集領域V1を第2励起領域E2X,E2Y,E2Zに、第2収集領域V2を第1励起領域E1X,E1Y,E1Zに重複なく配置可能な3次元角度(以下、非重複角度)の中から任意に選択されればよい。非重複角度は、初期3次元角度から所定3次元角度ずつ又はランダムに探索する手法でもよいし、ベイズ最適化等の任意の最適化手法を用いてもよいし、あるいは、人手により指定された3次元角度の中から探索する手法でもよい。「特定3次元角度」はオブリーク角度ともいう。
【0046】
第1収集領域V1を第2励起領域E2X,E2Y,E2Zに、第2収集領域V2を第1励起領域E1X,E1Y,E1Zに重複なく、第1収集領域V1と第2収集領域V2とを設定することにより、第2励起領域E2X,E2Y,E2Zの励起による磁化飽和に伴う第1MR信号の信号消失と第1励起領域E1X,E1Y,E1Zの励起による磁化飽和に伴う第2MR信号の信号消失とを低減することが可能になる。
【0047】
次に、本実施形態に係る磁気共鳴信号収集装置1の動作例について説明する。図6は、磁気共鳴信号収集装置1によるMRSの処理手順を示す図である。図6に示すように、処理回路51は、設定機能511の実現により、第1収集領域及び第2収集領域を設定する(ステップS1)。ステップS1において処理回路51は、ユーザインタフェース画面(以下、設定画面)を介して第1収集領域及び第2収集領域を設定する。設定画面は、処理回路51の表示制御機能514によりディスプレイ53に表示される。処理回路51は、ユーザインタフェース画面を介したユーザ指示に基づき第1収集領域と第2収集領域とを設定する。処理回路51は、第1収集領域と共に、第1収集領域で3軸直交する3個の帯領域からなる第1励起領域を設定し、第2収集領域と共に、第2収集領域で3軸直交する3個の帯領域からなる第2励起領域を設定する。なお、第1及び第2励起領域は第1及び第2収集領域の位置及びオブリーク角度に応じて決定され、換言すれば、第1及び第2収集領域は第1及び第2励起領域の位置及びオブリーク角度に応じて決定される。以下の説明においては、特に言及のない限り、第1及び第2収集領域の位置及びオブリーク角度に応じて第1及び第2励起領域がそれぞれ決定されるものとする。
【0048】
図7は、設定画面I1の一例を示す図である。図7に示すように、設定画面I1には、MR画像I11、表示枠I12、表示枠I13及び設定ボタンI14が表示される。MR画像I11としては、収集領域設定用の画像として予め生成された任意のMR画像が表示されればよい。図7では、MR画像I11として、頭部のアキシャル断面(XY断面)画像が例示されている。MR画像I11には、第1収集領域を表すマーク(以下、第1VOIマーク)I111と第2収集領域を表すマーク(以下、第2VOIマーク)I112とが重畳される。また、MR画像I11には、第1収集領域に付随する第1励起領域を表すマーク(以下、第1励起領域マーク)I113と第2収集領域に付随する第2励起領域を表すマーク(以下、第2励起領域マーク)I114とが重畳されてもよい。第1VOIマークI111、第2VOIマークI112、第1励起領域マークI113及び第2励起領域マークI114は、入力インタフェース54を介して移動、回転、拡大及び縮小可能である。なお、MR画像I11は、断面画像に限定されず、ボリュームレンダリング画像が表示されてもよい。この場合、各種マークI111、I112、I113及びI114は、3次元的に表示されることとなる。
【0049】
表示枠I12には、第1収集領域(第1VOI)に付随する第1励起領域のオブリーク角度が表示される。表示枠I13には、第2収集領域(第2VOI)に付随する第2励起領域のオブリーク角度が表示される。図7では、一例として、第1励起領域及び第2収集領域のオブリーク角度は、共に、X軸、Y軸及びZ軸に対して35度である。表示枠I12及び表示枠I13に表示されるオブリーク角度は、入力インタフェース54を介して任意に変更可能である。表示枠I12及び表示枠I13へのオブリーク角度の変更操作に連動して、第1VOIマークI111及び第2VOIマークI112が回転する。設定ボタンI14は、設定画面I1における第1収集領域及び第2収集領域の位置及びオブリーク角度を確定させるためのGUI部品である。設定ボタンI14が入力インタフェース54を介して操作者により押下された場合、処理回路51は、MR画像I11に重畳されている第1VOIマークI111、第2VOIマークI112、第1励起領域マークI113及び第2励起領域マークI114の位置及びオブリーク角度に基づき、第1収集領域、第2収集領域、第1励起領域及び第2励起領域の3次元的な位置及びオブリーク角度を決定する。
【0050】
ここで、第1収集領域及び第2収集領域の設定の具体例について説明する。第1の設定例として処理回路51は、オブリーク角度を初期的に制限し、当該制限内において第1収集領域及び第2収集領域を設定する。具体的には、まず処理回路51は、任意のアルゴリズム又は操作者の指定角度に従い初期的なオブリーク角度を決定する。
【0051】
次に処理回路51は、図7に示すように、決定されたオブリーク角度だけ3次元的に傾いた第1収集領域と第2収集領域とを表示する。具体的には、処理回路51は、第1初期位置に第1収集領域を表す第1VOIマーク及び第1励起領域マークを表示し、第2初期位置に第2収集領域を表す第2VOIマーク及び第2励起領域マークを表示する。この際、処理回路51は、第1VOIマーク、第1励起領域マーク、第2VOIマーク及び第2励起領域マークを、決定された初期的なオブリーク角度だけ傾けて表示する。操作者は、第1及び第2VOIマークを操作することにより第1及び第2収集領域の位置を任意に変更可能である。また、操作者は、表示枠I12内の数値を任意値に変更することにより第1励起領域のオブリーク角度を、表示枠I13内の数値を任意値に変更することにより第2励起領域のオブリーク角度を事後的に変更可能である。入力インタフェース54を介して設定ボタンI14が押下されることにより、処理回路51は、押下時点での第1VOIマーク、第1励起領域マーク、第2VOIマーク及び第2励起領域マークの位置及びオブリーク角度に対応する第1収集領域、第1励起領域、第2収集領域及び第2励起領域を設定する。
【0052】
次に、第2の設定例について説明する。第2の設定例において処理回路51は、設定画面を介したユーザ指示に基づき第1収集領域の位置と第2収集領域の位置とを初期的に設定し、第1収集領域が第2励起領域に重複し及び/又は第2収集領域が第1励起領域に重複する場合、第1収集領域と第2励起領域とが及び/又は第2収集領域と第1励起領域とが重複しないように、第1収集領域及び/又は第2収集領域のオブリーク角度を自動的に調整する。
【0053】
図8は、第2の設定例による第1収集領域及び第2収集領域の設定方法を示す図である。図8の左図に示すように、初期的な第1収集領域、第1励起領域、第2収集領域及び第2励起領域にそれぞれ対応する第1VOIマークI211、第1励起領域マークI213、第2VOIマークI212及び第2励起領域マークI214がMR画像I21に表示される。初期的なオブリーク角度において、第1VOIマークI211が第2励起領域マークI214に重畳し且つ第2VOIマークI212が第1励起領域マークI213に重畳するように、第1収集領域の位置(第1位置)と第2収集領域の位置(第2位置)とが指定されているとする。
【0054】
処理回路51は、第1収集領域の第1位置と第2収集領域の第2位置とが指定された場合、初期3次元角度のもと、第1収集領域が第2励起領域に重畳し及び/又は第2収集領域が第1励起領域に重畳するか否かを判定する。重畳しないと判定された場合、処理回路51は、初期3次元角度を第1収集領域及び第2収集領域の最終的なオブリーク角度に設定する。一方、重畳すると判定された場合、処理回路51は、指定された第1位置及び第2位置において第1収集領域が第2励起領域に重畳せず且つ第2収集領域が第1励起領域に重畳しない3次元角度(許容角度)を探索し、許容角度を第1収集領域及び第2収集領域の最終的なオブリーク角度に設定する。許容角度が複数個存在する場合、任意の許容角度が最終的なオブリーク角度に設定されればよい。図8の右図に示すように、最終的なオブリーク角度に応じた第1VOIマークI211、第1励起領域マークI213、第2VOIマークI212及び第2励起領域マークI214がMR画像I22に表示される。
【0055】
次に第3の設定例について説明する。各収集領域の近傍領域は当該収集領域に対する励起に強い影響を受けるので、当該近傍領域から本来の信号強度のMR信号を収集する事は期待できない。このような本来の信号強度のMR信号の収集を期待できない空間領域は、物理的な信号収集不可領域として管理されることは望ましい。第3の設定例において処理回路51は、物理的な信号収集不可領域に対する第1収集領域と第2収集領域との設定を制限する。信号収集不可領域は、第1収集領域及び第2収集領域各々を覆い、特定の幅を有する空間領域に設定される。
【0056】
図9は、第3の設定例による第1収集領域及び第2収集領域の設定画面I3を示す図である。図9に示すように、設定画面I3には、MR画像I31、表示枠I32、表示枠I33、設定ボタンI34及び表示枠I35が表示される。MR画像I31、表示枠I32、表示枠I33及び設定ボタンI34は、それぞれ図7のMR画像I11、表示枠I12、表示枠I13及び設定ボタンI14と同様である。なお、図9において第1励起領域及び第2励起領域のオブリーク角度は0度であるとする。
【0057】
図9に示すように、処理回路51は、第1収集領域の位置が指定された場合、当該指定された位置に第1VOIマークI311を表示する。これに並行して処理回路51は、第1収集領域に起因する信号収集不可領域を特定し、信号収集不可領域を示すマーク(以下、収集不可領域マーク)I313を表示する。信号収集不可領域は第1収集領域を包含し、信号収集不可領域の幅は、例えば、第1収集領域の幅の1/5程度に設定されればよい。信号収集不可領域の幅は、任意の値に設定可能である。処理回路51は、信号収集不可領域内に対する他の収集領域の設定を制限する。具体的には、処理回路51は、第1収集領域に起因する信号収集不可領域に重畳しない領域に第2収集領域の設定を制限する。例えば、処理回路51は、収集不可領域マークI313内に第2収集領域の位置が指定された場合、「設定できません」等の警告メッセージを表示枠I35に表示し、収集不可領域マーク外の位置を指定するよう操作者に促す。収集不可領域マークI313が表示されることにより、操作者は、収集不可領域マークI313に対する第2VOIマークI312の位置を視認できる。なお、処理回路51は、第2収集領域の信号収集不可領域を設定してもよい。この場合、第2収集領域に起因する信号収集不可領域に重畳しない領域に第1収集領域の設定が制限される。
【0058】
ステップS1においては、第1収集領域、第2収集領域、第1励起領域及び第2励起領域の他、他の信号収集条件についても、自動的又は手動的に設定される。そして処理回路51は、設定された信号収集条件に基づきMRSパルスシーケンスを構築する。
【0059】
ステップS1が行われると処理回路51は、収集機能512の実現により、第1収集領域及び第2収集領域に対する3軸局所励起により第1MR信号及び第2MR信号を収集する(ステップS2)。具体的には、処理回路51は、第1収集領域及び第2収集領域に対する3軸局所励起を行うためのMRSパルスシーケンスをシーケンス制御回路29に伝送し、シーケンス制御回路29は、MRSパルスシーケンスに従い傾斜磁場電源21、送信回路23及び受信回路25を同期的に制御して、被検体Pから発せられるMR信号を収集する。なお、MRSにおいては、第1収集領域及び第2収集領域に対する3軸局所励起による信号収集(本スキャン)の前に種々の事前スキャンが行われる。シーケンス制御回路29による、典型的なMRSによる信号収集手順は下記の通りである。
【0060】
1.まず、収集領域に合わせたシミングが行われる。1次以上の磁場不均一補正キャリブレーション用データが収集される。シミングは、一例として、2次元又は3次元のマルチエコーSPGR(spoiled gradient echo)、FASTMAP(fast automatic shimming technology by mapping along projections)、FASTESTMAP(fast automatic shimming technology using echo-planar signal readout for mapping along projections)等の手法により行われればよい。
【0061】
2.次に、収集領域に合わせた中心周波数スキャン(center-frequency scan)が行われる。当該スキャンにより、共鳴周波数(上記の0次補正値)推定用キャリブレーションデータが収集される。
【0062】
3.次に、収集領域に合わせた水抑制キャリブレーションスキャン(water-saturation calibration scan)が行われる。当該スキャンにより、水抑制の性能を最大化する水抑制シーケンス調整用データが収集される。水抑制キャリブレーションスキャンとしては、WET(water suppression enhanced through T1 effects)、VAPOR(variable power and optimized relaxations delays)その他の任意の手法により行うことが可能である。
【0063】
4.次に、収集領域に合わせた水参照スキャン(water-reference scan)が行われる。当該スキャンにより、装置出力参照データが収集される。装置出力参照データは、水抑制のRFの強度をゼロとしたサンプルを意味する。
【0064】
5.そして、収集領域に合わせた本スキャン(main scan)が行われる。当該スキャンにより、装置出力サンプルが収集される。装置出力サンプルは、スペクトル解析に使用するサンプルである第1MR信号及び第2MR信号を意味する。本スキャンにおいてシーケンス制御回路29は、図2に示すパルスシーケンスに従い、第1励起領域を選択的に励起して第1MR信号を収集し、第1励起領域を再び励起する前に、第2励起領域を選択的に励起して第2MR信号を収集する。なお、第1及び第2励起領域をオブリークする場合、RFパルス照射中のGx、Gy及びGzを、第1及び第2励起領域をオブリークする方向に合わせて回転させる。本スキャンは、積算回数(NEX)だけ繰り返される。
【0065】
MRスペクトロスコピーにおいて収集される装置出力サンプル(第1MR信号及び第2MR信号)は、収集領域に対するキャリブレーションに強く依存する。すなわち、収集領域に特化した磁場不均一補正や水抑制性能の最大化を行う必要がある。そこでシーケンス制御回路29は、第1収集領域と第2収集領域とで磁場不均一補正値と水抑制制御値とを動的に切り替える。
【0066】
まず磁場不均一補正値の切り替えについて説明する。処理回路51は、設定機能511により、1次以上の磁場不均一補正キャリブレーション用データと共鳴周波数推定用キャリブレーションデータとに基づいて、第1収集領域及び第2収集領域各々について磁場不均一補正値を算出する。具体的には、処理回路51は、1次又は2次の磁場の強度を決める係数として磁場不均一補正値を算出する。算出方法は、特に限定されないが、最小二乗法等が用いられればよい。1次の磁場の強度としてはGx、Gy及びGzの3成分が挙げられ、2次の磁場の強度としてはGzGx、GxGy、GyGz、(GzGz-0.5*(GxGx+GyGy))、GxGx-GyGyの5成分が挙げられる。シーケンス制御回路29は、算出された磁場不均一補正値を、信号収集する収集領域に合わせて動的に切り替える。なお、1次の磁場の強度のための磁場不均一補正値のみが使用されてもよいし、3次以上の磁場の強度のための磁場不均一補正値が使用されてもよい。
【0067】
図10は、磁場不均一補正値の切り替えタイミングを例示する図である。図10に示すMRSパルスシーケンスは図2と同様である。上記の通り、シーケンス制御回路29は、第1収集領域のための信号収集と第2収集領域のための信号収集とを交互に繰り返す。なお、第1及び第2励起領域をオブリークする場合、RFパルス照射中のGx、Gy及びGzを、第1及び第2励起領域をオブリークする方向に合わせて回転させる。シーケンス制御回路29は、第1収集領域のための磁場不均一補正に関する第1補正値と第2収集領域のための磁場不均一補正に関する第2補正値とを、第1励起領域に対する磁場印加前と第2励起領域に対する磁場印加前とに交互に切り替える。これにより各収集領域に適した磁場不均一補正で信号収集をすることができ、収集したMR信号及び当該MR信号に基づくスペクトルの精度の向上が期待される。
【0068】
図10に示すように、磁場不均一補正値の切り替えタイミングは2種類想定される。第1切り替えタイミングでは、第1励起領域に対する第1MR信号の収集シーケンス(以下、第1収集シーケンス)における水抑制パルス又はOVSパルスの印加に先立ち、磁場不均一補正値が第1補正値に切り替えられる。同様に、第2励起領域に対する第2MR信号の収集シーケンス(以下、第2収集シーケンス)における水抑制パルス又はOVSパルスの印加に先立ち、磁場不均一補正値が第2補正値に切り替えられる。第2切り替えタイミングでは、第1収集シーケンスの直前に行われる第2収集シーケンスにおけるリードアウト傾斜磁場の印加に後続するスポイラー傾斜磁場の印加に後続して、磁場不均一補正値が第1補正値に切り替えられる。同様に、第2収集シーケンスの直前に行われる第1収集シーケンスにおけるリードアウト傾斜磁場の印加に後続するスポイラー傾斜磁場の印加に後続して、磁場不均一補正値が第2補正値に切り替えられる。
【0069】
図11は、不均一磁場補正のために重畳されるオフセット磁場の印加タイミングを例示する図である。図11に示すように、「CF」は、中心周波数F0に関するオフセット磁場の強度[Hz]を表す。中心周波数F0は静磁場B0を調整するために調整される。「ΔGx」は1次のX方向磁場に関するオフセット磁場の磁場勾配[Hz/m]、「ΔGy」は1次のY方向磁場に関するオフセット磁場の磁場勾配[Hz/m]、「ΔGz」は1次のZ方向磁場に関するオフセット磁場の磁場勾配[Hz/m]を表す。なお[Hz]を「mT」や「G」で表すことも可能である。オフセット磁場の磁場勾配の強度は、磁場不均一補正値に応じて決まり、一例として、傾斜磁場の磁場勾配の強度に比して1/10や1/100程度の小さい値を有する。
【0070】
図11に示すように、中心周波数F0に関するオフセット磁場は、ローカライザ部における90度励起パルス、1番目の180度再収束パルス及び番目の180度再収束パルスの各々に重畳される。1次のX方向磁場に関するオフセット磁場は、リードアウト傾斜磁場パルスに重畳され、1次のY方向磁場に関するオフセット磁場は、位相エンコード傾斜磁場パルスに重畳され、1次のZ方向磁場に関するオフセット磁場は、スライス選択傾斜磁場パルスに重畳される。
【0071】
次に水抑制制御値の切り替えについて説明する。処理回路51は、設定機能511により、水抑制シーケンス調整用データに基づいて、第1収集領域及び第2収集領域各々について水抑制制御値を算出する。水抑制制御値は、水抑制パルスのフリップアングル及び/又はパルス間隔により規定される。
【0072】
水抑制制御値は、例えば、以下の手順に従い算出される。まず、シーケンス制御回路29は、第1収集領域及び第2収集領域各々について、水抑制制御値の複数の候補値で水抑制キャリブレーションスキャンを実施して複数の候補値にそれぞれ対応する複数のMR信号を収集する。水抑制制御値の候補値は、ランダムに決定されてもよいし、過去の経験に基づき決定されてもよい。次に処理回路51は、第1収集領域及び第2収集領域各々について、収集された複数のMR信号に基づいて水抑制制御値の最適値を推定する。最適値として、例えば、当該MR信号のうちの水信号(水に由来するMR信号の成分)の強度値が最も弱い値が推定される。最適値の推定方法は、如何なる手法が用いられてもよいが、例えば、2次関数フィッティングが用いられるとよい。この場合、処理回路51は、縦軸が水信号強度値に規定され且つ横軸が水抑制制御値に規定されたグラフに複数のMR信号をプロットし、複数のプロット点に対して2次関数フィッティングを行い、当該複数のプロット点に最も良く当て嵌まる2次関数を決定する。そして処理回路51は、決定された2次関数の最下点を最適値として選択する。これにより第1収集領域及び第2収集領域各々について水抑制制御値が算出される。なお、フィッティングは2次関数に限定されるものではなく、如何なる関数で実施されてもよい。
【0073】
水抑制制御値は、信号収集対象の収集領域に合わせて本スキャン時において動的に切り替えられる。具体的には、シーケンス制御回路29は、第1収集領域のための第1の水抑制制御値と第2収集領域のための第2の水抑制制御値とを、第1励起領域に対する水抑制パルスの印加前と第2励起領域に対する水抑制パルスの印加前とに交互に切り替える。これにより各収集領域に適した水抑制制御値で水抑制を行うことができ、収集したMR信号及び当該MR信号に基づくスペクトルの精度の向上が期待される。
【0074】
図12は、水抑制制御値の切り替えタイミングを例示する図である。図12に示すMRSパルスシーケンスは図2と同様である。図12に示すように、シーケンス制御回路29は、第1収集領域のための信号収集と第2収集領域のための信号収集とを交互に繰り返す。なお、第1及び第2励起領域をオブリークする場合、RFパルス照射中のGx、Gy及びGzを、第1及び第2励起領域をオブリークする方向に合わせて回転させる。シーケンス制御回路29は、水抑制制御値を、第1収集領域のための水抑制パルスの印加前において第1の水抑制制御値に切り替え、第2収集領域のための水抑制パルスの印加前において第2の制御値に切り替える。
【0075】
次に、ローカライザ部に先行するOVSについて説明する。OVSは、3軸局所励起により収集されるMR信号に、収集領域及び/又は励起領域外の他の領域からMR信号が混入するのを抑制するため、当該他の領域に対して抑制パルス等のプリパルス(以下、OVSパルス)を印加する技術である。第1収集領域のためのOVSの影響は、第2収集領域にも影響を与える。そこで処理回路51は、第1収集領域と第2収集領域との双方に重ならない位置にOVSパルスの印加領域を設定する。
【0076】
図13は、OVSパルスの印加領域(以下、OVS領域)RX,RYと収集領域V1,V2との位置関係を示す図である。図13に示すように、第1収集領域V1及び第2収集領域V2が、それぞれ第2励起領域(図13に図示せず)及び第1励起領域(図13に図示せず)に重複しないように設定されている。OVS領域RX,RYは、複数の単位領域の組合せで設定される。単位領域は、初期的にはX軸、Y軸又はZ軸に平行する帯領域であり、収集領域のオブリーク角度に対して独立して傾けられてもよい。例えば、図13に示すように、単位領域RXは、第1収集領域V1及び第2収集領域V2に重ならず、且つX軸に対して任意角度だけ傾いて設定された帯領域である。単位領域RYは、第1収集領域V1及び第2収集領域V2に重ならず、且つY軸に対して任意角度だけ傾いて設定された帯領域である。図13には図示しないが、同様に、第1収集領域V1及び第2収集領域V2に重ならず、且つZ軸に対して任意角度だけ傾いて設定された帯領域である単位領域が設定されてもよい。これら単位領域の和領域がOVS領域に設定される。
【0077】
具体的には、収集領域が2個の場合、図13に示すように、処理回路51は、2個の収集領域V1,V2の中心を線L1で結び、線L1に平行し且つ収集領域V1,V2に重複しない領域RX及び当該領域RXに直交する平面RYにOVS領域を設定する。
【0078】
収集領域が3個以上の場合、処理回路51は、全ての収集領域に外接する矩形領域を設定し、設定された矩形領域に交差しない領域にOVS領域を設定すればよい。3方向が決定すれば、収集領域の位置から最適な矩形領域を決定することが可能である。処理回路51は、例えば、等間隔の角度を候補として設定して探索し、その最小角度周辺に等間隔の角度を候補として設定して探索する操作を繰り返すことにより、最適な方向を決定することが可能である。なお、最適な方向は、抑制されない体積が最小になる方向を意味する。方向を角度で表現する場合は、X-Yのなす角度とX-Zのなす角度等の2つの角度で十分である。
【0079】
ステップS2が行われると処理回路51は、生成機能513の実現により、第1MR信号に基づき第1スペクトルを、第2MR信号に基づき第2スペクトルを生成する(ステップS3)。具体的には、処理回路51は、NEX個の第1MR信号を積算する。積算によりノイズを低減することができる。処理回路51は、各積算後の第1MR信号に対してフーリエ変換を施すことにより第1スペクトルを生成する。なお、第1スペクトルの生成過程においてゼロ充填処理や位相補正、ベースライン補正等の各種補正処理が行われてもよい。第1スペクトルは、第一軸が第1MR信号の信号強度に規定され、第一軸に直交する第二軸がケミカルシフト周波数に規定された信号分布を表す。第2MR信号も第1MR信号と同様の手法により生成可能である。
【0080】
ステップS3が行われると処理回路51は、表示制御機能514の実現により、第1スペクトル及び第2スペクトルをディスプレイ53に表示する(ステップS4)。これにより操作者は、第1スペクトル及び第2スペクトルを確認し、例えば、第1収集領域と第2収集領域との間で代謝物の物質量を比較することができる。
【0081】
以上により、本実施形態に係るMRSが終了する。
【0082】
上記実施形態において収集領域は単一のボクセル(シングルボクセル)により規定されるものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。第1収集領域及び第2収集領域各々は、単一のボクセル又は複数のボクセルにより規定される。
【0083】
図14は、収集領域の大きさを例示する図である。図14に示すように、収集領域V2は、単一のボクセル(シングルボクセル)により規定される。収集領域V1は、2×2=4個等の複数のボクセル(マルチボクセル)により規定される。なおマルチボクセルとしては、X軸、Y軸及びZ軸に関して3次元的に複数のボクセル、例えば、2×2×2=8個のボクセルを含んでもよい。また、X軸、Y軸及びZ軸に関して同数のボクセルが配置されるのみならず、異なる個数のボクセルが配置されてもよい。
【0084】
上記実施形態において収集領域は3次元的な空間領域として設定されるものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。収集領域は、X軸、Y軸及びZ軸のうちの何れか1軸に関して領域選択を施さないで局所励起することにより得られる、直方体状の2次元的な空間領域として設定されてもよい。
【0085】
上記の幾つかの実施形態によれば、磁気共鳴信号収集装置1は、処理回路51とシーケンス制御回路29とを有する。処理回路51は、3軸局所励起による信号収集対象である第1の収集領域と第2の収集領域とを、第1の収集領域が第2の収集領域のための第2の励起領域に3次元的に重複せず且つ第2の収集領域が第1の収集領域のための第1の励起領域に3次元的に重複しないように設定する。シーケンス制御回路29は、第1の励起領域を選択的に励起して第1の磁気共鳴信号を収集し、第1の励起領域を再び励起する前に、第2の励起領域を選択的に励起して第2の磁気共鳴信号を収集する。
【0086】
上記の構成によれば、一方の収集領域を他方の収集領域のための励起領域に3次元的に重複しないように設定することが可能になるので、収集領域の位置の設定の自由度を向上させることが可能になる。また、このように収集領域の位置を設定することにより、一方の収集領域について他方の励起領域の残留磁化に起因する信号消失を低減することができるので、収集信号の質の向上が期待される。また、一方の収集領域のための励起領域の磁化飽和の回復期間において他方の収集領域について信号収集を実行することができるので、第1収集領域及び第2収集領域双方に対する全体の信号収集時間を短縮することができる。
【0087】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、3軸局所励起による複数領域に対する信号収集法において、信号収集領域の位置の設定の自由度を向上しつつ信号収集時間を短縮することができる。
【0088】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0089】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0090】
1 磁気共鳴信号収集装置
11 架台
13 寝台
21 傾斜磁場電源
23 送信回路
25 受信回路
27 寝台駆動装置
29 シーケンス制御回路
41 静磁場磁石
43 傾斜磁場コイル
45 送信コイル
47 受信コイル
50 ホストコンピュータ
51 処理回路
52 メモリ
53 ディスプレイ
54 入力インタフェース
55 通信インタフェース
61 事前処理部
62 信号収集部
131 天板
133 基台
511 設定機能
512 収集機能
513 生成機能
514 表示制御機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図14