(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157835
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】レベル計
(51)【国際特許分類】
G01F 23/284 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01F23/284
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072441
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 大嗣郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 隆宏
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AB02
2F014AB03
2F014FC01
2F014GA01
(57)【要約】
【課題】設置場所の自由度が高いレベル計を提供する。
【解決手段】レベル計10は、センサ部16と、センサ部16に対して通信するとともに電力を供給する制御器55とを備える。センサ部16は、送信信号を生成する信号生成部と、生成された送信信号に応じた電波送信する送信部と、対象物で反射した電波を受信して、受信した電波に応じた受信信号を生成する受信部と、受信信号に少なくとも基づいて対象物のレベルを計測するセンサ処理部とを有する。制御器55は、計測されたレベルに応じた表示を行う表示部20と、レベルの計測に関するパラメータを設定するための操作部30とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物のレベルを計測するレベル計であって、
センサ部と、
前記センサ部と通信ケーブルを介して接続され、前記センサ部に対して通信するとともに電力を供給する制御器と、を備え、
前記センサ部は、
送信信号を生成する信号生成部と、
前記信号生成部により生成される送信信号に応じた電波を送信する送信部と、
前記送信部を収容する第一筐体と、
前記第一筐体に形成され、対象物に向けて取り付けるための取付部と、
前記第一筐体に設けられ、前記送信部により送信される電波を透過する計測窓と、
前記対象物で反射した電波を、前記計測窓を介して受信して、受信した電波に応じた受信信号を生成する受信部と、
前記受信部により生成される前記受信信号に少なくとも基づいて前記対象物の前記レベルを計測するセンサ処理部と、を有し、
前記制御器は、
前記センサ部に前記通信ケーブルを介して電力を供給する電源と、
前記電源を収容する第二筐体と、
前記第二筐体に設けられ、前記センサ処理部により計測された前記レベルに応じた表示を行う表示部と、
前記第二筐体に設けられ、前記レベルの計測に関するパラメータを設定するための操作部と、を有する、レベル計。
【請求項2】
前記センサ処理部は、前記信号生成部により生成される前記送信信号と、前記受信部により生成される前記受信信号に基づき中間周波数信号を生成し、前記中間周波数信号に基づいて前記対象物のレベルを計測する、請求項1に記載のレベル計。
【請求項3】
前記センサ処理部は、前記信号生成部により生成される前記送信信号と、前記受信部により生成される前記受信信号に基づき、前記送信部から電波を送信するタイミングと前記受信部により電波を受信するタイミングとの差に対応する前記対象物のレベルを計測する、請求項1に記載のレベル計。
【請求項4】
前記センサ部は、さらに、
前記計測窓に配置され、前記送信部により送信される送信波が計測軸に沿って進行するよう前記送信波を屈折する誘電体レンズと、
前記第一筐体に収容され、前記送信部と前記受信部とが実装され、前記計測軸と交差するセンサ基板とを有する、請求項1に記載のレベル計。
【請求項5】
前記センサ部は、さらに、
前記センサ基板上の前記送信部および前記受信部が接する空間を囲うとともに、当該空間に連通する前記計測軸に沿った導波路を形成する導電性の電波整形部を有し、
前記誘電体レンズは、前記送信部により送信され前記導波路を通過する前記送信波が前記計測軸に沿って平面波として進行するよう前記送信波を屈折する、請求項4に記載のレベル計。
【請求項6】
前記導波路は、前記計測軸に直交する方向について、前記送信部により送信される前記送信波の波長の半分よりも長く、かつ、前記送信波の波長よりも短いものであり、
前記計測軸に沿った方向について、前記送信部により送信される前記送信波の波長よりも長いものである、請求項5に記載のレベル計。
【請求項7】
前記センサ部は、さらに、
前記導波路と連通し、前記計測軸に直交する方向について、前記導波路から前記誘電体レンズに向けて長くなる電波路を形成する導電性のテーパー壁を有する、請求項6に記載のレベル計。
【請求項8】
前記テーパー壁には、内壁面に電波を吸収する電波吸収体が設けられる、請求項7に記載のレベル計。
【請求項9】
前記取付部は、前記計測軸を円筒軸とする円筒形を有し、前記誘電体レンズの側面を囲う、請求項4に記載のレベル計。
【請求項10】
前記操作部は、前記レベルの計測に関する前記パラメータとして前記レベルについて複数のレベル範囲を区切る閾値の設定操作を受け付けるものであり、
前記センサ部は、さらに、前記センサ処理部により計測された前記レベルと前記操作部により設定される前記閾値との比較結果に応じて点灯状態が変化する状態灯を有し、
前記センサ基板は、前記誘電体レンズと向かい合う面の中央部に前記送信部と前記受信部とが実装され、当該向かい合う面の裏面又は周辺部に前記状態灯の光源が実装され、
前記第一筐体は、前記光源からの光を透過する前記状態灯の透過窓が設けられる、請求項4に記載のレベル計。
【請求項11】
前記第一筐体は、前記計測軸を円筒軸とする円筒形の部位を有し、当該円筒形の前記計測軸を通る第一面と当該円筒形の側面である第二面との間に前記状態灯の透過窓が設けられる、請求項10に記載のレベル計。
【請求項12】
前記通信ケーブルは、前記第一筐体を貫通するとともに、前記センサ基板と電気的に接続される、請求項4に記載のレベル計。
【請求項13】
前記操作部は、レベルの計測に関する前記パラメータとして前記レベルについて複数のレベル範囲を区切る閾値の設定操作を受け付けるものであり、
前記センサ部は、さらに、前記センサ処理部により計測されたレベルと前記操作部により設定される前記閾値との比較結果に応じて点灯状態が変化する状態灯を有し、
前記第一筐体には、前記第一筐体に収容される前記状態灯の光源からの光を透過する前記状態灯の透過窓が設けられる、請求項1に記載のレベル計。
【請求項14】
前記制御器は、さらに、前記センサ処理部により計測されたレベルと前記操作部により設定される前記閾値との比較結果に応じて点灯状態が変化する第二状態灯を有し、
前記第二筐体には、当該第二筐体に収容される前記第二状態灯の第二光源からの光を透過する前記第二状態灯の第二透過窓が設けられる、請求項13に記載のレベル計。
【請求項15】
前記操作部は、さらに、前記レベルについて複数のレベル範囲に対応する色の設定操作を受け付けるものであり、
前記状態灯は、前記センサ処理部により計測されたレベルが属するレベル範囲に対応する色で発光する、請求項13に記載のレベル計。
【請求項16】
前記レベルについて複数のレベル範囲を区切る1つ又は複数の閾値が設定されており、
前記制御器の前記表示部は、前記レベルの値に応じて長さが伸縮するバーグラフと、前記レベルがどの前記レベル範囲に属しているかを示すゲージを表示する、請求項1に記載のレベル計。
【請求項17】
前記制御器は、外部からの電力が入力される外部入力端子又は他の制御器から電力が入力される受電端子の少なくとも一方と、他の制御器へ電力を出力する送電端子と、を有する、請求項1に記載のレベル計。
【請求項18】
前記制御器は、前記制御器をレールに取り付けるためのレールホルダ部を有しており、複数の前記遠隔制御器が前記レールホルダ部を用いて互いに隣接して前記レールに取り付けられている場合、前記外部入力端子から電力が入力される前記制御器、および、前記受電端子から電力が入力される前記制御器は、前記送電端子から他の制御器の前記受電端子へ電力を出力可能である、請求項17に記載のレベル計。
【請求項19】
対象物のレベルを計測するレベル計であって、
送信信号を生成する信号生成部と、
前記信号生成部により生成される送信信号に応じた電波を送信する送信部と、
前記送信部を収容する第一筐体と、
前記第一筐体に形成され、対象物に向けて取り付けるための取付部と、
前記第一筐体に設けられ、前記送信部により送信される電波を透過する計測窓と、
前記計測窓に配置され、前記送信部により送信される電波が計測軸に沿って進行するよう当該電波を屈折する誘電体レンズと、
前記第一筐体に収容され、前記送信部と前記受信部とが実装され、前記計測軸と交差するセンサ基板と、
前記第一筐体を貫通するとともに、前記センサ基板と電気的に接続される通信ケーブルと、
前記対象物で反射した電波を、前記計測窓を介して受信して、受信した電波に応じた受信信号を生成する受信部と、
前記受信部により生成される受信信号に少なくとも基づいて前記対象物のレベルを計測するセンサ処理部と、を備えるレベル計。
【請求項20】
前記レベル計は、さらに、
前記センサ基板上の前記送信部および前記受信部が接する空間を囲うとともに、当該空間に連通する前記計測軸に沿った導波路を形成する導電性の電波整形部と、
前記センサ処理部により計測されたレベルとしきい値との比較結果に応じて点灯状態が変化する状態灯とを備え、
前記誘電体レンズは、前記送信部により送信され前記導波路を通過する送信波が前記計測軸に沿って平面波として進行するよう前記送信波を屈折するものであり、
前記センサ基板は、前記誘電体レンズと向かい合う面の中央部に前記送信部と前記受信部とが実装され、当該向かい合う面の裏面又は周辺部に前記状態灯の光源が実装され、
前記第一筐体は、前記光源からの光を透過する前記状態灯の透過窓が設けられる、請求項19に記載のレベル計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物のレベルを計測するレベル計に関する。
【背景技術】
【0002】
液体、粉体、粒体などの、流動性を持つ物質を貯留する容器において、物質の界面の高さ、すなわちレベル(液面レベル、粉体上面レベルなど)を計測するレベル計が用いられることがある。こうしたレベル計は、計測されたレベルをユーザに対して表示する機能を備えている。例えば特許文献1に記載のレベル計は、計測された液面レベルを表示する表示部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のレベル計においては、計測されたレベルは、数値で表示されていた。例えば特許文献1のレベル計においては、液面レベルの測定結果を数値で表示するための、5桁の7セグメントLED(発光ダイオード)が表示部に設けられている。この表示部は、レベルを計測するために用いられるパルス信号を生成する本体部の上面に設けられている。
【0005】
しかしながら、表示部はユーザが測定結果を目視により理解できる内容を表示する必要があるため、ある程度の大きさが必要となる。また特許文献1のレベル計では、測定条件などを入力するための操作部も本体部の上面に設けられている。本体部は、表示部と操作部、およびこれらを制御するための電子回路を含む必要があるため、寸法が大きくなってしまう。レベル計の本体部の寸法が大きいと、狭い場所、天井の低い場所などにレベル計を設置することができなくなり、設置場所の自由度が低くなる。また表示部および操作部が本体部と同じ場所にあるため、ユーザはレベル計に近づかなければ、計測結果を確認することも、操作部を操作することもできない。したがってユーザが近寄り難い場所、例えば高い場所などにレベル計を設置すると不便となるため、ユーザにとっての利便性の観点からしても、従来のレベル計は設置場所の自由度が低くなっていた。
【0006】
上記の問題に鑑み、本発明は、設置場所の自由度が高いレベル計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る実施形態の一例としてのレベル計は、対象物のレベルを計測するレベル計であって、センサ部と、センサ部と通信ケーブルを介して接続され、センサ部に対して通信するとともに電力を供給する制御器と、を備え、センサ部は、送信信号を生成する信号生成部と、信号生成部により生成される送信信号に応じた電波を送信する送信部と、送信部を収容する第一筐体と、第一筐体に形成され、対象物に向けて取り付けるための取付部と、第一筐体に設けられ、送信部により送信される電波を透過する計測窓と、対象物で反射した電波を、計測窓を介して受信して、受信した電波に応じた受信信号を生成する受信部と、受信部により生成する受信信号に少なくとも基づいて対象物のレベルを計測するセンサ処理部と、を有し、制御器は、センサ部に通信ケーブルを介して電力を供給する電源と、電源を収容する第二筐体と、第二筐体に設けられ、センサ処理部により計測されたレベルに応じた表示を行う表示部と、第二筐体に設けられ、レベ
ルの計測に関するパラメータを設定するための操作部と、を有する。また本発明に係る実施形態の別例としてのレベル計は、対象物のレベルを計測するレベル計であって、送信信号を生成する信号生成部と、信号生成部により生成される送信信号に応じた電波を送信する送信部と、送信部を収容する第一筐体と、第一筐体に形成され、対象物に向けて取り付けるための取付部と、第一筐体に設けられ、送信部により送信される電波を透過する計測窓と、計測窓に配置され、送信部により送信される送信波が計測軸に沿って進行するよう送信波を屈折する誘電体レンズと、第一筐体に収容され、送信部と受信部とが実装され、計測軸と交差するセンサ基板と、第一筐体を貫通するとともに、センサ基板と電気的に接続される通信ケーブルと、対象物で反射した電波を、計測窓を介して受信して、受信した電波に応じた受信信号を生成する受信部と、受信部により生成される受信信号に少なくとも基づいて対象物のレベルを計測するセンサ処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表示部と操作部が制御器に設けられるため、センサ部の寸法が小さくなり、センサ部の設置場所の自由度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】レベル計のセンサ部および制御器を示す斜視図。
【
図4】対象物を収容するタンクにセンサ部が取り付けられた状態を示す図。
【
図6】レベル計の構成要素間の関係の一例を概略的に示すブロック図。
【
図7】レーダー制御部および送受信部の構成の一例を示す図。
【
図10】表示部に表示されるバーグラフとゲージを示す図。
【
図11】第1の制御器の送電端子が露出した状態を示す図。
【
図12】第2の制御器の受電端子が露出した状態を示す図。
【
図13】複数の制御器が並んでレールに取り付けられた状態を示す図。
【
図14】センサ部が外部制御装置と接続される形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態の一例としてのレベル計10について説明する。
図1の斜視図には、本実施形態のレベル計10が示されている。レベル計10は、計測対象となる対象物(例えば液体、粉体、粒体など)のレベルを計測する装置である。計測されるレベルとは、対象物の界面の高さである。レベルの具体例としては、容器内に収容される液体の液面の高さが挙げられる。
【0011】
レベル計10は、センサ部16と、センサ部16から離れた位置でセンサ部16と通信可能な制御器55とを備える。そして、センサ部16と制御器55との間は通信ケーブル11で接続されている。制御器55は、通信ケーブル11を介してセンサ部16に対して通信するとともに、センサ部16へ電力を供給する。
【0012】
図1のレベル計10においては、センサ部16のみが計測の対象物72を収容する容器に取り付けられ、制御器55はその容器から離れた位置でセンサ部16と通信を行う。センサ部16は、第一筐体16aで覆われている。
【0013】
図1に示されているように、センサ部16はおおむね円筒形の形状を有する。以下にお
いては、センサ部16の円筒形の軸心に沿った方向を、長手方向Aと称する。
図1のセンサ部16の第一筐体16aには、長手方向Aの一端に、計測窓40が設けられている。
【0014】
以下においてセンサ部16の構造について説明する場合、長手方向Aの一端側を下側、長手方向Aの他端側を上側と呼ぶことがある。センサ部16は、長手方向Aの下側が対象物に向けられた状態で対象物のレベルを計測する。すなわち、
図1のセンサ部16は、第一筐体16aの計測窓40が対象物に向けられた状態で対象物のレベルを計測する。
図1のセンサ部16には計測軸が設定されている。センサ部16は、この計測軸に沿ったレベルを計測する。ここで、レベル計10が対象物のレベルを計測する際には、計測対象となる対象物(例えば水などの液体)のレベルの変化方向と、長手方向Aが同じ方向であることが好ましい。つまりセンサ部16の計測軸の方向と、長手方向Aが同じ方向であることが好ましい。例えばレベル計10が液体の液面の高さ(レベル)を計測する場合に、長手方向Aは、液体の液面の高さの変化方向、すなわち鉛直方向(高さ方向、重力方向)と同じ方向であるとよい。
【0015】
センサ部16の第一筐体16aのうち、計測窓40よりも上側に、センサ部16を対象物に向けて取り付けるための取付部18が形成されている。対象物のレベルを計測するために、取付部18を用いて、取付対象にセンサ部16が取り付けられる。例えば、液体などの対象物が収容された容器(タンク)がセンサ部16の取付対象となる。取付対象は容器に限るものではなく、センサ部16が取り付けられる対象であればよい。例えば、野外の液面(湖面、海面など)の上方に設けられた足場も取付対象となり得る。
図1の取付部18は、センサ部16の計測軸を円筒軸とする円筒形で、その円筒の表面にネジ筋が刻まれている。そして取付部18より上側は、取付部18より大きな径の円筒形となっている。
図1のセンサ部16は、取付部18が、対象物を収容する容器の上面にネジ留めされることにより、計測窓40を対象物に向けて容器に固定される。そして、センサ部16において長手方向Aの他端側(上側)に、計測されたレベルに応じて点灯状態が変化する状態灯52が配置されている。状態灯52は、長手方向Aと平行な、センサ部16の円筒形の軸心を取り囲むように配置されている。ユーザは、状態灯52の点灯状態を目視することで正常、注意、異常などの対象物の状態を知ることができる。
【0016】
図1のレベル計10においては、計測窓40から対象物に向けて送信波となる電波が透過して送信され、対象物で反射した反射波が計測窓40で受信される。レベル計10は、送信波と反射波とに基づいて対象物のレベルを算出する。
【0017】
円筒形のセンサ部16の第一筐体16aの側面に通信ケーブル11が接続されている。通信ケーブル11は、センサ部16から離れた位置に配置された制御器55へ接続されている。通信ケーブル11は、センサ部16と制御器55との間で信号を伝達する。また通信ケーブル11は、制御器55からセンサ部16へ電力を伝達してもよい。ここで制御器55は、分離型の制御器とも呼ばれる。通信ケーブル11の長さは数十センチメートルから数十メートル程度であり、典型的には1メートルから5メートル程度である。
【0018】
図1の制御器55は第二筐体99で覆われている。第二筐体99は全体として6つの外面で囲まれた箱形となっている。以下においては、制御器55の外面のうち、通信ケーブル11が接続される面を前面、その反対側の面を後面と呼ぶ。そして
図1において制御器55の上方の面を上面、下方の面を下面、手前の面を左側面、左側面と反対側の面を右側面と呼ぶ。また、以下において制御器55の構造について説明する場合、前面と後面とを結ぶ方向を前後方向Bと呼ぶ。
【0019】
制御器55の第二筐体99の上面には、表示部20が設けられている。表示部20は、各種情報を表示可能なアクティブマトリックス方式の表示装置を含む。例えば、表示部2
0はLCD(Liquid Crystal Display、液晶ディスプレイ)を含む。特に、表示部20はカラー表示(複数の色による表示)が可能なLCDを含むことが好ましい。
【0020】
表示部20は、センサ部16が計測した対象物のレベルを表示する。
図1においては、レベルの値に応じて長さが伸縮するバーグラフ22が表示部20に表示される。また表示部20には、複数の区間に区分けされたゲージ24も表示される。ゲージ24は、計測されたレベルが、予め定められた複数のレベル範囲のうち、どのレベル範囲に属しているのかを示す。ゲージ24は、カラー表示(多色表示)されて、各区間が色分けされていることが好ましい。ただしゲージ24は、各区間の見分けがつくようになっていれば単色表示されてもよい。たとえば各区間の区切りを示すラインが表示されていてもよい。あるいは色の濃淡によって各区間が区分けされていてもよい。バーグラフ22は、ゲージ24の隣に表示される。
【0021】
制御器55の第二筐体99において表示部20が配置される外面(上面)には、操作部30も配置されている。
図1の操作部30は、設定キー32と、方向キー33を含む。また方向キー33は、アップキー34と、ダウンキー35を有する。レベル計10のユーザは、操作部30を操作することで、レベル計10の動作パラメータを操作することができる。動作パラメータには、レベルの計測に関するパラメータが含まれる。動作パラメータには例えば、センサ部16が計測した対象物のレベルと比較される閾値が含まれる。ユーザは特に、操作部30を操作することで、表示部20の表示内容およびレベル範囲の区切りを規定する閾値の設定を変更できる。またユーザは、操作部30を操作することで、センサ部16の状態灯52が発光する色を変更してもよい。閾値により区切られた複数のレベル範囲にはそれぞれ、色が対応付けられており、センサ部16の状態灯52は、計測されたレベルが属するレベル範囲に対応する色で発光する。また操作部30は、レベルについて複数のレベル範囲に対応する色の設定操作を受け付ける。そしてユーザは例えば、操作部30を操作してレベル範囲に対応する色を変更することで、状態灯52が発光する色を変更することができる。なお操作部30は、制御器55にユーザの操作を受け付けさせるものであればよく、例えば表示部20と一体化したタッチパネルであってもよい。また制御器55の上面には、第二状態灯54も設けられている。この第二状態灯54は、センサ部16の状態灯52と同じ点灯状態で点灯する。
【0022】
制御器55に設けられた表示部20、操作部30、第二状態灯54より上方には、表示部20、操作部30、第二状態灯54を覆う透明な上面カバー58が設けられている。上面カバー58は例えばガラス、アクリル、ポリアリレート、ポリカーボネートなどの光学的に透明な素材で構成される。ユーザは、表示部20の表示内容および第二状態灯54の点灯状態を上面カバー58越しに確認できる。またユーザが操作部30を操作するときには、ユーザは上面カバー58を操作部30の上方から一時的に取り外す。上面カバー58の一時的な取り外しおよび取り付けが容易となるように、上面カバー58が制御器55に対してヒンジを介して取り付けられていてもよい。
【0023】
制御器55の後面には、接続部12が設けられている。
図1の接続部12は、制御器55と外部の装置との間での通信を行うためのケーブルが接続される端子となっている。
【0024】
制御器55の下面には、レールホルダ部61が設けられている。レールホルダ部61は
図1には図示されていないレールを挟み込む構造をしており、レールホルダ部61がレールを挟み込むことで、制御器55がレールに取り付けられる。
【0025】
図1に示されているように、レベル計10は、対象物のレベルを計測するための電波を送受信するセンサ部16とは別に、センサ部16から離れた位置でセンサ部16と通信可能な制御器55を備える。この制御器55が表示部20と操作部30を有するため、セン
サ部16には表示部20と操作部30が必要ない。したがってセンサ部16の寸法が小さくなり、センサ部16の設置場所の自由度が高くなる。また、表示部20と操作部30は、センサ部16から離れた位置の制御器55にあるため、ユーザは表示部20の表示を確認する際、および操作部30を操作する際に、センサ部16へ近づく必要がない。したがってユーザが近寄り難い場所にセンサ部16が設置されても、ユーザの利便性を損なうことがないため、センサ部16の設置場所の自由度が高くなる。
【0026】
次に、
図2を参照して、センサ部16の内部構造について説明する。
図2は、円筒形のセンサ部16について、その円筒形の軸心を含む平面での断面を示す断面図である。
【0027】
センサ部16の外面は第一筐体16aで覆われている。第一筐体16aの内部には、センサIC41(IC:Integrated Circuit、集積回路)と、センサIC41を支持するセンサ基板42が配置されている。センサIC41は、対象物のレベルを計測するための電波の送受信および信号処理を行う。センサ基板42には通信ケーブル11が接続されており、センサIC41によって処理された信号は通信ケーブル11を介して制御器55へと送信される。通信ケーブル11は第一筐体16aを貫通して、センサ基板42(電子回路基板)と電気的に接続される。
【0028】
センサIC41としては例えば、MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit、モノリシックマイクロ波集積回路)が用いられる。MMICは、電波の送信、電波の受信、および送受信された電波に基づく信号処理などを行う複数の半導体部品が、単一の半導体装置(ワンチップ)にまとめられたICである。
図2のセンサIC41においては、アンテナ・イン・パッケージ(AiP: Antenna in Package)技術またはアンテナ・オン・パッケージ(AoP: Antenna on Package)技術を用いて、MMICにアンテナが一体化されている。すなわち
図2においてセンサIC41は、電波の送信を行う送信部と、電波の受信を行う受信部とが、単一の半導体装置に集積されたアンテナ一体型のパッケージ(アンテナオンパッケージ)である。センサIC41としてアンテナ一体型MMICが用いられることにより、電波の送受信のための構成によって占有される体積が小さくなり、センサ部16全体の寸法がコンパクトになる。なおセンサIC41はアンテナ一体型MMIC単体に限られず、複数のICを含んでいてもよい。センサIC41は例えば、アンテナ一体型MMICとマイコン(マイクロコンピュータ)とを含んでいてもよい。そして、アンテナ一体型MMICが、電波の送信アンテナと、電波の受信アンテナと、電波の送受信制御を実行する回路とを含み、マイコンが、アンテナ一体型MMICから受け付けた受信信号に基づく信号処理や演算処理を実行する回路を含んでいてもよい。
【0029】
センサIC41はセンサ基板42の下側表面に実装される。センサ基板42はガラスおよび樹脂などの絶縁体からなる板の上に各種の電子回路素子が配置された電子回路基板である。
図2においては、センサ基板42は長手方向Aと直交する向き(
図2において水平方向)となるように配置されている。センサIC41がアンテナ一体型MMICである場合、センサIC41には、電波を送信する送信部43Tと、電波を受信する受信部43Rとが含まれる。センサIC41に送信部43Tと受信部43Rが含まれることにより、センサ部16は送信部43Tと受信部43Rを有することになる。センサIC41がセンサ基板42の下側表面に実装されることにより、送信部43Tと受信部43Rは、センサ基板42の下側(長手方向Aの一端側)の面に配置されることになる。
【0030】
計測窓40はセンサ基板42より下側に位置している。
図2の計測窓40は内部構造として、導波管45、テーパー壁46、誘電体レンズ48を含んでいる。センサIC41がアンテナ一体型MMICである場合、センサIC41から送信波となる電波が送信される。センサIC41から送信された送信波は、導波管45、テーパー壁46、誘電体レンズ48をこの順に通って対象物へ向けて導かれる。また、対象物で反射して計測窓40に入
射した反射波は、誘電体レンズ48、テーパー壁46、導波管45をこの順に通ってセンサIC41へ向けて導かれる。取付部18はセンサ部16の下側に設けられる。取付部18は第一筐体16aの下側の外周に設けられてもよい。第一筐体16aの下側の取付部18が円筒形である場合には、その断面は円形状となる。この場合、円形の誘電体レンズ48が円筒形の取付部18の下側(長手方向Aの一端側)に配置可能である。また、誘電体レンズ48が取付部18に配置される場合、センサ部16の計測軸を円筒軸とする円筒形を有する取付部18が、誘電体レンズ48の側面を囲う。すなわち、センサ部16が下側に円筒形の部位を有していれば、その円筒状の部位は、センサ部16の設置対象(タンクなど)に対して取り付けられる取付部18と、誘電体レンズ48の配置場所を兼ねることができ、レベル計10全体の寸法がコンパクトになる。誘電体レンズ48がセンサ部16の下側に設けられているため、センサ基板42の下側表面に実装されているセンサIC41の送信部43Tと受信部43Rは、誘電体レンズ48と向かい合う面に実装されていることになる。
図2において送信部43Tと受信部43Rは、センサ基板42において誘電体レンズ48と向かい合う面の中央部に実装されている。
【0031】
センサ基板42の上側(長手方向Aの他端側)の面には、状態灯52の光源となる状態LED50(LED:Light Emitting Diode)が配置されている。状態灯52は、複数の状態LED50と、光を拡散させる部材(光拡散フィルムなど)を含む透過窓53とを有する。状態LED50は、センサ部16によって計測された対象物のレベルに応じて点灯状態が変化する。状態LED50の上側には円板形の蓋部56と、透過窓53とが配置されている。蓋部56の円板形の軸心は長手方向Aと平行になっている。透過窓53は、光源となる状態LED50からの光を透過する。透過窓53は、長手方向Aと平行な蓋部56の軸心を取り囲むように、蓋部56の外周に配置されている。具体的には、透過窓53は、センサ部16の第一筐体16aの第一面97aと、第二面97bとの間に設けられる。ここで、
図2においては、センサ部16の第一筐体16aが、取付部18の上側にも、計測軸を円筒軸とする円筒形の部位を有している。第一面97aは、その円筒形の計測軸を通る面であり、第二面97bは、円筒形の側面である。また、状態LED50は、長手方向Aと平行な軸心周りの周方向に沿って、互いに間隔を空けて複数配置されていることが好ましい。状態灯52の光源となる状態LED50は、センサ基板42において、誘電体レンズ48と向かい合う面の裏面に実装されている。なお状態LED50は、誘電体レンズ48と向かい合う面の周辺部に実装されてもよい。
【0032】
状態LED50から発せられる光は、透過窓53を通じて(透過して)、長手方向Aと交差する方向に拡散されて、センサ部16の外部へと導かれる。したがって、状態LED50の点灯状態が対象物のレベルに応じて変化することに伴い、状態灯52の点灯状態が変化することになる。また光を拡散する部材を含む透過窓53が、長手方向Aと平行な軸心を取り囲むように配置されているため、状態LED50から発せられる光は、センサ部16周りの全方位で均一に拡散される。状態LED50のそれぞれは、単色(例えば赤色、黄色、緑色など)で発光してもよいし、複数の色(例えば赤色、黄色、緑色など)を切り替えて発光してもよい。状態LED50が複数の色を切り替えて発光する場合、異なる色で発光する複数の発光素子が1つのLEDに含まれていてもよいし、異なる色で発光する複数のLEDを組み合わせたものが状態LED50として配置されていてもよい。そして状態LED50は、複数の色を混ぜ合わせて発光してもよい。また、状態LED50は、カラー表示されるゲージ24に対応する色で発光してもよい。例えば状態LED50が複数の色を切り替えて発光する場合、計測されたレベルが属するレベル範囲に対応するゲージ24の区画の色に応じた色で、状態LED50が発光してもよい。また状態LED50のそれぞれは、発光していない状態(消灯状態)、発光する状態、点滅する状態を切り替えることが可能であることが好ましい。なお、状態灯52の光源は、点灯状態を制御可能なものであればよく、例えば有機EL(Electro Luminescence)を用いた発光素子であってもよい。
【0033】
状態灯52の光源である状態LED50は、センサ部16の内部で上端(長手方向Aの他端)近くに配置されている。そして状態灯52の透過窓53は、状態LED50よりもさらに上側、具体的にはセンサ部16の上端の外周に配置されている。透過窓53は長手方向Aに対して傾いたテーパ状の面を有しており、状態LED50から発する光は、透過窓53のテーパ状の面から筐体15の外部へ出射(透過)する。
【0034】
さらに、透過窓53は光を拡散させる部材を含んでいる。透過窓53に含まれる、光を拡散させる部材の具体例を説明すると、屈折率の異なる素材が組み合わされた部材である。例えばPET(PolyEthylene Terephthalate)樹脂などの透明な素材からなるベース材の表面または内部に、ベース材とは異なる屈折率を持つ透明な微粒子(例えばアクリル樹脂など)が添加されているとよい。このような部材からなる透過窓53に光が入射すると、ベース材と微粒子との屈折率の違いにより、光が複雑な経路で屈折することになり、透過窓53から出射する光は様々な方向に拡散される。したがって、透過窓53がテーパ状の面を有することも合わさって、状態LED50が長手方向Aと平行な方向に向けて配置されていても、透過窓53から出射する光は長手方向Aと交差する方向に拡散される。なお、透過窓53から出射する光の少なくとも一部が、長手方向Aと交差する方向になっていればよく、透過窓53から出射する光に、長手方向Aと平行な方向の光が含まれていてもよい。
【0035】
透過窓53から出射する光が長手方向Aと交差する方向に拡散されることにより、状態灯52の光は、長手方向Aと交差する方向(例えば長手方向Aと直交する水平方向)から視認できることになる。したがって、ユーザは容器に取り付けられたセンサ部16から離れた位置でも、状態灯52の点灯状態を、視覚的に把握し易い。また光を拡散させる部材を含む透過窓53によって状態LED50の光が拡散されることにより、点光源である状態LED50の光が、全方位に照射されるようになる。したがってユーザはセンサ部16に対してどの方向からでも、対象物のレベルの状態を視覚的に把握し易い。
【0036】
次に、
図3を参照して、制御器55の内部構造について説明する。
図3は、制御器55について、左側面および右側面に平行な平面での断面を示す断面図である。
【0037】
制御器55の外面は第二筐体99で覆われている。第二筐体99の内部には電源98と制御基板60が収容されている。制御基板60はガラスおよび樹脂などの絶縁体からなる板の上に各種の電子回路素子が配置された電子回路基板である。制御基板60は制御器55の左側面および右側面と平行な向き(
図3において紙面と平行な向き)となるように配置されている。制御基板60には、電源98、接続部12、表示部20、操作部30、第二状態灯54が接続されている。電源98は、通信ケーブル11を介してセンサ部16へ電力を供給するユニットである。電源98は、センサ部16へ電力を供給することが可能なものであればよく、電池などの電力を発生するユニットに限られない。電源98は例えば、コンデンサなどの電力を一時的に蓄積する電子部品を含むユニットであってもよいし、外部から供給される電力を中継するユニットであってもよい。
【0038】
制御基板60には、操作部30に対するユーザの操作を受け付けるための信号処理回路と、表示部20および第二状態灯54を制御するための信号処理回路が実装されている。制御基板60は、通信ケーブル11を介してセンサ部16のセンサIC41から信号を受信し、センサ部16が計測した対象物のレベルを表示部20へ表示するための信号処理を行う。
【0039】
図3において通信ケーブル11は制御器55の前面側(前後方向Bの一端側、図中の左側)から、電源98に接続されている。そして電源98は、コネクタを介して制御基板6
0と接続されている。
図3において接続部12は制御器55の後面側(前後方向Bの他端側、図中の右側)に設けられている。
図3の接続部12は制御器55の後面側に接続されたケーブルである。接続部12には、外部装置との接続端子となる外部入力端子12Cおよび外部出力端子12Dが含まれる。外部入力端子12Cは、外部からレベル計10に対して信号もしくは電力、またはその両方を入力するための端子である。外部出力端子12Dは、レベル計10から外部へと信号を出力するための端子である。外部入力端子12Cと外部出力端子12Dは制御基板60に接続されている。外部入力端子12Cを通じて外部から入力される信号または電力は制御基板60へ入力される。また、制御基板60で生成された信号は外部出力端子12Dを通じて外部へ出力可能である。
【0040】
図3の操作部30は制御器55の上面において、表示部20よりも後面側に設けられている。操作部30の各キー、すなわち設定キー32、方向キー33(アップキー34とダウンキー35)を構成する電子部品(例えばタクタイルスイッチ)の端子が、制御基板60に接続されている。
【0041】
図3の表示部20は、表示装置28と、透明な表示窓29を含んでいる。表示装置28は例えばLCD、特にカラー表示が可能なLCDである。表示窓29は例えばガラス、アクリルなどの光学的に透明な素材からなる上面カバー58の一部であり、表示装置28の表示内容を、制御器55の外部へと光学的に透過させる。
図3において、表示装置28および表示窓29は、前後方向Bと平行な向きになっている。
【0042】
図3の第二状態灯54は制御器55の上面において、表示部20よりも前面側に設けられている。第二状態灯54の光源(第二光源)となる複数の状態LED50が制御基板60に実装されており、状態LED50よりも上方に、状態LED50の光を透過させる第二透過窓53aが設けられている。複数の状態LED50の発光色はそれぞれ異なる色(例えば赤色と緑色)であることが好ましい。また複数の状態LED50はそれぞれ個別に発光と消灯を切り替え可能であることが好ましい。状態LED50の発光状態、消灯状態、点滅状態、発光色などが切り替わることにより、第二状態灯54の表示状態が変化する。
【0043】
図3の制御器55の下面には、制御器55をレールに取り付けるためのレールホルダ部61が設けられている。レールホルダ部61は前後方向Bに離れた2つの爪部で構成されている。2つの爪部は、それぞれの下端部が前後方向Bにおいてお互いに向けて突出する構造となっている。
【0044】
次に、
図4を参照して、レベル計10の使用状態の一例について説明する。
図4は、対象物72を収容するタンク70にレベル計10のセンサ部16が取り付けられた状態を示す図である。対象物72は例えば水などの液体であり、対象物72のレベルYは、タンク70の底から対象物72の界面74(液面)までの高さである。
【0045】
タンク70は例えば水処理施設において対象物72となる水を収容する。例えばタンク70内の対象物72が水処理プロセスなどへ供給されることで、タンク70内の対象物72のレベルYは低下する。また、タンク70に対象物72が補充されることで、タンク70内の対象物72のレベルYは上昇する。例えばタンク70の外壁(
図4においては上壁)には注水口75が設けられている。注水口75を介して注水パイプ76がタンク70と流体的に接続されている。そして、注水パイプ76はタンク70の外部に設けられた注水装置78(例えばポンプ、弁などを含む装置)と接続されている。注水装置78は、タンク70の外部から、タンク70内へ対象物72を供給(注水)する装置である。注水装置78は、タンク70内の対象物72のレベルYに応じて、タンク70に対する注水量を調節する。また注水装置78は、タンク70内の対象物72のレベルYによっては、注水を
停止する。注水装置78は、例えば水処理プロセスによって対象物72が消費されるにつれて低下する、タンク70内の対象物72のレベルYが、予め定められた範囲内となるように、タンク70内の対象物72のレベルYに応じて、タンク70に対する対象物72の補充を制御する。
【0046】
図4のセンサ部16はタンク70の上側に取り付けられる。タンク70の上側には取付穴71が設けられている。取付穴71はネジ穴になっており、取付穴71にセンサ部16の取付部18がネジ留めされることで、センサ部16がタンク70(取付対象)に取り付けられる。なお、センサ部16をタンク70に取り付ける方法は取付部18を用いたネジ留めに限られず、取付部18の外周面にネジ筋は形成されていなくともよい。例えばセンサ部16とタンク70のどちらか一方、または両方にフランジが設けられていて、フランジがセンサ部16またはタンク70に対してボルトで固定されることによってセンサ部16がタンク70に取り付けられてもよい。
【0047】
図4において、タンク70に取り付けられた状態のセンサ部16の長手方向Aは、対象物72のレベルYの変化方向と同じ方向である。センサ部16は、計測窓40から、送信波Txとなる電波を対象物72へ向けて送信する。そして、送信波Txが対象物72の界面74で反射したことによる反射波Rxが、計測窓40で受信される。センサ部16は、送信波Txと反射波Rxとに基づいて対象物72のレベルYを算出する。センサ部16は例えば、ToF(Time of Flight)方式を用いた計測を行う場合は、送信波Txの送信タイミングと反射波Rxの受信タイミングとの差異に基づいて、計測窓40から界面74までの距離YAを算出し、距離YAに基づいてレベルYを算出する。また、レベル計10は例えば、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave、周波数変調連続波)を用いたレーダー方式で計測を行う場合は、送信波Txと反射波Rxとを混合(ミキシング)した波形の周波数に基づいて、計測窓40から界面74までの距離YAを算出し、距離YAに基づいてレベルYを算出する。
【0048】
センサ部16が計測した対象物72のレベルYを示す計測データが通信ケーブル11を介して、
図4には図示されていない制御器55へと送信される。制御器55は、計測データに基づいて計測した対象物72のレベルYを示すアナログ信号またはセンサ部16が計測した対象物72のレベルYと閾値との比較結果に基づく制御信号を、制御を行うプログラマブルコントローラなどの外部制御装置(図示せず)に出力する。外部制御装置は、計測されたレベルYまたはレベルYと閾値との比較結果などに応じて、注水装置78の動作を制御する。
【0049】
図5Aは、送信波Txの進行経路を示す図である。
図5Bは、反射波Rxの進行経路を示す図である。
図5Aおよび
図4Bを参照して、テーパー壁46および誘電体レンズ48を通じて送信波Txが対象物72へ導かれること、および、反射波Rxが受信部43Rへ導かれることについて説明する。
【0050】
センサ部16は、送信波Txを送信する送信部43Tと、反射波Rxを受信する受信部43Rとを有する。具体的には、センサ部16の内部に配置されたセンサIC41に、送信部43Tと、受信部43Rとが含まれている。送信部43Tおよび受信部43Rはそれぞれ、センサIC41のチップ上に実装された半導体電磁波発生装置、および半導体電磁波受信装置である。送信部43Tおよび受信部43Rを含むセンサIC41は、第一筐体16aに収容され、センサ部16の計測軸40Aと交差するセンサ基板42に実装されている。
【0051】
センサ部16の計測窓40は、送信部43Tと、対象物72との間に位置する。計測窓40には、センサ基板42上の送信部43Tと受信部43Rとが臨む(接する)空間を囲
うとともに、囲われた空間に連通する計測軸40Aに沿った導波路を形成する導波管45を含む、導電性の電波整形部が設けられていてもよい。電波整形部はさらに、導波路に連通する空間を包囲する、導電性のテーパー壁46を含んでいてもよい。例えば
図5Aおよび
図5Bにおいては、送信部43Tに近い順に、囲い壁47、導波管45、テーパー壁46、誘電体レンズ48が設けられている。囲い壁47は、センサ基板42上の送信部43Tと受信部43Rとが臨む空間を囲うとともに、導波管45に連通している。囲い壁47は、導電性を有している。また囲い壁47の内壁面には、電波を吸収する電波吸収体が設けられていてもよい。導波管45は、導電性を有する導体で形成される中空のパイプである。テーパー壁46は、導波管45の導波路と連通し、計測軸40Aに直交する方向について、導波路から誘電体レンズ48に向けて長くなる電波路を形成する。テーパー壁46は、導電性を有しており、またその内壁面には電波を吸収する電波吸収体が設けられていてもよい。そして、これらは、導波管45およびテーパー壁46の有する指向性の方向と、誘電体レンズ48の計測軸40Aとが一致するように配置されている。
図5において計測窓40は、計測軸40Aがセンサ部16の長手方向Aと平行となるように配置されている。以下においては、導波管45およびテーパー壁46の指向性の方向についても、計測軸40Aと呼ぶことがある。
【0052】
送信部43Tから送信される送信波Txは、様々な方向に向かう成分を含んでいるが、そのうち対象物72の方向へ向かう成分のみが囲い壁47内の空間と導波管45を通り、その後、テーパー壁46を経て誘電体レンズ48に入射する。
図5Aおよび
図5B中の囲い壁47内と、テーパー壁46と、計測窓40より下側においては、電波の等位相面が破線で示されている。なお、導波管45内において、本来は等位相面が直線状に示されるべきであるが、電波の進行方向をわかり易くするため、図中では進行方向側(
図5Aでは下側、
図5Bでは上側)に膨らんだ曲線状の破線が示されている。導波管45は、送信部43Tと導波管45との相対位置関係によらず、導波管45の出射端から計測軸40Aに沿って球面状に進行する球面波となるよう送信波Txを変換する。これにより、導波管45の出射端は点状の送信源とみなすことができる。導波管45の出射端が理想的な点状の送信源となるように、導波管45の径は、基本モードの電波のみが導波管45を通過できるような径とされるとよい。一方、導波管45の径が電波の波長の半分よりも小さいと、電波が導波管45を通過しなくなる。したがって、導波路を形成する導波管45の径(計測軸40Aに直交する方向の寸法)は送信波Txの波長の半分よりも長く、かつ送信波Txの波長よりも短いことが好ましい。例えば、電波の周波数が50GHz-70GHzの場合、波長は約4.3mm-約6.0mm、半波長は約2.15mm-約3.0mmである。この場合、導波管45の径として3mmより大きく、4.3mmよりも小さい径が選択されると、基本モードの電波のみが導波管45を通過できる。上記の条件を満たす導波管45の径は例えば4mmである。なお、計測軸40Aに沿った方向の導波管45の寸法が短いと、導波管45の径が上記の条件を満たしていても、基本モード以外の電波も導波管45を通過することになる。例えば、計測軸40Aに沿った方向の導波管45の寸法(計測軸40Aに沿った方向の導波路の長さ)は、電波の波長の1波長分またはそれを超える長さにされるとよい。なお、計測軸40Aに沿った方向の導波管45の寸法が長いほど、センサ部16の長手方向Aの寸法が長くなる。なお送信波Txは導波管45を通った後、テーパー壁46内で球面波として進行し、誘電体レンズ48によって、計測軸40Aに沿って平面波として進行するよう屈折される。テーパー壁46は導体で形成され、内壁面に電波を吸収する層が形成されていてもよい。テーパー壁46の内壁面に電波を吸収する層が形成されていると、テーパー壁46を通る電波が遮断されるとともに、内壁面および誘電体レンズ48の端面などでの不要反射を低減することができる。
【0053】
図5Aに示されているように、送信波Txはテーパー壁46内を球面波として進行し、その後、誘電体レンズ48に入射した送信波Txは、テーパー壁46と誘電体レンズ48との間、および誘電体レンズ48と周囲空気(雰囲気)との間で屈折し、センサ部16が
レベルを計測する方向に沿った計測軸40Aに平行な方向へ導かれる。計測軸40Aは長手方向Aと平行であるため、送信波Txは、センサ部16の長手方向Aの一端(下側)が向けられている方向、すなわち対象物72の方向へ導かれる。すなわち送信波Txは、誘電体レンズ48によって、計測軸40Aに沿って進行するよう屈折される。送信波Txは、誘電体レンズ48の有効径に対応する平面波とその周辺の回折波として進行する。送信波Txは、指向性の高い電波ビームを形成する。したがって検出対象面の領域(対象物72の界面74のうち送信波Txが当たる領域)が絞られるため、周囲の障害物などによる不要反射が低減される。
【0054】
対象物72へと導かれた送信波Txは、対象物72の界面74で反射し、反射波Rxとなる。
図5Bに示されているように、平面波として進行する反射波Rxは計測窓40で受信される。計測窓40で受信された反射波Rxはまず、誘電体レンズ48に入射する。誘電体レンズ48に入射した反射波Rxは、周囲空気と誘電体レンズ48との間、および誘電体レンズ48とテーパー壁46との間で屈折し、計測軸40Aに近づく球面波としてテーパー壁46内を進行する。これにより反射波Rxは、導波管45を経て、囲い壁47側の端部では点状の送信源から発せられる電波として受信部43Rへ導かれる。
【0055】
センサ部16の内部に配置されている導波管45と、テーパー壁46と、誘電体レンズ48は、電波に対するそれぞれの指向性によって、電波の進行方向を計測軸40Aの方向へ導くため、これらが組み合わされることにより、全体として電波に対して強い指向性を示す。したがって、センサ部16は、長さ方向寸法(長手方向Aに沿った長さ)が小さくとも、送信波Txおよび反射波Rxを適切に導くことができる。よって、レベル計10の設計者は、導波管45と、テーパー壁46と、誘電体レンズ48を用いることにより、センサ部16の長さ方向寸法を小さくすることができる。
【0056】
また、送信波Txおよび反射波Rxが適切に導かれることにより、センサIC41において送信部43Tの位置と受信部43Rの位置とが異なるにも関わらず、共通の計測窓40によって送信波Txの送信と反射波Rxの受信とを行うことができる。よって、センサ部16の寸法がコンパクトになる。
【0057】
さらに、送信波Txは、テーパー壁46で長手方向Aに向かう平面波として大きく広げられた上で誘電体レンズ48に入射するので、誘電体レンズ48によって収束される送信波Txは、対象物72が遠くても強い指向性で対象物72まで導かれる。したがってセンサ部16は、長さ方向寸法が小さくコンパクトでありながらも、遠距離の対象物72のレベル計測が可能である。
【0058】
次に、
図6を参照して、レベル計10の構成要素間の関係の一例について説明する。
図6は、レベル計10の構成要素間の関係を概略的に示すブロック図である。
図6に示されているように、センサ部16のセンサIC41は、送受信部43、レーダー制御部44、記憶部63、演算部64を含んでいる。送受信部43は、送信波Txを送信する送信部43Tと、反射波Rxを受信する受信部43Rとを有する。センサIC41は、複数のICを含んでいてもよい。例えばセンサIC41は、アンテナ一体型MMICとマイコンとを含んでいてもよい。
【0059】
レーダー制御部44は、送信波Txの波形を決定する送信制御部80と、デジタル信号と電波との相互変換を行うレーダー送受信回路81と、送信波Txおよび反射波Rxに基づく信号処理を行う信号処理部89とを有する。なお、センサIC41がアンテナ一体型MMICとマイコンとを含む場合、アンテナ一体型MMICは、レーダー制御部44のうち信号処理部89を除く部分(送信制御部80およびレーダー送受信回路81)と、送受信部43とを有し、マイコンは、信号処理部89と、記憶部63と、演算部64とを有す
るように構成されてもよい。
【0060】
記憶部63は、レベル計10の動作に係わる各種の設定値(データ)を記憶する。演算部64は、記憶部63に記憶された設定値および信号処理部89の信号処理結果などに基づいて、レベル計10の動作に係わる各種の演算を行う。記憶部63はRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などの記憶装置を含む。演算部64はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを含む。なお、記憶部63および演算部64は制御器55の制御基板60に設けられていてもよい。あるいは、センサ部16と制御器55とに、それぞれ別々の記憶部63および演算部64が設けられて、記憶されるデータおよび担当する演算処理がセンサ部16と制御器55とで分担されていてもよい。また
図6に示されているように、演算部64とレーダー制御部44のレーダー送受信回路81および信号処理部89は、合わせてセンサ処理部88として機能する。センサ処理部88は、受信部43Rにより生成される受信信号に少なくとも基づいて対象物のレベルを計測する処理を行う。
【0061】
一方、制御器55の制御基板60は、入力部65および出力部66を有する。入力部65は、レベル計10の外部から与えられる入力を信号としてレベル計10へ入力するインターフェース回路である。レベル計10の外部から与えられる入力とは例えば、操作部30に対するユーザの操作、および、外部入力端子12Cを介して外部制御装置などの外部の装置から与えられる制御信号などである。入力部65は例えば、操作部30が操作されたというフラグ情報、および外部入力端子12Cを介して与えられる設定値などのデータを記憶部63に記憶させる。
【0062】
出力部66は、レベル計10の内部で生成された信号を外部へ出力するインターフェース回路である。出力部66は例えば、演算部64による演算結果(レベルYの値など)に応じて、表示部20の表示内容、および、第二状態灯54の点灯状態などを変化させる。また出力部66は、演算部64による演算結果を、外部出力端子12Dを介して外部の装置へ伝える。なおセンサ部16の状態灯52は、センサIC41と接続されており、演算部64による演算結果に応じて点灯状態を変化させる。状態灯52と第二状態灯54は、同じ点灯状態となるように制御される。
【0063】
図7、
図8を参照して、レベル計10によるレベルYの計測についてより詳しく説明する。
図7は、センサIC41に含まれるレーダー送受信回路81および送受信部43の構成の一例を示す図である。
図8は、送信波Txと反射波Rxとの関係を示す図である。
【0064】
図7に示されているように、レーダー送受信回路81は、信号生成部82と、パワーアンプ83と、ローノイズアンプ84と、ミキサ85と、ローパスフィルタ86と、アナログ・デジタル変換器87とを含む。
【0065】
本実施形態のレベル計10は、FMCWを用いたレーダー方式でレベルYを計測する。信号生成部82は、送信制御部80と接続されている。信号生成部82は、送信制御部80が決定した送信波Txの波形を示すデータを受け取ると、そのデータに応じて送信波Txの波形の送信信号を生成する。ここでは送信波Txの波形として、周波数の増減を繰り返す波形が用いられる。
【0066】
図8には、時間に対する送信波Tx(および反射波Rx)の周波数の変化を示すグラフが示されている。
図8において送信波Txの周波数は最小値(Min)から時間経過につれて一次関数的に増加してゆき、最大値(Max)に達すると再び最小値に戻る。このようにして送信波Txの周波数は増減を繰り返す。なお周波数の増減パターンはこれに限るものではなく、例えば最大値から時間経過につれて一次関数的に減少してゆき、最小に達
すると再び最大値に戻るパターンが用いられてもよい。また最大値と最小値との間で一次関数的な増減と減少を繰り返すパターンが用いられてもよい。本実施形態で用いられる送信波Txは60GHz帯の電波であり、周波数の最小値は例えば58GHz、最大値は例えば69GHzである。なお使用される周波数帯はこれに限るものではなく、例えば77GHz-81GHzの周波数が用いられてもよい。
【0067】
図7の信号生成部82で生成された送信信号は、パワーアンプ83で増幅されて送信部43Tへ送られる。送信部43Tは、送られてきた送信信号に応じた波形の電波を発生させて、その電波を送信波Txとして対象物72へと送信する。送信部43Tにより送信される電波(送信波Tx)は計測窓40で透過されて対象物72へ向かい、対象物72の界面74で反射して反射波Rxとなる。ここで、反射波Rxは、送信波Txに対して位相のずれた波となる。そして反射波Rxは、計測窓40を介して、受信部43Rで受信される。受信部43Rは、受信した電波(反射波Rx)に応じた受信信号を生成する。
【0068】
図8に破線で示されているように、反射波Rxは、送信波Txに対して時間差Δtだけずれた波となる。この時間差Δtは、計測窓40から対象物72の界面74までの距離YA(
図4)に応じた値となる。反射波Rxは計測窓40と対象物72との間を往復しているため、光の速さをcとして、Δt=2×YA/cの関係がある。
【0069】
そして、送信波Txと反射波Rxとの間には、時間差Δtの大きさに応じた周波数差ΔFが生じる。周波数差ΔFと時間差Δtとの間には、送信波Txの波形に依存する一定の関係がある。送信波Txの波形は、時間の経過に応じて周波数が線形に変化する波形である。つまり、周波数差ΔFと時間差Δtとの間には、送信波Txの波形における単位時間当たりの周波数変化に応じた一定の関係がある。例えば、送信波Txの周波数は最小値(Min)から時間経過につれて一次関数的に増加してゆき、最大値(Max)に達する。この場合、周波数差ΔFと時間差Δtとの関係は、周波数変調の帯域幅である送信波Txの周波数の最大値と最小値との差分、および、時間経過に対する周波数変化の関係によって一意に決まる。したがって、レベル計10は例えば、送信波Txと反射波Rxとの差分となる周波数差ΔFに基づいて、時間差Δtを算出できる。そしてレベル計10は、時間差Δtから距離YA(Δt×c/2)を算出できる。さらにレベル計10は、距離YAを基に、レベルYの値を算出できる。具体的には、タンク70の深さ(タンク70の底から計測窓40までの距離)と、距離YAとの差分がレベルYの値となる。したがってレベル計10のセンサ処理部88は例えば、送信部43Tから電波(送信波Tx)を送信するタイミングと、受信部43Rにより電波(反射波Rx)を受信するタイミングとの差に対応する対象物72のレベルYを計測することができる。すなわちセンサ処理部88は、受信部43Rにより生成される受信信号に少なくとも基づいて対象物72のレベルを計測することができる。なお、周波数差ΔFと時間差Δtとの間には、送信波Txの波形に依存する一定の関係があるので、周波数差ΔFと距離YAとの対応関係は、予め求めておくことが可能である。周波数差ΔFと距離YAとの対応関係は、記憶部63に予め記憶されてもよい。
【0070】
一方、
図7においては、受信部43Rで受信された反射波Rxに対応する受信信号は、ローノイズアンプ84を経てミキサ85へ入力される。ミキサ85には信号生成部82から出力される送信波Txの波形に対応する送信信号も入力されており、ミキサ85は送信波Txと反射波Rxの波形を混合した混合波Mxに対応する信号を生成する。センサ処理部88の一部として機能するレーダー送受信回路81に含まれるミキサ85は具体的には、送信信号と受信信号とを混合して、混合波Mxに対応するIF信号(IF:Intermediate Frequency、中間周波数)を生成する。
【0071】
混合波Mxに対応するIF信号(中間周波数信号)は、送信波Txと反射波Rxの60
GHz帯の周波数に由来する高い周波数成分と、送信波Txと反射波Rxとの間の周波数差ΔFに応じた低い周波数成分とを含む波形となる。混合波Mxに対応するIF信号(中間周波数信号)はローパスフィルタ86に入力されて、周波数差ΔFに応じた低い周波数の波形が抽出される。抽出された低い周波数の波形はアナログ・デジタル変換器87へ入力される。アナログ・デジタル変換器87は低い周波数の波形をデジタル値に変換して信号処理部89へ出力する。
【0072】
センサ処理部88の一部として機能する信号処理部89は、アナログ・デジタル変換器87から出力された低い周波数の波形を、高速フーリエ変換処理などによって周波数信号Pxに変換する。周波数信号Pxは、周波数ごとの波の強さを示す信号であり、この周波数信号Pxの最大ピークPSに相当する周波数が、送信波Txと反射波Rxとの間の周波数差ΔFである。信号処理部89は周波数信号Pxを
図6の演算部64へ送信する。
【0073】
センサ処理部88の一部として機能する演算部64は周波数信号Pxに基づいて、距離YA、レベルYの値を算出する。演算部64は距離YA、レベルYの値を算出するにあたり、記憶部63に記憶されている設定値を参照する。例えば、記憶部63には、周波数差ΔFと距離YAの対応関係、距離YAからレベルYを算出するための値(タンク70の深さ)などが記憶されている。
【0074】
なお、計測環境によっては、対象物72の界面74以外の要素(例えばタンク70内に設けられた撹拌機などの機器)に由来して、周波数信号Px内に最大ピークPS以外にもピークが現れることがある。演算部64は、周波数信号Px内に複数のピークが存在していても、適切に演算を行うことにより、対象物72に由来する最大ピークPSのみを特定することができる。例えば、事前に対象物72のない状態(タンク70が空の状態)で得られた周波数信号Pxのデータが記憶部63に記憶されているとよい。演算部64は、対象物72がない状態で得られた周波数信号Pxと、対象物72がある状態で得られた周波数信号Pxとの差分を調べることで、対象物72に由来する最大ピークPSを特定できる。
【0075】
演算部64は、周波数信号Pxの最大ピークPSに相当する周波数差ΔFを算出したら、その周波数差ΔFと、記憶部63に記憶されている設定値とに基づき、距離YA、レベルYの値を算出する。センサ処理部88の一部として機能する演算部64はこのようにして、中間周波数信号に基づいて対象物72のレベルYを計測する。演算部64は、算出したレベルYの値を出力部66および状態灯52へ送信する。出力部66は、レベルYの値に応じて、表示部20の表示内容、および第二状態灯54の点灯状態を変更する。状態灯52は、レベルYの値に応じて、第二状態灯54と同様に点灯状態を変更する。これにより、センサ部16の状態灯52と、制御器55の第二状態灯54は、センサ処理部88により計測されたレベルYと、操作部30により設定される閾値との比較結果に応じて点灯状態が変化する。また、レベルYの値は外部出力端子12Dを通じて、レベルYに関する制御を行う外部制御装置へ送られる。出力部66は、算出したレベルYの値と閾値との比較結果に基づく二値または多値の制御信号を、外部出力端子12Dを通じて外部制御装置に出力してもよい。また、レベルYの値そのものではなく、レベルYの状態に応じた特定の制御を実行するべきことを示す信号が外部制御装置へ送られてもよい。例えばレベルYが特定の閾値を上回ったとき、または特定の閾値を下回った場合に、ポンプ、弁などの動作を変更するべきことを示す信号が外部制御装置へ送られるとよい。
【0076】
次に、
図9を参照して、表示部20の表示モードの切り替えについて説明する。
図9は、表示部20のモード遷移を説明する図である。
【0077】
表示部20は、複数の表示モードを備えており、表示部20は表示モードによって異な
る形式でレベルYおよびレベルYの属するレベル範囲を表示することができる。例えばユーザが操作部30の方向キー33(
図1)を操作すると、表示部20の表示モードが切り替わる。
【0078】
図9に示されているように、表示部20にバーグラフ22およびゲージ24が表示される表示モードは、第1表示モード20aである。表示部20に第1表示モード20aが表示された状態で、方向キー33のアップキー34が操作されると、表示部20の表示は第2表示モード20bに切り替わる。さらにアップキー34が操作されるたびに、表示部20の表示は
図10の第3表示モード20c、第4表示モード20d、第5表示モード20eへと切り替わっていく。第5表示モード20eが表示された状態からさらにアップキー34が操作されると、表示部20の表示は第1表示モード20aに戻る。
【0079】
一方、ダウンキー35が操作されるたびに、アップキー34とは逆の順番で表示モードが切り替わっていく。すなわち、第1表示モード20aが表示された状態から、ダウンキー35が操作されるたびに、表示部20の表示は第5表示モード20e、第4表示モード20d、第3表示モード20c、第2表示モード20b、第1表示モード20aと順番に切り替わっていく。
【0080】
また、各表示モードにおいて、設定キー32が操作されると、表示部20の表示は設定モード20sに切り替わる。設定モード20sにおいて、ユーザは方向キー33(アップキー34、ダウンキー35)を操作することで、レベル計10の動作に関わる設定値を変更することができる。特に、ユーザは設定モード20sにおいて、レベルYの閾値の設定を変更することができる。言い換えると、操作部30は、レベルYの計測に関するパラメータとしてレベルYについてレベル範囲を区切る(1つ又は複数の)閾値の設定操作を受け付ける。レベルYの閾値の設定が変更されることにより、レベル範囲の設定も変更される。すなわち、ユーザは設定キー32、方向キー33を含む操作部30を操作することによって、レベル範囲の設定を変更することができる。
【0081】
そして、設定モード20sにおいて設定キー32が再び操作されると、表示部20の表示は元の表示モードに戻る。したがって、
図9に示されているように、表示部20の表示は方向キー33の操作により、複数の表示モード(第1表示モード20a、第2表示モード20b、第3表示モード20c、第4表示モード20d、第5表示モード20e)の間で循環的に切り替わる。また、表示部20の表示は設定キー32の操作により、各表示モードと設定モード20sとの間で相互に切り替わる。
【0082】
次に、
図10を参照して、第1表示モード20aにおける表示部20の表示内容について説明する。
図10は、第1表示モード20aの表示部20に表示されるバーグラフ22とゲージ24を示す図である。表示部20は、計測されたレベルYに応じた表示を行う。
図10に示されているように、第1表示モード20aの表示部20にはレベルYの値に応じて長さが伸縮するバーグラフ22を含む表示が行われる。表示部20にはバーグラフ22の他に、ゲージ24が表示される。バーグラフ22およびゲージ24は制御器55の前後方向Bに沿った細長いバーとして表示されている。
【0083】
ゲージ24は、記憶部63(
図6)に記憶されている設定値に従って、予め定められた長さ(設定値で指定される長さ)で表示される。また、ゲージ24は、その長さ方向(前後方向B)に沿って、複数の区画に区切られている。
図10においてゲージ24は5つの区画に区切られている。これらの区画は、予め定められた(設定された)1つ又は複数の閾値に基づいて区切られる。閾値は、記憶部63に記憶されている設定値の一部である。閾値は、対象物72のレベルYに関して定められた値であり、閾値同士の間の数値範囲が、予め定められた複数のレベル範囲である。言い換えると、1つ又は複数の閾値は、レベ
ルについて複数のレベル範囲を区切る。
図10においては、4つの閾値(HH、H、L、LL)と、計測範囲の上限(YM)および下限(Y0)が設定されており、これらの値同士の間の数値範囲が、レベルYについて5つのレベル範囲として設定されている。そして、ゲージ24の各区画は、レベル範囲のそれぞれに対応している。なお、ゲージ24の区画の数は5つに限るものではない。例えばレベルYの上限または下限のどちらかのみが表示される場合、区画は2つとなる。またレベルYの上限と下限とが表示される場合、区画は3つとなる。このように、ゲージ24の区切りは表示される要素に応じて様々なパターンがあり得る。
【0084】
以下においては、
図10に示されている5つの区画のうち、中央の区画を標準区画24aと呼ぶ。そして、標準区画24aの上下に隣接する2つの区画を警告区画24b、標準区画24aに対して警告区画24bを挟んで上下に離れた区画(ゲージ24の上下端に位置する区画)を危険区画24cと呼ぶ。また、5つの区画をそれぞれ区別する場合には、ゲージ24の上から順に、上の危険区画24c、上の警告区画24b、標準区画24a、下の警告区画24b、下の危険区画24cと呼ぶ。また、これら5つの区画と対応している5つのレベル範囲をそれぞれ、上の危険範囲、上の警告範囲、標準範囲、下の警告範囲、下の危険範囲と呼ぶ。
【0085】
図10においては、ゲージ24の区画はそれぞれ、レベル範囲のそれぞれに対応した色で色分けされている。例えば、標準区画24aが標準範囲に対応する緑色、警告区画24bが警告範囲に対応する黄色、危険区画24cが危険範囲に対応する赤色で表示されるとよい。なお、上の警告区画24bと下の警告区画24bとが異なる色であってもよい。同様に、上の危険区画24cと下の危険区画24cとが異なる色であってもよい。ゲージ24の区画の色はモノクロの濃淡で表されていても、カラーで表されていてもよい。すなわち、ゲージ24が単色表示(モノクロ)されているならば、濃淡の違い、模様の違いなどによって各区画が区分けされているとよい。ゲージ24がカラー表示されているならば、色の違いによって各区画が区分けされているとよい。またゲージ24がカラー表示されている場合にも、各区画で濃淡、模様などが異なっていてもよい。また、ユーザによる操作部30の操作により、各区画の色を変更できるようになっていてもよい。この場合、区画ごとに割り当てられる色の設定は、ユーザによる操作部30の操作によって、予め用意された複数の割り当てパターン(組み合わせ)の中から選択されてもよいし、区画ごとに割り当てられる色がそれぞれ個別に選択されてもよい。またユーザによる操作部30の操作によって、各区画の点灯状態が選択されてもよい。この場合、点灯状態として、点灯、消灯、点滅の中から選択されてもよい。
【0086】
バーグラフ22はゲージ24の隣に表示されており、その長さは、計測されたレベルYの値に応じて、前後方向Bに沿って伸縮する。なお、ゲージ24が色分け表示されている場合には、ユーザが遠距離からでもバーグラフ22とゲージ24との見分けをつけ易いように、バーグラフ22はゲージ24の各区画と異なる色(例えば青色)で表示されることが好ましい。
図10において、バーグラフ22はレベルYの値が大きいほど、下側から上側へと伸びる。すなわちバーグラフ22が伸びるほど、バーグラフ22の長さの前後方向Bの先端(
図10における上端)は、前後方向Bの基礎部分(
図10における下端)から離れることになる。したがって、バーグラフ22は、前後方向Bの先端が前後方向Bの基礎部分から離れるほど、大きなレベルYの値を示す。同様に、ゲージ24も、前後方向Bの基礎部分から離れるほど大きな値に対応している。レベルYの値は、対象物72の界面74がタンク70の底面から離れるほど大きくなるので、バーグラフ22の先端の動きは、界面74の動きを反映したものとなる。したがって
図10のバーグラフ22とゲージ24によれば、ユーザにとって、レベルYの状態、すなわちレベルYがどのレベル範囲に属しているか、そしてレベルYがどのように変動(増減)しているか、を視覚的に把握し易い。
【0087】
なお状態灯52および第二状態灯54は、レベルYがどのレベル範囲に属しているか、に応じて表示状態が変化することが好ましい。具体的には、状態LED50の発光状態、消灯状態、点滅状態、発光色などが切り替わることにより、表示状態が変化するとよい。レベルYがどのレベル範囲に属しているか、に応じて状態灯52および第二状態灯54の表示状態が変化すると、ユーザはセンサ部16および第二状態灯54から離れた位置でも、対象物72のレベルYについて正常、注意、警告、異常などの状態を知ることができる。あるいは、ユーザは、レベルYの状態を大まかに知ることができる。
【0088】
計測範囲の上限と下限の設定の一例について説明する。計測範囲はレベル計10が計測するレベルYの範囲を示し、例えば計測範囲の下限は、タンク70に対象物72が存在しない(タンク70が空になっている)ことを示す値(ゼロ点Y0、例えば0mm)である。また計測範囲の上限は、タンク70に対象物72をそれ以上収容することができない(タンク70が満量になっている)ことを示す値(満量値YM、例えば1000mm)である。計測範囲の上限および下限はユーザによる操作部30の操作によって設定されてもよい。
【0089】
閾値の設定の一例について説明する。閾値は例えば、タンク70内の対象物72について、「レベルYがこの値を超えたら、あるいは下回ったら、対象物72の量を調節する必要がある」ことを示す値として設定される。閾値はユーザによる操作部30の操作により設定されてもよい。そして、計測範囲の上限である満量値YMから順に、上上限値HH(第1の閾値)、上限値H(第2の閾値)、下限値L(第3の閾値)、下下限値LL(第4の閾値)の4つの閾値がそれぞれ設定される。タンク70内の対象物72が例えば水処理プロセスへ供給されることで、タンク70内の対象物72のレベルYは低下する。一方、タンク70に対象物72が補充されることで、タンク70内の対象物72のレベルYは上昇する。この場合、注水装置78は、水処理プロセスに応じて低下するタンク70内の対象物72のレベルYが、予め定められた範囲内となるように、タンク70内の対象物72のレベルYに応じて、タンク70に対する対象物72の補充を制御する。具体的には、注水装置78は、タンク70内の対象物72のレベルYが上限値H(第2の閾値)と下限値L(第3の閾値)との間となるよう、タンク70に対する対象物72の補充を制御する。注水装置78が正常に動作すれば、タンク70内の対象物72のレベルYが上限値H(第2の閾値)と下限値L(第3の閾値)の範囲内となる。しかしながら、注水装置78がタンク70内の対象物72のレベルYを制御しているにもかかわらず、対象物72のレベルYが予め定めた範囲から一定以上乖離したときは、異常が発生したと判断され、注水装置78および水処理プロセス装置などを含む施設(例えば水処理施設)の動作全体が停止される。上上限値HHは、レベルYがこの値を超えたら直ちに水処理施設全体を停止させるべき値(例えば800mm)である。上限値Hは、レベルYがこの値を超えたらタンク70への注水を停止させるべき値(例えば600mm)である。下限値Lは、レベルYがこの値を下回ったらタンク70への注水を開始させるべき値(例えば400mm)である。下下限値LLは、レベルYがこの値を下回ったら直ちに水処理施設全体を停止させるべき値(例えば200mm)である。
【0090】
上の危険区画24cは、計測範囲の上限である満量値YMと上上限値HHとの間のレベル範囲(上の危険範囲)に対応する。上の警告区画24bは、上上限値HHと上限値Hとの間のレベル範囲(上の警告範囲)に対応する。標準区画24aは、上限値Hと下限値Lとの間のレベル範囲(標準範囲)に対応する。下の警告区画24bは、下限値Lと下下限値LLとの間のレベル範囲(下の警告範囲)に対応する。下の危険区画24cは、下下限値LLと計測範囲の下限であるゼロ点Y0との間のレベル範囲(下の危険範囲)に対応する。ゲージ24の各区画は対応する各閾値により範囲が規定される。各区画の表示範囲は各区画を規定する閾値に応じた長さを有するようにしてもよい。この場合、ユーザによる
操作部30の操作により閾値が変更されると、各区画の表示範囲は、変更後の閾値によって規定される区画に応じた長さに変更される。
【0091】
図10においては、バーグラフ22の長さが、ゲージ24の区画のいずれに対応する位置に達しているかによって、レベルYの属するレベル範囲が示される。より詳しく説明すると、ゲージ24の隣に表示されるバーグラフ22は、レベルYの値に応じて長さが伸縮することにより、その先端部が前後方向Bに沿って移動する。そして、バーグラフ22の先端部が、ゲージ24のどの区画の隣に位置しているかによって、レベルYの属するレベル範囲が示される。なお、バーグラフ22の先端部がゲージ24のどの区画に対応しているかが視覚的にわかり易くなるように、バーグラフ22の先端部に、ゲージ24に向けて伸びる矢印形状22a(
図10において二点鎖線で示される矢印)が表示されてもよい。また、レベルYの値を示す目盛り25がゲージ24に重ねて表示されてもよい。矢印形状22aおよび目盛り25を表示するか否かについての設定は、ユーザが操作部30を操作することで変更することができるとよい。
【0092】
ここで、レベルYの属するレベル範囲とは、具体的には、計測されたレベルYの値が、どの2つの閾値同士の間にあるか、という情報である。
図10においては、バーグラフ22の先端部がゲージ24のどの区画の隣に位置しているかによって、レベルYがどのレベル範囲に属しているかが表示されている。
【0093】
例えば
図10では、バーグラフ22の先端部は標準区画24aの隣に位置している。この場合、レベルYは、上限値Hと下限値Lとの間のレベル範囲(標準範囲)に属している。したがってレベル計10のユーザは、表示部20のバーグラフ22とゲージ24を目視することで、対象物72のレベルYが上限値Hと下限値Lとの間の状態にあるということを視覚的に把握し易い。このように、本実施形態のレベル計10によれば、タンク70に取り付けられたセンサ部16から離れた位置においても、ユーザは制御器55を用いて、計測対象となる対象物72のレベルYの状態を視覚的に把握できる。さらに、レベルYに基づく対象物72の状態(ステータス)は、状態灯52および第二状態灯54の点灯状態によっても示されることが好ましい。例えば、レベルYが標準区画24aに対応するレベル範囲(標準範囲)に属する場合に、状態灯52および第二状態灯54が緑色で点灯するとよい。また、レベルYが警告区画24bに対応するレベル範囲(警告範囲)に属する場合に、状態灯52および第二状態灯54が黄色で点灯するとよい。また、レベルYが危険区画24cに対応するレベル範囲(危険範囲)に属する場合に、状態灯52および第二状態灯54が赤色で点灯するとよい。このように、状態灯52および第二状態灯54の点灯状態が、レベルYの属するレベル範囲によって変化すると、ユーザは、対象物72のレベルYの状態を視覚的にさらに把握し易くなる。ゲージ24の各区画の色はユーザによる操作部30の操作によって変更されてもよい。状態灯52の点灯状態もゲージ24の各区画の表示状態に対応して変更されてもよい。例えば、ゲージ24の区画が5つで、各区画に対して上から順に赤色点灯、黄色点灯、緑色点灯、黄色点灯、赤色点灯が割り当てられているとする。そして、ユーザの操作によって、各区画に対して上から順に赤色点灯、黄色点滅、緑色点灯、消灯、赤色点滅が割り当てられるように変更が行われたとする。この場合に、バーグラフ22の先端部がゲージ24の上から2番目の区画の隣に位置しているとすると、状態灯52は、割り当ての変更前は黄色で点灯し、割り当ての変更後は黄色で点滅する。またこの場合、状態灯52および第二状態灯54の点灯色もゲージ24の各区画の色に対応して変更されてもよい。例えば、ゲージ24の区画が4つで、各区画に対して上から順に赤色、黄色、緑色、黄色が割り当てられているとする。そして、ユーザの操作によって、各区画に対して上から順に黄色、緑色、黄色、赤色が割り当てられるように変更が行われたとする。この場合に、バーグラフ22の先端部がゲージ24の最も上の区画の隣に位置しているとすると、状態灯52および第二状態灯54は、割り当ての変更前は赤色で点灯し、割り当ての変更後は黄色で点灯する。なお、ゲージ24の各区画の色と、
各区画に対応する状態灯52の色は必ずしも一致していなくともよい。例えばバーグラフ22の先端部が黄色で表示される区画に対応するときに、状態灯52が赤色で点滅してもよい。
【0094】
なお、第1表示モード20a以外の表示モードにおいては、レベルYの値は数値または計測範囲の上限である満量値YMに対する割合で表示されてもよい。例えば
図9に示されているように、第2表示モード20bにおいては、現在のレベルYの数値(ここでは550mm、単位の表示は省略)が大きく表示され、上限値H(600mm)と下限値L(400mm)の数値がレベルYの数値よりは小さく表示される。表示部20に表示される数字の向きに対して、レベルYより大きい数値であるべき上限値Hは上方、レベルYより小さい数値であるべき下限値Lは下方に表示される。このように、表示部20は、表示モードによっては、計測されたレベルYおよびレベル範囲の閾値を、数値で表示することができる。
【0095】
図9の第3表示モード20cにおいては、上限値H、下限値Lの数値に加えて、上上限値HH(800mm)の数値も表示される。第3表示モード20cにおいてレベルYの数値は上上限値HH、上限値H、下限値Lの数値と同じ程度の大きさで表示されている。ただし他の数値と区別できるように、レベルYの数値は強調表示されていることが好ましい。
図9においてはレベルYの数値は白抜き数字で表示される。表示部20に表示される数字の向きに対して、上上限値HHと上限値Hは上方、レベルYの数値と下限値Lは下方に表示される。
【0096】
図9の第4表示モード20dにおいては、上限値H、下限値Lの数値に加えて、下下限値LL(200mm)の数値も表示される。第4表示モード20dにおいてレベルYの数値は上限値H、下限値L、下下限値LLの数値と同じ程度の大きさで表示されている。表示部20に表示される数字の向きに対して、レベルYの数値と上限値Hは上方、下限値Lと下下限値LLは下方に表示される。第3表示モード20cおよび第4表示モード20dで示されているように、表示部20は、表示モードを切り替えることで、設定されている各種の閾値の数値を表示することができる。
【0097】
図9の第5表示モード20eにおいては、満量値YM(1000mm)に対するレベルYの値(550mm)の割合として、「55%」が大きく表示される。そして上限値H(600mm)、下限値L(400mm)について、満量値YM(1000mm)に対する割合として、「60%」「40%」がレベルYよりは小さく表示される。このように、表示部20は、表示モードによっては、計測されたレベルYおよびレベル範囲の閾値を、満量値YM(許容される上限の値)に対する割合で表示することができる。
【0098】
このように表示部20は、複数の表示モードを備えることで、例えば第1表示モード20aでユーザにとって視覚的にわかりやすい表示を行う一方で、他の表示モードで細かい数値または満量値YMに対するレベルYの割合を表示することができる。
【0099】
次に
図11、
図12、
図13を参照して、複数の制御器55が用いられる場合について説明する。
図11は、第1の制御器55aの送電端子56aが露出した状態を示す図である。
図12は、第2の制御器55bの受電端子56bが露出した状態を示す図である。
図13は、複数の制御器55(第1の制御器55a、第2の制御器55b、第3の制御器55c)が並んでレール69に取り付けられた状態を示す図である。
図11、
図12、
図13においては、
図1の制御器55と同じ機能の構成要素には
図1と同じ符号を付し、必要な場合を除き説明を繰り返さない。なお
図11、
図12、
図13において第1の制御器55a、第2の制御器55b、第3の制御器55cは動作しておらず、表示部20の表示は消えている。
【0100】
図11に示されているように、第1の制御器55aはレールホルダ部61を用いてレール69に取り付けることができる。
図11のレール69は、第1の制御器55aの前後方向Bと直交する方向に延びている。レール69としては例えば、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung、DIN)が定める規格に従うDINレールが用いられる。具体的には、レールホルダ部61の2つの爪部がそれぞれレール69の縁部の下面に入り込んで、レールホルダ部61がレール69を挟み込むことで、第1の制御器55aがレール69に取り付けられる。レール69に取り付けられた状態の第1の制御器55aは、レール69に沿ってスライド可能である。
【0101】
図11において、第1の制御器55aの手前の面は左側面である。第1の制御器55aの左側面において、レール69に取り付けられたときにレール69の上方に位置する箇所には、送電端子56aが設けられている。この送電端子56aは、第1の制御器55aが単体で使用される場合には送電端子カバー57aで覆われている。第1の制御器55aが他の制御器55(第2の制御器55bなど)と共に使用される場合には、送電端子カバー57aが取り外されて、送電端子56aが露出される。送電端子56aは、他の制御器55へ電力を出力する。なお送電端子56aは、他の制御器55へ電力だけでなく信号を出力することも可能である。
【0102】
一方、
図12に示されているように、第1の制御器55aと異なる第2の制御器55bも、レールホルダ部61を用いてレール69に取り付けることができる。
図12のレール69は
図11のレール69と同じものであり、
図12は
図11から離れた位置を示している。
【0103】
図12において、第2の制御器55bの手前の面は右側面である。第2の制御器55bの右側面において、レール69に取り付けられたときにレール69の上方に位置する箇所には、受電端子56bが設けられている。この受電端子56bは、第2の制御器55bが単体で使用される場合には受電端子カバー57bで覆われている。第2の制御器55bが他の制御器55(第1の制御器55aなど)と共に使用される場合には、受電端子カバー57bが取り外されて、受電端子56bが露出される。また
図12には図示されていないが、第2の制御器55bの左側面にも送電端子56aが設けられている。なお右側面の受電端子56bは、前後方向Bにおいて左側面の送電端子56aと対応する位置、つまり送電端子56aのちょうど裏側に設けられている。受電端子56bには、他の制御器55から電力が入力される。なお受電端子56bは、他の制御器55から電力だけでなく信号が入力されてもよい。
【0104】
2つの制御器55がレール69上で並んで配置されたとき、一方の制御器55の送電端子56aと、他方の制御器55の受電端子56bとが接続可能である。例えば、第1の制御器55aと第2の制御器55bとがそれぞれ送電端子56a、受電端子56bを露出した状態でレール69に取り付けられているとき、一方の送電端子56aと他方の受電端子56bとが向かい合った状態で、レール69上で第1の制御器55aと第2の制御器55bとがスライドして近づくことにより、送電端子56aと受電端子56bとが接続される。また、第2の制御器55bの送電端子56aが露出されていれば、さらに第3の制御器55cの受電端子56bを、第2の制御器55bの送電端子56aに接続することができる。制御器55には、受電端子56bと外部入力端子12Cの両方が設けられてもよいし、受電端子56bまたは外部入力端子12Cのいずれか一方が設けられてもよい。
【0105】
図13においては、第1の制御器55a、第2の制御器55b、第3の制御器55cが、レールホルダ部61を用いて互いに隣接してレール69に取り付けられている。各制御器55の送電端子56aおよび受電端子56bは
図13に図示されていないが、第1の制
御器55aの送電端子56aが第2の制御器55bの受電端子56bと接続されている。そして、第2の制御器55bの送電端子56aが第3の制御器55cの受電端子56bと接続されている。
【0106】
図13において第1の制御器55aの手前(右側面側)には、固定ユニット68が配置されている。固定ユニット68は下方の爪部でレール69を挟み込む。そしてボルト68aが締め付けられることにより、固定ユニット68はレール69に固定される。固定ユニット68がレール69に固定されて配置されていることにより、複数の制御器55は固定ユニット68よりも手前にはスライドしないように制限される。また
図13において第3の制御器55cよりも奥側にも、固定ユニット68が配置されている。奥側の固定ユニット68は下方の爪部でレール69を挟み込んでいるが、ボルト68aは締め付けられておらず、レール69に沿ってスライド可能である。奥側の固定ユニット68が第3の制御器55cに並ぶ位置でボルト68aが締め付けられると、複数の制御器55は手前にも奥にもスライドしないように制限される。第3の制御器55cよりも奥側に、さらに別の制御器55が配置される場合には、奥側の固定ユニット68のボルト68aが緩められて、奥側の固定ユニット68がスライドされることで別の制御器55のためのスペースが確保される。手前側の固定ユニット68と奥側の固定ユニット68との間の制御器55の数は、ユーザが必要に応じて増やすことができる。
【0107】
図13においてレール69上に並んだ複数の制御器55のうち、外部から電力の供給を受けるのは第1の制御器55aのみである。具体的には、第1の制御器55aの接続部12内の外部入力端子12Cにのみ、外部からの電力が供給される。第2の制御器55bと第3の制御器55cにも接続部12が設けられているが、第2の制御器55bと第3の制御器55cは、それぞれの接続部12を介して外部と信号通信のみを行う。
【0108】
第1の制御器55aは、外部入力端子12Cを通じて入力される外部からの電力を、送電端子56aを通じて第2の制御器55bへ出力する。第2の制御器55bは、受電端子56bを通じて入力される第1の制御器55aからの電力を、送電端子56aを通じて第3の制御器55cへ出力する。
【0109】
このように、外部入力端子12Cから電力が入力される第1の制御器55aと、受電端子56bから電力が入力される第2の制御器55bは、送電端子56aから他の制御器55(第2の制御器55bまたは第3の制御器55c)の受電端子56bへ電力を出力可能である。これにより、複数の制御器55が同時に用いられる場合でも、制御器55への電源供給ラインは一本でよいため、電源供給ラインの引き回しが容易となる。
【0110】
次に、
図14を参照して、実施形態の別例として、対象物72のレベルを計測するレベル計10について説明する。
図14のレベル計10においては、センサ部16が、通信ケーブル11を介して直接、プログラマブルコントローラなどの外部制御装置90と通信可能である。センサ部16の構造は
図2と同様である。したがって
図14のレベル計10は、送信部43Tおよび受信部43Rを含むセンサIC41と、センサIC41が実装され計測軸40Aと交差するセンサ基板42と、それらを収容する第一筐体16aを備えている。また第一筐体16aには、対象物72に向けて取り付けるための取付部18と、送信部43Tにより送信される送信波Txを透過する計測窓40が形成されている。計測窓40には誘電体レンズ48が配置される。そして
図14のレベル計10が備えるセンサIC41は、
図6、
図7と同様に、信号生成部82と、センサ処理部88とを含む。
図14のレベル計10の通信ケーブル11は、第一筐体16aを貫通すると共に、センサIC41と電気的に接続される。
【0111】
また
図14のレベル計10はさらに、
図5A、
図5Bと同様に、送信部43Tおよび受
信部43Rが接する空間を囲うとともに、その空間に連通する計測軸40Aに沿った導波路を形成する導電性の電波整形部を備えるとよい。また、
図14のレベル計10は、センサ処理部88により計測されたレベルと、設定された閾値との比較結果に応じて点灯状態が変化する状態灯52を備えるとよい。そして
図14のレベル計10の計測窓40に配置される誘電体レンズ48は、
図5Aと同様に、導波路を通過する送信波Txが計測軸40Aに沿って平面波として進行するよう送信波Txを屈折する。そしてセンサ基板42は、誘電体レンズ48と向かい合う面の中央部に送信部43Tおよび受信部43Rが実装され、その裏面又は周辺部に状態灯52の光源となる状態LED50が実装され、第一筐体16aには、状態灯52の光源からの光を透過する透過窓53が設けられる。
【0112】
センサ部16は、設定に応じて、
図1のように制御器55と接続されるのか、
図14のように外部制御装置90と直接接続されるのかが切り替えられるとよい。例えば、レベル計10が起動するときに、センサ部16は、通信ケーブル11からセンサ部16へ送信される信号を確認する。センサ部16へ送信される信号が、通信ケーブル11に制御器55が接続されていることを示すものであれば、センサ部16は制御器55の操作部30によって設定されるパラメータにしたがって動作する。
【0113】
通信ケーブル11に制御器55が接続されていない場合、センサ部16は、通信ケーブル11に接続されている機器に応じて動作する。例えば通信ケーブル11にプログラマブルコントローラなどの外部制御装置90(
図1の形態で制御器55の接続部12へ接続される機器)が接続されているのであれば、センサ部16は、既に設定されているパラメータ(前回起動時に設定されたパラメータなど)にしたがって、レベル計10として動作する。
【0114】
一方、センサ部16に対する設定操作を行うことが可能な機器、例えば汎用的なPC(Personal Computer)が通信ケーブル11に接続されているのであれば、センサ部16は、PCを制御器55と同様に扱って動作してもよい。例えばPCから閾値の設定、レベル範囲に対応する色の設定、などの設定操作が行われ、センサ部16はその設定操作にしたがってレベルの計測を行い、計測したレベルの値を示す信号、または、そのレベルと各閾値との比較結果に基づく制御信号を、通信ケーブル11を介してPCへ送信する。PCは、PCに接続されたモニタに、センサ部16から送信された信号に応じた表示を行ってもよい。
【0115】
またPCは、パラメータの設定操作のために用いられてもよい。例えばPCは、次回のレベル計測のために必要な、レベルの計測に関するパラメータを、通信ケーブル11を介してセンサ部16へ送信することで、レベル計10のパラメータの設定を行う。そして設定の完了後、センサ部16の電源が落とされ、通信ケーブル11からPCが取り外される。その後、通信ケーブル11にプログラマブルコントローラなどの外部制御装置90が接続される。するとセンサ部16は、PCから送信されたパラメータにしたがって、レベル計10として動作する。
【0116】
このように、センサ部16が単体でレベル計10として動作することも可能である。センサ部16には表示部20、操作部30などが設けられていないため寸法が小さい。したがってセンサ部16が単体でレベル計10として動作するのであれば、レベル計10の設置場所の自由度が非常に高くなる。
【符号の説明】
【0117】
10 レベル計
16 センサ部
20 表示部
22 バーグラフ
24 ゲージ
30 操作部
40 計測窓
43T 送信部
43R 受信部
46 テーパー壁
48 誘電体レンズ
50 状態LED
52 状態灯
53 透過窓
55 制御器
63 記憶部
64 演算部
65 入力部
66 出力部
69 レール
70 タンク
72 対象物
74 界面
88 センサ処理部